JP4114843B2 - 熱処理装置及び熱処理方法並びにパイプ製造装置 - Google Patents

熱処理装置及び熱処理方法並びにパイプ製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばステンレス製パイプなどの長尺材を熱処理する熱処理装置及び熱処理方法、並びにこの熱処理装置が組み込まれたパイプ製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステンレス製パイプなどの長尺材を連続的に熱処理する技術が従来から知られている。このような技術の一つとして、光輝熱処理用ガス雰囲気中で金属線を加熱ロールに巻き付けながら加熱し、その後、冷却ロールに巻き付けながら冷却する技術が知られている(特開昭52−88509号参照)。
【0003】
また、他の技術として、オーステナイト系ステンレス棒鋼を不活性ガス雰囲気中で焼鈍する技術が知られている(特開平8−20822号参照)。この技術では、オーステナイト系ステンレス棒鋼を連続的に搬送しながら順次に焼鈍温度に加熱し、焼鈍温度に加熱され終った部分を冷却水で冷却する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記した2つの技術のうち加熱ローラと冷却ローラを用いる技術では長尺材をこれら2つのローラに順次に巻き付けるので、折れ曲がりにくい材質の長尺材を熱処理できない。
【0005】
また、オーステナイト系ステンレス棒鋼を不活性ガス雰囲気中で焼鈍する技術では、このステンレス棒鋼を不活性ガス中で150℃以下になるまで冷却しなければ、ステンレス棒鋼の表面に酸化膜が形成されて金属光沢が失われる。従って、金属光沢を失わないようにステンレス棒鋼を冷却した場合、冷却時間が非常に長くなる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、ステンレス製などの長尺材を酸化させずに連続的に短時間で熱処理できる熱処理装置及び熱処理方法、並びにこの熱処理装置が組み込まれたパイプ製造装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の熱処理装置は、
(1)長尺材が進入する入口及びこの入口から進入して直線状に進んだ長尺材が排出される出口が形成された、その内部が真空になる若しくはその内部に非酸化性ガスが充満する容器と、
(2)上記入口から進入した長尺材のうちの所定の被加熱部分を所定の第1温度に加熱する、上記容器の内部に配置された加熱手段と、
(3)この加熱手段によって加熱された上記被加熱部分に接触しながらこの被加熱部分を所定の第2温度まで冷却する、上記容器の内部に配置された冷却部材とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
ここで、上記加熱手段は、
(4)上記被加熱部分を誘導加熱する誘導加熱コイル、及び上記被加熱部分に直接に電流を流してこの被加熱部分を加熱する加熱用電極のうちのいずれかであってもよい。
【0009】
また、上記冷却部材は、
(5)所定の待機位置で上記被加熱部分に接触し始めてこの被加熱部分に接触したままこの被加熱部分と共に所定距離だけ進行してこの被加熱部分を冷却した後、所定の分離位置でこの被加熱部分から離れて上記待機位置に戻るものであってもよい。
【0010】
さらに、上記冷却部材は、
(6)内部に冷却液が流れる冷し金からなるものであってもよい。
【0011】
さらにまた、上記冷し金は、
(7)長尺材に接触する凹凸面が形成されたものであってもよい。
【0012】
さらにまた、上記冷し金は、
(8)それぞれが長尺材に自在に接離する複数の個別冷し金から構成されたものであってもよい。
【0013】
さらにまた、上記個別冷し金は、
(9)長尺材の外面に倣う形状の内面がそれぞれに形成された2つの個別冷し金からなるものであってもよい。
【0014】
さらにまた、熱処理装置は、
(10)上記個別冷し金を長尺材の進行方向及びその反対方向に移動させると共にこの進行方向に交差する交差方向にも移動させる、上記個別冷し金それぞれに接続されたシリンダを備えてもよい。
【0015】
さらにまた、熱処理装置は、
(11)長尺材と上記冷却部材との間に挟み込まれる金属布を備えてもよい。
【0016】
また、上記目的を達成するための本発明の熱処理方法は、
(12)非酸化性ガス雰囲気中もしくは真空中で長尺材をその長手方向に搬送しながらこの長尺材のうちの所定の被加熱部分を所定の第1温度に加熱すると共にこの第1温度に加熱され終った被加熱部分に冷し金を接触させてこの被加熱部分を所定の第2温度まで冷却することを特徴とするものである。
【0017】
ここで、
(13)上記冷し金を上記被加熱部分に接触させるに当たり、上記冷し金を上記被加熱部分に接触させたままこの被加熱部分と共に所定距離だけ移動させてもよい。
【0018】
また、
(14)長尺材としてステンレス製のものを用い、このステンレス製の長尺材を焼鈍温度まで加熱し、上記冷し金で150℃以下まで冷却してもよい。
【0019】
また、上記目的を達成するための本発明のパイプ製造装置は、
(15)板状の長尺材の幅方向両端部同士を溶接してこの長尺材をパイプ状に成形する溶接機と、
(16)この溶接機によってパイプ状に成形された長尺材が進入する入口及びこの入口から進入して直線状に進んだ長尺材が排出される出口が形成された、その内部が真空になる若しくはその内部に非酸化性ガスが充満する容器と、
(17)上記入口から進入した長尺材のうちの所定の被加熱部分を焼鈍温度に加熱する、上記容器の内部に配置された加熱手段と、
(18)この加熱手段によって加熱された上記被加熱部分に接触しながらこの被加熱部分を所定温度まで冷却する、上記容器の内部に配置された冷し金とを備えたことを特徴とするものである。
【0020】
ここで、
(19)上記冷し金は、パイプ状に成形された長尺材の直径方向からこの長尺材の外周面に接離自在に接触する複数の個別冷し金が組み合わされて構成されたものであり、
(20)この個別冷し金は、上記長尺材の外周面に倣う形状の内周面を有し、この内周面をこの長尺材の外周面に接触させてこの長尺材を冷却するものであってもよい。
【0021】
さらに、
(21)上記個別冷し金は、その内周面に凹凸が形成されたものであってもよい。
【0022】
さらにまた、
(22)上記個別冷し金は、所定の待機位置で上記被加熱部分に接触し始めてこの被加熱部分に接触したままこの被加熱部分と共に所定距離だけ進行してこの被加熱部分を冷却した後、所定の分離位置でこの被加熱部分から離れて上記待機位置に戻るものであってもよい。
【0023】
さらにまた、パイプ製造装置は、
(23)上記冷し金で冷却された長尺材を切断する、上記容器の外部に配置された切断機を備えてもよい。
【0024】
ここで、非酸化性ガスとは、不活性ガスや還元性ガスをいい、酸化性ガスを除くガスをいう。また、真空とは、完全な真空だけでなく被加熱部分が酸化しない程度の真空度も含む概念をいう。
【0025】
【発明の実施の形態】
図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0026】
図1を参照して、本発明のパイプ製造装置の一実施形態を説明する。
【0027】
図1は、パイプ製造装置の一実施形態を示す模式図である。
【0028】
パイプ製造装置10は、コイル状に巻かれたステンレス製の板材12(長尺材の一例である)を加工してパイプ(管)16を連続的に製造するものである。パイプ製造装置10では、板材12が矢印A方向に進みながら(搬送されながら)パイプ状に成形され、成形されたパイプ16に光輝焼鈍が施され、その後、パイプ16は冷却されて所望の長さに切断される。パイプ16を搬送する速度は例えば6m/分であり、また、パイプ16の直径は例えば16mm程度である。
【0029】
板材12よりも矢印A方向の下流側には、周知のTIG(ティグ)溶接機14が配置されている。溶接機14では、板材12の幅方向両端部同士が溶接されて板材12がパイプ状に成形される。この溶接機14よりも矢印A方向下流側には、パイプ状に成形された板材(パイプ16)を光輝焼鈍する熱処理装置20が配置されている。熱処理装置20から排出されたパイプ16には酸化膜が形成されておらず、パイプ16からは金属光沢が失われていない。
【0030】
熱処理装置20は、その内部に不活性ガスなどの非酸化性ガスが充満される容器22を有する。容器22には、パイプ16が進入する入口24と、この入口24から進入して直線状に進んだパイプ16が排出される出口26が形成されている。なお、この容器22に非酸化性ガスを充満する代わりに、この容器22の内部を真空にするように構成してもよい。
【0031】
容器22の内部には、パイプ16を焼鈍温度(本発明にいう第1温度の一例であり、例えば1200℃)に加熱する周知の誘導加熱コイル28が配置されている。この誘導加熱コイル28は、容器22の内部のうち入口24に近い部分に配置されており、容器22の外部に配置された高周波電源29に接続されている。容器22の内部において誘導加熱コイル28よりも矢印A方向の下流側には、パイプ16を150℃以下の温度(本発明にいう第2温度の一例である)に冷却する冷し金30(本発明にいう冷却部材の一例である)が配置されている。冷し金30の長さLは例えば20〜30cm程度である。なお、熱処理装置20の詳細については後述する。
【0032】
熱処理装置20の出口26よりも矢印A方向の下流側には、冷し金30で150℃以下の温度に冷却されたパイプ16をさらに冷却する冷却ジャケット60が配置されている。この冷却ジャケット60よりも矢印A方向の下流側には、パイプ16を切断する切断機62が配置されている。この切断機62でパイプ16を適宜に切断することにより所望長さのパイプ16が得られる。
【0033】
上述したようにパイプ製造装置10には、パイプ16を光輝焼鈍する熱処理装置20が組み込まれているので、溶接機14による溶接に起因するパイプ16の歪みが除去される。また、パイプ16の内部の炭化物を溶かし込みながらパイプ16を連続的に製造できる。さらに、容器22の内部に非酸化性ガスが充満する(若しくは内部が真空になる)と共に冷し金30でパイプ16を急速に冷却するので、熱処理中にパイプ16が酸化しない。従って、パイプ16が金属光沢を失わずに短時間で熱処理される。この結果、熱処理後にパイプ16の酸化膜を除去する作業が不要となり、その分、パイプ16の製造費用を低下できる。
【0034】
図2と図3を参照して、図1のパイプ製造装置に組み込まれた熱処理装置を説明する。
【0035】
図2(a)は、熱処理装置の内部を模式的に示す斜視図であり、(b)は、熱処理装置で加熱して冷却されたパイプの温度を示すグラフである。図3(a)は、冷し金を示す側面図であり、(b)は、(a)のB−B断面図であり、(c)は、冷し金の変形例を示す断面図である。これらの図では、図1に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。
【0036】
上述したように熱処理装置20の容器22の内部には、誘導加熱コイル28と冷し金30が配置されている。誘導加熱コイル28は、パイプ16のうち誘導加熱コイル28に囲まれた被加熱部分16aを速やかに焼鈍温度に加熱する。焼鈍温度に加熱され終った被加熱部分16aは冷し金30によって急冷される。
【0037】
冷し金30は2つの個別冷し金32,34から構成される。各個別冷し金32,34は、パイプ16の上下から(直径方向の一例である)パイプ16を挟み込んでその外周面に接触し、パイプ16を150℃以下まで冷却する。2つの個別冷し金32,34の互いに向き合う面(内面)には、図3(b)に示すように、パイプ16の外周面に倣った形状の内周面32a,34aが形成されている。従って、冷し金30がパイプ16に接触するときの接触面積が広くなり、パイプ16は効率良く冷却される。また、個別冷し金32,34の内部には冷却液が流れる冷却管36,38が通っている。冷却管36,38を流れる冷却液によって個別冷し金32,34が冷却されるので、パイプ16はいっそう効率良く冷却される。
【0038】
上記のように誘導加熱コイル28で加熱された後に冷し金30で冷却された被加熱部分16aの温度変化を説明する。図2(b)に示すように、被加熱部分16aは誘導加熱コイル28によって例えば1200℃まで急激に加熱されながら矢印A方向に搬送される。被加熱部分16aが冷し金30に到達すると、この冷し金30によって150℃以下まで急冷される。冷し金30は、被加熱部分16aに接触しながらこの被加熱部分16aと共に矢印A方向に所定距離だけ移動する。冷し金30は、この移動中に被加熱部分16aを150℃以下まで急冷する。冷し金30が移動する機構については後述する。
【0039】
図3(b)に示すように、個別冷し金32,34の内周面32a,34aは滑らかである。しかし、図3(c)に示すように、凹凸が形成された凹凸面42a,44aを内周面としてもつ個別冷し金42,44からなる冷し金40を使用してもよい。この場合、凹凸面42a,44aがパイプ16に接触する際の接触圧がほぼ均一になる。従って、パイプ16が変形しにくい。
【0040】
また、上記の例では、個別冷し金32,34をパイプ16の外周面に直接に接触させたが、個別冷し金32,34の内周面32a,34aとパイプ16の外周面の間に金属布を挟んでもよい。即ち、金属布を介して個別冷し金32,34をパイプ16に接触させて冷却するようにしてもよい。この場合、温度変化に伴うパイプ16の寸法変化を金属布が吸収する(寸法変化に対する追従性が良くなる)のでパイプ16の冷却速度が速くなり、且つ、パイプ16の外周面も傷付かないという効果を奏する。
【0041】
上記の例では、誘導加熱コイル28によって被加熱部分16aを加熱したが、加熱用電極を被加熱部分16aに接触させてこの被加熱部分16aを直接通電加熱してもよい。また、冷し金30(40)を2分割した個別冷し金32,34(42,44)を用いたが、3分割以上した冷し金を用いてもよい。
【0042】
図4と図5を参照して、冷し金を移動させる機構について説明する。
【0043】
図4(a)は、冷し金を矢印A方向から視て模式的に示す断面図であり、(b)は、(a)の側面図である。図5は、1つの個別冷し金を示す、(a)は、待機位置に位置する個別冷し金を示す模式図であり、(b)は、パイプに接触した直後の個別冷し金を示す模式図であり、(c)は、パイプを冷却途中の個別冷し金を示す模式図であり、(d)は、分離位置に到達した個別冷し金を示す模式図であり、(e)は、分離位置でパイプから離れた個別冷し金を示す模式図であり、(f)は、待機位置に戻った個別冷し金を示す模式図である。これらの図では、図2に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。
【0044】
冷し金30は、図5(a)に示す待機位置で被加熱部分16aに接触し始めて被加熱部分16aに接触したまま被加熱部分16aと共に所定距離だけ進行して被加熱部分16aを冷却した後、図5(e)に示す分離位置で被加熱部分16aから離れて待機位置に戻る。
【0045】
個別冷し金32はシリンダ52に接続(固定)されており、シリンダ52の伸縮によって矢印B方向(ここでは上下方向)に移動する。シリンダ52が伸びたときには個別冷し金32は被加熱部分16aに接触する。一方、シリンダが縮んだときには個別冷し金32は被加熱部分16aから離れる。同様に、個別冷し金34もシリンダ54に接続されており、その伸縮によって矢印B方向に移動する。
【0046】
シリンダ52はベース台62に固定されており、個別冷し金32は矢印B方向に自在に移動できるようにベース台62に固定されている。同様に、シリンダ54はベース台64に固定されており、個別冷し金34は矢印B方向に自在に移動できるようにベース台64に固定されている。
【0047】
ベース台62はシリンダ72に接続(固定)されており、シリンダ72の伸縮によってベース台62が矢印C方向に移動する。シリンダ72が伸びるときは、個別冷し金32はパイプ16と共にその搬送方向(矢印A方向)に所定距離だけ移動する。一方、シリンダ72が縮むときは、個別冷し金32がパイプ16の搬送方向とは反対の方向に移動する。同様に、ベース台64はシリンダ74に接続(固定)されており、シリンダ74の伸縮によって矢印C方向に移動する。シリンダ74が伸びるときは、個別冷し金34はパイプ16と共にその搬送方向に所定距離だけ移動する。一方、シリンダ74が縮むときは、個別冷し金34がパイプ16の搬送方向とは反対の方向に移動する。
【0048】
個別冷し金32,34は、シリンダ72,74が最も縮んでいる状態のときに待機位置に位置する。この待機位置に個別冷し金32,34が位置しており、かつ、シリンダ52,54が最も縮んでいるときは、図5(a)に示すように、個別冷し金32,34はパイプ16の被加熱部分16aから離れている。なお、図5(a)では個別冷し金32に関連のある部材のみが示されており、個別冷し金34に関連のある部材は示されていない。
【0049】
図5(a)の状態から(b)に示すようにシリンダ52が伸びると、図4に示すように個別冷し金32がパイプ16の被加熱部分16aに接触する。この状態のままパイプ16の移動(即ち被加熱部分16aの移動)と共に個別冷し金32が移動するように、図5(c)のようにシリンダ72を伸ばす。被加熱部分16aの移動に伴って、図5(d)に示すように、シリンダ72をさらに伸ばす。これにより図5(b)〜(d)では、被加熱部分16aが個別冷し金32に接触して冷却される。この間に、被加熱部分16aは約1200℃から150℃以下まで冷却される。シリンダ72の伸縮する距離は約25cm程度であり、従って、個別冷し金32が移動する距離も25cm程度となる。個別冷し金34についても同様である。また、冷し金30が被加熱部分16aに接触している時間は、例えば外径13mm、肉厚1.5mmのパイプを冷却するときは、約2秒間になる。
【0050】
上記のようにして個別冷し金32によって被加熱部分16aが150℃以下まで冷却された後、シリンダ52を縮ませることにより、図5(e)に示すように、個別冷し金32が被加熱部分16aから離れる。このように分離位置において個別冷し金32が被加熱部分16aから離れると、個別冷し金32は矢印A方向とは反対方向に素早く移動して待機位置に戻り、図5(f)に示す状態となる。図5(e)の状態から(f)の状態に移行する時間は例えば1秒間である。この間にもパイプ16は矢印A方向に進んでいるが、個別冷し金32が分離位置から待機位置まで素早く戻り再びパイプ16に接触する。この場合、先行する被加熱部分16a’のうち後の部分16bは、後行する被加熱部分16aとともに再び冷却される。従って、パイプ16の全ての部分は冷し金30で冷却されることとなる。冷し金30は、このような動作を繰り返しながらパイプ16を順次に冷却する。
【0051】
以上のようにして加熱・冷却するので、パイプ16などの長尺材を連続的に熱処理できる。また、容器22の内部には非酸化性ガスが充満しているので、熱処理中にパイプ16などが酸化しない。このため、熱処理後に酸化膜を除去する作業は不要となる。
【0052】
なお、上記の例では、パイプ16を加熱・冷却する場合を説明したが、線材、棒、板などを冷却できる。この場合、加熱・冷却するもの(被処理物)の形状に応じて冷し金30の形状を変更する。また、加熱・冷却するものの材質としては、ステンレス鋼などのを鋼だけでなく、銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金なども挙げられる。この場合、材質に応じて加熱温度や冷却温度などを決定する。また、冷し金30の材質は、被処理物の材質などに応じて変えてもよい。
【0053】
ところで、冷し金30に代えて、パイプ16を挟んで回転する一対のロールを用いる技術も考えられる。しかし、この技術では、複数組の一対のロールが必要となり、熱処理装置20の容器22が非常に長くなる。また、冷し金30を移動させる機構を、カムとばねを組み合せて構成してもよい。
【0054】
図6を参照して、冷し金の他の例を説明する。
【0055】
図6は、冷し金の他の例を示す斜視図である。
【0056】
冷し金は上下共に同じ形状の一対の個別冷し金80から構成される。個別冷し金80には半月状の内周面82が形成されている。この内周面82には、円周方向に沿って等間隔で2つの溝84が形成されている。これにより、内周面82には凹凸が形成されていることとなり、図3(c)に示す個別冷し金42,44と同様に、パイプ16(図3参照)に接触する際の接触圧がほぼ均一になり、パイプ16が変形しにくい。なお、溝84の数はパイプ16の形状に応じて適宜に形成してよい。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の熱処理装置(請求項1に記載の熱処理装置)によれば、容器に進入して直線状に進む長尺材の被加熱部分が加熱手段で第1温度に加熱され、その後、冷却部材で第2温度まで冷却されるので、長尺材が連続的に短時間で熱処理されることとなる。また、熱処理中に長尺材を折り曲げないので、折り曲がりにくい材質の長尺材でも連続的に熱処理できる。従って、長尺材の材質に応じて上記の第1温度や第2温度を適宜に選択することにより、焼入れや焼鈍などの熱処理を長尺材に連続的に施せる。また、真空中若しくは非酸化性ガス雰囲気中で熱処理すると共に容器内の冷却部材を被加熱部分に接触させてこの被加熱部分を冷却するので、熱処理中に長尺材が酸化せずに金属光沢が失われない。このため、熱処理後に長尺材の酸化膜を除去する作業が不要となるので、その分、熱処理費用が低下する。
【0058】
ここで、上記加熱手段は、上記被加熱部分を誘導加熱する誘導加熱コイル、及び上記被加熱部分に直接に電流を流してこの被加熱部分を加熱する加熱用電極のうちのいずれかである場合は、クリーンかつ迅速に被加熱部分を加熱できる。
【0059】
また、上記冷却部材は、所定の待機位置で上記被加熱部分に接触し始めてこの被加熱部分に接触したままこの被加熱部分と共に所定距離だけ進行してこの被加熱部分を冷却した後、所定の分離位置でこの被加熱部分から離れて上記待機位置に戻るものである場合は、冷却部材は被加熱部分に接触したままこの被加熱部分と共に所定距離だけ進行するので、冷却部材が被加熱部分を効率良くいっそう短時間で冷却できる。このため、上記した第2温度が低くても被加熱部分を第2温度まで短時間で冷却できる。
【0060】
さらに、上記冷却部材は、内部に冷却液が流れる冷し金からなるものである場合は、簡易な構成の熱処理装置となり、また、被加熱部分をいっそう効率良く冷却できる。
【0061】
さらにまた、上記冷し金は、長尺材に接触する凹凸面が形成されたものである場合は、凹凸面が長尺材に接触するので、長尺材の寸法が多少変化しても冷し金が長尺材に接触する際の接触圧がほぼ均一になる。この結果、長尺材の変形が抑えられる。
【0062】
さらにまた、上記冷し金は、それぞれが長尺材に自在に接離する複数の個別冷し金から構成されたものである場合は、長尺材の形状に応じて各個別冷し金の位置を調整しながら長尺材に接離できるので使い勝手の良い冷し金が得られる。
【0063】
さらにまた、上記個別冷し金は、長尺材の外面に倣う形状の内面がそれぞれに形成された2つの個別冷し金からなるものである場合は、例えば管状の長尺材の外面に個別冷し金の内面をほとんど隙間無くぴったりと接触できるので、管などの長尺材を冷却する際に都合が良い。
【0064】
さらにまた、上記個別冷し金を長尺材の進行方向及びその反対方向に移動させると共にこの進行方向に交差する交差方向にも移動させる、上記個別冷し金それぞれに接続されたシリンダを熱処理装置が備えた場合は、シリンダによって個別冷し金を適確に移動できる。
【0065】
さらにまた、長尺材と上記冷却部材との間に挟み込まれる金属布を熱処理装置が備えた場合は、金属布が長尺材の表面を保護するので、この表面が傷付かない。
【0066】
また、本発明の熱処理方法(請求項10に記載のパイプ製造装置)によれば、上記の第1温度や第2温度を適宜に選択することにより、焼入れや焼鈍などの熱処理を長尺材に連続的に施せる。また、非酸化性ガス雰囲気中もしくは真空中で加熱して冷却するので、熱処理中に長尺材が酸化せずに金属光沢が失われない。このため、熱処理後に長尺材の酸化膜を除去する作業が不要となり、その分、熱処理費用が低下する。
【0067】
ここで、上記冷し金を上記被加熱部分に接触させるに当たり、上記冷し金を上記被加熱部分に接触させたままこの被加熱部分と共に所定距離だけ移動させる場合は、冷し金が被加熱部分を効率良く短時間で冷却できる。
【0068】
さらに、長尺材としてステンレス製のものを用い、このステンレス製の長尺材を焼鈍温度まで加熱し、上記冷し金で150℃以下まで冷却する場合は、金属光沢を失わずにステンレス製の長尺材を焼鈍できる。
【0069】
また、本発明のパイプ製造装置(請求項13に記載のパイプ製造装置)によれば、溶接に起因する歪みを除去すると共に、析出した炭化物を溶かし込みながらパイプを連続的に製造できる。また、内部に非酸化性ガスが充満する容器若しくは内部が真空になる容器で熱処理するので、熱処理中に長尺材が酸化しない。このため、熱処理後に長尺材(パイプ)の酸化膜を除去する作業が不要となるので、その分、パイプ製造費用が低下する。また、ステンレス製の長尺材を用いる場合、この長尺材に直接に水を接触させずに冷し金で冷却するので、金属光沢を失わずにステンレス製の長尺材を焼鈍できる。
【0070】
ここで、上記冷し金は、パイプ状に成形された長尺材の直径方向からこの長尺材の外周面に接離自在に接触する複数の個別冷し金が組み合わされて構成されたものであり、この個別冷し金は、上記長尺材の外周面に倣う形状の内周面を有し、この内周面をこの長尺材の外周面に接触させてこの長尺材を冷却するものである場合は、複数の個別冷し金の内周面が長尺材の外周面に接触するので接触面積が広くなり、長尺材を効率良く冷却できる。また、個別冷し金は長尺材の外周面に接離自在であるので、長尺材を搬送する際に都合が良い。
【0071】
さらに、上記個別冷し金は、その内周面に凹凸が形成されたものである場合は、個別冷し金の内周面の凹凸がパイプ状の長尺材の外周面に接触するので、冷し金が長尺材に接触する際の接触圧がほぼ均一になる。この結果、パイプ状の長尺材が変形しにくい。
【0072】
さらにまた、上記個別冷し金は、所定の待機位置で上記被加熱部分に接触し始めてこの被加熱部分に接触したままこの被加熱部分と共に所定距離だけ進行してこの被加熱部分を冷却した後、所定の分離位置でこの被加熱部分から離れて上記待機位置に戻るものである場合は、個別冷し金は被加熱部分に接触したままこの被加熱部分と共に所定距離だけ進行するので、個別冷し金が被加熱部分を効率良く冷却できる。
【0073】
さらにまた、上記冷し金で冷却された長尺材を切断する、上記容器の外部に配置された切断機をパイプ製造装置が備えた場合は、パイプを所望の長さに切断できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパイプ製造装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】(a)は、熱処理装置の内部を模式的に示す斜視図であり、(b)は、熱処理装置で加熱して冷却されたパイプの温度を示すグラフである。
【図3】(a)は、冷し金を示す側面図であり、(b)は、(a)のB−B断面図であり、(c)は、冷し金の変形例を示す断面図である。
【図4】(a)は、冷し金を矢印A方向から視て模式的に示す断面図であり、(b)は、(a)の側面図である。
【図5】1つの個別冷し金を示す、(a)は、待機位置に位置する個別冷し金を示す模式図であり、(b)は、パイプに接触した直後の個別冷し金を示す模式図であり、(c)は、パイプを冷却途中の個別冷し金を示す模式図であり、(d)は、分離位置に到達した個別冷し金を示す模式図であり、(e)は、分離位置でパイプから離れた個別冷し金を示す模式図であり、(f)は、待機位置に戻った個別冷し金を示す模式図である。
【図6】冷し金の他の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 パイプ製造装置
12 ステンレス製の板材
14 溶接機
16 パイプ
16a 被加熱部分
20 熱処理装置
22 容器
24 入口
26 出口
28 誘導加熱コイル
30,40 冷し金
32,34,42,44 個別冷し金
32a,34a 個別冷し金の内周面
42a,44a 凹凸面
60 冷却ジャケット
62 切断機

Claims (16)

  1. 長尺材が進入する入口及び該入口から進入して直線状に進んだ長尺材が排出される出口が形成された、その内部に非酸化性ガスが充満する容器と、
    前記入口から進入した長尺材のうちの所定の被加熱部分を所定の第1温度に加熱する、前記容器の内部に配置された加熱手段と、
    該加熱手段によって加熱された前記被加熱部分に接触しながら該被加熱部分を所定の第2温度まで冷却する、前記容器の内部に配置された冷却部材と、
    長尺材と前記冷却部材との間に挟み込まれる金属布とを備えたことを特徴とする熱処理装置。
  2. 前記加熱手段は、
    前記被加熱部分を誘導加熱する誘導加熱コイル、及び前記被加熱部分に直接に電流を流して該被加熱部分を加熱する加熱用電極のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置。
  3. 前記冷却部材は、
    所定の待機位置で前記被加熱部分に接触し始めて該被加熱部分に接触したまま該被加熱部分と共に所定距離だけ進行して該被加熱部分を冷却した後、所定の分離位置で該被加熱部分から離れて前記待機位置に戻るものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱処理装置。
  4. 前記冷却部材は、
    内部に冷却液が流れる冷し金からなるものであることを特徴とする請求項1,2,又は3に記載の熱処理装置。
  5. 前記冷し金は、
    長尺材に接触する凹凸面が形成されたものであることを特徴とする請求項4に記載の熱処理装置。
  6. 前記冷し金は、
    それぞれが長尺材に自在に接離する複数の個別冷し金から構成されたものであることを特徴とする請求項4又は5に記載の熱処理装置。
  7. 前記個別冷し金は、
    長尺材の外面に倣う形状の内面がそれぞれに形成された2つの個別冷し金からなるものであることを特徴とする請求項6に記載の熱処理装置。
  8. 前記個別冷し金を長尺材の進行方向及びその反対方向に移動させると共に該進行方向に交差する交差方向にも移動させる、前記個別冷し金それぞれに接続されたシリンダを備えたことを特徴とする請求項5,6,又は7に記載の熱処理装置。
  9. 非酸化性ガス雰囲気中で長尺材をその長手方向に搬送しながら該長尺材のうちの所定の被加熱部分を所定の第1温度に加熱すると共にこの第1温度に加熱され終った被加熱部分に金属布を介して冷し金を接触させて該被加熱部分を所定の第2温度まで冷却することを特徴とする熱処理方法。
  10. 前記冷し金を前記被加熱部分に接触させるに当たり、
    前記冷し金を前記被加熱部分に接触させたまま該被加熱部分と共に所定距離だけ移動させることを特徴とする請求項9に記載の熱処理方法。
  11. 長尺材としてステンレス製のものを用い、このステンレス製の長尺材を焼鈍温度まで加熱し、前記冷し金で150℃以下まで冷却することを特徴とする請求項9又は10に記載の熱処理方法。
  12. 板状の長尺材の幅方向両端部同士を溶接してこの長尺材をパイプ状に成形する溶接機と、
    該溶接機によってパイプ状に成形された長尺材が進入する入口及び該入口から進入して直線状に進んだ長尺材が排出される出口が形成された、その内部に非酸化性ガスが充満する容器と、
    前記入口から進入した長尺材のうちの所定の被加熱部分を焼鈍温度に加熱する、前記容器の内部に配置された加熱手段と、
    該加熱手段によって加熱された前記被加熱部分に接触しながら該被加熱部分を所定温度まで冷却する、前記容器の内部に配置された冷し金と、
    前記被加熱部分と前記冷し金との間に挟み込まれる金属布とを備えたことを特徴とするパイプ製造装置。
  13. 前記冷し金は、
    パイプ状に成形された長尺材の直径方向から該長尺材の外周面に接離自在に接触する複数の個別冷し金が組み合わされて構成されたものであり、
    該個別冷し金は、
    前記長尺材の外周面に倣う形状の内周面を有し、該内周面を該長尺材の外周面に接触させて該長尺材を冷却するものであることを特徴とする請求項12に記載のパイプ製造装置。
  14. 前記個別冷し金は、
    その内周面に凹凸が形成されたものであることを特徴とする請求項13に記載のパイプ製造装置。
  15. 前記個別冷し金は、
    所定の待機位置で前記被加熱部分に接触し始めて該被加熱部分に接触したまま該被加熱部分と共に所定距離だけ進行して該被加熱部分を冷却した後、所定の分離位置で該被加熱部分から離れて前記待機位置に戻るものであることを特徴とする請求項13又は14に記載のパイプ製造装置。
  16. 前記冷し金で冷却された長尺材を切断する、前記容器の外部に配置された切断機を備えたことを特徴とする請求項12から15までのうちのいずれか一項に記載のパイプ製造装置。
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