JP4114346B2 - 高Cr溶鋼の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高Cr溶鋼の製造方法に係わり、特に、ステンレス鋼等の高Cr溶鋼の溶製に際して、安価なCr源を最大限に利用すると共に、所謂「連々鋳」を行う連続鋳造機へ溶鋼を途切れることなく供給する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にステンレス鋼で代表される高Cr溶鋼は、フェロクロム、ステンレス・スクラップを溶解して高Cr溶鉄を得る高Cr溶鉄の溶製炉と、それに続いて高Cr溶鉄の脱炭精錬を行う脱炭精錬設備とを順次経て(あるいは、引き続き、さらに減圧下で脱炭精錬する仕上げ脱炭精錬(二次精錬という)を経て)、目標とする成分に調整した後に鋳造することで製造されている。このような高Cr溶鋼の製造コストは、大部分がCr及びNi原料のコストで占められている。そのため、一般には、Cr源およびNi源としてフェロクロム等の合金原料よりも安価な鉄スクラップが多量に使用されているが、製造コストの低減には、さらに該スクラップの使用量を増大することが重要となる。しかしながら、スクラップ量を増大すると、前記高Cr溶鉄の溶製時間は、スクラップ溶解に必要な熱量の供給のために昇熱時間が延びるので、今までより長くなってしまう。
【0003】
一方、高Cr溶鋼の製造に際しては、歩止を高めることもコスト面で重要であり、そのためには前記鋳造に連続鋳造を利用することが多い。しかも、その連続鋳造は、少なくとも2ヒート(脱炭精錬設備又は二次精錬設備での1回の精錬を1ヒートという)以上の精錬で得た溶鋼を、途切れることなく供給して行う「連々鋳」で行なわれる。その場合、連続鋳造の速度にあわせて溶鋼を保持した取鍋を連続鋳造機へ搬送するには、前工程での精錬時間の短縮が必要となり、そのため、前記高Cr溶鉄の溶製炉へのスクラップ投入量は制限されることになる。
【0004】
ところで、連続鋳造機へ溶鋼を途切れずに供給できる技術として、例えば、特開昭57−161020号公報に示されたステンレス鋼の溶製方法が挙げられる。それは、酸化性雰囲気下でフェロクロム、ステンレス・スクラップを溶解して中炭素高Cr溶鉄を溶製する転炉型反応容器(高Cr溶鉄の溶製炉)と脱炭精錬設備との間に加熱機能を有した溶湯保持炉を別途配置することで、スクラップ溶解量の確保と連続鋳造の速度にあわせて脱炭精錬設備への高Cr溶鉄の供給を同時に可能とするものである。そして、この技術では、溶湯保持炉の耐火物溶損を防止するために、該溶湯保持炉内で溶湯中のCrの酸化を生じさせることを提案している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、本発明者らが試験操業によって確かめたところ、溶湯保持炉内で溶湯中のCrを酸化させると、生成したCr酸化物がスラグ中に移行してスラグの融点が高まり、スラグの耐火物に対する浸食性は低下するが、一方において、この高融点スラグが炉壁や出湯口、あるいは排滓口に付着して炉の内容積を低下させたり、あるいは出湯や排滓を著しく妨げるという、操業上軽視すべからざる問題を引き起こすことが判明した。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑み、溶湯保持炉を用いても、過剰のCr酸化や耐火物浸食を生じさせずに、且つ連続鋳造も含めて円滑な操業が可能な高Cr溶鋼の製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らは、
(1)高Cr溶鉄の溶製炉を用いて鉄源、Cr源及び炭素源を還元雰囲気下で溶解し、該溶製炉からの出湯時に得られた1400〜1550℃、Cr含有量10〜40質量%、C含有量4〜7質量%の高炭素高Cr溶鉄を加熱手段を備えた溶湯保持炉に保持した後、該溶湯保持炉より、脱炭精錬設備における脱炭精錬のスケジュールに合わせて必要な量を該脱炭精錬設備へ出湯し、脱炭精錬してCrを9〜30質量%にすることを特徴とする高Cr溶鋼の製造方法、
(2)前記脱炭精錬設備において脱炭精錬して得られた高Cr溶鋼を、さらに減圧機能を有する第二の脱炭精錬設備にて仕上げ脱炭精錬することを特徴とする(1)記載の高Cr溶鋼の製造方法、
(3)前記Cr源にCr鉱石、Cr含有スラグ、Cr含有ダスト、Cr含有スラッジ、Cr含有耐火物屑の1種または2種以上を用い、及び前記溶製炉に溶融還元炉を使用し、該Cr酸化物を主体とする原料を溶融還元して該溶製炉からの出湯時に1400〜1550℃、Cr含有量10〜40質量%、C含有量4〜7質量%の高炭素高Cr溶鉄にすることを特徴とする(1)又は(2)に記載の高Cr溶鋼の製造方法、
(4)前記溶湯保持炉にて保持中の高炭素高Cr溶鉄に、固体金属原料を添加して加熱、溶解することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の高Cr溶鋼の製造方法、
(5)前記溶製炉を複数基設け、各溶製炉にて溶製された高炭素高Cr溶鉄を前記溶湯保持炉にて混合することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の高Cr溶鋼の製造方法を提案する。
【0008】
本発明では、高Cr溶鋼の製造において、最初に高Cr溶鉄として、安価なCr源を用いて還元性雰囲気下で高炭素高Cr溶鉄を溶製し、得られた高炭素高Cr溶鉄を、別途設けた溶湯保持炉で保持するようにしたので、該溶湯保持炉で過剰のCrの酸化が起きず、しかも保持炉の耐火物浸食やスラグの付着が防止できるようになる。その結果、連続鋳造を「連々鋳」で行なっても、連鋳機への溶鋼供給の途切れが解消され、安価な原料を選択しつつ、脱炭精錬時間と連続鋳造時間とのマッチングを図るという高Cr溶鋼製造への溶湯保持炉の導入目的が初めて実現可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記の従来技術において、溶湯中のCrを酸化させないと溶湯保持炉(以下、単に保持炉という)の耐火物の浸食を防止できない理由について詳細に調査した。その結果、上記従来技術では、高Cr溶鉄の溶製炉で酸化性雰囲気で原料を溶解して中炭素高Cr溶鉄を製造していることに主たる原因があることを突き留めた。
【0010】
すなわち、酸化性雰囲気で原料を溶解しているために、高Cr溶鉄(溶湯ともいう)の溶製過程で脱炭反応の起きることが避けられない。そして、溶湯のC濃度が低下すると、溶湯の融点が上昇するために、溶湯を昇熱する必要がある。このため、高Cr溶鉄の溶製炉からの出湯温度は、1580〜1650℃もの高温となり、また保持炉においても、このような溶湯を凝固させずに保持するには、溶湯を1590〜1620℃に維持する必要がある。このような高温条件は、転炉や電気炉等の製鋼炉にも匹敵する高温であり、スラグによる耐火物の浸食が問題となるのである。
【0011】
したがって、上記従来例のように、保持炉内でスラグ中にCr酸化物を生成させて、スラグの融点を上昇させ、その浸食性を低減することが必要となる。しかしながら、スラグ中にCr酸化物を生成させると、保持炉の操業に重大な支障を来すことは先に述べた通りである。
【0012】
そこで、本発明者らは、高Cr溶鉄の溶製炉にて酸化精錬して出湯される溶湯のC含有量を増大させて、溶湯の融点を降下させることにより、保持炉に装入する溶湯の温度を低下することを考えた。C含有量の増大には、高Cr溶鉄の溶製炉に装入する原料のC含有量を増大する方法と、高Cr溶鉄の溶製炉から溶湯を出湯する際に、溶湯に加炭材を添加する方法とが考えられるので、その両方を試みた。しかしながら、いずれの方法でも溶湯の融点を降下させることはできたが、保持炉内での不要なCr酸化物の生成を防止することができなかった。それどころか、溶湯の温度が低いために、溶湯中のCr酸化がより生じ易くなり、スラグ中へのCr酸化物の生成量が増大する場合も観察された。
【0013】
そのため、本発明者らは、さらに調査を続け、酸化精錬して出湯された溶湯中には平衡状態よりも過飽和な酸素が含有されており、この酸素が、保持炉にて溶湯が保持されている間に、該溶湯中のCrを徐々に酸化することを見出した。特に、保持炉に誘導加熱装置を設け、電力で溶湯の保熱を行う場合には、溶湯の温度が目標温度に対して小幅ながら頻繁に上下することがあり、溶湯温度が低下する際に、Cr酸化物の生成が促進されることが明らかになった。そこで、本発明者らは、高Cr溶鉄の溶製炉では還元性雰囲気下で高炭素高Cr溶鉄を溶製し、該高炭素高Cr溶鉄中の酸素を低減することを想到し、本発明を完成させたのである。
【0014】
上述の理由から、本発明では、保持炉に装入する前の高炭素高Cr溶鉄を還元性雰囲気の下で溶製することを必須要件とする。還元性雰囲気で高炭素高Cr溶鉄を溶製する方法としては、アークや誘導溶解等の電気による加熱源、あるいは各種燃料を燃焼した火炎による加熱源を有する炉において、雰囲気を還元性に保持した上でCr含有原料、炭素源を鉄源と共に溶解する方法でも良いが、Cr鉱石、Cr含有スラグ、ダスト、スラッジ、Cr含有耐火物屑等を還元剤である炭素源と共に炉内に装入し、還元性雰囲気を利用して溶融還元するのがより好ましい。このような溶融還元を可能にする炉としては、特公平02−40723号公報に記載される竪型炉、あるいは特公平04−38806号公報に記載される転炉型溶融還元炉等が好ましい。なお、保持炉に装入する溶湯は、1基の溶融還元炉にて溶製されたものだけでなく、複数の溶融還元炉にて溶製されたものを合わせ湯して保持炉に装入したり、保持炉において直接混合してから保持してもかまわない。
【0015】
高Cr溶鉄の溶製炉で還元性雰囲気で溶製される高炭素高Cr溶鉄は、当該溶製炉からの出湯時には温度が1400〜1550℃、Cr含有量が10〜40質量%、C含有量が4〜7質量%程度である。温度が1550℃を超えると高炭素高Cr溶鉄浴面上のスラグによる溶湯保持炉の耐火物の損耗が著しく増大し好ましくない。一方、1400℃未満であると、前記溶製炉から溶湯保持炉に移送する間に溶湯が凝固する恐れがある。また、Cr含有量が10質量%未満では、ステンレス鋼等の高Cr鋼の原料として不適当であり、40質量%超えでは、そのような高Cr濃度の溶湯を溶融還元法で製造するのが困難である上、保持炉でCrの酸化が発生し易いので好ましくないからである。なお、Cr含有量は、より好ましくは20〜30質量%とするのが良い。さらに、C含有量は、溶湯の融点を下げるため及び溶湯中の過飽和酸素を低減するために、4質量%以上あることが好ましい。一方、7質量%を超える溶湯を溶融還元法で製造するのは困難であるので、C含有量は、4〜7質量%とする。
【0016】
次に、前記保持炉は、装入された高炭素高Cr溶鉄を、次工程の脱炭精錬設備に供給するまでの不定期間、所定の温度に保持したり、あるいは後述するように当該保持炉内で固体金属原料を添加して溶解する必要性から、溶湯の加熱機能を有する必要がある。溶湯の加熱機能を有する保持炉としては、従来より公知の混銑炉が代表として挙げられるが、熱効率及び温度調整の容易さ並びに迅速性の観点から、前記特開昭57−161020号公報において言及されている電気式加熱装置を有する保持炉が好ましい。そのような保持炉としては、特公昭50−25666号公報に開示される溝炉型誘導加熱装置を設けた溶湯保持炉が特に適する。
【0017】
また、そのような保持炉においては、安価な鉄源、Cr源あるいはNi源として各種の固体金属原料を添加して溶解することが好ましい。そのような固体金属原料としては、鋼スクラップ、特にステンレス鋼のスクラップが特に好ましいが、それらに限定するものではない。例えば、鋳型屑、冷銑塊(普通銑又はCr銑鉄)、電解ニッケル、フェロクロム等を必要に応じて使用しても良い。なお、該固体金属原料の添加量は、前工程からの高Cr溶鉄の供給能力と溶湯保持炉の加熱能力とを勘案して、特に次工程の脱炭精錬のスケジュールを阻害しないように定めることが必要である。これは、本発明が連続鋳造設備の操業に合わせて定められた脱炭精錬設備の精錬スケジュールが、高Cr溶鉄の溶製炉の能力によって阻害されないようにすることを目的とするからである。
【0018】
脱炭精錬設備は、主として大気圧下での脱炭精錬を行う脱炭精錬設備として従来より多用されている転炉やAOD炉が好ましく使用でき、その後にさらに仕上げ脱炭を行う場合は、減圧下あるいは調整された雰囲気下での脱炭精錬を行う第二の脱炭精錬設備として、やはり従来より使用されているVOD設備やRH真空脱ガス設備等が好ましく使用できる。
【0019】
以下に、本発明に係る高Cr溶鋼の製造方法のプロセス・フローの例を、図面を参照して説明する。図1は、高炉にて製造された溶銑、Cr鉱石及び石炭等の還元材を用いて溶融還元する転炉型溶融還元炉によって高炭素高Cr溶鉄を溶製し、これによって得られた溶湯を保持炉に保持し、次工程である脱炭精錬設備での精錬スケジュールに応じて、保持炉から脱炭精錬設備に溶湯を供給する例である。この例では、脱炭精錬設備は、前記高炭素高Cr溶鉄の一次脱炭精錬を行う転炉と、さらに仕上げ脱炭精錬(二次脱炭精錬)するVOD設備とから成り立っている。これらの脱炭精錬設備で脱炭精錬と所定の成分への調整を済ませた高Cr溶鋼は、連続鋳造設備において鋳造され、スラブやブルーム等の鋳片とされる。また、保持炉では、安価な固体金属原料として、図に例示するように、スクラップを装入して溶解することもできる。該保持炉でのスクラップの溶解は、安価な原料の使用によるコストの削減の他、溶融還元炉からの高炭素高Cr溶鉄の供給速度が不足する場合の補完手段としての機能も発揮する。
【0020】
図2は、高Cr溶鉄を溶製する溶融還元炉として、上記図1で説明した転炉型溶融還元炉に加えて、Cr含有スラグ、Cr含有ダスト、Cr含有スラッジ、Cr含有耐火物屑等をコークス等の還元剤で還元する竪型炉式溶融還元炉を併設した例である。高Cr鋼の製造を行う製鋼工場及びその下流工程では、種々のCr含有廃棄物やCr含有副産物が発生する。それらのうち、スクラップは、前記保持炉や脱炭精錬設備で溶解することができるが、Cr含有スラグ、Cr含有ダスト、Cr含有スラッジ、Cr含有耐火物屑等は、Crが酸化しており、還元工程を経なければ高Cr鋼の原料に再生できない。そこで、このような物質を溶融還元炉に装入して含Cr溶鉄を製造する。これらの物質は、転炉型溶融還元炉において還元しても良いが、転炉型溶融還元炉の操業を阻害しないように、図2に示すような専用の竪型炉式溶融還元炉を設けることがより好ましい。
【0021】
図3は、図1で説明した脱炭精錬設備をAOD設備のみに簡略化した例である。AOD設備は、一次脱炭精錬と、不活性ガスによって希釈した酸素を用いた二次脱炭精錬を連続して行うことができる。従って、真空脱ガス設備によらなければ製造が困難な極低炭素Cr鋼を製造するのでなければ、図3に示すように、AOD設備で脱炭を行うのが好ましい。
【0022】
【実施例】
次に、本発明の実施例を、従来の工程による比較例と比較して示す。本発明の実施例(以下、本発明例と呼ぶ)は、前記した図2に示す工程により行った。ここに、転炉型溶融還元炉は、炉容量185tonで上吹き酸素ランスと、底吹き酸素羽口とを備えた上底吹き転炉形式の炉である。また、Cr含有スラグ、ダスト、スラッジ、耐火物屑等を溶融還元製錬する竪型溶融還元炉を併設してある。保持炉は、容量1000tonで、溝型誘導加熱設備を備える炉である。脱炭精錬設備は、炉容量185tonの上底吹き式転炉である一次脱炭精錬設備と、二次脱炭精錬設備としての容量180tonの取鍋内溶鋼を精錬できるVOD設備とからなる。
【0023】
一方、比較例は、図4に示すように、上記の本発明例から保持炉を除いた構成となっている。
【0024】
これらの本発明例及び比較例における溶鉄・溶鋼の流れを比較して図5に示す。比較例である従来法では、溶融還元設備からの高炭素高Cr溶鉄の供給が連続鋳造の適切な時期に間に合わない時には、脱炭精錬設備で、Fe−Cr法(溶銑に固体のフェロクロムを溶解し、脱炭精錬して高Cr鋼を製造する方法)によって高Cr溶鋼の製造を余儀なく行っていた。この方法では、原料として溶銑と高価なフェロクロムとを必要とするため、コストが嵩む問題があった。また、脱炭精錬設備では、フェロクロムの溶解に熱を必要とするため、安価なスクラップを溶解する余裕がなく、この点でもコストが増大していた。さらに、竪型炉式溶融還元炉からの高炭素高Cr溶鉄は発生量が少ない上に、不定期に発生するため、大部分はこれを脱炭精錬の原料として工程に組み込むことが困難であったため、鋳銑機によって鋳造し冷銑塊として貯蔵し、必要に応じて脱炭精錬工程の原料に使用せざるを得なかった。
【0025】
これに対して、本発明例によれば、転炉型溶融還元炉で溶製された高炭素高Cr溶鉄も竪型炉式溶融還元炉にて発生した高炭素高Cr溶鉄も共に保持炉で保持し、これをバッファとして脱炭精錬設備にコンスタントに高炭素高Cr溶鉄を供給できるため、脱炭精錬設備においてコストの嵩むFe−Cr法による精錬を行う必要がなくなった。
【0026】
図6に、本発明例と比較例での製造される高Cr溶鋼が使用する各原料の構成割合(ただし金属成分に換算したもの)を比較して示す。本発明例では、溶銑とフェロクロムの使用比率を低くし、安価なスクラップを多量に使用できること、及び竪型炉式溶融還元炉にて発生した高炭素高Cr溶鉄を溶融状態のまま使用できることから、安価原料の使用比率を大幅に増大することができた。また、本発明例により1ヶ月の試験操業を行った過程では、保持炉内にて高酸化Cr濃度のスラグが発生して溶湯保持炉の操業を妨げる現象は発生せず、また耐火物の溶損も認められなかった。比較のために、特開昭57−161020号公報に記載される方法を模して、図7に示すように、酸化精錬炉にて高炭素フェロクロムを脱炭精錬して中炭素高Cr溶鉄とし、これを保持炉に保持する操業を行ったところ、3日目で保持炉内に高融点のスラグの凝固物が発生し始め、1週間経過した時点で、このスラグが肥大して出湯口を完全に閉塞してしまい、操業を継続することが困難となった。
【0027】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明により、高Cr溶鋼の製造に溶湯保持炉を導入しても、そこでの過剰なCr酸化、耐火物の浸食、スラグの付着が起きずに、連続鋳造も含めて円滑な操業が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高Cr溶鋼の製造方法を実施する工程例を示す流れ図である。
【図2】本発明に係る高Cr溶鋼の製造方法を実施する図1とは別の工程例を示す流れ図である。
【図3】本発明に係る高Cr溶鋼の製造方法を実施する図1及び図2とは異なる工程例を示す流れ図である。
【図4】本発明の効果を確認するために行なった比較例の工程を示す流れ図である。
【図5】図2に示した本発明に係る工程及び図4に示した比較例の工程での溶鉄・溶鋼の移動(流れ)を説明する図である。
【図6】図2に示した本発明に係る工程及び図4に示した比較例の工程で使用した原料の構成を示す図である。
【図7】特開昭57−161020号公報記載の技術を実施する工程の流れ図である。
Claims (5)
- 高Cr溶鉄の溶製炉を用いて鉄源、Cr源及び炭素源を還元雰囲気下で溶解し、該溶製炉からの出湯時に得られた1400〜1550℃、Cr含有量10〜40質量%、C含有量4〜7質量%の高炭素高Cr溶鉄を加熱手段を備えた溶湯保持炉に保持した後、該溶湯保持炉より、脱炭精錬設備における脱炭精錬のスケジュールに合わせて必要な量を該脱炭精錬設備へ出湯し、脱炭精錬してCrを9〜30質量%にすることを特徴とする高Cr溶鋼の製造方法。
- 前記脱炭精錬設備において脱炭精錬して得られた高Cr溶鋼を、さらに減圧機能を有する第二の脱炭精錬設備にて仕上げ脱炭精錬することを特徴とする請求項1記載の高Cr溶鋼の製造方法。
- 前記Cr源にCr鉱石、Cr含有スラグ、Cr含有ダスト、Cr含有スラッジ、Cr含有耐火物屑の1種または2種以上を用い、及び前記溶製炉に溶融還元炉を使用し、該Cr酸化物を主体とする原料を溶融還元して該溶製炉からの出湯時に1400〜1550℃、Cr含有量10〜40質量%、C含有量4〜7質量%の高炭素高Cr溶鉄にすることを特徴とする請求項1又は2に記載の高Cr溶鋼の製造方法。
- 前記溶湯保持炉にて保持中の高炭素高Cr溶鉄に、固体金属原料を添加して加熱、溶解することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高Cr溶鋼の製造方法。
- 前記溶製炉を複数基設け、各溶製炉にて溶製された高炭素高Cr溶鉄を前記溶湯保持炉にて混合することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高Cr溶鋼の製造方法。
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