JP4113377B2 - 超音波診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波診断装置に係り、特に対象組織の変位量を測定する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
対象組織の変位量を測定するには、対象組織に超音波を繰り返し送受信して、受信信号の位相を比較し、その位相差から変位量を求める方法が用いられる。図6は、上記方法を説明するため、時間とともに変位する対象組織11に対して、探触子22から超音波13を繰り返し送信し、対象組織11から超音波15が反射され探触子22に戻る様子を示したものである。(a),(b)は、それぞれ時刻T=t1,t2における対象組織11の変化状態を示す。対象組織11は時間経過とともに探触子22側に変位し、それに応じて対象組織11の表面と探触子22の間隔が時間経過とともに小さくなる。
【0003】
そこで、時刻T=t1において超音波13を送信し、対象組織11の表面から反射された超音波15を探触子22が受信した信号波形を#1とする。同様に時刻T=t2に送信した超音波に対応する受信信号波形を#2とする。
【0004】
図7は、横軸に時間、縦軸に振幅をとり、対象組織11の表面に相当する受信信号波形#1,#2を示したものである。それぞれの受信信号波形についての時間軸の原点は、それぞれの超音波の送信時刻を基準に取った。図7に示すように、対象組織11の変位の大きさに応じ、これらの受信信号#1,#2の相互間に位相差が生ずる。例えば受信信号#1,#2のそれぞれにつき、その波形の立上り側のゼロクロス点の相互間の差で位相差Δθ21を求めることができる。位相差Δθ21の大きさは、図6から理解できるように、対象組織11と探触子22との距離、つまり対象組織11の変位量に基づくものである。ここで、2πの位相差が超音波の1波長の長さに相当するので、求められた位相差から変位量を算出できる。したがって、対象組織に超音波を繰り返し送受信して、受信信号の位相を比較し、その位相差から刻々と変化する変位量の時間変化を求めることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この方法では、変位量が大きくなり、受信信号相互間の位相差が±π以上となると、以下に述べる位相差に関する公知の「折り返し」の問題が起こり、測定可能な最大変位量に制限が出る。
【0006】
図8は、位相差に関する折り返しの問題を説明するため、受信信号相互間の位相差が±π以上となる2個の受信信号#1と#3を、図7と同じ表し方で示したものである。図8において、受信信号#1の立上り側ゼロクロス点を点Rとすると、信号波形の1波長は2πに相当するので、受信信号#1を基準とした位相差の識別は、点Rを中心とした±πの位相差の範囲に対応する点Sと点Tの範囲内でのみ有効に行うことができる。いま、対象組織の変位量が大きく、その変位量に対応した受信信号#3の変化が、受信信号#1との相互間の位相差Δθ31がπを超えているときは、受信信号#1に関する位相差の有効識別範囲の点Sと点Tの範囲外に、受信信号#3の真のゼロクロス点Uがくる。このとき、受信信号#1に関する位相差の有効識別範囲の点Sと点Tの範囲内でも、受信信号#3は他のゼロクロス点Vをもつ。したがって、いまの場合、受信信号#1のゼロクロス点Rから位相差Δθ31だけ離れた真のゼロクロス点Uでなく、位相差[2π−Δθ31]だけ離れた他のゼロクロス点Vを位相差の算出に用いてしまう。
【0007】
このように、位相差が±πを超えると、観測する位相差の折り返しが起こるために、位相差から変位量を求める方法は、位相差に関し±πの範囲の測定に制限される。したがって、測定可能な最大変位量は、超音波の波長をλとして、±λ/2の範囲に制限され、これを超える大きな変位量を測定することができない。
【0008】
超音波の周波数を低くして、波長λを大きくすれば大きな変位量の測定が可能になるが、変位量の測定精度が低くなる。
【0009】
一方、超音波の送信する間隔を短くし、変位量の測定時刻t1,t2の間隔を短くすれば、送信間隔内の対象組織の変位量が小さくなるので、位相差を±πの範囲に納めるようにすることができる。しかし、超音波のパルス繰り返し時間(Pulse Repetition Time:PRT)を短くすることになり、周知のように、対象組織の診断深さが浅くなる制限が出る。
【0010】
また、対象組織の測定点、例えば血管の前壁にトラッキングゲートを設定し、血管壁の変位を逐次検出するトラッキング機能において、位相検出を用いて血管前壁の変位の逐次検出を行うときは同様の問題が起こることがある。すなわち、この場合のトラッキングゲートの変位計測可能な窓幅は、超音波の波長をλとして、±λ/2であるので、血管前壁が±λ/2以上変位するときは、トラッキングゲートはその変位に追随できないか、あるいは誤った動作をする。
【0011】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題を解決し、変位量の大きい対象組織の変位を精度よく測定する超音波診断装置を提供することである。他の目的は、対象組織の診断深さを変えることなく、変位量の大きい対象組織の変位を精度よく測定する超音波診断装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る超音波診断装置は、対象組織に対し、送受信シーケンスに従って、第1周波数の超音波を繰り返し送受信して複数の第1受信信号を出力し、前記第1周波数より低い第2周波数の超音波を繰り返し送受信して複数の第2受信信号を出力する送受信手段と、前記複数の第1受信信号についての相互間の第1位相差と、前記複数の第2受信信号についての相互間の第2位相差とに基づいて、対象組織の変位量を演算する変位量演算手段と、を備える。
【0013】
この構成により、短い波長の第1周波数の超音波による計測と、長い波長の第2周波数の超音波による計測の両者の利点を生かして、変位量の大きい対象組織の変位を精度よく測定することができる。変位量は、位置、速度などの測定量を含む。
【0014】
ここで、前記変位量演算手段は、前記複数の第1受信信号の相互間の波形比較により前記第1位相差を演算する第1位相差演算部と、前記複数の第2受信信号の相互間の波形比較により前記第2位相差を演算する第2位相差演算部と、前記第2位相差に基づいて、前記第1位相差に関する折り返しの有無および回数を判定する判定部と、前記判定部の判定結果に従い、前記第1位相差に基づいて前記対象組織の変位量を演算する変位量演算部と、を備える。
【0015】
この構成により、第1周波数の超音波についてその位相差の折り返しにより識別できない部分があるか否か、あるときは何回折り返しがあるかを判別する。その結果を用いることで、第1周波数の超音波のPRTを変えることなく、第1周波数の超音波について位相差の折り返しで制限される測定可能な最大変位量を超える分を、第2周波数の超音波を用いた位相差の測定で補うことができる。したがって対象組織の診断深さを変えることなく、変位量の大きい対象組織の変位を精度よく測定することができる。
【0016】
望ましくは、前記送受信シーケンスは、前記第1周波数の超音波と前記第2周波数の超音波とを交互に送信する送受信シーケンスである。
【0017】
この構成により、第1位相差と第2位相差とを相互に近接した時刻で測定できるので、それらの測定値の同時性がよく、対象組織の変位量を正確に演算できる。また、対象組織の変位量を短時間で演算できる。
【0018】
望ましくは、前記折り返し回数は、前記第1位相差の1回の折り返し当たりの単位変位量で前記第2位相差に相当する参照変位量を除することにより算出される整数である。
【0019】
望ましくは、前記変位量演算部は、前記第1位相差から演算される見かけの変位量と、前記折り返し回数に前記単位変位量を乗じて得られる折り返し変位量とに基づいて前記対象組織の変位量を演算する。
【0020】
ここで見かけ変位量は、位相差の折り返しが生じている状態での第1位相差に基づいて演算される見かけの変位量である。したがって、見かけ変位量と、折り返しの生じた大きな変位量すなわち折り返し変位量とから、対象組織の変位量を得ることができる。
【0021】
望ましくは、前記見かけ変位量は、前記位相差の折り返しが生じない変位量観測範囲である変位計測窓を、変位方向に前記折り返し変位量分だけシフトさせて演算される。
【0022】
ここで変位計測窓は、長さの次元では、第1超音波の波長をλとして、±λ/2の幅を有するものとできる。また、±λ/2の幅に対応する時間幅または位相幅であってもよい。
【0023】
望ましくは、前記見かけ変位量は、前記変位計測窓のシフトにあわせ、上記変位計測窓内における変位前の第1受信信号の変位量測定のための特徴点の位置を、変位方向に前記折り返し変位量分だけシフトさせ、上記シフトさせた変位計測窓内における変位前後の前記特徴点の位置の差から演算される。
【0024】
ここで特徴点の位置は、第1受信信号のゼロクロス点の位置とすることができる。また、第1受信信号の他の点、例えばピーク点の位置等を特徴点の位置とすることもできる。位置は、距離についての位置の他、時間、位相についての位置でもよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に図面を用い、本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1は、本発明の原理説明図である。(a)は、縦軸に振幅、横軸に時間を取り、変位前の対象組織に対し第1周波数の超音波を送信して得られた第1受信信号102aを実線で、変位後の対象組織に対し第1周波数の超音波を送信して得られた第1受信信号102bを破線で示してある。同様に、(b)は、第1周波数より低い第2周波数の超音波を変位前の対象組織に対し送信して得られた第2受信信号104aを実線で、変位後の対象組織に対し第2周波数の超音波を送信して得られた第2受信信号104bを破線で示してある。(a)と(b)の時間軸の原点は、同じ位置として配列した。
【0026】
すでに図7で説明したように、対象組織の変位量は、変位前の受信信号のゼロクロス点と変位後の受信信号のゼロクロス点との相互間の変化から求められる。図1(a)の第1受信信号102a,102bの相互間においては、変位前後でゼロクロス点が点Rから点Uへ変化し、図1(b)の第2受信信号104a,104bの相互間においては、変位前後でゼロクロス点が点Pから点Qへ変化している。ここで、第1受信信号102a,102b相互間におけるゼロクロス点の変化は±πを超えているので、図8で説明した位相差の折り返し問題が起こっている。したがって、真のゼロクロス点はUであるが、従来技術では、位相差の折り返しによって現れる他のゼロクロス点Vを観測してしまい、ゼロクロス点Vに基づいて位相差の算出を行ってしまう。
【0027】
第1周波数の超音波の変位量計測においては、位相差の折り返しが起こらない範囲、つまり±λ/2の範囲で高精度の計測ができる。したがって、±λ/2の範囲が、変位量を有効に観測できる変位計測窓である。
【0028】
これに対し、第2周波数は第1周波数より周波数が低く、(b)に示すように第2受信信号におけるゼロクロス点の変化について位相差の折り返しが起こっていない。そこで、変位前後の2つの第2受信信号のゼロクロス点の変化、すなわち点Pと点Qとの相互間の位相差から変位量を演算することができる。この変位量を参照変位量Dと呼ぶことにする。参照変位量は、全体変位量を表しているが、周波数の低い第2周波数の超音波を用いて算出するので、第1周波数の超音波を用いて算出する値に比べて、精度が低下する。
【0029】
図1(a)において、上記のように点Rと点Uとの間の位相差はπを超え、位相差の折り返しが起こっているので、位相差の折り返しの回数を求める。位相差の折り返しは、±πを単位として起こる。変位量の次元で換算すると±λ/2を単位として起こる。したがって、参照変位量Dをλ/2で除した整数をmとすると、mが位相差の折り返し回数になる。図示した例では、λは第1周波数の超音波の波長であるので、(a)と(b)を比較して、位相差の折り返し回数mは1である。
【0030】
いま、位相差の折り返し回数をmとしてm*(±λ/2)に相当する変位量を、折り返し回数に相当する変位量という意味で折り返しで生じた変位量あるいは単に折り返し変位量ということにする。
【0031】
全変位量から折り返しで生じた変位量を差し引いた変位量の大きさをΔdと表すとすると、Δdは±λ/2の範囲の大きさ、すなわち第1受信信号の変位計測窓内の大きさであり、この部分は高精度の変位量計測ができる。Δdは高精度ではあるが、上記のように全変位量を表さず、±λ/2の範囲の成分のみを表す、いわば見かけの変位量である。
【0032】
見かけ変位量Δdは、変位計測窓をm*(λ/2)だけ変位方向にシフトすることで計測できる。つまり、図1(a)において、変位前の変位計測窓106は、点Tと点Sの範囲である。この点Tと点Sの範囲の変位計測窓106内では、変位後の第1受信信号のゼロクロス点は点Vとして観測される。すでに述べたように点Vは、変位量を示す真のゼロクロス点ではない。そこで、点Tと点Sの範囲の変位計測窓106をm*(λ/2)だけ変位方向にシフトする。
【0033】
図1において、変位方向は時間軸で進み方向(右方向)であり、m=1であるから、変位計測窓106をλ/2だけ時間軸に沿い進み方向にシフトする。シフト後の変位計測窓108内で、変位後の第1受信信号のゼロクロス点は点Uとして観測される。すなわち、変位計測窓をm*(λ/2)だけ変位方向にシフトすることで、シフト後の変位計測窓108内で、真のゼロクロス点Uを検出できる。
【0034】
検出された真のゼロクロス点Uを用いて、見かけ変位量Δdを算出するには、変位前の第1受信信号のゼロクロス点Rの位置も変位計測窓のシフトとともにシフトすればよい。図1(a)の場合、ゼロクロス点Rの位置を、変位方向にλ/2だけシフトすると、点Sの位置になる。そこで、図7の説明に従い、点Sと点Uの間の位相差から見かけ変位量Δdを求めることができる。
【0035】
したがって、対象組織の変位量は、折り返しで生じた変位量m*(λ/2)に、それを超えた±λ/2の範囲の見かけ変位量Δdを加算して求めることができる。図1の場合ではm=1であるから、対象組織の変位量は、(λ/2)+Δdとして求められる。このように、変位量の大きい場合、周波数の高い第1受信信号で位相差の折り返しが起こっても、周波数の低い第2受信信号の参照変位量Dを用い、その折り返し回数mを算出して補うことで、生体組織の変位量を精度よく測定できる。
【0036】
なお、点Vは変位量を示す真のゼロクロス点ではないが、点Vと点Rの位相差は、(λ/2)−Δdの値に相当するので、点Tと点Sの範囲の変位計測窓をシフトせずに、その範囲で検出されるゼロクロス点Vを用いて(λ/2)−Δdを求め、この値から−Δdを演算することもできる。この場合、Δdに付される符号が正負逆になる。
【0037】
また、第1受信信号の変位前のゼロクロス点Rを変位計測窓のシフトとともにシフトする他に、変位計測窓の基準位置、例えば時間軸で最も遅れ側の点(図1では変位計測窓106,108のそれぞれ左端)を基準位置と定め、その基準位置からのゼロクロス点の位置の変化からΔdを求めることもできる。すなわち、変位前の変位計測窓106の左端から変位前のゼロクロス点Rの位置までの量と、変位後の変位計測窓108の左端と変位後の真のゼロクロス点U点の位置までの量を比較して、Δdを求めることもできる。
【0038】
図2は、超音波診断装置20のブロック図である。図2において、探触子22は、超音波の送波およびエコーの受波を行う超音波探触子で、例えば、被検者の体表面上に当接して用いられる。探触子22内には図示されていないアレイ振動子が設けられる。アレイ振動子は複数の振動素子からなり、アレイ振動子により超音波ビームが形成される。この超音波ビームは電子走査され、その電子走査方式としては、例えば電子リニア走査や電子セクタ走査を用いることができる。
【0039】
送受信部24は、送信回路26と受信回路28とを備え、探触子22と接続される。送受信部は、後述する送受信制御回路32の制御の下で、超音波の送受信により、断層画像用の超音波ビームと、これとは別に変位量計測用の2つの異なる周波数の超音波ビームを形成し、受信信号を出力する回路である。より詳しくは、送信回路26は、アレイ振動子の各チャネルごとに遅延された送信信号を供給する回路である。受信回路28は、探触子22からのエコー信号を増幅し、各チャネル間の受信信号の位相差を調整する整相加算等の処理を行い、受信信号としてBモード信号処理部36と変位量演算部38に出力する回路である。
【0040】
送受信制御回路32の制御の下で、探触子22から断層画像用の超音波ビームが生体内に走査される走査面10の様子を図2中に示す。後述するように、断層画像用の超音波のエコー信号は信号処理および表示処理がなされ、走査面10に断層画像として表示される。ユーザは、この断層画像を見ながら、対象組織11の変位量計測個所、例えば血管の前壁点Aにつき、点Aを通過する方位を設定できる。その設定に基づき送受信制御回路32の制御の下で、探触子22からその方位に第1周波数の超音波12の送受信と、第1周波数より低い第2周波数の超音波14の送受信が交互に行われる。例えば第1周波数を8MHz、第2周波数を4MHzとすることができる。
【0041】
図3は、送受信制御回路32により制御される第1周波数の超音波と第2周波数の超音波の送信タイミングチャートである。図3は横軸に時間をとり、上段に同期クロックを、中段に第1周波数の超音波の送信タイミングを、下段に第2周波数の超音波の送信タイミングを示した。このように、第1周波数の超音波の送信と第2周波数の超音波の送信は、一定の送信間隔で交互に行われる。
【0042】
再び図2に戻り、Bモード信号処理部36は、断層画像用の超音波について受信回路28から出力される整相加算後の受信信号に基づき、エコー信号の包絡振幅を抽出する検波、包絡振幅信号の対数圧縮等の処理を行う回路である。信号処理の結果は、表示処理部42に出力される。
【0043】
変位量演算部38は、変位量計測用の超音波について受信回路28から受取った2つの異なる周波数の超音波の受信信号から、対象組織11の変位量を演算する機能を有する。具体的には、後述するユーザにより設定されたトラッキングゲートによって、対象組織11である血管前壁の点Aの位置をトラッキングし、点Aの変位量を演算する機能を有する。トラッキング機能は、後述する制御部30の制御の下において、設定されたトラッキングゲート内で、位相を検出し、血管前壁の点Aの変位を逐次検出する機能である。変位量を演算する機能のさらに詳細については後に詳述する。変位量演算の結果は表示処理部42に出力される。
【0044】
トラッキングゲートの位相検出に基づく変位計測窓の範囲は、超音波の波長をλとして±λ/2なので、この範囲を超えるときは、位相差の折り返しの問題が起こる。したがって、制御部30の制御の下で、図1で説明したと同様に、生じた位相差の折り返し回数をmとして、m*(λ/2)だけ変位方向に変位計測窓をシフトさせることで、±λ/2の範囲を超える変位量の場合でも誤動作することなくトラッキング機能を行うことができる。
【0045】
表示処理部42は、Bモード信号処理部36の出力からBモード断層画像を形成し、変位量演算部38の演算結果を示す数値やグラフの表示に必要な処理を行う回路である。変位量に関するグラフとしては、例えば変位量の時間変化を示すグラフ等である。また、これらの画像を合成する機能も有している回路である。表示処理部42は、いわゆるディジタルスキャンコンバータ(DSC)や各種の画像処理回路によって構成することができる。形成されたBモード断層画像と変位量に関する画像は、表示器44に出力される。
【0046】
表示器44は、表示処理部42により形成されたBモード断層画像や変位量の演算結果を示す数値やグラフを表示する。また、例えば血管前壁の変位量の他に、血管後壁の変位量を計測し、その結果をあわせて表示することもできる。さらに、血管前壁の変位量と血管後壁の変位量から血管の直径を演算し、その結果を表示することもできる。
【0047】
入力部46は、後述の制御部30と接続され、ユーザにより、超音波診断装置20の動作モードの選択や必要なデータの入力が行われるスイッチ、キーボード、トラックボール等である。例えば、ユーザは、入力部46を用いて、動作モードとして変位計測を選択できる。また、ユーザは、表示器44の画面を見ながらトラックボール等を操作して断層画像上で変位量計測を行う点Aを通過する所定の方位を設定でき、点Aの位置に変位量計測のためのトラッキングゲートを設定できる。
【0048】
制御部30は、超音波診断装置20の各構成と接続され、それぞれの制御を行うコントローラである。制御部30は、上記の送受信部24を制御する送受信制御回路32を備える。
【0049】
制御部30は、変位量計測のための超音波ビームの方位を設定する制御を行う機能を有する。すなわち、入力部46から入力された所定の方位に、第1周波数の超音波と第1周波数より低い第2周波数の超音波の方位を設定する制御を行う機能を有する。また、制御部30は、変位量計測のためのトラッキングを制御する機能を有する。すなわち、入力部46からなされたトラッキングゲートの設定に基づき、血管前壁の点Aの変位を逐次検出するトラッキングを制御する機能を有する。
【0050】
図4は、変位量演算部38の詳細ブロック図である。変位量演算部38は、受信回路28が繰り返し出力する複数の第1受信信号50を記憶する第1受信信号メモリ54、複数の第2受信信号52を記憶する第2受信信号メモリ56、および変位量演算回路58を備え、変位前後の2つの第1受信信号と変位前後の2つの第2受信信号の計4個の受信信号に基づき、対象組織の変位量60を演算し出力する機能を有する。
【0051】
第1受信信号メモリ54は、受信回路28から受取った複数の第1受信信号50を記憶する半導体メモリ等の記憶装置である。同様に第2受信信号メモリ56は、受信回路28から受取った複数の第2受信信号52を記憶する記憶装置である。各受信信号の受信順序の対応付けは、例えばメモリのアドレス等に対応付けて管理される。
【0052】
変位量演算回路58の中の参照変位量演算器62は、第2受信信号メモリ56から変位前後の2つの第2受信信号を読み出し、図7で説明した方法に従い、その信号相互間の位相差である第2位相差を求め、その第2位相差に基づき参照変位量Dを演算する機能を有する。
【0053】
変位量判定器64は、演算された参照変位量Dに基づき、図1で説明した方法に従い、位相差の折り返しの有無とその回数を判定する機能を有する。すなわち、参照変位量Dを第1周波数の超音波の波長をλとしてλ/2で除したときに得られる整数部分mが、位相差の折り返しの回数である。判定式の形で示すと、次式を満たす整数mが位相差の折り返し回数である。m=0のときは位相差の折り返しが生じていない。
【数1】
m*(λ/2)≦D≦(m+1)*(λ/2) ・・・・(1)
【0054】
見かけ変位量演算器66は、図1で説明した方法に従い、判定された位相差の折り返し回数mに従って、第1受信信号の変位計測窓をシフトし、見かけ変位量Δdを演算する機能を有する。図1で説明した方法を再言すれば、まず変位前後の2つの第1受信信号を第1受信信号メモリ54から読出した後、第1受信信号の変位計測窓を、折り返し変位量m*(λ/2)だけ変位方向にシフトし、その状態で変位後の第1受信信号のゼロクロス点Uの位置を求める。そして、変位前の第1受信信号のゼロクロス点Rの位置を、折り返し変位量m*(λ/2)だけ変位方向にシフトした点Sと点Uとの相互間の位相差から見かけ変位量Δdが算出される。
【0055】
対象組織変位量演算器68は、位相差の折り返し回数mに従って、対象組織の変位量を演算する機能を有する。すなわち、mが0以外の整数のときは、見かけ変位量Δdと、折り返し変位量m*(λ/2)とを加算し、m*(λ/2)+Δdを演算し、その値を対象組織の変位量60として表示処理部42に出力する機能を有する。また、mが0のときは、変位前後の2つの第1受信信号を第1受信信号メモリ54から読出し、図7で説明した方法に従い、変位前後の第1受信信号の位相差から求めた変位量をそのまま対象組織の変位量として表示処理部42に出力する機能を有する。
【0056】
図5は、対象組織の変位量演算の手順をフローチャートで示したものである。
【0057】
まず受信した第1受信信号を第1受信信号メモリに順次記憶する(S10)。同様に受信した第2受信信号を第2受信信号メモリに順次記憶する(S12)。
【0058】
次に第2受信信号メモリから変位前後の2つの第2受信信号を読出し、参照変位量演算器において、その相互間の位相差から参照変位量Dを演算する(S14)。
【0059】
そして、変位量判定器で、参照変位量Dを用いて、第1周波数の位相差の折り返しの有無と、その回数mを判定する(S16)。折り返しの回数mは、式(1)が成立するmを算出することで求めることができる。
【0060】
次に、見かけ変位量演算器は、第1受信信号メモリから、変位前後の2つの第1受信信号を読出す(S18)。そして、mが0以外の整数のときは、図1で説明した方法に従い、変位前の第1受信信号の変位計測窓をm*(λ/2)だけ変位方向にシフトさせた上で、変位前後の第1受信信号の相互間の位相差を求め、その位相差における見かけ変位量Δdを演算する(S20)。
【0061】
そして、m*(λ/2)+Δdを演算する(S22)。この値を、対象組織の変位量とすることができる。
【0062】
上記の加算、乗算等の四則演算処理は、演算処理装置を用いて行うことができる。また、演算処理装置に代わり、数式化したメモリを用い、必要なパラメータ、例えば折り返し回数m、λ、参照変位量D等をメモリに入力して数式を処理し、同じ結果を得ることもできる。
【0063】
【発明の効果】
本発明に係る超音波診断装置によれば、対象組織の診断深さを変えることなく、変位量の大きい対象組織の変位を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の原理説明図である。
【図2】 本発明に係る実施の形態の超音波診断装置のブロック図である。
【図3】 第1周波数の超音波と第2周波数の超音波の送信タイミングチャートである。
【図4】 変位量演算部の詳細ブロック図である。
【図5】 対象組織の変位量演算のフローチャートである。
【図6】 位相差から変位量を求める原理の説明図である。
【図7】 2つの受信信号相互間の位相差の関係を示す図である。
【図8】 位相差に関する折り返しの問題を説明する図である。
【符号の説明】
10 走査面、11 対象組織、12 第1周波数の超音波、14 第2周波数の超音波、20 超音波診断装置、22 探触子、24 送受信部、26 送信回路、28 受信回路、30 制御部、32 送受信制御回路、36 Bモード信号処理部、38 変位量演算部、54 第1受信信号メモリ、56 第2受信信号メモリ、58 変位量演算回路、62 参照変位量演算器、64 変位量判定器、66 見かけ変位量演算器、68 対象組織変位量演算器、106,108 変位計測窓。
Claims (6)
- 対象組織に対し、送受信シーケンスに従って、第1周波数の超音波を繰り返し送受信して複数の第1受信信号を出力し、前記第1周波数より低い第2周波数の超音波を繰り返し送受信して複数の第2受信信号を出力する送受信手段と、
前記複数の第1受信信号についての相互間の第1位相差と、前記複数の第2受信信号についての相互間の第2位相差とに基づいて、対象組織の変位量を演算する変位量演算手段と、
を備え、
前記変位量演算手段は、
前記複数の第1受信信号の相互間の波形比較により前記第1位相差を演算する第1位相差演算部と、
前記複数の第2受信信号の相互間の波形比較により前記第2位相差を演算する第2位相差演算部と、
前記第2位相差に基づいて、前記第1位相差に関する折り返しの有無および回数を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に従い、前記第1位相差に基づいて前記対象組織の変位量を演算する変位量演算部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記送受信シーケンスは、
前記第1周波数の超音波と前記第2周波数の超音波とを交互に送信する送受信シーケンスであることを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記折り返し回数は、
前記第1位相差の1回の折り返し当たりの単位変位量で前記第2位相差に相当する参照変位量を除することにより算出される整数であることを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項3に記載の超音波診断装置において、
前記変位量演算部は、
前記第1位相差から演算される見かけ変位量と、前記折り返し回数に前記単位変位量を乗じて得られる折り返し変位量とに基づいて前記対象組織の変位量を演算することを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項4に記載の超音波診断装置において、
前記見かけ変位量は、
前記位相差の折り返しが生じない変位量観測範囲である変位計測窓を、変位方向に前記折り返し変位量分だけシフトさせて演算されることを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項5に記載の超音波診断装置において、
前記見かけ変位量は、
前記変位計測窓のシフトにあわせ、上記変位計測窓内における変位前の第1受信信号の変位量測定のための特徴点の位置を、変位方向に前記折り返し変位量分だけシフトさせ、上記シフトさせた変位計測窓内における変位前後の前記特徴点の位置の差から演算されることを特徴とする超音波診断装置。
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