JP4111775B2 - 自動車の塗装方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉体クリヤー塗料又は粉体スラリークリヤー塗料を使用する自動車上塗り塗装方法又は自動車中塗り・上塗り塗装方法に関する。更に詳しくは、分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物及び脂肪族トリカルボン酸からなる粉体クリヤー塗料又は粉体スラリークリヤー塗料を使用する自動車上塗り塗装方法又は自動車中塗り・上塗り塗装方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の塗装において、ベース塗料及びクリヤー塗料、又は中塗り塗料、ベース塗料、及びクリヤー塗料を重ねて塗り、併せて硬化させる数々の方法が考案され、実施されている。例えば、これらの中で最も一般的に行われてきたのが、溶剤系メタリックベース塗料と溶剤系クリヤー塗料とを重ねて塗り、併せて硬化させる2コート1ベーク塗装方法である。
【0003】
一方、自動車用塗料として、かつては有機溶剤系が主流であったが、塗装時の安全衛生、環境保全等の観点から水系塗料、粉体塗料、又は粉体スラリー塗料等への移行が進行しつつある。メタリックベース塗料においては、粉体塗料化するための課題が多く、水系が主流になっているが、将来益々厳しくなることが予想されるVOC( 揮発性有機化合物) 規制に対応するためには、通常VOCを少量ながら含む水系塗料よりも、VOCをほとんど含まない粉体塗料又は粉体スラリー塗料が好ましいのは言うまでもない。
【0004】
このような中で、クリヤー塗料に粉体塗料又は粉体スラリー塗料を使用した重ね塗りの方法が各種提案されている。例えば、特開平6−233965号、特開平11−333365号、特開2001−55536号、及び特開2001−316616号公報等には、水性ベース塗料と粉体クリヤー塗料を使用した2コート1ベーク塗装方法が、特開2001−64546号公報には、粉体スラリー中塗り塗料、水性ベース塗料、及び粉体スラリークリヤー塗料を使用した、3コート1ベーク塗装方法が提案されており、平滑性、光沢等の仕上り外観、耐酸性、耐溶剤性等の化学的性質、及び耐候性等に優れた塗膜が得られている。しかし、硬度、耐衝撃性、耐屈曲性、耐擦り傷性(洗車機等での耐傷つき性)等の物理的強度が不十分であり、硬化時間の短縮や硬化温度の低温化も困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、平滑性、光沢等の仕上り外観、耐酸性、耐溶剤性等の化学的性質、硬度、耐衝撃性、耐屈曲性、耐擦り傷性(洗車機等での耐傷つき性)等の物理的強度、及び耐候性等に優れた塗膜が得られ、かつ硬化時間の短縮や硬化温度の低温化も可能な自動車の塗装方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物及び脂肪族トリカルボン酸からなる粉体クリヤー塗料又は粉体スラリークリヤー塗料を用いる塗装方法が、その目的に適合し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、
1.下塗り又は下塗り及び中塗りを施した塗装板上にベース塗料を塗装し、その硬化前にクリヤー塗料を塗装し、ベース塗料とクリヤー塗料を同時に硬化させる、いわゆる2コート1ベークの自動車上塗り塗装において、クリヤー塗料が分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)及び脂肪族トリカルボン酸(b)からなる粉体クリヤー塗料又は粉体スラリークリヤー塗料であり、且つ該脂肪族トリカルボン酸(b)が式(1)で表される化合物であることを特徴とする、自動車上塗り塗装方法、
【化6】
〔p,r,sは0〜2の整数、qは1〜3の整数で、p+q+r+s=3かつ{r<sまたは(r=sかつp<q)}〕
2.下塗り又は下塗り及び中塗りを施した塗装板上に第1ベース塗料を塗装して硬化させ、更に第2ベース塗料を塗装し、その硬化前にクリヤー塗料を塗装し、第2ベース塗料とクリヤー塗料を同時に硬化させる、いわゆる3コート2ベークの自動車上塗り塗装にお いて、クリヤー塗料が分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)及び脂肪族トリカルボン酸(b)からなる粉体クリヤー塗料又は粉体スラリークリヤー塗料であり、且つ該脂肪族トリカルボン酸(b)が式(1)で表される化合物であることを特徴とする、自動車上塗り塗装方法。
【化7】
〔p,r,sは0〜2の整数、qは1〜3の整数で、p+q+r+s=3かつ{r<sまたは(r=sかつp<q)}〕
【0008】
3.下塗り又は下塗り及び中塗りを施した塗装板上に第1ベース塗料を塗装し、その硬化前に第2ベース塗料を塗装し、更にその硬化前にクリヤー塗料を塗装し、第1ベース塗料、第2ベース塗料、及びクリヤー塗料を同時に硬化させる、いわゆる3コート1ベークの自動車上塗り塗装において、クリヤー塗料が分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)及び脂肪族トリカルボン酸(b)からなる粉体クリヤー塗料又は粉体スラリークリヤー塗料であり、且つ該脂肪族トリカルボン酸(b)が式(1)で表される化合物であることを特徴とする、自動車上塗り塗装方法。
【化8】
〔p,r,sは0〜2の整数、qは1〜3の整数で、p+q+r+s=3かつ{r<sまたは(r=sかつp<q)}〕
4.下塗り、中塗り、及び上塗り(ベース及びクリヤー)を施した塗装板上又は、下塗り及び上塗り(ベース及びクリヤー)を施した塗装板上に、更にオーバーコートクリヤー塗料を塗装して硬化させる自動車上塗り塗装において、オーバーコートクリヤー塗料が分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)及び脂肪族トリカルボン酸(b)からなる粉体クリヤー塗料又は粉体スラリークリヤー塗料であり、且つ該脂肪族トリカルボン酸(b)が式(1)で表される化合物であることを特徴とする、自動車上塗り塗装方法。
【化9】
〔p,r,sは0〜2の整数、qは1〜3の整数で、p+q+r+s=3かつ{r<sまたは(r=sかつp<q)}〕
【0009】
5.下塗りを施した塗装板上に中塗り塗料を塗装し、その硬化前にベース塗料を塗装し、更にその硬化前にクリヤー塗料を塗装し、中塗り塗料、ベース塗料、及びクリヤー塗料を同時に焼き付ける、いわゆる3コート1ベークの自動車中塗り・上塗り塗装において、 クリヤー塗料が分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)及び脂肪族トリカルボン酸(b)からなる粉体クリヤー塗料又は粉体スラリークリヤー塗料であり、且つ該脂肪族トリカルボン酸(b)が式(1)で表される化合物であることを特徴とする、自動車中塗り・上塗り塗装方法、
【化10】
〔p,r,sは0〜2の整数、qは1〜3の整数で、p+q+r+s=3かつ{r<sまたは(r=sかつp<q)}〕
6.p=1、q=2、r=s=0である上記1.〜5.のいずれか1項に記載の自動車上塗り塗装方法又は自動車中塗り・上塗り塗装方法、
7.上記1.〜6.のいずれか1項に記載の自動車上塗り塗装方法又は自動車中塗り・上塗り塗装方法により得られる複層塗膜である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明について具体的に説明する。
本発明で用いるクリヤー塗料は、分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)及び脂肪族トリカルボン酸(b)からなる粉体クリヤー塗料又は粉体スラリークリヤー塗料である。
まず、本発明で用いる分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)について説明する。
【0012】
本発明でいうエポキシ基とは、エポキシ構造(炭素−酸素−炭素からなる3員環構造)を有する結合基であり、炭素−炭素部は直鎖又は分岐した炭化水素構造の一部でも良いし、5員環や6員環等の環状構造を形成した炭化水素構造の一部であってもよい。又これら炭化水素構造にはフッ素、塩素、臭素等のハロゲンや、水酸基、ニトリル基等の官能基が結合していても良い。さらに、エポキシ構造を形成する炭素原子には、メチル基等のアルキル基や、ハロゲン等が結合していても良い。これらエポキシ基としてはグリシジル基や、下式(2)で表される結合基が挙げられる。特にグリシジル基が、アリルアルコールやエピクロルヒドリンから工業的に製造され、入手が容易なため望ましい。
【0013】
【化11】
(式中、R1 及びR2 は炭素数1〜12の炭化水素基を、mは0〜3の整数を表す。)
本発明で用いられる分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物(a)は、例えば、上記エポキシ基をエーテル結合を介して有する化合物、上記エポキシ基をエステル結合を介して有する低分子化合物、アミン類やイソシアヌル酸から誘導される上記エポキシ基が窒素原子に直接結合する化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ基含有重合体、等が挙げられる。
【0014】
上記エポキシ基をエーテル結合を介して有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ペンタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロペンタンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ヒドロキノンから誘導されるジグリシジルエーテル、レゾルシノールから誘導されるジグリシジルエーテル、カテコールから誘導されるジグリシジルエーテル、ビスフェノールAから誘導されるジグリシジルエーテル、ビスフェノールFから誘導されるジグリシジルエーテル、ビスフェノールADから誘導されるジグリシジルエーテル、ビスフェノールSから誘導されるジグリシジルエーテル、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから誘導されるジグリシジルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチルジヒドロキシビフェニルから誘導されるジグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂から誘導されるグリシジルエーテル化合物、クレゾールノボラック樹脂から誘導されるグリシジル化合物及びこれらのハロゲン化物やオリゴマー等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールAから誘導されるジグリシジルエーテルは、一般的には「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」として、最も汎用に用いられている化合物で入手も容易であり、本発明で用いる粉体クリヤー塗料又は粉体スラリークリヤー塗料成分として好適に使用できる。
【0015】
また、エポキシ基をエステル結合を介して有する低分子化合物としては、フタル酸ジグリシジル、マレイン酸ジグリシジル、テレフタル酸ジグリシジル、イソフタル酸ジグリシジル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジル、ビフェニルジカルボン酸ジグリシジル、コハク酸ジグリシジル、フマル酸ジグリシジル、グルタル酸ジグリシジル、アジピン酸ジグリシジル、スベリン酸ジグリシジル、セバシン酸ジグリシジル、デカンジカルボン酸ジグリシジル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、トリメリット酸トリグリシジル、ダイマー酸から誘導されるグリシジルエステル、及びこれらのハロゲン化物やオリゴマー等が挙げられる。
【0016】
また、エポキシ基が窒素原子に直接結合する化合物として、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、ヒダントイン系化合物から誘導されるグリシジル化合物、及びこれらのハロゲン化物やオリゴマーが挙げられる。
【0017】
また、脂環式エポキシ化合物としては、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)テレフタレート、3,4−エポキシクロヘキシル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ピメレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、等が挙げられる。
【0018】
また、上記エポキシ基含有重合体とは、末端、側鎖又は分岐鎖中にグリシジル基等のエポキシ基を有し、重量平均分子量が800〜50,000,000であり、分子量分布を有する化合物を意味し、例えばポリエステル骨格を有する重合体、ポリアミド骨格を有する重合体、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリビニルアセテート系、酢酸ビニル−アクリル系、酢酸ビニル−混合トリアルキル酢酸ビニルエステル系、エチレン酢ビ系、シリコーン系、ポリブタジエン系、スチレンブタジエン系、NBR系、ポリ塩化ビニル系、塩素化ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリスチレン系、塩化ビニリデン系、ポリスチレン−(メタ)アクリレート系、スチレン−無水マレイン酸系等の重合体等が挙げられ、シリコーン変性アクリル系、フッ素−アクリル系、アクリルシリコン系、エポキシ−アクリル系等の変性重合体等も含まれ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、ポリ(メタ)アクリレート系、酢酸ビニル−アクリル系、ポリスチレン−(メタ)アクリレート系、シリコーン変性アクリル系、フッ素−アクリル系、アクリルシリコン系、エポキシ−アクリル系等のエポキシ基含有アクリル系樹脂重合体を好適に使用できる。本発明で表現する(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0019】
エポキシ基含有重合体は、エポキシ基を有する重合性単量体の1種又は2種以上の重合体、又はエポキシ基を有する重合性単量体1種又は2種以上とエポキシ基を有しない重合性単量体1種又は2種以上の共重合体である。エポキシ基を有する重合性単量体は、例えばグリシジル基や下式(3)で表されるメチルグリシジル基を有する化合物が特に好適に使用できる。
【化12】
【0020】
上記エポキシ基を有する重合性単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2,3−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、アリルアルコールのグリシジルエーテルやメチルグリシジルエーテル、N−グリシジルアクリル酸アミド、ビニルスルホン酸グリシジル等を挙げることができる。中でも、グリシジルメタクリレートが産業上入手が容易であり、これを用いた共重合体であるグリシジル基含有(メタ)アクリル系樹脂が、得られる塗膜の耐候性や耐摩耗性等の耐久性に優れ、特に好ましい。
エポキシ基を有する重合性単量体は、全重合性単量体の5〜70質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0021】
上記エポキシ基を有する重合性単量体と共重合できる、エポキシ基を有しない重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド系単量体、シアン化ビニル類等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの例としては、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルオクチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
【0023】
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシドデシル等が挙げられる。
(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
【0024】
(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド系単量体としては、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチ
ロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等があり、シアン化ビニル類としては、例えば(メタ)アクリロニトリル等がある。
【0025】
又、エポキシ基を有しない重合性単量体として、エチレン性不飽和カルボン酸単量体を使用してもよい。その例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、及びイタコン酸、フマル酸、マレイン酸の半エステル等があげられる。
更に、カチオン基を持つエチレン性不飽和単量体を使用してもよい。その例として、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びその塩、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル及びその塩、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル及びその塩、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド及びその塩、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド及びその塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びその塩、ビニルピリジン、等が挙げられる。
【0026】
また上記以外のエポキシ基を有しない重合性単量体の具体例として、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、ブタジエン等のジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、混合トリアルキル酢酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル系化合物、フマル酸ジアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル等のエステル類、酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類、アリルエチルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、さらにγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、メタクリル酸アシッドホスホオキシエチル、メタクリル酸3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピル、メチルプロパンスルホン酸アクリルアミド、ジビニルベンゼン、ビニルオキサゾリン、ラウリルビニルエーテル、ハロゲン含有ビニル単量体、ケイ素含有ビニル単量体、イソシアネート基含有ビニル系単量体、共重合可能な不飽和結合を有するポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0027】
本発明においては、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸グリシジルを主成分とする共重合体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、及びスチレンを主成分とする共重合体、更には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ブチル、及びスチレンを主成分とする共重合体、等のグリシジル基含有アクリル系樹脂重合体が、耐候性や耐摩耗性等の耐久性に優れ、特に好ましく使用できる。
本発明で用いられるエポキシ基含有重合体は、どんな方法により得られたものであってもよい。通常は、エポキシ基を有する重合性単量体、エポキシ基を有しない重合性単量体、開始剤、及び還元剤等を適宜使用して重合される。ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等のいずれでもよいが、ラジカル重合が好ましく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合等により得られる。
【0028】
また、本発明で用いられるエポキシ基含有重合体は、酸性リン酸エステル等で変成されていてもよいし、その水酸基がジイソシアネート化合物等で変性されていてもよい。
上記、エポキシ基含有重合体の数平均分子量は1,000〜12,000が好ましい。この範囲において、粉体塗料の粒子同士の融着が起こらず、即ち耐ブロッキング性が優れ、かつ耐候性等の塗膜性能及び塗膜の平滑性等の仕上り外観が優れる。エポキシ基含有重合体の数平均分子量は、1,500〜10,000が更に好ましい。
また、エポキシ基含有重合体のエポキシ当量は200〜3,000g/当量が好ましい。この範囲において、粉体塗料の貯蔵安定性、塗膜の仕上り外観、及び塗膜性能が優れる。エポキシ基含有重合体のエポキシ当量は、200〜2,800g/当量が更に好ましい。
【0029】
また、エポキシ基含有重合体のメルトインデックスは20〜100g/10分が好ましい。この範囲において、塗膜の仕上り外観及び粉体塗料の貯蔵安定性が優れる。エポキシ基含有重合体のメルトインデックスは、30〜100g/10分が更に好ましい。
更に、エポキシ基含有重合体のTg(ガラス転移温度)は30〜100℃が好ましい。この範囲において、耐ブロッキング性、溶融フロー性、及び塗膜の仕上り外観が優れる。エポキシ基含有重合体のTgは、40〜90℃が更に好ましい。
本発明に用いる粉体クリヤー塗料又は粉体スラリークリヤー塗料は、所望の物性に応じて、上記分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)を単独で用いてもよいし、2種以上の混合物で用いてもよい。
【0030】
本発明において、脂肪族トリカルボン酸(b)とは、エポキシ基と反応し、架橋構造を形成しうる硬化剤であり、直鎖又は分岐した炭化水素に3つのカルボキシル基が結合した化合物を意味する。直鎖状のものとして、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3−ブタントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,3−ペンタントリカルボン酸、1,2,4−ペンタントリカルボン酸、1,2,5−ペンタントリカルボン酸、1,3,4−ペンタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、2,3,4−ペンタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,1,6−ヘキサントリカルボン酸、1,3,5−ヘキサントリカルボン酸、1,2,6−ヘキサントリカルボン酸、1,3,3−ヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ヘキサントリカルボン酸、2,4,4−ヘキサントリカルボン酸、1,4,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3,4−ヘキサントリカルボン酸、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸、2,3,5−ヘキサントリカルボン酸、1,4,8−オクタントリカルボン酸、1,5,10−ノナントリカルボン酸、1,6,12−ドデカントリカルボン酸、1,7,13−トリデカントリカルボン酸等が、分岐鎖状のものとして、2−カルボキシメチル−1,3−プロパンジカルボン酸、3−カルボキシメチル−1,5−ペンタンジカルボン酸、3−カルボキシエチル−1,5−ペンタンジカルボン酸、3−カルボキシエチル−1,6−ヘキサンジカルボン酸等があげられる。なかでも、式(1)で表される脂肪族トリカルボン酸であることが好ましい。
【0031】
【化13】
〔p,r,sは0〜2の整数、qは1〜3の整数で、p+q+r+s=3かつ{r<sまたは(r=sかつp<q)}〕
式(1)で表される脂肪族トリカルボン酸には、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3,5−ヘキサントリカルボン酸、1,2,6−ヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ヘキサントリカルボン酸、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸、2,3,5−ヘキサントリカルボン酸が挙げられる。なかでも、1,2,5−、1,3,5−、1,2,6−、1,2,4−、及び1,3,6−ヘキサントリカルボン酸が熱安定性が高いため好ましい。特に1,3,6−ヘキサントリカルボン酸は約110℃の融点を有し、エポキシ化合物(a)への混合が容易であり、各種エポキシ基化合物(a)への相溶性が高く、また水に対し高い親和性を有し、さらに硬化特性が優れているなど物性が優れている点に加えて、下記に述べるように工業的に容易に入手できる点で最も好ましい。
【0032】
本発明においては、上記脂肪族トリカルボン酸を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明において使用する脂肪族トリカルボン酸の製造法は特に制限はない。1,3,6−ヘキサントリカルボン酸は、例えば、工業的に大規模に生産されているアクリロニトリルを3量化させたり、アクリロニトリルの電解2量化によりアジポニトリルを製造する際に得られるトリニトリル化合物を硫酸等の酸や苛性ソーダ等のアルカリを用いて加水分解したりすることにより、容易に得られる。
また、本発明において、脂肪族トリカルボン酸以外の硬化剤、例えば、カルボキシル基含有化合物、酸無水物、又はこれら以外のエポキシ基と反応し架橋構造を形成しうる一般的なエポキシ樹脂の硬化剤等の1種又は2種以上を、各種用途に応じて、脂肪族トリカルボン酸と併用してもよい。
脂肪族トリカルボン酸以外の硬化剤として用いることができるカルボキシル基含有化合物としては、分子内に2個以上のカルボキシル基を有する化合物が好適に使用でき、特に脂肪族、芳香族、脂環族の多価カルボン酸等が好適に使用できる。
【0033】
脂肪族多価カルボン酸としては、例えばグルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、アイコサンジカルボン酸及びテトラアイコサンジカルボン酸、アクリル酸やメタクリル酸を成分とする共重合体、ポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。また、芳香族多価カルボン酸としては、イソフタル酸、フタル酸、トリメリット酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸等が挙げられる。更に、脂環族多価カルボン酸としては、例えばヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸等が挙げられる。
また、上記酸無水物としては、上記記載の脂肪族、芳香族、及び脂環族の多価カルボン酸の無水物、及びこれら多価カルボン酸と1価カルボン酸の無水物等が挙げられる。
【0034】
更に、エポキシ基と反応し架橋構造を形成しうる一般的なエポキシ樹脂の硬化剤としては、ジシアンジアミド類、ジヒドラジド類、イミダゾ−ル類、ポリ酸無水物類等があげられる。また、トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン等のトリアジン、オルガノシリル基を包含するポリカルボン酸、分子内に2個以上のカルボキシル基を有するアクリル樹脂、又はポリエステル樹脂等の樹脂等も脂肪族トリカルボン酸以外の硬化剤として使用できる。
併用するその他の硬化剤としては、セバシン酸、デカンジカルボン酸、等の脂肪族多価カルボン酸や、これらの無水物が特に好適に使用できる。
本発明で用いる硬化剤全量中における、脂肪族トリカルボン酸の含有量は0.1〜100質量%である。好ましくは、1〜100質量%であり、特に好ましくは10〜100質量%、最も好ましくは50〜100質量%である。脂肪族トリカルボン酸の含有量が0.1質量%以下の場合には、硬化速度が低下したり、粉体塗料の水への分散性が低下したり、さらには得られる塗膜の機械的物性が低下する傾向にある。
【0035】
本発明で用いる粉体クリヤー塗料又は粉体スラリークリヤー塗料において、用いる脂肪族トリカルボン酸は、他の硬化剤と併用する場合には左右されるが、通常、エポキシ化合物(a)のエポキシ基に対し、脂肪族トリカルボン酸のカルボキシル基を0.01〜5当量で用いることができる。特に、脂肪族トリカルボン酸の硬化性や粉体スラリー塗料の水への分散性を顕著に発現させ、また架橋密度を向上させた機械的特性の優れる塗膜を得るには、0.1〜3当量が好ましく、さらには0.3〜2.5当量、特に好ましくは0.5〜2当量である。
一般的に、エポキシ化合物とカルボキシル基含有化合物からなる塗料は、エポキシ基に対し、カルボキシル基を当量比が1、またはその近傍の組成比で用いられ、当量比が1を大きくはずれた場合には、塗膜性能が低下する傾向にある。本発明で用いる粉体塗料又は粉体スラリー塗料において、硬化剤として1,3,6−ヘキサントリカルボン酸のみを用いた場合には、当量比が1から大きくずれた場合においても、短時間の硬化又は低温硬化で十分な塗膜性能を示す。
【0036】
本発明で用いる、分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)が、水酸基及び/又はカルボキシル基を有する場合には、水酸基又はカルボキシル基と反応し得る少なくとも1個の官能基を有する補助交叉結合剤、又は変性剤を添加する事ができる。これらには、ブロックイソシアネート、アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、アルキル化グリコルリル樹脂、ヒダントインエポキシド類、トリグリシジルイソシアヌレート、脂肪族グリシジルエーテル、脂肪族グリシジルエステル、環式脂肪族エポキシド、水素化ビスフェノールA及びエピクロロヒドリンから導かれたエポキシ樹脂、オキサゾリン、2〜4官能性β−ヒドロキシアルキルアミド等が含まれる。
【0037】
また、本発明で用いる粉体塗料又は粉体スラリー塗料には、分子内に1個のエポキシ基を有する化合物、1個のカルボキシル基及び/又は1個又は2個以上の水酸基を有するアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、又はその他の重合体、及び室温で液状である樹脂等の化合物を添加することもできる。
更に、本発明で用いる粉体塗料又は粉体スラリー塗料は、通常塗料に配合される添加剤、例えば、硬化促進剤(硬化触媒)、反応希釈剤、充填剤や強化剤、顔料、離型剤や流動調整剤、可塑剤、紫外線吸収剤等の紫外線によるコーティングの劣化を阻止し得る薬剤、光安定剤、酸化防止剤等を添加することができる。
【0038】
硬化促進剤としては、例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、ジメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジアミノメチル)フェノールなどの第3級アミン類、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7などのジアザビシクロアルケン類およびそれらの塩類、オクチル酸亜鉛、アルキルチタネート化合物、オクチル酸錫、モノアルキル錫酸等の錫化合物、アルミニウムアセチルアセトン錯体などの有機金属化合物、トリフェニルホスフィン、亜リン酸トリフェニルなどの有機リン系化合物、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、トリフェニルボレートなどのホウ素系化合物、塩化亜鉛、塩化第二錫などの金属ハロゲン化物、第4級アンモニウム化合物、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタンのナトリウムアルコレートなどのアルカリ金属アルコレート類、アナカルド酸及びその塩、カルドール、カルダノール、フェノール、ノニルフェノール、クレゾールなどのフェノール類、ブロックされた強酸触媒等が挙げられる。
【0039】
反応希釈剤としては、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、3級カルボン酸グリシジルエステル、等が挙げられる。
充填剤や強化剤としては、例えばコールタール、瀝青、織布、ガラス繊維、アスベスト繊維、ホウ素繊維、炭素繊維、アラミド繊維、鉱物シリケート、雲母、石英粉、水酸化アルミニウム、ベントナイト、カオリン、珪酸エアロゲル、アルミニウム粉や鉄粉などの金属粉などが挙げられる。
【0040】
顔料としては、アゾ顔料、銅フタロシアニン系顔料、塩基性染めつけレーキ、酸性染めつけレーキ、媒染染料系顔料、建設染料系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、カーボンブラック、クロム酸塩、フェロシアン化物、酸化チタン、硫化セレン化合物、珪酸塩、炭酸塩、燐酸塩、金属粉末、等の着色顔料や、硫酸バリウム、炭酸バリウム、石膏、アルミナ白、クレー、シリカ、タルク、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の体質顔料が挙げられる。
また、離型剤や流動調整剤としては、例えばシリコーン、エアロジル、コロイド性含水珪酸アルミニウム、ワックス、ステアリン酸塩、炭酸カルシウム、タルクなどが挙げられる。
【0041】
さらに、可塑剤としてはパイン油、低粘度液状高分子、ゴム状物、タール、ポリサルファイド、ウレタンプレポリマー、ポリオール、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、エピクロルヒドリンの重合物、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、トリクレジルホスフェートなどが挙げられる。
また、紫外線吸収剤としてチヌビン(Tinuvin、チバスペシャリティケミカルス社から市販)が、立体障害アミン系光安定剤やフェノール系酸化防止剤として、例えば、チヌビン144や、イルガノックス1010又はイルガフォスP− EPQ(いずれもチバスペシャリティケミカルス社から市販)が挙げられる。紫外線吸収剤と立体障害アミン系光安定剤とを組み合わせて用いることもできる。
【0042】
更に、ナフテン酸コバルト等のドライヤー、メトキシフェノール、シクロヘキサンオキシム等の皮張り防止剤、高重合アマニ油、有機ベントナイト、シリカ等の増粘剤、ベンゾイン等のわき防止剤、モダフロー(Modaflow、モンサント社製)、レジフロー(Resiflow、Worlee社製)、アクロナール(Acronal、BASF社製)、等の流れ調整剤、三酸化アンチモン、ブロム化合物、水酸化アルミニウムなどの難燃剤、染料、ワックス、酸化防止剤(抗酸化剤)、光安定剤、ラジカル捕捉剤、熱安定剤、消泡剤、脱気剤(脱ガス化剤)、アクリルオリゴマー等のレベリング剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の非反応性及び/又は反応性の有機溶剤、流展剤、着色剤、二酸化チタン、粘性調整剤、pH調整剤、防腐剤、分散剤、乳化剤、界面活性剤、湿潤剤、成膜助剤、防錆剤、表面調整剤、艶消し剤、エポキシ樹脂、ビスマス系化合物、微粉末シリカ、焼セッコウ、イミダゾリン化合物類、架橋樹脂微粒子、ポリエステル樹脂系粉体塗料、熱潜在性カチオン重合開始剤、ハイドロタルサイト類化合物、及びその他の各種添加剤等を添加することができる。これら添加剤は、1種または2種以上を、本発明の効果を損なわない範囲の適用量で任意に適用することができる。また、これらの添加剤を配合する方法に特に制限はなく、慣用の配合方法が適用できる。
【0043】
本発明で用いる粉体塗料の製造方法は、ドライ状態で混合した、分子内に2個以上のエポキシ基を有する重合体(a)、硬化剤、添加剤等を溶融混練・押出し後粉砕するといった従来からの乾式法、及び各種の湿式法が使用できる。湿式法としては、(1)重合体(a)、硬化剤、及び添加剤等の成分の溶液又は分散液から凍結乾燥した後粉砕する方法、(2)重合体(a)、硬化剤、及び有機溶剤等を分散混合し、必要により減圧脱溶剤し、水を添加し、減圧して軟化点以下の温度で分散混合機の分散力で一気に破砕する方法、(3)重合体(a)及び硬化剤等を有機溶剤に溶解又は分散させ、減圧下加熱溶融混合により有機溶剤を除去し、押出し後粉砕する方法、(4)有機溶剤中での合成で得られた有機溶剤樹脂溶液に硬化剤等を配合し、減圧下加熱溶融混合により有機溶剤を除去し、この溶融物を押出し機等により混合分散し、冷却、粉砕する方法、(5)メルトブレンド法等により原料各成分を均一に混合し、保温熟成し、押出し後粉砕する方法、(6)原料を溶融混合し、貧溶媒を添加し、減圧下貧溶媒を蒸発させ、冷却固化し、粉砕する方法、(7)溶剤を添加し、攪拌しながら加熱して減圧脱溶剤、粉砕する方法(減圧脱溶剤の前に湿式分散及び/又は予備加熱してもよい。)、(8)曇点を示さない水溶性高分子と30〜90℃の範囲内に曇点を示す水溶性高分子を含む水溶液に曇点未満の温度で、重合体(a)、硬化剤、及び添加剤等を有機溶剤に溶解した溶液を加えて懸濁液を得、曇点未満の温度で昇温して一時粒子を得、曇点以上の温度で昇温して二次粒子を得、脱溶剤する方法、等があげられる。
【0044】
上記の方法で粉砕された粉体粒子について、更に圧縮したり、粉砕したり、凝集造粒したり、熱気流と接触させて粒子を球状にしたり、分級したりしてもよい。また、これらの操作を任意に組み合せたり、繰り返したりしてもよい。
本発明で用いる粉体塗料の製造において、硬化剤は、その固体粒子を、ポリアミド、エポキシポリマー、ポリウレタン、及びグリシジル基含有のモノマーと不飽和エチレン性モノマーとの共重合により得られるグリシジル基含有のアクリル酸ポリマー等のポリマーを含む被覆材料で被覆したものを使用してもよい。
本発明で用いる粉体塗料の平均粒子径は、1〜100μmで、5〜50μmが好ましく、10〜30μmが更に好ましい。平均粒径が1μmより小さいと貯蔵安定性が悪くなり、100μmより大きいと平滑性等の塗膜の外観が劣る。
本発明で用いる粉体スラリー塗料は、上記した粉体塗料及び水性成分から製造することができる。
【0045】
水性成分には、分散剤、分散助剤、カルボキシ官能性分散剤、非イオン性増粘剤、触媒、助剤、消泡剤、湿潤剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、殺生剤、殺生物剤、殺菌剤、微少量の溶剤、流展剤、流展助剤、レベリング剤、中和剤、アミン、保水剤等を必要に応じて含有させることができる。
分散剤としては、ポリカルボン酸のアルカリ金属塩、アミン塩及びアンモニウム塩、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリンソルビタン脂肪酸エステル、及びアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩等があげられ、粉体スラリー塗料の0.1〜10質量%配合される。本発明に用いる粉体スラリー塗料の固体含量は10〜60質量%であることが好ましく、粘度は10〜1000mPa・sであることが好ましい。
本発明で用いる粉体スラリー塗料の製造方法は、全く限定されないが、粉体塗料を水性成分に懸濁させる方法、粉砕前の硬化性組成物を水性成分に加えてから粉砕する方法、又は、粉体塗料を水性成分に懸濁させた後、更に粉砕する等の方法により製造される。
【0046】
本発明において粉体塗料の塗装には、流動浸漬、静電流動浸漬、コロナ帯電ガン、摩擦帯電ガン等の通常行われている塗装方法が用いられる。また、粉体スラリー塗料の塗装には、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、静電塗装等の通常行われている塗装方法が用いられる。
また、本発明において粉体塗料又は粉体スラリー塗料は、熱、紫外線、電子線等のエネルギーで硬化させることができ、例えば、加熱により硬化させる場合、通常150〜250℃の範囲で硬化反応を行うが、150℃以下の近年望まれている低温硬化温度範囲においても実用的な硬化時間範囲で良好な物性の塗膜を得ることができる。硬化時間は、該組成にも左右されるが、通常、20分〜200時間の範囲であるが、20分以下でも可能である。また硬化は、例えば、低温で処理した後高温で焼き付けるというように2段階以上で行ってもよい。
本発明において粉体塗料又は粉体スラリー塗料の塗装により得られる塗膜の厚みは、約1〜1000μmである。
【0047】
本発明は、自動車車体の上塗り、又は中塗り及び上塗りの塗装方法であり、自動車の車種は何でもよく、車体の材質も、鉄鋼、高張力鉄鋼、アルミ等、何でもよい。また、化成処理の方法や下塗り塗料は何でもよく、例えば下塗りには、アニオン又はカチオン型の電着塗料や粉体塗料等が使用できる。
中塗り塗料は、溶剤型、水性、粉体、粉体スラリー等のいずれの塗料でもよく、周知のものを使用することができる。また、塗膜に耐チッピング性を付与する性質を有する塗料であっても構わない。
ベース塗料も、溶剤型、水性、粉体、粉体スラリー等のいずれの塗料でもよく、周知のものを使用することができる。塗料の種類としては、ソリッドカラー塗料、着色塗料、メタリック塗料、干渉模様塗料、光干渉模様塗料、メタリック着色塗料、着色干渉模様塗料等があげられる。また、異なるベース塗料2種を重ねて塗る場合は、例えば、第1ベース塗料がカラーベース塗料で、第2ベース塗料がパールベース塗料であってもよいし、第1ベース塗料がソリッドカラー塗料、メタリック塗料、又は光干渉模様塗料で、第2ベース塗料が無色透明塗膜または第1ベース塗膜の色調を透視できる程度に着色されているソリッドカラー調、メタリック調、または光干渉模様調の有色透明塗膜を形成する塗料であってもよい。
【0048】
本発明に用いる粉体クリヤー塗料または粉体スラリークリヤー塗料をオーバーコートクリヤー塗料として使用する場合、オーバーコートクリヤー塗装する前に既に塗装されているクリヤー塗料は何でもよい。オーバーコートクリヤー塗装により、更に優れた仕上り外観及び耐擦り傷性が得られる。
重ね塗りの下層が、水性塗料または粉体スラリー塗料の場合には、低温短時間のプレヒート又はブローオフと呼ばれる工程を行うのが普通であるが、本発明においては、プレヒート又はブローオフを行ってもよいが、行わなくてもよい。
本発明の塗装方法により得られた塗膜は、耐候性等の耐久性に優れ、金属、コンクリート駆体、木材、プラスチック材等の保護材として、家電製品、電気機器、自動車部品、船舶、鋼製家具、水道資材、缶、道路・建設・土建資材等にも好適に適用できる。とりわけ、例えば自動販売機、道路資材、アルミホイール等にも好ましく使用できる。
【0049】
【実施例】
以下、製造例、実施例、参考例及び比較例により本発明を説明する。
製造例、実施例、参考例及び比較例中に用いられる各種物性の測定方法は、下記の通りである。
[1]数平均分子量:
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて、ポリスチレン標品検量線より求めた。測定試料は、各サンプルをテトラヒドロフランに溶解し、0.5〜1質量%の濃度とした。
【0050】
[2]エポキシ当量
100ml三角フラスコに試料を0.1〜1.0g精秤し、撹拌子を入れた。続いて、n−プロピルアルコール約50ml、ベンジルアルコール約4ml、0.04%ブロムチモールブルー指示薬約3mlを加え、還流冷却器を取り付けて、ホットプレート付きスターラー上で撹拌しながら還流させた。更に、還流下、3.0gのヨウ化カリウムを10mlの水に溶かして加えた(青色になる)。還流下、1N又は0.2N塩酸で滴定し、30秒間黄色を保った時を終点とし、次の式によりエポキシ当量を求めた。
エポキシ当量(g/eq)=試料重量(g)×1000/(塩酸規定度(N)×滴定量(ml))
【0051】
[3]メルトインデックス(MI)
メルトインデクサー(東洋精機製、C−5059D−1型)を用い、JISK7210に準じて測定した。装置を125℃に昇温後、内径2.095±0.005mmのオリフィスを入れ、乾燥させた試料5gを入れ、プランジャーを差込み、オリフィスの出口にストッパーをつけ、225gの荷重を乗せ5分間保持した。5分後に1935gの荷重を加え(合計荷重2160g)、ストッパーを解除してプランジャーが2.5cm動いた時の時間t(秒)をタイマーで測定した。流出した樹脂を回収して重量W(g)を測定し、次の式によりメルトインデックス(g/10min)を求めた。
MI(g/10min)=W(g)×600(秒)/t(秒)
【0052】
[4]ガラス転移温度(Tg)
DSC(示差走査熱量測定)で得られた示差熱曲線から求めた。DSC測定は、約5.0mgのサンプルを用いて、窒素雰囲気下において、−10℃で1分間保持後、10℃/分の昇温速度で130℃まで昇温することにより測定した。
装置:Differential Scanning
Calorimeter DSC7
(PERKIN−ELMER社製)
[5]塗膜の平滑性
塗膜表面を肉眼で評価し、良好なものを○印、不良を×印とした。
[6]鏡面光沢度
光沢計GM−268(ミノルタ(株)製)を使用して、60度−60度鏡面反射率(%)を測定した。
【0053】
[7]耐酸性
40質量%の硫酸を試験塗板に0.4ml滴下し、85℃に加熱したホットプレート上で15分間加熱した後、水洗し、塗面を観察し、次の基準で評価した。
◎:目視観察で全く変化がない。
○:滴下部と非滴下部にわずかな差が見られるがエッチングはない。
△:滴下部と非滴下部の境界にわずかな段差がみとめられるもの。
×:目視観察ではっきりとしたエッチングが認められるもの。
[8]耐溶剤性
キシロールをしみ込ませた綿棒で塗面を往復50回強くこすり、塗面状態を肉眼で評価し、良好なものを○印、不良を×印とした。
[9]鉛筆硬度
JISK5400の鉛筆引っかき値の試験機法に準じて行った。
【0054】
[10]エリクセン値
塗板を恒温恒湿室(20℃、75%RH)の中に1時間置いた後エリクセン試験器に塗膜を外側に向けて取り付け、約10mmの曲率半径をもったポンチを試験板の裏面から規定の距離だけ、毎秒約0.1mmの速さでできるだけ速さにむらがないように押出す。突出した部分の塗膜にワレ、ハガレがあるかどうかを押出した直後に肉眼で見て調べて、塗膜に異常がないときの最大mm数で表した。
[11]耐衝撃性
デュポン式衝撃試験器(撃芯1/2インチ、荷重500g)で塗面にワレ、ハガレを生じない最高の落下距離(cm)を示した。
[12]耐屈曲性
JIS5400に準じて測定した(曲率半径5mm)。異常なしを○印、ワレ発生を×印で表した。
【0055】
[13]耐擦り傷性
ルーフに試験用塗板を張り付けした自動車を洗車機で5回洗車した後の該塗装板の塗面状態を観察した。洗車機はヤスイ産業製「PO20FWRC」を用いた。評価基準は次の通りである。
◎:目視観察でほとんど擦り傷が見つからない。
○:少し擦り傷は見つかるが、その程度は軽い。
△:目視観察で擦り傷が目立つ。
×:目視観察ではっきりと著しい擦り傷が判る。
[14]耐候性
Wether−O−meter ci35(ATLAS ELECTRIC DEVICE Co.社製)を用い、ブラックパネル63℃、60W/m2 、降雨条件において、250時間キセノンアーク照射を行った。照射前後の硬化体表面の60゜の光沢(グロス)を測定し、光沢保持率(照射後の照射前に対する百分率)を求めた。
【0056】
[カラーベース塗料B]
水酸基含有ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、チタン白顔料及びアルミニウムフレークを含有する白色系有機溶剤型塗料。有機溶剤として沸点約80〜110℃のトルエン/キシレン/メタノール/酢酸エチル混合溶剤を使用した。塗膜のマンセルカラーチャートN値8.0、固形分含有率35重量%、粘度12秒/フォードカップ#4/20℃。
[パールベース塗料C]
水酸基含有ポリエステル樹脂、メラミン樹脂及び酸化チタン被覆雲母フレークを含有する光干渉性有機溶剤型塗料。有機溶剤として沸点約80〜110℃のトルエン/キシレン/メタノール/酢酸エチル混合溶剤を使用した。固形分含有率35重量%、粘度12秒/フォードカップ#4/20℃。
【0057】
[エポキシ基含有アクリル系樹脂重合体]
(製造例1)
メタクリル酸メチル150重量部、メタクリル酸n−ブチル411重量部、メタクリル酸グリシジル142重量部、スチレン297重量部、及びアゾビスイソブチロニトリル68重量部からなる単量体及び重合開始剤の混合物を110℃のトルエン1000重量部中に約30分かけて滴下し、内温を110℃に保ちながら滴下終了から5時間重合させた。得られた溶液を減圧にして溶剤を除去し、数平均分子量が4,700、エポキシ当量が1,030g/当量、MIが63g/10分、Tgが55℃のグリシジル基含有メタクリル樹脂Aを得た。
【0058】
[1,3,6−ヘキサントリカルボン酸]
下記実施例で用いた1,3,6−ヘキサントリカルボン酸は、1,3,6−ヘキサントリニトリルを加水分解して得たものを用いた。用いた1,3,6−ヘキサントリカルボン酸に対して測定した1 H−NMRスペクトル(核磁気共鳴スペクトル)を図1に示した。該核磁気共鳴スペクトルは、テロラメチルシランを基準物質とし、重ジメチルスルホキシドを溶媒として用いて、日本電子製JNM−400(400MHz)を用いて測定した。
また、本実施例で用いた1,3,6−ヘキサントリカルボン酸の示差走査熱量計(DSC)で得られた示差熱曲線を図2に示した。DSC測定は、約5.0mgの1,3,6−ヘキサントリカルボン酸を下記装置を用い、窒素雰囲気下において、40℃で2分間保持後、10℃/分の昇温速度で180℃まで昇温することにより測定した。
装置:Differential Scanning
Calorimeter DSC7
(PERKIN−ELMER社製)
【0059】
[粉体塗料の作製]
[参考例1]
製造例1のグリシジル基含有メタクリル樹脂A1884重量部、1,2,4−ブタントリカルボン酸116重量部、エポキシ樹脂(旭化成製AER−6071)60重量部、ベンゾイン10重量部、レベリング剤(ニカライトXK−81)10重量部をヘンシェルミキサーで混合してから、90℃設定の2軸押出機で溶融混練し、ロールで引き伸ばし、冷却した。シリカ粉2重量部を加えて、ヘンシェルミキサー、続いて粉砕機で粉砕し、100μmのふるいを通して粉体塗料を得た。
【0060】
[実施例1〜2、参考例2]
表1に記載のグリシジル基含有メタクリル樹脂、硬化剤、及び参考例1と同様の添加剤を用いて、参考例1と同様にして、それぞれ粉体塗料を得た。
[比較例1]
表1に記載のグリシジル基含有メタクリル樹脂、硬化剤、及び参考例1と同様の添加剤を用いて、参考例1と同様にして、粉体塗料を得た。
[粉体スラリー塗料の作製]
【0061】
[実施例3〜4、参考例3〜4]
水400重量部中に、消泡剤(トロイケミカル社製トロイキドD777)0.6重量部、分散助剤(ローム・アンド・ハース社製オロタン731K)0.6重量部、湿潤剤(エアプロダクツ・アンド・ケミカルズ社製スルフィノールTMN6)0.06重量部、及び増粘剤(ローム・アンド・ハース社製RM8)16.5重量部を分散させた。次いで実施例1〜2、参考例1〜2の粉体塗料94重量部をそれぞれ撹拌混入した。引き続き、再度、消泡剤(トロイケミカル社製トロイキドD777)0.6重量部、分散助剤(ローム・アンド・ハース社製オロタン731K)0.6重量部、湿潤剤(エアプロダクツ・アンド・ケミカルズ社製スルフィノールTMN6)0.06重量部、及び増粘剤(ローム・アンド・ハース社製RM8)16.5重量部を混入分散させた。引き続き、少量ずつ同じ粉体塗料94重量部をそれぞれ撹拌混入した。これをサンドミル中で3.5時間磨砕し、50μmフィルターでろ過し、レベリング剤(ビックケミー社製ビク345)0.05重量部を加えた。
[比較例2]
比較例1の粉体塗料を用いて、実施例3〜4、参考例3〜4と同様にして、粉体スラリー塗料を作製した。
【0062】
【表1】
【0063】
[参考例5]
下塗り及び中塗りを施した基板上に、水性ベース塗料(日本ペイント社製スーパーラックM260シルバー)をエアスプレーによって乾燥膜厚が20μmになるように塗装した。3分間のセッティング時間をおいて、参考例1の粉体クリヤー塗料を静電スプレー塗装にて乾燥膜厚60μmとなるように塗装した。得られた基板を熱風型乾燥炉に投入し、焼き付け処理し、複層塗膜を得た。焼き付けは、140℃20分、160℃10分、160℃20分の3条件で行った。複層塗膜の評価結果を表2に示した。
【0064】
[実施例5]
下塗り及び中塗りを施した基板上に、カラーベース塗料Bを静電塗装によって乾燥膜厚が20μmになるように塗装し、160℃に設定された熱風型乾燥炉で20分間焼き付け処理した。次に、この上にパールベース塗料Cを静電塗装によって乾燥膜厚が20μmになるように塗装した。3分間のセッティング時間をおいて、実施例1の粉体クリヤー塗料を静電スプレー塗装にて乾燥膜厚60μmとなるように塗装した。得られた基板を、参考例5と同様に熱風型乾燥炉に投入し、焼き付け処理し、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表2に示した。
【0065】
[参考例6]
下塗り及び中塗りを施した基板上に、カラーベース塗料Bを静電塗装によって乾燥膜厚が20μmになるように塗装した。3分間のセッティング時間をおいて、パールベース塗料Cを静電塗装によって乾燥膜厚が20μmになるように塗装した。3分間のセッティング時間をおいて、参考例2の粉体クリヤー塗料を静電スプレー塗装にて乾燥膜厚60μmとなるように塗装した。得られた基板を、参考例5と同様に熱風型乾燥炉に投入し、焼き付け処理し、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表2に示した。
【0066】
[実施例6]
下塗りを施した基板上に、粉体スラリー中塗り塗料(関西ペイント社製PS100プライマー)を静電ベル塗装によって乾燥膜厚が45μmになるように塗装し、60℃の温風で5分のブローオフを実施した。次に、その上に水性ベース塗料(関西ペイント社製WT−500シルバーメタリック)を静電ベル塗装によって乾燥膜厚が13μmになるように塗装し、80℃の温風で約3分間ブローオフを実施した。更にその上に、実施例2の粉体クリヤー塗料を静電スプレー塗装にて乾燥膜厚45μmとなるように塗装した。得られた基板をまず90℃に設定された熱風乾燥炉で10分間処理した後、140℃20分、160℃10分、又は160℃20分の3条件で焼き付け処理し、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表2に示した。
【0067】
【表2】
【0068】
[実施例7]
参考例5において、参考例1の粉体クリヤー塗料のかわりに、実施例3の粉体スラリークリヤー塗料を用いて、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表3に示した。
[参考例7]
実施例5において、実施例1の粉体クリヤー塗料のかわりに、参考例4の粉体スラリークリヤー塗料を用いて、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表3に示した。
【0069】
[実施例8]
参考例6において、参考例2の粉体クリヤー塗料のかわりに、実施例4の粉体スラリークリヤー塗料を用いて、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表3に示した。
[参考例8]
実施例6において、実施例2の粉体クリヤー塗料のかわりに、参考例3の粉体スラリークリヤー塗料を用いて、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表3に示した。
【0070】
【表3】
【0071】
[比較例3]
参考例5において、参考例1の粉体クリヤー塗料のかわりに、比較例1の粉体クリヤー塗料を用いて、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表4に示した。
[比較例4]
実施例5において、実施例1の粉体クリヤー塗料のかわりに、比較例1の粉体クリヤー塗料を用いて、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表4に示した。
【0072】
[比較例5]
参考例6において、参考例2の粉体クリヤー塗料のかわりに、比較例1の粉体クリヤー塗料を用いて、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表4に示した。
[比較例6]
実施例6において、実施例2の粉体クリヤー塗料のかわりに、比較例1の粉体クリヤー塗料を用いて、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表4に示した。
【0073】
【表4】
【0074】
[比較例7]
参考例5において、参考例1の粉体クリヤー塗料のかわりに、比較例2の粉体スラリークリヤー塗料を用いて、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表5に示した。
[比較例8]
実施例5において、実施例1の粉体クリヤー塗料のかわりに、比較例2の粉体スラリークリヤー塗料を用いて、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表5に示した。
【0075】
[比較例9]
参考例6において、参考例2の粉体クリヤー塗料のかわりに、比較例2の粉体スラリークリヤー塗料を用いて、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表5に示した。
[比較例10]
実施例6において、実施例2の粉体クリヤー塗料のかわりに、比較例2の粉体スラリークリヤー塗料を用いて、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表5に示した。
【0076】
【表5】
【0077】
[参考例9]
比較例3で得られた160℃20分焼き付けの複層塗膜に、参考例1の粉体クリヤー塗料を静電スプレー塗装にて乾燥膜厚60μmとなるようにオーバーコートクリヤー塗装した。得られた基板を熱風型乾燥炉に投入し、焼き付け処理し、複層塗膜を得た。焼き付けは、140℃20分、160℃10分、160℃20分の3条件で行った。複層塗膜の評価結果を表6に示した。
[実施例9]
比較例8で得られた160℃20分焼き付けの複層塗膜に、実施例3の粉体スラリークリヤー塗料を静電スプレー塗装にて乾燥膜厚60μmとなるようにオーバーコートクリヤー塗装した。
得られた基板を、参考例9と同様に熱風型乾燥炉に投入し、焼き付け処理し、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表6に示した。
【0078】
[実施例10]
参考例6で得られた160℃20分焼き付けの複層塗膜に、実施例1の粉体クリヤー塗料を静電スプレー塗装にて乾燥膜厚60μmとなるようにオーバーコートクリヤー塗装した。得られた基板を、参考例9と同様に熱風型乾燥炉に投入し、焼き付け処理し、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表6に示した。
[参考例10]
参考例8で得られた160℃20分焼き付けの複層塗膜に、参考例4の粉体スラリークリヤー塗料を静電スプレー塗装にて乾燥膜厚60μmとなるようにオーバーコートクリヤー塗装した。得られた基板を、参考例9と同様に熱風型乾燥炉に投入し、焼き付け処理し、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表6に示した。
【0079】
【表6】
【0080】
[比較例11]
実施例7で得られた160℃20分焼き付けの複層塗膜に、比較例1の粉体クリヤー塗料を静電スプレー塗装にて乾燥膜厚60μmとなるようにオーバーコートクリヤー塗装した。得られた基板を、参考例9と同様に熱風型乾燥炉に投入し、焼き付け処理し、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表7に示した。
[比較例12]
実施例5で得られた160℃20分焼き付けの複層塗膜に、比較例2の粉体スラリークリヤー塗料を静電スプレー塗装にて乾燥膜厚60μmとなるようにオーバーコートクリヤー塗装した。得られた基板を、参考例9と同様に熱風型乾燥炉に投入し、焼き付け処理し、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表7に示した。
【0081】
[比較例13]
比較例9で得られた160℃20分焼き付けの複層塗膜に、比較例1の粉体クリヤー塗料を静電スプレー塗装にて乾燥膜厚60μmとなるようにオーバーコートクリヤー塗装した。得られた基板を、参考例9と同様に熱風型乾燥炉に投入し、焼き付け処理し、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表7に示した。
[比較例14]
比較例6で得られた160℃20分焼き付けの複層塗膜に、比較例2の粉体スラリークリヤー塗料を静電スプレー塗装にて乾燥膜厚60μmとなるようにオーバーコートクリヤー塗装した。得られた基板を、参考例9と同様に熱風型乾燥炉に投入し、焼き付け処理し、複層塗膜を得た。複層塗膜の評価結果を表7に示した。
【0082】
【表7】
【0083】
本発明の塗装法により、150℃よりも低い低温領域において、十分な性能を有する塗膜が得られた。また、通常よりも短い硬化時間で十分な性能を有する塗膜が得られた。
【0084】
【発明の効果】
本発明の自動車塗装方法により、平滑性、光沢等の仕上り外観、耐酸性、耐溶剤性等の化学的性質、硬度、耐衝撃性、耐屈曲性、耐擦り傷性(洗車機等での耐傷つき性)等の物理的強度、及び耐候性等に優れた塗膜が得られ、かつ硬化時間の短縮や硬化温度の低温化も可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で用いた1,3,6−ヘキサントリカルボン酸のプロトン核磁気共鳴スペクトル図である。
【図2】本発明の実施例で用いた1,3,6−ヘキサントリカルボン酸のDSC曲線である。
Claims (7)
- 下塗り又は下塗り及び中塗りを施した塗装板上に第1ベース塗料を塗装して硬化させ、更に第2ベース塗料を塗装し、その硬化前にクリヤー塗料を塗装し、第2ベース塗料とクリヤー塗料を同時に硬化させる、いわゆる3コート2ベークの自動車上塗り塗装において、クリヤー塗料が分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)及び脂肪族トリカルボン酸(b)からなる粉体クリヤー塗料又は粉体スラリークリヤー塗料であり、且つ該脂肪族トリカルボン酸(b)が式(1)で表される化合物であることを特徴とする、自動車上塗り塗装方法。
- 下塗り又は下塗り及び中塗りを施した塗装板上に第1ベース塗料を塗装し、その硬化前に第2ベース塗料を塗装し、更にその硬化前にクリヤー塗料を塗装し、第1ベース塗料、第2ベース塗料、及びクリヤー塗料を同時に硬化させる、いわゆる3コート1ベークの自動車上塗り塗装において、クリヤー塗料が分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)及び脂肪族トリカルボン酸(b)からなる粉体クリヤー塗料又は粉体スラリークリヤー塗料であり、且つ該脂肪族トリカルボン酸(b)が式(1)で表される化合物であることを特徴とする、自動車上塗り塗装方法。
- 下塗りを施した塗装板上に中塗り塗料を塗装し、その硬化前にベース塗料を塗装し、更にその硬化前にクリヤー塗料を塗装し、中塗り塗料、ベース塗料、及びクリヤー塗料を同時に焼き付ける、いわゆる3コート1ベークの自動車中塗り・上塗り塗装において、クリヤー塗料が分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)及び脂肪族トリカルボン酸(b)からなる粉体クリヤー塗料又は粉体スラリークリヤー塗料であり、且つ該脂肪族トリカルボン酸(b)が式(1)で表される化合物であることを特徴とする、自動車中塗り・上塗り塗装方法。
- p=1、q=2、r=s=0である請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車上塗り塗装方法又は自動車中塗り・上塗り塗装方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動車上塗り塗装方法又は自動車中塗り・上塗り塗装方法により得られる複層塗膜。
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