JP4111257B2 - 化粧料組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、植物由来の抗菌効果を持つ成分を配合することにより、防腐効果に優れた化粧料組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、化粧料は、製造から使用開始まで比較的長期間倉庫や店頭などで保存される場合が多く、また使用開始後も少量ずつ使用されるため、製造から全量使用し終わるまで長期間品質が安定している必要がある。従って化粧料の腐敗に伴う変質の防止は、その商品価値を損なわないためにもきわめて重要である。
【0003】
その為、従来化粧料には品質の劣化防止の目的で各種の化学合成品系の防腐剤が用いられている。このような化学合成品系の防腐剤としては、安息香酸及びその塩、イソプロピルメチルフェノール、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、ソルビン酸及びその塩、デヒドロ酢酸及びその塩、塩化ベンザルコニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、グルコン酸クロルヘキシジンなどが挙げられる。中でもパラオキシ安息香酸エステルやフェノキシエタノールは化粧料用防腐剤として汎用されている。
【0004】
しかしながら、上記の化学合成品系の防腐剤は、一般に皮膚一次刺激性や、感作性、光感作性など化粧かぶれの原因となる場合もあることから、化粧品原料基準において配合量が規制されており、防腐剤そのものの安全性には問題があるとされている。
【0005】
また近年では、食品分野を中心に、天然物、特に植物由来からの抽出物を有効成分とする食品用保存料としての開発が進められている。例えば、アルニカ、アロエ、ウイキョウ、エイジツ、オウバク、オウレン、オトギリソウ、カミツレ、クジン、ゲンノショウコ、サルビア、サンザシ、サンショウ、シコン、シソ、シャクヤク、シラカバ、スイカズラ、スギナ、セイヨウキズタ、セイヨウノコギリソウ、セージ、タイム、チャ、チョウジ、トウキ、ドクダミ、ニンニク、ハマメリス、ビワ、ホップ、ムクロジ、メリッサ、ユーカリ、ラベンダー、レモン、ローズマリー等から水、有機溶媒により抽出したものが挙げられる。
【0006】
しかしながら、上記の植物抽出物は安全性の点ではクリアするものの、ある特定の菌のみにしか効果が得られなかったり、また抗菌性が比較的弱かったりなど、化学合成品系の防腐剤と同等の防腐効果は得られない。このような問題点を解決するために、2種類以上の植物抽出物の併用や、また植物抽出物と化学合成系の抗菌剤とを併用することにより、強い抗菌効果を出す試みがある。例えば、特開平4−278070号公報には、オレガノ、クローブ、ユッカの粉砕物または抽出物と、炭素数4〜12の脂肪酸のモノグリセライドとの混合物からなる食品用静菌剤が報告されている。
【0007】
しかしながら、上記公報記載の静菌剤を化粧料に配合しようとした場合、抗菌性はある程度は満足されるものの、いずれの場合も植物粉砕物や抽出物に含まれる精油に由来する特異な臭気があり、化粧料としての商品価値を低下させる。また精油成分や粉砕物は非水溶性のため、ローションなどの水系液状化粧料に配合するのは難しい。
【0008】
【発明が解決しようとしている課題】
現状において、化粧料の防腐性を長期間維持でき、純化学合成品に匹敵するだけの防腐効果を持ち、着色の度合いの小さい、臭気の少ない、しかも安全性の高い天然系の防腐剤を見いだすことができれば、その意義はきわめて大きいものとなる。本発明は従来の化粧料における問題点を解決しつつ、微生物による品質劣化を充分に防ぐことのできる化粧料を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、クローブより有機溶剤等を用いて抽出し、抽出液に水を添加して析出した非水溶性成分を除去し、水を留去することにより精油成分を除去して得られた水溶性成分と、炭素数8〜12の脂肪酸モノグリセライドとを配合した化粧料組成物は、着色の度合いが小さく、臭気の少ない、且つ良好な防腐効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、クローブから得られた水溶性成分と炭素数8〜12の脂肪酸モノグリセライドとを含有することを特徴とする、防腐効果の優れた化粧料組成物を提供するものである。
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるクローブは、フトモモ科の植物であるチョウジ(学名eugenia caryophyllata)の花蕾、葉、茎などがあげられるが、特に花蕾が好ましい。本発明におけるクローブの水溶性成分は、クローブを有機溶剤等で抽出し、得られた抽出液に水を加えて析出した非水溶性成分を除去し、水を留去すると同時に精油成分を除去することにより得られる。
【0011】
本発明における抽出は常法により行うことができる。例えば、バッチ式抽出機よる静置浸漬抽出などがあげられ、攪拌機を用いて抽出効率を上げることも可能である。抽出溶媒としては特に限定されないが、例えば水、又はメタノール、エタノール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、アセトン、酢酸エチル等の有機溶剤や、水とこれら有機溶剤との混合溶剤を用いることができる。中でも水又はエタノール、及びその混合溶媒が好ましい。抽出溶媒はクローブの重量に対して等量から20倍量で行うのが好ましい。抽出は着色の面より通常は常温で行うのが好ましいが、加温状態にして行うことも可能である。
【0012】
上記の方法により得られた抽出液は、抽出液の重量に対して、1/2量から10倍量の水を加えて非水溶性成分を析出させる。これを濾過もしくは遠心分離などにより、析出した非水溶性成分を除去し、水溶液を得る。これを適当な量まで減圧濃縮もしくは溶媒を完全に留去すると同時に、化粧料に配合した場合に臭気の面や溶解性の面で問題となる精油成分を除去して、臭いの少ない水溶性の抗菌成分を含む抽出物を得る。まだ抽出物に臭気が残存している場合は、更に、水を適量加えて、減圧濃縮を繰り返すことにより、香気成分を除去する。更に、抗菌性の低下が認められない範囲内で、活性炭等による脱色処理やカラムクロマトグラフィーなどによる精製処理を行うことも可能である。
【0013】
このようにして得られた水溶性成分は細菌類、特にグラム陽性菌に対して強い抗菌作用を有するが、化粧料に求められる幅広い抗菌スペクトルは有しておらず、本発明によって得られた水溶性成分のみでは、十分な防腐効果は得られない。
【0014】
そこで、本発明においては、上記の方法により得られた水溶性成分と、炭素数8〜12の脂肪酸モノグリセライドとの併用で用いる。
【0015】
本発明に用いられる炭素数8〜12の脂肪酸モノグリセライドとしては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸等のモノグリセライドが挙げられる。ジグリセライド、トリグリセライドも若干の抗菌効果を有するが、モノグリセライドが最も効果が大きい。炭素数7以下、または炭素数13を越える脂肪酸モノグリセライドも効果を有するが、臭気や溶解性の面から実用的には炭素数8〜12の脂肪酸モノグリセライドに限られる。これらの脂肪酸モノグリセライドは、化学合成品に分類されるものの、天然に存在し、人体に対して安全性の面では純化学合成品よりも優れている。しかしながら、その抗菌作用は純化学合成系の防腐剤と比較するとあまり強くはなく、また幅広い抗菌スペクトルは有していない。
【0016】
そこで本発明においては、上記のクローブより得られた水溶性成分と、脂肪酸モノグリセライドとを併用することにより、それぞれ単独の場合より、相乗的に防腐力が強化され、細菌類や真菌類に対して幅広い抗菌スペクトルを有するものとなる。
【0017】
本発明におけるそれぞれの抗菌成分の化粧料中への配合量は、クローブの水溶性成分が0.001〜1重量%、特に0.002〜0.5重量%が好ましい。また炭素数8〜12の脂肪酸モノグリセライドは0.01〜1重量%、特に0.05〜0.5重量%が好ましい。
【0018】
本発明における化粧料組成物とは、クリーム、乳液、化粧水、美容液等の基礎化粧品、石鹸、洗顔料、シャンプー、リンス等の清浄用化粧品、ヘアトニック、整髪料等の頭髪用化粧品、ファンデーション、アイライナー、マスカラ、口紅等のメイクアップ化粧品、歯磨き等の口腔化粧品、浴用化粧品等が挙げられる。
【0019】
以下実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお以下の実施例中の数値の単位は、特に断りのない限り重量%である。
【0020】
[製造例]クローブより水溶性成分の抽出
クローブの乾燥した花蕾150gに80%含水エタノール300gを加え、常温にて16時間抽出し、減圧濾過により抽出液を得た。抽出液に水600gを加えると非水溶性成分が析出した。この溶液を遠心分離(10,000rpm、10分間)により析出物を分離し、上澄液を採取後、300gまで減圧濃縮した。更にこの濃縮液に、水を600g加え、水を留去することにより、クローブ抽出物を得た。
【0021】
[防腐性評価方法]
下記A〜Eの試験菌株を使用した。
A:黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus ATCC 6538)
B:大腸菌(Escherichia coli ATCC 8739)
C:緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa ATCC 9627)
D:カンジダ酵母(Candida albicans ATCC 10231)
E:黒麹カビ(Asperugillus niger ATCC 16404)
試料1gあたり、細菌(A〜C)は混合菌液で106個、真菌(D、E)は混合菌液で105個を植菌し、37℃、及び25℃にてそれぞれ培養して、接種直後、7日目、14日目、21日目、28日目の生菌数を測定し、下記基準で防腐効果を評価した。
【0022】
[防腐性の評価基準]
米国薬局方(USP)のガイドラインに従った。すなわち、下記試験結果が得られた場合に、その試料の防腐効果は有効であると判断した。なお試験結果は、合格したものを「○」、不合格のものを「×」として表示した。
細菌菌液の場合:接種した細菌が、14日以内に初発菌数の0.1%以下に減少し、残りの14日間でそれ以前のレベルを維持、あるいはそれ以下に減少する。真菌菌液の場合:接種した真菌が、初めの14日間で初発菌数を維持、あるいはそれ以下に減少し、残りの14日間でそれ以前のレベルを維持、あるいはそれ以下に減少する。
【0023】
[実施例1、比較例1、2]
<1>〜<5>の各油相成分を混合して、80℃にて均一溶解させた。また<6>〜<8>、<10>〜<11>の各水相成分を混合して、80℃にて均一溶解させた。これに前記油相成分を添加して3,000rpmで乳化した。50℃まで冷却後、<9>を添加して、第1表に示す組成におけるO/W型のエモリエントクリームを作成した。又、前述の評価方法、評価基準にて、それぞれの防腐性を評価した。
【0024】
[実施例2、比較例3,4]
<1>〜<10>の各成分を混合して、第2表に示す組成におけるモイスチャーローションを作成した。又、前述の評価方法、評価基準にて、それぞれの防腐性を評価した。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
第1表、及び第2表の結果から、クローブの抽出物とグリセリンモノカプリル酸エステルとを併用した実施例1及び2では、細菌試料、真菌試料共に良好な防腐力を示し、USPの判定基準をクリアした。一方、クローブの抽出物のみを配合した比較例1及び3では、細菌試料においては実施例と同様にUSPの判定基準をクリアしたが、真菌試料においては経時的な生菌数の減少は見られなかった。またグリセリンモノカプリル酸エステルのみを配合した比較例2及び4では、細菌試料においては経時的に若干の生菌数の減少は認められるものの、実施例のような良好な防腐性は得られず、真菌試料においてはUSPの判定基準をクリアした。
【発明の効果】
本発明の化粧料組成物においては、クローブより抽出した水溶性成分、及び炭素数8〜12のモノグリセライドとを併用することにより、それぞれ単独では見いだせない相乗的な防腐効果を発揮した。その上、本発明において使用したクローブの水溶性成分は、クローブの精油に由来する特異な臭気は除去したものであり、着色の度合いも少ないので、無香料、無着色をコンセプトとした基礎化粧品などにも配合することが可能である。
Claims (1)
- クローブ(チョウジ)より有機溶剤、又は、水と有機溶剤との混合溶剤で抽出して得られた抽出物より非水溶性成分を分別、脱臭、精製して得られた水溶性成分0.001〜1重量%と、炭素数8〜12の脂肪酸モノグリセライド0.01〜1重量%を含有することを特徴とする化粧料組成物。
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