JP4111087B2 - 熱処理装置のガス供給方法およびセラミック電子部品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばセラミック成形体の焼成などの熱処理を行う熱処理装置のガス供給方法およびセラミック電子部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミック電子部品を製造する過程において、例えばセラミック成形体の焼成などの熱処理は、連続式熱処理炉、あるいは、バッチ式熱処理炉などの熱処理装置によって行われる。
【0003】
例えば、熱処理によりセラミック成形体の焼成を行う場合、そのセラミック成形体をいわゆる匣といわれる容器に収納した状態で熱処理を行う(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
その容器は、セラミック成形体が載置される載置面を有する平板状に構成され、実際に熱処理に使用される場合、複数個のその容器が上下に所定間隔に隔てた状態で積み上げられたものに構成される。したがって、下側の容器におけるセラミック成形体の載置面とその直上の容器における下面とは互いに平行な状態で対向している。そして、その対向する面間の空間は、熱処理時においてセラミック成形体周りで所望の雰囲気ガスが拡散されているようにするため、その雰囲気ガスが流動していく流路となっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−172464号公報(全頁、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1の熱風循環式の熱処理装置のように、流路に供給される雰囲気ガスの流入速度が遅い場合、流路の途中までしか雰囲気ガスが到達せず、雰囲気ガスとセラミック成形体との反応が不十分となり、セラミック成形体の焼成にバラツキが生じるという問題があった。
【0007】
逆に、雰囲気ガスの流入速度が大きすぎると、供給された雰囲気ガスがセラミック成形体との反応に十分寄与することなく、雰囲気ガスが匣内を通過してしまい、セラミック成形体の焼成にバラツキが生じるという問題があった。
【0008】
以上のように、セラミック成形体の焼成にバラツキが生じると、例えば、セラミック成形体が積層セラミックコンデンサを作成するものである場合、匣の端部や中央部において積層セラミックコンデンサの特性にバラツキが生じるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであって、被熱処理物全体をバラツキが生じることなく均一に焼成できることを解決しようとする課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る熱処理装置のガス供給方法は、被熱処理物を載せる載置面とこの載置面に対向する天井面との間の空間を前記載置面に沿って流れる雰囲気ガスの流路とするとともに、前記流路の一端を前記雰囲気ガスの入口とし、前記被熱処理物の焼成を行う熱処理装置のガス供給方法であって、前記雰囲気ガスを、次式を満たす流速Vで前記入口から前記流路に流入制御することを特徴とする。
【0011】
4.0×(L・τT)/(C・D2)≧V≧(L・τT)/(C・D2)
ここで、Vは流路入口での流速、Lは流路長さ、τTは前記雰囲気ガスの動粘性係数、Cは経験則に基づく流路に関する係数(0.05〜0.15)、Dは前記流路における前記載置面と前記天井面との上下間隔長さから、前記被熱処理物の高さを除いたものである。
【0012】
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法は、この熱処理装置のガス供給方法を用い、前記熱処理装置の前記載置面に前記被熱処理物を載置する工程と、前記雰囲気ガスを前記入口から前記流路に流入させて前記被熱処理物を焼成する工程とを含むものである。
【0013】
本発明に係る熱処理装置のガス供給方法およびセラミック電子部品の製造方法によると、雰囲気ガスの流入速度Vの下限を(L・τT)/(C・D2)とした。この(L・τT)/(C・D2)とは、流路の一端の入口から流入された雰囲気ガスが、流路長さLに相当する流路の他端の出口まで到達したときに当該流速が0m/sとなる流入速度を表している。このため、雰囲気ガスの流入速度Vの下限を(L・τT)/(C・D2)とすることで、不十分な流入速度Vによって、流路の入口から流入された雰囲気ガスが、流路の他端の出口まで到達しないのを防止でき、入口から流入した雰囲気ガスによって被熱処理物全体が均一に焼成される。また、雰囲気ガスの流入速度Vの上限を4.0×(L・τT)/(C・D2)としたので、流入速度が速すぎて、供給された雰囲気ガスが被熱処理物との反応に十分寄与せずに、雰囲気ガスが匣内を通過してしまうのを防止でき、被熱処理物全体の焼成が十分に行える。
【0014】
また、本発明に係る熱処理装置のガス供給方法は、被熱処理物を載せる載置面とこの載置面に対向する天井面との間の空間を前記載置面に沿って流れる雰囲気ガスの流路とするとともに、前記流路の両端をそれぞれ前記雰囲気ガスの入口とし、前記被熱処理物の焼成を行う熱処理装置のガス供給方法であって、前記雰囲気ガスを、次式を満たす流速Vで前記入口から前記流路に流入制御することを特徴とする。
【0015】
4.0×(L・τT)/(C・D2)≧V≧0.5×(L・τT)/(C・D2)
ここで、Vは流路入口での流速、Lは流路長さ、τTは前記雰囲気ガスの動粘性係数、Cは経験則に基づく流路に関する係数(0.05〜0.15)、Dは前記流路における前記載置面と前記天井面との上下間隔長さから、前記被熱処理物の高さを除いたものである。
【0016】
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法は、この熱処理装置のガス供給方法を用い、前記熱処理装置の前記載置面に前記被熱処理物を載置する工程と、前記雰囲気ガスを前記入口から前記流路に流入させて前記被熱処理物を焼成する工程とを含むものである。
【0017】
本発明に係る熱処理装置のガス供給方法およびセラミック電子部品の製造方法によると、雰囲気ガスの流入速度Vの下限を0.5×(L・τT)/(C・D2)とした。この(L・τT)/(C・D2)とは、流路の一端の入口から流入された雰囲気ガスが、流路長さLに相当する流路の他端の出口まで到達したときに当該流速が0m/sとなる流入速度を表している。このため、雰囲気ガスの流入速度Vの下限を0.5×(L・τT)/(C・D2)とすることで、不十分な流入速度Vによって、流路の入口から流入された雰囲気ガスが、流路の中間まで到達しないのを防止でき、流路の両端入口から各々流入した雰囲気ガスによって被熱処理物全体が均一に焼成される。また、雰囲気ガスの流入速度Vの上限を4.0×(L・τT)/(C・D2)としたので、流入速度が速すぎて、供給された雰囲気ガスが被熱処理物との反応に十分寄与せずに、雰囲気ガスが匣内を通過してしまうのを防止でき、被熱処理物全体の焼成が十分に行える。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を図面に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0019】
図1ないし図5は、本発明に係る実施の形態の一例である熱処理装置を示すものであって、図1は熱処理装置の縦断正面図、図2は図1の熱処理装置の横断平面図、図3は図1の匣を示す縦断正面図、図4は匣の流路における長さ寸法と流路の上下幅寸法を示す縦断面図、図5は匣の流路を示す平面図である。
【0020】
本発明に係る熱処理装置は、連続炉を備えるものでもよいとともに、バッチ式の熱処理炉を備えるものでもよい。ここでは、連続式の熱処理炉を備えるものについて説明する。また、連続式の熱処理炉の搬送方向左右両端から雰囲気ガスを供給するものである。
【0021】
図1を参照して、例えば積層セラミックコンデンサなどを作成するセラミック成形体を熱処理するための連続式熱処理炉1が、熱処理装置の一例として示されている。
【0022】
この連続式熱処理炉1は、被熱処理物としてのセラミック成形体Wを匣2に搭載した状態で、その匣2を搬送装置3で搬送しながら焼成を行うものである。連続式熱処理炉1は、天井壁部および左右の側壁部4a,4aを断熱材で構成した炉体4内に、炉体4長手方向(被熱処理物の搬送方向)に沿った熱処理空間5が設けられる。この熱処理空間5内には、その長手方向に沿って匣2を所定速度で搬送する搬送装置3が設けられている。搬送装置3は、搬送方向に搬送路を成す状態で多数の搬送用ローラが並設されたローラ式搬送装置である。この搬送装置3上に載置された状態で匣2が搬送される(図2において黒く塗りつぶした矢印で搬送方向を示す)。なお、搬送装置としてはローラ式搬送装置に限定されるものではなく、各種搬送装置を適用可能である。また、ヒータ(図示せず)が熱処理空間5の熱処理を施す所定領域に配備されており、その領域に対応した温度環境が設定されるように構成されている。
【0023】
図1および図3に示すように、匣2は、アルミナ質の平面視矩形状の板体からなり、その上下間隔を所定高さに隔てた状態で互いに水平かつ平行となるように、上下に複数枚(本実施の形態では3枚)積み上げられた構成となっている。なお、匣2は、アルミナ製に限定されるものでなく、セラミック質のものであれば例えばジルコニア製のものなどを用いることができ、金属質のものであれば、例えばSUS、インコネルなどを用いることができる。各匣2の積み上げは、例えば前後両端縁に立ち上げ形成したフランジ部分において行われる。匣2における両フランジ部分間の平板部分の上面が、セラミック成形体Wの載置面7となっている。これに対してその匣2の直上に積み上げられた匣2の底面が、下側の匣2の載置面7に対して上下に対向する面を成す天井面8となる。したがって、両フランジ部分の高さによって、匣2の載置面7とその直上の天井面8との間隔が設定されている。なお、最上位置の匣2は単にその下側の匣2の天井面8として利用されるものであって、フランジ部分は設けられていなくてもよい。
【0024】
また、匣2の左右両側にはフランジ部分がないので、匣2を積み上げた状態では、左右両側が開放されている。したがって、各匣2の載置面7とその直上の天井面8との間の空間は、後述する雰囲気ガスが流れて行く流路9となっている。左右方向に沿った流路9の左側端部ならびに右側端部が、それぞれ雰囲気ガスの流入する入口10,11となっている。すなわち、匣2の搬送方向左右両端において、各々水平方向ならびに垂直方向に対向する位置に、雰囲気ガスの入口10,11が配置されている。
【0025】
なお、匣2としては、フランジ部分を設けない平板部分のみの構成にして、互いに上下に間隔を置いた積み上げを行うのに、フランジ部分に替えて、上下の匣2,2間にスペーサ部材を介装する構成にしてもよい。
【0026】
また、熱処理炉1の搬送方向での所定領域においては、その領域に対応して雰囲気ガスが供給されるように、炉体4の左右の壁4a,4aに雰囲気ガスを供給する配管14が貫通して設けられている。各配管14,14の先端は、積み上げられた匣2,2の端面近傍に沿って立ち上がり、その立ち上がり部14a,14aに、雰囲気ガスを匣2に向けて吹き出すためのガス供給穴12が形成されている。
【0027】
各配管14は、雰囲気ガス供給用のポンプ15と接続されている。ポンプ15は、ガス供給装置として、ガスボンベや外気などの雰囲気ガス供給源16から雰囲気ガスを熱処理空間5内に供給作動するものであって、制御部17からの制御信号に従った出力で作動するものとなっている。
【0028】
ガス供給穴12から供給される雰囲気ガス(その流れを白抜きの矢印で示す)は、焼成に適した雰囲気ガス、例えばN2,H2,H2O,CO,CO2,O2,空気が供給される。ガス供給穴12の数や大きさ、設けられる位置は熱処理を行うその炉の形態や、搬送装置3および匣2などとの位置関係、被熱処理物の種類などの各種の諸条件によって適宜設定される。
【0029】
本実施の形態では、ガス供給穴12は、上下の匣2間の流路9の左右において、載置面7と天井面8との上下間隔長さから、セラミック成形体Wの高さを除いた流路上下幅寸法Dの中間にて、それぞれ1箇所ずつ対向して形成されている。
【0030】
ガス供給穴12の大きさは、流路上下幅寸法Dより小さい直径の穴(形状は特に限定されない)にて形成されている。
【0031】
制御部17は、オペレータによって入力される制御情報に基づいてポンプ15の駆動出力を設定し、その設定された出力でポンプ15を駆動する。このようにポンプ15の駆動出力を設定するために制御部17に入力される情報としては、雰囲気ガスの動粘性係数τTの具体的数値、流路9における流路上下幅寸法Dの具体的数値、所定係数Cの具体的数値(経験則より0.05〜0.15)、流路長さLの具体的数値である。
【0032】
制御部17に備えられるマイコンなどの演算器でなるガス流速算出部では、これらの情報に基づいて、次式▲1▼に示す臨界流速VTが算出される。
【0033】
VT=(L・τT)/(C・D2)…▲1▼
ここで、臨界流速VTとは、流路9の一端の入口から流入された雰囲気ガスが、流路長さLに相当する流路9の他端の出口まで到達したとき、当該流速が0m/sとなる流入速度を表している。
【0034】
なお、制御部17のガス流速算出部では、所定の雰囲気ガスが供給される場合における任意の流路長さLと、所定の流路上下幅寸法Dとに対応する臨界流速VTが簡易に求められる検量線が予め生成および記憶されていてもよく、搬送される匣2の寸法として入力された情報に応じて、雰囲気ガスの臨界流速VTを適宜その検量線から求めるようにしてもよい。
【0035】
流路9の入口10,11に雰囲気ガスがそれぞれ流入する際の流入流速Vは、次式▲2▼を満たす値に設定される。
【0036】
4.0×(L・τT)/(C・D2)≧V≧0.5×(L・τT)/(C・D2)…▲2▼
流入流速Vの下限値は、臨界流速VTの半分に設定されている。すなわち、流路9の両端の入口10,11からそれぞれ雰囲気ガスが流入されるので、各入口10,11から流入された雰囲気ガスがそれぞれ流路9の中央にまで到達し、セラミック成形体Wの全体に雰囲気ガスが行き渡り、セラミック成形体W全体が均一に焼成される。
【0037】
流入流速Vの上限値は、臨界流速VTの4倍に設定されている。流入速度が速すぎて、供給された雰囲気ガスがセラミック成形体Wとの反応に十分寄与せずに、雰囲気ガスが匣2内を通過してしまうのを防止でき、雰囲気ガスが匣2内をゆっくり通過、あるいは滞留するため、セラミック成形体W全体の焼成が十分に行える。
【0038】
なお、入口10,11に雰囲気ガスが流入する際の流速とその流速を得るためのポンプ15の駆動出力との関係が、所望の範囲にわたる流速に対応して予め実験などによってデータとして得られている。そのデータは例えば制御部17に備える記憶手段や、記憶媒体などに記憶されており、当該データに基づいて、流速Vに対応した雰囲気ガスのガス供給穴12からの吹き出しが行われるように、ポンプ15を駆動制御する。
【0039】
表1に、図5に示した熱処理装置のガス供給方法において、焼成後の匣2内の積層セラミックコンデンサの特性のバラツキ(例えば、静電容量)を、流入速度Vを変化させて評価した結果を示す。
【0040】
【表1】
本例の場合、流路長さL:0.35[m]、雰囲気ガスの動粘性係数τT:2.28×10−4[m2/s]、係数C:0.05、流路上下幅寸法D:0.02[m]である。
【0041】
この例の場合、セラミック成形体Wが匣2の左右両端間のほぼ全体に渡って載置されているので、流路長さLの値は匣2の左右幅と一致する。
【0042】
式▲1▼に示す臨界流速VTは、下記のように算出される。
【0043】
VT=(L・τT)/(C・D2)
=(0.35×2.28×10−4)/(0.05×(20×10−3)2)
=4.0[m/s]
流入流速Vの違いに応じて、R(バラツキ)を測定する。Rは、匣2の端部18における積層セラミックコンデンサの静電容量(μF)の平均値と、匣2の中央部19における積層セラミックコンデンサの静電容量(μF)の平均値との差と規定した。
【0044】
表1の評価結果より、流入流速V[m/s]が2.0,8.0,16.0であって、V/VTが0.5,2.0,4.0の場合に、Rがそれぞれ0.02,0.01,0.04となり、合格ラインである0.05より小さくなる。すなわち、バラツキが5%未満となる。
【0045】
また、流入流速V[m/s]が0.8,20.0であって、V/VTが0.2,5.0の場合に、Rがそれぞれ0.19,0.16となり、0.05のより大きくなり、不合格となる。
【0046】
よって、流入流速V[m/s]が式▲2▼を満たすときに、バラツキが5%未満の条件を満たすことがわかる。
【0047】
なお、被熱処理物Wを載置する匣2としてアルミナ質の板状のものを用いたが、その他の材料、例えば金属質の板状のものなどの載置部材を用いてもよい。
【0048】
また、セラミック成形品として積層セラミックコンデンサを示したが、本発明は、セラミック成形品としてこれに限定されるものではなく、その他各種のセラミック成形品に適用できる。
【0049】
図6および図7に、熱処理装置のガス供給方法の変形例を示す。
【0050】
図6の例は、匣2の搬送方向左右両端より、各々搬送方向前後に若干ずれた位置において、互いに対向して雰囲気ガスが供給されるものである。
【0051】
すなわち、搬送方向に若干傾斜した向きに配管の立ち上がり部14a,14aのガス供給穴から雰囲気ガスが供給されるものである。なお、雰囲気ガスの流入流速Vは、式▲2▼を満たす値に設定される。
【0052】
図7の例は、匣2の搬送方向左右両端より、各々搬送方向前後に匣2分ずれた位置において、各々搬送方向に直交する向きに雰囲気ガスが供給されるものである。
【0053】
この例の熱処理装置は、連続式の熱処理炉に限り、雰囲気ガスの流入流速Vは、式▲2▼を満たす値に設定される。
【0054】
図8を用いて、本発明に係る他の実施の形態に係る熱処理装置のガス供給方法について説明する。
【0055】
この実施の形態は、上下に配置され、黒く塗りつぶした矢印方向に回転可能な複数の環状の載置部材6と、載置部材6の載置面7上に周方向に並んで載置され、被熱処理物となるセラミック成形体がそれぞれ載置される複数の匣2とから構成されている。また、配管の立ち上がり部14a,14aが、環状の載置部材6の内周と外周のそれぞれに、周方向にずれた位置に設けられている。
【0056】
載置部材6を回転させながら内外の立ち上がり部14a,14aのガス供給穴から雰囲気ガスが供給され、セラミック成形体の全体が焼成される。
【0057】
なお、雰囲気ガスの流入流速Vは、式▲2▼を満たす値に設定される。また、匣2の内周と外周にそれぞれ設けられる配管の立ち上がり部14aの数は、それぞれ1個ずつに限らない。
【0058】
図9,10を用いて、本発明に係るさらに他の実施の形態に係る熱処理装置のガス供給方法について説明する。
【0059】
この実施の形態は、流路9の一端のみから雰囲気ガスが流入される。流路9の入口10から流入された雰囲気ガスは、他端の出口13から排出される。
【0060】
流路9の入口10に雰囲気ガスがそれぞれ流入する際の流入流速Vは、次式▲3▼を満たす値に設定される。
【0061】
4.0×(L・τT)/(C・D2)≧V≧(L・τT)/(C・D2)…▲3▼
このように、流入流速Vの下限値が臨界流速VTに設定されており、流路の一端の入口10から流入された雰囲気ガスが、流路長さLに相当する流路の他端の出口13まで到達し、セラミック成形体Wの全体に雰囲気ガスが行き渡り、セラミック成形体W全体が均一に焼成される。
【0062】
なお、本実施の形態に係る熱処理装置は、連続式の熱処理炉に限らず、バッチ式の熱処理炉に適用してもよい。例えば、図8に示すような回転式の熱処理装置において、配管の立ち上がり部14aを環状の載置部材6の内周あるいは外周のいずれか片側のみに設け、雰囲気ガスの流入流速Vを式▲3▼を満たす値に設定して、セラミック成形体W全体を焼成するものであってもよい。
【0063】
上記各実施の形態において、流路9に流入される雰囲気ガスは、連続して供給されるものに限らず、間欠的に供給されるものであってもよい。例えば、少なくとも60秒中1秒の間欠で雰囲気ガスが供給されるものでもよい。
【0064】
このように、間欠的に雰囲気ガスを供給することで、ガス供給量を削減することができる。
【0065】
【発明の効果】
本発明の熱処理装置のガス供給方法およびセラミック電子部品の製造方法によれば、被熱処理物全体をバラツキが生じることなく均一に焼成できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態に係る熱処理装置の縦断正面図
【図2】 図1の熱処理装置の横断平面図
【図3】 図1の匣を示す縦断正面図
【図4】 匣の流路における長さ寸法と流路の上下幅寸法を示す縦断正面図
【図5】 匣の流路を示す平面図
【図6】 匣の流路の変形例を示す平面図
【図7】 匣の流路の変形例を示す平面図
【図8】 本発明の他の実施の形態に係る熱処理装置の匣の流路を示す平面図
【図9】 本発明のさらに他の実施の形態に係る熱処理装置の横断平面図
【図10】 図9の匣を示す縦断正面図
【符号の説明】
1 熱処理炉(熱処理装置)
7 載置面
8 天井面
9 流路
10,11 入口
W セラミック成形体(被熱処理物)
Claims (4)
- 被熱処理物を載せる載置面とこの載置面に対向する天井面との間の空間を前記載置面に沿って流れる雰囲気ガスの流路とするとともに、前記流路の一端を前記雰囲気ガスの入口とし、前記被熱処理物の焼成を行う熱処理装置のガス供給方法であって、
前記雰囲気ガスを、次式を満たす流速Vで前記入口から前記流路に流入制御することを特徴とする熱処理装置のガス供給方法。
4.0×(L・τT)/(C・D2)≧V≧(L・τT)/(C・D2)
ここで、Vは流路入口での流速、Lは流路長さ、τTは前記雰囲気ガスの動粘性係数、Cは経験則に基づく流路に関する係数(0.05〜0.15)、Dは前記流路における前記載置面と前記天井面との上下間隔長さから、前記被熱処理物の高さを除いたものである。 - 被熱処理物を載せる載置面とこの載置面に対向する天井面との間の空間を前記載置面に沿って流れる雰囲気ガスの流路とするとともに、前記流路の両端をそれぞれ前記雰囲気ガスの入口とし、前記被熱処理物の焼成を行う熱処理装置のガス供給方法であって、
前記雰囲気ガスを、次式を満たす流速Vで前記入口から前記流路に流入制御することを特徴とする熱処理装置のガス供給方法。
4.0×(L・τT)/(C・D2)≧V≧0.5×(L・τT)/(C・D2)
ここで、Vは流路入口での流速、Lは流路長さ、τTは前記雰囲気ガスの動粘性係数、Cは経験則に基づく流路に関する係数(0.05〜0.15)、Dは前記流路における前記載置面と前記天井面との上下間隔長さから、前記被熱処理物の高さを除いたものである。 - 前記雰囲気ガスが前記流路に間欠的に供給される、ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の熱処理装置のガス供給方法。
- 請求項1ないし請求項3に記載の熱処理装置のガス供給方法を用いたセラミック電子部品の製造方法であって、
前記熱処理装置の前記載置面に前記被熱処理物を載置する工程と、前記雰囲気ガスを前記入口から前記流路に流入させて前記被熱処理物を焼成する工程とを含むセラミック電子部品の製造方法。
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