JP4110846B2 - カーナビゲーション装置による車両のピッチ角検出方法およびカーナビゲーション装置 - Google Patents

カーナビゲーション装置による車両のピッチ角検出方法およびカーナビゲーション装置 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーナビゲーション装置により車両の前後方向の傾き角であるピッチ角を検出する方法および当該ピッチ角を検出するカーナビゲーション装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、都市高速道路は一般道路の上に高架として建設されることが多く、一般道路との間をつなぐランプウェイは坂道となっている。
一方、カーナビゲーション装置では、GPS(Global Positioning System)などを利用して車両の現在位置を検出するようにしているが、この位置検出では、車両の位置を標高で検出することは困難である。このため、一般道路の上に高架の高速道路が建設されているような場合、一般道路を走行しているのか、高速道路を走行しているのか区別ができないという問題があった。
【0003】
そこで、カーナビゲーション装置に車両のピッチ角を検出するためのセンサを設け、このセンサによって車両がランプウェイを登っているのか、或は下っているのかを検出し、これにより一般道路から高速道路に入ったのか、或は高速道路から一般道路に出たのかを判別して、高速道路を走行しているのか、一般道路を走行しているのかが判断できるように構成したカーナビゲーション装置が提供されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
車両のピッチ角を検出するためのセンサをカーナビゲーション装置に設けた場合、そのカーナビゲーション装置が車両に対して前後方向に傾いて取り付けられたのでは、そのカーナビゲーション装置の傾きによって、当該車両のピッチ角を正しく検出することができなくなる。カーナビゲーション装置を車両に対して傾くことなく、真っ直ぐに取り付けることは、部品精度や組み立て精度の上から困難であって何がしかの誤差を生ずることは避けられないし、また、車両は例えば乗用の場合、前部座席と後部座席に座る人の体重差などによって前後に傾くことがあるので、カーナビゲーション装置を車両に対して真っ直ぐに取り付けることは意味のないものになってしまう。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両に対して前後方向に傾いていたとしても、その傾き角を検出して車両のピッチ角を正確に検出することができるカーナビゲーション装置による車両のピッチ角検出方法およびカーナビゲーション装置を提供するところにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明では、車両の現在位置を取得するための位置取得手段、車両の加速度を検出する加速度センサ、重力センサおよび角速度センサの出力から車輌のピッチ角を演算することを前提とする。上記重力センサと角速度センサとは、同じベースに配設されて車両に取り付けられる。そして、重力センサは、錘部およびこの錘部を支える支え部を有し、錘部に作用する重力および車両が加速したときに当該錘部に作用する慣性力のうち支え部の撓み方向の成分を検出する構成のものである。
【0007】
つまり、重力センサの錘部には、重力(重量)と、車両が加速度を生じた場合にその加速度によって生ずる力(慣性力)とが作用する。そして、車両が坂道を走行する際に前後方向に傾くと、重力センサの支え部の撓み方向に作用する力のうち、重力による力が変化する。一方、車両の加速度は加速度センサで正しく検出されるので、重力センサが検出した力から、加速度センサで検出した加速度で車両が加速したときに錘部に生ずる慣性力のうち支え部の撓み方向成分を減ずると、その差は錘部に作用する重力のうち車両の前後方向の傾きによる分となるので、これから車両のピッチ角を求めることができる。しかし、このようにして求めたピッチ角には、正規の状態に対するカーナビゲーション装置の前後方向の傾き分が含まれているので、その傾き角を求めて補正する必要がある。
【0008】
そこで、ジャイロスコープにより検出された角速度から車両の方位変化量を求め、位置検出手段により検出された位置の変化からも車両の方位変化量を求めると、カーナビゲーション装置のベースが車両に対して前後方向に傾いて取り付けられていた場合には、両方の方位変化量に、ベースの車両に対する傾き相当分だけの差が生ずる。この差からベースの車両に対する前後方向の傾き角を求めることができるので、その傾き角により、上記重力センサの出力値を補正すると共に、この補正後の重力センサの出力値と加速度センサの出力値とから求めたピッチ角を補正すると、車両の真のピッチ角を求めることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
カーナビゲーション装置1は、図1のブロック図に示すように、演算手段としての制御回路2に対して、位置検出器3、地図データ記憶部4、表示器5、音声出力装置6、加速度センサ7、記憶装置8、操作スイッチ群9、リモコン10からの操作信号を受信するリモコンセンサ11、外部の送受信装置と通信するための送受信機12などを接続して構成されている。
【0010】
これらカーナビゲーション装置1の構成要素のうち、制御回路2、位置検出器3、加速度センサ7、記憶装置8などは、図2に示すベースとしての一つのケース13に収納されて車輌VEの所定位置に固定されている。
【0011】
位置検出器3は、絶対方位を検出するための地磁気センサ14、車両VEの角速度を検出するための角速度センサとしてのジャイロスコープ15、車両VEの走行距離を検出する距離センサ16、GPSにより現在位置を検出するためのGPS受信機17、車両VEのピッチ角を検出するための重力センサ18から構成されている。この位置検出器3は、各センサ14〜18が性質の異なる検出誤差を有するため、互いの検出誤差を補完しながら精度の高い位置検出を行うようになっている。そして、制御回路2は、位置検出器3の各センサ14〜18の検出結果に基づき、車両VEの現在位置を確定する。なお、位置検出器3は、要求される精度で現在位置を算出可能であれば、上記の全てを備える必要は無い。
【0012】
地図データ記憶部4は、例えばDVD−ROMなどの情報記録媒体と、この情報記録媒体から地図データを読み取る読取装置とから構成されており、読取装置によって地図データ、マップマッチング用データ、経路を音声で案内するためのデータを制御回路2に与えるようになっている。
【0013】
表示器5は、例えば液晶ディスプレイなどの表示画面を備えて構成されており、その表示画面に地図データや文字或は記号などを表示できるようにしている。ここで、制御回路2は、マイクロコンピュータを主体にして構成されており、各種の機能を果たす。即ち、制御回路2は、位置検出器3から現在位置情報を取得し、地図データ記憶部4から取得した地図データに基づいてその現在位置周辺の地図を表示器5の表示画面に表示すると共に、その表示画面の道路地図に重ねて車両の現在位置および進行方向を示すポインタを表示する(表示制御機能)。
【0014】
また、制御回路2は、出発地と目的地が設定されると、地図データ記憶部4の地図データに基づいて出発地から目的地までの案内経路、或は途中の経由地が設定された場合には、出発地から経由地を通って目的地までの案内経路を探索する(経路探索機能)。なお、案内経路はダイクストラ法などによって探索される。
【0015】
そして、制御回路2は、探索した案内経路を表示器5の表示画面に表示されている道路地図上に表示し、車両VEが進路変更すべき交差点に近づくと、表示器5の表示画面に交差点名やその交差点までの距離などを表示する。また、制御回路2は、交差点での進路案内を音声で行うために音声出力装置6に指示を発する(案内機能)。そして、音声出力装置6は、スピーカを有し、制御回路2からの指示に基づいて進路方向を音声にて案内する。
【0016】
加速度センサ7は、車軸の回転を検出する回転センサからパルス信号を受け、まず単位時間当たりのパルス数にタイヤ径を乗じて車両VEの走行速度を算出し、そしてこの走行速度を微分して加速度を算出するようになっている。なお、位置検出器3の距離センサ16も、車軸の回転を検出する回転センサからパルス信号を受け、そのパルスにタイヤ径を乗ずることにより走行距離を算出するようになっている。
【0017】
さて、重力センサ18は、前述したように車両VEのピッチ角、つまり車輌VEの車軸と平行な軸線を中心にする前後方向の回転角を検出するためのものである。この重力センサ18は、図4に示すように、枠19の内側に形成された支え部としての薄膜部20の中央に錘部21を設け、その錘部21の両側の薄肉部19の一面にピエゾ素子22を取り付けて構成されている。このような重力センサ18は、薄膜部20両面が鉛直で且つ車両VEの前後を向くようにケース13内に配設されており、その錘部21には、重力と、車両VEの加速時或は減速時(加速度を生じたとき)の慣性力とが作用する。
【0018】
そして、カーナビゲーション装置1のケース13が車輌VEに取り付けられたとき、重力センサ18の薄膜部20が車両VEのピッチ角が0のとき、正確に鉛直になっていれば、図5(c)に示すように、薄膜部20に錘部21の重力による撓みは生じない。そして、車輌VEが前後方向にβ度傾くと、図5(d)に示すように、薄膜部20には、その撓み方向(薄膜部20の表裏面に直角方向)に対して、W(錘部21の質量)×sin βの力が作用し、薄膜部20が撓む。また、車輌VEに加速度が生ずると、錘部21には図5の(a)および(b)に矢印Aで示す方向の慣性力F(一方が加速、他方が減速の場合を示す)が作用し、薄膜部20が同方向に撓む。従って、重力センサ18の出力から、車両VEの加速度による慣性力F分を減ずると、車両VEの前後方向の傾きによって生ずる重力分(W×sin β)が残るので、当該重力分から車両VEのピッチ角βを求めることができるものである。
【0019】
以上は重力センサ18の薄膜部20が正確に鉛直になっていることを前提にしているが、実際には、カーナビゲーション装置1のケース13、従って重力センサ18が車輌VEに対して前後方向に傾いている場合が多く、その傾き分を補正しないと、実際の車輌VEのピッチ角を求めることはできない。
【0020】
以下に実際の車両VEの傾き角βを求める方法について説明する。
車両VEの真の傾き角βを求めるには、まず重力センサ18の車両VEに対する前後方向の傾き角、つまりカーナビゲーション装置1のケース13の車両VEに対する傾き角θを求める必要がある。そのために、同じくケース13に設けられたジャイロスコープ15の出力と、GPS受信機17の出力とが用いられる。即ち、ジャイロスコープ15は、例えば振動ジャイロから構成され、その振動面が鉛直となるように配設されて、車両VEの旋回時にその角速度を検出できるようになっている。このとき、ジャイロスコープ15は、車両VEのピッチ角が0のとき、振動面が正しく鉛直となるように車輌VEに配設されていれば、車両VEの旋回時の角速度を正しく検出する。しかし、カーナビゲーション装置1のケース13が車輌VEに対して角度θだけ前後方向に傾いて取り付けられていたとすると、図6に示すように、真の角速度ωに対して、そのcos θ倍がジャイロスコープ15の検出する角速度となる。そして、制御回路2は、ジャイロスコープ15の出力値から一定の短時間毎に角速度を検出し、これに上記一定の短時間を乗じて、つまり積分して車輌VEの進行方位の変化を演算する。
【0021】
一方、制御回路2は、位置取得手段としてのGPS受信機17の出力から現在位置を一定時間毎に取得しており、その位置変化から車輌VEの進行方位の変化を演算する。ここで、GPS受信機17による測位は、GPS衛星から受信した信号によるものであるから、概ね正確であるので、ジャイロスコープ15の出力から求めた方位変化量と、GPS受信機17の出力から求めた方位変化量とは、図7(a)のように異なる。
【0022】
そこで、制御回路2は、GPS受信機17の出力から方位変化量を正として、ジャイロスコープ15の出力から求めた方位変化量がGPS受信機17の出力から求めた方位変化量に最も近くなるような補正値(以下、ゲイン補正値と称する。)を求める。このような補正を一定時間毎に何回か繰り返すと、ゲイン補正値は1/cos θに収束してゆくので、収束したゲイン補正値から傾き角θを算出する。つまり、ゲイン補正値をHとすると、傾き角θは、H=1/cos θであるから、θ=acos (1/H)で求めることができる。なお、ジャイロスコープ15の出力から求めた方位変化量と比較する方位変化量は地磁気センサ14から求めたものであっても良い。
【0023】
次に、制御回路2は、加速度センサ7により求めた加速度が錘部21に作用したときの慣性力Fを求め、その慣性力Fが車両VEに対してθだけ前後方向に傾いて取り付けられた重力センサ18の支え部20の撓み方向(車両の前後方向)に及ぼす力(慣性力の支え部20の撓み方向成分)を求める。この慣性力Fの撓み方向成分は、ケース13の車両VEに対する傾き角θのcos θ倍となる。
【0024】
そして、重力センサ18が検出した力Pから上記慣性力の撓み方向成分F×cos θ分を減ずる。すると、その減算によって得られた値は錘部21の重力分となり、質量Wのsin(β+θ)倍となる。従って、P=W×sin(β+θ)+F×cos θの式が成立するので、β=asin (P−F×cos θ)−θとなり、この式から車両VEのピッチ角βを求めることができる。
【0025】
このように本実施例によれば、カーナビゲーション装置1が車両VEに対して前後方向に傾いて取り付けられたとしても、その傾き角を求めて車両VEのピッチ角を正確に検出することができ、これにより車両VEが坂道を上っているのか、下っているのかを検出することができる。従って、一般道路に高架道路として高速道路が設けられているような場合、ランプウェイを上っているのか、下っているのかを判断して一般道路から高速道路に入ったのか、高速道路から一般道路に出たのかを正確に検出することができる。
【0026】
なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施例に限定されるものではなく、以下のような拡張或は変更が可能である。
重力センサ18は、薄膜部20が鉛直となるように配設する構成ばかりでなく、水平となるように、更には任意の角度傾けて配置するようにしても良い。
ジャイロスコープ15は、振動面を鉛直となるように配設する構成ばかりでなく、任意の角度傾けて配置するようにしても良い。
ジャイロスコープ15は、振動式のものに限られない。
角速度センサはジャイロスコープに限られない。
位置取得手段としては、GPS受信機17、地磁気センサ14に限られない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図
【図2】カーナビゲーション装置を取り付けた車輌の側面図
【図3】登坂時の車輌の側面図
【図4】重力センサの概略を示す斜視図
【図5】重力センサに作用する力と薄膜部の撓み状態を示す断面図
【図6】ジャイロスコープの角速度の検出形態を説明するための車輌の正面図
【図7】(a)はジャイロスコープとGPS受信機とによる方位変化の差を示す図(b)は補正によってジャイロスコープによる方位変化をGPS受信機による方位変化に近づけた場合の図
【符号の説明】
図中、1はカーナビゲーション装置、2は制御回路(演算手段)、7は加速度センサ、15はジャイロスコープ(角速度センサ)、17はGPS受信機(位置取得手段)、18は重力センサ、20は薄膜部(支え部)、21は錘部、22はピエゾ素子である。

Claims (2)

  1. 車輌の現在位置を取得するための位置取得手段と、
    前記車両の加速度を検出するための加速度センサと、
    錘部およびこの錘部を支える支え部を有し、前記錘部に作用する重力および前記車両が加速したときに当該錘部に作用する慣性力の合成力のうち前記支え部の撓み方向の成分を検出する重力センサと、
    この重力センサが配設されたベースと同じベースに配設され、前記車両の旋回時の角速度を検出する角速度センサとを具備したカーナビゲーション装置において、
    前記角速度センサにより取得された角速度から求められる前記車両の方位変化量を、前記位置検出手段により取得された位置の変化から求められる車両の方位変化量に一致させるための補正値を求め、この補正値により前記車両に取り付けられた前記ベースの当該車輌に対する前後方向の傾き角を求め、前記重力センサにより検出された力から、前記車両が前記加速度センサにより取得された加速度で加速したときに前記重力センサの錘部に作用する慣性力のうち前記ベースの傾き角だけ前後方向に傾いた状態にある前記支え部の撓み方向の成分を減ずる減算を行い、その減算により得られた力が前記重力センサの錘部の重量によって前記支え部の撓み方向に作用する力としたときの当該重力センサの前後方向の傾き角を求め、この傾き角から前記ベースの傾き角を減じて前記車両のピッチ角を求めることを特徴とするカーナビゲーション装置による車両のピッチ角検出方法。
  2. 車輌の現在位置を取得するための位置取得手段と、
    前記車両の加速度を検出するための加速度センサと、
    錘部およびこの錘部を支える支え部を有し、前記錘部に作用する重力および前記車両の加速により当該錘部に作用する慣性力の合成力のうち前記支え部の撓み方向の成分を検出する重力センサと、
    この重力センサが配設されたベースと同じベースに配設され、前記車両の旋回時の角速度を検出する角速度センサと、
    前記位置検出手段、加速度センサ、重力センサおよび角速度センサの出力から前記車両のピッチ角を求める演算手段とを具備し、
    前記演算手段は、前記角速度センサにより取得された角速度から求められる前記車両の方位変化量を、前記位置検出手段により取得された位置の変化から求められる車両の方位変化量に一致させるための補正値を求め、この補正値により前記車両に取り付けられた前記ベースの当該車輌に対する前後方向の傾き角を求め、前記重力センサにより検出された力から、前記車両が前記加速度センサにより取得された加速度で加速したときに前記重力センサの錘部に作用する慣性力のうち前記ベースの傾き角だけ前後方向に傾いた状態にある前記支え部の撓み方向の成分を減ずる減算を行い、その減算により得られた力が前記重力センサの錘部の重量によって前記支え部の撓み方向に作用する力としたときの当該重力センサの前後方向の傾き角を求め、この傾き角から前記ベースの傾き角を減じて前記車両のピッチ角を求めることを特徴とするカーナビゲーション装置。
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