JP4110721B2 - 車両用ミラー駆動装置のホルダベース構造 - Google Patents

車両用ミラー駆動装置のホルダベース構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ホルダベースに振動を防止でき、軸受部からのピボット軸の抜けを確実に防止することができる車両用ミラー駆動装置のホルダベース構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両として例えば、自動車の電動ドアミラーでは、ハウジングのピボット軸にホルダベースの中央部に形成された軸受部を傾動自在に嵌合させて支持すると共に、軸受部以外の部分に設けたホルダベースの球状ソケット部に、ハウジングから出没するロッドの球状先端部を嵌合させることにより、ホルダベースに固定されたミラーの角度を変化させるようになっている(類似技術として、特開2000−118304号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、ミラーを固定したホルダベースを任意角度に傾動させることができるものの、ホルダベース自体の剛性により、ホルダベースが振動して、そこに固定されているミラーの視認性が低下するおそれがある。ホルダベースの剛性を高めれば、剛性に起因した振動は防止できるものの、あまり剛性を高めすぎると、ホルダベースの成形性が悪化すると共に、ピボット軸に嵌合させる軸受部などにおいて必要な弾性変形性能が得られなくなるため、剛性アップによる振動防止は実用的でない。また、ピボット軸を嵌合させる軸受部も、嵌合させる作業は容易に行え、いったん嵌合させた後は、ピボット軸が軸受部から容易に抜け出ないようにする必要がある。このようなピボット軸の抜け防止も、ホルダベースに与えられた必要な剛性の中で達成する必要がある。
【0004】
この発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、ホルダベースに振動を防止でき、軸受部からのピボット軸の抜けを確実に防止することができる車両用ミラー駆動装置のホルダベース構造を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、ハウジング本体とハウジング蓋とでハウジングを形成すると共に、ハウジング蓋の中央に形成されたピボット軸に、ミラーを固定したホルダベースの中央に形成された軸受部を傾動自在に嵌合させて支持し、ハウジングのピボット軸とは異なる位置に出没自在なロッドを設け、該ロッドの先端部をホルダベースのソケット部に傾動自在に嵌合させて、該ロッドを出没させることにより、ホルダベースの角度を変化させる車両用ミラー駆動装置のホルダベース構造であって、前記ホルダベースにおける軸受部の周囲には、軸受部側へ対面する側面を有するリング体が形成され、該リング体の側面の複数位置に対して、軸受部に取付けた板バネの両端部により放射方向への弾性力を作用させた。
【0006】
請求項1記載の発明によれば、ホルダベースのリング体を板バネの両端部により常に放射方向へ押した状態になるため、ホルダベース全体に板バネのテンションが作用し、ホルダベースの振動を防止する。従って、ホルダベースに固定されたミラーが振動せず、ミラーの視認性が向上する。請求項2記載の発明は、ハウジング蓋におけるリング体の周囲には、その内周面がリング体の外周面と摺接する第2リング体を備えて構成されている。
【0007】
請求項記載の発明は、板バネの両端部にリング体の側面に対して弾接する返り部が形成されている。
【0008】
請求項記載の発明によれば、板バネの両端部にリング体の側面に対して弾接する返り部を形成したため、簡単な構造で、リング体を放射方向に押すことができる。
【0009】
請求項記載の発明は、ハウジング本体とハウジング蓋とでハウジングを形成すると共に、ハウジング蓋の中央に形成されたピボット軸に、ミラーを固定したホルダベースの中央に形成された軸受部を傾動自在に嵌合させて支持し、ハウジングのピボット軸とは異なる位置に出没自在なロッドを設け、該ロッドの先端部をホルダベースのソケット部に傾動自在に嵌合させて、該ロッドを出没させることにより、ホルダベースの角度を変化させる車両用ミラー駆動装置のホルダベース構造であって、前記ホルダベースの根本部分は、ピボット軸の最大径よりも小さな径で開口していると共に複数のスリットにより、ピボット軸を圧入可能で、且つ軸受部に板バネに形成された軸受部の根本部分に相当する内径の円孔を嵌装して、軸受部からのピボット軸の抜けを防止する。
【0010】
請求項記載の発明によれば、軸受部に板バネの円孔を通す前は、軸受部が外側へ広がるため、ピボット軸を軸受部内へ容易に嵌合させることができる。軸受部内へピボット軸を嵌合した後は、軸受部に板バネの円孔を嵌装することにより、軸受部の根本部分の広がりが規制されるため、軸受部内に嵌合したピボット軸が軸受部から外れるのを確実に防止する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。
【0012】
車両として例えば、自動車に搭載されるミラー駆動装置としては、ドアミラー、フェンダーミラー、ルームミラーなどがあるが、この実施形態では右側のドアに取付けられるドアミラーの場合を例にして説明する。
【0013】
図1及び図2は、ドアミラーの駆動装置を示す後面図と断面図であり、図3及び図4はその分解斜視図である。まず最初に、この図1〜4に基づいて、この駆動装置の基本的な構造と性能を説明する。
【0014】
基本構造及び性能(図1〜図4)
ハウジング本体1とハウジング蓋2とからハウジング3が形成されている。ハウジング3は、略密閉化され、内部にモータ4やヘリカルギア5等の駆動機構部品が収納されている。ハウジング蓋2の表面中央には、先端が球状のピボット軸6が立設され、このピボット軸6の先端に、ホルダベース7の中央に形成された軸受部8が、回転自在に嵌め込まれている。ホルダベース7には、ミラー9(図2)が取付けられ、このミラー9と共にホルダベース7は、ピボット軸6を中心にして、任意の方向へ傾動することができる。
【0015】
ハウジング蓋2におけるピボット軸6の真横位置及び真下位置には、それぞれ開口10が形成されている。これらの開口10からは、それぞれロッド11が突出している。このロッド11は、互いに独立して出没自在で、その球状先端部12を、ホルダベース7の対応位置に形成された球状ソケット部13に回転自在に嵌合させている。
【0016】
従って、真下のロッド11を出没させることにより、ホルダベース7(ミラー9)の角度を上下方向で変化させることができ、真横のロッド11を出没させることにより、ホルダベース7(ミラー9)の角度を左右方向で変化させることができる。従って、運転者は、自身の身長や視線方向により、ミラー9の角度を最適に調整することができる。
【0017】
次に、この駆動装置に係る特徴部分の構造及び作用を説明する。
【0018】
ホルダベース7の構造(図1〜図3、図6、図7)
ホルダベース7は、ハウジング蓋2に形成されたピボット軸6を受け入れる軸受部8を中心として、その周囲に軸受部8へ対面する側面を有するリング体44を有している。リング体44の四方には、リング体44の側面を更にハウジング蓋2側へ延ばした延長部45が形成され、その部分に開口46が形成されると共に、その開口46の周囲にフランジ47が形成されている。
【0019】
開口46と開口46の中間で、ロッド11を嵌合させる球状ソケット部13に対応する位置には、一対の弾性片からなる概略断面V字形で且つ所定の高さを有する弾性部48が一体的に形成されている。この弾性部48は一対の弾性片を横方向に弾性変形させることができる。弾性部48の両側にも、それぞれ別の開口49が形成されている。
【0020】
ホルダベース7の中央の軸受部8は、ピボット軸6に相応する球状内面を有すると共に、根本部分は、ピボット軸6の最大径よりも小さな径で開口している。この軸受部8の根本には、4本のスリット50(図3)が縦に形成され、軸受部8の根本を強制的に押し広げることができる。また、軸受部8の周辺には、4つの爪部55が上向き状態で形成されている。
【0021】
一方、ハウジング蓋2の表面におけるピボット軸6の四方には、所定間隔で離間した一対の位置規制体51が、4組形成されている。そして、ホルダベース7の軸受部8をピボット軸6に圧入した後、一対の位置規制体51を対応する弾性部48の両側にある開口49内へ挿入する。すると、概略断面V字形の弾性部48が、それぞれ一対の位置規制体51の間に位置して、ホルダベース7のピボット軸6を中心とした回転方向での移動が、ホルダベース7はピボット軸6を中心とした傾動だけが可能となる。
【0022】
位置規制体51の間に弾性部48を位置させた後に、軸受部8に対して2つの板バネ52を十字に合わせて取付ける。板バネ52には、それぞれ軸受部8の根本の外径に相当する内径の円孔53が形成されており、この円孔53を軸受部8に上側から取付ける。軸受部8に、板バネ52の円孔53を通すことにより、軸受部8の根本の広がりが規制され、軸受部8内に嵌合したピボット軸6が、軸受部8から外れるのを防止する。また、板バネ52自体も軸受部8の周囲に形成された爪部55に係合し、軸受部8からの外れが防止される。この板バネ52は2枚を十字にして用いたが、予め十字状のものを用意しても良い。
【0023】
板バネ52の両側は、開口46を取り囲むフランジ47を乗り越えるべく山形に曲折しており、その両端部には、リング体44の延長部45に対して、弾接する返り部54が形成されている。従って、リング体44は、板バネ52の返り部54により常に放射方向へ押された状態となるため、ホルダベース7全体に板バネ52のテンションが作用し、ホルダベース7の振動を防止する。従って、ホルダベース7に固定されたミラー9が振動せず、ミラー9の視認性が向上する。
【0024】
また、各ロッド11を出没させて、ホルダベース7をピボット軸6を中心に、上下方向又は左右方向で「シーソー」のように傾動させると、対向する2つの弾性部48のうち、一方の弾性部48は、全体が位置規制体51の間に深く入り込み、他方は、位置規制体51の間に一部だけが浅く入った状態となる。位置規制体51の間に深く入った弾性部48は、前述のように、弾性部48の一対の弾性片がそれぞれ位置規制体51に弾接するため、ホルダベース7のピボット軸6を中心とした回転方向でのガタつきが防止され、この点においても、ホルダベース7に固定したミラー9の視認性が向上する。位置規制体51の間に深く入った方とは反対側の弾性部48も、図7に示すように、位置規制体51の間から完全に抜け出るのではなく、一部が位置規制体51とオーバラップしているため、ホルダベース7を逆側に傾動する際に、その弾性部48を位置規制体51の間へ確実に導くことができる。
【0025】
次に、本発明の特徴ではないが、この駆動装置自体の構造及び性能の理解を助けるために、駆動装置における各部分の構造を説明する。
【0026】
ロッド11の出没構造(図2〜図5、図8〜図15)
ハウジング本体1の底面部24における前記開口10に対応する位置には、内面に内ネジ25が形成された2つのガイド筒26が形成されている。ガイド筒26の底面中央には軸ピン27が形成されている。また、ガイド筒26の先端に相当する部分の側面には一段薄く形成された段差部28(図10)が形成され、そこに潤滑剤Rが注入されている。
【0027】
このガイド筒26の基端部は、ロッド11の出没ストロークをかせぐために、ハウジング本体1の底面部24における一般面よりも外側に位置しており、底面部24は、外側に凹設された状態で、ガイド筒26の基端部に接続されている。すなわち、底面部24は、ガイド筒26の側面に突き当て状態で接続するのではなく、わざわざ外側へ湾曲した状態で、ガイド筒26の基端部に接続されている。従って、ハウジング本体1を樹脂で一体成形する際に、ガイド筒26の側面には何も結合されないため、その内ネジ25に樹脂成形上のヒケが発生せず、内ネジ25が完全な状態で得られる。
【0028】
ハウジング本体1の底面部24における2つのガイド筒26の間には、2個のモータ4が同じ向きで固定されている。モータ4は、それぞれ正逆方向に回転自在なウォームギア29を有している。このウォームギア29は、後述するヘリカルギア5の外ネジ30と係合している。
【0029】
2つのモータ4を、このように、ハウジング本体1におけるガイド筒26の間の空間に同じ向きで配置したため、ガイド筒26の間の、本来、デッドスペースとなる部分をモータ4の配置用のスペースとして有効利用することができるため、ハウジング3の内部にガイド筒26を形成した構造でありながら、ハウジング3のサイズ及び厚さのコンパクト化を図ることができる。
【0030】
このようなモータ4の配置構造を採用したことにより、ハウジング3の形状を、2つのガイド筒26を結ぶ辺を最も広い幅にした概略三角形状にすることができ、1つの構造の駆動装置を左右のドアミラー兼用として使用することができる。
【0031】
ガイド筒26内には、ヘリカルギア5が上から挿入される。ヘリカルギア5は、底部を有する内筒31の先端から折り返し部32を介して外筒33を形成した形状で、外筒33の外面には、全周にわたって外ネジ30が形成されている。この外ネジ30は、前述のように、2つのモータ4のウォームギア29と係合している。外筒33の内径は、ガイド筒26の外径に相応しており、ヘリカルギア5は、ガイド筒26内においてガタつかない。内筒31の外径は、ガイド筒26の内径よりも小さく、内筒31とガイド筒26の内ネジ25とは接触しない。
【0032】
内筒31の側面には、長手方向に沿うスリット24が、4箇所に形成されている。スリット34の間における内筒31の内面には、底面から所定長さのリブ35(図9)がそれぞれ形成されている。内筒31の底部には、前記軸ピン27が挿通する軸孔36が形成されている。内筒31の底部とガイド筒26の底面とは互いに接触しない。ヘリカルギア5自体は、その折り返し部32が、ガイド筒26の先端面により支持されている。また、軸ピン27と軸孔36とは、ヘリカルギア5の回転軸を出すために接触している。ヘリカルギア5とガイド筒26とは接触面積が小さいため、回転抵抗が小さく、モータ4の出力ロスが少なく、回転する際に摩擦音も生じない。更に、ガイド筒26の先端には、段差部28が形成され、そこに潤滑剤Rが注入されていることも、ヘリカルギア5の回転抵抗の軽減に寄与している。すなわち、本来、大きな面積で接触し合う部分であるガイド筒26の表面とヘリカルギア5の外筒33とが、間に潤滑剤Rを介在した状態になるため、両者間の回転抵抗は著しく低下する。
【0033】
このヘリカルギア5の中に挿入されているのが、ロッド11である。ロッド11は、球状先端部12以外の部分は円筒形状になっており、その基端部37には4本のスリット38が形成されている。このスリット38には、前記ヘリカルギア5の内面に形成したリブ35が差し込まれるが、リブ35よりもスリット38の方が短く形成されている。従って、スリット38の端部が、リブ35の端末の上に乗った状態となり、ロッド11の基端部37とヘリカルギア5の底面との間には、僅かな隙間S1(図8)が確保され、両者は互いに接触しない。
【0034】
ロッド11の側面とヘリカルギア5の内面との間にも、僅かな隙間S2(図8)が確保され、両者は互いに接触しない。ロッド11の先端部側は、リング状でゴム製のパッキン39を介して開口10から突出しており、開口10の水密性が保たれている。そして、ロッド11の側面が、このパッキン39の内面と摺動することにより、ロッド11の姿勢が保たれる。
【0035】
ロッド11の基端部37におけるスリット38の間には、4つの爪部40が外向きに形成されている。この爪部40の先端は、ガイド筒26の内ネジ25に対応して若干斜めに形成されている。そして、このロッド11の内部には、4つの爪部40を外側へ付勢するスプリング41が嵌装されている。ロッド11の基端部37は、外側へ曲折した部分42を有するクランク形状となっており、そこに爪部40が形成されている。クランク形状の基端部37は、ヘリカルギア5のスリット34の間に位置し、爪部40だけがヘリカルギア5の側面よりも外側へ突出する。従って、ロッド11の基端部37は、回転方向でヘリカルギア5のスリット34以外の部分と係合するため、ヘリカルギア5を回転させると、その内部でロッド11も一緒に回転する。ロッド11の爪部40は、ガイド筒26の内ネジ25に螺合するため、ヘリカルギア5を正逆方向へ回転させることにより、ロッド11は回転しながらガイド筒26内で出没方向へ移動する。
【0036】
爪部40を形成したロッド11の基端部37が、外側へ曲折した部分42(図12)を有するクランク形状をしているため、この外側へ曲折した部分42により、爪部40が上下に撓み易くなっている。爪部40に対する異なった負荷の発生をなるべく少なくするため、ロッド11の爪部40を前述のようにガイド筒26の内ネジ25に対応して斜め形成しているものの、ロッド11の先端部側はパッキン39により押さえられて傾かないため、爪部40をガイド筒26の内ネジ25に沿って回転させる間に、各爪部40に対して出没方向で少しでも異なった負荷が生じると、その負荷はダイレクトに爪部40に加わることになる。しかし、このように爪部40に負荷が加わっても、その負荷を前述の外側へ曲折した部分42が撓むことにより吸収できるため、爪部40の変形・破損を防止できる。また、ロッド11の基端部37のうち、外側へ曲折した部分42以外の出没方向に沿った部分には、ヘリカルギア5との回転方向における当たり面を大きく確保する機能があり、ヘリカルギア5の回転力をロッド11に確実に伝えることができる。
【0037】
この構造によれば、ロッド11が回転しながら出没方向へ移動するため、単にロッド11を回転せずに出没させる場合に比べて、ロッド11とパッキン39との間の摩擦が小さくなり、ロッド11の出没がスムーズになる。
【0038】
また、ロッド11の球状先端部12と、ホルダベース7の球状ソケット部13の内面との摺動にしても、球状先端部12の側面における回転軸を中心にした最大径部分に、所定の幅の面取り部43(図14)が形成されているため、球状先端部12の表面で、最も、球状ソケット部13と擦れ合う部分を切除した状態になり、球状先端部12の摺動抵抗が軽減する。この面取り部43は、断面で直線状が好ましく、直線状よりも凹んだ状態にすると、球面との境界にシャープなエッジが生じ、その程度によっては、球状先端部12の傾動に支障をきたすことなる。但し、多少凹んだ状態の面取り部43しても問題ない。面取り部43の形成により、球状ソケット部13の内面との間には、空間が形成されるため、その空間に潤滑剤Rを注入しておけば、そこに潤滑剤Rを保持しておくことができ、球状先端部12の摺動抵抗が更に軽減する。
【0039】
また、従来の構造として、ガイド筒26を設けずに、ヘリカルギア5の内面に内ネジを形成し、その内ネジにロッド11の爪部40を係合させる構造もあったが、その場合は、内ネジとの相対回転を確保するために、ロッド11の球状先端部12に突起を形成し、その突起を球状ソケット部13の内面に形成した溝に係合させることで、ロッド11の回転を阻止する必要があった。このような従来構造では、小さいロッド11の球状先端部12に形成した突起により、ロッド11の回転を阻止するため、突起が破損しやすく、ロッド11の作動信頼性に劣っていた。しかし、この実施形態の構造によれば、ロッド11自体を回転させる方式のため、ロッド11の出没性能を阻害する要因はなく、その作動信頼性が高い。また、ロッド11の球状先端部12に小さな突起を形成する必要がないため、ロッド11自体の製造も容易で、ロッド11の部品としての取り扱いも容易になる。
【0040】
ロッド11が出没方向の両側限界位置まで移動すると、ロッド11のスリット37以外の部分が、スプリング41に抗して内側へ撓み、爪部40が内ネジ25に対して空回りする。従って、モータ4は回転しても、ロッド11のそれ以上の移動は防止される。このように爪部40が内側へ撓むことにより空回りするため、爪部40が変形したり破損したりすることはなく、空回り音も小さくて済む。特に、この実施形態では、ロッド11が没方向の限界位置まで移動した際に、ロッド11のスリット38の端部がヘリカルギア5の内筒31の内側に形成した内向きのリブ35の上部に当接するため、それ以上の移動が規制されて、そこで空回りすることになるが、前述のように、スリット38の長さの方が短く、ロッド11の底部とヘリカルギア5の底面との間には、僅かな隙間S1(図8)が確保され、両者は互いに接触することがないため、ロッド11がヘリカルギア5の底面に近い位置で空回りしても、ロッド11の底部はヘリカルギア5の底面に当たらない。従って、ロッド11の空回り時における回転抵抗を小さくすることができると共に、空回り音も小さくすることができる。
【0041】
ハウジング3の防水・排水構造(図4、図5、図16)
ハウジング本体1及びハウジング蓋2の周縁には、それぞれ二重壁状の外側防水壁14、15と、内側防水壁16、17が、互いに対向状態で形成されている。そして、ハウジング本体1とハウジング蓋2を組付けた状態で、外側防水壁14、15同士及び内側防水壁16、17同士の側面が密着する。この密着状態は、ハウジング本体1に形成された3つのフック18が、ハウジング蓋2に形成された突起19に係合することにより維持される。
【0042】
外側防水壁14、15同士と内側防水壁16、17同士を密着させることにより、両者間にハウジング3の周縁に略沿った排水流路20が形成される。そして、この排水流路20内のハウジング本体1において、車体への組付け状態で下端部となる位置に水抜孔21が形成されている。尚、ピボット軸6からの角度が90°相違した位置には、別の水抜孔21が形成されている。この別の水抜孔21は、このハウジング本体1を左側のドアミラーとして使用する場合に利用されるものである。
【0043】
この水抜孔21の外側には、水抜孔21から左側へ水平に延びたボックス状の区画室22が形成されている。そして、この区画室22の水抜孔21に対向する底壁には、水抜孔21に対して左側へオフセットした位置に排水孔23が形成されている。
【0044】
この防水・排水構造によれば、二重壁構造の排水流路20が形成されているため、高圧の洗車水が外側防水壁14、15同士の合わせ部から万一侵入したような場合でも、その内側に内側防水壁16、17があるため、ハウジング本体1の中心部へは入り込まない。侵入した水は、排水流路20を通って、下端部の水抜孔21に導かれ、水抜孔21から区画室22の排水孔23を経て外部へ排水される。また、水抜孔21と排水孔23が連通しているため、温度変化に伴うハウジング3内の空気の膨張・収縮によって生じる呼吸作用も確保できる。
【0045】
そして、ハウジング本体1の表面を伝わって排水孔23からハウジング3の内部へ侵入しようとする水に対しては、区画室22の側壁が水抜孔21の周りを取り囲むことなるため、この側壁が水抜孔21へ侵入しようとする水に対して防護壁となり、防水性能が向上する。また、区画室22の底壁に形成された排水孔23が水抜孔21に対してオフセットしているため、排水孔23から水が真っ直ぐに侵入してきても、その水は水抜孔21以外の部分に当たり元に戻されるため、ハウジング3への侵入が防止され、防水性能が更に向上する。
【0046】
また、この実施形態の構造では、排水孔23が水抜孔21に対してハウジング本体1の周縁に沿った方向(水平方向)でオフセットしているため、区画室22の向きもハウジング本体1の周縁に沿った横長状態で形成することができ、区画室22を形成するために、ハウジング本体1を大型化する必要がなく、ハウジング3のコンパクト化を図ることができる。
【0047】
前記説明では、ハウジング蓋2の表面中央には、先端が球状のピボット軸6が立設され、このピボット軸6の先端に、ホルダベース7の中央に形成された軸受部8が、回転自在に嵌め込まれている旨説明したが、ボット軸6の先端が球状に限定することも、また嵌め込みが回転自在と限定する必要もない。
【0048】
【発明の効果】
この発明によれば、ホルダベースのリング体を板バネの両端部により常に放射方向へ押した状態になるため、ホルダベース全体に板バネのテンションが作用し、ホルダベースの振動を防止する。従って、ホルダベースに固定されたミラーが振動せず、ミラーの視認性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の駆動装置を示す後面図。
【図2】図1中矢示SA−SA線に沿う断面図。
【図3】図1のハウジング蓋、ホルダベース、板バネを示す分解斜視図。
【図4】図1のハウジング本体と内蔵させる駆動部品を示す分解斜視図。
【図5】図2のロッドの出没構造を示す拡大断面図。
【図6】図2のホルダベースを示す拡大断面図
【図7】図1の位置規制体の間で弾性部が移動する状態を示す拡大断面図。
【図8】図5のガイド筒を示す拡大断面図。
【図9】図2のヘリカルギアを示す拡大断面図。
【図10】図8中の矢示DA部分を示す拡大断面図。
【図11】図5のロッドを示す全体側面図。
【図12】図11のロッドを示す全体断面図。
【図13】図2の球状ソケット部を示す拡大断面図。
【図14】図6の球状先端部の面取り部を示す拡大断面図。
【図15】図5中矢示SB−SB線に沿う断面図。
【図16】図4中の矢示DB部分を示す拡大断面図。
【符号の説明】
1 ハウジング本体
2 ハウジング蓋
3 ハウジング
6 ピボット軸
7 ホルダベース
8 軸受部
9 ミラー
11 ロッド
12 球状先端部
13 球状ソケット部
34 スリット(ヘリカルギア)
44 リング体
52 板バネ
53 円孔
54 返り部

Claims (4)

  1. ハウジング本体とハウジング蓋とでハウジングを形成すると共に、ハウジング蓋の中央に形成されたピボット軸に、ミラーを固定したホルダベースの中央に形成された軸受部を傾動自在に嵌合させて支持し、ハウジングのピボット軸とは異なる位置に出没自在なロッドを設け、該ロッドの先端部をホルダベースのソケット部に傾動自在に嵌合させて、該ロッドを出没させることにより、ホルダベースの角度を変化させる車両用ミラー駆動装置のホルダベース構造であって、
    前記ホルダベースにおける軸受部の周囲には、軸受部側へ対面する側面を有するリング体が形成され、該リング体の側面の複数位置に対して、軸受部に取付けた板バネの両端部により放射方向への弾性力を作用させたことを特徴とする車両用ミラー駆動装置のホルダベース構造。
  2. 請求項1記載の車両用ミラー駆動装置のホルダベース構造であって、
    前記ハウジング蓋におけるリング体の周囲には、その内周面がリング体の外周面と摺接する第2リング体を備えて構成されていることを特徴とする車両用ミラー駆動装置のホルダベース構造。
  3. 請求項1または2記載の車両用ミラー駆動装置のホルダベース構造であって、
    板バネの両端部に、リング体の側面に対して弾接する返り部が形成されていることを特徴とする車両用ミラー駆動装置のホルダベース構造。
  4. ハウジング本体とハウジング蓋とでハウジングを形成すると共に、ハウジング蓋の中央に形成されたピボット軸に、ミラーを固定したホルダベースの中央に形成された軸受部を傾動自在に嵌合させて支持し、ハウジングのピボット軸とは異なる位置に出没自在なロッドを設け、該ロッドの先端部をホルダベースのソケット部に傾動自在に嵌合させて、該ロッドを出没させることにより、ホルダベースの角度を変化させる車両用ミラー駆動装置のホルダベース構造であって、
    前記ホルダベースの根本部分は、ピボット軸の最大径よりも小さな径で開口していると共に複数のスリットによりピボット軸を圧入可能で、且つ軸受部に板バネに形成された軸受部の根本部分に相当する内径の円孔を嵌装して、軸受部からのピボット軸の抜けを防止することを特徴とする車両用ミラー駆動装置のホルダベース構造。
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