JP4110674B2 - 電気湯沸かし器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は家庭や事務所などで飲料用の湯を供給する電気湯沸かし器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気湯沸かし器では、電力を用いて水を加熱し、湯を一定温度に長時間保持している。その加熱のための入力電力を小さくするため、内の貯水容器の周りを種々の断熱材で被っている。ウレタンなどの有機系の断熱材、ガラスウールやセラミックウール等の無機系の断熱材、そして金属の反射板を使用した断熱材がある。さらに、ガスバリア層としてアルミ箔を用いた積層フィルムからなる包装材に断熱芯材と封入し、包装材内部を真空排気した真空断熱材を使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ウレタンなどの有機系の断熱材は熱による劣化が著しいため、電気湯沸かし器での使用温度の100℃近辺では断熱材の断熱性能が低下するという問題があった。また無機系の断熱材では熱に対する耐久性能は優れているが、断熱性能は一般に低いという問題がある。また、包装材内部を真空排気した真空断熱材では、包装材内部の断熱性能は良いが、包装材を構成するガスバリア層のアルミ箔を通しての熱伝導があり、真空断熱材全体としての断熱性は十分に良いとはいえない。
【0004】
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、ガスバリア層を通しての熱伝導をできるだけ小さくすることによって真空断熱材の断熱性能を向上させた電気湯沸かし器を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、真空断熱材を構成している積層フィルム中のガスバリアー層の一方が金属箔層、他方が蒸着層となるように構成し、高温の容器側に金属箔層面を配置し、さらに積層フィルムのシール層が熱溶着された芯材の入っていない部位であるヒートシール部を、容器に巻き付けた円筒形の内側である高温側に折り曲げて配したものである。蒸着法によってガスバリア層を形成することにより、金属を延伸させた箔状のガスバリア層と比べて、層厚を薄くすることができる。さらに、蒸着物質としてアルミニウムより熱伝導率の小さい物質を選択することも同時に可能である。このように、蒸着法によって形成することにより、層厚を薄くしたり、蒸着物質を熱伝導率の小さい物質に選択してガスバリア層を構成することができる。その結果、ガスバリア層を通しての熱伝導が小さくなり、真空断熱材全体の断熱性能を向上させた電気湯沸かし器とすることができる。さらに、真空断熱材の金属箔層面を高温の容器側にすることによって、ガスバリア層の熱劣化を防ぐことができる。さらに、シール部を高温である容器側に折り曲げることによって、金属箔を伝わり外側に逃げる熱を抑えることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
上記の課題を解決するために本発明は、貯水用容器と、貯水用容器内の水を加熱するヒータと、加熱された水を流出させる出湯経路と、ガスバリアー層を有する積層フィルムからなる包装材に断熱芯材を封入して真空排気した真空断熱材とを備え、前記真空断熱材を構成しているガスバリアー層が蒸着層であることを特徴としている。
【0007】
また上記蒸着層としては金属を蒸着させたものであり、その蒸着金属としては、アルミニウム、チタン、ニッケルの内の少なくとも一つを用いたものである。
【0008】
従来一般にガスバリア層として使用されているアルミニウム箔の箔厚はおよそ6〜10μmである。またアルミニウムの熱伝導率は、平均温度300Kで237W/m・Kである。一方、蒸着法によってガスバリア層を形成すると、層厚を0.01〜0.3μmに形成することができる。したがって、蒸着法を使用することにより層厚を従来のそれと比べて20倍以上も薄くすることができる。さらに、蒸着物質をチタンまたはニッケルにすることによって、熱伝導率を小さくすることができる。以上の結果、ガスバリア層を通しての熱伝導を小さくすることができ、真空断熱材全体の断熱性能を向上させることができる。
【0009】
また、上記蒸着層としては金属酸化物を蒸着させたものであり、その蒸着する金属酸化物として、酸化珪素または酸化アルミニウムの内の少なくとも一つを用いたものである。
【0010】
金属酸化物の熱伝導率は、その金属単体のそれより一般に小さい。したがって、酸化物の状態で蒸着が可能でガスバリア性を有していれば金属酸化物のガスバリア層の方が良いことになる。酸化珪素や酸化アルミニウムはこの点で最適であり、熱伝導率が著しく小さい。したがって、金属酸化物のガスバリア層を通しての熱伝導が小さいため、真空断熱材全体の断熱性能を向上させることができる。
【0011】
また本発明は、貯水用容器と、貯水用容器内の水を加熱するヒータと、加熱された水を流出させる出湯経路と、ガスバリアー層を有する積層フィルムからなる包装材に断熱芯材を封入して真空排気した真空断熱材とを有する電気湯沸かし器において、前記真空断熱材を構成している積層フィルム中のガスバリアー層の一方が金属箔層、他方が蒸着層となるように構成し、高温の容器側に金属箔層面を配置し、さらに包装材のシール部を高温側に折り曲げたものである。
【0012】
また上記金属箔として、アルミ箔、ステンレス箔または鉄箔の内のいずれかであり、かつ、上記蒸着層として、金属、金属酸化物のいずれかを蒸着させたものである。
【0013】
このように真空断熱材の金属箔層面を高温の容器側にすることによって、ガスバリア層の熱劣化を防ぐことができる。さらに、シール部を高温である容器側に折り曲げることによって、金属箔を伝わり外側に逃げる熱を抑えることができる。
【0014】
【実施例】
以下本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0015】
(実施例1)
図1において、1は電気湯沸かし器の本体(以下本体とする)で、内部に湯を貯湯する内径184mm、深さ250mmの貯水用容器2(以下容器2とする)を有している。また3は本体1の上部を開閉可能に覆った上蓋である。4は上蓋に設けられた蒸気通路であり、一端は中栓5を貫通して容器2内と連通しており、他端は大気と連通している。6は本体1と容器2との間の底部に設けた駆動ポンプで、その吸い込み口7は容器2の底部と連通している。8は出湯口であり、ここより電気湯沸かし器外に出湯する。9は加熱用のヒーターであり、ドーナツ状に中央部が抜けており容器2の下部に装着されている。10は温度検知器であり容器2の下部、ヒーター9の中心部に装着されている。11は容器2の側面に巻いた真空断熱材であり、容器2の熱が本体1の側面から逃げることを抑える役割をしている。
【0016】
次にここで使用した真空断熱材11を図2で説明する。図2は真空断熱材11の断面図を示している。13は真空断熱材の芯材である。積層フィルム14はシール層15とガスバリア層16と保護層17より成り、保護層17はポリエチレンテレフタレート層で構成されている。芯材13は合成シリカを使用した。合成シリカは粒子が非常に細かいため、粒子の熱伝導率が非常に小さい。さらに、10torr以下の圧力であれば圧力によらず非常に小さな熱伝導率を示すので、高温化で空気の分子運動の大きな条件下では、非常にふさわしい材料である。シール層15は無延伸のポリプロピレンを使用している。ガスバリア層16としてはポリエチレンテレフタレートを支持体とし蒸着させた蒸着層を使用した。シール層15とガスバリア層16を保護する役割を持つ保護層17としてポリエチレンテレフタレートを使用した。ポリエチレンテレフタレートは耐熱性に優れるため、電気湯沸かし器の保護層としてはふさわしい。
【0017】
また、ここで使用した真空断熱材11の装着形態を図3を用いて説明する。芯材13の入っている部分は真空断熱材として断熱性を有する部分である。シール層15が熱溶着している部分であるヒートシール部は、芯材は入っていない。真空断熱材11は長方形の形状をしていて、容器2に巻き付ける際には、ヒートシール部を図3に示すように円筒形の外側に折り曲げる。このようにするとヒートシール部が高温側に直接接することがなく、耐久劣化が小さくなる。
【0018】
以下本実施例の動作を説明する。容器2に水を入れた後通電すると、容器2内の水温は温度検知器10により計測されその信号が制御装置12に送られ、制御装置はヒーター9の通電を開始し始める。容器2内の水が沸騰すると、ヒーター9への通電が終了する。その後、温度検知器10からの信号を受けて、制御装置12はヒーター9を容器2の温度が一定温度になうように制御する。
【0019】
(実験例1)
上記の電気湯沸かし器に使用する真空断熱材のガスバリア層として、アルミニウム蒸着層、チタン蒸着層、ニッケル蒸着層、酸化アルミニウム蒸着層、酸化珪素蒸着層およびアルミニウム箔の計6種類を用意した。これらの支持体としてポリエチレンテレフタレートを使用し、水晶式膜厚計で厚さがおよそ0.05μmとなるように蒸着層を形成した。
【0020】
これらの蒸着層をガスバリアー層とした真空断熱材を装着させた電気湯沸かし器に水を入れ初期と使用1000時間後の保温電力を測定した。保温水温は97℃、雰囲気温度は20℃である。測定は十分平衡状態に達した後、行った。また、従来と比較のため、ガスバリアー層にアルミニウム箔を使用した真空断熱材についても同様の実験を行った。
【0021】
保温電力の測定結果を(表1)に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
このように真空断熱材のガスバリア層を蒸着法により形成したものは、従来のアルミ箔を使用した真空断熱材と比べて保温電力を低く押さえることができている。さらにその中でも金属酸化物を用いたものが良いという傾向が見られた。このように蒸着法により形成したガスバリア層を真空断熱材を使用することにより、保温電力の少ない電気湯沸かし器が実現できる。
【0024】
(実施例2)
本実施例で使用する電気湯沸かし器1の構成および実施例の動作は実施例1と同様である。
【0025】
次にここで使用した真空断熱材11を図2で説明する。積層フィルム14がシール層15とガスバリア層16と保護層17より成り、芯材が封入されていることは実施例1と同様である。しかし本実施例では、ガスバリア層16の一方がポリエチレンテレフタレートを支持体とし蒸着させた蒸着層であり、もう一方が金属箔である。
【0026】
また真空断熱材11の装着形態を図4で説明する。芯材13の入っている部分は真空断熱材として断熱性を有する部分である。シール層15が熱溶着している部分であるヒートシール部は、芯材は入っていない。真空断熱材11は長方形の形状をしていて、容器2に巻き付ける際には、容器側にガスバリア層が金属箔である面にして装着する。このようにすると、ガスバリア層の熱に対する劣化を防ぐことができる。さらに、ヒートシール部を図4に示すように円筒形の内側に折り曲げる。このようにすると金属箔を伝わる熱が逃げるのを防ぐことができる。
【0027】
(実験例2)
上記の電気湯沸かし器に使用する真空断熱材の一方のガスバリア層として、酸化珪素蒸着層を用い、もう一方のガスバリア層としてアルミニウム箔を用いた。酸化珪素蒸着層の支持体としてポリエチレンテレフタレートを使用し、水晶式膜厚計で厚さがおよそ0.05μmとなるように蒸着層を形成した。
【0028】
アルミニウム箔の膜厚は6μである。これらの蒸着層と金属箔層を張り合わせてガスバリアー層とした。金属箔層を容器側にし、シール層を容器側に折り曲げた真空断熱材を装着させた電気湯沸かし器に水を入れ初期と使用1000時間後の保温電力を測定した。保温水温は97℃、雰囲気温度は20℃である。測定は十分平衡状態に達した後、行った。また、比較のため、蒸着層側を容器側にした場合、図3のようにシール層を外側に折り曲げた場合についても同様の実験を行った。
【0029】
保温電力の測定結果を(表2)に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
このように真空断熱材の蒸着層を容器側にし、シール層を容器側に折り曲げた構成が、初期保温電力および1000時間後の保温電力ともに最も良い。初期保温電力が良いのは折り曲げたシール部と高温である容器に接している層が蒸着層であるため、金属層である場合と比べて熱の伝わりが抑えられるためである。また、1000時間後の保温電力が良いのは高温の容器側に金属層の面を配置したため、ガスバリア層の熱劣化を防ぐことができたためである。このように蒸着面を外側にし、シーツ部を内側に折り曲げることによって、外部への熱伝導を小さく構成することができる。その結果、長時間保温電力の小さい電気湯沸かし器が実現できる。
【0032】
【発明の効果】
上記実施例から明らかなように、請求項1記載の発明によれば、層厚を薄くすることができるため熱伝達を小さくすることができ、真空断熱材全体の断熱性能を向上させることができる。
【0033】
また、ガスバリア層の熱劣化を防ぐことができ、さらに外側へ逃げる熱を抑えることができるため、真空断熱材全体の断熱性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1、2における電気湯沸かし器の縦断面図
【図2】 本発明の実施例1、2における真空断熱材の断面図
【図3】 本発明の実施例1における真空断熱材の円筒図
【図4】 本発明の実施例2における真空断熱材の円筒図
【符号の説明】
1電気湯沸かし器の本体
2貯水用容器
3上蓋
4蒸気通路
5中栓
6駆動ポンプ
7吸い込み口
8出湯口
9ヒーター
10温度検知器
11真空断熱材
12制御装置
13芯材
14積層フィルム
15シール層
16ガスバリア層
17保護層
Claims (1)
- 貯水用容器と、貯水用容器内の水を加熱するヒータと、加熱された水を流出させる出湯経路と、ガスバリアー層を有する積層フィルムからなる包装材に断熱芯材を封入して真空排気した真空断熱材とを備え、前記真空断熱材を構成している積層フィルム中のガスバリアー層の一方が金属箔層、他方が蒸着層となるように構成し、高温の容器側に金属箔層面を配置し、さらに積層フィルムのシール層が熱溶着された芯材の入っていない部位であるヒートシール部を、容器に巻き付けた円筒形の内側である高温側に折り曲げて配した電気湯沸かし器。
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JP17643899A Expired - Fee Related JP4110674B2 (ja) | 1999-06-23 | 1999-06-23 | 電気湯沸かし器 |
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Cited By (1)
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US10001320B2 (en) | 2014-12-26 | 2018-06-19 | Samsung Electronics Co., Ltd. | Laminated structure and vacuum insulating material including the same |
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- 1999-06-23 JP JP17643899A patent/JP4110674B2/ja not_active Expired - Fee Related
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