JP4110384B2 - 義肢補綴装置用シリコーンライナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、義肢補綴装置が装着される残存四肢を被覆、保護し、補綴装置を懸垂するために用いられる、シリコーンゴム製の義肢補綴装置用シリコーンライナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、義肢補綴装置が装着される残存四肢を覆って取り付けられるサスペンションライナーは、残存四肢の保護と、このライナーのスリーブに義肢補綴装置を連結し、懸垂するために用いられ、このライナーとしては、シリコーンエラストマーにて形成することが知られている(特許文献1,2)。
【0003】
このようなシリコーンライナーにおいては、これらが残存四肢にぴったりと合い、残存四肢の全ての表面の輪郭及び表面下の骨格要素を受け入れ、かつ残存四肢と残存四肢を覆って取り付けられる補綴装置の硬いソケットとの間の快適なクッションを与えることが非常に望ましく、このためシリコーンライナーに使用されるシリコーンゴムは適度な硬さ(又は柔らかさ)、伸び、引張り強さ及びその他の性質(抗菌性、無孔質、易清浄性など)を有するものが選択使用されている。
【0004】
この場合、米国特許第4,923,474号明細書(特許文献1)には、径方向に拡張可能であるが、軸方向には実質的に非弾性で、伸縮しないように制御したシリコーンライナーが開示されている。このライナーは、軸方向及び径方向に同等の弾性を有するライナーで起こり得る補綴装置の重量による、ライナーの伸びによって生じる陰圧(陰圧により断端部の不快感及び循環障害)効果を最小にする弾性制御用マトリックス材料をスリーブの先端に有する。また、この特許文献3は、軸方向に対する非弾性状態を繊維を積層配置することによって達成している。しかし、この方法は、製造方法が複雑になり、高価になるという欠点を有している。
【0005】
また、特表2001−524010号公報(特許文献3)には、柔らかい内側シリコーンエラストマー層と比較的硬い外側シリコーンエラストマー層からなるシリコーンライナーが提案されているが、これも上記例と同様に製造方法が複雑になり、高価となる欠点を有している。
【0006】
【特許文献1】
米国特許第4,923,474号明細書
【特許文献2】
米国特許第5,507,834号明細書
【特許文献3】
特表2001−524010号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、径方向に弾性を有しながら軸方向への伸縮が抑制された、簡単に製造でき、安価な義肢補綴装置用シリコーンライナーを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、義肢補綴装置用シリコーンライナーの残存四肢の先端領域を気密に被覆するシリコーンゴム製の筒状スリーブの一部に繊維状粉末を配合することにより、径方向には弾性を与えつつ、軸方向にはその伸縮を容易に規制し得ること、そして筒状スリーブの一部を繊維状粉末を配合したシリコーンゴムにて形成するだけで、このような径方向と軸方向とで弾性乃至伸縮異方性を与えることができるので、簡単にかつ安価に製造し得ることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、義肢補綴装置が装着される残存四肢の先端領域を気密に被覆するシリコーンゴム製の筒状スリーブを有する義肢補綴装置用シリコーンライナーにおいて、上記スリーブの一部を繊維状粉末が配合されたシリコーンゴムにより形成したことを特徴とする義肢補綴装置用シリコーンライナーを提供する。
【0010】
この場合、シリコーンゴム製のスリーブが、先端部が閉塞された筒状形状を有し、この先端閉塞部を含む先端側の第1シリコーンゴム部と、これに連なる第2シリコーンゴム部と、これに連なる基端側の第3シリコーンゴム部とを備え、上記第2シリコーンゴム部を繊維状粉末が配合されたシリコーンゴムにて形成すると共に、上記第1シリコーンゴム部のシリコーンゴム硬度を最も小さく形成したものであることが好ましく、また、上記第1シリコーンゴム部の先端閉塞部に、補綴装置の結合ピン又は固定ピンを固着可能な金属金具を埋設したものであることが好ましい。
【0011】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の義肢補綴装置用シリコーンライナーは、義肢補綴装置が装着される残存四肢の先端領域を気密に被覆するシリコーンゴム製筒状スリーブの一部を繊維状粉末が配合されたシリコーンゴムにより形成したものである。
【0012】
図1は、このようなシリコーンライナーの好適な例を示すもので、図中1は先端部が閉塞された筒状スリーブである。この筒状スリーブ1は、先端側から基端側に向けて漸次拡径するように形成されており、またその肉厚が先端側から基端側に向かうに従い、漸次薄肉になるように形成されている。
【0013】
上記筒状スリーブ1は、残存四肢(残存断端)を被覆したとき、気密になるように形成されており、また、上記先端閉塞部(先端面)11aを含む先端部の第1シリコーンゴム部11と、これに連続する第2シリコーンゴム部12と、これに連続する基端側の第3シリコーンゴム部13とから形成されている。上記先端閉塞部(先端面)11aは、中央部が外方に膨出する円形ドーム状に形成されており、その内部中央部に義肢補綴装置の結合ピン又は固定ピンを固着可能な金属金具20が埋設されている。この金具20の基体21は、上記先端閉塞部の円形ドーム形状と対応した断面円弧状に形成され、この基体21の外面中央部に一体に上記結合ピン又は固定ピンと螺合等の手段で固着可能なソケット22が突設されている。
【0014】
この場合、上記第2シリコーンゴム部12は、繊維状粉末を配合したシリコーンゴムによって形成されており、これによってスリーブ1の軸方向の弾性乃至伸縮を抑制している。また、第1シリコーンゴム部11は、これを形成するシリコーンゴムの硬度を、第2及び第3シリコーンゴム部12,13のシリコーンゴム硬度よりも小さくしており、これにより骨の当たる場合のある第1シリコーンゴム部11を軟らかく形成して残存四肢上のでこぼこに良好に適合し、幅広い多様な残存四肢に順応して、手足を失った人に残存四肢の補綴装置との界面で快適感を与えるようになっている。なお、使用性及び使用感の点から、第1シリコーンゴム部11のシリコーンゴムの硬度は、デュロメーターA硬度で5〜20、特に5〜10とすることが好ましく、また、第2及び第3シリコーンゴム部12,13を形成するシリコーンゴムのデュロメーターA硬度は10〜40、特に10〜30であることが好ましいが、第3シリコーンゴム部13のシリコーンゴムは、第2シリコーンゴム部12のシリコーンゴムより高硬度に形成することができる。
【0015】
ここで、第1シリコーンゴム部11と第2シリコーンゴム部12との境界部は、上記金具20の基体21の内周縁部23から1〜5mmの位置にある(即ち、図1において距離t1が1〜5mm)ことが好ましく、また、第2シリコーンゴム部12と第3シリコーンゴム部13との境界部は、上記金具20の基体21の内周縁部23から30〜150mmにある(即ち、図1において距離t2が30〜150mm)ことが好ましく、特に好ましくは50〜100mmである。なお、上記金具20の基体21の内周縁部23とスリーブ1の基端との間の距離(即ち、図1において距離t3)は、250〜400mm、特に300〜380mmであることが好ましい。
【0016】
この場合、距離t1が短すぎると、残存四肢上のでこぼこへの適合が不足し、骨の当たる部分であれば痛みを和らげる効果が低下するおそれがある。また、距離t2が長すぎると、径方向の伸びの抑制が現れてシリコーンライナーを装着する時にやりにくくする傾向が生じるおそれがある。
【0017】
なお、使用に当たっては、記述されたタイプのライナーを基端から先端まで巻き上げ、残存断端の先端上に配置し、ストッキングのように断端を覆って巻き戻して被せることにより、残存断端への密着が達成される。
【0018】
本発明のシリコーンライナーは、三段階成形プロセスによって製造することができ、まず金属金具20を埋設した第1シリコーンゴム部11を成形し、次いで繊維状粉末を配合したシリコーンゴム組成物を用いて第2シリコーンゴム部12を成形し、最後に第3シリコーンゴム部13を成形することができる。このためには、図2に示したような金型装置を使用して成形することが好ましい。
【0019】
即ち、この金型装置は、4つの外側金型部品30,40,50,70と1つの内側金型部品60とを備える。まず、金型30,40,50を組み立てた後に、金属金具20を金型30を通して固定ネジ31で金型40内に固定する。次いで金型60を金型50内に差し込み固定する。これで成形の準備が整い、第1シリコーンゴム部を形成する第一層目のシリコーンゴム組成物を金型60のポット61に所定量仕込み、金型70を被せ、圧力を掛けてプランジャー71で第一層のシリコーンゴム組成物をキャビティー80内にスプルー62、ゲート63を通って注入する。次いで、金型70を開き、第2シリコーンゴム部を形成する第二層目のシリコーンゴム組成物を金型60のポット61に所定量仕込み、金型70を被せ、圧力を掛けてプランジャー71で第二層のシリコーンゴム組成物をキャビティー80内にスプルー62、ゲート63を通って注入する。次いで、金型70を開き、第3シリコーンゴム部を形成する第三層目のシリコーンゴム組成物を金型60のポット61に所定量仕込み、金型70を被せ、圧力を掛けてプランジャー71で第三層のシリコーンゴム組成物をキャビティー80内にスプルー62、ゲート63を通って注入する。ここで温度、圧力を保って、注入したシリコーンゴム組成物が加硫する所定の時間経ってから、金属金具固定ネジを取り外し、金型を解体して成形されたシリコーンライナーを取り出すことにより、本発明のシリコーンライナーが製造される。
【0020】
ここで、シリコーンゴム組成物は、第1〜第3のいずれのシリコーンゴム部を形成するものも、
(A)オルガノポリシロキサン(ベースポリマー)
(B)補強性充填材
(C)硬化剤
を含有し、更に第2シリコーンゴム部を形成するシリコーンゴム組成物は、
(D)繊維状粉末
を含有する。
【0021】
上記(A)成分のオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(1)
RnSiO(4-n)/2 (1)
(但し、Rは置換又は非置換の一価炭化水素基、nは1.9〜2.1、好ましくは1.95〜2.05の正数である。)
で示されるものを使用することができ、特に1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するものが好ましい。ここで、上記式(1)中、Rは好ましくは置換又は非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、シクロアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、これらの基の水素原子が部分的に塩素原子、シアノ基などの有機基で置換されたハロゲン化炭化水素基、シアノ化炭化水素基等が例示されるが、一般には該オルガノポリシロキサンの主鎖がジメチルポリシロキサン単位からなるものや、このジメチルポリシロキサンの主鎖にフェニル基、ビニル基、3−トリフロロプロピル基等を導入したものなどが好適に使用できる。なお、このジオルガノポリシロキサンの重合度は、100以上、特に300〜10,000であることが好ましく、重合度が100未満では硬化物の機械的強度が低下し、作業性が劣る場合がある。
【0022】
また、(B)成分の補強性充填材としてはシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物、カーボン等が単独もしくは併用で使用されている。中でもシリカが好ましく、フュームドシリカ、湿式シリカがよく、更には表面のシラノール基をシラザン、トリメチルシラン等で処理したシリカの使用が好ましい。
【0023】
この(B)成分の補強性充填材の配合量は、(A)成分100重量部に対し5〜60重量部、好ましくは10〜55重量部、特に20〜50重量部とすることが好ましい。少なすぎると、強度が弱く装着時にシリコーンゴムが切れたりする不都合が生じる場合があり、多すぎると、成形性に劣る場合がある。
【0024】
上記シリコーンゴム組成物を硬化させる方法としては、付加架橋によっても過酸化物架橋によってもよい。付加架橋による場合は、(C)成分の硬化剤としては、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金族金属系触媒との組み合わせからなる付加反応用硬化剤が使用され、この場合、(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、1分子中にビニル基等のアルケニル基を2個以上有するものを使用することが必要である。
【0025】
ここで、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上の珪素原子結合水素原子(即ち、SiH基)を有するものが使用される。
【0026】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、メチルハイドロジェン環状ポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)3SiO1/2単位とからなる共重合体などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0027】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、上記(A)成分のオルガノポリシロキサンの硬化有効量であり、通常、(A)成分のオルガノポリシロキサン100重量部に対して0.1〜50重量部とすることができるが、特に10重量部以下とすることが好ましい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分中のアルケニル基に対する(B)成分中の珪素原子結合水素原子(SiH基)の量がモル比で0.5〜5、特に0.8〜3程度となるように配合することもできる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量が多すぎると発泡等のおそれがあり、強度等で不利な場合が生じる。
【0028】
白金族金属系触媒(付加反応触媒)としては、白金族金属を触媒金属として含有する単体、化合物、及びそれらの錯体などを用いることができる。具体的には、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテートなどの白金系触媒、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等のパラジウム系触媒、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等のロジウム系触媒などが挙げられる。この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、通常、上記アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの合計量に対して、白金族金属として0.1〜1,000ppmとするのが望ましいが、より好ましくは1〜200ppmである。
【0029】
なお、オルガノハイドロジェンポリシロキサン/白金族金属系触媒を硬化剤として用いる場合は、反応制御剤を配合することができる。反応制御剤としては、アセチレンアルコール、テトラビニルテトラメチルテトラシロキサンなどの公知の反応制御剤が使用され、その配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100重量部に対して1重量部以下が好ましく、多すぎると硬化が遅くなり、作業性、特に一次硬化時の取り扱いに不都合が生じるおそれがある。
【0030】
一方、過酸化物架橋の場合は、硬化剤としては有機過酸化物が使用される。この(C)成分の有機過酸化物としては、従来公知のものを使用することができ、例えばベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサン等が挙げられる。
【0031】
有機過酸化物の配合量は、硬化有効量であり、(A)成分のオルガノポリシロキサン100重量部に対して0.1〜15重量部、特に0.5〜10重量部とすることが好ましい。少なすぎると、加硫不足となるおそれがある。逆に、多すぎると作業性が低下する場合がある。
【0032】
(D)成分は本発明の重要な添加剤であり、第二層のシリコーンゴム組成物に欠かせない成分である。繊維状粉末としてはアクリル繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維に代表される合成繊維やガラスクロス、セルロース繊維、セラミックス繊維、金属繊維などが使用できるが、シリコーンゴム組成物の硬化の点、皮膚に対するやさしさから合成繊維が好ましく、特にはアラミド繊維が好ましい。
【0033】
繊維の長さは長いほうが弾性の抑制には効果があるが、あまり長いと成形性に難があり、短すぎると弾性抑制効果がでなくなるので、0.1〜30mmの範囲がよいが、好ましくは0.3〜20mm、とりわけ0.6〜10mmが好ましい。アラミド繊維の場合は、10mm以下であることが好ましく、通常0.1〜10mm、特には0.3〜10mm、とりわけ0.6〜10mmであることが、弾性抑制効果、成形性、外観等の点から好ましい。
【0034】
(D)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対し0.1〜30重量部、特に3〜20重量部であることが好ましく、この(D)成分の繊維状粉末が配合されたシリコーンゴム中、20重量%以下、より好ましくは0.1〜20重量%、更に好ましくは2〜15重量%含有されるように配合することが好ましい。
【0035】
なお、繊維状粉末の効果を高めるために、この繊維状粉末にシランカップリング剤やオルガノハイドジェンシロキサン等で処理してから添加することが望ましい。
【0036】
シランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、オルガノハイドジェンシロキサンとして具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、メチルハイドロジェン環状ポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)3SiO1/2単位とからなる共重合体などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0037】
なお、上記シリコーンゴム組成物には、上記成分に加え顔料やプロセス改良剤等を添加混合することができる。シリコーンゴム組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、ミラブルシリコーンゴム組成物はニーダ−、バンバリー、二本ロールなどで混練調製され、液状シリコーンゴム組成物はゲートミキサー、プラネタリーミキサー等で混練調製される。上記第2シリコーンゴム部を形成するシリコーンゴム組成物は、このように液状であってもよく、ミラブル型であってもよいが、成形性からは液状シリコーンゴム組成物が好ましい。
【0038】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0039】
[実施例1]
(1)第1シリコーンゴム部成形のための第一層用シリコーンゴム組成物の調製25℃における粘度が30,000csのジメチルビニルシロキシ基で両末端を封止したビニル基含有ジメチルポリシロキサン90重量部にジトリメチルシラザンで処理されたフュームドシリカ10重量部を添加してプラネタリーミキサーを用いて室温で30分間混練りした。次に、塩化白金酸のビニルシロキサン錯体(白金含有量1%)0.05重量部を均一に混合し、次いでエチルシクロヘキサノール0.05重量部を添加混合し、更に25℃の粘度が40csの側鎖に直接水素原子が珪素原子に結合したオルガノハイドロジェンシロキサン0.5重量部と25℃の粘度が16csの両末端に直接水素原子が珪素原子に結合したオルガノハイドロジェンシロキサン2.6重量部を均一に混合して、シリコーンゴム組成物を調製した。この組成物の硬化後のJIS K 6249デュロメーターA硬度は10であった。
(2)第2シリコーンゴム部成形のための第二層用シリコーンゴム組成物の調製(1)のシリコーンゴム組成物100重量部に対してコーネックスカットファイバー(メタ系アラミド繊維、テイジン製;2デニール、1mmカット品)5重量部を添加してプラネタリーミキサーを用いて室温で30分間混練りして、シリコーンゴム組成物を調製した。この組成物の硬化後のJIS K 6249デュロメーターA硬度は25であった。
(3)第3シリコーンゴム部成形のための第三層用シリコーンゴム組成物の調製25℃における粘度が30,000csのジメチルビニルシロキシ基で両末端を封止したビニル基含有ジメチルポリシロキサン80重量部にジトリメチルシラザンで処理されたフュームドシリカ20重量部を添加してプラネタリーミキサーを用いて室温で30分間混練りした。次に、塩化白金酸のビニルシロキサン錯体(白金含有量1%)0.05重量部を均一に混合し、次いでエチルシクロヘキサノール0.05重量部を添加混合し、更に25℃の粘度が40csの側鎖に直接水素原子が珪素原子に結合したオルガノハイドロジェンシロキサン1.2重量部と25℃の粘度が16csの両末端に直接水素原子が珪素原子に結合したオルガノハイドロジェンシロキサン1.2重量部を均一に混合してシリコーンゴム組成物を調製した。この組成物の硬化後のJIS K 6249デュロメーターA硬度は25であった。
上記3種のシリコーンゴム組成物を使用して図2の金型によりシリコーンライナーの製造を行った。
【0040】
金型30,40,50を組み立てた後に、金属金具20を金型30を通して固定ネジ31で金型40内に固定した。次いで金型30,40,50,60を温度100℃の加圧プレスに設置した。上記(1)の第一層目のシリコーンゴム組成物120gを金型60のポット61に所定量仕込み、金型70を被せ、圧力を掛けてプランジャー71で第一層のシリコーンゴム組成物をキャビティー80内にスプルー62、ゲート63を通って注入した。次いで、金型70を開き、上記(2)の第二層目のシリコーンゴム組成物60gを金型60のポット61に所定量仕込み、金型70を被せ、圧力を掛けてプランジャー71で第二層のシリコーンゴム組成物をキャビティー80内にスプルー62、ゲート63を通って注入した。次いで、金型70を開き、上記(3)の第三層目のシリコーンゴム組成物170gを金型60のポット61に所定量仕込み、金型70を被せ、圧力を掛けてプランジャー71で第三層のシリコーンゴム組成物をキャビティー80内にスプルー62、ゲート63を通って注入した。次いで、温度、圧力を30分保った後、金属金具固定ネジを取り外し、金型を解体して成形されたシリコーンライナーを取り出すことにより、シリコーンライナーを得た。得られたシリコーンライナーの第一層は金属金具の凹面から2mm上まで、第二層は金属金具の凹面2mm上から金属金具の凹面から120mm上までであった。
【0041】
[実施例2]
実施例1において、第二層用シリコーンゴム組成物の調製を下記の通り行った以外は実施例1と同様にしてシリコーンライナーを得た。
(4)第二層用シリコーンゴム組成物の調製
(1)のシリコーンゴム組成物100重量部に対して予めγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン15%アルコール溶液10gで1昼夜処理後、アルコールを蒸発させたコーネックスカットファイバー(メタ系アラミド繊維、テイジン製;2デニール、1mmカット品)5重量部を添加し、プラネタリーミキサーを用いて室温で30分間混練りして、シリコーンゴム組成物を調製した。この組成物の硬化後のJIS K 6249デュロメーターA硬度は27であった。
【0042】
[比較例1]
比較のため、上記(3)の第三層目のシリコーンゴム組成物のみを使用してシリコーンライナーを得た。即ち、実施例1と同様に金型30,40,50を組み立てた後に、金属金具20を金型30を通して固定ネジ31で金型40内に固定した。次いで、金型30,40,50,60を温度100℃の加圧プレスに設置した。上記(3)の第三層目のシリコーンゴム組成物350gを金型60のポット61に所定量仕込み、金型70を被せ、圧力を掛けてプランジャー71で第三層のシリコーンゴム組成物をキャビティー80内にスプルー62、ゲート63を通って注入した。次いで、温度、圧力を30分保った後、金属金具固定ネジを取り外し、金型を解体して成形されたシリコーンライナーを取り出すことにより、シリコーンライナーを得た。
【0043】
[シリコーンライナーの伸びの比較]
実施例1,2と比較例1で得たシリコーンライナーを次の方法により伸びの比較を行った場合のデータを表1に示す。
測定方法
金具と金具から100mmの所でチャックして、テストスピード20mm/minで引張ってオートグラフで応力を測定した。
【0044】
【表1】
【0045】
次に実施例1,2のシリコーンライナーの金属金具凹面2mm上から120mmを切り出し、シリコーンライナーの軸方向と径方向の応力を測定した結果を表2に示す。
測定方法
JIS K 6301 4号ダンベル
テストスピード200mm/minで引張ってオートグラフで応力を測定した。
【0046】
【表2】
【0047】
上記結果から、同じ応力に対して実施例1,2は比較例1に対して軸方向への伸びが明らかに抑制されていることが分かり、本発明の目的である通常の使用における径方向拡張の通常の範囲内でシリコーンの弾性を径方向で阻害しないが、使用中にライナーを軸方向で実質的に非弾性にさせ、完全には治癒していないか又は塞がっていないことがある残存四肢の先端において、陰圧により断端部の不快感及び循環障害効果を少なくできることが分かる。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、径方向に弾性があり、軸方向の弾性が抑制されたスリーブを有するシリコーンライナーを簡単かつ安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシリコーンライナーの一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明のシリコーンライナーを製造するための金型の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 筒状スリーブ
11 第1シリコーンゴム部
12 第2シリコーンゴム部
13 第3シリコーンゴム部
20 金属金具
21 基体
22 ソケット
23 内周縁部
30 外側金型
31 固定ネジ
40 外側金型
41 エアー抜き
50 外側金型
60 内側金型
61 ポット
62 スプルー
63 ゲート
70 外側金型
71 プランジャー
80 キャビティー
Claims (6)
- 義肢補綴装置が装着される残存四肢の先端領域を気密に被覆するシリコーンゴム製の筒状スリーブを有する義肢補綴装置用シリコーンライナーにおいて、上記スリーブの一部を繊維状粉末が配合されたシリコーンゴムにより形成したことを特徴とする義肢補綴装置用シリコーンライナー。
- 上記繊維状粉末が配合されたシリコーンゴムのデュロメーターA硬度が10〜30である請求項1記載のシリコーンライナー。
- 繊維状粉末がアラミド繊維であり、その長さが10mm以下であると共に、配合量がこの繊維状粉末が配合されたシリコーンゴム中20重量%以下である請求項1又は2記載のシリコーンライナー。
- 予めシランカップリング剤又はオルガノハイドロジェンシロキサンで処理された繊維状粉末を使用した請求項1、2又は3記載のシリコーンライナー。
- シリコーンゴム製のスリーブが、先端部が閉塞された筒状形状を有し、この先端閉塞部を含む先端側の第1シリコーンゴム部と、これに連なる第2シリコーンゴム部と、これに連なる基端側の第3シリコーンゴム部とを備え、上記第2シリコーンゴム部を繊維状粉末が配合されたシリコーンゴムにて形成すると共に、上記第1シリコーンゴム部のシリコーンゴム硬度を最も小さく形成した請求項1乃至4のいずれか1項記載のシリコーンライナー。
- 上記第1シリコーンゴム部の先端閉塞部に、補綴装置の結合ピン又は固定ピンを固着可能な金属金具を埋設してなる請求項5記載のシリコーンライナー。
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