JP4110354B2 - 燃料電池用改質装置の運転制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池用の水蒸気改質器を備えた燃料電池用改質装置において、改質部の出口温度とシフト部の触媒温度とCO選択酸化部の触媒温度に基づき改質組成を推定することにより、起動時における運転を制御するようにした燃料電池用改質装置の運転制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の固体高分子型燃料電池による発電システムを構築する場合、固体高分子型燃料電池に導入される燃料ガス中の一酸化炭素濃度は10ppm以下とする必要がある。一方でメタン等の炭化水素から水素を取り出す場合、副生成物として一酸化炭素が以下の化1および化2に従い生成される。
【化1】
【化2】
【0003】
上記化1および化2における組成は、温度平衡状態により決定され、一般的にCOは0.3〜1%程度となる。そこでCOを化3により低減する。
【化3】
【0004】
上記化1および化2において生成されるCO量と、化3において吸込むO2 量により最終的なCO濃度が決定されるが、実際のシステムで10ppm以下を保証することが重要である。
【0005】
従来の第1の燃料電池発電システム(特開平8−306378)においては、COセンサによる検出を試みていた。
【0006】
また従来の第2の燃料電池発電システム(特開2000−67897)においては、被改質ガス流量、吸込み酸素量を一定とすることでシステムの安定化を試みていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の第1の燃料電池発電システムにおける前記COセンサは、特に水素ガス雰囲気においては高価であり且つ、大掛かりな物となり実用的ではないという問題があった。
【0008】
また上記従来の第2の燃料電池発電システムにおいては、起動時におけるCO濃度の推定および保証方法が不確かであり、また部分負荷効率が悪くなるという問題があった。
【0009】
さらに上記従来の燃料電池発電システムにおいては、選択酸化部の温度が低い状態で、酸化剤を吹き込むと水素が燃焼して生成される水が凝縮し、触媒表面に付着して触媒活性が妨げられるという問題点があった。
【0010】
そこで本発明者は、燃料電池用の水蒸気改質器を備えた燃料電池用改質装置において、改質部の出口温度とシフト部の触媒温度とCO選択酸化部の触媒温度に基づき改質組成を推定することにより、起動時における運転を制御するようにするという本発明の技術的思想に着眼し、更に研究開発を重ねた結果、高価なCOセンサを不要にし、起動時におけるCO濃度の推定および保証を確実にして、部分負荷効率の悪化を防止し、触媒活性の低下を防止するという目的を達成する本発明に到達した。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明(請求項1に記載の第1発明)の燃料電池用改質装置の運転制御方法は、
改質原料を改質反応させる改質部、前記改質部から出たガスをシフト反応させるシフト部、前記シフト部から出たガスをCO酸化剤を用いて酸化反応させるCO選択酸化部を備えた燃料電池用改質装置において、
前記改質部の出口温度と前記シフト部の触媒温度と前記CO選択酸化部の触媒温度に基づき前記シフト部から排出される改質ガス中のCO濃度を推定することにより、起動時における運転の制御として前記CO選択酸化部に供給するCO酸化剤としての空気の供給量を制御するようにした
ものである。
【0012】
本発明(請求項2に記載の第2発明)の燃料電池用改質装置の運転制御方法は、
前記第1発明において、
前記CO選択酸化部の触媒温度と前記改質原料の流量に従って該CO選択酸化部に供給するCO酸化剤としての空気の供給量を制御することにより、起動時における運転を制御するようにした
ものである。
【0013】
本発明(請求項3に記載の第3発明)の燃料電池用改質装置の運転制御方法は、
前記第1発明または第2発明において、
前記改質部の出口温度を一定範囲内に保持するとともに、前記シフト部の触媒温度と改質原料の流量に従って前記CO選択酸化部に供給するCO酸化剤としての空気の供給量を制御することにより、定常時における運転を制御するようにした
ものである。
【0014】
本発明(請求項4に記載の第4発明)の燃料電池用改質装置の運転制御方法は、
前記第1発明乃至第3発明のいずれかにおいて、
負荷変動時に前記改質部の出口温度を一定範囲内に保持するように運転を制御するようにした
ものである。
【0015】
本発明(請求項5に記載の第5発明)の燃料電池用改質装置の運転制御方法は、
前記第4発明において、
負荷が増加する場合は、前記改質部に供給する水または水蒸気の供給量および前記CO選択酸化部に供給するCO酸化剤としての空気の供給量を先行して増加することにより、負荷変動時における運転を制御するようにした
ものである。
【0016】
本発明(請求項6に記載の第6発明)の燃料電池用改質装置の運転制御方法は、
前記第4発明または第5発明において、
負荷が減少する場合は、改質原料流量を先行して減少することにより、負荷変動時における運転を制御するようにした
ものである。
本発明(請求項7に記載の第7発明)の燃料電池用改質装置の運転制御方法は、
改質原料を改質反応させる改質部、前記改質部から出たガスをシフト反応させるシフト部、前記シフト部から出たガスをCO酸化剤としての空気を用いて酸化反応させるCO選択酸化部を備えた燃料電池用改質装置において、
前記改質部の出口温度とシフト部の触媒温度に基づいて前記シフト部から排出される改質ガス中のCO濃度を推定することにより前記CO選択酸化部に供給するCO酸化剤としての空気の供給量を制御するようにした
ものである。
【0017】
【発明の作用および効果】
上記構成より成る第1発明の燃料電池用改質装置の運転制御方法は、改質原料を改質反応させる改質部、前記改質部から出たガスをシフト反応させるシフト部、前記シフト部から出たガスをCO酸化剤を用いて酸化反応させるCO選択酸化部を備えた燃料電池用改質装置において、前記改質部の出口温度と前記シフト部の触媒温度と前記CO選択酸化部の触媒温度に基づき前記シフト部から排出される改質ガス中のCO濃度を推定することにより、起動時における運転の制御として前記CO選択酸化部に供給するCO酸化剤としての空気の供給量を制御し、改質ガス中のCO濃度の推定を確実にするとともに、高価なCOセンサを不要にするという効果を奏する。
【0018】
上記構成より成る第2発明の燃料電池用改質装置の運転制御方法は、前記第1発明において、前記CO選択酸化部の触媒温度と前記改質原料の流量に従って該CO選択酸化部に供給するCO酸化剤としての空気の供給量を制御することにより、起動時における運転を制御するようにしたので、触媒への水分付着および触媒活性の低下を防止するという効果を奏する。
【0019】
上記構成より成る第3発明の燃料電池用改質装置の運転制御方法は、前記第1発明または第2発明において、前記改質部の出口温度を一定範囲内に保持するとともに、前記シフト部の触媒温度と前記改質原料の流量に従って前記CO選択酸化部に供給するCO酸化剤としての空気の供給量を制御することにより、定常時における運転を制御するようにしたので、定常時における運転制御を可能にするという効果を奏する。
【0020】
上記構成より成る第4発明の燃料電池用改質装置の運転制御方法は、前記第1発明乃至第3発明のいずれかにおいて、負荷変動時に前記改質部の出口温度を一定範囲内に保持するように運転を制御するようにしたので、負荷変動時におけるCOの上昇の抑制を可能にするという効果を奏する。
【0021】
上記構成より成る第5発明の燃料電池用改質装置の運転制御方法は、前記第4発明において、負荷が増加する場合は、前記改質部に供給する水または水蒸気の供給量および前記CO選択酸化部に供給するCO酸化剤としての空気の供給量を先行して増加することにより、負荷変動時における運転を制御するようにしたので、負荷変動時におけるCOの上昇を抑制するという効果を奏する。
【0022】
上記構成より成る第6発明の燃料電池用改質装置の運転制御方法は、前記第4発明または第5発明において、負荷が減少する場合は、改質原料流量を先行して減少することにより、負荷変動時における運転を制御するようにしたので、負荷変動時におけるCOの上昇を抑制するという効果を奏する。
上記構成より成る第7発明の燃料電池用改質装置の運転制御方法は、改質原料を改質反応させる改質部、前記改質部から出たガスをシフト反応させるシフト部、前記シフト部から出たガスをCO酸化剤としての空気を用いて酸化反応させるCO選択酸化部を備えた燃料電池用改質装置において、前記改質部の出口温度とシフト部の触媒温度に基づいて前記シフト部から排出される改質ガス中のCO濃度を推定することにより前記CO選択酸化部に供給するCO酸化剤としての空気の供給量を制御するようにしたので、高価なCOセンサを不要にし、CO濃度の推定を確実にするという効果を奏する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態につき、図面を用いて説明する。
【0024】
(実施形態)
本実施形態の燃料電池用改質装置の運転制御方法について、図1ないし図8を用いて以下に説明する。
【0025】
本実施形態の燃料電池用改質装置は、図1に示されるように水蒸気改質器における蒸発部としての蒸発器3の温度(Tc0)、改質部2の出口温度(TC1)、COシフト部5の触媒温度(Tc2)、CO選択酸化部6の触媒温度(Tc3)、前記改質部2の壁面温度(Tcw)を検出する手段を備え、下記のような運転制御方法を用いる。
【0026】
起動時においては、前記改質部2の出口温度(TC1)、前記COシフト部5の触媒温度(Tc2)および前記CO選択酸化部6の触媒温度(Tc3)から改質組成を推定して、運転制御を行うものであり、従来における起動時の運転制御におけるCOセンサを不要にするものである。
【0027】
また前記CO選択酸化部6の触媒温度(Tc3)に従って前記CO選択酸化部6に供給するCO酸化剤としての空気の供給量をコントロールするものであり、触媒への水分付着および触媒活性の低下すなわち(失活)を防止するものである。
【0028】
また定常時においては、前記改質部2の出口温度(TC1)を一定範囲内に保持するとともに、前記COシフト部5の触媒温度(Tc2)に従って前記CO選択酸化部6に供給するCO酸化剤(CO酸化材)の空気流量をコントロールすることにより、定常時における運転制御を可能にするものである。
【0029】
負荷変動時においては、前記改質部2の出口温度(TC1)を一定範囲内に保持するとともに、負荷増加時においては水(水蒸気)の供給量と酸化剤量を先行して増加制御するものであり、負荷減少時においては改質原料流量を先行して減少制御するものである。
【0030】
本実施形態の水蒸気改質装置においては、前記改質部2で化1(−Q1 :吸熱)および化2(+Q2 :発熱)、前記COシフト部5で化2、前記CO選択酸化部6において化3(+Q3 :発熱)の反応が進行する。
【0031】
上記化1および化2は、平衡反応のため、圧力一定の条件下では前記改質部2の出口温度と前記COシフト部5の温度により、CO濃度と他の化学種の組成が決定される。
【0032】
改質温度700℃と650℃の場合について、シフト温度の変化に伴う改質ガス中の平衡CO濃度の変化を理論的に計算すると下記の様になる。改質原料は燃焼用13Aガスおよび供給スチーム量(水蒸気量)Sと改質原料の炭素原子Cの比を示すS/C=3として計算を行った。
【0033】
平衡濃度を示す図2から分かるように、CO濃度はシフト温度に強く依存する。前記改質部2への依存性も無視できないレベルであるが、実際の運転では後述する具体例で示すように前記改質部2の出口温度が制御可能であるから、実システムにおいてはシフト温度からCO濃度を推定することが可能である。
【0034】
これらの事を確認するために、実機試験において、前記COシフト部5の温度を意図的に加熱および冷却し、平衡濃度と実験データの比較を行ったことろ図3に示される結果が得られた。
【0035】
試験データの温度として前記COシフト部5の触媒の出口近傍の温度を用いている。このように、平衡濃度と実機データの間には相関が認められ、シフト触媒の温度を用いてCO濃度の推定が可能であることが確認できた。
【0036】
平衡値と実験データ比較が示される図3において、ここで前提となることは、前記COシフト部5の触媒量が、平衡濃度近くまで達するのに十分な空間(触媒量)が必要である。
【0037】
シフト触媒に銅・亜鉛系の触媒を用いた場合、前記COシフト部5の単体試験でSV値が(空間速度)3500HR-1であれば、平衡濃度近くまでCO濃度が低減することを確認しているが、触媒の劣化、実システムでは温度条件が一定で無いことから単体試験とは触媒活性に差異が生じることを考慮にいれ、後述の具体例ではSV=750をねらいとして前記COシフト部5の設計・製作を行った。
【0038】
また、負荷変動時に急激な流量変化を行うと、バルブ操作に伴う圧力変動と蒸発部における上記発生量の遅れが生じ、ある瞬間において仮定した平衡濃度からのズレが生じることが予想される。
【0039】
図4においては、改質器の負荷を50%から100%に負荷変動させた場合のシフト部出口のCO濃度を示す。このとき、改質原料(13A)の流量と改質水は、ほぼ同時に50%〜100%相当量まで増加させた。また、計測の関係でCO濃度の変化は実際の状態よりもやや遅れて記録されている。
【0040】
負荷増加時のCO濃度が示される図4において、予想された様に、負荷変動時に改質ガス中のCO濃度が一時的に上昇していることが確認できる。このようなCOの変動量を前記CO選択酸化部6で吸収するためには酸化剤量をコントロールする必要があるが、従来のようにCOセンサを用いない場合、負荷変動時にどの程度のCOが発生するか予想するのが困難である。
【0041】
また、COを酸化除去する場合、当量比3以上の酸化剤を供給することが一般的である。そのため、大量のCOを除去すると水素も大量に燃焼し大きな熱発生がある。CO選択酸化触媒には活性温度閾値があるので、これらの発熱を除去する必要があるが、定常時にくらべて、負荷変動時の発熱は数倍になるために、大きな冷却能力が必要になる。
【0042】
一方で定常時に冷却が過ぎると触媒温度が活性以下に下がる可能性がある。従って、前記CO選択酸化部6の冷却構造は幅広い範囲での冷却コントロールが要求され、複雑なシステムになってしまう。
【0043】
ところで上記化1および化2で決定される平衡組成は水蒸気量にも依存する。そこで、S/Cを変化させた時の平衡濃度を図5に示されるように計算した。このようにS/Cを高くすることでCO濃度を下げられることが分かる。
【0044】
水蒸気量の影響による平衡濃度が示される図5において、前記改質部2においては680℃であり、前記COシフト部5においては200℃である。
【0045】
そこで、次のような試験を試みた。
負荷変動時に
(a) 水供給量(水蒸気量)を改質原料より先行で増加させる。
(b) T分間のタイムラグの後にCO選択酸化用酸化剤を増加させ、ただちに改質原料流量を増加させる。
上記方法により、タイムラグT=1.5、3、5分の場合について前記COシフト部5の出口におけるCO濃度を調べた。いずれの場合も前記CO選択酸化部6におけるCO濃度の上昇は認められなかった。
【0046】
これらの結果がタイムラグ1.5分の場合は図6、タイムラグ3分の場合は図7、タイムラグ5分の場合は図8に示される。このように、改質原料に先だって水蒸気を先行増加させることで負荷変動時にCOの上昇は抑制され、タイムラグ3分の場合(図7)における前記COシフト部5の出口におけるCO濃度の上昇はほとんど無いことが分かる。つまりT=3分とすることで、本実施形態の一つである前記COシフト部5の温度Tc2からマップを用いて、CO選択酸化剤流量を制御が有効に働くことが確認できた。
【0047】
定置用の発電システムを考える場合、急峻な負荷変動への追従は要求されないことが多いため、3分以内における負荷変動能力があれば、実用上問題の無い範囲と考えられる。
【0048】
【発明の実施例】
以下本発明の実施例につき、図面を用いて説明する。
【0049】
(実施例)
本実施例の燃料電池用改質装置の運転制御方法について、図1、図9、図11ないし図15を用いて以下に説明する。
【0050】
本実施例の天然ガス用水蒸気改質器は、図1に説明されるように燃焼バーナ1と、ルテニウム触媒を用いた改質部2と、蒸発器3と、熱交換器4と、銅・亜鉛系触媒を用いたCOシフト部5と、ルテニウム触媒を用いたCO選択酸化部6とから成る。
【0051】
改質原料となる天然ガス(13A主成分メタン)は、前記蒸発部3で生成される蒸気と混合し、前記熱交換器4で約500℃前後まで予熱された後に前記改質部2に導入され、燃焼バーナ1において加熱されながら、主に上述した化1によって示される改質主反応および化2によって示される副反応であるシフト反応が起こされる。
【0052】
このとき改質ガス出口温度が650℃前後(Te)となるように前記燃焼バーナ1の燃焼量を調整する。前記改質部2を出たガスは前記熱交換器4において原料ガスと熱交換を行い、170〜250℃程度まで冷却された後に前記COシフト部5において化2によって示されるシフト反応が起こされる。
【0053】
このCOシフト後で、CO濃度は温度に応じて1%以下まで低減される。PEFC型の燃料電池7においては、電極のCO被毒が発生するために、PEFCに導入される燃料ガス中のCO濃度は、10ppm以下に下げる必要がある。そこで、シフト反応後にルテニウム触媒で構成さた前記CO選択酸化部6を設け、酸化剤として空気を用いて改質ガスの化3によって示される酸化反応によりCOを10ppm以下まで低減する。
【0054】
このときの酸化空気量を前記COシフト部5の温度Tc2と改質ガス流量から判断し、コントロールする。コントロールにおいては、実験と計算から求めたマップ(空気流量=関数(Tc2、改質原料流量))を使用した。
以下に、起動、定常、負荷変動時における運転方法の詳細を説明する。
【0055】
起動時における運転手順は、図11に示されるフローチャートに従い行われる。すなわち図9に示される運転シーケンスに従って改質部を起動した場合の結果が図3に示される。
【0056】
前記バーナ1の着火後前記蒸発部3の温度が所定の温度に達したら水供給を開始し、前記改質器2内全体に水蒸気を行き渡らせる。その後改質原料を投入し改質が開始される。前記改質部2の出口温度が所定の温度に達したら、前記改質部2は起動完了とみなす。
【0057】
前記COシフト部5については、触媒が活性温度に達した段階で起動完了とみなす。活性温度に至らしめる時間を短縮するためにヒータを用いても良い。前記CO選択酸化部6については改質開始後、改質ガスが流れはじめた後に温度上昇を始める。
【0058】
CO除去のための空気の投入量は、起動用にあらかじめ用意されたマップに従って、前記CO選択酸化部6の温度から投入量が決定される。このマップは改質原料流量と前記CO選択酸化部6の温度から決定され、前記COシフト部5の温度Tc2は参照しない。
【0059】
前記CO選択酸化部6の触媒温度が活性下限に達したのち、一定時間保持した後で触媒温度が適切な範囲内であれば、前記CO選択酸化部6は起動完了とみなされる。前記改質部2、前記COシフト部5、前記CO選択酸化部6が揃って起動完了条件を満たした段階で改質器は起動完了し、燃料電池スタックに水素を供給可能となる。
【0060】
起動停止が頻繁に行われ、前記改質部2が暖まった状態で起動された場合、前記CO選択酸化部6の温度指示が最初から高い場合がある。しかし、停止中で自然放熱中の選択酸化部6の温度分布はばらつきがあり、温度が低い部分もある。この場合、酸化空気を投入直後は温度が高い値を指示していても、温度の低い部分で水分の凝縮が発生し、しばらくすると触媒全体の温度が低下することがある。一定時間保持した後に活性判断を行うことで、上記の事態による不具合を回避できる。
【0061】
また、選択酸化空気流量のマップとして、本実施例においては下記の2種のマップを用いた。T311は選択酸化触媒の活性下限温度を、Taは選択酸化エア投入開始温度を意味している。表2に示されるマップ2を用いて、起動を行った結果が図10(A)に示される。マップ2ではTc3がTaに達したら、ある程度多めの流量を投入する。触媒温度が活性下限になったら、流量を減らして起動時として設定した流量に変更する。
【表2】
【0062】
一方で表1に示されるマップ1では起動完了時に最終的に投入する流量にいたるまで、4分割して細かに流量を制御していく。マップ1を用いた結果が図10(B)に示される。上述したマップ2とCOが低減されるまでの起動時間に大きな違いは無いものの、冬季など、選択酸化部で水凝縮が起き易い環境においては、図中にも観測されるように、酸化エアを投入した直後に水素が燃焼して生成される水が凝縮し、選択酸化部の温度が下がっていることが分かる。このような場合、一度に多量の酸化剤を吹き込まないマップ1の方が優れた結果を得ることが可能である。
【表1】
【0063】
一方で、マップ1のデータを変更することでマップ2の制御に以降することは簡単であるから、システムとしてはマップ1に伴う制御方法を採用し、必要に応じてマップ2に準じたデータ内容のマップを呼び出して制御を行えば、大きな変更なしで両者の制御を行うことが出来る。
【0064】
定常時における運転手順は、図12に示されるフローチャートに従い行われる。酸化エア流量と前記バーナ1において燃焼させる改質原料となる天然ガス13Aの量は常にコントロールされる。
【0065】
前記改質部2の出口温度Tc1と、前記COシフト部5の温度Tc2と前記CO選択酸化部6の温度Tc3と、前記改質部2の壁面温度Tcwの何れかが許容温度範囲外になった場合はただちに発電を中止する。
【0066】
前記CO選択酸化部6には改質原料流量と、前記COシフト部5の温度Tc2のマップデータから決まる流量の酸化剤が供給される。
【0067】
負荷の増加時における運転手順は、図13に示される負荷の増加時のフローチャートに従い行われる。
酸化エア流量と前記バーナ1で燃焼させる改質原料となる天然ガス13A量は常にコントロールされる。
【0068】
前記改質部2の出口温度Tc1と、前記COシフト部5の温度Tc2と前記CO選択酸化部6の温度Tc3と、前記改質部2の壁面温度Tcwの何れかが許容温度範囲外になった場合はただちに発電を中止する。
【0069】
水供給量(水蒸気量)を所定の流量に増加させた後3分後に、前記CO選択酸化部6への酸化剤流量を増加させ、ただちに改質原料流量を増加させる。
【0070】
負荷の減少時における運転手順は、図14に示される負荷の減少時のフローチャートに従い行われる。
酸化エア流量と前記バーナ1で燃焼させる改質原料となる天然ガス13A量は常にコントロールされる。
【0071】
前記改質部2の出口温度Tc1と、前記COシフト部5の温度Tc2と前記CO選択酸化部6の温度Tc3と、前記改質部2の壁面温度Tcwの何れかが許容温度範囲外になった場合はただちに発電を中止する。
【0072】
改質原料を減少させた後、ただちに水供給量(水蒸気量)と前記CO選択酸化部6に供給される酸化剤の空気流量を減少させる。
【0073】
なお負荷減少時は、水蒸気と改質原料を同時に減らしても、負荷減少時のCO濃度変化が示される図15から明らかなようにCOの増加は生じなかった。
【0074】
上述の実施形態および実施例は、説明のために例示したもので、本発明としてはそれらに限定されるものでは無く、特許請求の範囲、発明の詳細な説明および図面の記載から当業者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更および付加が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態および実施例の天然ガス燃料電池システムを示すブロック図である。
【図2】本実施形態におけるシフト温度およびCO濃度の平衡濃度を示す線図である。
【図3】本実施形態における平衡計算値と実験データとの関係を示す線図である。
【図4】本実施形態における負荷増加時のCO濃度を示す線図である。
【図5】本実施形態における水蒸気量き影響による平衡濃度を示す線図である。
【図6】本実施形態におけるタイムラグ1.5分の場合のCO濃度の変化を示す線図である。
【図7】本実施形態におけるタイムラグ3分の場合のCO濃度の変化を示す線図である。
【図8】本実施形態におけるタイムラグ5分の場合のCO濃度の変化を示す線図である。
【図9】本実施例における改質器運転シーケンスの手順を示すチャート図である。
【図10】本実施例におけるマップ1および2に従い起動した場合のCO濃度の変化をそれぞれ示す線図である。
【図11】本実施例における起動時の運転手順を示すチャート図である。
【図12】本実施例における定常運転時の運転手順を示すチャート図である。
【図13】本実施例における負荷増加時の運転手順を示すチャート図である。
【図14】本実施例における負荷減少時の運転手順を示すチャート図である。
【図15】本実施例における負荷減少時の水蒸気および改質原料を減少させた時のCO濃度の変化を示す線図である。
【符号の説明】
2 改質部
5 COシフト部
6 CO選択酸化部
Claims (7)
- 改質原料を改質反応させる改質部、前記改質部から出たガスをシフト反応させるシフト部、前記シフト部から出たガスをCO酸化剤としての空気を用いて酸化反応させるCO選択酸化部を備えた燃料電池用改質装置において、
前記改質部の出口温度と前記シフト部の触媒温度と前記CO選択酸化部の触媒温度に基づき前記シフト部から排出される改質ガス中のCO濃度を推定することにより、起動時における運転の制御として前記CO選択酸化部に供給するCO酸化剤としての空気の供給量を制御するようにした
ことを特徴とする燃料電池用改質装置の運転制御方法。 - 請求項1において、
前記CO選択酸化部の触媒温度と前記改質原料の流量に従って前記CO選択酸化部に供給するCO酸化剤としての空気の供給量を制御することにより、起動時における運転を制御するようにした
ことを特徴とする燃料電池用改質装置の運転制御方法。 - 請求項1または請求項2において、
前記改質部の出口温度を一定範囲内に保持するとともに、前記シフト部の触媒温度と前記改質原料の流量に従って前記CO選択酸化部に供給するCO酸化剤としての空気の供給量を制御することにより、定常時における運転を制御するようにした
ことを特徴とする燃料電池用改質装置の運転制御方法。 - 請求項1乃至請求項3のいずれかにおいて、
負荷変動時に前記改質部の出口温度を一定範囲内に保持するように運転を制御するようにした
ことを特徴とする燃料電池用改質装置の運転制御方法。 - 請求項4において、
負荷が増加する場合は、前記改質部に供給する水または水蒸気の供給量および前記CO選択酸化部に供給するCO酸化剤としての空気の供給量を先行して増加することにより、負荷変動時における運転を制御するようにした
ことを特徴とする燃料電池用改質装置の運転制御方法。 - 請求項4または請求項5において、
負荷が減少する場合は、改質原料流量を先行して減少することにより、負荷変動時における運転を制御するようにした
ことを特徴とする燃料電池用改質装置の運転制御方法。 - 改質原料を改質反応させる改質部、前記改質部から出たガスをシフト反応させるシフト部、前記シフト部から出たガスをCO酸化剤としての空気を用いて酸化反応させるCO選択酸化部を備えた燃料電池用改質装置において、
前記改質部の出口温度とシフト部の触媒温度に基づいて前記シフト部から排出される改質ガス中のCO濃度を推定することにより前記CO選択酸化部に供給するCO酸化剤としての空気の供給量を制御するようにした
ことを特徴とする燃料電池用改質装置の運転制御方法。
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