JP4109307B2 - 調節可能な光学系、及びそのような光学系の使用方法及び製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、焦点距離を調整可能であり、小型且つ軽量な光学系に関するものである。
光学系は、代表的には複数の光学素子が集積される。光学素子及びそれらが集積された光学系では、常に結像誤差を生ずる。光学設計において、その目標は常に最終用途の視点から考え得る最良の結果を得ることである。一般的な目標は、観察下にある物点が像点として結像されるようにするということである。例えば、カメラ及び像再構成用に設計された他の光学系では、要求される像の精度及び画素サイズが繰り返されている場合、使用され得る表示装置の特徴に加えて、人の眼の解像度も考慮に入れることが必要である。一般に、解像度はディテールを区別するためのシステム能力を意味する。代表的には、解像度は、二つの分離した点として辛うじて区別される2点間の最小角度として表現される。良好な条件下にある健康な人の眼の解像度は、1分を超えることはない。
代表的な光学結像誤差は、様々なレンズの適切な組み合わせによって補正又は補償される。正の焦点距離を有するレンズ又は組み合わせレンズは、一般に正レンズと呼ばれる。光線を集光する正レンズは、例えば両凸レンズ若しくは平凸レンズである。負の焦点距離を有する各々のレンズ、すなわち、発散、凹レンズ若しくは組み合わせレンズは、一般に負レンズと呼ばれる。結像誤差を補正する場合、適切なガラスの品種、レンズ厚及びレンズ形状、絞りの位置、そしてレンズコートが選択される。代表的には、光学系を設計する場合、個々のケースで十分良い結果が得られるようにするために、異なる結像誤差間での適切なバランスを探索する。
しばしば、像品質が良くなるにつれて、像の生成に使用されるレンズ枚数も多くなる。例えば、像再構成の観点から、理想的な光学系は20枚のレンズを含むこともある。それらのレンズが正しく組み合わされる場合に、異なるガラス及びレンズタイプが相互にその結像誤差を補償するためである。しかし、目的が小スペースに収まる軽量の光学系を実現することであれば、レンズ枚数は非常に少なくせざるを得ず、そしてそれは像品質の要求を下げなければならないということを意味する。大ざっぱには、光学系の性能を常により良くするためには、それを構成するレンズ枚数もより多くなると言える。しかし、光学系を設計する場合、光量の約5%が各レンズから反射されて戻ることも考慮しておかなければならない。複数のレンズを有する光学系の透過率が低下するという事実を置いておくとしても、複数の素子を含む光学系は重く、高価である。良好な像品質が得られるとしても、サイズ、重量及び費用がこの種の光学系の使用及び用途を限定する。
光学系が一般に使用される既知の装置は、カメラである。小型カメラ用に設計された従来技術の光学系が、米国特許第6342975号明細書に開示されている。そのレンズ系では、第1及び第2のレンズ群が正であり、第3のレンズ群が負である。第1のレンズ群は、負レンズと正レンズを含む。第2のレンズ群は調節可能な絞りと負レンズ及び正レンズを含む。第3のレンズ群は、正レンズと負レンズを含む。その光学系は広角から望遠までズームされる場合に、各レンズ群はターゲット側へ、すなわち第1レンズ群側へ移動する。さらに、第1レンズ群と第2レンズ群の間隔は大きくなり、第2レンズ群と第3レンズ群の間隔は短くなる。しかし、この構成は、多数の単光学素子を含み、その光学構成は高価である。さらに、レンズ枚数が多いと、光学系はよりスペースを必要とし、より重くなる。光学素子の相対的な位置とその機械的動作の実現は、その制御とともに正確さを要求する。
小型カメラに適した他の簡易なレンズ系が、米国特許第6040949号明細書で紹介されている。その構成は、カメラ及びカメラの光学系の両方について、可能な限り小型化することを目標としている。その光学系はレンズ系を含み、その3個のレンズ群が従来技術を表す図1に示されている。図1の第1レンズ群101は平凹レンズを構成要素とし、それは負の屈折力を有する。図1の第2レンズ群103は両凸レンズを構成要素とし、それは正の屈折力を有する。図1の第3レンズ群104は両凸レンズと平凹レンズの組み合わせを構成要素とし、第3レンズ群104の屈折力は正である。図1に示される、撮影される観察下のターゲットは、レンズ群101の左側105に位置しており、ターゲットの像はレンズ系の右側106に形成される。光軸107はレンズの中心点を通る。第1レンズ群101と第2レンズ群103の間に、調節可能な開口102がある。像の焦点を合わせる場合、すなわち、視野の特定部分をズーミングする場合、第2レンズ群103及び第3レンズ群104の位置は光軸に沿って移動する。その記載された構成は、4枚の単レンズのみを含むという利点がある。
上記の参考文献では、レンズ群は光学系の焦点距離を調節するために光軸に沿って移動する。レンズの相対的な移動は、焦点距離、倍率、焦点合わせ、若しくは画角といった光学系の光学特性を調節する代表的な方法である。特にカメラで使用される、焦点距離又は屈折率を調節する別の既知の方法は、異なるタイプのレンズでそのレンズを置き換えることである。これは、例えば、カメラレンズの前面に、選択したターゲットを可能な限り正確に撮影するために変更可能な異なるタイプのレンズを収容するディスクが実装されることで実現可能である。そのレンズ又はディスクの機械的な動作は常にスペースを必要とし、小型装置には最低である。さらに、機械的な調整は、光学要素を光軸及び互いとの関係で正しい位置に正確に配置するために、実装の段階及びその装置が使用される場合の両方で正確に行われなければならない。
小型カメラに適した代表的な従来の光学系は、単焦点の光学系であり、その場合、焦点距離は機械的には全く調整されない。この構成では、良好な像品質を保とうとするならば、ターゲットからカメラまでの距離は相当に限られた範囲内に収まる。これは、像が所定の平均的な範囲内でのみ高品質を備え、近接距離または遠距離に位置するターゲットの鮮鋭な像を作ることができないことを意味する。したがって、焦点距離を調節する能力は、光学用途及びそれを利用する装置において、望ましい特徴である。
本発明の目的は、より一層、小型で、コンパクトで、軽量な焦点距離を調節可能な光学系を実現することにある。
本発明の目的は、様々な距離に調節可能な焦点距離を有する第1の光学要素と、それを通る光線の光路を調節可能な第2の光学要素を有し、第2の光学要素を透過する光線の光学距離が第1の光学要素の焦点距離と一致するコンパクトな光学系を作成することによって実現される。さらに、本発明の目的は、それら光学要素が固定的な方法で所定位置に実装され、それら要素の静止位置がその要素の光学特性が変更されても同じであることで実現される。本発明は、独立請求項に記述されているものによって特徴付けられる。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に記載される。
本発明の有利な実施形態によると、小型で、調節可能な光学系が実現され、その光学系は、光学系で観察されるターゲットの像が形成される像面と、焦点距離を調節可能な第1の光学要素と、プリズムであって、そのプリズムを通る光線の光路が第1の光学要素の焦点距離と一致するように調節可能なプリズムを備える。本発明の有利な実施形態によると、像面において、第1の光学素子の焦点距離に配置された、観察されるターゲットの像が形成され、そのため第1の光学要素、プリズム、及び像面は、互いに関して固定的な方法で実装される。
本発明の有利な実施形態による光学系の光学素子は、可変形状レンズと、エアギャップを備えるプリズムを有する。そのレンズの光学特性は、レンズの形状を変えることによって調節されることが好ましい。本発明の有利な実施形態によると、そのレンズは焦点距離を調節するために、その固定位置から移動又はシフトすることを必要としない。可変形状レンズが厚い場合、そのレンズは短い焦点距離を有する。観察下にあるターゲットが近くに位置する場合、画角は広くなる。レンズが薄く、長い焦点距離を有する場合、その光学素子は望遠と呼ばれる役割を果たす。観察下にあるターゲット領域はレンズから相当遠くに位置し、画角は一般に狭い。そのため、長い焦点距離を有する薄いレンズは望遠鏡的に働く。
観察下にあるターゲット表面の各点の鮮鋭な像を像面上に形成するために、レンズを透過する光線は、レンズから焦点距離の位置にある像面上に像点を形成する。本発明によるとレンズの焦点距離は調節可能であるため、観察下にあるターゲットの鮮鋭な像を像面上に形成するために、レンズを通る光線が経由する長さを調節することもそれぞれ必要である。有利な実施形態によると、光路と呼ばれる、光線がプリズムを通る長さはレンズの焦点距離と一致し、ターゲット面からレンズ中心までの光線が通る長さは、レンズ中心から像面までの光線が通る長さと等しい。光路を長くするために、従来技術のようにレンズを動かす代わりに、本発明の有利な実施形態によると、光線の経由する距離をプリズム内で行われる反射によって調節する。プリズムでは、入射光線は、境界面で反射されること無く、直進し、そのためプリズム内の光線が通る光路は短い。レンズの焦点距離が長くなると、光線が像面に突き当たる前にプリズム内で複数回の反射が行われ、プリズム内の光線が経由する光路を延長することができる。そのためプリズム内で光線が通る光路を、光学素子をその固定位置から機械的にシフト又は移動させることなく調節できる。
本発明の有利な実施形態では、光線が経由する光路を調節するために、エアギャップを備えたプリズムが使用される。レンズが厚く、焦点距離が短い場合、プリズムのエアギャップは、一定の精度でプリズム材質の屈折率と同じ屈折率を有する液体で満たされる。プリズム内で反射は発生せず、光線はほぼ直進して像面上へそれを通過する。光学系が望遠として使用される場合、レンズは薄く、その焦点距離は長い。ここで、本発明の有利な実施形態によれば、プリズムのギャップから液体が取り出されて空となり、その後プリズム面間に残るギャップは空気で満たされる。空気の屈折率はプリズム材質の屈折率と異なるので、光線はプリズム材質と空気の境界面で反射される。プリズム内では、反射された光線はさらに反射フィルムでコートされ得る他の境界面に突き当たる。したがって、何回かの反射が発生し、その結果、プリズムに入射した光線の光路は延長される。反射を用いて、光路及びそれによる焦点距離を、ペカンプリズムによって3倍まで増やすことが可能であり、そして他のタイプのプリズムを一緒に用いて6倍近くまで増やすことも可能である。
本発明の有利な実施形態による光学系を用いて、異なる距離に配置されたターゲットの鮮鋭な像を形成すること、すなわち、ターゲットとカメラ間の距離を調節することが可能である。この調節は、例えば電話に実装される小型カメラに一般的に使用される単焦点光学系では実行不能である。先行技術の固定焦点光学系が、限られた中間領域においてのみの使用に適しているので、本発明の有利な実施形態による装置及び方法を使用することにより、近接と遠距離の両方の範囲でより高品質な写真が得られる。本発明の有利な実施形態によると、焦点距離は、近接範囲にあるターゲットを撮影するために短くなるように調節可能であり、そして遠距離範囲にあるターゲットを写し出すために長くなるように調節可能である。好適には近接視野において視野角が広く、遠距離視野は、狭い視野角の望遠タイプで撮影される。本発明の有利な実施形態による光学系では、広視野角と狭視野角間、近接視野と遠距離視野間の調節は高速である。複数のレンズを有するカメラで、レンズ又はレンズ群を移動することによって調節が実行される場合、所望の視野角への変更を実現するのは、レンズ形状の変更と、プリズムのエアギャップを液体で満たすこと又はエアギャップの液体を空にすることによってレンズの光学特性を修正する場合よりも非常に遅い。さらに、高品質の写真を生み出す本発明の有利な実施形態による光学系は、複数のレンズを有するカメラと比較して軽量且つコンパクトであり、そのため小型装置にも適している。
本発明は、添付の図面を参照しつつ、以下においてより詳細に記述される。
図2に、本発明の有利な実施形態による光学系を示す。その第1の光学要素は短い焦点距離を有する厚肉レンズ204であり、第2の光学要素はプリズム201である。プリズム201は、そのプリズムと同じ屈折率を有する充填材で満たされるギャップ202を備える。そのため、プリズム201では、レンズ204の焦点距離と一致する光路を通る光線が実現され、レンズ204から焦点距離の間隔で配置されたターゲットが像面203上に結像される。
図2に示される実施形態では、レンズ204は、集光する、正の厚肉レンズである。そのレンズの焦点距離は相当に短く、そのため、好適には焦点距離の間隔で配置される、観察下にあるターゲット200は、相対的にレンズの近傍にある。矢印200は、エッジ光線206と中心光線205間のターゲット表面を示し、それは2本のエッジ光線間にある実際のターゲットの半分である。ターゲット表面200、すなわち、この実施形態で撮影される視野は広い。さらに、図2において、像面203が示されており、そしてその上に光学系によって観察されるターゲットの像が形成される。ここで像面という言葉は、一般に本発明による光学系を用いて観察下にあるターゲットの像が形成される位置若しくは面を意味する。像面は必ずしも平面である必要はない。本発明の有利な実施形態によると、プリズム201では、平面ギャップ202を備え、その幅は数マイクロメータのオーダーである。有利には、そのギャップは、一つの角からその対角までプリズムを貫通し、プリズムを通る全ての光線がギャップを通るように平面を形成する。図2に示した有利な実施形態では、ギャップ202は、一定の精度でプリズム材質の屈折率と同じ屈折率を有する液体で満たされる。この場合において、プリズムの屈折特性はギャップのない単一のプリズムの屈折特性と一致する。放射線、一般に光放射線は、均質なプリズムを貫通するのと同様に、ギャップを備える上記プリズム201を貫通する。
観察下にあるオブジェクトから放射された光線の経路は中心光線205及びエッジ光線206の経路をたどることによって示される。ターゲット面200から光学系を通って像面203上への中心光線205の経路を実線で示す。エッジ光線206は破線で示す。中心光線205は、光軸に沿って、光学系の中心点を経て光学系に入射する。この実施形態では、中心光線205は、光軸上に位置するレンズ204の中心点を通る。正の凸レンズ204は、像面から放射された光線を集光し、さらにプリズム201へ向ける。そのレンズから像面203への距離は、レンズの焦点距離にしたがって決定される。有利には観察下にあるターゲット表面又はターゲット面は、レンズから焦点距離の間隔で配置される。プリズム201では、光線は、光線が放射されるターゲット面200の点に対応する像点を形成する像面203上に直接屈折される。エッジ光線206は、レンズ204に斜入射する。レンズは光線を集光し、光線はプリズム201で屈折され、ターゲット面200のエッジ光線は像面203の反対側のエッジで結像する。プリズム201内で光線が経由する光路は、レンズ204の焦点距離と一致する。ターゲット面200の一点は、有利には像面203上に一つの像点を形成する。
図2に示される実施形態では、ターゲット面200、すなわち、光学系によって再構成される視野は広い。言い換えれば、光学系は広視野角を有する。代表的には、広視野角は光学系の焦点距離が相対的に短い場合に実現される。
図3は、本発明の別の有利な実施形態による光学系を示す。その光学系は、図2に示された実施形態と対応する光学要素を有する。本発明の有利な実施形態では、第一の光学要素は可変形状レンズであり、この場合、その光学特性、特に焦点距離を、レンズの形状、代表的にはその曲率を変更することによって調節可能である。第1の光学要素は、複数の単レンズ素子からなる組み合わせレンズであってもよい。少なくとも1枚のレンズ素子が可変形状レンズであることが好ましい。採用された第2の光学要素はプリズムであり、上記プリズムを通る光線の光路は、各ケースにおいて調節可能なレンズの焦点距離と一致する。プリズムでは、それを透過する光線の光路は、プリズム内で起きる全反射をプリズムのギャップ内で調節することにより、有利に調節される。有利には、本発明の光学素子は移動せず、その光学素子は静止位置を有し、且つその光学素子の光学特性を、それらを移動することなく変化させることができる。
図3の実施形態では、光学系は遠距離範囲の視野を撮影するために使用される。第1の光学要素は、薄く、長い焦点距離を有する可変形状レンズ304である。第2の光学要素は、エアギャップ302を備えたプリズム301である。空気の屈折率はプリズム301の屈折率と異なり、プリズム301内で光線が経由する光路がレンズの焦点距離と一致する。観察下にあるターゲットの像は平面303上に形成される。
図3では、光学系の焦点距離は長く、そしてそれは、視野角が狭いこと、及び、視野すなわち像面上に写されるターゲット領域がかなり限定されることを意味する。図において示されている中心光線305及びエッジ光線306間に形成されるターゲット領域300は、エッジ光線間に形成される実際のターゲット領域の半分である。代表的には、記述された実施形態による構成は、遠くのターゲットを撮影する場合に、望遠として使用される。視野は、おおよそ望遠鏡の視野に対応し、相対的に小さな領域内の遠くのターゲットが像面上に良好に結像される。この実施形態では、一般的に長い焦点距離を有する薄いレンズ304が使用される。ここで薄いレンズとは、厚さがその球面の半径と比較して小さいことを意味する。薄いレンズは、入射光線が光軸に沿ってほぼ平行である場合、すなわち入射光線が小さな入射角を有する場合に使用するのに適している。入射角が小さい場合、図3に示すように、その光線はまた小さな入射角で光学系に入射する。
図3に示す実施形態では、プリズム301のギャップ302は充填材が取り出されて空になっている。すなわち、ギャップは空気で満たされている。図3に示す実施形態では、ターゲット面300から光学系を通って像面303上への中心光線305の光路を実線で示す。エッジ光線306を破線で示す。中心光線305は、光軸に沿って光学系の中心点を通り抜けてプリズムへ通過し、そこでエアギャップ302のエッジで反射され、プリズム301の対向するエッジへ向かう。プリズム301のエッジから、屈折された光線がエアギャップ302を貫通するために十分大きな角度でエアギャップ302に突き当たり、それからその光線は像面303に面するプリズムのエッジへ進む。しかし、像面303に面するエッジへの入射角が小さいため、光線は再びプリズム301の隣接する側面上へ反射され、さらにエアギャップ302のエッジへ反射され、そこから光線は像面303上へ屈折されて、そこに像点を形成する。
エッジ光線306は光学系の第1の要素を通る。ここで第1の要素はレンズ304である。正レンズ304は光線を集光し、所定の入射角でプリズム301上へ向かわせる。エッジ光線306は、プリズム301のエアギャップ302のエッジで屈折され、プリズム301の対向する側面へ向かう。プリズム301の側面から、屈折された光線はほぼ垂直に近い位置でエアギャップ302に入射し、その結果全反射はもはや起こらず、像面303に面するプリズム301の側面へ光線はエアギャップ302を直進して貫通する。ここから、エッジ光線306はプリズム301の隣接する側面へ反射され、その後エッジ光線306はエアギャップ302に面するプリズム301のエッジを経由して進み、そこから像面303上へ反射され、そしてエッジ光線306は像面上に像点を形成する。
この有利な実施形態では、プリズム301に入射する光は、像面303に到達する以前にプリズム301で何回か屈折される。プリズム301内で光が経由する光路は、有利には均質なプリズム内で光が経由する光路と比較して、3.8回折り重ねられているのと等しい。一般に、全反射がギャップとプリズムの境界面で発生する場合、プリズム301内で光線が経由する光路は延長される。ギャップの充填材が適切な屈折率を有するように選択され、光線が所定の角度でそれに入射する場合、全反射が発生する。代表的には、採用される全反射用ギャップ充填材は空気であり、それはプリズムの材質と異なる屈折率を有する。
本発明の観点からは、レンズの光学特性は、レンズ自身を変更することなく変化させられること、又は、光軸に沿って、又は他の光学要素若しくは像面/物面に関してレンズを移動することなく変化させられることが利点である。例えば可変形状レンズの特性は、レンズの屈折面の曲率を変化させることにより変更される。有利には、可変形状レンズは弾性であり、そのため可変形状レンズの直径を長くも短くもできる。本発明の観点からは、レンズの屈折面の形状は重要ではなく、レンズの研磨もない。本発明による光学系では、例えば球面レンズ同様、グラウンドフレネルレンズ(ground Fresnell lens)にも適用可能である。有利な実施形態によると、レンズの材質は適切で、透明且つ弾性のある材質、例えばシリコン、他の合成高分子、ゴム、ポリエチレン、若しくはポリプロピレンとすることができる。特に、レンズは本発明による光学系によって観察されることが望ましい波長、すなわち、代表的には可視光である波長に対して透明でなければならない。明白に重要な特徴は、材質の透明性であり、そしてそれは、その材質が可能な限り入射放射線を吸収しないこと、及び入射光線の散乱又は遮断が最少であることが必要である。
本発明の有利な実施形態では、採用されるレンズは組み合わせレンズであってもよく、その組み合わせを形成するレンズは、周知の方法で互いに不変に結合されることが好ましい。そのレンズは、例えば物質で満たされる、薄く、透明なシェルを有し、その物質は例えば液体、気体、若しくはゲル状物質である。本発明の有利な実施形態によると、採用されるレンズは高い透明性と弾性を有することが重要である。
直径の数%の変更は、レンズの屈折能力及び焦点距離を変化させる。一般に、可変形状レンズは相対的に小さな直径を有する。レンズ形状の変更は、例えば弾性レンズがエッジで均等に伸ばされることで実現可能である。レンズは、いわゆる待機状態で最も厚く、その直径を均等に伸ばすことが可能であり、その結果として、レンズはより薄くなり、その光学特性が変更される。レンズの直径の変更を実現する一つの方法は、レンズの外周上に均等に非常に小型のマイクロ素子を実装することである。コントロールユニットから取得した制御信号に基づいて、レンズの外周をレンズの中心点から外側へ若しくは内側へ動かすために、各エレメントは機械的な圧縮又は引張効果を生じる。別の有利な実施形態による素子は、様々なサイズを有する環状の電極であり、それらはレンズの中心点に関して同心円状に置かれる。これらのマイクロ素子の制御は、例えば電気的に、それらの内で電力をスイッチングし、レンズ内に電場を生じさせることにより、実現可能である。
別の有利な実施形態によると、レンズは、互いに不溶性の二つの成分からなるようにしてもよい。例えば米国特許公開第6369954号明細書において、第1の導電性の液体とレンズの反対側に分離される不溶性の第2の液体からなる可変形状レンズが記載されている。そして、第2の液体は第1の導電性の液体と混合も溶解もしない、例えばクリアーオイルである。採用される液体は異なる屈折率を有する。レンズ内に、電源又はアースに対するスイッチを経て接続される電極がつながれる。レンズを構成する液体の境界面の形状は、レンズ全体にわたって生じる電場を用いて変化させられる。境界面の形状は、例えばレンズ内につながれた特定の電極に対してのみ電力を伝えることにより、調節可能である。代表的には、電力値がゼロと最大値の間で交代する場合、物質の境界面は、その二つの端位置間でその形状を変える。この種の方法は、エレクトロウェッティングと呼ばれる。
第3の有利な実施形態によるレンズは、結晶性複屈折レンズである。そのレンズは、垂直方向の屈折率と異なる水平方向の屈折率を有する複屈折結晶からなる。レンズ内で結晶は所定の順序、例えば全て水平、均等、等間隔で並べられる。結晶は、代表的には結晶レンズ全体にわたって電場が生じるように向けられる。電場を用いて、例えば所定の位置において所定の角度となるように、又は垂直位置において、その場合に結晶レンズの屈折率が変わるように、水平な結晶は電場にしたがって配置される。結晶レンズ及び結晶の制御は、例えば特開2001−272646号公報に記載されている。
本発明の有利な実施形態によれば、プリズムの光学特性は、プリズム内に入射する光線によって経由される光路を変更することによって変えられる。有利には、適用されるプリズムはギャップを備え、若しくはそのプリズムは二つのプリズムで形成され、微小なギャップが互いに面した側面間で形成される。有利な実施形態による、エアギャップを備えたプリズムは、例えば公知のペカンプリズムである。充填材の屈折率にしたがって、ギャップ充填材を変更することにより、入射光線を所望の経路でプリズム内を進むように制御することができる。例えば、入射光線がプリズム内で最短距離を経由することが望ましい場合、ギャップの充填材は、光線が屈折及び反射せず、ギャップを直接通り抜けて進むように選択される。この場合、充填材は、その屈折率がプリズムの材質と同じか、少なくとも一定の精度で同じであるように選択される。光路を延長する場合、プリズムの元のセグメント内へ戻るギャップ端からの全反射を実現するように図られる。発生した全反射及び他の反射を用いて、プリズムを通る光の光路を3回を超える折り重ねになるように調節できる。プリズム内を経由する光、若しくはより一般的に光線の光路は、本発明の有利な実施形態にしたがって第1の光学要素の焦点距離と一致する方法で及び同じ関係に調節される。有利な実施形態による光学構成によって撮影されるターゲットの表面は、その光学素子を3.8回折り重ねた距離にあるのと等しいと規定することができ、その結果、機械的にプリズム、可変形状レンズ、若しくは像面といった光学素子を移動させる必要なくターゲットの鮮鋭な像が像面上に得られる。
本発明の有利な実施形態によると、プリズム内のギャップは、非常に薄い。ギャップを所定の液体で満たすこと、及びギャップからその液体を除去することは、多くの異なる方法で実現できる。有利な実施形態によると、ギャップの充填及び再除去において、毛細管現象を使用する。代表的には、ギャップを液体で満たすこと及びギャップから充填材を取り出して空にすることは、電場を用いて制御される。プリズムの充填及び排出は、レンズ形状の変形の記述において前述したエレクトロウェッティングを用いて制御することもできる。狭いギャップ内に液体を導くことは、例えば米国特許公開第2002080920号明細書及び米国特許第4701021号明細書においてより詳細に記載されている。
本発明の有利な実施形態による、レンズの形状を変えること及びプリズムギャップ内の充填材を変えることによる光学系の焦点距離の調節は、光学素子又は複数の素子からなる光学要素を移動させることを常に必要とする先行技術においてなされる調節よりも高速である。さらに、焦点距離が調節される本発明による配置は、小さなスペースによくフィットし、そのため特に小型装置、例えば携帯電話によく適している。焦点距離の調節能力は、光学系の質を向上し、軽量な光学系が実現され、そしてその構成は可能な限り少ない光学要素、ここでは有利には二つのみを含む。当業者にとって、本発明の有利な実施形態による構成及び方法を、様々な異なる構成要素及び構成要素の組み合わせを用いて、本発明の範囲から離れることなく、多くの異なる方法で技術的に実現可能なことは明白である。
従来技術に係る光学系を示す図である。 本発明の有利な実施形態に係る光学系を示す図である。 本発明の有利な実施形態に係る光学系を示す図である。

Claims (23)

  1. 光学系によって観察されるターゲットの像が形成される像面(203、303)と、調節可能な焦点距離を有する第1の光学要素(204、304)を備えた調節可能な光学系であって、該光学系は、
    前記第1の光学要素(204、304)について決定された焦点距離と一致するように調節可能な光路を備えたプリズム(201、301)を有し、
    前記像面(203、303)上に前記第1の光学要素(204、304)の前記焦点距離に配置された観察されるターゲットの像を形成するために、前記第1の光学要素(204、304)、前記プリズム(201、301)及び前記像面(203、303)が互いの関係において所定位置で不変であることを特徴とする光学系。
  2. 前記第1の光学要素(204、304)は、前記光学系の焦点距離を調節するために変更可能な曲率を有する可変形状レンズであることを特徴とする請求項1に記載の光学系。
  3. 前記第1の光学要素(204、304)は、弾性且つ前記光学系の焦点距離を調節するために変更可能な直径を有する可変形状レンズであることを特徴とする請求項1に記載の光学系。
  4. 前記第1の光学要素(204、304)は、互いに不溶性である二つの材質で作成されるレンズであり、前記材質の境界面の形状が前記光学系の焦点距離を調節するために変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の光学系。
  5. 前記第1の光学要素(204、304)は複屈折結晶を含むレンズであり、該結晶の位置が前記光学系の焦点距離を調節するために変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の光学系。
  6. 前記レンズの光学特性を調節するために電場を前記レンズ内に発生させることを特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載の光学系。
  7. 前記第1の光学要素(204、304)が複数の素子からなり、該素子の少なくとも一つは可変形状レンズであることを特徴とする請求項1に記載の光学系。
  8. 前記プリズム(201、301)はギャップ(202、302)を備え、且つ前記光学系は、前記プリズム(201、301)内の前記光路を調節するために、充填材で該ギャップ(202、302)を満たす手段と、該充填材を該ギャップ(202、302)から取り出して空にする手段を有することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
  9. 前記プリズム(201、301)のギャップ(202、302)は、前記プリズム(201、301)内の前記光路を最短化するために前記プリズム(201、301)の屈折率と同じ屈折率を有する液体充填材で満たされることを特徴とする請求項8に記載の光学系。
  10. 前記プリズム(201、301)のギャップ(202、302)は、前記プリズム(201、301)内の前記光路及び全反射を最大化するために前記充填材として空気(302)で満たされることを特徴とする請求項8に記載の光学系。
  11. 前記第1の光学要素(204)は厚く、短い焦点距離を有する可変形状レンズであり、且つ前記プリズム(201)は、該可変形状レンズ(204)の焦点距離と一致する光路を実現するため、及び前記像面(203)上に該焦点距離で配置されたターゲットを結像するために、前記プリズム(201)と同じ屈折率を有する充填材で満たされるギャップ(202)を備えることを特徴とする請求項1に記載の光学系。
  12. 前記第1の光学要素(304)は薄く、長い焦点距離を有する可変形状レンズであり、且つ前記プリズム(301)は、該可変形状レンズ(304)の焦点距離と一致する光路を実現するため、及び前記像面(303)上に該焦点距離で配置されたターゲットを結像するために、前記プリズム(301)と異なる屈折率を有する空気で満たされるギャップ(302)を備えることを特徴とする請求項1に記載の光学系。
  13. 携帯電話に実装されることを特徴とする請求項1〜12の何れか一項に記載の光学系。
  14. 第1の光学要素(204、304)の焦点距離が観察下にあるターゲットの距離と一致するように調節される調節可能な光学系によって観察される該ターゲットの像を像面(203、303)上に形成する方法であって、
    プリズム(201、301)の光路を前記第1の光学要素(204、304)の調節された前記焦点距離と一致するように調節し、且つ
    前記第1の光学要素(204、304)、前記プリズム(201、301)及び前記像面(203、303)が互いの関係において所定の位置で不変であるように、前記ターゲットの像を前記像面(203、303)上に形成することを特徴とする方法。
  15. 前記第1の要素(204、304)を構成する可変形状レンズの曲率が、観察下にある前記ターゲットの距離と一致するように前記焦点距離を調節するために変えられることを特徴とする請求項14に記載の方法。
  16. 前記第1の要素(204、304)を構成する弾性可変形状レンズの直径が、観察下にある前記ターゲットの距離と一致するように前記焦点距離を調節するために変えられることを特徴とする請求項14に記載の方法。
  17. 前記第1の要素(204、204)を構成し、互いに不溶性の物質で形成されるレンズの該物質の境界面の形状が、前記ターゲットの距離と一致するように前記焦点距離を調節するために変えられることを特徴とする請求項14に記載の方法。
  18. 前記第1の要素(204、204)を構成し、複屈折結晶を含むレンズに含まれる該結晶の位置が、観察下にある前記ターゲットの距離と一致するように前記焦点距離を調節するために変えられることを特徴とする請求項14に記載の方法。
  19. 前記レンズの光学特性を調節するために、電場を前記光学系に発生させることを特徴とする請求項15〜18の何れか一項に記載の方法。
  20. 前記プリズム(201、301)の光路を、前記プリズム(201、301)に備えられるギャップ(202、302)が入れ替わりに充填材で満たされ、及び該充填材を入れ替わりに取り出して空にするように、該ギャップ(202、302)を用いて調節することを特徴とする請求項14に記載の方法。
  21. 前記第1の光学要素(204)の焦点距離と一致する光路を前記プリズム(201)内に実現するため、及び前記像面(203)上に該焦点距離で配置された前記ターゲットを結像するために、前記第1の光学要素(204)の焦点距離が短くなるように調節され、且つ前記プリズム(201)のギャップ(202)が、前記プリズム(201)の屈折率と同じ屈折率を有する充填材で満たされることを特徴とする請求項14に記載の方法。
  22. 全反射を用いて、前記第1の光学要素(304)の焦点距離と一致する光路を前記プリズム(301)内に実現するため、及び前記像面(303)上に該焦点距離で配置された前記ターゲットを結像するために、前記第1の光学要素(304)の焦点距離が長くなるように調節され、且つ前記プリズム(301)のギャップ(302)が、前記プリズム(301)の屈折率と異なる屈折率を有する空気で満たされることを特徴とする請求項14に記載の方法。
  23. ターゲットの像が形成される像面(203、303)を実装し、
    観察下にある前記ターゲットの距離と一致するように調節可能な焦点距離を有する第1の光学要素(204、304)を実装する光学系の製造方法であって、
    前記第1の光学要素(204、304)、前記プリズム(201、301)及び前記像面(203、303)が互いに関して静止した位置で不変に実装されるように、
    前記第1の光学要素(204、304)の調節された焦点距離と一致するように調節可能な光路を有するプリズム(201、301)を実装することを特徴とする方法。
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