JP4109129B2 - サングラス用レンズの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、強い光から目を保護するためのサングラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
眼鏡の用途を大別すると視力矯正と保護が挙げられ、その用途に応じて多種類の製品が提供されている。保護を主目的とする眼鏡には粉塵用・潜水用・遮光用等がある。これ等の内から遮光用を採り上げ、更に、用途別に分けると、溶接作業時の閃光防御・夏場の太陽光の緩和・スポット的な照明緩和・ファッションが挙げられる。
【0003】
サングラスと呼ばれる遮光眼鏡の多くは視力矯正機能を持ち合わせない。サングラス用のレンズは偏光フィルムの表・裏に二枚の透明板を貼り付けた三層構造で、熱加工で適度の曲面に仕上げる。偏光による遮光能力は特殊用途の溶接作業用を除いて、運動に支障のない透明性を備え、形状は視力矯正用眼鏡に近い開放型から視角全体を覆う閉鎖型のゴーグル状のものまである。
【0004】
今や、サングラスは四季を問わず強い太陽や照り返しのある屋外活動では、必需に近い品物となっている。昼間だけでなく夜間でも、強い点光源を多用する照明下で行う野球等でも使用されている。それと共に、サングラスは遮光と言う本来機能に加え、レンズ枠とレンズの一体化等、ファッション性を意識したデザイン物が増えてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
サングラスに望まれる機能は、汗ばむ程度の軽い動きの中では、目と目の周囲に必要以上の光を感じなければ充分と言える。発汗を伴う激しい動きの中では、目と目の周囲に必要以上の光を感じないこととは別に、風を感じないことも挙げられる。また、上記の機能を満たすための構造が、レンズの視界低下や換気不良によるレンズの曇りを起してはならないことである。
【0006】
コンタクトレンズが視力矯正用として増えるにつれ、サングラスも、従来の目単位で個々に遮光する方式とは別に、両目を一括遮光する方式の使用が増加してきた。多くのサングラスには視力矯正機能がないが、適度に遮光して目の疲れをなくし、風の影響を排除する機能の他に、サングラスの軽量化とデザインの幅を拡げる構造も必要な課題である。
【0007】
即ち、サングラスの設計は視角だけでなく視角周辺までを含めた広範囲を、保護対象として考慮すべきであると言える。然し、現在使用されている多種類のサングラスは、特定方向の遮光には相当の効果があるものの、それ以外の方向に対しては不充分である。その理由は一括遮光方式では採用したいと考える曲面の製造が難しいことである。
【0008】
日本人の顔に合う一体型のサングラスには、遮光板の曲がりに6カーブと称する半径88.3mmを用いた曲面に整形した遮光板(以下レンズ)を使用する。この加工は、遮光板を所要曲面の加熱金型に吸着し、加工後に裁断して所要形状とする(図1参照)が、一種類の半径で曲面を加工するので一体型レンズでは距離dが大きくなり(図8参照)端の遮光効果が薄まる原因になる。
【0009】
レンズ端が顔から離れないためには、レンズ曲面の半径を小さく(カーブナンバーと半径は逆の関係にある)してもよいが、日本人の顔は7.5カーブ以上の曲面では端が顔に近づいても、中央では目とレンズが離れ過ぎて実用的でない。また、6カーブの半径で広角度利用(図9参照)をすると、出口が狭く金型への素材の装着と加工品の抜き取りを難しくする。
【0010】
枠22の左・右を急角度の曲げたサングラス21も市販(図10参照)されているが、通常のレンズ23を人為的に曲げ枠に嵌め込んだだけである。レンズの整形に熱を利用するが、急角度の曲げには強い熱を要し、偏光フィルムに影響を与える等課題も多い。本発明は、上記の課題を解決したサングラス用レンズとその製造方法の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、偏光フィルムの表・裏に合成樹脂板を貼り合わせ、所要大で厚みの平らな遮光板を素材として、
A)素材を一種類の半径で形成した球面曲面の金型に吸着加熱して一次加工し、
B)一次加工品を製品に近い所要形状に裁断して半製品とし、
C)半製品を、一次加工の金型曲面の長手方向の両端寄りに、少なくとも一種類の半径を加えて最初の半径とで合成した新曲面を透過像の歪みが許容できる範囲で旧曲面に接続し、該接続部以降の両側の新曲面を、旧曲面より一段と内向きとした金型に吸着加熱して二次加工し、
D)二次加工品に仕上げを施し、
曲面毎の段階的加工を経ることにより、内蔵する偏光フィルムに支障なく、レンズの長手方向の両端周辺に、所要形状の曲がりを付与することを特徴とするサングラス用レンズの製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、偏光フィルムの表・裏に透明な合成樹脂板を貼り合わせ、所要大で厚みの平らな遮光板を、一種類の半径で形成した曲面の金型で一次加工した。次いで、一次加工品を所要形状に裁断し、両端寄りに少なくとも一種類の半径を加え最初の半径とで新曲面を合成する二次加工で、正面から側面にかけて望ましい曲がりで、顔に近接した透過像に歪みの少ない一体型レンズを得た。
【0013】
レンズの曲面加工を、少なくとも二回に分けて実施すると共に、最初の素材加工後に所要か所要に近い形状に裁断する工程を設けた。この結果、素材と加工品の着脱に関する金型の設計上の制限が解消し、レンズ曲面に複数の半径を任意に取り込み組み合わすことが可能となり、曲面加工自体も複数の金型の使用で極めて容易化された。
【0014】
この方法は、両目を覆う範囲と目の端から顔側面を覆う範囲に、それぞれ異なる曲面を適用して、加工を曲面単位で進めた。この結果、加工後に異なる曲面同士が接する部分に、透過像に歪み等の異常が起きる心配がなくなった。本方法で造られたレンズを使用するサングラスは、不要な光と風の排除に望ましい機能を発揮することができた。
【0015】
【作用】
本発明の方法は、複数の曲面を持つレンズの形成を容易にし、本方法で造るレンズは複数の半径による曲面で構成するので、サングラスとして優れた構造と機能を提供する。
【0016】
【実施例】
図1(A,B、C)は遮光板と一次加工用金型と一次加工品の斜視図である。図2は、図1(C)を裁断した半製品の斜視図である。図3は二次加工用金型の斜視図である。図4(A,B)は二次加工品の斜視図と曲面の位置関係を示す立体図である。図5(A,B,C)はサングラスの主要部品、図6は完成品の各斜視図である。図7(A,B)は二種類の半径を持つレンズ断面図である。
【0017】
図1(A)は加工素材で、偏光フィルム1の表・裏に透明な合成樹脂製の薄板2,3を貼り付けた三層構造の遮光板4である。同図(B)の金型6の表面は半径R=88.3mmで加工した球面の一部分を矩形状に切り取ったものである。この金型面に吸着孔7と加熱機能を付与し、金型面に素材を保護する通気性のある緩衝材5を被せ、上から加工素材を当て吸着整形する。
【0018】
図1(C)の金型で素材を曲面状の一次加工品8に整形後、図2の製品に近い形状の半製品9に裁断加工する。従来のレンズ製法では本工程までであるが、本発明では、この段階の曲面は未完成で図3の素材に過ぎない。図4(A)の二次加工用金型10の表面は、中央部を半径R=88.3mm、両端周辺を半径r=53mm(10カーブ)で描いた二球面で形成されている。
【0019】
二次加工用金型10の形状を図4(A,B)により詳細に説明する。各軸はレンズに対して、X軸は幅方向、Y軸は高さ方向、Z軸は奥行きに相当する。X軸上に両眼の視野を妨げない距離L、レンズ幅W、W端からZ軸のb点までをレンズの奥行きHとした。Z軸上に88.3mmで採ったcを中心にして、半径Rで球面を描きL端のZ軸方向の交点をaとした。同様に、X軸上からZ軸方向に採ったdを中心にして、半径r=53mmの球面でa−b間を接続した。
【0020】
二つの球面に使用する半径R,rは、a点周囲の透過像の歪みが許容できる範囲であれば任意に選んでよい。a点以外では二つの球面は離れるので隙間を滑らかな曲面で接続する。レンズの高さが狭いので接続面積は小さい。二次加工用金型10の形状は、中央部Lが一次加工用金型6と同じで、長手方向の端寄り内側から端までの範囲(W−L)/2を内側に曲げ込む。
【0021】
この二次加工用金型10に一次加工用金型6と同様に吸着孔11と加熱機能を付与し、通気性のある緩衝材12を被せた金型面に半製品9を当てて吸着整形する。二次加工用金型に対して半製品は充分小さく、金型形状も半製品の装着と整形後の二次加工品13の取り出しに支障を来すことがない。二次加工品は仕上加工を経てレンズになる。
【0022】
曲面形成に使用したカーブナンバーは、視力矯正用レンズの内・外径に使用する数値でサングラス用レンズにも準用されるが、カーブナンバーに限定される必要はない。また、本サングラスの着用対象は正常視力保持者もしくはコクタクトレンズ着用者になるので、視力矯正の必要のない厚みが一様な度なしレンズになる。
【0023】
二次加工品13を仕上げて図5(A)のレンズ14とし、同図(B,C)のつる15と鼻当て16等を付けて図6のサングラス16にする。レンズ自体が所要形状を維持するのでレンズ枠(フレーム)は不要になり、簡素な構造で様々な目的に沿う一体型サングラスの提供が可能になる。例えば、レンズ周囲に柔軟な材質のスカート(図なし)を付けるとスキーゴーグルになる。
【0024】
図7(A)は図4(B)の平面図に相当し、同図(B)はR=rとした別態様である。通常、顔の幅からレンズの幅Wは140mm、両目の位置から二つの球面が接点する距離Lは106mmを基準に、各±15、好ましくは±10、より好ましくは±5mmの範囲で選ぶ。尚、二つの球面が接するa周辺の形状は、半径R,rと距離H,L,Wの組み合わせから選択する。
【0025】
即ち、レンズの奥行きHは半径rで変り、Hを大きくすると顔の側面を深く覆う。然し、中央と端の半径差R−rが少なくなるとaに尖りがで易く、尖ると成形時にレンズ表・裏に伸びの差がでて偏光フィルムに影響し、レンズの透過像が不満足になる。このような場合、二次加工用金型のつなぎ目は充分に、滑らかな曲線で補正しておく必要がある。
【0026】
複数の金型で整形加工する際、裁断加工工程を挿入すると次加工金型の表面積が縮小する。金型表面の縮小は金型への素材や加工品の着脱を容易にし、曲面毎に別金型で加工するので無理がなくレンズ品質も向上する。本例では、二種類の半径による曲面の製造方法と、その方法で製造したレンズを説明したが、それ以上の数の半径を選択すると、多曲面を持つレンズの整形にも適用可能である。
【0027】
【発明の効果】
本発明のサングラス用レンズとその製造方法は下記の効果を提供する。
▲1▼複数の金型の使用で、レンズの複数の曲面毎に対応しながら加工できるので、今までの製法では得られなかった形状のレンズが造れるようになった。
▲2▼複数の曲面を持つレンズ、例えば、顔の正面から側面に掛けて広く覆うレンズは、遮光・風に優れた機能を提供した。
▲3▼複数の金型の使用は、レンズの急激な加工で起き勝ちな熱に起因する品質上の問題を解消した。
▲4▼レンズ形状の選択幅が拡がりサングラスのデザインにも好影響を与えた。
▲5▼二種類以上の半径で構成する複雑な曲面の実現にも利用出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A,B、C)は遮光板と一次加工用金型と一次加工品の斜視図である。
【図2】図1(C)を裁断した半製品の斜視図である。
【図3】図2は二次加工用金型の斜視図である。
【図4】(A,B)は二次加工品の斜視図と曲面の位置関係を示す立体図である。
【図5】(A,B,C)は組立前の主要部品の斜視図である。
【図6】組み立てたサングラスの各斜視図である。
【図7】(A,B)は二種類の半径によるレンズの断面図である。
【図8】レンズと顔の位置関係の模型図である。
【図9】金型と素材もしくは加工品の着脱関係に関する模型図である。
【図10】レンズ枠の左右に急角度の曲りを付けたサングラスである。
【符号の説明】
4 遮光板
5,12 緩衝材
6,10 金型
7,11 吸着孔
8 一次加工品
9 半製品
13 二次加工品
14 レンズ
15 つる
16 鼻当て
17 サングラス
Claims (1)
- 偏光フィルム(1)の表・裏に合成樹脂板(2,3)を貼り合わせ、所要大で厚みの平らな遮光板(4)を素材として、
A)素材を一種類の半径(R)で形成した球面からなる曲面の金型(6)に吸着加熱して一次加工し、
B)一次加工品(8)を製品に近い所要形状に裁断して半製品(9)とし、
C)半製品を、一次加工の金型曲面の長手方向の両端寄りに、少なくとも一種類の半径(r)を加えて最初の半径(R)とで合成した新曲面を透過像の歪みが許容できる範囲で旧曲面に接続し、該接続部以降の両側の新曲面を、旧曲面より一段と内向きとした金型(10)に吸着加熱して二次加工し、
D)二次加工品(13)に仕上げを施し、
曲面毎の段階的加工を経ることにより、内蔵する偏光フィルムに支障なく、レンズ(14)の長手方向の両端周辺に、所要形状の曲がりを付与することを特徴とするサングラス用レンズの製造方法。
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