実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による光ファイバ融着接続装置の構成を示すブロック図である。図において、1a,1bは融着接続すべき光ファイバで、側方観察でコア位置の認識が可能なものを使用する。この実施の形態では、例えば直径125μmの石英ガラス製の光ファイバを用いる。10は光ファイバ1a,1bの端面を放電により加熱する放電電極で、放電制御部14からの制御信号に基づいた値の電流が通電される。12a,12bは光ファイバ1a,1bを配置するV溝を設けた台で、ファイバ位置制御部18からの制御信号によって光ファイバ1a,1bの軸方向と、光ファイバ1a,1bを含む平面内を上記軸方向に対して垂直な方向とを直動可能な駆動機構を有している。
13a,13bは光ファイバ1a,1bを台12a,12bに固定するクランプで、14は放電電極10に通電する電流値を制御する放電制御部である。15はクランプ13a,13bによって台12a,12bに固定された光ファイバ1a,1bを撮像する顕微鏡カメラで、16は顕微鏡カメラ15が撮像した光ファイバ1a,1bの画像において光ファイバ1a,1bの軸方向の位置を規定する処理を行う画像処理部である。
また、17はコア位置演算部であって、画像処理部16が規定した光ファイバ1a,1bの軸方向の位置から光ファイバ1a,1bのコア位置やコア変形の指標値を算出し、これに基づいて放電制御部14やファイバ位置制御部18を制御する。18はコア位置演算部17が算出した光ファイバ1a,1bのコア位置などから光ファイバ1a,1bの突き合わせ位置を制御するファイバ位置制御部である。
次に動作について説明する。
放電電極10,10の両側に設けた台12a,12bにクランプ13a,13bを用いて光ファイバ1a,1bを、その先端が突き合うように配置する。次に放電制御部14に制御された値の電流が通電されることで放電電極10,10間に放電が起こり、光ファイバ1a,1bの先端部が加熱される。この放電加熱によって上記光ファイバ1a,1bの先端が溶融すると、例えば光ファイバ1bが固定された台12bの駆動機構をファイバ位置制御部18によって制御して、光ファイバ1bをその軸方向に沿って移動させる。これにより、光ファイバ1bが光ファイバ1aに突き当たるように押し込まれて融着する。
次に加熱量調節動作について説明する。
先ず、通常の融着接続を行う前に放電テストを行って、光ファイバ1a,1bを低接続損失で接続するための加熱条件を求める。クランプ13a,13bを用いて光ファイバ1a,1bをそれぞれ台12a,12bに先端が突き合うように配置する。
図2は上述のように配置した光ファイバの突き合わせ状態を示す側面図である。図において、2a,2bは光ファイバ1a,1bのコア、3a,3bは光ファイバ1a,1bの外形で、11は向かい合った放電電極10,10間の各電極端を結ぶ電極ラインで、放電電極10,10間の放電の中心位置に相当する。なお、図1と同一構成要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
クランプ13a,13bを用いて台12a,12bに先端を突き合わせて配置した光ファイバ1a,1bは、ファイバ位置制御部18によって台12a,12bに設けた不図示の駆動機構を制御して位置決めされる。具体的には、光ファイバ1aを、その端面が電極ライン11に位置するように配置し、光ファイバ1bを光ファイバ1aの端面からその軸方向に沿って離れた位置に配置する。ここでは、例えば光ファイバ1bを光ファイバ1aの端面から10μm離れた位置に配置する。
さらに、ファイバ位置制御部18によって台12aの駆動機構を制御して、光ファイバ1a,1bを含む平面内を上記軸方向に対して垂直な方向に移動させる。これによって、外形3aと外形3bとの中心軸位置、コア2aとコア2bとの中心軸位置がずらされる。ここでは、例えば外形3aと外形3bとの中心軸位置の差である外形ズレ量が1.0μm、コア2aとコア2bとの中心軸位置の差であるコアズレ量を0.8μmとする。
このように、光ファイバ1a,1bを互いにずらして配置(調心)することで、光ファイバ1a,1bを融着させた接続部におけるコアの変形が大きくなり、光ファイバ1a,1bの接続部位置の特定を容易にすることができる。接続部におけるコアの変形を容易に側方観察するには、外形ズレ量1.0μm以上、コアズレ量0.5μm以上の位置に光ファイバ1a,1bを配置する。
光ファイバ1a,1bの配置が完了すると、放電加熱、融着操作を行う。ここでは、放電加熱によって先端が溶融した光ファイバ1bをその軸方向に沿って光ファイバ1aに押し込んで融着接続する。
具体的な条件としては、光ファイバ1bをその軸方向に沿って光ファイバ1aに押し込むまでの光ファイバ1a,1bの加熱時間に相当する予備放電時間を、例えば0.1秒間とし、光ファイバ1bの押し込み量(光ファイバ1bが光ファイバ1aの端面に接触する位置から押し込む移動距離)を、例えば15μmとする。さらに、予備放電時間を含めた放電開始から放電終了までの時間に相当する放電時間を、例えば1.5秒とし、放電電極10,10に通電する電流値を、例えば15mAとする。
次にコア位置計測、コア変形指標値算出操作について説明する。
図3は融着接続させた光ファイバの接続部近傍の状態を示す側面図である。図において、5a,5bは接続部6近傍でコア変形がないと仮定したときの仮想的なコア位置を示す仮想コア線(仮想コア)であって、接続前後でコア変形が生じなかった光ファイバ1a,1bの位置におけるコア軸に沿った線を接続部6まで延長したものに相当する。
6は光ファイバ1a,1bの接続部、7は画像処理部16が顕微鏡カメラ15によって撮像された光ファイバ1a,1bの画像を解析して求めたスライスラインで、接続部6を基準線として対称に光ファイバ1a,1bの軸方向に沿った位置を規定する。図示の例では、スライスライン7が光ファイバ1aの軸方向に沿った位置SL1,SL2,SL3に設けられ、光ファイバ1bの軸方向に沿った位置SR1,SR2,SR3に設けられている。さらに、接続部6に相当する位置Sにスライスライン7が設けられている。なお、図1及び図2と同一構成要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
放電電極10,10間の放電によって光ファイバ1a,1bが溶融すると、光ファイバ1a,1bの外形部に表面張力が働く。これにより、外形セルフアライメントと呼ばれる現象が起こって、光ファイバ1a,1bは、互いに外形ズレがなくなる方向に移動する。図示の例では、上述したように光ファイバ1a,1bは、外形ズレ量が1.0μmとなるように調心したので、放電中に外形ズレ量が小さくなる方向に0.8μm程度、光ファイバ1a,1bの外形が移動する。
このとき、光ファイバの接続部6(図3中の位置S)では、光ファイバ1a,1bの表面張力による移動が生じず、調心した際のコアズレが維持される。一方、接続部6から離れた光ファイバ1a,1bの軸方向の位置では、上述した外形セルフアライメントによる外形移動に合わせてコア2a,2bも移動し、コア2a,2bがほぼ同軸となる。
光ファイバ1a,1bを互いにずらして配置(調心)することによって、上述したような光ファイバ1a,1bの融着接続時の挙動から、図3に示すように接続部6近傍でコア2a,2bが大きく変形する。
このとき、顕微鏡カメラ15によって融着接続させた光ファイバ1a,1bを撮像し、画像処理部16に送信する。上記画像データを受けた画像処理部16は、光ファイバ1a,1bにおいてコア2a,2bが大きく変形した部分を接続部6として特定し、この位置を基準として光ファイバ1a,1bの軸方向の位置を規定する。このようにして、顕微鏡カメラ15によって光ファイバ1a,1bの側方から撮像した画像データを画像処理部16が画像認識し、2次元の画像として表示したものが図3に相当する。
図3において、画像処理部16は、コア2a,2bが上下に大きく反り返っている部分を光ファイバ1a,1bが融着された接続部6として特定し、この接続部6のある位置Sにスライスライン7の基準線を設ける。この位置Sを基準として光ファイバ1a,1bの軸方向に位置SL1,SL2,SL3,SR1,SR2,SR3を規定する(コア変化分計測ステップ)。
図示の例において、画像処理部16は、位置Sから位置SL1,SR1までの距離を20μm、位置Sから位置SL2,SR2までの距離を100μm、位置Sから位置SL3,SR3までの距離を150μmに設定した。これは、上述した加熱条件において、光ファイバ1a,1bの位置Sから20μm程度離れた領域では、一般的にコア2a,2bが大きく変形する領域であり、位置Sから100,150μm程度離れた領域では、コア変形がなく外形セルフアライメントによってコア2a,2bのズレ量が小さい領域であることに基づいている。
上述のようにして、画像処理部16が光ファイバ1a,1bの側方から撮像した側面図に対応する2次元画像で規定した光ファイバ1a,1bの軸方向の位置に基づいて、コア位置演算部17がコア位置やコア変形の指標値を算出する。先ず、コア位置演算部17は、接続部6近傍においてコア変形がないと仮定したときのコア位置を示す仮想コア線5a,5bを求める。具体的には、接続前後でコア変形が生じなかった位置SL2から位置SL3、及び位置SR2から位置SR3におけるコア2a,2bの軸に沿った線を接続部6のある位置Sまで延長する。この延長線が仮想コア線5a,5bに相当する。
次に、コア位置演算部17は、光ファイバ1a,1bの側方から撮像した側面図に対応する2次元画像において、コア変形がある位置SL1,SR1のコア位置を示す座標値を算出する。これに次いで、コア位置演算部17は、位置SL1,SR1におけるコア位置と仮想コア線5a,5bの位置との距離DL,DRをコア変形の指標値を構成するパラメータとして算出する(コア変形指標値算出ステップ)。上記の例では、DL=0.4μm、DR=0.2μmであった。
この位置SL1,SR1におけるコア位置と仮想コア線5a,5bの位置との距離DL,DRをコア変形の指標値として使用するために、例えば様々な加熱条件における接続損失の(DL+DR)、(DL−DR)に対する依存性を求め、コア位置演算部17の不図示の記憶手段に格納しておく。具体的に、上述した接続損失の(DL+DR)、(DL−DR)に対する依存性を導き出す方法について説明する。
図4は実測接続損失のコア変形の指標値に対する依存性を示すグラフ図であり、(a)はコア変形の指標値(DL+DR)に対する依存性を示し、(b)はコア変形の指標値(DL−DR)に対する依存性を示している。図4のグラフ図は、様々な加熱条件(調心時における外形ズレ量1.0μm、コアズレ量0.8μm、及び、押し込み量15μmは一定)において、上述のようにしてコア位置演算部17によって仮想コア線5a,5bの位置と接続部6近傍におけるコア2a,2bの位置とから算出したDL,DRと、上記各加熱条件で光ファイバ1a,1bを外形ズレ及びコアズレなく調心して実測した接続損失とに基づいて作成される。
図4に示すように、コア変形の指標値(DL+DR)、(DL−DR)に対して実測接続損失は、下に凸な曲線で示される関係となる。これによって、本願発明において許容できる光ファイバ1a,1bの接続損失に対応する(DL+DR)、(DL−DR)の最適範囲を容易に決定することができる。
このようにして求められた、様々な加熱条件において、光ファイバ1a,1bが低接続損失で接続するコア変形の指標値(DL+DR)、(DL−DR)の最適範囲は、コア位置演算部17の不図示の記憶手段に格納される。上述した加熱条件において、コア変形の指標値(DL+DR)の最適範囲は、0.8〜1.0μm、コア変形の指標値(DL−DR)は、絶対値で0.1μm以下となる。
以上のようにして、コア位置演算部17がコア変形の指標値(DL+DR)、(DL−DR)を算出すると、これらが不図示の記憶手段に格納されたコア変形の指標値(DL+DR)、(DL−DR)の最適範囲内にあるか否かを判定する。このとき、コア位置演算部17は、コア変形の指標値(DL+DR)が最適範囲より小さいと、放電電極10,10に通電した電流値が小さすぎると判定し、最適範囲より大きいと放電電極10,10に通電した電流値が大きすぎると判定される。また、コア変形の指標値である許容差(DL−DR)が最適値より大きいと、コア位置演算部17は、光ファイバ1bと比較して電極ライン11に沿って先端を配置した光ファイバ1aへの加熱量が大きかったものと判断する。
上述したような判定動作が完了すると、コア位置演算部17は、判定結果に基づいて放電制御部14やファイバ位置制御部18を制御して、放電電極10,10に供給する電流値や、この放電電極10,10に対する光ファイバ1a,1bの突き合わせ位置を調節する(加熱量調節ステップ)。
具体的な例を挙げると、上述した加熱条件でコア変形の指標値(DL+DR)が0.6μmで、コア変形の指標値(DL−DR)が0.2μmであり、コア変形の指標値(DL+DR)の最適範囲0.8〜1.0μmより小さく、コア変形の指標値(DL−DR)の最適範囲である絶対値で0.1以下より大きい。これにより、コア位置演算部17は、コア変形の指標値(DL+DR)から放電電極10,10に供給する電流値が小さすぎたものと判定し、コア変形の指標値(DL−DR)から光ファイバ1bと比較して電極ライン11に沿って先端を配置した光ファイバ1aへの加熱量が大きかったものと判定する。
この判定結果に基づいて、コア位置演算部17は、放電制御部14に放電電極10,10に供給する電流値を大きくする旨の制御信号を送信し、さらに、光ファイバ1a,1bへの加熱量のバランスをとるために、ファイバ位置制御部18に光ファイバ1bの突き合わせ位置を、光ファイバ1a側、つまり、放電電極10に近づける方向に移動させる制御信号を送信する。ここでは、例えば放電電極10,10に供給する電流値を15mAから18mAに変更し、光ファイバ1bを光ファイバ1a側に5μm近づけた位置に移動させる。
このあと、変更した加熱条件にて、上述した加熱ステップ、接続ステップ、コア変化分計測ステップ、及びコア変形指標値算出ステップに係る操作を、コア変形の指標値(DL+DR)、(DL−DR)が最適範囲内になるまで繰り返す。上記変更した加熱条件では、DL=0.4μm、DR=0.5μmとなってコア変形の指標値(DL+DR)、(DL−DR)がそれぞれ最適範囲内になり、光ファイバ1a,1bを低接続損失で接続することができる加熱条件が放電テスト中に決定される。このようにして、実施の形態1による光ファイバの融着接続装置は、通常の光ファイバの接続動作に入る前の放電テスト時に、光ファイバ1a,1bを低接続損失で接続する加熱量に調節することができる。
以上のように、この実施の形態1によれば、放電電極10,10間に突き合わせて配置した一対の光ファイバ1a,1bを、放電電極10,10間の放電にて加熱して、これら加熱された各光ファイバ1b(又は光ファイバ1a)の一方をその軸方向に平行で他方の光ファイバ1a(又は光ファイバ1b)に突き当たる方向に押し込んで各光ファイバ1a,1bを融着させ、光ファイバの接続部6からその軸方向に離れた計測位置にて融着による光ファイバ1a,1bのコア2a,2bの変化分を計測し、このコア2a,2bの変化分に基づいて算出した光ファイバ1a,1bのコア変形の指標値が、光ファイバ1a,1bが低接続損失で接続するコア変形の指標値の最適範囲内となるように、放電電極10,10に供給する電流値と、この放電電極10,10に対する光ファイバ1a,1bの突き合わせ位置とを調節するので、光ファイバ1a,1bの接続部6近傍の形状を計測し、これに基づいて実際の光ファイバの接続部6における加熱状態を評価することから、正確な加熱量の調節を行うことができるという効果が得られる。
また、この実施の形態1によれば、光ファイバ1a,1bへの加熱量を調節するにあたり、放電電極10,10間に互いのコア2a,2bの中心位置が同一軸上にならないように突き合わせて光ファイバ1a,1bを配置するので、光ファイバ1a,1bの融着接続時に接続部6近傍においてコア変形が起こり、容易に接続部6の位置を把握することができ、コア変形の指標値を高精度に算出することができるという効果が得られる。
さらに、上記実施の形態1では、光ファイバ1a,1bへの加熱量を調節するにあたり、放電電極10,10間に互いのコア2a,2bの中心位置が同一軸上にならないように突き合わせて光ファイバ1a,1bを配置したが、放電電極10,10間に互いの外形3a,3bの中心位置が同一軸上にならないように突き合わせて光ファイバ1a,1bを配置したり、互いのコア2a,2bの中心位置と互いの外形3a,3bの中心位置とがそれぞれ同一軸上にならないように突き合わせて光ファイバ1a,1bを配置するようにしても、上記と同様の効果を得ることができる。
さらに、この実施の形態1によれば、光ファイバ1a,1bの接続部6近傍におけるコア2a,2bの位置と、光ファイバ1a,1bの接続部6近傍からその軸方向に離れて接続前後でコア変形の生じない計測位置におけるコア2a,2bの位置とを計測し、接続前後でコア変形の生じない計測位置にて計測したコア2a,2bの位置から接続部6近傍でコア変形がないと仮定したときの仮想コア線5a,5bを求め、この仮想コア線5a,5bの位置と接続部6近傍におけるコア2a,2bの位置に基づいて、光ファイバ1a,1bのコア変形の指標値を算出するので、光ファイバ1a,1bの接続部近傍におけるコア2a,2bの位置とコア変形の生じない位置において計測したコア2a,2bの位置とを使用することから、簡易な処理で再現性の高いコア変形の指標値を算出することができるという効果が得られる。
なお、上記実施の形態1では、画像認識による接続部6の位置の特定を容易にするため、調心時にコア2a,2bの中心軸位置を光ファイバ1a,1bでずらし、そのコアズレ量を0.5μm以上とした例を示したが、画像認識精度が高く、より微細なコアズレでも容易に認識できる顕微鏡カメラ15や画像処理部16を使用する場合には、コアズレ量が0.5μm以下であってもよい。
また、上記実施の形態1では、調心時の外形ズレ量を1μm以上としたが、過剰にずらしすぎると、通常接続時と異なる加熱条件になる(例えば、温度が空間で不均一なことに起因して)ため、外形ズレ量は1〜5μmの範囲に調整することが望ましい。
実施の形態2.
この実施の形態2は、光ファイバを融着接続する度に、光ファイバの接続部からその軸方向に離れた計測位置にて、融着による光ファイバのコアの変化分を計測し、コアの変化分に基づいて算出したコア変形の指標値が、光ファイバが低接続損失で接続する指標値の最適範囲内にあるか否かを監視するものである。
実施の形態2による光ファイバの融着接続装置の基本的な構成は、図1に示したものと同様である。上記実施の形態1と異なる点としては、顕微鏡カメラ15が、放電テスト時のみではなく、通常の光ファイバ1a,1bの融着接続動作の度に、クランプ13a,13bによって台12a,12bに固定された光ファイバ1a,1bを撮像する。また、画像処理部16は、通常の光ファイバ1a,1bの融着接続動作の度に、顕微鏡カメラ15が撮像した光ファイバ1a,1b画像において光ファイバ1a,1bの軸方向の位置を規定する処理を行う。
さらに、コア位置演算部17は、通常の光ファイバ1a,1bの融着接続動作の度に、画像処理部16が規定した光ファイバ1a,1bの軸方向の位置に基づいて光ファイバ1a,1bのコア位置やコア変形の指標値を算出するとともに、このコア変形の指標値が光ファイバ1a,1bが低接続損失で接続する指標値の最適範囲にあるか否かを、通常の光ファイバ1a,1bの融着接続動作の度に監視する機能が設けられ、上記指標値が最適範囲内になるように放電制御部14やファイバ位置制御部18を制御する。
次に動作について説明する。
光ファイバ1a,1bの融着接続動作は、上記実施の形態1で示したものと同様であるので重複する説明は省略し、ここでは、通常の光ファイバ1a,1bの融着接続の度に実行する加熱量監視動作について説明する。先ず、クランプ13a,13bを用いて光ファイバ1a,1bをそれぞれ台12a,12bに先端が突き合うように配置する。
図5は上述のように配置した光ファイバの突き合わせ状態を示す側面図である。図において、4a,4bは光ファイバ1a,1bの外形3a,3bの中心軸である。また、この図5は、顕微鏡カメラ15によって融着接続する前の光ファイバ1a,1bを側方から撮像した画像データを画像処理部16が画像認識し、2次元の画像として表示したものに相当する。
さらに、画像処理部16が光ファイバ1a,1bの端面を特定し、各端面のある位置にスライスライン7の基準線を設けている。図示の例では、光ファイバ1aの端面位置を基準として軸方向に位置SL0、光ファイバ1bの端面位置を基準として軸方向に位置SR0を規定している。なお、図2及び図3と同一構成要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
上記実施の形態1と同様に、クランプ13a,13bを用いて台12a,12bに先端を突き合わせて配置した光ファイバ1a,1bは、ファイバ位置制御部18によって台12a,12bに設けた不図示の駆動機構を制御して位置決めされる。具体的には、光ファイバ1aを、その端面が電極ライン11に位置するように配置し、光ファイバ1bを光ファイバ1aの端面からその軸方向に沿って離れた位置に配置する。ここでは、例えば光ファイバ1bを光ファイバ1aの端面から10μm離れた位置に配置する。
さらに、ファイバ位置制御部18によって台12aの駆動機構を制御して、光ファイバ1a,1bを含む平面内を上記軸方向に対して垂直な方向に移動させる。これによって、コア2aとコア2bとの軸位置がほぼ一致するように配置する。ここでは、例えばコア2aとコア2bとの軸位置の差であるコアズレ量を0.1μm以下になるように調心する。
また、図示の例では、画像処理により光ファイバ1a,1bの各端面から50μm離れた位置をSL0,SR0とし、これらの位置SL0,SR0におけるコア偏心量(外形3a,3bの中心軸4a,4bに対するコア2a,2bの距離)を計測したところ、光ファイバ1aで1.2μm、光ファイバ1bで0.4μmであった。さらに、偏心の向きは光ファイバ1a,1bで逆向きであったため、コア2a,2bの調心完了段階における外形3a,3bの中心軸4a,4bの光ファイバ1a,1bにおける外形ズレ量は1.5μmであった。
光ファイバ1a,1bの配置が完了すると、放電加熱、融着操作を行う。ここでは、放電加熱によって先端が溶融した光ファイバ1bをその軸方向に沿って光ファイバ1aに押し込んで融着接続する。
具体的な条件としては、光ファイバ1bをその軸方向に沿って光ファイバ1aに押し込むまでの光ファイバ1a,1bの加熱時間に相当する予備放電時間を、例えば0.1秒間とし、光ファイバ1aの押し込み量(光ファイバ1bが光ファイバ1aの端面に接触する位置から押し込む移動距離)を、例えば15μmとする。さらに、予備放電時間を含めた放電開始から放電終了までの時間に相当する放電時間を、例えば1.5秒とし、放電電極10,10に通電する電流値を、例えば20mAとする。
上述した加熱条件にて、通常の光ファイバ1a,1bの融着接続を実行すると、上記実施の形態1で示したように、光ファイバ1a,1bの溶融時における外形セルフアライメントによって接続部6近傍のコア2a,2bが変形する。
図6は融着接続させた光ファイバの接続部近傍の状態を示す側面図である。この図6は、顕微鏡カメラ15によって融着接続させた光ファイバ1a,1bを側方から撮像した画像データを画像処理部16が画像認識し、2次元の画像として表示したものに相当する。なお、図2から図5までと同一構成要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
通常の光ファイバ1a,1bの融着接続では、接続部6におけるコア変形は小さく(調心時にコア2a,2bをずらしていないため)、コアズレ位置による接続部6の特定はできない。このため、押し込み時の光ファイバ1a,1bの重なり部の中央を接続位置と定義する(コア変化分計測ステップ)。図示の例では、光ファイバ1aの端面からその軸方向に0〜15μmの領域が押し込み時の光ファイバ1a,1bの重なり部であり、その中央として調心時の光ファイバ1aの端面からその軸方向に7.5μmの位置Sを規定し、これを接続部6とした。
このようにして、画像処理部16が図6に相当する2次元画像を画像認識すると、この2次元画像に基づいて、コア位置演算部17が光ファイバ1a,1bの接続部6近傍におけるコア変形の指標値を算出する(コア変形指標値算出ステップ)。図示の例では、位置Sから50μm離れた位置SL1,SR1におけるコア偏心量DL1,DR1を計測したところ、DL1=0.9μm、DR1=0.3μmであり、接続前後におけるコア偏心量の変化(以下、偏心変化量と呼ぶ)は、光ファイバ1aで0.3μm(1.2μmから0.9μmに変化)、光ファイバ1bで0.1μm(0.4μmから0.3μmに変化)であった。
このコア偏心量の変化分をコア変形の指標値として使用するために、例えば様々な加熱条件における接続損失の最大偏心変化量(光ファイバ1a,1bの各コア偏心量の接続前後における変化分のうち、値の大きい方)に対する依存性を求め、コア位置演算部17の不図示の記憶手段に格納しておく。
図7は様々な加熱条件に対する実測接続損失と最大偏心変化量との関係を示すグラフ図である。図において、黒塗りの四角記号のプロットは、加熱量が過剰であったときの実測接続損失と最大偏心変化量との関係を示し、白塗りの四角記号のプロットは、最適な加熱量における実測接続損失と最大偏心変化量との関係を示している。この最適な加熱量は、上記実施の形態1にて示した放電テストなどにおいて予め求めておく。
また、この図7のグラフ図は、様々な加熱条件(調心時における外形ズレ量1.5μm、コアズレ量0.1μm以下、及び、押し込み量15μmは一定)において、上述のようにしてコア位置演算部17が算出した光ファイバ1a,1bの最大偏心変化量と、上記各加熱条件で融着接続した光ファイバ1a,1bから実測した接続損失とに基づいて作成される。
黒塗りの四角記号のプロットが示すように、融着接続における光ファイバ1a,1bへの加熱量が過剰であると、接続前後において最大偏心変化量が0.15μm以上の範囲で大きくばらつき、最大偏心変化量の増加によって接続損失の実測値が増加する傾向にある。これに対して、白塗りの四角記号のプロットで表した最適な加熱量における挙動は、接続前後において最大偏心変化量のばらつきが0.10μm以下に抑えられ、接続損失の実測値も0.02dB以下の低値が保たれる。ここでは、接続損失の実測値を0.04dB以下に抑えることとし、これにより、図7から最大偏心変化量の管理値を0.10μm以下に設定する。
上述のようにして、コア位置演算部17が光ファイバ1a,1bのコア変形の指標値である最大偏心変化量を算出すると、不図示の記憶手段に格納しておいた様々な加熱条件に対する実測接続損失と最大偏心変化量との関係を示すデータと比較する(加熱量監視ステップ)。
これによって、最大偏心変化量が最適範囲内にないとき、コア位置演算部17は、最大偏心変化量が最適範囲内になるように、上記実施の形態1と同様に放電制御部14やファイバ位置制御部18を制御して、放電電極10,10に供給する電流値と、この放電電極10,10に対する光ファイバ1a,1bの突き合わせ位置とを調節する。
この実施の形態2における加熱条件では、上述したように最大偏心変化量が0.3μmであることから、コア位置演算部17は、現状の光ファイバ1a,1bへの加熱量が不適正(放電電極10,10への通電量が経時変動によって大きくなって放電が強くなった、又は、光ファイバ1bが経時変動によって光ファイバ1a側に移動してしまったなどの理由が考えられる)であると判断する。
このあと、コア位置演算部17は、通常の光ファイバ1a,1bの融着接続動作を中断するように放電制御部14などを制御し、上記実施の形態1と同様な方法で放電テストにおける加熱量調節を行う。上述のようにして、通常の光ファイバ1a,1bの融着接続動作の度に、光ファイバ1a,1bが低接続損失で接続するコア変形の指標値が最適範囲内にあるか否かが監視される。
以上のように、この実施の形態2によれば、光ファイバ1a,1bを融着接続する度に、光ファイバ1a,1bの接続部6からその軸方向に離れた計測位置にて、融着による光ファイバ1a,1bのコア2a,2bの変化分を計測し、コア2a,2bの変化分に基づいて光ファイバ1a,1bのコア変形の指標値を算出して、このコア変形の指標値が、光ファイバ1a,1bが低接続損失で接続する指標値の最適範囲内にあるか否かを監視するので、コア変形の指標値が最適範囲内にあるか否かを監視することで、経時変化などによる加熱条件の変動を知ることができるという効果が得られる。
また、この実施の形態2によれば、コア変形の指標値が最適範囲内にないとき、上記実施の形態1に示した加熱量調節方法によって、コア変形の指標値が最適範囲内になるように放電電極10,10に供給する電流値と、放電電極10,10に対する光ファイバ1a,1bの突き合わせ位置とを調節するので、通常の光ファイバ1a,1bの融着接続動作においても、コア変形の指標値が最適範囲内となるように調節することができ、低接続損失の光ファイバ1a,1bの融着を安定して行うことができるという効果が得られる。
さらに、この実施の形態2によれば、光ファイバ1a,1bの接続前後における外形3a,3bの位置とコア2a,2bの位置とを計測し、光ファイバ1a,1bの接続前後におけるコア2a,2bの変化分として光ファイバ1a,1bの外形3a,3bとコア2a,2bとの中心軸間距離の変化量を求め、この中心軸間距離の変化量に基づいてコア変形の指標値を算出するので、外形3a,3bやコア2a,2bの中心軸は光ファイバ1a,1bの側方観察によって容易に計測することができることから、簡易な処理で再現性の高いコア変形の指標値を算出することができるという効果が得られる。
なお、上記実施の形態2では接続部6の位置Sとして押し込み時における光ファイバ1a,1bの重なり領域の中央部分を定義したが、予め上記実施の形態1で示したコアズレ状態で、光ファイバ1a,1bの融着を行って正確な接続部6の位置Sを求め、この結果に基づいて通常の融着動作における接続部6の位置Sを定義してもよい(例えば、光ファイバ1aの端面から所定長さ離れた位置)。
また、加熱量が過小になると、光ファイバ1a,1bの溶融量が不足して、光ファイバ1b(又は光ファイバ1a)の押し込み時の衝撃が大きくなることから、この場合にもコア変形が発生する。これに対して、上記実施の形態2による加熱量監視を行うことで、加熱量が過小な場合と過大な場合との両方でコア変形による接続損失の増加を防ぐことができる。
さらに、過剰な加熱量によるコア変形は調心時の外形ズレ量が小さいと発生しない(外形セルフアライメントが働かないため)のに対し、過小加熱による変形は外形ズレ量の大小に無関係に発生する。従って、上記実施の形態2において、光ファイバ1a,1bを融着接続する度に、調心時の外形ズレ量と接続後のコア変形の指標値に係るデータを、コア位置演算部17の不図示の記憶手段に記憶しておき、加熱量の調節や監視を行う際に適宜分析するようにすれば、加熱量の過不足の判定が容易になり、さらに正確な加熱量の監視ができる。
実施の形態3.
この実施の形態3は、光ファイバの接続部近傍におけるコアの位置と、光ファイバの接続部近傍からその軸方向に離れて接続前後でコア変形の生じない計測位置におけるコアの位置とを計測し、接続前後でコア変形の生じない計測位置にて計測したコアの位置から接続部近傍でコア変形がないと仮定したときの仮想コアを求め、接続部近傍における各光ファイバの仮想コアの中心軸間距離を示すコアズレ量を算出して、このコアズレ量から、光ファイバの接続部における接続損失の推定値を算出するものである。
実施の形態3による光ファイバの融着接続装置の基本的な構成は、上記実施の形態2に示したものと同様である。上記実施の形態2と異なる点としては、コア位置演算部(融着接続損失推定手段)17は、画像処理部16が規定した光ファイバ1a,1bの軸方向の位置に基づいて、光ファイバ1a,1bの接続部6近傍におけるコア2a,2bの位置と、接続部6近傍から軸方向に離れて接続前後でコア変形の生じない位置におけるコア2a,2bの位置とを算出するとともに、接続前後でコア変形の生じない位置において計測したコア2a,2bの位置から接続部6近傍でコア変形がないと仮定したときの仮想コア線5a,5bを求め、接続部6近傍における光ファイバ1a,1bの仮想コア線5a,5bの中心軸間距離を示すコアズレ量を算出する機能が設けられている。
次に動作について説明する。
光ファイバ1a,1bの融着接続動作は、上記実施の形態1で示したものと同様であるので重複する説明は省略し、ここでは、融着接続させた光ファイバ1a,1bの接続損失推定動作について説明する。
先ず、クランプ13a,13bを用いて光ファイバ1a,1bをそれぞれ台12a,12bに先端が突き合うように配置する。上記実施の形態1と同様に、クランプ13a,13bを用いて台12a,12bに先端を突き合わせて配置した光ファイバ1a,1bは、ファイバ位置制御部18によって台12a,12bに設けた不図示の駆動機構を制御して位置決めされる。
具体的には、光ファイバ1aを、その端面が電極ライン11に位置するように配置し、光ファイバ1bを光ファイバ1aの端面からその軸方向に沿って離れた位置に配置する。ここでは、例えば光ファイバ1bを光ファイバ1aの端面から10μm離れた位置に配置する。
さらに、ファイバ位置制御部18によって台12aの駆動機構を制御して光ファイバ1a,1bを含む平面内を上記軸方向に対して垂直な方向に移動させる。これによって、コア2aとコア2bとの軸位置がほぼ一致するように配置する。ここでは、例えばコア2aとコア2bとの軸位置の差であるコアズレ量を0.1μm以下になるように調心する。
このあと、コア位置演算部17は、光ファイバ1a,1bの各端面からその軸方向に離れた計測位置におけるコア偏心量(外形3a,3bの中心軸4a,4bに対するコア2a,2bの距離)を計測する。
光ファイバ1a,1bの配置が完了すると、放電加熱、融着操作を行う。ここでは、放電加熱によって先端が溶融した光ファイバ1bを軸方向に沿って光ファイバ1aに押し込んで融着接続する。具体的な条件としては、光ファイバ1bをその軸方向に沿って光ファイバ1aに押し込むまでの光ファイバ1a,1bの加熱時間に相当する予備放電時間を、例えば0.1秒間とし、光ファイバ1bの押し込み量を、例えば12μmとする。さらに、予備放電時間を含めた放電開始から放電終了までの時間に相当する放電時間を、例えば1.5秒とし、放電電極10,10に通電する電流値を、例えば20mAとする。
上述した加熱条件にて、通常の光ファイバ1a,1bの融着接続を実行すると、上記実施の形態1で示したように、光ファイバ1a,1bの溶融時における外形セルフアライメントによって接続部6近傍のコア2a,2bが変形する。
図8は融着接続させた光ファイバの接続部近傍の状態を示す側面図である。この図8は、顕微鏡カメラ15によって融着接続させた光ファイバ1a,1bを側方から撮像した画像データを画像処理部16が画像認識し、2次元の画像として表示したものに相当する。なお、図2から図6までと同一構成要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
上記実施の形態2と同様に、調心時にコア2a,2bをずらしていないため、接続部6におけるコア変形は小さく、コアズレ位置による接続部6の特定はできない。このため、押し込み時の光ファイバ1a,1bの重なり部の中央を接続位置と定義する(コア変化分計測ステップ)。図示の例では、光ファイバ1aの端面からその軸方向に0〜12μmの領域が押し込み時の光ファイバ1a,1bの重なり部であり、その中央として調心時の光ファイバ1aの端面からその軸方向に6.0μmの位置Sを規定し、これを接続部6とした。
また、コア位置演算部17は、光ファイバ1a,1bの接続部6から軸方向に離れた計測位置でのコア偏心量の変化分が所定値以下であるとき、その計測位置でのコア変形は十分に小さいと判定する。上記所定値は、様々な加熱条件に対する実測接続損失と偏心量の変化分との関係を予め実験的に求めておき、この結果に基づいて算出される。具体的には、例えば上記加熱条件において所定値が0.1μm以下であれば、その計測位置でのコア変形は十分に小さいと判定する(以下、これを基準Aと称することにする)。
このようにして、図8に相当する2次元画像に基づいて、コア位置演算部17が光ファイバ1a,1bの接続部6近傍からその軸方向に離れた各計測位置におけるコア偏心量の変化分を計測する。
図示の例では、位置Sから30μm離れた位置SL1,SR1におけるコア偏心量の変化分DL1,DR1、及び、位置SL1,SR1から20μm離れた位置SL2,SR2におけるコア偏心量の変化分DL2,DR2を計測したところ、DL1=0.30μm、DL2=0.15μm、DR1=0.2μm、DR2=0.1μmであった。従って、コア位置演算部17は、基準Aによって光ファイバ1a,1bの位置SL1から位置SL2までの領域、位置SR1から位置SR2までの領域のいずれにおいてもコア変形が大きいと判定した。
このように、画像処理部16が図8に相当する光ファイバ1a,1bの2次元画像内に規定した位置の全てにおいてコア変形が大きいと判定されると、コア位置演算部17は、画像処理部16を制御して接続部6から光ファイバ1a,1bの軸方向にさらに離れた位置にスライスライン7を追加する処理を行う。
具体的には、位置SL2,SR2からさらに20μm離れた位置SL3,SR3にスライスライン7を追加設定する。このあと、位置SL3,SR3におけるコア偏心量の変化分DL3,DR3を計測したところ、DL3=0.08μm、DR3=0.05μmであった。
従って、DR2,DR3はともに1.0μm以下で基準Aを満たすことから、コア位置演算部17は、位置SR2から位置SR3までの領域におけるコア変形が十分に小さいと判定し、光ファイバ1bのコア変形が接続部6から位置SR2までの距離(図示の例では、位置Sから位置SR2までの50μm)まで広がっていたと判断して、この距離をコア変形の指標値として使用する。
一方、位置SL2から位置SL3までの領域は、DL=0.15μmで基準Aを満たしていないことから、上記と同様にして、位置SL3からさらに20μm離れた位置SL4にスライスライン7を追加設定する。このあと、位置SL4におけるコア偏心量の変化分DL4を計測したところ、DL4=0.05μmであった。
従って、DL3,DL4はともに1.0μm以下で基準Aを満たすことから、コア位置演算部17は、位置SL3から位置SL4までの領域におけるコア変形が十分に小さいと判定し、光ファイバ1bのコア変形が接続部6から位置SL3までの距離(図示の例では、位置Sから位置SL3までの70μm)まで広がっていたと判断して、この距離をコア変形の指標値として使用する。
次に、コア位置演算部17は、コア変形が小さい位置SL3から位置SL4までの領域、及び、位置SR2から位置SR3までの領域におけるコア2a,2bの軸線を接続部6まで延長した線を、接続部6付近における仮想コア線5a,5bとして求める。
このあと、コア位置演算部17は、接続部6における仮想コア線5a,5bの中心軸間距離Dを、光ファイバ1a,1bのコアズレ量の真値として算出する。図示の例では、中心軸間距離Dは0.60μmであった。
コア位置演算部17は、コアズレ量を算出すると、下記理論式に代入して光ファイバ1a,1bの接続損失の推定値を算出する。
接続損失(dB)=4.34×(コアズレ量/モードフィールド半径)2
・・・(1)
このようにして、実施の形態3による光ファイバの融着接続装置は通常の光ファイバ1a,1bの融着接続においてもその接続損失を推定することができる。
また、上述した接続部6からコア偏心量の変化分が0.1μmを超える計測位置までの距離(コア変形が大きい領域の軸方向長さ)と接続損失の実測値との関係を予め実験的に求めておき、これから光ファイバ1a,1bを低接続損失で接続する最適なコア変形が大きい領域の軸方向長さ範囲を決定しておき、これをコア位置演算部17の不図示の記憶手段に格納しておく。
コア位置演算部17は、接続部6近傍から軸方向に離れた各計測位置におけるコア偏心量の変化分を計測して、コア変形が大きい領域の軸方向長さを算出する際に、上記最適範囲内にあるか否かを判定して上記実施の形態1、2と同様な方法で加熱量調節を行う。
予め行った実験データによると、光ファイバ1a,1bを低接続損失で接続する最適なコア変形が大きい領域の軸方向長さは、50μmを超えることはなかった。
上述したように、コア変形が大きい領域の軸方向長さは、光ファイバ1aで70μm、光ファイバ1bで50μmであった。そこで、コア位置演算部17は、現状の放電電流値は大きすぎ、且つ、光ファイバ1a,1bの加熱量も均一でないと判断し、放電電流を20mAから16mAに変更するとともに、調心時の突き合わせ位置を光ファイバ1a側に5μm移動した。
以上のように、この実施の形態3によれば、光ファイバ1a,1bの接続部6近傍におけるコア2a,2bの位置と、光ファイバ1a,1bの接続部6近傍からその軸方向に離れて接続前後でコア変形の生じない計測位置におけるコア2a,2bの位置とを計測し、接続前後でコア変形の生じない計測位置にて計測したコアの位置から接続部6近傍でコア変形がないと仮定したときの仮想コア線5a,5bを求め、接続部6近傍における光ファイバ1a,1bの仮想コア線5a,5bの中心軸間距離を示すコアズレ量を算出して、このコアズレ量から光ファイバ1a,1bの接続部6における接続損失の推定値を算出するので、コア変形のない領域を特定して正確なコアズレ量を求めることができ、接続損失を高精度に推定することができるという効果が得られる。
また、この実施の形態3によれば、光ファイバ1a,1bの接続部6近傍からその軸方向に離れた計測位置にて、光ファイバ1a,1bの接続前後における外形3a,3bの位置とコア2a,2bの位置とを計測し、光ファイバ1a,1bの接続部6近傍からその軸方向に離れた各計測位置における光ファイバ1a,1bの外形3a,3bとコア2a,2bとの中心軸間距離の変化量が所定値を超えるか否かを判定して、接続部6から変化量が所定値を超える計測位置までの距離を光ファイバ1a,1bのコア2a,2b変形の指標値として算出するので、外形3a,3bやコア2a,2bの中心軸は光ファイバ1a,1bの側方観察によって容易に計測することができることから、簡易な処理で再現性の高いコア変形の指標値を算出することができるという効果が得られる。
なお、上記実施の形態3では、コア変形のない領域を特定するにあたり、接続部6近傍にあるスライスライン7から順次コア変形度を計測していく例を示したが、接続部6から軸方向に十分離れた位置まで所定の間隔でスライスライン7を最初に設定し、それぞれにおけるコア変形の指標値を同時に計測するようにしてもよい。
また、上記実施の形態3では、通常の光ファイバ1a,1bの融着接続を繰り返す中で、加熱状態の異常検出と調節を随時行う例を示したが、異常検出の段階で通常の融着を中断し、上記実施の形態1に示した放電テストにより加熱状態を精度良く計測して、加熱量の調節を行ってもよい。
さらに、上記実施の形態3では、接続部6の位置Sとして押し込み時における光ファイバ1a,1bの重なり領域の中央部分を定義したが、予め上記実施の形態1で示したコアズレ状態で、光ファイバ1a,1bの融着を行って正確な接続部6の位置Sを求めて、この結果に基づいて通常の融着動作における接続部6の位置Sを定義してもよい(例えば、光ファイバ1aの端面から所定の長さ離れた位置)。
また、上記実施の形態1から3では、コア変形度の指標として、仮想コア線5a,5bからの変位量、コア変形が大きい領域の軸方向長さ、あるいは、最大偏心変化量を使用したが、仮想コア線5a,5bに対するコア変形部の角度などの他の指標であってもよい。
さらに、上記実施の形態1から3では、1本のスライスライン7で計測した1個のコア変形の指標値を求めたが、位置の計測誤差の影響が大きい場合には、同一のスライスライン7にて異なるタイミングで複数回計測する、あるいは複数のスライスライン7にて計測する、などにより複数の位置データを取得して、計測誤差の影響を小さくするために、これらに平均化等の処理を行う。このようにして得た位置データから1個のコア変形の指標値を求めるようにしてもよい。
1a,1b 光ファイバ、2a,2b コア、3a,3b 外形、4a,4b 中心軸、5a,5b 仮想コア線(仮想コア)、6 接続部、7 スライスライン、10 放電電極、11 電極ライン、12a,12b 台、13a,13b クランプ、14 放電制御部、15 顕微鏡カメラ、16 画像処理部、17 コア位置演算部(融着接続損失推定手段)、18 ファイバ位置制御部。