JP4107956B2 - ゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はスチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を主体とするジエン系ゴムに粉末状セルロースを配合してtanδ値をバランスさせウェット特性及び転がり抵抗性をバランスさせたゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
空気入りタイヤのウェット性能を改良すると共に、転がり抵抗を低減させるためにゴムにシリカを配合する技術が知られている。またシリカと同様な作用をする有機配合剤として澱粉(コーンスターチ)を配合することも提案されている(例えば特許文献1及び2参照)。
【0003】
更にゴムにセルロースを配合して氷上摩擦を改良することも提案されており(例えば特許文献3〜6参照)、またセルロース/ケラチン混合物を配合して氷上摩擦力を改良しようとすることも提案されており(例えば特許文献7参照)、更に重荷重タイヤの耐摩耗改良の目的でNRやIRやBRを主成分とし、シリカ5〜45重量部とSiカップリング剤0.5〜4.0重量部とセルロース3〜8重量部を配合することが提案されている(例えば特許文献8参照)。また、ゴムの耐摩耗性及び耐老化性を改良する目的で少量の糖類を配合することも提案されている(特許文献9参照。)
【0004】
【特許文献1】
特開1998−17713号公報
【特許文献2】
特開2001−89599号公報
【特許文献3】
特開1994−240052号公報
【特許文献4】
特開1994−248117号公報
【特許文献5】
特開1994−336538号公報
【特許文献6】
特開2000−129038号公報
【特許文献7】
特開1998−176082号公報
【特許文献8】
特開1999−255966号公報
【特許文献9】
特開平11−71481号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はSBRを主成分とする、特に夏用乗用車タイヤにおいてウェット性能と、転がり抵抗の両性能を良好にバランスさせたゴム組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に従えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)又はSBRを30重量%以上含むジエン系ゴム100重量部及び平均粒子サイズが1〜500μmの粉末状セルロース10〜60重量部と硫黄及びシラノール基を有する硫黄含有シランカップリング剤を、粉末状セルロースの配合量に対して、2〜25重量%を含み、配合成分にシリカを含まないゴム組成物が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明者らはSBRを主体とする夏用乗用車タイヤ用のゴム配合に、粉末状セルロースと適量の硫黄含有シランカップリング剤とを配合して、混練し、好ましくは粉末状セルロースの水酸基と硫黄含有シランカップリング剤が反応する条件にて混練し、そして加硫することによって、低温tanδが高く、高温tanδが低いゴム組成物が得られることを見出した。このゴム組成物をタイヤのトレッド部に用いて空気入りタイヤを製造することによって、良好なウェットスキッドと低転がり抵抗性の両特性が両立したゴム組成物が得られる。
【0008】
本発明に従ったゴム組成物に配合されるゴム成分はSBR又はSBRを主成分として含むジエン系ゴムである。ゴム成分中のSBRの割合は、30重量%以上、好ましくは50〜100重量%である。本発明において用いることができるジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム(NR)、各種ブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム等が挙げられる。ジエン系ゴムは、本発明のタイヤトレッド用として使用する場合には、その低転動抵抗と耐摩耗性、低温性能を両立させて向上するために、平均ガラス転移温度(Tg)が−45℃〜−15℃の範囲にある1種以上のゴムを用いることが好ましい。
【0009】
本発明に従ったゴム組成物に配合されるセルロースは平均粒子サイズ1〜500μm、好ましくは10〜50μmの粉末状のものである。
【0010】
前述の如く、本発明者の目的は、高い摩擦力と低い転がり抵抗を両立させたゴム組成物の提供にある。ところで、かかる目的のためにシリカの配合が知られている。特にカップリング剤との併用によって、ゴムマトリックス中に適度に緩く結合したドメインを持つために、周波数の高い変形条件で高いヒステリシスロス(低温tanδが高い:高ウェット摩擦)、周波数の低い変形条件で低いヒステリシスロス(高温tanδが低い:低ころがり抵抗)を両立させることの提案がある。しかしながら、シランカップリング剤とシリカとの結合は強力なため、補強性能は優れるが、ウェット摩擦性能を大幅に向上させるのには限度があった。そこで本発明者らはよりフィラー/ゴム間の結合がルーズなドメインを生じさせる配合剤が好ましいと考えた。例えばカップリング剤を使用することなく、シリカを配合したり、炭カル、クレー等の増量剤を配合したりすることが考えられる。しかし、これではゴム成分とシリカや増量剤の結合がルーズすぎて、全周波数領域でヒステリシスロスが高くなり、転がり抵抗が大幅に低下し、補強性が不十分で、耐摩耗性能が実用レベルではないという問題がある。本発明者らの研究によって、高周波数領域の振動時にシリカより高いヒステリシスロスを、そして低周波数振動時にシリカなみの低いヒステリシスロス性能を発揮し、低転がり抵抗と高ウェット摩擦力をより高い次元で両立した配合を発明することに成功した。
【0011】
かかる状況下に、本発明者らは天然の粉末セルロースと硫黄含有シランカップリング剤を配合(なおセルロース誘導体は結晶性でなく、熱可塑性なので本発明の目的に合致しない)することによって所望の効果が得られることを見出した。なお、セルロースの平均粒子サイズは1〜500μm、好ましくは10〜50μmである。この粒径が小さすぎるとゴム中への分散が悪くなり、大きすぎると補強性能が悪化し耐摩耗性が悪化するので補強性能を考えると、小さい方が良い。また粉末状形状が球状に近い方が良い。
【0012】
粉末状セルロースの配合量10〜60重量部、好ましくは20〜30重量部(いずれもゴム成分100重量部基準)であり、この配合量が少なすぎると所定の効果が発揮できず、多すぎると耐摩耗性が悪化するので好ましくない。
【0013】
本発明において、粉末状セルロースと硫黄含有シランカップリング剤を配合することによって所望の効果が得られる理由は以下の通りと考える。
1)分子中に多くの水酸基を持つ多糖類は、硫黄含有シランカップリング剤との併用において、シリカと同様に適度にゆるく、適度にしまったドメイン構造をゴム中に形成でき、低転がり抵抗と高摩擦性能の両立を達成できると考える。
【0014】
2)天然セルロースは結晶性であり、かつ熱可塑性でないため、ゴムを補強する性能には優れる(即ち耐摩耗性をそれほど犠牲にしない)。シリカには劣るが、より軟質の多糖類であるデンプンに比較すれば優れた性能が得られる。
【0015】
3)硫黄含有シランカップリング剤との反応によって、シリカはSi−O−Siの結合形態を形成するが、セルロースの場合はSi−O−Cの形態になる。一般的には前者が後者よりも安定であるが、Si−O−Cのように不安定な結合によって、低転がり抵抗と高摩擦性能の両立がより明確となる。つまり、摩擦性能を決定する高周波振動域ではSi−O−Cは安定には存在できず、一時的に解離する。それによってゴムの流動的な性質が強調され、高ヒステリシスロスとなる。一方、転がり抵抗性能を決定する低周波振動域では変形速度が遅いためにSi−O−Cは結合したままで存在することができる。つまり、ここでは弾性的な性質が強調され、低いヒステリシスロスとなる。これらの点において、どの周波数領域でも安定なSi−O−Si結合を持つシリカ配合よりも低転がり抵抗と高摩擦力を両立させる性能にてセルロース配合は優れる。
【0016】
本発明におけるセルロースは、シリカやSiO2 系の鉱物粒子との併用は好ましくない。これは硫黄含有シランカップリング剤配合した場合にはそれとの反応がSi−O−Siの方が安定なので、その反応が優先すると思われる。
【0017】
本発明において使用する球状の粉末セルロースは例えば興人(株)からセルロースビーズとして各種の粒子サイズのものが市販されている。繊維状の粉末セルロースとしては、例えば日本製紙(株)からKCフロックとして各種の粒子サイズのものが市販されている(ただし、粒子サイズが小さいものはもはや繊維の形はしていない)。
【0018】
本発明の態様に従えば、前記セルロースと硫黄含有シランカップリング剤を併用するが、この場合硫黄含有シランカップリング剤の配合量は粉末状セルロースの配合量に対して2〜25重量%が好ましく、7〜12重量%が更に好ましい。
【0019】
本発明において使用する硫黄及びシラノール基を有する硫黄含有シランカップリング剤は、例えばビス−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。
【0020】
本発明に係るゴム組成物には、更に通常の加硫または架橋剤、加硫または架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、充填剤、可塑化剤、軟化剤、その他当該ゴム用に一般的に配合されている各種配合剤を配合することができる。これら添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0022】
実施例1〜3及び比較例1〜2
サンプルの作製
1.7リットル密閉式バンバリーミキサーを用いて、表Iに示す配合(重量部)のうち、加硫促進剤及び硫黄を除く、ゴム、カーボンブラック等の配合剤を5分間配合した後、オープンロールにて、加硫促進剤、硫黄を配合、混練してゴム組成物を得た。次いで、このゴム組成物を、10MPa の圧力下で160℃で20分間加硫して、2mm厚のシートを作製し、tanδの測定に供した。
【0023】
各例におけるtanδの測定方法は、次のとおりである。結果は表Iに示した。
tanδ:東洋精機製作所製レオログラフソリッドを用い、初期歪=10%、動的歪=±2%、周波数20Hzで各温度で粘弾性(試験幅:5mm)を測定した。
【0024】
【表1】
【0025】
【発明の効果】
シリカの持つ粘弾性改良効果は、極性のシラノール基を外に向けた極性構造物質が非極性のゴムマトリックスの中で適度に緩く浮いた状態及びシランカップリング剤によるロングレンジでのゴム/シリカ結合から発現する高周波変形領域での粘り(ウェット性能改善)と、低周波変形領域での弾性確保(RR改善)によるとすると、同じように水酸基を多く持つ有機物質の配合でもシランカップリング剤と併用すれば同様な粘弾性特性が得られることが推測できる。本発明ではこの考えの一つとしてセルロースを硫黄含有シランカップリング剤とともにゴム中に配合し、所定の効果を得るに至った。セルロースは粉体状でかつ小粒径なものが好ましい。一般的に、Si−O−C結合はSi−O−Si結合ほど安定でないため、水酸基を持つ通常の有機物とゴムとをシランカップリング剤で結合できないとされているが、本発明では、硫黄含有シランカップリング剤の配合による高温tanδ低下の効果が確認されており、Si−O−C結合が十分に機能しているものと思われる。
Claims (2)
- スチレン・ブタジエンゴム(SBR)又はSBRを30重量%以上含むジエン系ゴム100重量部及び平均粒子サイズが1〜500μmの粉末状セルロース10〜60重量部と硫黄及びシラノール基を有する硫黄含有シランカップリング剤を、粉末状セルロースの配合量に対して、2〜25重量%を含み、配合成分にシリカを含まないゴム組成物。
- 請求項1に記載のゴム組成物をタイヤトレッド部に用いた空気入りタイヤ。
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- 2002-12-26 JP JP2002377479A patent/JP4107956B2/ja not_active Expired - Fee Related
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