JP4107895B2 - 内接噛合遊星歯車機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、減速機や増速機に用いられる内接噛合遊星歯車機構に関するもので、特に歯形形状に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の内接噛合遊星歯車機構における外歯歯車および内歯歯車の歯形形状は、プロレートエピサイクロイド曲線、プロレートハイポサイクロイド曲線、カーテイトエピサイクロイド曲線あるいはカーテイトハイポサイクロイド曲線によって形成されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、プロレートエピサイクロイド曲線、プロレートハイポサイクロイド曲線、カーテイトエピサイクロイド曲線あるいはカーテイトハイポサイクロイド曲線で歯形が形成された内接噛合遊星歯車機構は、圧力角度が大きいため、伝達効率が低いという不具合があった。
【0004】
【発明の目的】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外歯歯車と内歯歯車の圧力角度を小さくして伝達効率を高めることのできる内接噛合遊星歯車機構の提供にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1の手段〕
請求項1の手段を採用し、外歯歯車および内歯歯車の歯形形状を、ピッチ円サークルの内側の歯形形状をハイポサイクロイド曲線で設けるとともに、ピッチ円サークルの外側の歯形形状をエピサイクロイド曲線で設けることにより、圧力角度を小さくでき、伝達効率を高めることができる。
【0006】
以下においては、外歯歯車の歯数をN、
外歯歯車のピッチ円サークルの直径をφD1 、
内歯歯車の歯数をM、
内歯歯車のピッチ円サークルの直径をφD2 、
外歯歯車の歯形曲線を形成するハイポサイクロイド曲線を描くための転円の直径をφD1 H、
外歯歯車の歯形曲線を形成するエピサイクロイド曲線を描くための転円の直径をφD1 E、
内歯歯車の歯形曲線を形成するハイポサイクロイド曲線を描くための転円の直径をφD2 H、
内歯歯車の歯形曲線を形成するエピサイクロイド曲線を描くための転円の直径をφD2 Eとして説明する。
【0007】
φD1 /N=φD2 /Mの関係を満たす。
【0010】
φD1 H>φD1 Eの関係を満たし、
φD1 H+φD1 E=φD1 /Nの関係を満たし、
φD2 H<φD2 Eの関係を満たし、
φD2 H+φD2 E=φD2 /Mの関係を満たし、
φD1 H=φD2 Eの関係を満たし、
φD1 E=φD2 Hの関係を満たす。
このように設けられることによって、クリアランスが外歯歯車と内歯歯車の双方に形成され、外歯歯車と内歯歯車の干渉を回避できる。
【0011】
〔請求項2の手段〕
請求項2の手段を採用し、外歯歯車においてハイポサイクロイド曲線で描かれる部分の歯形は、そのハイポサイクロイド曲線を描くためのピッチ円サークルから内径方向に向かうに従って幅の広がる逃がし部を備えても良い。
【0012】
〔請求項3の手段〕
請求項3の手段を採用し、内歯歯車においてエピサイクロイド曲線で描かれる部分の歯形は、そのエピサイクロイド曲線を描くためのピッチ円サークルから外径方向に向かうに従って幅の広がる逃がし部を備えても良い。
【0013】
〔請求項4の手段〕
請求項4の手段を採用し、外歯歯車においてハイポサイクロイド曲線で描かれる部分の歯形は、そのハイポサイクロイド曲線を描くためのピッチ円サークルから内径方向に向かうに従って幅の広がる逃がし部を備え、内歯歯車においてエピサイクロイド曲線で描かれる部分の歯形は、そのエピサイクロイド曲線を描くためのピッチ円サークルから外径方向に向かうに従って幅の広がる逃がし部を備えても良い。
【0014】
上記請求項2〜4の手段を採用することによって、トルク伝達に寄与しない歯先部分の接触による摩耗損失を確実に防止できる。
また、逃がし部をグリース溜まりとして利用できるため、グリース切れを防止できる。 さらに、エピサイクロイド曲線とハイポサイクロイド曲線とが滑らかに接続できるため、突出した部分の接触による応力集中を緩和でき、歯面の偏摩耗を防止できる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、実施例および変形例を用いて説明する。
〔実施例〕
本発明が適用された内接噛合遊星歯車機構を図1〜図22を参照して説明する。なお、この実施例では、便宜上、図1左側をフロント(前)、右側をリヤ(後)として説明する。
【0030】
まず、内接噛合遊星歯車機構の概略構造を図1〜図7を参照して説明する。
この実施例の内接噛合遊星歯車機構は、小型且つ薄型の減速機として用いられるものであり、第1軸1と、この第1軸1に設けられた偏心部2を介して第1軸1に対して偏心回転可能な状態で取り付けられた外歯歯車3と、この外歯歯車3が内接噛合する内歯歯車4と、外歯歯車3の自転成分のみを伝達する伝達手段5を介して連結された第2軸6とを備える。
【0031】
この実施例の伝達手段5は、第2軸6と一体に回転するフランジ10の同一円周上に設けた複数の内ピン穴11と、この内ピン穴11にそれぞれ遊嵌し、一端が外歯歯車3に固定され、この外歯歯車3の同一円周上に設けられた複数の内ピン12とによって構成される。
なお、この実施例とは異なり、伝達手段5を、外歯歯車3の同一円周上に設けた複数の内ピン穴11と、この内ピン穴11にそれぞれ遊嵌し、一端が第2軸6と一体に回転するフランジ10に固定され、このフランジ10の同一円周上に設けた複数の内ピン12とによって構成しても良い。
【0032】
減速機として使用する場合、第1軸1は、入力軸であり、フロント側の端部に設けられた第1転がり軸受13(第1軸受に相当する)と、リヤ側の端部に設けられた第2転がり軸受け14とによって回転自在に支持される。なお、第1転がり軸受13は、第2軸6の後端内側において支持されるものであり、第2転がり軸受け14は、リヤハウジング15に支持されるものである。
偏心部2は、第1軸1の回転中心に対して偏心回転して外歯歯車3を揺動回転させる軸であり、偏心部2の外周に配置された第3転がり軸受16を介して外歯歯車3を回転自在に支持するものである。
【0033】
第1軸1と同様に、減速機として使用する場合、第2軸6は、出力軸であり、滑り軸受17を介してフロントハウジング18に対し回転自在に支持される。
ここで、滑り軸受17の軸方向の支持区間xは、第1転がり軸受13の軸方向の支持区間yに対してオーバーラップするように設けられている。このように設けることによって、外歯歯車3と内歯歯車4の噛合にかかる負荷の反力に起因する第1軸1の傾斜を回避できる。
【0034】
外歯歯車3は、上述したように、第3転がり軸受16を介して第1軸1の偏心部2に対して回転自在に支持されるものであり、偏心部2の回転によって内歯歯車4に押しつけられた状態で回転するように構成されている。
内歯歯車4は、フロント面側に形成された固定用打出部19によってフロントハウジング18に固定されるものである。
【0035】
複数の内ピン12は、外歯歯車3のフロント面側に突出する形で設けられている。
複数の内ピン穴11は、第2軸6の後端に設けられたフランジ10に設けられており、内ピン12と内ピン穴11の嵌まり合いによって、外歯歯車3の自転運動が第2軸6に伝えられるように構成されている。
【0036】
次に、図8を参照してサイクロイド曲線の定義を説明する。
サイクロイド曲線は、図8中のa,b,c,a’,b’,c’に示されるように、ピッチ円サークル(基円)の円弧上を外転円もしくは内転円を滑りなく転がしたときの転円の半径方向の一点が描く軌跡である。
このうち、外転円を転がすことで描かれる軌跡が一般にエピサイクロイド曲線(a,b,c)と呼ばれ、内転円を転がすことで描かれる軌跡が一般にハイポサイクロイド曲線(a’,b’,c’)と呼ばれる。
【0037】
具体的には、軌跡を描く点を転円の内側(半径方向内側)に取ったものがプロレートエピサイクロイド曲線(a)、プロレートハイポサイクロイド曲線(a’)と呼ばれ、軌跡を描く点を転円の外側(半径方向外側)に取ったものをカーテイトエピサイクロイド曲線(c)、カーテイトハイポサイクロイド曲線(c’)と呼ばれる。
そして、軌跡を描く点を転円の円弧上に取ったものも、単にエピサイクロイド曲線(b)、ハイポサイクロイド曲線(b’)と呼ばれる。
ここで、本発明で称しているエピサイクロイド曲線、ハイポサイクロイド曲線は、軌跡を描く点を転円の円弧上に取ったエピサイクロイド曲線(b)、ハイポサイクロイド曲線(b’)を指すものである。
【0038】
次に、外歯歯車3および内歯歯車4の歯形形状について説明する。
外歯歯車3および内歯歯車4の歯形形状は、ともにピッチ円サークルの内側の歯形形状がハイポサイクロイド曲線で設けられるとともに、ピッチ円サークルの外側の歯形形状がエピサイクロイド曲線で設けられるものである。
【0039】
具体的な外歯歯車3および内歯歯車4の歯形形状は、
外歯歯車3の歯数をN、
外歯歯車3のピッチ円サークルの直径をφD1 、
内歯歯車4の歯数をM、
内歯歯車4のピッチ円サークルの直径をφD2 、
外歯歯車3の歯形曲線を形成するハイポサイクロイド曲線を描くための転円の直径をφD1 H、
外歯歯車3の歯形曲線を形成するエピサイクロイド曲線を描くための転円の直径をφD1 E、
内歯歯車4の歯形曲線を形成するハイポサイクロイド曲線を描くための転円の直径をφD2 H、
内歯歯車4の歯形曲線を形成するエピサイクロイド曲線を描くための転円の直径をφD2 Eとした場合に、
φD1 /N=φD2 /Mの関係を満し、
φD1 H>φD1 Eの関係を満たし、
φD1 H+φD1 E=φD1 /Nの関係を満たし、
φD2 H<φD2 Eの関係を満たし、
φD2 H+φD2 E=φD2 /Mの関係を満たし、
φD1 H=φD2 Eの関係を満たし、
φD1 E=φD2 Hの関係を満たすように設けられている。
【0040】
つまり、φD1 /N=φD2 /Mの関係を満たし、
φD1 H>φD1 Eの関係を満たし、
φD1 H+φD1 E=φD1 /Nの関係を満たすことにより、
外歯歯車3の歯形形状が図9中実線Aに示すようになり、図9中実線Bに示すクリアランス0の歯形に対して所定のクリアランスΔxが形成される。
【0041】
また、φD1 /N=φD2 /Mの関係を満たし、
φD2 H<φD2 Eの関係を満たし、
φD2 H+φD2 E=φD2 /Mの関係を満たすことにより、
内歯歯車4の歯形形状が図9中実線Cに示すようになり、図9中実線Bに示すクリアランス0の歯形に対して所定のクリアランスΔyが形成される。
【0042】
さらに、φD1 H=φD2 Eの関係を満たし、
φD1 E=φD2 Hの関係を満たすことにより、
外歯歯車3と内歯歯車4にそれぞれ形成されるクリアランスΔx、Δyが等しくなる(Δx=Δy)。
このように設けられることによって、クリアランスが外歯歯車3と内歯歯車4の双方に形成され、外歯歯車3と内歯歯車4の干渉を確実に回避できる。
【0043】
ここで、外歯歯車3の歯形を示す図9中の実線Aは、ピッチ円サークルの外側のエピサイクロイド曲線(図中A1 参照)と、ピッチ円サークルの内側のハイポサイクロイド曲線(図中A2 参照)とを連続したものであり、内歯歯車4の歯形を示す図9中の実線Cは、ピッチ円サークルの外側のエピサイクロイド曲線(図中C1 参照)と、ピッチ円サークルの内側のハイポサイクロイド曲線(図中C2 参照)とが連続したものである。
【0044】
図2〜図7では、外歯歯車3の歯数N=60、内歯歯車4の歯数M=61とした例を開示した。
しかるに、図10では、外歯歯車3と内歯歯車4の接触点β(トルク伝達に付与する部分であり、以下接触点βと称す)の説明のために、外歯歯車3の歯数N=9、内歯歯車4の歯数M=10とした例を開示する。
図10に示すように、接触点βは、外歯歯車3のピッチ円サークルより内径側には、図10中1番上(外歯歯車3と内歯歯車4が径方向に最も接近する部分)の接触点βを除いて存在せず、一番上の接触点βから遠ざかるにつれて接触点βが外歯歯車3の外径方向に近づいてゆき、トルク伝達の影響が小さくなる。そして、図10中の下側では外歯歯車3と内歯歯車4の接触がなくなり、トルク伝達の影響がなくなる。
なお、内歯歯車4に関しては、内歯歯車4のピッチ円サークルより外径方向に接触点βを持つことはない。
【0045】
ここで、図10中に示す一点鎖線Aは、内歯歯車4のハイポサイクロイド曲線よりなる歯中心と、内歯歯車4のピッチ円サークルの中心とを結ぶ線分である。また、図10中に示す一点鎖線Bは、外歯歯車3のエピサイクロイド曲線よりなる歯中心と、外歯歯車3のピッチ円サークルの中心とを結ぶ線分である。
さらに、図10中に示す実線Cは、一点鎖線Aと内歯歯車4のピッチ円サークルの交点と、一点鎖線Bと外歯歯車3のピッチ円サークルの交点とを結ぶ線分である。
そして、トルク伝達に付与する接触点βは、実線Cと歯との交点であって、外歯歯車3のピッチ円サークルの中心点が図中時計回り方向に偏心回転する場合、外歯歯車3のピッチ円サークルの中心点と、内歯歯車4のピッチ円サークルの中心点とを通る線分よりも右側のみに存在する。
【0046】
図11に示されるように、外歯歯車3においてハイポサイクロイド曲線で描かれる部分の歯形には、そのハイポサイクロイド曲線を描くためのピッチ円サークルから内径方向に向かうに従って幅の広がる逃がし部21(図中ハッチングで示す部分)が形成されている。
また、内歯歯車4においてエピサイクロイド曲線で描かれる部分の歯形にも、そのエピサイクロイド曲線を描くためのピッチ円サークルから外径方向に向かうに従って幅の広がる逃がし部22(図中ハッチングで示す部分)が形成されている。
【0047】
このように外歯歯車3および内歯歯車4の双方に逃がし部21、22を設けることによって、トルク伝達に寄与しない歯先部分の接触による摩耗損失を確実に防止できる。
また、逃がし部21、22をグリース溜まりとして利用できるため、外歯歯車3と内歯歯車4の噛合部分のグリース切れを防止できる。
さらに、エピサイクロイド曲線とハイポサイクロイド曲線とが滑らかに接続できるため、突出した部分の接触による応力集中を緩和でき、歯面の偏摩耗を防止できる。
【0048】
次に、図2の矢印Aの部分の拡大図を図12に示す。
第1軸1の回転中心に対する偏心部2の回転中心の偏心量αを、
α={(φD1 /N)/2}×(M−N)
とした場合、外歯歯車3と内歯歯車4が径方向に最も接近する部分(図12参照)における外歯歯車3と内歯歯車4の径方向のクリアランス(Δx+Δy)は、
Δx+Δy=(φD1 H−φD1 E)+(φD2 E−φD2 H)となる。
従って、偏心量αは、α=α+(Δx+Δy)としても問題がないことが分かる。
【0049】
次に、図2の矢印Bの部分の拡大図を図13に示す。
第1軸1の回転中心に対する偏心部2の回転中心の偏心量αを、
α={(φD1 /N)/2}×(M−N)
とした場合、外歯歯車3と内歯歯車4が最も離れる部分(図13参照)における外歯歯車3と内歯歯車4の最接近距離(Δx+Δy)/2は、
(Δx+Δy)/2={(φD1 H−φD1 E)+(φD2 E−φD2 H)}/2となる。
偏心量αは、α=α−(Δx+Δy)としても問題がないことが分かるが、その場合は図12で示した噛み合い部での噛み合い率が低下するため、好ましくない。
【0050】
また、偏心量αは、
{(φD1 /N)/2}×(M−N)以上であり、
{(φD1 /N)/2}×(M−N)+2(φD2 E−φD2 H)以下に設けられる。
このように設けることによって、偏心量αが、歯先のクリアランス量に対して最適なものとなる。
このため、歯面が噛み合う部分での確実な噛み合い状態を実現できるとともに、歯先が接触せずに通り抜ける部分(図13参照)において歯先の干渉が起こらないようにできる。
【0051】
図14〜図16を参照して内ピン穴11と内ピン12の関係を説明する。
内ピン穴11のピッチ円サークルの直径φDPDC-holeと、内ピン12のピッチ円サークルの直径φDPDC-pin とを同一寸法に設けている(φDPDC-hole=φDPDC-pin )。
また、複数の内ピン穴11を、内ピン穴11のピッチ円サークルに対して等角度ピッチで設けるとともに、複数の内ピン12も、内ピン12のピッチ円サークルに対して等角度ピッチで設けている。
そして、内ピン穴11の直径φDholeを、偏心量α+内ピン12の直径φDpin より大きく設けている(φDhole>α+φDpin )。
以上のように設けることによって、偏心量αに対して内ピン12径φDpin と内ピン穴11径φDholeとの寸法関係を最適なものとすることができ、内ピン12と内ピン穴11とのこじりによるトルクムラの発生を防止できる。
【0052】
図17〜図21に内ピン12から内ピン穴11への伝達トルクを示す。
内ピン12から内ピン穴11へトルク伝達を行う接触点γは、図17中において、外歯歯車3のピッチ円サークルの中心点と、内歯歯車4のピッチ円サークルの中心点とを通る線分X−Xよりも右側のみに存在する。
そして、図17の矢印Aの部分における接触点γは図18に示すように内ピン12が内ピン穴11に対して荷重FA を発生し、図17の矢印Bの部分における接触点γは図19に示すように内ピン12が内ピン穴11に対して荷重FB を発生し、図17の矢印Cの部分における接触点γは図20に示すように内ピン12が内ピン穴11に対して荷重FC を発生し、図17の矢印Dの部分における接触点γは図21に示すように内ピン12が内ピン穴11に対して荷重FD を発生する。
【0053】
また、この実施例の内ピン12には、図22に示されるように、内ピン12の内径側および外径側に、内ピン穴11との接触を回避する逃がし部23が設けられている。
このように内ピン12の内径側および外径側に逃がし部23を設けることによって、圧力角度が大きくなる位置関係で内ピン12と内ピン穴11が接触しない構造にでき、機械効率を向上させることができる。また、逃がし部23をグリース溜まりとして利用できるため、内ピン12と内ピン穴11の接触部分におけるグリース切れを防止できる。
なお、この実施例では、内ピン12の内径側および外径側に逃がし部23を設けた例を示したが、この実施例とは異なり、内ピン穴11の内径側および外径側に、内ピン12との接触を回避する逃がし部23を設けても良い。
【0054】
(実施例の効果)
上記で示した内接噛合遊星歯車機構における外歯歯車3および内歯歯車4の歯形形状を、ピッチ円サークルの内側の歯形形状をハイポサイクロイド曲線で設けるとともに、ピッチ円サークルの外側の歯形形状をエピサイクロイド曲線で設けることにより、外歯歯車3と内歯歯車4の接触点γにおける圧力角度を小さくでき、伝達効率を高めることができる。
【0055】
〔変形例〕
上記の実施例では、内歯歯車4を固定し、第1軸1を入力軸、第2軸6を出力軸とした例を示したが、第2軸6を固定し、第1軸1を入力軸、内歯歯車4を出力軸とすることによって減速機を構成しても良い。また、これらの入力軸と出力軸を逆転させることにより、増速機を構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】内接噛合遊星歯車機構の断面図である。
【図2】図1のA方向(後側)から見た図である。
【図3】図1のB方向(前側)から見た図である。
【図4】内接噛合遊星歯車機構を後側から見た斜視図である。
【図5】内接噛合遊星歯車機構を前側から見た斜視図である。
【図6】内接噛合遊星歯車機構を後側から見た分解斜視図である。
【図7】内接噛合遊星歯車機構を前側から見た分解斜視図である。
【図8】各種サイクロイド曲線の説明図である。
【図9】外歯歯車および内歯歯車の歯形形状を示す図である。
【図10】外歯歯車と内歯歯車の接触点の説明図である。
【図11】外歯歯車および内歯歯車に設けた逃がし部の説明図である。
【図12】図2のA部分の拡大図である。
【図13】図2のB部分の拡大図である。
【図14】外歯歯車を前側から見た図である。
【図15】フランジが設けられた第2軸を前側から見た図である。
【図16】内ピンのピッチ円サークルと内ピン穴のピッチ円サークルを示す内接噛合遊星歯車機構を前側から見た図である。
【図17】内ピンと内ピン穴の接触点、および内ピン穴にかかる荷重とその分力方向を示す図である。
【図18】図17のA部分の拡大図である。
【図19】図17のB部分の拡大図である。
【図20】図17のC部分の拡大図である。
【図21】図17のD部分の拡大図である。
【図22】内ピンに設けた逃がし部の説明図である。
【符号の説明】
1 第1軸
2 偏心部
3 外歯歯車
4 内歯歯車
5 伝達手段
6 第2軸
10 フランジ
11 内ピン穴
12 内ピン
13 第1転がり軸受(第1軸受)
17 滑り軸受
21 外歯歯車の逃がし部
22 内歯歯車の逃がし部
23 内ピンの逃がし部
α 偏心部の偏心量
x 滑り軸受の軸方向の支持区間
y 第1転がり軸受の支持区間
N 外歯歯車の歯数
M 内歯歯車の歯数
φD1 外歯歯車のピッチ円サークルの直径
φD2 内歯歯車のピッチ円サークルの直径
φD1 H 外歯歯車の歯形曲線を形成するハイポサイクロイド曲線を描くためのの転円の直径
φD1 E 外歯歯車の歯形曲線を形成するエピサイクロイド曲線を描くための転円の直径
φD2 H 内歯歯車の歯形曲線を形成するハイポサイクロイド曲線を描くための転円の直径
φD2 E 内歯歯車の歯形曲線を形成するエピサイクロイド曲線を描くための転円の直径
φDPDC-hole 複数の内ピン穴のピッチ円サークルの直径
φDPDC-pin 複数の内ピンのピッチ円サークルの直径
φDhole 内ピン穴の直径
φDpin 内ピンの直径
Claims (4)
- 第1軸と、
この第1軸に設けられた偏心部を介して前記第1軸に対して偏心回転可能な状態で取り付けられた外歯歯車と、
この外歯歯車が内接噛合する内歯歯車と、
前記外歯歯車の自転成分のみを伝達する伝達手段を介して連結された第2軸と、を備えた内接噛合遊星歯車機構であって、
前記外歯歯車および前記内歯歯車の歯形形状は、
ピッチ円サークルの内側の歯形形状がハイポサイクロイド曲線で設けられるとともに、ピッチ円サークルの外側の歯形形状がエピサイクロイド曲線で設けられ、
前記外歯歯車の歯数をN、
前記外歯歯車のピッチ円サークルの直径をφD 1 、
前記内歯歯車の歯数をM、
前記内歯歯車のピッチ円サークルの直径をφD 2 、
前記外歯歯車の歯形曲線を形成するハイポサイクロイド曲線を描くための転円の直径をφD 1 H、
前記外歯歯車の歯形曲線を形成するエピサイクロイド曲線を描くための転円の直径をφD 1 E、
前記内歯歯車の歯形曲線を形成するハイポサイクロイド曲線を描くための転円の直径をφD 2 H、
前記内歯歯車の歯形曲線を形成するエピサイクロイド曲線を描くための転円の直径をφD 2 Eとした場合に、
φD 1 /N=φD 2 /Mの関係を満たし、
φD 1 H>φD 1 Eの関係を満たし、
φD 1 H+φD 1 E=φD 1 /Nの関係を満たし、
φD 2 H<φD 2 Eの関係を満たし、
φD 2 H+φD 2 E=φD 2 /Mの関係を満たし、
φD 1 H=φD 2 Eの関係を満たし、
φD 1 E=φD 2 Hの関係を満たすことを特徴とする内接噛合遊星歯車機構。 - 請求項1に記載の内接噛合遊星歯車機構において、
前記外歯歯車においてハイポサイクロイド曲線で描かれる部分の歯形は、そのハイポサイクロイド曲線を描くためのピッチ円サークルから内径方向に向かうに従って幅の広がる逃がし部を備えることを特徴とする内接噛合遊星歯車機構。 - 請求項1に記載の内接噛合遊星歯車機構において、
前記内歯歯車においてエピサイクロイド曲線で描かれる部分の歯形は、そのエピサイクロイド曲線を描くためのピッチ円サークルから外径方向に向かうに従って幅の広がる逃がし部を備えることを特徴とする内接噛合遊星歯車機構。 - 請求項1に記載の内接噛合遊星歯車機構において、
前記外歯歯車においてハイポサイクロイド曲線で描かれる部分の歯形は、そのハイポサイクロイド曲線を描くためのピッチ円サークルから内径方向に向かうに従って幅の広がる逃がし部を備え、
前記内歯歯車においてエピサイクロイド曲線で描かれる部分の歯形は、そのエピサイクロイド曲線を描くためのピッチ円サークルから外径方向に向かうに従って幅の広がる逃がし部を備えることを特徴とする内接噛合遊星歯車機構。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002202936A JP4107895B2 (ja) | 2002-07-11 | 2002-07-11 | 内接噛合遊星歯車機構 |
Applications Claiming Priority (1)
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