JP4107726B2 - 防水工事用ブローンアスファルトの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は防水工事用ブローンアスファルトの製造方法に関し、詳しくは防水工事用ブローンアスファルトを高温で加熱溶融する際に軟化点低下が起こり難く、また加工してルーフィング製品にした場合油じみやひび割れが起こり難く、かつ現場施工時に足跡や損壊が起こり難い、防水工事用として適切なブローンアスファルトの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
防水工事用ブローンアスファルトは、日本工業規格(JIS K 2207)に用途別に1種から4種まで分類されており、最も汎用されているのは3種である。これらの製造方法については特に規定されてはいないが、一般には石油の減圧蒸留残渣油に減圧蒸留留出油や溶剤脱瀝油等を適宜組み合わせて原料とし、ブローンアスファルト製造装置により、200℃〜300℃の温度下で空気を吹き込み製造されている。この空気吹き込み工程はブローイングと称され、原料に触媒が添加されてブローイングを行う場合は触媒ブローイングと称される。こうして製造されたブローンアスファルトは当然のことながら規格に合格しているが、ユーザーとしては規格項目を満足しているだけでは十分ではなく、規格にはない実用上の性能(後述)を重要視している。しかし現製品ではそれらの多面的な性能を十分満足するような製造がなされていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようにして製造された防水工事用ブローンアスファルトは一部はルーフィング製造業者によって加工されてルーフィング製品となり、一部は袋詰された状態でビルの屋上等の防水工事現場に運ばれ、そこで高温に加熱溶解されて防水工事に供される。防水工事用ブローンアスファルトの第一の問題点は、ルーフィング製品にした場合に起こる油じみという現象である。これは気温の高い夏場にルーフィング製品を製造後倉庫内等に保管しておくと、アスファルト中の油分がルーフィングの表面にしみ出す現象で、時間の経過とともに色が黒ずみ、商品価値を低下させるものである。
【0004】
第二の問題点は、冬季にルーフィング製品になったものを使用する際や施工後に起こるひび割れという問題である。これは巻物状になったルーフィング製品を施工時に開巻して使用する際、芯の近くの部分でひび割れが起こったり、また施工後熱収縮によりひびが入ったりする現象であり、アスファルトとしては低温での可撓性の問題である。ルーフィング製品にとってひび割れは漏水の直接の原因となることでもあり、確実に起こらないことが望ましい。
【0005】
第三の問題点は、ルーフィング製品の変形し易さの問題であり、アスファルトの性状としては軟化点の問題である。すなわち、軟化点が低いアスファルトを材料にして製造されたルーフィング製品は、気温が高い時期には現場施工の際に工事人の足跡や部分的損壊等の変形が起こり易い。したがってルーフィング製品の基材となるアスファルトはある程度まで軟化点が高いことが必要である。しかし現在市場にでている防水工事用アスファルトの軟化点は107℃以下のものがかなりあり、実用上十分満足するものではない。
【0006】
第四の問題点はアスファルト自体の加熱安定性の問題である。ビルの屋上等における防水工事ではルーフィングを重ね合わせて防水工事が行われるが、その際ルーフィング同士の接着やルーフィングとコンクリート面との接着には防水工事用アスファルトを加熱溶融して使用する。アスファルトの溶融は加熱釜にアスファルトを入れて下部からガスバーナーで加熱し、260℃〜300℃程度にまで昇温させて行われるが、その時アスファルトは局部的な加熱を受けるため、加熱安定性の悪いアスファルトは性状変化が大きくなり、軟化点の低下や針入度の増加が起こり、いわゆる柔らかくなってしまう。このようなアスファルトを使用して貼り付け施工を行うと施工後に端部の立ち上がり部分がだれ易くなり漏水の原因になり易い。したがって加熱時に性状変化の少ない、いわゆる加熱安定性の優れたアスファルトが望まれている。高品質な防水工事用ブローンアスファルトを製造するには、以上の四つの問題点を同時に解決することが課題である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の四つの課題を同時に解決するために鋭意研究を重ねた結果、組成的に特定範囲の材料を原料として使用し、限定された反応温度でブローイング又は触媒ブローイングして反応させ、針入度及び軟化点を一定範囲に限定して製造することにより、これらの課題をいずれも同時に解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
1.針入度が28〜37、軟化点が108℃〜117℃、組成分析による飽和分含有量が30質量%以下、加熱安定性試験後のだれ長さが3以下である防水工事用ブローンアスファルトの製造方法において、減圧蒸留残渣油と減圧蒸留留出油との混合物、減圧蒸留残渣油と水素化脱硫処理油の減圧蒸留残渣油との混合物、又は減圧蒸留残渣油と溶剤脱瀝油との混合物で、その組成の飽和分+アスファルテンと芳香族分+レジンとの比が0.50〜0.60の範囲内で、且つ飽和分と芳香族分+レジンとの比が0.50以下である材料を原料とし、反応温度270℃〜290℃でブローイング又は触媒ブローイングすることを特徴とする防水工事用ブローンアスファルトの製造方法。
【0009】
また、参考発明として以下の構成が挙げられる。
針入度が28〜37、軟化点が108℃〜117℃、組成分析による飽和分含有量が30質量%以下、加熱安定性試験後のだれ長さが3以下であることを特徴とする防水工事用ブローンアスファルト。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に関して使用する組成の名称及び分析方法は石油学会規格JPI−5S−22−33の「アスファルトのカラムクロマトグラフィーによる組成分析法」に基づくものである。すなわちアスファルテンとはn−ヘプタンに不溶でトルエンに可溶の成分をいい、飽和分とはn−ヘプタンに可溶の成分のうち、アルミナカラムクロマトグラムによりn−ヘプタンで展開溶出する物質をいう。芳香族分とはn−ヘプタンに可溶の成分のうちアルミナカラムクロマトグラムにより飽和分の次にトルエンで展開溶出する物質をいう。レジンとはn−ヘプタンに可溶の成分のうち、アルミナカラムクロマトグラムにより飽和分、芳香族分の次にメタノールとトルエンで展開溶出する物質をいう。
【0011】
ブローンアスファルトを製造する場合の原料は、防水工事用に限らず、一般には上述のように石油の減圧蒸留残渣に減圧蒸留留出油や溶剤脱瀝油等のいわゆるカッター材を混合したものを用いる。その際ある程度まではカッター材量が多いほど同一針入度に対する軟化点は高くなり、いわゆる針入度指数の高い製品が得られる。しかしカッター材量の多い原料から得られたブローンアスファルトを用いてルーフィング製品を製造すると、夏季の気温の高い時期にルーフィング表面に油じみが多く生じ易くなる欠点がある。一方カッター材量が少な過ぎると、ブローイング時に軟化点が上がり難くなり、得られるブローンアスファルトは同一針入度に対する軟化点が低くなり、針入度指数の低い製品となる。またこうした原料を更にブローン化度を高めれば軟化点を上げることはできるが、針入度は更に小さいものになる。
【0012】
軟化点が低いブローンアスファルトは、ルーフィング製品に加工した場合に上述のように変形や損壊が起こり易く、また針入度が小さいと低温でひび割れし易くなる欠点がある。したがってルーフィング製品に加工した場合に、ひび割れが起こり難く変形や損壊も起こり難く且つ油じみも少なくなるようにするには、原料中のカッター材を選択して使用するか又はカッター材量を調整して配合し、製品の針入度を小さくすることなく軟化点を高めるような方法で製造する必要がある。
【0013】
本発明者らは製品の油じみ量と原料組成との関係及び原料組成とブローイング時の軟化点上昇度合いとの関係に関して鋭意研究を重ねた結果、これらの間に密接な関係があることを見出し理論的に原料の最適配合量を決定する方法を考案した。
【0014】
すなわち製造するブローンアスファルト製品の針入度−軟化点域が同程度の場合には、製品の油じみ性は、原料の飽和分と芳香族分+レジンとの比の値(S値)と密接な関係があり、この値が大きくなるほど製品の油じみは大きくなる。また原料組成とブローイング時の軟化点上昇度合いとの関係については、原料の飽和分+アスファルテンと芳香族分+レジンとの比の値(E値)が大きくなるほどブローイング時の一定針入度に対する軟化点は高くなる傾向がある。
【0015】
本発明者らは油じみ試験として国内で実施されている簡便な方法を使用して研究を行った。すなわち特殊紙を10枚重ねた上に、予め缶蓋状にほぼ円形状に採取したアスファルト試料を接触させておき、100gの荷重をかけて120時間60℃に静置する方法である。結果の評価はアスファルトと接触した紙の周囲にしみ出した油分の幅で表示した。
【0016】
多くの実験結果から、実際ルーフィング製品に影響の少ない程度の油じみであるためには、原料のS値は少なくとも0.50以下である必要があり、またE値は0.60以下であることが必要である。
【0017】
一方,E値の下限は、一定針入度における目標軟化点の下限値から決定することができる。上述のように原料中のカッター材量を少なくすればE値は小さくなり、ブローイング時の一定針入度における軟化点は低くなる。軟化点が目標に達しない場合には、触媒を添加してブローイングすることにより同一針入度における軟化点を高めることができる。したがって、触媒量との兼ね合いで原料のE値の下限を決定することになる。高品質防水工事用ブローンアスファルトとしては、上述の理由から、軟化点が少なくとも108℃以上必要であり、針入度は少なくとも28以上が必要である(後述)。本発明者らは数多くの実験結果から、触媒ブローイングを含めた製造方法によりこれらの性状を有する製品にするためには、原料のE値は少なくとも0.50以上必要であることを見出した。
【0018】
以上の組成と油じみ性の関係及び組成と軟化点上昇度合いとの関係から、原料組成としては、E値が0.50〜0.60で、且つS値が0.50以下の材料を使用する必要がある。
触媒ブローイングを行う場合に使用する触媒としては一般的にリン酸、ポリリン酸等が使用されているが、本発明においてもそのいずれでも良い。
【0019】
ブローンアスファルト製品の性状、性能に関係する製造要素として原料の調製に次いで大切なものは製造時の反応温度であり、これは製品の加熱安定性と関係がある。
【0020】
防水工事用アスファルトは、ビルの屋上等での工事に際して使用される場合には260℃〜300℃に2〜5時間加熱される。この間加熱されたアスファルトは軟化点の低下や針入度の増加等の性状変化を余儀なくされるが、その程度は製造時の反応温度が大きく影響する。すなわち反応温度を低くして製造した場合には、使用時に上記のような高温度に加熱すると性状変化が大きくなる。一方、反応温度を高くして製造した場合には、使用時の加熱温度との差も小さく、上記のような高温に加熱されても性状変化が小さくて済む。ブローンアスファルトを製造する場合の反応温度は240℃〜290℃の範囲が一般的で、これ以上の高温では分解反応が起こって軟化点が上がり難くなったり、異常反応が起こって危険である。したがって上記のように加熱安定性を考慮すると上記温度範囲の上方すなわち270℃〜290℃が適当である。
【0021】
JIS K 2207に規定されている防水工事用アスファルトは1種から4種まで4種類あるが、最も汎用されるのは3種で、4種は寒冷地用として分類されている。3種の場合の針入度は20〜40、軟化点は100℃以上となっている。したがって針入度、軟化点の両規格だけに限っていえば、この範囲の数値であれば規格を満足する製品ということになり、実際市場にでているものは針入度20〜30、軟化点100℃〜110℃の範囲のものが殆どである。しかし、この両性状は実際の防水工事やルーフィングとしての性能ときわめて密接な関係を有している。すなわち針入度は低温折り曲げ性と関係があり、軟化点は工事後のだれと関係がある。
【0022】
前述のように、防水工事用アスファルトを用いて巻物状のルーフィング製品を製造し、これを冬季工事の際巻きほぐす時、芯の近くになるとひび割れが発生する場合がある。このひび割れはアスファルト自体の低温における可撓性の問題である。本性能の評価方法としては、JIS A 6013の「改質アスファルトルーフィング」中に「折り曲げ性能」の測定方法が規定されており、試料がブローンアスファルトの場合も同方法が有効である。この方法により評価すると、防水工事用ブローンアスファルトの低温での折り曲げ性は針入度と密接に関係しており、針入度が大きいほど折り曲げ可能温度は低くなる。
【0023】
実際、巻物状のルーフィングが冬季にひび割れが起こらないためには、基材として使用する防水工事用アスファルトの針入度は少なくとも28以上であることが必要である。
【0024】
上述のように軟化点は工事後のだれと密接な関係がある。ビルの屋上等での防水工事ではルーフィングシートを3〜5枚を重ね合わせるが、その際コーナーの立ち上がりの部分は特に軟化点の高いものが有効である。それは軟化点が低いと立ち上がった部分の“だれ”が生じてやがてその部分からの漏水の可能性が出てくるからである。したがって軟化点は高い方が良いが高すぎると工事し難いという難点も出てくる。また製造上、針入度との関係から高針入度、高軟化点となった場合には高針入度指数となり、ゲル構造が発達して油分を分離し易くなり、油じみを多くさせる原因ともなる。そこで油じみ性、低温折り曲げ性の両性能を考慮して針入度は28〜37、軟化点は108℃〜117℃が適当である。
【0025】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明する。なお、本発明はこれら例によって制限されるものではない。
実施例を表1に、比較例を表2に示す。なお性状のうち、針入度、軟化点、フラースぜい化点、だれ長さ、伸度、加熱安定性は、いずれもJIS K 2207により測定した。
【0026】
油じみ性試験は次のようにして行った。すなわち金属平板の上に一辺が8cmの正方形の試験紙を10枚重ねて置く。一方表面積12.6cm2の缶蓋の上に試料5.0gを溶融状態で採取し、これを上記の10枚重ねの試験紙の上に試料が接触するようにしておき、この上に100gの荷重をかけてセットする。このセットを60℃のオーブン中に120時間静置する。試験の評価はアスファルト試料と接触した試験紙に同心円状にしみ出した油分のしみ出し部分を4方向からノギスを用いて測定し、それらの平均値をしみ出し幅として表示した。
【0027】
低温折り曲げ性試験はJIS A 6013「改質アスファルトルーフィング」中の「折り曲げ性能」に規定の方法によって行った。ただし試験結果は折り曲げ可能な最低温度を耐折温度として表示した。
【0028】
実施例1
ブローン原料として原油の減圧蒸留残渣油(1)と減圧蒸留留出油(1)とを組み合わせ、その組成の飽和分+アスファルテンと芳香族分+レジンとの比(E値)が0.54になったもので、これを反応温度280℃で触媒ブローイングし、針入度30、軟化点109.0℃のブローンアスファルトが得られた。
本品の油じみ試験におけるしみ出し幅は比較的小さく、低温折り曲げ試験における耐折温度も比較的低い。したがってルーフィングに加工した場合の油じみやひび割れの可能性も低いことが期待できる。
また加熱前の軟化点が比較的高く、加熱安定性試験による軟化点低下も比較的小さく、試験後の軟化点が104℃を有していることから、ルーフィング製品に加工後夏期に工事した場合にも軟化し難く、足跡や部分的損壊も起こり難いことや防水工事で貼り付け用に使用した場合にも端部の立ち上がり部分のだれ等も起こりにくいことが期待できる。
【0029】
実施例2
ブローン原料として原油の減圧蒸留残渣油(2)と減圧蒸留留出油(2)とを組み合わせ、その組成のE値が0.59になったもので、これを反応温度280℃で触媒ブローイングし、針入度31、軟化点112.0℃のブローンアスファルトが得られた。本品の油じみ試験におけるしみ出し幅はやや大きいものの低温折り曲げ試験における耐折温度が比較的低く、したがってルーフィング製品になった場合の油じみやひび割れも起こりにくいことが期待できる。また加熱前の軟化点がかなり高く、加熱安定性試験後もあまり低下せず、したがってルーフィング製品に加工後夏期の工事の際にも足跡や部分的損壊も起こりにくく、防水工事で貼り付け用に使用した場合にも端部のだれが起こりにくいことが期待できる。
【0030】
【表1】
【0031】
実施例3
ブローン原料として減圧蒸留残渣油(2)と水素化脱硫処理油の減圧蒸留残渣とを組み合わせ、その組成のE値が0.60のものを280℃で触媒ブローイングし、針入度36、軟化点115.0℃のブローンアスファルトが得られた。本品は油じみ試験におけるしみ出し幅が若干大きいが、低温折り曲げ試験における耐折温度はかなり低く、また軟化点は加熱安定性試験前後とも比較的高く、またその変化も小さく、したがって上記の2例同様本発明の4つの目標を満足したアスファルトということができる。
【0032】
実施例4
ブローン原料として減圧蒸留残渣油(1)と減圧蒸留留出油(2)とを組み合わせ、その組成のE値が0.56になったものを280℃で触媒ブローイングし、針入度32、軟化点111.0℃のブローンアスファルトが得られた。本品は油じみ試験におけるしみ出し幅と低温折り曲げ試験における耐折温度との両性能が比較的よくバランスがとれている。また加熱安定性試験後の軟化点もあまり低下せず値自体が比較的高い。同試験後のだれ長さも比較的小さく、ルーフィング原料及び防水工事用として理想的なアスファルトということができる。
【0033】
実施例5
ブローン原料として減圧蒸留残渣油(1)と脱瀝油とを組み合わせ、その組成のE値が0.60のものを280℃で触媒ブローイングし、針入度35、軟化点111.0℃のブローンアスファルトが得られた。本品も油じみ試験や低温折り曲げ試験における効果が良好であり、加熱安定性試験前後の軟化点変化も比較的小さく、また加熱後のだれ長さも小さいことから、ルーフィング原料及び防水工事用のいずれの場合も優れたアスファルトということができる。
【0034】
比較例1
ブローン原料として減圧蒸留残渣油(1)と減圧蒸留留出油(1)とを組み合わせ、その組成のE値が本発明の特許請求の範囲外の0.47になったものを、反応温度280℃で無触媒ブローイングし、製品として針入度21、軟化点98.0℃のものが得られた。本試料の両性状はいずれも本発明の特許請求の範囲外のもので、針入度はJIS K 2207に規定する下限に近く、低温折り曲げ試験における耐折温度は+10℃と極めて高い。これは本試料を材料にしてルーフィング製品に加工した場合、冬期にひび割れが起こるおそれが生じる。
【0035】
比較例2
ブローン原料として減圧蒸留残渣油(2)と減圧蒸留留出油(2)とを組み合わせ、その組成のE値が本発明の特許請求の範囲外の0.67になったものを触媒ブローイングしたものである。得られた製品は針入度33、軟化点117.0℃で加熱安定性試験後の軟化点、だれ長さとも優れているが、組成的な影響から油分のしみ出しがかなり大きく、ルーフィング製品に加工した場合、夏期の油じみの発生が懸念される。
【0036】
比較例3
ブローン原料として減圧蒸留残渣油(1)と減圧蒸留留出油(2)とを組み合わせ、その組成のE値が本発明の特許請求の範囲内の0.56になったもので、これを本発明の特許請求の範囲外の240℃でブローイングを行った結果である。得られたブローンアスファルトは針入度33、軟化点113.0℃で油分のしみ出しも少なく、耐折温度も低いが、加熱安定性試験後の軟化点がかなり低下し、加熱後のだれ長さが大きくなっている。これは実際防水工事に使用した場合に端部の立ち上がり部分がだれ易くなり、その部分からの漏水が懸念される。
【0037】
【表2】
【0038】
比較例4
ブローン原料として減圧蒸留残渣油(1)と脱瀝油とを組み合わせ、その組成のE値が本発明の特許請求の範囲外の0.64になったものを280℃で触媒ブローイングした結果である。得られた製品は加熱安定性における軟化点変化が小さく、したがって加熱後のだれ長さが優れ、耐折温度も優れているが、原料の組成的な影響及び製品の軟化点が高すぎて高針入度指数の製品になったことから油じみ試験におけるしみ出し幅が大きくなっている。
【0039】
表1から明らかなように、実施例1〜5で示した本発明の特許請求の範囲の原料組成、反応温度で製造し、製品性状も本発明の特許請求の範囲内にある製品はいずれも防水工事用アスファルトとしての多面的に優れた性能を有している。これに対し、比較例1〜4の条件下で製造した場合又は製品性状とした場合には実用性能面のいずれかで劣るということができる。
【0040】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の条件下で製造した防水工事用ブローンアスファルトは、加熱時、ルーフィングへの加工時及びルーフィング施工時の各段階において従来問題視されていた点を同時に解決した高品質アスファルトであり、アスファルトを基材にした防水関連の一連の工程中で一貫して優れた性能を提供するものである。従来の防水工事用アスファルトはこれらの工程中のいずれかに欠陥を呈したが、それは基材となる防水工事用アスファルトの製造方法に起因している。
【0041】
本発明による製造方法で製造した防水工事用アスファルトを使用することにより、油じみの少ない、いわゆる色相変化の少ないルーフィングが製造でき、ルーフィング製品を低温下で開巻した場合にもひび割れの発生が起こり難く、また防水工事現場にてルーフィングの接着等に使用した場合にも難なく工事を行うことが期待でき、かつ施工後もだれ等の問題の発生も起こりにくいという格別の効果が期待できる。
Claims (1)
- 針入度が28〜37、軟化点が108℃〜117℃、組成分析による飽和分含有量が30質量%以下、加熱安定性試験後のだれ長さが3以下である防水工事用ブローンアスファルトの製造方法において、減圧蒸留残渣油と減圧蒸留留出油との混合物、減圧蒸留残渣油と水素化脱硫処理油の減圧蒸留残渣油との混合物、又は減圧蒸留残渣油と溶剤脱瀝油との混合物で、その組成の飽和分+アスファルテンと芳香族分+レジンとの比が0.50〜0.60の範囲内で、且つ飽和分と芳香族分+レジンとの比が0.50以下である材料を原料とし、反応温度270℃〜290℃でブローイング又は触媒ブローイングすることを特徴とする防水工事用ブローンアスファルトの製造方法。
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