JP4107190B2 - 光ディスク装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光ディスク装置、特に光ディスクに存在する傷や面振れ、偏心等への対処に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、CDやDVD等の光ディスクに記録されたデータを読み出して再生する、あるいはデータを記録する光ディスク装置が知られている。光ディスク装置においては、光ディスクの再生RF信号からフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を生成し、これらに基づいてフォーカスサーボ制御及びトラッキングサーボ制御を行ってオンフォーカス状態及びオントラック状態に維持するが、光ディスクの面振れや偏心が規格を超える程度に大きい場合(市場には多くのメーカから多種多様な光ディスクが供給されるため、規格外ディスクも少なからず存在するのが実状)、通常のサーボゲインでは追従できずにフォーカス外れあるいはトラッキング外れを生じてしまう。
【0003】
そこで、下記に示す従来技術では、光ディスクの面振れ量あるいは偏心量を検出し、検出結果に基づいてサーボ増幅器の増幅率を変化させることが記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−147392号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、光ディスクには面振れや偏心だけでなく、スクラッチ等の傷や汚れも存在する。面振れや偏心の存在を考慮してサーボ増幅器の増幅率を上げてしまうと、サーボ系が傷等に敏感に追従する結果、サーボが外れてしまう事態も想定される。
【0006】
図6には、光ディスクにデータを記録する場合の、サーボゲインと追従特性との関係が示されている。図6(A)はサーボゲインが高い(H)場合、図6(B)はサーボゲインが中程度(M)の場合、図6(C)はサーボゲインが低い(L)場合の追従特性であり、図6(D)はそれぞれの場合の記録品質が示されている。傷がなく面振れ等も規格内である光ディスクでは、サーボゲインを中程度Mに設定することでデータの記録を行うことができる。一方、内周部分に傷を有し、かつ外周部分に大きな面振れ及び偏心を有する光ディスクの場合、中程度のサーボゲインでは内周部分で傷の影響を受けるとともに、外周部分でも外乱のため追従性能が低下する。
【0007】
そこで、上記従来技術のように、面振れの存在を考慮してサーボゲインを増大させると、外周部分では確かに追従性能は向上するが、内周部分では傷に対して過剰にサーボ制御が実行される結果、光ピックアップがはじき飛ばされてデータ記録不能となってしまう。一方、光ディスクの傷のみを考慮してサーボゲインを減少させると、内周部分では傷の影響を受けにくくなるものの、外周部分では追従性能が劣化してデータ記録不能となってしまう。
【0008】
本発明の目的は、光ディスクに存在する傷及び外乱のいずれをも考慮して、より最適なサーボ制御を行いデータの記録品質あるいは再生品質を向上させる光ディスク装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、光ディスクに対してデータの記録あるいは再生を行う光ディスク装置であって、前記光ディスクの面振れや偏心等のフォーカス制御及びトラッキング制御に与える外乱と前記光ディスクの傷とに基づいてサーボゲインを設定する設定手段と、前記サーボゲインに基づきフォーカス制御及びトラッキング制御を行うサーボ制御手段とを有し、前記設定手段は、前記傷及び前記外乱が存在しない場合には前記サーボゲインをデフォルト値に維持し、前記傷が存在し前記外乱が存在しない場合には前記サーボゲインをデフォルト値から減少させ、前記傷が存在せず前記外乱が存在する場合には前記サーボゲインを前記デフォルト値から増大させ、前記傷が存在し前記外乱が存在する場合には前記サーボゲインを前記デフォルト値から増大させ、さらに、前記傷を優先するモードを設定する傷優先モード設定手段を有し、前記設定手段は、前記モードが設定された場合に、設定後の前記サーボゲインをさらに減少させ、前記傷が存在し前記外乱が存在する場合に前記サーボゲインを前記デフォルト値に維持することを特徴とする
【0014】
また、本発明において、前記設定手段は、前記光ディスクの外周部分では設定後の前記サーボゲインを内周部分よりもさらに増大させてもよい。一般に外乱は光ディスクの内周部よりも外周部において顕著となる。外周部においてサーボゲインを増大させることで、外周部の外乱に対応する。
【0015】
また、本発明は、光ディスクに対してデータの記録あるいは再生を行う光ディスク装置であって、前記光ディスクの傷の有無を設定する手段と、前記光ディスクの外乱の有無を設定する手段と、前記光ディスクの傷あるいは外乱のいずれを優先するかを設定する手段と、前記傷の有無、外乱の有無、及び優先順位に応じてサーボゲインを調整する調整手段であって、前記傷が存在し、かつ前記外乱が存在する場合であって外乱優先の場合には前記サーボゲインを増大調整し、前記傷が存在し、かつ前記外乱が存在する場合であって傷優先の場合には前記サーボゲインを通常値に維持する調整手段とを有する。傷及び外乱の有無のみならず、傷と外乱の優先度に応じてサーボゲインを調整することで、適応的にサーボゲインを設定する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1には、本実施形態に係る光ディスク装置の全体構成図が示されている。CDやDVD等の再生専用あるいは記録可能な光ディスク10はスピンドルモータ(SPM)12により回転駆動される。スピンドルモータSPM12は、ドライバ14で駆動され、ドライバ14はサーボプロセッサ30により所望の回転速度となるようにサーボ制御される。
【0018】
光ピックアップ16は、レーザ光を光ディスク10に照射するためのレーザダイオード(LD)や光ディスク10からの反射光を受光して電気信号に変換するフォトディテクタ(PD)を含み、光ディスク10に対向配置される。光ピックアップ16はスレッドモータ18により光ディスク10の半径方向に駆動され、スレッドモータ18はドライバ20で駆動される。ドライバ20は、ドライバ14と同様にサーボプロセッサ30によりサーボ制御される。光ピックアップ16の対物レンズは光ディスク10の面に対する垂直方向(フォーカス方向)及び光ディスク10の面内であってトラック幅方向(トラッキング方向)にそれぞれ駆動するフォーカスアクチュエータ及びトラッキングアクチュエータにより駆動支持され、各アクチュエータはサーボプロセッサ30により制御される。また、光ピックアップ16のLDはドライバ22により駆動され、ドライバ22はオートパワーコントロール回路(APC)24により駆動電流が所望の値となるように制御される。APC24は、光ディスク10のテストエリア(PCA)において実行されたOPC(Optimum Power Control)により選択された最適記録パワーとなるようにドライバ22の駆動電流を制御する。OPCは、光ディスク10のPCAに記録パワーを複数段に変化させてテストデータを記録し、該テストデータを再生してその信号品質を評価し、所望の信号品質が得られる記録パワーを選択する処理である。信号品質には、β値やγ値、変調度、ジッタ等が用いられる。
【0019】
光ディスク10に記録されたデータを再生する際には、光ピックアップ16のLDから再生パワーのレーザ光が照射され、その反射光がPDで電気信号に変換されて出力される。光ピックアップ16からの再生信号はRF回路26に供給される。RF回路26は、再生信号からフォーカスエラー信号FEやトラッキングエラー信号TEを生成し、サーボプロセッサ30に供給する。サーボプロセッサ30は、これらのエラー信号に基づいて光ピックアップ16をサーボ制御し、光ピックアップ16をオンフォーカス状態及びオントラック状態に維持する。また、RF回路26は、再生信号に含まれるアドレス信号をアドレスデコード回路28に供給する。アドレスデコード回路28はアドレス信号から光ディスク10のアドレスデータを復調し、サーボプロセッサ30やシステムコントローラ32に供給する。アドレス信号の1つの例は、CD−RWディスクの場合にはウォブル信号であり、光ディスク10の絶対アドレスを示す時間情報の変調信号で光ディスク10のトラックをウォブルさせ、このウォブル信号を再生信号から抽出しデコードすることでアドレスデータ(ATIP)を得ることができる。DVD−RWディスクの場合にはランドプリピット方式でアドレスデータを得ることができる。DVD−RAMディスクの場合にはCAPA(Complimentary Allocated Pit Adressing)方式でアドレスデータを得ることができ、セクタ内に記録されたヘッダ部にアドレスデータが存在する。また、RF回路26は、再生RF信号を2値化回路34に供給する。2値化回路34は、再生信号を2値化し、得られたEFM信号(CDディスク)あるいは8−16変調信号(DVDディスク)をエンコード/デコード回路36に供給する。エンコード/デコード回路36では、2値化信号をEFM復調あるいは8−16復調及びエラー訂正して再生データを得、当該再生データをインタフェースI/F40を介してパーソナルコンピュータなどのホスト装置に出力する。なお、再生データをホスト装置に出力する際には、エンコード/デコード回路36はバッファメモリ38に再生データを一旦蓄積した後に出力する。
【0020】
光ディスク10にデータを記録する際には、ホスト装置からの記録すべきデータはインターフェースI/F40を介してエンコード/デコード回路36に供給される。エンコード/デコード回路36は、記録すべきデータをバッファメモリ38に格納し、当該記録すべきデータをエンコードしてEFMデータあるいは8−16変調データとしてライトストラテジ回路42に供給する。ライトストラテジ回路42は、EFMデータあるいは8−16変調データを所定の記録ストラテジに従ってマルチパルス(パルストレーン)に変換し、記録データとしてドライバ22に供給する。記録ストラテジは、例えばマルチパルスにおける先頭パルスのパルス幅や後続パルスのパルス幅、パルスデューティから構成される。記録データによりパワー変調されたレーザ光は光ピックアップ16のLDから照射されて光ディスク10にデータが記録される。データを記録した後、光ピックアップ16は再生パワーのレーザ光を照射して当該記録データを再生し、RF回路26に供給する。RF回路26は再生信号を2値化回路34に供給し、2値化されたEFMデータあるいは8−16変調データはエンコード/デコード回路36に供給される。エンコード/デコード回路36は、EFMデータあるいは8−16変調データをデコードし、バッファメモリ38に記憶されている記録データと照合する。ベリファイの結果はシステムコントローラ32に供給される。
【0021】
図2には、図1におけるサーボプロセッサ30のうち、フォーカスサーボ系30A及びトラッキングサーボ系30Bの構成ブロック図が示されている。各サーボ系は、従来のサーボ系と同様に位相補償フィルタ及び増幅器並びにドライバを備える。すなわち、フォーカスサーボ系30Aはフォーカスエラー信号FEが供給される位相補償フィルタ30A1、FE信号をあるゲインで増幅するFS増幅器30A2及び増幅されたFE信号に基づきフォーカスアクチュエータを駆動する駆動信号を生成するドライバ30A3を有する。また、トラッキングサーボ系30Bはトラッキングエラー信号TEが供給される位相補償フィルタ30B1、TE信号をあるゲインで増幅するTS増幅器30B2及び増幅されたTE信号に基づきトラッキングアクチュエータを駆動する駆動信号を生成するドライバ30B3を有する。
【0022】
FS増幅器30A2及びTS増幅器30B2はそれぞれあるゲインで信号を増幅するが、当該ゲインはシステムコントローラ32から供給され、システムコントローラ32はこれらを固定値とするのではなく、光ディスク10の傷及び外乱の有無あるいは程度に応じて変化させる。これにより、光ディスク10の傷や外乱に応じたサーボゲインが設定され、データの記録及び再生が実行される。なお、光ディスク10の「傷」には汚れ等の任意の外形的損傷が含まれる。また、光ディスク10の「外乱」には光ディスク10の面振れや偏心が含まれ、さらに光ディスク10にウォブルトラックが形成されている場合のウォブル変位(本来の蛇行成分からのずれ)、光ディスク10の記録膜面における凹凸など、フォーカスサーボあるいはトラッキングサーボに与え得る任意の形状変位が含まれるものとする。これらの外乱の存在及び程度はフォーカスエラー信号FEあるいはトラッキングエラー信号TEの信号振幅に反映されるため、システムコントローラ32はこれらの信号振幅から外乱の有無やその程度を検出することができる。一方、傷についてもこれらのエラー信号あるいは再生RF信号の振幅から検出することが可能であるが、ユーザが目視で傷の有無を確認し、その確認結果を光ディスク装置に入力してシステムコントローラ32に供給してもよい。装置側で傷を検出できない場合、あるいはユーザが目視で確認しても傷を発見できない場合、一律に傷がないものとして処理することも可能であるが、検出漏れあるいは確認漏れも考えられるため、傷が存在する可能性があるとしてサーボゲインを調整することが好適である。本実施形態ではこの処理を「傷優先モード」あるいは「傷重視モード」と称する。
【0023】
図3には、本実施形態における処理フローチャートが示されている。ユーザが目視で傷や汚れを確認して手動設定するのではなく、装置側で自動設定する場合である。光ディスク10が装着された後、システムコントローラ32は、一応傷がないものとして傷フラグをOFFに設定する(S101)。もちろん、再生RF信号あるいはエラー信号の振幅に基づいて傷の有無を実際に検出し、傷が検出されない場合に傷フラグをOFF、傷が検出された場合に傷フラグをONとしてもよい。傷フラグをONする場合の処理については後述する。
【0024】
傷フラグを一応OFFとした後、システムコントローラ32は次にフォーカスエラー信号FEに基づきフォーカス外乱の程度を判定する(S102)。ここで、フォーカス外乱とは、上述した外乱のうち、特にフォーカスサーボに影響を与える形状変位である。フォーカス外乱が存在しない、あるいは存在しても所定の基準内である場合には、フォーカス外乱の有無を示すFSフラグをOFFに設定する(S103)。一方、フォーカス外乱が存在し、しかもその程度が所定の基準を超えている場合には、FSフラグをONに設定する(S104)。フォーカス外乱が所定の基準を超えている場合とは、例えば光ディスク10の面振れが規格を超えている場合である。
【0025】
フォーカス外乱の存在及び程度を検出した後、システムコントローラ32は次にトラッキングエラー信号TEに基づきトラッキング外乱の程度を判定する(S105)。ここで、トラッキング外乱とは、上述した外乱のうち、特にトラッキングサーボに影響を与える形状変位である。トラッキング外乱が存在しない、あるいは存在しても所定の基準内である場合には、トラッキング外乱の有無を示すTSフラグをOFFに設定する(S106)。一方、トラッキング外乱が存在し、しかもその程度が所定の基準を超えている場合には、TSフラグをONに設定する(S107)。トラッキング外乱が所定の基準を超えている場合とは、例えば光ディスク10のウォブル変位が規格を超えている場合である。
【0026】
フォーカス外乱及びトラッキング外乱を検出してフラグを設定した後、システムコントローラ32は傷重視フラグをONに設定する(S108)。この傷重視フラグは、傷が存在する可能性を考慮した傷優先モードに装置を設定するためのフラグであり、この傷重視フラグがONに設定された場合、サーボゲインは傷重視フラグがOFFの場合と比較して低く設定され、傷への過剰制御を抑制する。以上のようにして、4つのフラグ、すなわち傷フラグ、FSフラグ、TSフラグ及び傷重視フラグが設定された後、システムコントローラ32はこれら4つのフラグの設定状況に応じてサーボゲイン(サーボパラメータ)を設定する(S109)。サーボゲインの設定は、予めシステムコントローラ32のメモリに記憶された、フラグとサーボゲインとの対応関係を規定するマップに基づいて行われる。マップに基づきサーボゲインを設定した後、システムコントローラ32はフォーカスサーボ系30AのFS増幅器30A2のゲイン、及びトラッキングサーボ系30BのTS増幅器30B2のゲインを設定値となるように制御してデータを記録(あるいは再生)する(S110)。
【0027】
図4には、システムコントローラ32のメモリに記憶されるフラグとサーボゲインとの対応関係を規定するマップの一例が示されている。フラグとして傷フラグ、FSフラグ、TSフラグ及び傷重視フラグが存在し、それぞれOFF=0、ON=1として示されている。なお、図3に示される処理では、傷フラグをOFF(=0)、傷重視フラグをON(=1)に設定しているが、マップでは傷の有無を検出し、傷が検出されなければ傷フラグをOFF、傷が検出されれば傷フラグをONとする場合も併せて示されている。傷が検出された場合、あるいは傷優先モードに設定しない場合にはこれらの値が用いられる。(傷フラグ、FSフラグ、TSフラグ、傷重視フラグ)の組み合わせに応じて、記録初期ゲインが設定される。記録初期ゲインにはフォーカスゲインFSゲインとトラッキングゲインTSゲインがあり、これらはそれぞれフォーカスサーボ系30A及びトラッキングサーボ系30Bのゲインに対応する。例えば、
(傷フラグ、FSフラグ、TSフラグ、傷重視フラグ)=(0,0,0,0)
→(FSゲイン、TSゲイン)=(M,M)
(傷フラグ、FSフラグ、TSフラグ、傷重視フラグ)=(0,0,0,1)
→(FSゲイン、TSゲイン)=(L,L)
(傷フラグ、FSフラグ、TSフラグ、傷重視フラグ)=(0,0,1,1)
→(FSゲイン、TSゲイン)=(L,M)
(傷フラグ、FSフラグ、TSフラグ、傷重視フラグ)=(0,1,0,1)
→(FSゲイン、TSゲイン)=(M,L)
(傷フラグ、FSフラグ、TSフラグ、傷重視フラグ)=(0,1,1,1)
→(FSゲイン、TSゲイン)=(M,M)
(傷フラグ、FSフラグ、TSフラグ、傷重視フラグ)=(1,0,0,1)
→(FSゲイン、TSゲイン)=(L,L)
(傷フラグ、FSフラグ、TSフラグ、傷重視フラグ)=(1,0,1,1)
→(FSゲイン、TSゲイン)=(L,M)
(傷フラグ、FSフラグ、TSフラグ、傷重視フラグ)=(1,1,0,1)
→(FSゲイン、TSゲイン)=(M,L)
(傷フラグ、FSフラグ、TSフラグ、傷重視フラグ)=(1,1,1,1)
→(FSゲイン、TSゲイン)=(M,M)
である。なお、Mは中程度(デフォルト値)、Lは減少値、Hは増大値を示す。フラグ(0,0,0,1)の場合にゲイン(L,L)となるのは、傷重視フラグがONとなっているため傷に対する過剰制御を抑制すべくゲインを減少させたものである。フラグ(0,0,1,1)の場合にゲイン(L,M)となるのは、トラック外乱フラグがONとなってるためトラック外乱に対して追従すべくトラッキングゲインを中程度に戻したものである。トラッキング外乱のみを考慮すれば、サーボゲインをHとすることも考えられるが、傷の存在をも考慮して中程度としている。フラグ(1,0,0,1)の場合にゲイン(L,L)となるのは、傷に対する過剰制御を抑制するためである。傷優先モードと重複するため、この場合にはLより更に一段低いサーボゲインに設定することも好適であろう。フラグ(1,1,0,1)の場合にゲイン(M,L)となるのは、フォーカス外乱の存在を考慮してフォーカスゲインを中程度まで増大させたものである。フォーカス外乱のみを考慮すればサーボゲインをHまで増大させることも考えられるが、傷フラグがONされ、しかも傷優先モードに設定されているため中程度としている。
フラグ(1,1,1,1)の場合にゲイン(M,M)となるのは、同様に外乱と傷を同時に考慮した結果である。
【0028】
なお、図4に示されるマップでは、4つのフラグの他に、さらに外周切替フラグの有無によりサーボゲインを設定している。外周切替フラグは、特に外乱が内周部よりも外周部において顕著に現れ、サーボ制御に影響を与えることを考慮したものであり、例えば光ディスク10が装着された後、システムコントローラ32は内周部の数トラック分及び外周部の数トラック分についてエラー信号に基づき外乱の程度を検出し、特に外周部において外乱が大きい場合あるいは内周部の外乱と外周部の外乱との差分が所定値以上の場合に外周切替フラグをONに設定する。外周切替フラグがONの場合、4つのフラグに基づき設定された初期記録フラグを一段階増大させる。例えば、フラグ(0,0,0,1)の場合に初期記録ゲインは(L,L)であるが、外周切替フラグがONに設定された場合には外周のゲイン(M,M)となる。また、フラグ(0,0,1,1)の場合に初期記録ゲインは(L,M)であるが、外周切替フラグがONに設定された場合には外周のゲイン(M,H)となる。外周のゲインは、例えば光ディスク10を内周から外周に向けて3分割し、そのうちの外周部1/3に対して適用することができる。つまり、フラグ(0,0,1,1)の場合、内周から2/3までのエリアでは(L,M)のゲインで記録が行われ、残り1/3のエリアでは(M,H)のゲインで記録が行われる。
【0029】
以下、光ディスク10の有するいくつかのパターンに基づいて、本実施形態のサーボゲインの設定処理を具体的に説明する。
【0030】
<光ディスクに傷がなく、トラッキング外乱が大きい場合>
このとき、傷フラグ=OFF、フォーカス外乱フラグFS=OFF、トラッキング外乱フラグFS=ON、傷重視フラグ=ONとなる。トラッキング外乱があるためトラッキングサーボゲインを増大させる一方、フォーカス外乱はないためフォーカスサーボゲインはそのまま維持する。また、傷を重視するためそれぞれのゲインを1段階下げる。以上のようにして初期記録ゲイン(L,M)が得られる。そして、外周部のトラッキング外乱が特に顕著である場合、外周切替フラグ=ONとなり、外周部でのゲインは(M,H)となる。
【0031】
<光ディスクに傷があり、外乱がない場合>
このとき、傷フラグ=ON、フォーカス外乱フラグ=OFF,トラッキング外乱フラグ=OFF、傷重視フラグ=ONとなる。傷があるためサーボゲインを低下させて初期記録ゲイン(L,L)が得られる。そして、規格内であるものの外周の外乱が内周に比べて所定値以上の場合、外周切替フラグ=ONとなり、外周部でのゲインは(M,M)となる。外周でゲインMとするのは、どんなに外乱の少ないディスクでも傷に反応しなくなるレベルのゲインLでは外周部でサーボが十分追従しきれず、記録品質が低下する可能性が高いからである。
【0032】
<光ディスクに傷があり、かつ外乱がある場合>
このとき、傷フラグ=ON、フォーカス外乱フラグ=ON、トラッキング外乱フラグ=ON、傷重視フラグ=ONとなる。傷があるためサーボゲインは低下させるべきで、一方外乱があるためサーボゲインは増大させるべきである。そこで、両者を考慮して初期記録ゲイン(M,M)が得られる。外周の外乱が特に顕著である場合、外周切替フラグ=ONとなり、外周部でのゲインは(H,H)となる。なお、傷及び外乱が存在する場合において、傷重視フラグをOFFに設定することもできる。この場合、傷の与える影響時間と外乱の与える影響時間を考慮し、外乱の影響を優先して初期記録ゲインを(H,H)とする。
【0033】
<光ディスクに傷があり、かつトラッキング外乱がある場合>
このとき、傷フラグ=ON、フォーカス外乱フラグ=OFF、トラッキング外乱フラグ=ON、傷重視フラグ=ONとなる。トラッキング外乱があるためトラッキングサーボゲインを増大させるべきで、フォーカス外乱はないのでフォーカスサーボは維持できる。傷があるとフォーカス及びトラッキングともに影響がでるため、フォーカスサーボゲインについては低下させて傷の影響を抑制する。そこで、両者を考慮して初期記録ゲイン(L,M)となる。外周のトラッキング外乱が特に顕著である場合、外周部のゲインを(M,H)とする。内周側で傷に対応するために意図的に低下させていたゲインを外周部での外乱に対応させるために元の値に戻すと表現することもできる。
【0034】
以上のように、傷及び外乱の双方を考慮し、さらに外周部での外乱を考慮してサーボゲインを調整することで、光ディスク10の状態に応じた適切なサーボゲインが設定され、記録不能(再生不能)あるいは記録品質の低下を抑制できる。特に、傷及び外乱のいずれも存在する場合、サーボゲインを一律に低下させる、あるいは一律に増大させるのではなく、両方の欠陥を考慮して基本的にはサーボゲインを増大させるとともに傷優先モードの場合にサーボゲインをデフォルト値に維持し、また外周部ではサーボゲインを増大させることで最適なサーボ制御を実現できる。すなわち、傷優先モードの場合、外乱存在により一旦デフォルト値MからHに増大したサーボゲインが再びデフォルト値Mに減少調整される。さらに、傷及びトラッキング外乱が存在する場合にはフォーカスサーボゲインについては低下させ、傷及びフォーカス外乱が存在する場合にはトラッキングサーボゲインを低下させることで、傷の影響を抑制することができる。
【0035】
図3においては、装置側で全てのフラグを設定する場合について説明したが、4つのフラグの内の少なくとも何れかをユーザが手動で設定しシステムコントローラ32に供給してもよい。
【0036】
図5には、ユーザが傷フラグ及び傷重視フラグを手動設定する場合の処理フローチャートが示されている。まず、ユーザは光ディスク10を目視で確認し、傷があるか否かを判定する。目視の結果、傷がないと判定した場合には装置のスイッチあるいはボタンを操作してその旨を入力する。システムコントローラ32は、ユーザからの入力に応じて傷フラグをOFFに設定する(S202)。一方、ユーザが目視で確認して傷を検出した場合には、装置のスイッチあるいはボタンを操作してその旨を入力する。システムコントローラ32は、ユーザからの入力に応じて傷フラグをONに設定する(S203)。
【0037】
フォーカス外乱フラグFS及びトラッキング外乱フラグTSについては図3と同様の処理であり、システムコントローラ32はフォーカス外乱が存在する場合にフラグをONし、トラッキング外乱が存在する場合にフラグをONとする(S204〜S209)。
【0038】
次に、ユーザは傷と外乱のいずれを重視するかを判定し、装置のスイッチあるいはボタンから入力する(S210)。例えば目視で確認して傷がなく、むしろ外乱の影響が大きいと考えるユーザは外乱重視を選択して入力する。この場合、システムコントローラ32は傷重視フラグをOFFに設定する(S211)。目視で確認して傷がある場合、あるいは目視で確認して傷がない場合でも微小な傷が存在する可能性が高いと考えるユーザは傷重視を選択して入力する。この場合、システムコントローラ32は傷重視フラグをONに設定する(S212)。以上のようにしてフラグを設定した後、システムコントローラ32は図4に示されたマップに従いサーボゲインを設定し(S213)、データの記録(あるいは再生)を開始する(S214)。
【0039】
ユーザが外乱重視を選択した場合、例えば光ディスク10に傷及び外乱のいずれも存在するときには図4に示されるように初期記録ゲインとして(H,H)が設定される。すなわち、デフォルト値より増大させて設定される。これは、傷の影響時間あるいは影響の程度よりも外乱の影響時間あるいは影響程度の方が大きいことを考慮したものである。ユーザが傷重視を選択した場合、傷優先モードに移行して図4に示されるように初期記録ゲインとして(M,M)が設定される。すなわちデフォルト値に維持される。ユーザが外乱重視ではなく傷重視を選択した場合でも、装置側で外周切替フラグをONに設定した場合、外周ゲインは(H,H)に切り替わることは図3の場合と同様である。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の変更が可能である。
【0041】
例えば、本実施形態では外周切替フラグを装置側で自動設定するとして説明したが、傷フラグや傷重視フラグと同様、ユーザが手動で入力してもよい。
【0042】
また、本実施形態では、フラグとサーボゲインとの対応関係を規定するマップとして、図4に示されるようにL、M、Hの3段階のゲインを用いているが、必要に応じてそれ以上の段階を用いてもよく、また、デフォルト値からの増加量あるいは減少量で規定してもよい。例えば、フラグ(0,0,0,0)の場合、ゲイン(0,0)(つまりデフォルト値のまま)、フラグ(0,0,0,1)の場合、ゲイン(−10、−10)の如くである。傷及び外乱が存在する場合、サーボゲインをデフォルト値から10だけ増大させ、傷優先モードの場合には−7だけ減少させてトータルとしてサーボゲインを+3だけ増大してもよい。増加量あるいは減少量は絶対量あるいは比率のいずれでもよい。
【0043】
さらに、本実施形態ではマップを用いてフラグからサーボゲインを設定しているが、マップの代わりにメンバーシップ関数を用い、ファジィ推論によりサーボゲインを決定してもよい。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では光ディスクの傷と外乱に応じて適当なサーボゲインを設定し、データの記録あるいは再生を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態の全体構成図である。
【図2】 図1におけるサーボプロセッサの構成ブロック図である。
【図3】 実施形態の処理フローチャートである。
【図4】 フラグとサーボゲインとの関係を示すマップ説明図である。
【図5】 実施形態の他の処理フローチャートである。
【図6】 サーボゲインと追従特性の関係を示す説明図である。
【符号の説明】
10 光ディスク、30 サーボプロセッサ、32 システムコントローラ。

Claims (5)

  1. 光ディスクに対してデータの記録あるいは再生を行う光ディスク装置であって、
    前記光ディスクの面振れや偏心等のフォーカス制御及びトラッキング制御に与える外乱と前記光ディスクの傷とに基づいてサーボゲインを設定する設定手段と、
    前記サーボゲインに基づきフォーカス制御及びトラッキング制御を行うサーボ制御手段と、
    を有し、
    前記設定手段は、前記傷及び前記外乱が存在しない場合には前記サーボゲインをデフォルト値に維持し、前記傷が存在し前記外乱が存在しない場合には前記サーボゲインをデフォルト値から減少させ、前記傷が存在せず前記外乱が存在する場合には前記サーボゲインを前記デフォルト値から増大させ、前記傷が存在し前記外乱が存在する場合には前記サーボゲインを前記デフォルト値から増大させ、
    さらに、
    前記傷を優先するモードを設定する傷優先モード設定手段
    を有し、前記設定手段は、前記モードが設定された場合に、設定後の前記サーボゲインをさらに減少させ、前記傷が存在し前記外乱が存在する場合に前記サーボゲインを前記デフォルト値に維持することを特徴とする光ディスク装置。
  2. 請求項1記載の装置において、
    前記設定手段は、前記光ディスクの外周部分では設定後の前記サーボゲインを内周部分よりもさらに増大させることを特徴とする光ディスク装置。
  3. 光ディスクに対してデータの記録あるいは再生を行う光ディスク装置であって、
    前記光ディスクの傷の有無を設定する手段と、
    前記光ディスクの外乱の有無を設定する手段と、
    前記光ディスクの傷あるいは外乱のいずれを優先するかを設定する手段と、
    前記傷の有無、外乱の有無、及び優先順位に応じてサーボゲインを調整する調整手段であって、前記傷が存在し、かつ前記外乱が存在する場合であって外乱優先の場合には前記サーボゲインを増大調整し、前記傷が存在し、かつ前記外乱が存在する場合であって傷優先の場合には前記サーボゲインを通常値に維持する調整手段と、
    を有することを特徴とする光ディスク装置。
  4. 請求項記載の装置において、
    前記光ディスクの外乱はフォーカス外乱及びトラッキング外乱を含み、
    前記調整手段は、前記傷が存在し、かつ前記フォーカス外乱が存在しトラッキング外乱が存在しない場合であって外乱優先の場合には前記サーボゲインのうちフォーカスサーボゲインを増大調整して前記サーボゲインのうちトラッキングサーボゲインを通常値に維持し、前記傷が存在し、かつ前記フォーカス外乱が存在しトラッキング外乱が存在しない場合であって傷優先の場合には前記サーボゲインのうちフォーカスサーボゲインを通常値に維持し前記サーボゲインのうちトラッキングサーボゲインを減少調整することを特徴とする光ディスク装置。
  5. 請求項記載の装置において、
    前記光ディスクの外乱はフォーカス外乱及びトラッキング外乱を含み、
    前記調整手段は、前記傷が存在し、かつ前記フォーカス外乱が存在せずトラッキング外乱が存在する場合であって外乱優先の場合には前記サーボゲインのうちトラッキングサーボゲインを増大調整して前記サーボゲインのうちフォーカスサーボゲインを通常値に維持し、前記傷が存在し、かつ前記フォーカス外乱が存在せずトラッキング外乱が存在する場合であって傷優先の場合には前記サーボゲインのうちトラッキングサーボゲインを通常値に維持し前記サーボゲインのうちフォーカスサーボゲインを減少調整することを特徴とする光ディスク装置。
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