JP4106579B2 - 燃料改質器とその運転方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、メタノール,エタノール,ガソリン等の液状の炭化水素と水との混合物を気化した原燃料ガスを酸化剤ガスとともに改質触媒層に通流し、水蒸気改質反応と部分酸化改質反応との併用によって水素リッチな改質ガスを生成する燃料改質器とその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記のような燃料改質器は、一般の化学プラントにおける使用以外に、燃料電池発電装置などの燃料ガス供給装置として、広く利用されている。
【0003】
燃料電池は、燃料の有する化学エネルギーを、機械エネルギーや熱エネルギーを経由することなく直接電気エネルギーに変換する装置であり、高いエネルギー効率が実現可能である。良く知られた燃料電池の形態としては、電解質層を挟んで一対の電極を配置し、一方の電極(アノード)側に水素を含有する燃料ガスを供給するとともに他方の電極(カソード)側に酸素を含有する酸化剤ガスを供給するものであり、両極間で起きる電気化学反応を利用して起電力を得る。以下に、燃料電池で起きる電気化学反応を表す式を示す。(1)式はアノード側に於ける反応、(2)式はカソード側に於ける反応を表し、燃料電池全体では(3)式に表す反応が進行する。
【0004】
【化1】
2→2H++2e- ………(1)
【0005】
【化2】
1/2O2+2H++2e-→H2O ………(2)
【0006】
【化3】
2+1/2O2→H2O ………(3)
燃料電池発電装置は、使用する電解質の種類により分類されるが、これらの燃料電池の中で、固体高分子型燃料電池、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池等では、その電解質の性質から、二酸化炭素を含んだ酸化ガスや炭酸ガスを使用することが可能である。そこで通常これらの燃料電池では、空気を酸化ガスとして用い、メタノールや天然ガス等の炭化水素系の原燃料を水蒸気改質して生成した水素を含むガスを燃料ガスとして用いている。
【0007】
そのため、この様な燃料電池を備える燃料電池システムには改質装置が設けられており、この改質装置において原燃料の改質を行ない燃料ガスを生成している。
【0008】
原燃料を燃料ガスに改質する改質装置としては、原燃料に水を加えて加熱し、水蒸気と原燃料を触媒を用いて改質する水蒸気改質反応を利用したものがよく知られている。
【0009】
最近では、上記水蒸気改質反応を利用した燃料改質装置以外に、装置のコンパクト性や短時間起動を要求される電気自動車用や可搬型の燃料電池発電装置を主対象として、部分酸化反応を水蒸気改質反応と併用するタイプの改質装置が開発されている。また上記のような燃料電池発電装置の場合、原燃料としては、メタノール,エタノール,ガソリン等の液状の炭化水素と水とを混合してなる液体燃料を気化したものが用いられる。
【0010】
以下に改質器に於ける原燃料の改質反応について説明する。例えば、まずメタノールを原燃料としてこれを水蒸気改質する場合について説明する。
【0011】
【化4】
CH3OH→CO+2H2 +90.13 KJ/mol ………(4)
【0012】
【化5】
CO+H2O→CO2+H2 -41.17 KJ/mol ………(5)
【0013】
【化6】
CH3OH+H2O→CO2+3H2 +48.96 KJ/mol ………(6)
メタノールを水蒸気改質するときの反応では(4)式で示したメタノールの分解反応と(5)式で示した一酸化炭素の変成反応とが同時に進行し、全体として(6)式の反応が起こる。このように、原燃料をただ単に水蒸気改質させる反応は吸熱反応であるため、改質に必要な熱量を外から供給する必要がある。
【0014】
一方、メタノールの水蒸気改質と部分酸化反応を併用して行なう改質方法について以下に説明する。
【0015】
【化7】
CH3OH+H2O→CO2+3H2 +49.9 KJ/mol ………(7)
【0016】
【化8】
CH3OH+1/2O2→CO2+2H2 -191.9 KJ/mol …… (8)
【0017】
【化9】
CH3OH+1/4O2+1/2H2O→CO2+5/2H2 -71.0 KJ/mol ………(9)
メタノールの部分酸化改質反応は(8)式に示すように発熱反応である。これを、(7)式の水蒸気反応と半々に行なわせると全体として(9)式の反応となり、発熱反応となる。どちらをどの位の割合で行なわせるかは、部分酸化用の酸素の供給量で調節して、実際には吸熱と発熱がバランスする程度(メタノール1モルに対して0.11モル程度)の酸素を含む空気を供給して触媒層入口の温度を300〜400℃程度に保ちながら改質反応を継続させる。この方法は、水蒸気改質反応のみを行なわせる場合と異なり、改質に必要な熱量を外から供給する必要がなく、改質器の構造が簡単になるという利点がある。
【0018】
上記改質反応において、水蒸気改質に使われるメタノールと酸化反応に使われるメタノールの割合は、理論的には、
水蒸気改質反応:酸化反応=79%:21%となる。
なぜならば、前記(7)式および(8)式より、
−191.9 × y + 49.9 × (1−y)=0 ここで、y は、酸化反応に使われるメタノールの割合であり、y=0.21 となるからである。
【0019】
しかしながら、実際には容器の形状による放熱等を加味し、理論値よりも大きな割合で酸化反応を行っている。このようなシステムを採用することにより、外部加熱源が不要となり、コンパクトな改質器が実現できる。
【0020】
改質器の構造は、通常、粒状触媒を充填した容器であって、水蒸気改質反応のみを行なわせるタイプの改質器は一般に多重円筒型であり、その中心には反応に必要な熱を供給するためのバーナと炉体があり、その周囲を囲むように円筒状の触媒充填層がある。一方、水蒸気改質と部分酸化改質を併用する改質器においては、上述の理由で、外側から熱を与える必要がないために、触媒充填層は比較的任意の構造とすることができる。
【0021】
図5は、銅・亜鉛系触媒層を備えた従来の改質器の構成の一例を示す。図5において、6は原燃料ガス供給配管を示し、20は入口ノズル、30は入口マニホールドを示す。触媒層40には、銅・亜鉛系触媒が充填されており、50はそのうちの起動時の昇温対象部を示す。60は起動時に昇温を行うためのヒータを示す。ここでは、表面に巻き付けるタイプのヒータを示すが、棒状のシースヒータを直接触媒層の中に挿入し、加熱することもある。70は改質器の反応容器を示し、80は出口マニホールド、90は出口ノズルを示す。また、160は触媒を固定するために設けられた穴開き板であるパンチングプレートを示す。銅・亜鉛系触媒は、常温では反応が極めて遅いので、できるかぎり起動時間を短縮するために、前記ヒータにより起動時に、触媒層上流側の約1/4の部分を加熱し150℃程度にしてから改質反応を開始することが行われている。
【0022】
ところで、原燃料であるメタノールは水蒸気改質用の水と一定の割合で混合した状態で蒸発器ヘと供給され、ここでガス化させたものが燃料改質器へと供給される。この蒸発器の加熱側のエネルギー源には一般に燃料電池のアノード側出口から出る未反応ガス(排水素)を排水素燃焼器で燃焼させて得た燃焼ガスを用いている。
【0023】
また、メタノールを原燃料とした改質器は、その反応温度が300〜400℃と低いために、吸熱反応である水蒸気改質反応を適度に行なわせることによって出口温度を200℃程度まで低下させることができ、これによって同一容器内でCO変成反応を行なわせ、改質ガス中のCO濃度を1%程度にまで低下させる事ができる。従って、別にCO変成器を設置せずに、このガスを、COをさらにppmオーダまで低下させるCO除去器へと供給している。
【0024】
図4は、原燃料としてメタノールを用い、水蒸気改質と部分酸化改質の併用改質方式によって改質する燃料改質器を用いた燃料電池発電システムの一例を示し、燃料電池、改質器、蒸発器、CO除去器、排水素燃焼器、およびそれらを接続している原燃料供給系の配管等を示した概略フロー図である。
【0025】
原燃料(ここではメタノールと水がすでに適量割合で混合しているものとして示す)は原燃料タンク1から原燃料ポンプ2によって、原燃料供給配管3を通って蒸発器4へと供給される。
【0026】
蒸発器4を出た原燃料ガスは、部分酸化用空気供給配管5と合流した原燃料ガス供給配管6を通って改質器7へと供給される。
【0027】
改質器7では、この原燃料ガスと空気とで前述の水蒸気改質と部分酸化改質の併用反応を起こして水素リッチな燃料ガスを生成する。なお、部分酸化用空気は図示しないコンプレッサ等の手段で供給される。
【0028】
改質器7を出た改質ガスは改質ガス供給配管8を通ってCO除去器9に入り、CO濃度をppmオーダまで低下させた後に、燃料電池10へと供給される。燃料電池10ではおよそ80%の水素が消費された後に、排水素供給配管11を通って排水素燃焼器12へと供給される。排水素燃焼器12へは同時に排空気供給配管13を通って排空気が供給される。排水素燃焼器を出た燃焼排ガスは燃焼排ガス供給配管14を通って蒸発器4へと供給され原燃料を蒸発させるエネルギー源となる。
【0029】
燃料電池への反応空気は、ブロア15によって反応空気供給配管16を通って供給される。
【0030】
【発明が解決しようとする課題】
前述のような水蒸気改質反応と部分酸化改質反応との併用によって水素リッチな改質ガスを生成する燃料改質器とその運転方法においては、以下のよう問題点がある。
【0031】
前述のように、銅・亜鉛系触媒は、常温では反応が極めて遅いので、できるかぎり起動時間を短縮するために従来は、ヒータにより燃料改質器の起動時に、触媒層入口部分触媒層上流側の約1/4の部分を加熱し150℃程度にしてから改質反応を開始することが行われている。しかしながら、この場合においても後述するように、触媒を所定温度に加熱するためのかなりの時間を要するので、燃料改質器の起動時間がその分長くなる問題があった。
【0032】
なお、改質反応の開始を早める方策としては、触媒として銅・亜鉛系触媒を用いずに、常温からの反応開始が可能な貴金属系の触媒を用いることが考えられる。しかしながらこの場合には、銅・亜鉛系触媒とは異なり、改質ガス中のCO濃度が非常に高くなり(経験的に約10倍)、そのために、改質器の下流側にCO濃度を低下させるためのCO変成器を追加する必要が生じ、システムが複雑かつ高価になるという問題があった。
【0033】
この発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、この発明の課題は、CO濃度を従来と同等としつつも、起動時間の短縮を図った水蒸気改質反応と部分酸化改質反応とを併用する燃料改質器とその運転方法を提供することにある。
【0034】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、この発明は、メタノール,エタノールまたは液状の炭化水素と水との混合物である原燃料を気化した原燃料ガスを酸化剤ガスとともに改質触媒層に通流し、水蒸気改質反応と部分酸化改質反応との併用によって水素リッチな改質ガスを生成する燃料改質器の運転方法において、起動時のみ、上流側の第1の触媒層に前記原燃料ガスと酸化剤ガスとを供給して常温で反応を開始し、前記第1の触媒層で反応生成した高温ガスを、下流側の第2の触媒層に通流することにより第2の触媒層を加熱昇温し、この第2の触媒層が所定温度に到達後、第1の触媒層への原燃料ガスと酸化剤ガスの供給を停止し、第2の触媒層への直接供給に切り替えることとする(請求項1)。
【0035】
また、上記請求項1に記載の運転方法において、前記第1の触媒層は、ルテニウム,白金,パラジウム等の貴金属系触媒層とし、前記第2の触媒層は、銅・亜鉛系触媒層とする(請求項2)。さらに、請求項1または2に記載の運転方法において、前記第2の触媒層の所定温度は、150℃とする(請求項3)。
【0036】
上記により、CO濃度を従来と同等としつつも、起動時間の短縮を図ることが可能となる。後述する試算によれば、従来、銅・亜鉛系触媒を150℃まで予備加熱するのに約10分を要したが、この発明の運転方法によれば、約13秒に短縮できる。
【0037】
なお、上記運転方法において、起動時の短時間の間はCO濃度の高い改質ガスが発生するが、そのガスは下流側のCO除去器や燃料電池へ送らずに、バイパスさせて燃焼器で消費し原燃料の蒸発熱に使用し、その間はシステム全体としては待機モード(起動中)として、原燃料ガスと酸化剤ガスの供給切り替え後に下流側のCO除去器や燃料電池へ改質ガスを送り込み発電を開始すればよい。
【0038】
前記150℃まで予備加熱するのに要する時間の試算結果の詳細に関し、従来方法と上記本発明の方法とを比較して以下に述べる。
【0039】
1.改質器仕様(諸元の仮定と仮定に基づく計算)
例えば、数10kW相当の発電を燃料電池で行うために、改質器へ導入する原燃料ガスと酸化剤ガスの反応前ガス組成と改質器出口ガス(反応後ガス)組成の一例は、以下のとおりである。
【0040】
Figure 0004106579
ここで、例えば触媒層の形状を直方体と仮定し、その寸法を縦175mm×横160mm×高320mmとすると、触媒層全容積は (175/1000)×(160/1000)×(320/1000)×1000≒9(リットル)となる。
【0041】
このときのSV値(space velosity)は、SV(1/h)=1.7(kmol/h)×0.35×22.4(Nm3/kmol)×1000(リットル/m3)/触媒層容積9(リットル)≒1500(1/h)となる。
【0042】
SV値は触媒の性能によって変わる値(性能が良ければ大きくなり、性能が悪ければ小さくなる)であり、触媒に対する負荷を示す値であるが、通常500〜2500程度の間であり、本仕様が常識的な範囲内であることが分かる。
【0043】
また、起動時には経験的に触媒層全体を昇温する必要はなく、入口側1/4程度を昇温すれば反応は十分開始される。更に、この部分を通過した後の反応後ガスの組成は若干CO濃度は高いものの、上記の改質器出口ガス組成にほぼ等しいガス組成となっていることが分かっている(MAX1mol%程度)。そこで以降の昇温対象となる銅・亜鉛系触媒層の寸法を縦175mm×横160mm×高80mm(=320/4)とする。
【0044】
例えば、その銅・亜鉛系触媒層の昇温を、触媒層初期温度20℃から触媒層昇温完了温度150 ℃まで行うと仮定する。また、充填される触媒のかさ比重は、1.35(kg/リットル)と仮定すると、充填触媒重量wc(kg)=(175/1000)×(160/1000)×(80/1000) ×1000×1.35(kg/リットル) ≒3kgとなる。
【0045】
さらに、触媒を充填する容器の重量wv=6kg、触媒・容器の比熱を夫々Cpc=0.14(kcal/kg℃), Cpv=0.11(kcal/kg℃) とする。
【0046】
2.従来方法(ヒータ加熱の場合)の試算
ヒータの容量を1kWとし、これで触媒及び容器を加熱すると、20℃から150℃までどのくらいの時間がかかるかを以下に検討する。但し、以降の計算では放熱量は割愛して考える。
(1)触媒層(容器+触媒)の熱容量Hr(kcal/℃)を計算する。
【0047】
Figure 0004106579
(2)ヒータから触媒層(容器+触媒)が受ける熱量Hh(kcal)を計算する。
【0048】
例えば60秒毎に区切って、触媒層の温度が何℃になっているか計算する。
【0049】
60秒間に触媒層(容器+触媒)がヒータから受ける熱量は以下のようになる。1kW=860(kcal/h)であるので、
Figure 0004106579
(3)60秒間(1min)でのヒータによる触媒層(容器+触媒)の温度上昇ΔT(℃)を計算する。
【0050】
Figure 0004106579
(4)20℃から150℃まで触媒層(容器+触媒)を昇温するのにかかる時間t(min)を計算する。
【0051】
t(min)= (150-20)(℃)/13( ℃/min) =10(min)
図2に、途中の経過を含む計算結果を示す。
【0052】
3.本発明の方法(ガス導入加熱の場合)の試算
貴金属系触媒層を通過した反応後ガスによって銅・亜鉛系触媒層が昇温される場合の、20℃から150℃までの昇温に要する時間について以下に検討する。但し、以降の計算では、ヒータ加熱の場合との相対比較ができればよいので、ヒータ加熱の場合と同様に放熱量は割愛して考える。
【0053】
ここで、例えば貴金属系触媒層を通過反応後のガスの物性は前記改質器出口ガス組成と比較して、CO濃度が10倍程度高くなり10mol%となるが、両者共ガスの重量は同じであり強制対流伝熱ではほとんど影響がないので、前記改質器出口ガス組成と同じものが銅・亜鉛系触媒層に流入し、加熱に寄与するものとして以降の検討を行う。また、貴金属系触媒の充填量はその性能によって異なるので一概には言えないが、ここでは加熱する部分の銅・亜鉛系触媒の充填量と同程度とする。
【0054】
加熱源ガス(反応後ガス)の組成,物性等を以下に示す。
【0055】
Figure 0004106579
以降の計算は、化学工学便覧4版P.288 〜289 の充填粒子と流体間の伝熱の式に則って行う。
【0056】
また、計算に先立って触媒の仕様を以下のように仮定する。
【0057】
・触媒形状 :球
・触媒直径 :Dp=6/1000(m) =6mm
・触媒層空隙率:ε=0.45
・形状係数 :φ=1 (球の場合)
(1)質量速度G(kg/m2h)を計算する。
【0058】
Figure 0004106579
(2)レイノルズ数Re(無次元数)を計算する。
【0059】
Figure 0004106579
(3)プラントル数Pr(無次元数)を計算する。
【0060】
Figure 0004106579
(4)伝熱係数hp(kcal/m2h℃)を計算する。
【0061】
Figure 0004106579
(5)触媒層単位体積当たりの触媒接触面積ap(m2/m3)を計算する。
【0062】
Figure 0004106579
(6)触媒層単位容積当たりの伝熱量qp(kcal/m3h)を計算する。
【0063】
Figure 0004106579
(上記において、Tss:触媒層初期温度=20 ℃とする)
(7)触媒層伝熱量Qt(kcal/h)、Q(kcal)を計算する。
【0064】
触媒層容積(m3)=(175/1000)×(160/1000)×(80/1000)であるので、
Figure 0004106579
ここで、例えば1秒毎に区切って触媒層の温度が何℃になっているか計算する。最初の1秒間に触媒層(容器+触媒)が加熱源ガスから受ける熱量Q(kcal)は以下のようになる。
【0065】
Q(kcal)=Qt(kcal/h)×(1h/3600sec)×1sec=18(kcal)(8)加熱を開始してから最初の1秒間で触媒層温度が20℃から何℃まで上昇するか計算する。
【0066】
触媒層(容器+触媒)の熱容量Hr(kcal/℃)は、ヒータ加熱の検討で計算したように、
Figure 0004106579
であるので、温度上昇度ΔT(℃)は、
Figure 0004106579
従って、触媒層温度Tse( ℃) =20( ℃) +17( ℃) =37(℃)となる。
【0067】
次の1秒間に触媒層が加熱源ガスから受ける熱量は、(6)項に戻って触媒層初期温度を、Tss(℃) =37( ℃) と置き換えて、再びqp(kcal/m3h)を計算し、続いて(7),(8)項の計算を繰り返し、触媒層温度Tse( ℃) を求める。
【0068】
その次の1秒間についても同様に計算を繰り返し、触媒層温度Tse( ℃) >150(℃)となるまでの加熱開始からの累積時間を求める。
【0069】
図3に、その計算結果を示す。図3によると、必要累積時間は13秒ということになる。
【0070】
以上の検討結果から、従来の起動方法(ヒータ加熱)で10(min)かかっていたものが、ガス導入加熱による本発明の方法により13秒に短縮できることが分かる。
【0071】
次に、前記請求項1ないし3の運転方法を実施するための改質器本体に関わる構成としては、下記のような装置が好適である。即ち、請求項1ないし3のいずれかに記載の燃料改質器の運転方法を実施するための燃料改質器であって、改質反応容器の上流側に配設された第1の触媒層と、この触媒層に隣接してその下流側に配設された第2の触媒層と、前記第1の触媒層のガス入口部に設けられた起動時入口マニホールドと、前記第2の触媒層における改質反応容器の側部であって第1の触媒層と隣接する部位に設けられた運転時入口マニホールドと、起動後の原燃料ガスと酸化剤ガスの供給切り替え手段と、前記第2の触媒層の所定位置に配設された温度センサと、このセンサの出力信号に基づいて第2の触媒層が所定温度に到達した際に原燃料ガスと酸化剤ガスの供給切り替えを行うための制御装置とを備えるものとする(請求項4)。
【0072】
また、上記請求項4に記載の燃料改質器において、前記起動後の原燃料ガスと酸化剤ガスの供給切り替え手段は、前記原燃料ガスと酸化剤ガスの起動時供給ラインおよび運転時供給ラインと、この供給ライン上にそれぞれ設けられ前記制御装置の出力信号によって駆動される電磁弁とを備えるものとする(請求項5)。
【0073】
【発明の実施の形態】
図面に基づき、本発明の実施の形態について以下にのべる。
【0074】
図1は、この発明の実施例に関わる燃料改質器の概略構成を示す。図1において、6は入口の原燃料ガス供給配管を示し、22は起動時の貴金属系触媒層100への供給ライン、また23は運転時の銅・亜鉛系触媒層110への供給ラインを示す。24及び25は切り替え用の電磁しゃ断弁を示し、24は起動時開で運転時閉、25は運転時開で起動時閉の動作を行わせる。26、27は各々起動時、運転時の入口ノズルを示し、28及び29は各々起動時、運転時の入口マニホールドを示す。
【0075】
また、120の網掛け部分は銅・亜鉛系触媒層入口部の起動時の昇温対象部を示し、銅・亜鉛系触媒層の全体容量の約1/4を占める。130は触媒層を形成する改質器の反応容器を示し、140、150はそれぞれ出口マニホールド及び出口ノズルを示す。160はガスが通過するパンチングプレートを示す。これは触媒を固定する役割を果たしている。また、運転時の入口マニホールド29と改質器反応容器130の重なった部分にはガスが通過出来るように反応容器13に穴が設けられている。
【0076】
さらに、銅・亜鉛系触媒層の網掛け部分には、温度センサ31が設けられ、その温度出力が制御装置32に入力される。この温度センサの出力に基づき、前記切り替え用電磁しゃ断弁24及び25の開閉動作が行われる。起動時には原燃料ガスは22のルートを通り貴金属系触媒層100に入り、常温で反応を開始する。反応後の高温ガスは下流側の銅・亜鉛系触媒層120に入りこの部分を昇温する。温度センサ31が所定の温度(150℃)を検出した際には、原燃料ガスを22のルートから23のルートへ切り替え、貴金属系触媒層100をバイパスし直接銅・亜鉛系触媒層へ原燃料ガスの供給を切り替えて、銅・亜鉛系触媒層110のみで反応を行うようにする。
【0077】
上記装置により、第1の触媒層(貴金属系触媒層100)で反応生成した高温ガスを、下流側の第2の触媒層(銅・亜鉛系触媒層110)に通流することにより第2の触媒層を加熱昇温し、この第2の触媒層が所定温度150℃に到達後、第1の触媒層への原燃料ガスと酸化剤ガスの供給を停止し、第2の触媒層への直接供給に切り替えることができる。これにより、短時間で反応が開始でき起動時間を短縮できる。
【0078】
【発明の効果】
上記のとおり、この発明によれば、メタノール,エタノールまたは液状の炭化水素と水との混合物である原燃料を気化した原燃料ガスを酸化剤ガスとともに改質触媒層に通流し、水蒸気改質反応と部分酸化改質反応との併用によって水素リッチな改質ガスを生成する燃料改質器の運転方法において、起動時のみ、上流側の第1の触媒層(貴金属系触媒層)に前記原燃料ガスと酸化剤ガスとを供給して常温で反応を開始し、前記第1の触媒層で反応生成した高温ガスを、下流側の第2の触媒層(銅・亜鉛系触媒層)に通流することにより第2の触媒層を加熱昇温し、この第2の触媒層が所定温度(例えば、150℃)に到達後、第1の触媒層への原燃料ガスと酸化剤ガスの供給を停止し、第2の触媒層への直接供給に切り替えること(請求項1〜3の発明)および、請求項1ないし3のいずれかに記載の燃料改質器の運転方法を実施するための燃料改質器であって、改質反応容器の上流側に配設された第1の触媒層と、この触媒層に隣接してその下流側に配設された第2の触媒層と、前記第1の触媒層のガス入口部に設けられた起動時入口マニホールドと、前記第2の触媒層における改質反応容器の側部であって第1の触媒層と隣接する部位に設けられた運転時入口マニホールドと、起動後の原燃料ガスと酸化剤ガスの供給切り替え手段(例えば、電磁弁を使用)と、前記第2の触媒層の所定位置に配設された温度センサと、このセンサの出力信号に基づいて第2の触媒層が所定温度に到達した際に原燃料ガスと酸化剤ガスの供給切り替えを行うための制御装置とを備えるものとする(請求項4,5の発明)により、CO濃度を従来と同等としつつも、起動時間の短縮を図った燃料改質器とその運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の燃料改質器の実施例の概略構成を示す図
【図2】従来の燃料改質器の起動方法に関わる起動昇温時間の試算結果を示す図
【図3】この発明の燃料改質器の起動方法に関わる起動昇温時間の試算結果を示す図
【図4】従来の燃料改質器を燃料電池発電装置に適用した場合の概略フロー図
【図5】従来の燃料改質器の概略構成を示す図
【符号の説明】
6:原燃料ガス供給配管、22:起動時供給ライン、23:運転時供給ライン、24,25:電磁弁、28:起動時入口マニホールド、29:運転時入口マニホールド、31:温度センサ、32:制御装置、100:第1の触媒層(貴金属系触媒層)、110:第2の触媒層(銅・亜鉛系触媒層)、130:反応容器。

Claims (5)

  1. メタノール,エタノールまたは液状の炭化水素と水との混合物である原燃料を気化した原燃料ガスを酸化剤ガスとともに改質触媒層に通流し、水蒸気改質反応と部分酸化改質反応との併用によって水素リッチな改質ガスを生成する燃料改質器の運転方法において、起動時のみ、上流側の第1の触媒層に前記原燃料ガスと酸化剤ガスとを供給して常温で反応を開始し、前記第1の触媒層で反応生成した高温ガスを、下流側の第2の触媒層に通流することにより第2の触媒層を加熱昇温し、この第2の触媒層が所定温度に到達後、第1の触媒層への原燃料ガスと酸化剤ガスの供給を停止し、第2の触媒層への直接供給に切り替えることを特徴とする燃料改質器の運転方法。
  2. 請求項1に記載の運転方法において、前記第1の触媒層は、貴金属系触媒層であり、前記第2の触媒層は、銅・亜鉛系触媒層であることを特徴とする燃料改質器の運転方法。
  3. 請求項1または2に記載の運転方法において、前記第2の触媒層の所定温度は、150℃であることを特徴とする燃料改質器の運転方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載の燃料改質器の運転方法を実施するための燃料改質器であって、改質反応容器の上流側に配設された第1の触媒層と、この触媒層に隣接してその下流側に配設された第2の触媒層と、前記第1の触媒層のガス入口部に設けられた起動時入口マニホールドと、前記第2の触媒層における改質反応容器の側部であって第1の触媒層と隣接する部位に設けられた運転時入口マニホールドと、起動後の原燃料ガスと酸化剤ガスの供給切り替え手段と、前記第2の触媒層の所定位置に配設された温度センサと、このセンサの出力信号に基づいて第2の触媒層が所定温度に到達した際に原燃料ガスと酸化剤ガスの供給切り替えを行うための制御装置とを備えることを特徴とする燃料改質器。
  5. 請求項4に記載の燃料改質器において、前記起動後の原燃料ガスと酸化剤ガスの供給切り替え手段は、前記原燃料ガスと酸化剤ガスの起動時供給ラインおよび運転時供給ラインと、この供給ライン上にそれぞれ設けられ前記制御装置の出力信号によって駆動される電磁弁とを備えることを特徴とする燃料改質器。
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