JP4106504B2 - クリームはんだ及びクリームはんだ用フラックス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はクリームはんだ及びクリームはんだ用フラックスに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子部品の表面実装では、フラックスとはんだ粉末を混練した、いわゆるクリームはんだを用い、メタルマスク等を利用して該クリームはんだをプリント基板に塗布・印刷し、部品を搭載した後リフロー炉等を用いて加熱溶融させて部品を接続する方法が採られている。このようなクリームはんだに用いられるフラックスは、一般的にロジン類、溶剤、活性剤、チキソ剤等により構成されている。また、通常、はんだ粉末は錫−鉛合金が用いられている。
【0003】
しかしながら、混練されたクリームはんだ中では、はんだ粉末とフラックスが混合された状態にあるため、クリームはんだの保管中に、ハンダ粉末とフラックス中の活性剤等が反応を起こすことがあり、特に、ハンダ粉末として、インジウムを含むハンダ合金を用いる場合には、両者の反応性が非常に大きくなる。その結果、クリームはんだの粘度が変化したり、「皮張り」と呼ばれるクリームはんだ表面が皮を張ったように硬くなったり、「ボソツキ」と呼ばれるクリームはんだ全体の粘調性が失われる等の経時変化を生じるという問題がある。粘度が変化したり、「皮張り」や「ボソツキ」を生じたクリームはんだは、基板への印刷性やはんだ粉末のぬれ性が極端に低下し、印刷不良、ぬれ不良等を生じ易くなる。さらに、印刷後リフローされるまでの間に数時間から数十時間経過する場合もあり、この間に同様の経時変化が生じた場合にもはんだ粉末のぬれ不良等を生じ、基板と部品との接続不良を生じる恐れがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、保管時や基板塗布後リフローまでの放置時間中に、「皮張り」や「ボソツキ」、粘度変化等の経時変化を生じることがないクリームはんだを提供することを主な目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、クリームはんだ中に、アセチレンアルコール系化合物を含有させることにより前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、下記のクリームはんだ及びクリームはんだ用フラックスを提供するものである。
(a) (1)はんだ粉末、(2)液状またはペースト状フラックス、及び(3)アセチレンアルコール系化合物を含有するクリームはんだ。
(b) 液状またはペースト状フラックスが、フラックスベース、溶剤、及びチキソ剤を含むものである上記項(a)に記載のクリームはんだ。
(c) アセチレンアルコール系化合物が、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオールから選ばれた少なくとも一種である上記項(a)又は(b)に記載のクリームはんだ。
(d) はんだ粉末が、インジウムを含むはんだ合金である上記項(a)〜(c)のいずれかに記載のクリームはんだ。
(e) フラックスベース、溶剤及びチキソ剤を含むクリームはんだ用フラックスであって、更に、アセチレンアルコール系化合物を含有することを特徴とするクリームはんだ用フラックス。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のクリームはんだは、(1)はんだ粉末、(2)液状またはペースト状フラックス、及び(3)アセチレンアルコール系化合物を含有するものである。
【0008】
はんだ粉末としては、従来から用いられている各種のはんだ合金を用いることができ、その合金組成は特に限定はされない。例えば、はんだ合金としては、従来公知の錫−鉛合金や、鉛フリーはんだとして開発されている錫−銀合金、錫−亜鉛系合金等のはんだ合金組成のもの;さらには前記はんだ合金に、銅、ビスマス、インジウム、アンチモン等を添加したものなどを使用できる。特に、はんだ合金が、インジウム等のフラックス中の活性剤との反応性に富む成分を含む場合に、はんだ合金とフラックス成分の反応を抑制できる点で、本発明のクリームはんだは有効である。この様なインジウムを含有するはんだ合金の具体例としては、合金中のインジウム含有量が0.03〜5重量%程度のものを挙げることができる。
【0009】
また、はんだ粉末の形状も特に限定されるものではなく、真球、不定形及び両者の混合等、いずれの形状のはんだ粉末も使用できる。はんだ粉末の粒径については、特に限定はされないが、通常、平均粒径5〜50μm程度のものを用いることが好ましい。
【0010】
本発明のクリームはんだで用いるフラックスとしては、一般に、クリームはんだ用フラックスとして使用されている各種の液状またはペースト状フラックスを使用できる。当該フラックスは、通常、フラックスベース、溶剤、チキソ剤を含み、更に、必要に応じて、活性剤等を含むものである。これらの各成分の組成比は、各種用途に応じて適宜に調整される。通常、フラックス全体を100重量%として、フラックスベース30〜75重量%程度、溶剤20〜60重量%程度、チキソ剤1〜10重量%程度、活性剤0〜20重量%程度とすればよい。
【0011】
フラックスベースとしては、通常のクリームはんだ用フラックスに配合されている成分、例えば、ガムロジン、重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、その他各種ロジン誘導体や、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、テルペン樹脂等の合成樹脂等を用いることができる。
【0012】
溶剤としても、通常のクリームはんだ用フラックスに配合されている溶剤、例えば、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ヘキシレングリコール、テルピネオール等のアルコール類、安息香酸ブチル、アジピン酸ジエチル等のエステル類、ドデカン、テトラデセン等の炭化水素類等を用いることができる。
【0013】
チキソ剤についても、通常のクリームはんだ用フラックスに配合されているチキソ剤、例えば、硬化ひまし油、蜜ロウ、カルナバワックス、ステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド等を使用することができる。
【0014】
活性剤としては、アミンのハロゲン化水素酸塩、有機酸類、有機アミン類等の一般に知られている活性剤を使用できる。アミンのハロゲン化水素酸塩の具体例としては、ジエチルアミン臭化水素酸塩、シクロへキシルアミン塩酸塩等を挙げることができ、有機酸類の具体例としては、アジピン酸、ステアリン酸、安息香酸等を挙げることができ、有機アミン類の具体例としては、へキシルアミン、ジオクチルアミン、トリエチルアミン等を挙げることができる。
【0015】
さらに、フラックス中には、酸化防止剤、防黴剤、艶消し剤等の添加剤を配合することができる。
【0016】
本発明のクリームはんだに配合するアセチレンアルコール系化合物とは、アセチレン結合に隣接する炭素に水酸基が結合している構造を有する化合物をいう。かかるアセチレンアルコール系化合物の具体例としては、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール等があげられる。これらの化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0017】
アセチレンアルコール系化合物は、前記のような構造的な特徴により、三重結合周辺の電子密度が非常に高く、高極性グループを形成しているため、クリームはんだ中において金属への強い配向性を示し、はんだ粉末の表面に配向して、はんだ粉末と活性剤(フラックス成分)の接触を抑制すると考えられる。その結果、はんだ粉末と活性剤の反応が抑制され、「皮張り」や「ボソツキ」、粘度変化等の経時変化を生じないクリームはんだを得ることができる。
【0018】
本発明のクリームはんだは、(1)はんだ粉末、(2)液状またはペースト状フラックス、及び(3)アセチレンアルコール系化合物を含有するものであり、アセチレンアルコール系化合物の使用量は、はんだ粉末と液状またはペースト状フラックスの合計量100重量部に対して、0.005〜1重量部程度とすれば良い。特に、アセチレンアルコール系化合物は、経時変化防止効果の点から0.01重量部程度以上とするのが好ましい。また、アセチレンアルコール系化合物の使用量が多くなりすぎると、他のフラックス成分である樹脂分、活性剤分、チキソ剤分等の含有率が減少し、ダレによる印刷不良や、はんだのぬれ不良によるはんだ付け性の低下、はんだボールの発生等の不良を生じる恐れがあるので、アセチレンアルコール系化合物の使用量は0.5重量部程度以下とするのがより好ましい。はんだ粉末と液状またはペースト状フラックスとの使用割合は、両者の合計量を100重量%として、はんだ粉末80〜95重量%程度とフラックス5〜20重量%程度とすればよい。
【0019】
クリームはんだの調製方法は特に制限されず、はんだ粉末、フラックス、及びアセチレンアルコール系化合物を同時に混和する方法、フラックスとアセチレンアルコール系化合物を予め混合して、アセチレンアルコール系化合物を含有するフラックスを調製したのち、このフラックスとはんだ粉末を混和する方法、あらかじめアセチレンアルコール系化合物をはんだ粉末表面に吸着させて、これをフラックスと混和する方法等があげられる。
【0020】
特に、フラックスとアセチレンアルコール系化合物を予め混合して、アセチレンアルコール系化合物を含有するフラックスとして、はんだ粉末と混合する方法が、アセチレンアルコール系化合物の分散性と配向性の向上の点で好ましい。アセチレンアルコール系化合物を含有するフラックスとする場合には、アセチレンアルコール系化合物を含むフラックス全体を100重量%として、フラックスベース30〜75重量%程度、溶剤20〜60重量%程度、チキソ剤1〜10重量%程度、活性剤0〜20重量%程度、アセチレンアルコール系化合物0.025〜10重量%程度とすればよい。
【0021】
本発明のクリームはんだは、常法に従って、電子部品、電子モジュール、プリント配線板等の製造時のリフローはんだ付け用のはんだ等として有効に用いることができる。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、各種はんだ粉末を使用した場合にも、保管時や基板塗布後リフローまでの放置時間中に、「皮張り」や「ボソツキ」、粘度変化等の経時変化を生じることがないクリームはんだを提供することができる。その結果、本発明のクリームはんだは、使用に際して良好な塗布・印刷性をもち、かつ良好なはんだ付け性を発揮するものである。
【0023】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
実施例1〜6および比較例1〜2
(1)フラックスの調製
下記表1及び表2に記載したロジン、溶剤、活性剤、チキソ剤及びアセチレンアルコール系化合物を容器に仕込み、加熱溶解後、冷却して、フラックスを調製した。
(2)クリームはんだの調製
はんだ粉末として、粒径20〜40μmのSn−Pb合金(63wt%/37wt%)又はSn−Pb−In合金(63wt%/35wt%/2wt%)を用い、はんだ粉末90.5重量部と上記(1)項で調製したフラックス9.5重量部を容器にとり、攪拌してクリームはんだを得た。
(3)クリームはんだの評価
・皮張り
上記(2)で調製したクリームはんだを、容器中で25℃で15日間保存した後、ガラス棒でクリームはんだ表面に触れてみて、クリームはんだ表面の皮張りの有無を評価した。
・ぼそつき
皮張りの評価に使用したクリームはんだをガラス棒で攪拌し、ぼそつきの有無を評価した。
・粘度
上記(2)で調製したクリームはんだの初期状態と、保存後のぼそつき評価に使用したクリームはんだの粘度を測定した。粘度はスパイラル型粘度計(マルコム社製、PCU−205)を使用して、25℃、10rpmで測定した。
・印刷性
25℃で15日間保存したクリームはんだをメタルマスクを用いて、銅張り積層板上に印刷し、ローリング性、かすれ等を評価した。
・はんだ付け性
印刷性を評価した銅張り積層板を、ピーク温度230℃でリフローし、クリームはんだのはんだ付け性を評価した。
【0024】
なお、それぞれの評価は次の基準で判定した。
◎:非常に良好
○:良好
△:使用可能
×:不良
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
Claims (5)
- (1)はんだ粉末、(2)液状またはペースト状フラックス、及び(3)アセチレンアルコール系化合物を含有するクリームはんだ。
- 液状またはペースト状フラックスが、フラックスベース、溶剤、及びチキソ剤を含むものである請求項1に記載のクリームはんだ。
- アセチレンアルコール系化合物が、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオールから選ばれた少なくとも一種である請求項1又は2に記載のクリームはんだ。
- はんだ粉末が、インジウムを含むはんだ合金である請求項1〜3のいずれかに記載のクリームはんだ。
- フラックスベース、溶剤及びチキソ剤を含むクリームはんだ用フラックスであって、更に、アセチレンアルコール系化合物を含有することを特徴とするクリームはんだ用フラックス。
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