JP4105230B2 - モノホスホリルリピドaを用いてi型過敏症を治療する方法 - Google Patents

モノホスホリルリピドaを用いてi型過敏症を治療する方法 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、モノホスホリルリピドA(monophosphoryl lipid A)または3-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3-deacylated monophosphoryl lipid A)を単独もしくはアレルゲンと併用して患者に投与することによってI型免疫グロブリンE(IgE)依存性過敏症を治療または予防するための方法に関する。
発明の背景
アトピー性アレルギー反応に代表されるI型IgE依存性過敏症は、環境抗原(アレルゲン)に曝露された際にIgE抗体を過剰産生する特定の個体に起こる。アレルギーには、米国の40万人以上を含め、世界中のかなりの数の人々が罹患している。アレルギー性疾患には、鼻炎、喘息およびアトピー性皮膚炎が含まれる。一般的な環境アレルゲンには、花粉、カビ、食物、薬剤、室内チリダニおよび動物性鱗屑が含まれる。
近年、I型IgE依存性過敏感反応の基礎をなす免疫機構に関する理解がかなり進んできている。I型過敏症の分子的基盤には、免疫系のいくつかの部分間の複雑な相互作用が関与している。アレルギーカスケードにおけるこれらの複雑な相互作用は、治療的介入の対象となる多くの有望な箇所を提供する。一般的には、I型過敏症はアレルゲン特異的IgEの形成に原因があると理解されている。アレルゲン特異的IgEは、組織中のマスト細胞または主に血液中にある好塩基球と受動的に結合する。アレルギー反応の発生は、マスト細胞または好塩基球上、およびおそらくは他の細胞上にもあるIgEと結合して細胞にヒスタミンを含む数多くの伝達物質(mediator)を放出させる、アレルゲンの局所適用、注射、経口摂取または吸入による曝露によって惹起される。これらの伝達物質は、喘息、浮腫および炎症などの種々の臨床症状を引き起こす。個体によっては、症状が特に重篤でなことがあり、アナフィラキシーショックを引き起こしたり、直ちに治療が成されなければ死亡する可能性もある。臨床症状は、抗ヒスタミン薬、クロモリンおよび副腎皮質ステロイドを含む種々の薬剤によって治療されることが最も一般的である。
脱感作療法(desensitizasion regimen)の形式によるアレルゲン免疫療法も、臨床的に意味のあるI型過敏感反応を呈する個体の治療に広く用いられている。アレルゲンに対する臨床的な反応低下または脱感作を達成するために、一定期間にわたって、この個体に少量の有害アレルゲン(offending allergen)が接種される。典型的には、アレルゲンの初回投与量は極めて低く、いわゆる維持量に達するまで徐々に増加させ、それを数カ月または数年にわたって継続する。このタイプの免疫療法は、アトピー性アレルギー(花粉症、昆虫刺傷性アレルギー、および喘息の一部の形態を含む)の罹患者に対する治療法として一般化しているが、これには重大な欠点がある。中でも最も懸念が持たれるのは、アレルゲンの投与に伴って重度のアレルギー反応が起こるリスクがあることである。このようにアナフィラキシーショックなどの重度のアレルギー反応が起こるという固有のリスクがあることから、この治療計画(treatment regimen)では最初に極めて少量のアレルゲンを用い、アレルゲンの用量を必ず徐々に増やすように定められているが、現在用いられている治療で得られる結果は用量依存的であるため、この結果、治療期間は長くなり、満足な結果を達成するために必要となる注射回数も増える。したがって、免疫療法の全体としての成功には制限が課せられ、臨床的管理の目標も、アレルゲン免疫療法などの免疫的手法によるアレルギーカスケードの調節よりは、むしろ投薬に伴う症状のコントロールに向けられることがしばしばである。さらに、持続的なアレルギー反応を有する患者では、脱感作手順を用いて得られる結果がまちまちであることも多い。アレルゲン免疫療法は、アレルゲンを中和する阻止抗体(主にIgG)の賦活、宿主反応をTH2型からTH1型により近い反応に変化させること、注入された特異的なアレルゲンに対するIgE抗体の上昇をまず促して次に徐々に低下させること、特異的な抗イディオタイプ抗体の賦活、およびアレルギー型炎症反応の低下を含む、複雑な免疫学的応答を誘発する。
免疫療法の否定的な面を抑えつつ、その利点を保持または増強させようとする努力によって、種々の代替的な治療手法が考案されている。これらの代替的な手法には、I型過敏感反応を呈する個体に投与されるアレルゲンの剤形変更(reformulation)が含まれる。このような剤形には、ミョウバン沈降アレルゲン抽出物、化学修飾を受けたアレルゲン製剤、リポソーム中に封入されたアレルゲン、および他のアジュバントと併用されるアレルゲンが含まれる。米国特許第5,013,555号は、アレルゲンを含有するリポソームの使用を記載している。米国特許第4,990,336号は、マイクロカプセルを用いる多相性持続放出デリバリーシステムを記載している。アレルゲンを固体支持体中に含めて投与する経口療法は、米国特許第5,244,663号に記載されている。ミョウバンは、米国食品医薬品局(FDA)が現在承認している唯一のアジュバントである。しかし、動物モデルでは、ミョウバンはIgE産生を低下させるのではなく増強することが示されており、これは望ましくない。脱感作療法に使用するためのサポニン(米国特許第4,432,969号)およびチロシンのアルキルエステルなどの他のアジュバントも記載されている。その他の治療手法には、修飾ペプチド(米国特許第5,073,628号)またはIL-4受容体アンタゴニスト(特許協力条約、国際公開公報第93/15766号)が含まれる。これらの代替的な手法には、アレルゲンの特異性の欠如または許容できない反応を惹起するリスクなどの潜在的な限界がある。特異的アレルゲン免疫療法はある程度有効であることが実証されているが、これは一貫して安全というわけではなく、またはすべての患者もしくはすべてのアレルゲンに関して成功しているわけでもない。現在用いられているようなアレルゲン免疫療法は、依然として議論のある治療形態である。代替的または補完的で有効なアレルギー療法の戦略については継続的な需要がある。
発明の概要
本発明は、個体におけるI型IgE依存性過敏症を治療または予防する方法、ならびに該治療のための組成物を目的とする。本方法は、個体に対して、有効量のモノホスホリルリピドA(MLA)または3-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MLA)を投与することを含む。驚くべきことに、I型過敏症に罹患した個体に投与されたMLAまたは3D-MLAは、総IgEまたはアレルゲン特異的IgEを減少させる一方で、好ましいことにIgG抗体の産生を誘導することが見いだされている。IgG抗体はアレルギー反応を低下させる阻止抗体である。MLAまたは3D-MLAは、適切な治療計画(regimen)に従って適切な溶媒中に含まれる有効量を単独で投薬してもよく、アレルゲン特異的I型過敏症の脱感作療法の一部としてアレルゲンとともに投与してもよい。これらの化合物を、IgE依存性アレルギーに関して利点を引き出すことに加えて、ワクチンの効果を増強させるために、ワクチン組成物に添加することもできる。MLAまたは3D-MLAの投与は、その個体が過敏性であるアレルゲンに曝露された際の過敏症の個体における、潜在的に重篤で致死的な可能性すらあるアレルギー反応が起こるリスクを低下させる。
また、本発明には、適切な溶媒中に含まれる有効量のMLAまたは3D-MLAを単独で、または1つのアレルゲンもしくは複数のアレルゲンの混合物とともに含む、I型過敏症を治療するための薬学的組成物も含まれる。または、MLAまたは3D-MLAを、アレルゲンまたはアレルゲンの混合物と、連続的ではあるものの独立した形で投与してもよい。
発明の詳細な説明
I型過敏症に罹患した個体に対するMLAまたは3D-MLAの投与により、該個体がそれに対して感受性である任意のアレルゲンに対するアレルギー反応が調節されることが見いだされている。
I型過敏感反応は、「花粉症」と一般に呼ばれるもので最も多く観察されるような症状を誘発する比較的軽度の反応から、死に至る可能性もあるアナフィラキシー反応などの重篤な反応までさまざまであり、体内で放出されるヒスタミンを含む薬理活性物質によって惹起される。これらの物質は、アレルゲンがマスト細胞、好塩基球およびおそらくは他の細胞にも固定されていると思われるIgEクラスとして知られる抗体と結合した後に、マスト細胞または他の細胞から放出される。I型過敏症を有する患者では、ブタクサ花粉、ネコの鱗屑、室内イエダニなどの物質、または彼らのアレルギー性の反応もしくは疾患の原因となる他の物質に対するIgE抗体の量が異常に多いことが観察されている。
適切な溶媒中に調合された有効量のMLAまたは3D-MLAを投与することにより、IgEクラス抗体の抗体価が大幅に低下し、それによって、ヒスタミンまたは他の伝達物質の放出を効率的に低下させる、マスト細胞に付着しうるIgE抗体の量が低下することが見いだされている。何ら特定の理論に拘束されるものではないが、MLAまたは3D-MLAの投与は、アレルゲン特異的IgGの生産を促し、IgE抗体の生産を低下させると考えられている。続いてIgGはアレルゲンと結合してこれを中和し、過敏感反応を惹起するIgE-アレルゲン相互作用を本質的に遮断すると考えられる。IgEの減少によって、その個体がアレルゲンによるアレルギー反応を有する傾向は弱くなる。
本発明は、患者に応じた有効量のMLAまたは3D-MLAを食む薬学的組成物の投与によってIgE抗体よりもIgG抗体を選択的に刺激し、それによって脱感作療法の一部としてのアレルゲンの投与を要することなく任意のアレルゲンに対するアレルギー反応を実質的に低下させると考えられる点で現行の治療法よりも改良された代替法を提供する。脱感作療法に有効量のMLAまたは3D-MLAを含む薬学的組成物と適切なアレルゲンとの同時投与が含まれる場合には、本方法はそのアレルゲンの投与に対するアレルギー反応が起こるリスクを低下させうる。このことは、本発明が、より少量の脱感作アレルゲンまたはより少数回の注射しか必要としないアレルゲン免疫療法における変化を可能にしうることによって達成されると考えられる。
細菌ワクチンとともに投与される有効量のMLAまたは3D-MLAも、同様に、IgEを減少させる一方でIgGの産生を促進すると考えられる。産生されるIgGは、ワクチンの効果を増強するワクチン中の細菌抗原に特異的であると考えられる。幼児期の感染を予防するための通常の手順である乳幼児の一次免疫処置のために調製される、MLAまたは3D-MLAを含むワクチンは、その乳幼児が環境中の極めてさまざまなアレルゲンに対してアレルギー性になる傾向を弱めると考えられる。
本明細書で用いられるI型過敏症の「治療」とは、有益または望ましい臨床的結果を得るための方法のことである。望ましい臨床的結果には、症状の発生予防または緩和が含まれるが、これらに限定はされない。
本発明に従いI型過敏症に罹患した個体を治療するための活性化合物は、モノホスホリルリピドA(MLA)および3-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MLA)からなる群より選択される精製無毒化エンドトキシン(refined detoxified endotoxin)である。MLAおよび3D-MLAはいずれも知られており、本明細書で詳細を説明する必要はない。例えば、1984年3月13日に発行され、リビ・イムノケム・リサーチ社(Ribi ImmunoChem Research Inc.)に譲渡された、モノホスホリルリピドAおよびその製造法を開示している米国特許第4,436,727号を参照されたい。同じくリビ・イムノケム・リサーチ社に譲渡された、マイヤーズ(Myers)らに対する米国特許第4,912,094号および再審査証明書B1 4,912,094号は、3-脱アシル化モノホスホリルリピドAおよびその製造のための方法を具体化している。MLAおよび3D-MLAに関するこれらの特許のそれぞれの開示は、参照として本明細書に組み入れられる。
参照特許によってあらかじめ組み入れられた詳細には触れないが、本明細書で用いられるモノホスホリルリピドA(MLA)は、強力であるが極めて毒性の強い免疫系調節物質である腸内細菌リポ多糖(LPS)の成分であるリピドAに由来する。
エドガー・リビ(Edgar Ribi)らは、精製無毒化エンドトキシン(RDE)と最初に呼ばれたモノホスホリルリピドA(MLA)の生産を実現させた。MLAは、グラム陰性菌の無ヘプトース変異株から採取したエンドトキシン抽出物(LPSまたはリピドA)を、中等度の強度(0.1N HCl)を有する無機酸中にて約30分間にわたって環流することによって生成される。この処理によって、還元端グルコサミンの1位にあるリン酸部分の損失がもたらされる。
同時に、コア炭水化物(core carbohydrate)がこの処理の間に非還元性グルコサミンの6位から除去される。この結果得られる産物(MLA)は、発熱性、局所的シュワルツマン反応性、およびニワトリ胚50%致死量アッセイにおいて評価されるような毒性(CELD50)などの、エンドトキシン開始材料に通常伴う内毒素活性レベルの大幅な低下を呈する。しかし、予想外なことに、これはリピドAおよびLPSの免疫調節物質としての機能を保持している。
本発明の実践において用いられると考えられるもう1つの無毒化エンドトキシンは、3-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MLA)と呼ばれる。3D-MLAは、米国特許第4,912,094号、再審査証明書B1 4,912,094号に記されている通り公知であり、MLA分子から、他の基に有害な影響を及ぼさない条件下で還元端グルコサミンの3位と連結したエステルであるB-ヒドロキシミリスチンアシル残基が選択的に除去されている点でMLAと異なる。3-脱アシル化モノホスホリルリピドAは、リビ・イムノケム・リサーチ社(Ribi ImmunoChem Research Inc.)、Hamilton, Montana 59840から入手可能である。
MLAおよび3D-MLAの分子は、数多くの脂肪酸置換パターン、すなわちヘプタアシル、ヘキサアシル、ペンタアシルなどと、種々の長さの脂肪酸鎖との複合物または混合物である。したがって、本発明には、それらの混合物を含む、種々の形態のMLAおよび3D-MLAが包含される。――094号特許において図示されているリピドAの骨格は、S. minnesota R595に由来するヘプタアシルリピドAの3-脱アシル化によって得られる産物に対応する。その他の脂肪酸置換パターンは本開示によって包含される。その本質的な特徴は、材料が3-脱アシル化されていることである。
本発明において用いられる修飾された3D-MLAは、リピドA骨格の3位から単一の脂肪酸のみの損失が生じる条件下で、MLAをアルカリ性加水分解にかけることによって調製される。3位のB-ヒドロキシミリスチン脂肪酸は、アルカリ性溶媒中では反応性が非常に高くなる。リピドAを完全に3-脱アシル化するためには、非常に弱いアルカリ処理を行うだけでよい。リピドA内部のその他のエステル結合の加水分解が起こるにはこれよりもある程度強い条件が必要であるため、分子の残りの部分に有意な影響を及ぼすことなく、3位にあるこれらの材料を選択的に脱アシル化することが可能である。3位のエステル結合性B-ヒドロキシミリスチン脂肪酸のアルカリ性溶媒に対する感受性が非常に高い理由は今のところ不明である。
アルカリ性加水分解の手順はいくつか知られているが、3位のB-ヒドロキシミリスチン脂肪酸とのエステル結合を超えてさらに加水分解が生じない条件を選択することが重要である。
一般に、加水分解は、水性または有機性の溶媒において実施することができる。後者の場合には、メタノール(アルコール類)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタンなどに加えて、それらの混合物が含まれる。水と上記の有機溶媒の1つまたは複数のものとの混合物も用いることができる。
アルカリ塩基は、種々の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩およびアミン類から選択することができる。例となる塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムなどの無機塩基およびアルキルアミンなどの有機塩基が含まれ、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどが含まれるが、これらに限定はされない。
水性溶媒におけるpHは典型的には約10から14までの間であり、約12から13.5までのpHが好ましい範囲である。加水分解反応は、典型的には約20℃から約80℃まで、好ましくは約50℃から60℃までの温度で、約10分から約30分までの期間にわたって実施される。例えば加水分解は、3%トリエチルアミン水溶液中にて室温(22℃〜25℃)で48時間にわたって実施することができる。温度および加水分解時間の選択における唯一の必要条件は、3位のB-ヒドロキシミリスチンのみが除去されるような脱アシル化が起こることである。
実際的には、特に望ましい加水分解の方法には、リピドAまたはモノホスホリルリピドAをクロロホルム:メタノール2:1(v/v)中に溶解し、pH10.5の0.5M Na2CO3からなる水性緩衝液でこの溶液を飽和させ、続いて45℃〜50℃で吸引器による減圧下(約100mmHg)で溶媒をフラッシュ蒸発させる段階が含まれることが明らかになっている。この結果得られる材料は、3位で選択的な脱アシル化を受けている。この過程を、上記に一覧を示したあらゆる無機塩基を用いて実施することもできる。場合によっては、水性緩衝液で飽和させる前に、有機溶媒にテトラブチルアンモニウムブロミドなどの相転移触媒を添加することが望ましいと考えられる。上記のようにして生成されたMLAおよび3D-MLAのほかに、合成的または半合成的な過程によって生成されたMLAおよび3D-MLAを用いてもよい。
MLAまたは3D-MLAは、温血動物に安全な有効量が投与された際に、IgE抗体のレベルを低下させ、それによってアレルゲンへの曝露に対する重篤なアレルギー反応が起こるリスクを低下させることが観察されている。
本発明の方法は、温血動物、好ましくはヒトに対する、薬学的に有効な担体を備えたMLAおよび3D-MLAからなる群より選択される無毒化エンドトキシンを含む薬理学的有効量の組成物の投与を具体化している。本明細書で用いられる薬学的有効量という用語は、患者の明白な反応が誘発されるため、すなわちIgE抗体の総量の減少および/またはIgG抗体の総量の増加によって任意のアレルゲンへの曝露に起因するアレルギー反応の臨床症状の部分的または完全な遮断が達成されるために十分な組成物の量を意味する。投与は任意の適した経路を介して行うことができ、アレルゲン、個体および望ましい臨床的結果によって異なると考えられる。MLAまたは3D-MLAを、経口的、鼻腔内または吸入などによって粘膜表面を介して投与することもできる。非経口的な経路すなわち腹腔内または筋肉内も、好ましさの程度は落ちるものの用いることはできる。好ましい投与経路は皮下である。
正確な用量は、用いられる特定のMLAまたは3D-MLA、投与経路、薬学的組成物および患者に応じて異なると考えられる。例えば、最も好ましい投与経路(皮下)を用いる場合には、典型的な70kgの成人患者に投与するとすれば、有効成分(MLAまたは3D-MLA)の量は1から約250マイクログラムまで、好ましくは約25から約50マイクログラムまでである。
本発明の方法は、特定の状況に応じた単回または多回の投薬を企図している。任意の事例に関する好ましい投与経路および投与計画は、臨床試験を含む比較的定型的な実験によって確認しうる。
本明細書で用いられる「薬学的に許容される担体」という用語は、有効成分の薬効作用を妨げず、それが投与される患者に有害でない媒体を意味する。薬学的に許容される担体には、水中油型または油中水型の乳濁液、水性組成物、リポソーム、マイクロビーズ、ミクロソームまたはミョウバンが含まれる。
皮下使用のために好ましい担体の例には、米国薬局方(USP)の注射水であるリン酸緩衝生理食塩水(PBS)および0.01〜0.1%トリエタノールアミンが含まれる。担体に関して指摘しておく意義のある1つのポイントは、MLAおよび3D-MLAは規定食塩液(normal saline solution)中では沈殿するため、規定食塩液を本発明の活性成分とともに用いてはならないことが明らかになっている点である。薬学的に許容される非経口溶媒は、有効成分が除去されることなく5ミクロンフィルターを通して溶液または分散物を濾過しうるような、本発明の有効成分の溶液または分散物が提供されるようなものである。
筋肉内使用のための担体には、10%USPエタノール、40%グリコールプロピレン、および5%デキストロースなどの許容される等張液の平衡液が含まれる。MLAまたは3D-MLAの溶解性がリポソーム中で安定化される場合には生理食塩水中での有効成分の沈殿は起こらないと考えられるため、リポソーム中に封入されたMLAまたは3D-MLAを筋肉内使用のために代替的にさらに規定生理食塩液中に溶解することも可能である。
粘膜表面を介した投与のための担体の例は、特定の経路に応じて異なる。経口的に投与される場合には、医薬品級(pharmaceutical grade)のマンニトール、デンプン、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、サッカライドナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを用いることができ、中でもマンニトールが好ましい。鼻腔内に投与する場合には、ポリエチレングリコールもしくはグリコール類、ショ糖および/またはメチルセルロース、ならびに塩化ベンザルコニウム、EDTAなどの防腐剤を用いることができるが、ポリエチレングリコールが好ましく、吸入によって投与する場合には、適した担体はポリエチレングリコールまたはグリコール類、メチルセルロース、調剤用薬剤(dispensing agent)および防腐剤であるが、ポリエチレングリコール類が好ましい。
MLAまたは3D-MLAを適切な媒体中に含めて単独または他の活性成分とともに同時投与してもよい。例えば、好ましい態様では、MLAまたは3D-MLAを脱感作療法の一部としてアレルゲンとともに投与することができる。同時投与の正確なスケジュールは、患者、患者の過敏症の重症度および投与経路に応じて決まると考えられる。一般的には、治療に当たる医師がこれらの因子に基づいて治療計画を設計し、その治療計画は最終的には望ましい結果を達成するための比較的定型的な実験によって決定される。
I型過敏症を治療するために、脱感作療法の一部としてMLAまたは3D-MLAを含む組成物をアレルゲンとともに同時投与する場合には、このような組成物を、アレルゲンを投与する24時間前から24時間後までの間、好ましくはアレルゲン投与の1時間前から同じ時点までに投与してもよい。
「アレルゲン」とは、I型過敏感反応を惹起しうるあらゆる物質のことである。典型的なアレルゲンには、花粉、カビ、食物、動物の鱗屑またはそれらの分泌物、煤煙および昆虫、それらの毒液または分泌物が無制限的に含まれる。I型過敏症の性質に応じて、それらを単独または混合物として投与することができる。アレルゲンを化学的または物理的に修飾してもよい。このような修飾されたアレルゲンまたはアレルゲン誘導体は、当技術分野では周知である。その例には、ペプチド断片、複合体または重合化したアレルゲン誘導体が無制限的に含まれる。
投与しようとするアレルゲンの量は経験的に決定することができ、それは個体の感受性ないし望んでいる臨床的結果に応じて決まる。一般的には、脱感作の治療計画では、最初に少量のアレルゲンの周期的投与が含まれ、治療法の経過に従って、そのレベルを、規定の(計画された)上限に達するか、またはその個体が明らかに有害なアレルギー反応を起こさずにこのようなアレルゲンへの曝露に耐えられるところまで徐々に高めていく。特定の治療内容は、個々の患者の需要にあわせてしばしば調整される。本発明の態様および潜在的な利点は、それが、投与されるアレルゲンのレベルおよび/または注射回数に有意な減少をもたらすことができ、それによって脱感作療法の期間を短縮しうるところにある。さらに、特に過敏性の高い個体に対して投与されるアレルゲンのレベルを有意に低下させることにより、アレルゲンの投与に対して重度のアレルギー反応が起こるリスクは低下すると考えられる。
免疫療法の進行は、臨床的に許容される診断用検査によって監視しうる。このような検査は当技術分野では周知であり、毎日の日誌に記録される症状のレベルおよび補助療法の必要性のレベルに加えて、皮膚検査および特異的なIgE抗体および/またはIgG抗体に関するインビトロ血清学的検査を含む。
以下の実施例は、詳細な例示を目的として示すものであり、本発明の組成物および方法のいずれをも制限しない。本明細書に提示されるラットおよびマウスのモデルは温血動物を代表するもので、ヒトを含む他の温血動物に関する事象とかなり相関する。
実施例I
本実施例は、IgE反応を誘導するために設計されたモデルにおいてIgEのレベルを低下させる3D-MLAの作用を示している。
BALB/cまたはC57B1/6マウスに、100μg卵白アルブミン(OVA)(Sigma Chemicalから入手)+1μg百日咳毒素(Research Products Intl.から入手)を含む2%水中油型乳濁液±50μg 3D-MLAによる免疫化処置を皮下的に行った。一次免疫化処置から14日後に追加免疫処置を行った。さまざまな時点でマウスから採血し、ELISA(試薬類はSouthern Biotechnology Assn. Inc.から入手)により、マウスIgEに関する標準曲線を用いて、総IgEに関する血清の定量化を行った。
以下の表1を参照すると、卵白アルブミンと3D-MLAを同時投与した場合には血清総IgEレベルが有意に低下することをデータは示している。
Figure 0004105230
実施例II
本実施例は、マウスモデルにおいて、ハウスダストアレルゲンによって生産される血清総IgEレベルを低下させる3D-MLAの作用を示している。
BALB/cまたはC57B1/6マウスに、100μgハウスダストアレルゲン(HDA)+1μg百日咳毒素(PT)を含む2%水中油型乳濁液±50μg 3D-MLAによる免疫化処置を皮下的に行った。一次免疫化処置から14日後にマウスに追加免疫処置を行った。追加免疫処置から10日後にマウスから採血し、ELISAにより、マウスIgEに関する標準曲線を用いて、総IgEに関して血清の定量化を行った。
以下の表2を参照すると見てとれる通り、上の実験で得られた結果と一致して、異なる抗原を用いることにより、ハウスダストアレルゲンと3D-MLAを同時投与すると血清全IgEレベルが有意に低下することをこの結果は示している。
Figure 0004105230
実施例III
本実施例は、低レベルのアレルゲンとの多回投与を行った場合の、アレルゲン特異的IgEレベルに対する3D-MLAの効果を示している。
ブラウン-ノルウェイ(Brown Norway)(IgE高反応性)ラット(150〜200g、1群当たり5匹)から前採血を行い、10μgのキーホールリンペット・ヘモシアニン(KLH)(Sigma Chemicalから入手)による免疫化処置を行った。KLHはミョウバン沈降させ、109個の百日咳菌死菌(Connaught Laboratoriesから入手)と混合した。A群には、第14、21、28および35日に30μgのKLHを含む生理食塩水を皮下投与し、続いて第15、22、29および36日に、この皮下注射部位の近くに200μgの3D-MLAを含む0.2mlの0.5%トリエタノールアミンを投与した。B群には、3D-MLAの代わりに対照として0.5%トリエタノールアミン希釈液を用いたことを除いて、A群と同じ処置を行った。第14、28および42日にすべての動物から採血した。KLHをディスクコート抗原(disc coating antigen)として用いるPRASTアッセイによって特異的IgEを測定した。結合したIgEをモノクローナル125Iマウス抗ラットIgE(MARE-1)によって検出した。結果を表3に示す。
第42日のデータは、3D-MLAを投与されたラット(A群)と3D-MLAを投与されなかった対照ラット(B群)とのアレルゲン特異的反応の間に有意差がみられたことを示している。3D-MLAを投与されなかったラットは、KLHの注射のたびに抗原特異的IgEのレベルの定常的な増加を呈した。3D-MLAを投与されたラットにおけるIgEレベルは、以降のKLH注射では増加しなかった。これらの結果は、3D-MLAの投与によって、アレルゲンへの反復的な曝露を行った際の抗原特異的IgEの増加が防止されることを示している。
Figure 0004105230
実施例IV
MLAを、実施例I〜IIIにおける3D-MLAと同じ数量および量で投与すると、同様の結果が得られる。
本明細書で態様を示した方法は、アレルゲンへの暴露に反応して起こるI型過敏症に関連したIgE抗体のレベルを有意に低下させる上で有効であり、阻止性のIgG抗体の産生を促す上ではさらに有効であり、これによって、過敏症に罹患した患者に対するアレルゲンへの曝露によって起こるアレルギー反応のリスクおよび重症度が低下する。
以上の実施例は本発明の例示を目的としたものであり、考えられるそのすべての変更を含むことを意図してはいないことが理解される必要がある。使用される組成物および/または方法の特定の変更も可能であり、それでも本発明の目的は依然として達成される。このような変更は本発明の請求の範囲内にあると考えられる。

Claims (19)

  1. あるアレルゲンに対して過敏症の温血動物におけるI型過敏症を治療するための薬学的組成物であって、モノホスホリルリピドAおよび3-脱アシル化モノホスホリルリピドAからなる群より選択される有効量の精製無毒化エンドトキシンと、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物
  2. 精製無毒化エンドトキシンが約1.0マイクログラムから約250マイクログラムまでの量で投与される、請求項1記載の薬学的組成物
  3. 精製無毒化エンドトキシンが約25マイクログラムから約50マイクログラムまでの量で投与される、請求項1記載の薬学的組成物
  4. 精製無毒化エンドトキシンがモノホスホリルリピドAである、請求項1記載の薬学的組成物
  5. 精製無毒化エンドトキシンが3-脱アシル化モノホスホリルリピドAである、請求項1記載の薬学的組成物
  6. 薬学的組成物が経口的に投与される、請求項1記載の薬学的組成物
  7. 薬学的組成物が非経口的に投与される、請求項1記載の薬学的組成物
  8. 薬学的組成物が皮下投与される、請求項1記載の薬学的組成物
  9. 温血動物に対して、該温血動物がそれに対して過敏性である1つまたはそれ以上の有効量のアレルゲンの投与と組み合わせて使用するための、請求項1記載の薬学的組成物
  10. 薬学的組成物が、該アレルゲンの投与の約1時間前から約1時間後までの間に投与される、請求項9記載の薬学的組成物
  11. 薬学的組成物がアレルゲンの投与と同時に投与される、請求項9記載の薬学的組成物
  12. アレルゲンが、1つまたはそれ以上の花粉アレルゲン、カビアレルゲン、昆虫毒液アレルゲン、昆虫唾液アレルゲン、昆虫の一部もしくは排泄物のアレルゲン、動物性鱗屑アレルゲン、その他の動物アレルゲン、薬物アレルゲン、化学物質アレルゲンおよび食物アレルゲンを含む、請求項9記載の薬学的組成物
  13. 温血動物におけるIgE抗体を減少させIgG抗体を増加させるための薬学的組成物であって、モノホスホリルリピドAおよび3-脱アシル化モノホスホリルリピドAからなる群より選択される有効量の精製無毒化エンドトキシンと、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物
  14. 精製無毒化エンドトキシンが約1.0マイクログラムから約250マイクログラムまでの量で投与される、請求項13記載の薬学的組成物
  15. 精製無毒化エンドトキシンが約25マイクログラムから約50マイクログラムまでの量で投与される、請求項13記載の薬学的組成物
  16. 温血動物に対して、アレルゲン、細菌抗原、ウイルス抗原および微生物抗原からなる群より選択される1つまたはそれ以上の化合物の投与と組み合わせて使用するための、請求項13記載の薬学的組成物
  17. あるアレルゲンに対して過敏症の温血動物におけるI型過敏症を治療するための薬学的組成物であって、モノホスホリルリピドAおよび3-脱アシル化モノホスホリルリピドAからなる群より選択される有効量の精製無毒化エンドトキシンと、該温血動物がそれに対して過敏性である有効量のアレルゲンと、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
  18. 精製無毒化エンドトキシンがモノホスホリルリピドAである、請求項17記載の薬学的組成物。
  19. 精製無毒化エンドトキシンが3-脱アシル化モノホスホリルリピドAである、請求項17記載の薬学的組成物。
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