JP4104771B2 - 既設山岳トンネルの底盤中にインバートを形成する方法 - Google Patents

既設山岳トンネルの底盤中にインバートを形成する方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、既設の山岳トンネルの底盤中にインバートを形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般交通の用に供されている既設の山岳トンネルに盤ぶくれが生じたとき、前記山岳トンネルの底盤補強のため、前記盤ぶくれの発生箇所またはその近傍を前記底盤の幅方向の全部にわたって開削し、その開削跡にコンクリートを打設し、これにより、前記山岳トンネルの覆工の両側壁に連なるインバートを形成することが行われている。
【0003】
ところで、前記底盤の開削の際、前記覆工の両側壁の底面を露出すべく該底面下の地盤が掘削される。このため、両側壁は、前記インバートが設置されるまでの間(より詳細には、前記打設コンクリートの硬化により両側壁が支持されるまでの間)、一時的にその一部において支持を失い、この支持喪失の間に前記覆工が沈下しその両側壁にクラックが発生するおそれがあった。
【0004】
そこで、前記覆工の沈下およびクラックの発生を回避すべく、前記インバートの形成区間を前記トンネルの軸線方向に分割された複数の短い区画とし、これらの区画について、順次に、底盤開削およびコンクリート打設を行っていた。
【0005】
しかし、コンクリートの打設が完了した一の区画に隣接する他の区画における開削は、前記一の区画における打設コンクリートの硬化を待って行う必要があるため、一区間のインバートの形成に長時間を要し、また、このために長期間にわたるトンネルの通行止めを余儀なくされていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、既設山岳トンネルの底盤中へのインバートの形成に要する時間を短縮することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、互いに相対する両側壁を有する覆工を含む既設の山岳トンネルの底盤中にインバートを形成する方法であって、前記底盤の幅方向に関する一半部および他半部のそれぞれについて、工程(a)(b)および(c)を順次に適用することを含む。ここで、前記工程(a)は、前記底盤を開削し、これにより前記覆工の側壁の底面が露出する、前記トンネルの横断方向へ伸びるインバート形成用空間を形成することであり、前記工程(b)は、前記底盤の開削の間に、露出された前記側壁の底面下に該側壁を支持するための複数の支持手段を互いに間隔をおいて配置することであり、また、前記工程(c)は、前記インバート形成用空間にコンクリートを打設することである。
【0008】
前記コンクリートの打設は、前記設置空間のうち前記支持手段が配置されていない部分について行い、次に、前記支持手段を撤去し、該支持手段が配置されていた部分について行うことができる。前記支持手段は、これを撤去することに代えて、コンクリート中に残し、該コンクリート中に埋設することができる。また、前記支持手段は、例えば、前記側壁の底面に一致して当接し得る受け面を有する受け部材と、該受け部材を支持するジャッキとからなり、あるいは、モルタルが注入可能である袋体を含むジャッキからなる。
【0009】
【発明の作用および効果】
本発明によれば、既設山岳トンネルの底盤中にインバートを設置するために行う前記底盤の開削によるインバート形成用空間の形成の間、開削により露出したトンネル覆工の側壁の底面下に該側壁を支持するための複数の支持手段を互いに間隔をおいて配置することから、開削の間およびその後における前記インバート形成用空間へのコンクリート打設の間、前記底盤による支持を失った前記側部の一部を支持し、前記覆工の沈下およびこれに伴う前記覆工へのクラックの発生を防止することができる。したがって、設置されるインバートの長さ(トンネルの軸線方向に関する長さ)の大小に拘わらず、インバートをその全長にわたって一時に形成することができ、これにより、従来と比べて、インバートの形成に要する時間およびトンネルの交通止めの期間を大幅に短縮することができる。
【0010】
前記インバート形成用空間の形成およびその後のコンクリートの打設は、前記底盤の一半部および他半部について順次にまたは両半部の全部について一時に行うことができる。前記両半部を順次に施工する場合にあっては、一半部の施工の間、他半部を前記開削のための掘削機械の配置、掘削土砂運搬用ダンプトラックの通行、生コン運搬用ミキサーの通行、緊急車両の通行等の用に供することができる。
【0011】
また、前記コンクリートの打設について、前記空間のうち前記支持手段が配置されていない部分および前記支持手段の撤去後の空間部分に順次に行うときは、前記支持手段を再使用に供することができる。前記支持手段を打設コンクリート中に埋設するときは、支持手段による前記側壁の支持を前記打設コンクリートが固化するまでの長期にわたって行うことができる。
【0012】
前記支持手段として、前記側壁の底面に一致して当接し得る受け面を有する受け部材と、該受け部材を支持するジャッキとからなるものを使用するときは、前記受け部材の介在下で前記側壁を的確に支えることができる。また、前記支持手段として、モルタルが注入可能である袋体を含むジャッキを用いるときは、前記モルタルの注入によって前記側壁の底面に接する袋体が前記側壁の底面の横断面形状に従って変形することから、同様に、前記側壁を的確に支持することができる。前記袋体からなるジャッキの使用は、特に、これを前記打設コンクリート中に埋設する場合に適する。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1を参照すると、本発明の適用対象である、一般交通の用に供されている既設の山岳トンネルが全体に符号10で示されている。
【0014】
山岳トンネル(以下「トンネル」と略述する。)10は、人や車両のための通行路を規定する馬蹄形断面の覆工12、底盤14および該底盤上に形成された舗装版16を含む。
【0015】
供用中のトンネル10には、その底盤14の一箇所または複数箇所に盤ぶくれ(図示せず)が生じることがある。このような場合、本発明に従って、前記盤ぶくれの発生箇所またはその近傍下の底盤14中に、トンネル10の軸線方向に関する所定の長さ寸法を有するコンクリート製のインバート18を形成、設置することにより、前記盤ぶくれの発生箇所およびその近傍下で底盤14の補強を図ることができる。
【0016】
図示の覆工12は、地山に吹き付けられたコンクリート層からなる一次覆工20と、該覆工を覆うコンクリート層である二次覆工22とからなり、互いに相対する一対の側部24を有する。
【0017】
本発明にあっては、インバート18は、底盤14の開削(図1および図2)およびこれにより生じたインバート形成用空間へのコンクリート打設(図3)の各工程を行うことにより形成され、さらに、路面の修復のために形成後のインバートの上方空間が埋め戻される(図4)。
【0018】
インバート18の形成のため、まず、底盤14の幅方向(トンネル10の横断方向)に関する両半部のうちの一方(一半部)26について、トンネル10の軸線方向に関する所定距離にわたって開削し、これにより、インバート形成用空間28の一部を形成する(図2)。
【0019】
一半部26に引き続き、該一半部に連なる他半部32についても開削し、これにより、インバート形成用空間28の全部を形成してもよい。
【0020】
一半部26を開削し、かつ、他半部32を開削しないで一時的に残す図示の例にあっては、他半部32を、一半部26の開削に用いられる掘削機械の配置、掘削土砂運搬用ダンプトラックの通行、生コン運搬用ミキサーの通行、緊急車両の通行等の用に供することができる。
【0021】
底盤14の開削は舗装版16からこれを掘り下げることにより、あるいは、図示の例のように、舗装版16の一部30を撤去し、これにより底盤14の一半部26を露出した後、該一半部を掘り下げることにより行う。
【0022】
図示の例では、舗装版の一部30は、トンネル10内の前記通行路における中心線により分離された両部分のうちの一方とこれに連なるその他方の一部とからなり、他半部32の一部をも掘り下げる。
【0023】
舗装版16の撤去は、例えばブレーカ(図示せず)を用いて舗装版16を破砕し、バックホー(図示せず)を用いて破砕片を除去することにより行うことができる。また、底盤14の掘り下げは、例えば必要に応じて前記ブレーカを使用して底盤14を破砕し、また、前記バックホーを用いて底盤14を掘削することにより行うことができる。
【0024】
底盤の一半部26および他半部32の一部の掘り下げにより、覆工12の一方(図上右方)の側部24の一部の底面34が露出される。また、側部の底面34下に、後記支持手段のための載置面36(図5参照)を有する、下に凸状のインバートの設置空間28の一部が形成される。
【0025】
底盤14の開削の間、図示の例では一半部26およびその他半部32の一部の掘り下げの間、露出された側壁の底面34とその下方の載置面36との間に、トンネル10の軸線方向に互いに間隔をおいて複数の支持手段38を配置する。
【0026】
支持手段38を配置することにより、底面34の露出によって底盤14による支持を失った側壁24を、掘り下げ後の底盤すなわち載置面36上に支持することができる。これにより、支持喪失に伴う覆工12の沈下およびこれに伴う側壁24へのクラックの発生を防止することができる。
【0027】
支持手段38の一例を図5および図6に示す。この支持手段38は、側壁24をその底面34で受け止めるための受け部材40と、該受け部材を支持する液圧ジャッキ42からなる。
【0028】
受け部材40は、側壁の底面34に一致して接し得る受け面44を有する。受け面44は、したがって、側壁の底面34の横断面形状と同一の横断面形状(図示の例では「く」の字形状)を有する。受け部材40は、載置面36上に配置された液圧ジャッキ42のロッド端に支持されている。
【0029】
支持手段38を側壁の底面34と載置面36との間に配置した後、液圧ジャッキ42を伸長動作させることにより、受け部材の受け面44を側壁の底面34に押し当て、底面34に対して上方向力を及ぼすことができる。上方向力は、側壁の底面34に一致して接する受け部材の受け面44を通して、側壁24に的確かつ効果的に伝達される。
【0030】
液圧ジャッキ42に代えて、これをねじジャッキ(図示せず)とすることが可能である。
【0031】
次に、図7および図8を参照すると、他の例の支持手段38として、モルタルを注入可能である袋体を含むジャッキ46が示されている。前記袋体は、閉鎖された両端部を有する筒体からなり、前記モルタルが漏れない大きさの織目を有する合成繊維製の布で形成されている。前記モルタルは、前記袋体に設けられた注入用口48を介して、前記袋体内に供給することができる。
【0032】
側壁の底面34と載置面36との間に前記袋体を上下方向に向けて配置したジャッキ46に前記モルタルを供給すると、前記袋体が膨らみ、その上端が側壁の底面34に当接し、該側壁に対して上方向力を及ぼす。ジャッキ46は袋体からなることから、前記袋体の上端は側壁の底面34にあたると該底面の形状に一致した形状に変形する。その結果、前記受け部材40の受け面44と同様、側壁をその底面34から的確に保持する。前記袋体内に注入された前記モルタルはその後前記袋体内で固化する。
【0033】
図9および図10に示すように、前記袋体からなるジャッキ46は、上端開放の例えば鋼製の筒体50に収納することができる。前記袋体に設けられたモルタル注入用口48は、筒体50に設けられた穴を通してその外部に突出している。
【0034】
これによれば、前記袋体は、該袋体への前記モルタルの注入に伴う前記袋体の膨みが上方向にのみ可能であるように制限されるため、側壁24に対する上方向力の付与をより確実に行うことができる。
【0035】
インバート形成用空間28の前記一部の形成および複数の支持手段38の配置後、インバート形成用空間28の前記一部にコンクリート52を打設する。
【0036】
その結果、側壁24は、その底面34において、支持手段38相互間を満たすコンクリート52に接し、その後、固化後のコンクリート52、すなわちインバート18の一部により支持される。
【0037】
図示の例では、コンクリート52の打設について、インバート形成用空間28のうち支持手段38が配置されていない部分について行い、次に、支持手段28を撤去し、該支持手段が配置されていた部分について行うため、コンクリート52の打設に先立ち、インバート形成用空間28の前記一部内において、各支持手段38の周囲に該支持手段を取り囲む適当な型枠54が配置されている。
【0038】
これにより、各支持手段38のコンクリート52中への埋没が回避され、コンクリート52の固化後、各支持手段38を撤去することができる。撤去した支持手段38、特に、受け部材44と液圧ジャッキ42とからなる支持手段は、再使用に供することができる。
【0039】
各支持手段38はこれを撤去することなくコンクリート52中に埋設してもよい。埋設用としては、特に図7および図8に示す支持手段または図9および図10に示す支持手段が適する。支持手段38を埋設するときは、撤去する場合と比べて、側壁24により安定的な支持を与えることができる。
【0040】
その後、各型枠54を撤去し、各型枠54が規定していた空間すなわち各支持手段の撤去跡にコンクリート58を打設し、これを充填する。
【0041】
また、図示の例では、一半部26と他半部32との境界に型枠56が配置されている。これにより、インバート18の半分が一半部18に規定される。
【0042】
全体に板状を呈するインバート18の半分を規定するコンクリート52,58の打設面の上方空間は砂利や土砂60で埋め戻され、後に、埋め戻し土砂60上に新たな舗装(図示せず)が形成される。
【0043】
インバート18の前記半分を形成した後、底盤14の他半部32について、一半部26について行ったと同様の工程を繰り返し行い、インバート18の前記半分に連なる残りの半分(図示せず)を形成する。この間、先に形成されたインバート18の半分上の埋め戻し土砂60が規定する路面を、前記掘削機械の配置、ダンプトラックの通行、生コン運搬用ミキサーの通行、緊急車両の通行等の用に供することができる。
【0044】
その後、前記残りの半分の上方空間を土砂で埋め戻し、インバート18の全部を覆う埋め戻し土砂上に舗装を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】山岳トンネルの概略的な横断面図であって、該トンネル内の通行路を規定する舗装の一部を撤去して、底盤を露出させている状態を示す。
【図2】底盤の一半部を開削した状態における山岳トンネルの概略的な横断面図である。
【図3】底盤を開削して得られた空間にコンクリートを打設した状態における山岳トンネルの概略的な横断面図である。
【図4】打設コンクリート上に土砂を埋め戻した状態における山岳トンネルの概略的な横断面図である。
【図5】覆工の側壁を支持するために配置された他の例の支持手段を示す部分拡大側面図である。
【図6】図5に示す支持手段の部分拡大正面図である。
【図7】覆工の側壁を支持するために配置された他の例の支持手段を示す部分拡大側面図である。
【図8】図7に示す支持手段の部分拡大正面図である。
【図9】覆工の側壁を支持するために配置されたさらに他の例の支持手段を示す部分拡大側面図である。
【図10】図9に示す支持手段の部分拡大正面図である。
【符号の説明】
10 山岳トンネル
12 覆工
14 山岳トンネルの底盤
18 インバート
24,34 覆工の側部およびその底面
26,32 底盤の一半部および他半部
28 インバート形成用空間
38 支持手段
40,44 受け部材およびその受け面
42 液圧ジャッキ
46 袋体

Claims (5)

  1. 互いに相対する両側壁を有する覆工を含む既設の山岳トンネルの底盤中にインバートを形成する方法であって、前記底盤の幅方向に関する一半部および他半部のそれぞれについて、工程(a)(b)および(c)を順次に適用することを含み、前記工程(a)は、前記底盤を開削し、これにより前記覆工の側壁の底面が露出するインバート形成用空間を形成すること、前記工程(b)は、前記底盤の開削の間に、露出された前記側壁の底面下に該側壁を支持するための複数の支持手段を互いに間隔をおいて配置すること、また、前記工程(c)は、前記インバート形成用空間にコンクリートを打設することである、インバートの形成方法。
  2. 前記コンクリートの打設は、前記インバート形成用空間のうち前記支持手段が配置されていない部分について行い、次に、前記支持手段を撤去し、該支持手段が配置されていた部分について行う、請求項1に記載の方法。
  3. 前記支持手段は前記コンクリート中に埋設する、請求項1に記載の方法。
  4. 前記支持手段は、前記側壁の底面に一致して当接し得る受け面を有する受け部材と、該受け部材を支持するジャッキとからなる、請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記支持手段は、モルタルが注入可能である袋体を含むジャッキからなる、請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
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