JP4104340B2 - 管路推進装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は道路等の地面を開削することなく地中に通信用ケーブル、電線、上下水道管、ガス管等の挿通用の管路を構築する管路推進装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、通信ケーブル、電線、上下水道管、ガス管等を通す管路を地中に構築する場合、道路等の地面を開削して深い溝を作り、この溝に埋設管を埋め込むということが行われてきた。しかし、このような道路開削工法においては、交通を遮断しなければならず、道路状況に大きな影響を与えることがあるばかりか、掘削機械等で深い溝を掘ることにより生じる騒音や振動が生活環境に多大な影響を及ぼすという問題があった。そこで、近年においては、地面を開削することなく、地中に横向きのトンネルを掘り、このトンネル内に管路を形成する推進工法が開発され、実用化されている。
【0003】
この推進工法の施行にあたっては、トンネルの一端部となる地面の一部分に発進立坑を、またトンネルの他端部に到達立坑をそれぞれ掘り、発進立坑内に先導体及び元押し装置を設置し、上記先導体をその先端部に設けられたカッタヘッドを駆動させながら元押し装置により押圧することで、地中を水平方向に掘進させる。上記先導体が所定のストロークだけ前進したら、この先導体の後端部に推進管を供給し、さらにこの推進管を元押し装置により押圧することで、上記先導体を推進管とともに前進させる。
【0004】
このようにして、上記先導体の後部側に推進管を継ぎ足しながら先導体を到達立坑まで前進させ、地中に所定の管路を構築していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、沖積層や湖沼跡地盤などの極軟弱地盤において上記推進工法の施工をする場合、地盤が先導体の先端部に設けられたカッタヘッド及びこのカッタヘッドを駆動するために上記先導体の先端部側に搭載した駆動機構等の重量に耐え切れず、先導体の先端部が下方に傾斜する、所謂ノーズダウンを引き起こすことがある。先導体がノーズダウンを引き起こした状態で地中を掘進し続けると、構築される管路が推進方向に進むにつれて低くなるよう傾斜し、推進計画線からずれるという問題が生じていた。
【0006】
そこで、上記問題を解決するために種々の方法、例えば、発進立坑と到達立坑との距離を短くし、一度の推進工法の施工において構築される管路と推進計画線とのずれを小さくする方法、上記推進工法を施工する前に地盤に薬液を注入し上記先導体がノーズダウンを起こさない程度に地盤を硬質化する方法、推進管を押し込むのに通常形成されるトンネルよりもやや大径のトンネルを堀り、構築される管路と推進計画線とのずれを推進管とこのトンネルとの間の空間に吸収させる方法などが用いられてきた。しかし、これらの方法にはコストが掛かりすぎたり、施工が大掛かりになるという問題があった。
【0007】
また、曲線からなる推進計画線に沿って管路を形成する場合、上記先導体の推進方向を強制的に曲げる必要がある。そのような場合には、従来、上記先導体内に複数の油圧ジャッキを設け、これら油圧ジャッキをそれぞれ駆動することで、上記カッタヘッドの角度を変化させ、それによって先導体の推進方向を制御するようにしていた。しかしながら、この方法にも先導体の構成が複雑化するという問題があった。
【0008】
この発明は、地中に高精度かつ簡単に管路を構築できる管路推進装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、地中を掘削する先導体の後端部に推進管を継ぎ足しながら、この推進管を元押し装置で押圧することで上記先導体を推進させ、地中に上記推進管を押し込んで埋設する管路推進装置において、上記先導体の外周部に一端部が接続された張力伝達材と、上記元押し装置に設けられるとともに上記張力伝達材の他端側に接続され、上記張力伝達材に与える張力の値を制御する張力制御手段を有する緊張手段と、上記張力伝達材の他端部に接続され上記張力伝達材を出入可能な巻取部と、上記張力伝達材の他端側の中途部に設けられ、上記張力伝達材を固定解除可能に形成されたグリッパと、このグリッパと上記緊張手段との間に設けられ、上記張力伝達材を弛張可能に形成された弛張機と、を備え、この緊張手段により上記張力伝達材に上記先導体の回転モーメントに基づいて所定の張力を与えることで、上記後端部と上記推進管との下端側の当接部の一点を支点として上記先導体の姿勢を調整することを特徴とする管路推進装置にある。
【0013】
この発明によると、先導体の推進方向を容易かつ効果的に制御することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1〜図4はこの発明の第1の実施形態を示す。図1に示す1は通信ケーブル、電線、上下水道管、ガス管等を通す管路が構築される地山、2a及び2bはそれぞれ上記地山1に掘られた発進立坑及び到達立坑、3及び4はそれぞれ上記発進立坑2aに設けられた支圧壁及び坑口壁、Lは上記管路を構築しようとする推進計画線である。
【0015】
上記発進立坑2aの内部にはこの発明の管路推進装置5が設置されている。この管路推進装置5は元押し装置6と先導体7とからなる。元押し装置6は、上記発進立坑2aの底部に推進計画線Lに沿って設けられた平面ほぼ矩形状の架台11を有する。この架台11の上面の幅方向ほぼ中心部には長手方向に沿ってガイド部材12が設けられ、長手方向一端部にはベース板13がその一側面を上記支圧壁3に接合させるようにして設けられている。
【0016】
このベース板13の他側面には第1の油圧ジャッキ14のシリンダ14aが固着されている。この第1の油圧ジャッキ14には、図示しない駆動装置が接続されており、この駆動装置を作動することで、上記第1の油圧ジャッキ14の駆動軸14bを上記架台11の長手方向、つまり、推進計画線Lに沿って進退駆動できるようになっている。
【0017】
上記第1の油圧ジャッキ14の駆動軸14bの先端部には円板状の押輪15がほぼ垂直に設けられている。この押輪15は、その下部に形成された摺動部15aが上記ガイド部材12と係合することで、ガイド部材12の長手方向に沿ってスライド自在に支持されている。このように、上記押輪15は上記ガイド部材12にガイドされることで、上記推進計画線Lに沿って円滑に進退駆動されるようになっている。
【0018】
上記押輪15の上記第1の油圧ジャッキ14と反対側の一側面には上記先導体7が着脱可能に接続されている。図2に示すように、上記先導体7は筒状体からなる先導筒体21を有する。この先導筒体21の先端部にはカッタヘッド22が設けられており、内部の先端部側に搭載された油圧モータ23を駆動することで、土砂を掘削できるようになっている。
【0019】
つまり、上記先導体7はその先端部のカッタヘッド22を駆動するとともに元押し装置6の押輪15によって後端部を押圧されることで、推進計画線Lに沿って地中を掘進できるようになっている。
【0020】
なお、上記カッタヘッド22には図示しない噴出口が設けられており、この噴出口からは、地中を掘進する先導体7の先端部側に作泥材を供給できるようになっている。
【0021】
図3に示すように、上記先導筒体21の外周部には長手方向に沿って複数、この実施の形態では3つの排土溝24が周方向に対してほぼ60度の間隔で形成されている。なお、これら排土溝24のうちの1つ(24a)は上記先導体7の最上部に形成されている。
【0022】
図2に示すように、上記各排土溝24の中途部にはそれぞれ排土口25が上記先導筒体21の内側へ開口するように形成されている。各排土口25には排土管26の一端がそれぞれ接続されている。上記各排土管26はそれぞれ圧送ポンプ27を有しており、他端は地上に設けられた図示しない排土タンクに接続されている。
【0023】
上記先導筒体21の最上部に設定された排土溝24aには、排土口24の後部側に、張力伝達材としてのワイヤ29の一端がフック28を介して接続されている。このワイヤ29は中途部にグリッパ30を有しており、他端部側は、図1に示すように上記発進立坑2a内に設けられた巻き取り部41に巻き取られている。
【0024】
図4に示すように、上記グリッパ30には緊張ワイヤ31の一端が接続されている。この緊張ワイヤ31の他端は上記押輪15の上部に設けられた緊張手段及び張力制御手段としてのバランサ32に係合リング33を介して接続されており、中途部には弛張機34が設けられている。
【0025】
上記バランサ32はフレーム35を有する。このフレーム35は、平行に離間対向して配置された押圧板36a及び上記係合リング33を備えた引張り板36bの四隅部をそれぞれ連結棒37で連結することで、ほぼ矩形箱型に形成されており、上記各連結棒37を上記押輪15に穿設された通孔38に挿通させることで、上記押輪15にスライド自在に設けられている。
【0026】
上記押輪15と上記押圧板36aとの間には第2の油圧ジャッキ39が設けられている。この第2の油圧ジャッキ39のシリンダ39aは上記押輪15の内側面に固着され、駆動軸39bの先端部は上記押圧板36aの内側面に固着されている。
【0027】
上記第2の油圧ジャッキ39は図示しない圧力調整装置を備えている。この圧力調整装置は、上記先導体7の内部に設けられこの先導体7の姿勢を検出する図示しない姿勢センサに接続されており、上記駆動軸39bに上記姿勢センサによって検出された先導体7の姿勢に応じた推進力を与えられるように上記シリンダ39a内の油圧を制御するようになっている。
【0028】
すなわち、上記バランサ32は、上記姿勢センサと連動して引張り板36bを介して上記ワイヤ29及び緊張ワイヤ31に所要の張力、すなわち、後述するように上記先導体7に生じる回転モーメントに抵抗する所要の荷重を与えられるようになっている。
【0029】
なお、上記フレーム35は、駆動軸39bの最大伸長時において、上記押輪15の一側面と上記引張り板36bの内側面との間に所定の間隔が形成されるように設定されている。つまり、上記引張り板36bと押輪15とが干渉することで、上記駆動軸39bの伸長駆動が妨げられないようになっている。
【0030】
次に上記構成の管路推進装置5を使用する際の作用について説明する。
【0031】
発進立坑2a内に上記管路推進装置5を設置したならば、ワイヤ29の中途部がグリッパ30にグリップされていることを確認するとともに弛張機34により上記ワイヤ29及び緊張ワイヤ31の弛みを取り除く。次いで、上記先導体7の先端部に設けられたカッタヘッド22を駆動するとともに、この先導体7の後端部を元押し装置6の押輪15によって押圧する。それによって、図5に示すように、上記先導体7を推進計画線Lに沿って掘進させる。
【0032】
上記先導体7が地中を上記第1の油圧ジャッキ14のストロークのほぼ半分まで掘進したならば、上記グリッパ30による上記ワイヤ29のグリップを解除し、図6に示すように、この先導体7を上記押輪15から分離して、先導体7の後部側に第1の推進管53を供給する。そして、上記ワイヤ29の中途部を上記グリッパ30でグリップし、この第1の推進管53を元押し装置6で押圧することで上記先導体7を第1の推進管53とともに前進させる。
【0033】
上記先導体7及び上記第1の推進管53が地中を上記第1の油圧ジャッキ14のストロークのほぼ半分まで前進したならば、上記グリッパ30によるワイヤ29のグリップを解除し、図7に示すように、上記第1の推進管53の後端部を上記押輪15から分離して、上記第1の推進管53の後部側に第2の推進管54を供給する。そして、上記ワイヤ29の中途部を上記グリッパ30でグリップし、この第2の推進管54を上記元押し装置6で押圧する。
【0034】
このようにして、上記先導体7の後部側に推進管を継ぎ足しながら、上記先導体7を推進計画線Lに沿って到達立坑2bまで前進させ、先導体7の後部側に継ぎ足される推進管で地中に所定の管路を構築する。
【0035】
なお、上記推進管としては上記先導筒体21の外径寸法よりやや小さな外径寸法を有するヒューム管等が用いられる。すなわち、上記先導体7が地中を掘進することで形成されるトンネル51の内周面と各推進管の外周面との間には20〜30mm程度の掘削ボイド52が形成される。
【0036】
このとき、図5〜図8に示すように、上記先導体7は上記ワイヤ29を上記巻き取り部41から引き出しながら前進しており、この巻き取り部41から引き出されたワイヤ29は上記先導筒体21の排土溝24a及び推進管の外周部の掘削ボイド52内を挿通している。
【0037】
上記先導体7が地中を掘進するときは、上記カッタヘッド22に設けられた図示しない噴出口からこの先導体7の先端部側に作泥材が供給される。それによって、上記カッタヘッド22によって形成された掘削土砂は、上記作泥材と混合し止水性と流動性を備えた泥土となる。
【0038】
この泥土化した掘削土砂の大半は、上記先導筒体21の外周面に形成された排土溝24内を移送され、その中途部に形成された排土口25から先導筒体21内に取り込まれる。上記先導筒体21内に取り込まれた掘削土砂は、圧送ポンプ27によって排土管26を通じて地上に設けられた排土タンクに排出される。
【0039】
上記泥土化した掘削土砂の一部は、上記排土溝24内を先導筒体21の後端部側まで移送され上記掘削ボイド52内に流入する。それによって、上記各推進管の外周部は上記泥土によって充填されるから、地下水等が掘削ボイド52内に浸入し難くなっている。
【0040】
上記先導体7には、その先端部に設けられたカッタヘッド22及び内部の先端部側に設けられた油圧モータ23などの重量によって、図7に回転中心Pで示す点を中心とし、矢印Xで示す方向に回転しようとする回転モーメントが働く。通常、この回転モーメントは地盤反力によって支持されているが、軟弱地盤等において上記管路推進装置5を使用する場合には、地盤が上記重量に耐え切れず、先導体7がノーズダウンを引き起こす。
【0041】
上記先導体7がノーズダウンを引き起こすと、上記バランサ32によって上記ワイヤ29及び緊張ワイヤ31に上記先導体7に生じている回転モーメントに抵抗する所要の張力が与えられる。すなわち、上記先導体7には上記回転中心Pを中心とし、矢印Yで示す方向に回転しようとする対抗回転モーメントが働き、それによって、上記先導体7の先端部が上方に引き上げられる。
【0042】
上記構成の管路推進装置5によれば、上記先導体7の姿勢を常に監視し、この先導体7がノーズダウンを引き起こすと上記ワイヤ29に張力を与えて、その姿勢を補正するようになっている。そのため、極軟弱地盤においても、上記先導体7の推進方向を制御することができるから、管路を推進計画線Lに沿って正確に構築できる。
【0043】
また、施工精度がよくなるため、長距離及び曲線の施工が可能となるばかりか、方向修正に要する時間が短縮されるため、工期の短縮が図れる。しかも、上記先導体7の外周部にワイヤ29を接続し、このワイヤ29に張力を与える機構を押輪15に設けるだけでよく、特に上記先導体7の構成を変える必要がないため、低いコストで種々の先導体に適用することができる。さらに、上記管路推進工法の施工終了後に先導体7を撤去する際には、上記ワイヤ29を容易に撤去することができる。
【0044】
また、上記ワイヤ29を上記先導体7の最上部に接続している。そのため、上記回転中心Pと上記先導体7の張力が与えられる作用点との距離が大きくなるから、上記先導体7をより小さな力で引き上げることができる。
【0045】
さらに、上記ワイヤ29は、上記先導体7の排土溝24a及び上記掘削ボイド52内を挿通するように設けられているため、上記ワイヤ29は上記トンネル51の内壁との摩擦で切断するのが防止されている。しかも、上記掘削ボイド52には流動性を有する泥土が充填されるため、緊張時に上記ワイヤ29にかかる抵抗が小さくなる。また、薬液注入等の地盤改良が不要となるため地下水等を汚染することがない。
【0046】
図9と図10はこの発明の第2の実施の形態を示す。この実施の形態は、上記先導体7の変形例であって、上記ワイヤ29を上記先導体7の上部に形成された排土溝24aにだけではなく、3つの排土溝24にそれぞれワイヤ29の一端を接続したものである。
【0047】
上記押輪15の各ワイヤ29と対応する位置にはそれぞれ上記バランサ32が設けられており、これらバランサ32には各ワイヤ29の他端がそれぞれ接続されている。それによって、曲線からなる推進計画線に沿って管路を構築する場合にも、上記各バランサ32によって各ワイヤ29に与える張力の大きさを制御することで、上記先導体7の推進方向を自由かつ容易に変化させることができるから、管路を推進計画線に沿って正確かつ容易に構築することができる。
【0048】
なお、上記管路推進装置5および管路推進工法は、作業者が入ることができない800mm以下の小口径管の布設工事において、特に有効である。
【0049】
【発明の効果】
この発明によれば先導体の姿勢を簡単に制御できるから、管路を推進計画線に沿って高精度に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示す概略図。
【図2】同実施の形態に係る先導体の概略図。
【図3】図2のA―A線に沿った断面図。
【図4】バランサの構成図。
【図5】同実施の形態の管路推進装置を使用する際の第1の説明図。
【図6】同実施の形態の管路推進装置を使用する際の第2の説明図。
【図7】同実施の形態の管路推進装置を使用する際の第3の説明図。
【図8】同実施の形態の管路推進装置を使用する際の第4の説明図。
【図9】この発明の第2の実施の形態に係る先導体の概略図。
【図10】図9のB−B線に沿った断面図。
【符号の説明】
5…管路推進装置
6…元押し装置
7…先導体
29…ワイヤ
32…バランサ
Claims (1)
- 地中を掘削する先導体の後端部に推進管を継ぎ足しながら、この推進管を元押し装置で押圧することで上記先導体を推進させ、地中に上記推進管を押し込んで埋設する管路推進装置において、
上記先導体の外周部に一端部が接続された張力伝達材と、
上記元押し装置に設けられるとともに上記張力伝達材の他端側に接続され、上記張力伝達材に与える張力の値を制御する張力制御手段を有する緊張手段と、
上記張力伝達材の他端部に接続され上記張力伝達材を出入可能な巻取部と、
上記張力伝達材の他端側の中途部に設けられ、上記張力伝達材を固定解除可能に形成されたグリッパと、
このグリッパと上記緊張手段との間に設けられ、上記張力伝達材を弛張可能に形成された弛張機と、を備え、
この緊張手段により上記張力伝達材に上記先導体の回転モーメントに基づいて所定の張力を与えることで、上記後端部と上記推進管との下端側の当接部の一点を支点として上記先導体の姿勢を調整することを特徴とする管路推進装置。
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