JP4103981B2 - 細穴放電加工機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、細穴放電加工機、特にパイプ電極によって細深穴を加工する細穴放電加工機の加工ヘッド支持機構、およびパイプ電極先端の電極ガイドを含む軸送り装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
前述の如き細深穴の放電加工については、例えば昭和54年(1979年)に出願された特公平2−5,527号公報(以下従来技術1という)に詳しい。しかし、その後の各種の技術開発の寄与により、上記従来技術1のように水系加工液でない油系(ケロシン等鉱物油系)加工液を使用した細穴放電加工でも加工速度は劣るが、かなりの程度迄加工が可能となってきた。例えば、電極径φ0.1mm程度のパイプ電極を使用して、加工穴の深さが電極径の50倍程度の加工が可能となってきている。しかし、上記外径が約φ0.1mm前後程度、またはそれ以下で、深さが前記外径の50倍前後またはそれ以上の超微細、細深穴の加工は、難加工というよりも多くは加工不能であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる点に鑑み、前記した超微細な細深穴放電加工を可能とすべく開発されたもので、サーボ制御の送り機構の駆動源としてリニアモータを用いた細穴放電加工機として、完成された高性能のものとすることにある。
形彫放電加工機のZ軸加工主軸におけるサーボ制御の送り機構の駆動源としてリニアモータを用いたものとしては、特開平5−104,332号公報、同8−309,620号公報、および特開2000−225,527号公報等に記載のもの(従来技術2)があるが、上述細深穴加工の成功例を聞かない。本発明者達のその後の研究、開発の結果によれば、上記文献等に記載されたリニアモータを駆動源とするサーボ制御の送り機構を搭載した放電加工機で、所要の成果が挙げられなかったのは、搭載したリニアモータの高応答、高加減速、および高速移動等の特性の内の少なくとも一つ、または二つ以上を放電加工間隙の維持制御によく適合させて作動させ得なかった為ではないかと考えられる。
【0004】
よって検討するに、上記特開平2000−225,527号公報には、固定コラムに対して取り付けられるW軸であって、軸方向に中空柱状に形成したスライダを有し、小型Z軸を前記W軸スライダ内に平行に移動し得るように設け、大形電極はW軸スライダの下端に着脱可能な電極定盤に取り付けて設け、他方小形電極はW軸下端より前記電極定盤を取り外すことにより先端が下方へ延出するZ軸スライダに取り付け、切り替えによりW軸とZ軸の一方が独立して制御送りされて加工する複合主軸であって、
前記W軸は、固定コラムに対し従来型のボールねじ、ナット、直線案内、および回転形のサーボモータと相対的な位置検出装置とからなる制御送り機構を、他方のZ軸は、該Z軸のスライダユニットの重量に釣り合う反力をZ軸スライダユニットに加えてW軸スライダに保持させるエアバランサと両者間に設けた直線案内とリニアモータおよび直線位置検出装置とから成る制御送り機構を備えた複合主軸の放電加工装置が記載されている。
【0005】
そして、この装置によれば、細穴加工電極はリブ加工電極などの小形電極が取り付けられるZ軸スライダに取り付けられることになるが、細穴放電加工では、リニアモータを駆動源として有する電極送り機構が得意とする高速電極ジャンプ運動は不要というか寧ろ有害で、該電極ジャンプ運動に替えて、電極にほぼその軸の廻りに回転する数1000回程度またはそれ以下の回転運動を与えることが必要なものである。ということは、リニアモータを駆動源とする電極送り機構を備えた細穴放電加工機の加工主軸(電極ホルダと回転手段とを有する加工ヘッドを取り付けた上記Z軸スライダのユニット)は、ジャンプ運動をさせられることがなく、従って、加工中に例えば数100μm以上の高ストロークにわたって高加速度の急激な移動がなく、エアシリンダとこれを圧力制御する空圧制御装置からなるカウンタバランス装置まで必要としない。このようなカウンタバランス装置を使用する場合には、シリンダ等によって加工ヘッド重量が大きくなる可能性があるだけでなく、エア配管およびその引き回しだけでなく、圧力制御のためのハイリリーフレギュレータ等の大掛かりな空気圧供給制御装置を装備する必要が生じて、コスト的に無駄だからである。
【0006】
しかして、前述の装置から、Z軸スライダユニットに対するエアバランサを取り外してしまうと、該ユニットに対するカウンタバランス力を送り機構のリニアモータによる引き上げ推力によって与えなければならなくなるが、これでは電力効率的に大きなマイナスだけでなく、モータの発熱、制御上の問題や停電時ユニット落下の問題等もあり、かかる点から何等かのカウンタバランサ設置は欠かせないものである。
【0007】
しかるところ、前記特開平8−309,620号公報には、前記Z軸スライダユニットに対してカウンタウェイトを設けることが記載されている。しかしこれでは、Z軸スライダユニットと等しい重さのウェイトが設けられるので、Z軸スライダユニットの慣性質量が全体として2倍となるから、高応答のためにより大きな推力のリニアモータを使用しなければならない等の問題がある。また、このカウンタウェイト方式にすると、リニアモータの駆動制御において高速ジャンプをさせない細穴放電加工のサーボ制御送りによる加工の場合に、リニアモータの高応答による微動の高速制御の動きに、ウェイト吊り下げワイヤ、そしてひいてはウェイトに応答遅れから振動が生ずる場合が有り、目的とする細穴放電加工の性能が得られなくなることが少なくなかった。
【0008】
そこで本発明の目的は、リニアモータをサーボ制御の送り機構の駆動源として用いたときに、コンパクトな構成で超微細な細深穴放電加工に対する高応答のサーボ制御送りの機能を十分に発揮させる放電加工機を構成して提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前述の本発明の目的は、(1)回転手段を有する加工ヘッドに細棒状の電極を装着して被加工体と相対向させ、対向間隙に加工液を供給介在させた状態で両者間に間歇的な電圧パルスを印加し、繰り返し放電を発生させると共に対向方向に相対的な加工送りを与えて被加工体に細穴を加工する細穴放電加工機において、
前記加工機のコラムに送りねじ、ナット、および回転式モータの組み合わせからなる昇降軸送り機構に中空柱状のW軸スライダを設け、放電加工時には固定状態とされる前記W軸スライダの中空穴に、シリンダとピストンとピストンロッドとを有するガスダンパの一端のピストンロッドまたはシリンダを挿入して固定し、該ガスダンパの他端のシリンダまたはピストンロッドをZ軸スライダに、該Z軸スライダが前記W軸と平行で並設状態に位置するように連結して保持させるとともに、該Z軸スライダを前記W軸スライダに昇降移動可能に直線案内装置を介して取り付け、前記Z軸スライダとW軸スライダの間には後者に対して前者を昇降移動させるリニアモータを介設させ、前記加工ヘッドを前記Z軸スライダに取り付け保持させるとともに該加工ヘッドに装着された細棒状電極の先端側を挿通して位置決め案内するガイドを、ガイドホルダにより前記W軸スライダの下端に取り付け保持させ、さらに、前記Z軸スライダの前記W軸スライダに対する昇降移動位置を検出する直線位置検出装置が両者間に取り付けられているのに対し、前記W軸スライダの前記送りねじに連係してロータリイエンコーダを設け、前記直線位置検出装置が検出フィードバックする信号により前記リニアモータの駆動出力を制御する前記Z軸スライダのサーボ送り制御装置を前記放電加工間隙加工状態検出信号により制御するのに対し、前記ロータリイエンコーダは前記W軸スライダの前記コラムに対する昇降移動位置を検出する細穴放電加工機とすることにより達成される。
但し、前記のガスダンパとは、シリンダ5 B とピストン5 C とピストンロッド5 A とを有し、ピストン5 C は、ピストンロッド5 A のシリンダ5 B 内側端部に固設されていて、シリ ンダ5 B 内を上部の A 室と下部の B 室とに分離しているとともに、前記 A 室と B 室とを繋ぐ小孔5 D が明けられており、
そして、前記シリンダ5 B 内には気体が高圧力状態に封入されていて、前記ピストン5 C の A 室側面と B 室側面との受圧面積の差異によって、ピストンロッド5 A がシリンダ5 B から伸長する方向に推力を作動させる.ものである。
【0010】
また、前述の本発明の目的は、(2)前記ガスダンパが高圧ガスダンパであって、そのピストンに結合されたピストンロッドの先端側が前記W軸スライダに固設され、他端側のシリンダ端に前記Z軸スライダが連結されている前記(1)に記載の細穴放電加工機とすることにより達成される。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1、図2、及び図3は、本発明細穴放電加工機の1実施例の加工ヘッド廻りの構成を説明するための各部分図であって、カバーを取り外した状態で示した正面図、一部切り欠き側面図、および図2X−X線横断矢視図である。1は図示しないベッド上の後方中央部に立てられたコラムの上方前方部分を示しているもので、前方に迫り出した中空状の加工ヘッド取り付け部をなしている。この取り付け部に後述する加工ヘッド部が、ベッド上の前方に配置され、被加工体取り付け加工テーブルを収納する上方開放の加工槽と鉛直Z軸方向に相対向させるように取り付けられている。
【0012】
2はコラム1項部の前端部にブラケットを介して取り付けられた、W軸サーボモータ、3は同じくW軸スライダで、該スライダ3はコラム1の前面に水平方向に2条が間隔を置いて鉛直W軸方向に沿って取り付けられた直線案内装置のW軸レール4Aと、スライダ3の背面に取り付けられた前記レール4Aに嵌り合うW軸ガイド4Bとにより、鉛直なW軸に沿って直線に移動するように案内保持されている。しかしてl、前記W軸スライダ3の前面側には、Z軸ユニット等を装架するための、中空柱状で、比較的長尺のW軸スライダ本体3Aが一体に固着して設けられている。そして、このW軸スライダ3の背面と対向するコラム1前面の前記一対のW軸レール4A間には、前記スライダ3の背面ほぼ中央部に後方へ突出するように設けられた送り軸のナット2Aが、前記モータ2の回転軸に連結され鉛直下方に垂下して設けられる送り軸の回転軸2Bに螺合していて、前記W軸スライダ3は直線案内装置4に沿って移動し位置決めされる。また、前記W軸スライダ3、またはスライダ本体3Aの設置位置は、前記モータ2の回転軸に連結したロータリイエンコーダ2C、または、図示しないコラム1とスライダ3とに設けられるリニアスケールとセンサとから成る直線位置検出装置により検出され、図示しない表示装置によって表示される。
【0013】
前記W軸スライダ本体3Aの下端には、後述する電極ガイド16が備えられており、この電極ガイド16を被加工体の上面に対して接離させるために、前記W軸スライダ3の軸移動が制御される。細穴の放電加工中には、電極ガイド16が被加工体の上面に殆ど接触する位置でW軸スライダ3が位置決めされる。このW軸サーボモーター2は、所望の位置で停止制御することにより、W軸スライダ3をその位置に保持する。
【0014】
16は、細径の細深穴加工電極11の先端を、図示しない被加工体上面の直近の位置で挿通案内して位置決めする電極ガイドで、ガイドホルダ17に着脱変換可能に取り付けられており、該ガイドホルダ17は、前記W軸スライダ3、3Aに固定保持されたガイド配置体18に位置調整可能に取り付けられるようにしてある。
【0015】
7は、前記細穴加工電極11を取り付けた加工ヘッド部を搭載して加工方向に加工送りするZ軸スライダで、該Z軸スライダ7は、前記W軸スライダ3がコラム1前面に対して装架されるのと同様に、W軸スライダ本体3Aの前面に水平方向に間隔を置いて鉛直平行に設けた直線案内装置8のZ軸レール8Aに、Z軸スライダ7の背面側に設けたZ軸ガイド8Bを嵌め合わせて鉛直なZ軸方向にZ軸スライダ7が直線に移動するように装架され、この状態でZ軸スライダ7は、後述するようにガスダンパ5を介してW軸スライダ本体3Aに支持されて前記の加工送り装置となるものである。
【0016】
前記Z軸スライダ7の背面とW軸スライダ本体3Aの前面とには、前者を可動子9A、後者を固定子9Bとして前者をZ軸に直線に移動送りするリニアモータ9が設けられてあって、図示の場合、W軸スライダ本体3Aの前面、幅方向の中央部分に設けられた固定子9Bヨーク磁石板には、短冊板状の永久磁石片9Cが所定個数移動Z軸方向に接着等して取り付けられており、これに対向するZ軸スライダ7の部分には窓7Bが形成されていて、該窓7Bには、所定寸法、形状の積層硅素鋼板等からなる磁極を移動Z軸方向に所定個数間隔を置いて形成し、該磁極に励磁コイルを単巻きまたは複巻き等により巻回して配置した電磁石形に形成した電機子鉄芯の可動子9Aが嵌め込み固設されている。図示の固定子9Bと可動子9Aのと組み合わせから成る永久磁石形のリニア同期モータが設けられたZ軸スライダ7は、前記固定子となるW軸スライダ3、3Aに対し可動子として高応答、高加減速でZ軸に駆動されることになる。このリニアモータ9による駆動制御送りに対し、W軸スライダ3、3Aの設定位置に対するZ軸スライダ7の位置は、前記両スライダ3、7に設けられるリニアスケール20Aとセンサ20Bとの組み合わせから成る直線位置検出装置20によって検出され、駆動装置にフィードバックされている。
【0017】
10は、前記Z軸スライダ7の下端部近くに取り付けられた加工ヘッドの取り付け台で、該取り付け台10には、図示の場合、細径の長尺パイプ電極11を予め取り付けたパイプ電極ホルダ12を着脱する電極取付装置13を回転伝達機構14Aと絶縁部10Aとを介して取り付けると共に、前記回転伝達機構14Aを介して前記電極ホルダ12を回転させる回転モータ14が設けられている状態を示している。前記パイプ電極11に電極取付装置13内通路を介して高圧力の加工液を供給する加工液供給手段が図示では省略したホースを介して接続口15に接続されている。そして、同様に、前記回転モータ14に対する配線、リニアモータ9の電磁石可動子9Aに対する配線と冷却配管、および前述Z軸スライダ7の位置検出装置やW軸サーボモータ2の配線等も省略されているものである。
【0018】
5は、前記W軸スライダ本体3Aの下部に、図示の場合ピストンロッド5Aの先端を固定ピン5Hにより固定して設けた高圧力のガスダンパで、上に押し上げられるシリンダ5Bの他端頂部に適宜の連結桿6を介して、Z軸スライダ7のステム7Aが連結され、該Z軸スライダ7はガスダンパ5を介してW軸スライダ3またはスライダ本体3Aに保持されていることになる。
【0019】
加工電極11を取り付けた加工ヘッド部を搭載するZ軸スライダ7のユニット全体は、リニアモータ9による駆動送りに対して慣性質量となり、さらにリニアモータ9の磁気吸引力やダンパ5および直線案内部8の摩擦抵抗も作用しているので、前記慣性質量となる部分は、出来るだけ小型、軽量に、そして更に、小比重体により、例えば、前記スライダ7と台10とをAl2O3系のセラミックスまたはSi3N4やSiC等の非酸化物系のセラミックス、或いは、Al合金系やMg合金系の軽量合金製のもの、または炭素繊維強化プラスチック製のものを用いるのが好ましい。
【0020】
図4の(A)は、高圧ガスダンパの構造を説明する説明図、(B)は、ガスダンパの全長(mm)に対するガス反力、即ち発生推力(kg)の特性図の例を示すものである。図に於いて、ピストンロッド5Aのシリンダ5B内側端部に固設されたピストン5Cは、図示の状態に於いて、シリンダ5B内を、ピストン5C上部のA室と下部のB室とに分離しているが、前記ピストン5CにはA室とB室とを繋ぐ小孔5Dが明けられていて、A、B室のガス流体、例えば通常高圧のN2(窒素)ガスと僅かな量の油5Eが封入されていて、ピストン5CのA室側の受圧面積とB室側のピストンロッド5A断面積を除く受圧面積との差によりA室側よりピストン5Cが押圧され、ピストンロッド5Aがシリンダ5Bから伸長する方向に推力を付与される。なお、5Fはシール、5Gはロッドガイドである。
【0021】
ガスダンパ5の全長が外力によって伸縮するときには、高圧の窒素ガスは、小孔5Cを通過して一方の室からもう一方の室に移動する。そして、ガスダンパ5の全長が最大であるときのガス室の容積は、全長が最小であるときの容積より大きい。それで図4(B)のように推力は若干変化する。上記のようなガスダンパ5は、そのロッド5Aのストロークの中間位置での推力(図4(B)の×印)が、Z軸スライダ7および加工ヘッド部の全重量(慣性質量)に等しいものが選定される。
【0022】
こうすることにより、前記図1〜3の細穴放電加工機において、Z軸スライダ7がそのストロークの如何なる位置にあっても、該Z軸スライダユニットは略等しいカウンタバランス力を受けるので、加工電極11の消耗長さに関係なく、全ストローク位置において、サーボ制御送り条件を変更することなく均一な加工状態を得ることができる。
また、本発明は、前述したような細穴放電加工の専用機であるから、前記Z軸スライダユニット部分の慣性質量は、微細径の細穴加工電極11が、交換等して新しい時と、加工の用に供して消耗した交換前の時とに僅かな差しかなく、その差は、設けられるガスダンパ5の推力に対しても充分小さいので、加工中のZ軸スライダユニットに対するカウンタバランス力の作用効果の変化は少なく、この面からも加工状態は均一を保ち得る。
【0023】
以上のように本発明によれば、Z軸スライダユニットには、整合したカウンタバランス力が与えられる。従って細穴放電加工中の加工電極11と被加工体との間の加工間隙のサーボ送り制御において、リニアモータ9によるZ軸スライダユニット部の高応答、高加減速のサーボ制御送りは、通常数μmから数10μm以内の微動的移動送りの高周波的繰り返しであるから、リニアモータ9の作動特性を殆ど損なうことなく作動させることができ、細穴放電加工を性能高く行なわせることができる。なお、前記Z軸スライダユニットをZ軸スライダに軸送り駆動するリニアモータとしては、図示実施例の所謂片面励磁構造のものに替え、前記磁気吸引力をキャンセルする両面励磁構造のリニアモータを用いる構成とすることができる。
【0024】
なお、前記図4(B)の特性図に示したガスダンパの1例は、ガス反力40kg強、有効ストローク100mmの数値仕様を有するガスダンパ5で、ピストンロッド5Aの外径がφ10mm、製品自重260g、市販価2000円以内のもので、長期の使用に耐えるものであり、配管、配線等、を全く要せず、単独使用のものであるから、コンパクトなカウンタバランサおよびその構成に寄与すること絶大である。
【0025】
次に、上述のガスダンパを図1〜3のカウンタバランサとしての構成に組み込んだ細穴放電加工機の具体的な加工性能の例につき説明する。細穴加工電極11として、外径φ0.1mm、内径約φ0.04mm、長さ150mmの銅製パイプ電極を用い、該パイプ電極を2000rpmで回転させ、加工液(鉱物油)を圧力8MPaで供給して電極先端から約10滴/10Sの滴下状態として、材質および板厚の異なる被加工体の穿孔加工を行なった。なお、電気的加工条件としては、ON:4μS、OFF:4μS、無負荷電圧:90V、サーボ基準電圧:40V、ギャップコンデンサ:4700PF、平均加工電流約0.1A以下である。そして、前述の図1〜4に示した本発明装置によるものをLN、Z軸スライダユニットが回転形モータによりボールねじ駆動され、カウンタバランサがウェイトによって付与されている従来技術のものをMARK20とする。
【0026】
実験例1、被加工体:SKD11、板厚:5mm
MARK20 LN
加工時間(分、秒) 貫通せず 14′40″
電極消耗率(%) − 315〜340
穴径(mm) − 0.1248
【0027】
実験例2、被加工体:超硬合金(G5)相当、板厚:1.26mm
MARK20 LN
加工時間(分、秒) 1′45″ 55″
電極消耗率(%) 200 220
穴径(mm) 0.1243 0.1244
【0028】
実験例3、被加工体:超硬合金、板厚:2.26mm
MARK20 LN
加工時間(分、秒) 3′00″ 1′50″
電極消耗率(%) 260 270
穴径(mm) 0.1314 0.1344
【0029】
実験例4、被加工体:超硬合金、板厚:5.04mm
MARK20 LN
加工時間(分、秒) 9′45″ 7′35″
電極消耗率(%) 310〜420 295〜385
穴径(mm) 0.1376 0.1252
【0030】
実験例5、被加工体:超硬合金、板厚:7mm
MARK20 LN
加工時間(分、秒) 貫通せず 16′45″
電極消耗率(%) − 360〜495
穴径(mm) − 0.1279
【0031】
以上のような結果から、
・被加工体の板厚が薄い領域では、本発明装置によるものが
加工速度は早いが電極消耗は多い。
・従来装置で、上述の加工条件では、被加工体超硬合金、板
厚約5mmが限界か。板厚約7mmのものは、いくら加工
を継続しても貫通しなかった。
・実験例1の被加工体SKD11の場合も、加工時間20分
以上掛けてもサーボ加工送りが逆転を繰り返し、電極消耗
率500%以上と増加するだけで貫通しなかった。
・また、本発明の装置では、サーボ制御の送り速度をより早
く設定できて、加工状態が安定していた。
以上のように、本発明の細穴放電加工機の有用性が明らかである。
【0032】
以下、細穴加工電圧11が所謂パイプ電極でない微細加工の細棒状の電極を使用した場合の加工結果の例を示しておく。
電極としφ0.1mmのAgWを用い、通称G5と称される焼結超硬合金薄板1.0〜2.5mmの穿孔加工を、電極回転数800rpm、ケロシン加工液中で行なった。図5の(A)に加工結果のデータを、(B)には前記(A)のデータ中の加工時間(min:S)と加工深さ(mm)との特性曲線図と加工条件を示している。従来技術(MARK20)によれば、電極ジャンプも加工液の噴流も無い状態では、被加工体1mm厚以上の穿孔加工は殆ど不可能であったが、本発明の装置(LN)によれば、板厚2.5mm(L/D≒25)でも、なおスムーズに穿孔加工ができており、リニアモータによる高応答のサーボ制御送りが、安定加工の継続に寄与しているものと思惟された。
【0033】
なお、上記の加工中、板厚2mmの加工に電極ジャンプによる間隙の加工液処理を行なわせるようにしたところ、電極ジャンプにより穿孔に要する実加工時間は20%弱短縮されたが、ジャンプのための加工死時間があるため前記加工所要時間は逆に20%強増大していた。そして、電極ジャンプを行なうようにすると、電極が曲がることによる加工不能、乃至は貫通不能の事故の発生が少なくなかった。かかる状況によれば、電極の腰が大幅に弱い、銅または銅合金系のパイプ電極を用いる前述実験例1〜5の細穴の加工には、電極ジャンプを併用する可能性は無く、エアバランサに替えてガスダンパを用いる本発明は、細穴放電加工機として有効なものである。
【0034】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、リニアモータ駆動のサーボ制御送り機構を用いる細穴放電加工機において、リニアモータにより中空柱状のW軸スライダに対して平行にZ軸送りされるZ軸スライダユニットを、ガスダンパをカウンタバランサとして用い、かつ該ガスダンパを前記W軸スライダの中空穴に挿入固定して保持させる構成としたから、前記両スライダを含む加工ヘッド廻りの構成はコンパクトで、細穴放電加工の目的を充分備えた費用対効果の高い細穴放電加工機を安価に構成できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明細穴放電加工機の一実施例の加工ヘッド廻りの構成を説明するために、カバーを取り外した状態で示した部分正面図。
【図2】 図1に同じく、部分の一部切り欠き側面図。
【図3】 図1に同じく、図2のX−X線断面矢視図。
【図4】 (A)は一実施例ガスダンパの構造を説明するための断面説明図。(B)は、(A)ガスダンパの具体例の作動特性曲線図。
【図5】 (A)は一実施例の加工データの表。(B)は一実施例の加工性能の特性曲線図。
【符号の説明】
1 :コラム
2 :W軸サーボモータ
3 :W軸スライダ
3A :W軸スライダ本体
4、8 :W軸とZ軸の直線案内
4A、8A :W軸とZ軸の直線案内のレール
4B、8B :W軸とZ軸の直線案内のガイド
5 :ガスダンパ
5A :ピストンロッド
5B :シリンダ
5C :ピストン
5D :小孔
5E :油
5F :シール
5G :ロッドガイド
6 :連結桿
7 :Z軸スライダ
7a :ステム
9 :リニアモータ
9A :電磁石側可動子
9B :磁石片側固定子
10 :加工ヘッド取り付け台
11 :パイプ電極
12 :電極ホルダ
13 :電極取付装置
14 :回転モータ
15 :頂部
16 :電極ガイド
17 :ガイドホルダ
18 :ガイド支持体
Claims (2)
- 回転手段を有する加工ヘッドに細棒状の電極を装着して被加工体と相対向させ、対向間隙に加工液を供給介在させた状態で両者間に間歇的な電圧パルスを印加し、繰り返し放電を発生させると共に対向方向に相対的な加工送りを与えて被加工体に細穴を加工する細穴放電加工機において、
前記加工機のコラムに送りねじ、ナット、および回転式モータの組み合わせからなる昇降軸送り機構に中空柱状のW軸スライダを設け、放電加工時には固定状態とされる前記W軸スライダの中空穴に、シリンダとピストンとピストンロッドとを有するガスダンパの一端のピストンロッドまたはシリンダを挿入して固定し、該ガスダンパの他端のシリンダまたはピストンロッドをZ軸スライダに、該Z軸スライダが前記W軸と平行で並設状態に位置するように連結して保持させるとともに、該Z軸スライダを前記W軸スライダに昇降移動可能に直線案内装置を介して取り付け、前記Z軸スライダとW軸スライダの間には後者に対して前者を昇降移動させるリニアモータを介設させ、前記加工ヘッドを前記Z軸スライダに取り付け保持させるとともに該加工ヘッドに装着された細棒状電極の先端側を挿通して位置決め案内するガイドを、ガイドホルダにより前記W軸スライダの下端に取り付け保持させ、さらに、前記Z軸スライダの前記W軸スライダに対する昇降移動位置を検出する直線位置検出装置が両者間に取り付けられているのに対し、前記W軸スライダの前記送りねじに連係してロータリイエンコーダを設け、前記直線位置検出装置が検出フィードバックする信号により前記リニアモータの駆動出力を制御する前記Z軸スライダのサーボ送り制御装置を放電加工間隙加工状態検出信号により制御するのに対し、前記ロータリイエンコーダは前記W軸スライダの前記コラムに対する昇降移動位置を検出することを特徴とする細穴放電加工機。
但し、前記のガスダンパとは、シリンダ5 B とピストン5 C とピストンロッド5 A とを有し、ピストン5 C は、ピストンロッド5 A のシリンダ5 B 内側端部に固設されていて、シリンダ5 B 内を上部の A 室と下部の B 室とに分離しているとともに、前記 A 室と B 室とを繋ぐ小孔5 D が明けられており、
そして、前記シリンダ5 B 内には気体が高圧力状態に封入されていて、前記ピストン5 C の A 室側面と B 室側面との受圧面積の差異によって、ピストンロッド5 A がシリンダ5 B から伸長する方向に推力を作動させる.ものである。 - 前記ガスダンパが高圧ガスダンパであって、そのピストンに結合されたピストンロッドの先端側が前記W軸スライダに固設され、他端側のシリンダ端に前記Z軸スライダが連結されていることを特徴とする前記請求項1に記載の細穴放電加工機。
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