JP4102658B2 - ウエビング巻取装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗員拘束用のウエビングを巻取軸に層状に巻き取るウエビング巻取装置に関し、特に、巻取軸を回転駆動するモータを備えたウエビング巻取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の座席に着座した乗員の身体を長尺帯状のウエビングで拘束するシートベルト装置は、座席の側方で車体に固定されたウエビング巻取装置を備えている。ウエビング巻取装置は、一端部を係止したウエビングを層状に巻き回したスプール(巻取軸)を備えており、このスプールは、車体に固定されたフレームの一対の脚板間で回転可能に軸支されている。
【0003】
これにより、スプールの回転によるウエビングの巻取り引出しが可能とされている。そして、ウエビング巻取装置では、スプールはぜんまいばね等の付勢手段によってウエビング巻取方向に付勢されており、ウエビングを巻取軸への巻取状態で収容し、また、乗員が装着したウエビングの弛みを除去するようになっている。
【0004】
ところで、近年、モータの駆動力によってスプールを回転駆動する所謂モータリトラクタと称されるウエビング巻取装置が開発されてきている(例えば、特許文献1参照)。この種のウエビング巻取装置の構成について、図9に基づいて説明する。
【0005】
図9に示されるウエビング巻取装置100はフレーム102を備えており、フレーム102は、車体に固定される背板104と、該背板104の両側縁からそれぞれ立設され手互いに対向する一対の脚板106、108を備えている。このフレーム102の一対の脚板106、108間には、乗員拘束用のウエビング(図示省略)が層状に巻き回された巻取軸110が回転可能に軸支されている。
【0006】
具体的には、巻取軸110は、脚板106に固定されロック機構を覆うカバー部材112にその一端部が軸支されると共に、脚板108に固定されたケース114にその他端部が軸支された状態で、一対の脚板106、108間における対向方向に軸線方向を一致させて配置されている。
【0007】
また、ケース114には、ばねケース116が固定されており、ばねケース116内には図示しないぜんまいばねが配設されている。このぜんまいばねの付勢力によって、巻取軸110がウエビングの巻取回転方向に付勢されている。ケース114は、脚板108に固定されると共に該脚板108の下方まで延設された基板118と、該基板118の脚板108とは反対側を覆うカバー120とで構成されている。
【0008】
そして、基板118における脚板108(脚板106)よりも下方に位置する部分には、モータ122が固定されている。具体的には、モータ122は、その一端部が基板118に固定されて、その軸線方向が巻取軸110の軸線方向と平行となるように該巻取軸110の下方に配置されている。すなわち、モータ122は、片持支持とされ、脚板106側の端部が不支持の自由端とされている。
【0009】
このモータ122の回転軸124は、ケース114内に突出しており、該ケース114内に配設されたクラッチ機構及び減速機構を介して、巻取軸110に回転を伝達可能に接続されている。これにより、所定の場合にモータ122を作動して、該モータ122の駆動力によって巻取軸110を回転駆動することができる構成である。
【0010】
なお、このモータ122の作動時期や作動時間(上記所定の場合)の設定、すなわちモータリトラクタの制御について、近年、例えば、車両急減速時にモータ122を作動しウエビングを巻取軸110に一定量巻き取らせて「スラック」等と称される僅かな緩みを解消したり、または車両急減速が予測された場合に巻取軸110をモータ122の駆動力で強制的に巻取方向に回転させてウエビングによる乗員の身体の拘束力を増加させたりする等、様々なものが考えられている(一例として、特許文献2参照)。
【0011】
【特許文献1】
実開平4-48067号公報
【特許文献2】
特開2001−347923公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようなウエビング巻取装置100では、重量物であるモータ122が基板118(を介して脚板108)に片持支持されてされていたため、車両振動によってモータ122が振れたり、ウエビング巻取装置100の車体への取り付け時にモータ122を車体に接触させたりすると、基板118または脚板108に歪み(変形)が生じる可能性があった。すなわち、モータ122に作用する外力によって、フレーム102または基板118に変形が生じる可能性があった。
【0013】
このフレーム102または基板118の歪みは、これらが直接的または間接的に支持する巻取軸110、ロック機構、プリテンショナ機構、クラッチ機構、減速機構等の回転部分の位置精度を悪化させる原因となる。すなわち、通常における巻取軸110の回転によるウエビングの巻取りまたは引出し性、車両衝突時等におけるプリテンショナ機構によるウエビング巻取性能、また所定の場合におけるモータ122によるウエビング巻取性能等に影響を与えることが懸念される。
【0014】
この対策として、基板118(または脚板108)におけるモータ122の固定部位を補強して剛性を高めることも考えられるが、この場合、フレーム102における車体への固定部位である背板104に対する片側(脚板108側)の重量がさらに増すこととなり、上記懸念を助長することになりかねない。
【0015】
本発明は、上記事実を考慮して、モータを適正に支持してフレームの変形を抑制することができるウエビング巻取装置を得ること、また車両搭載の際の外力によるモータへのダメージを防止することができるウエビング巻取装置を得ることが目的である。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係るウエビング巻取装置は、互いに対向する一対の脚板が背板によって連結されたフレームと、前記脚板間に回転可能に配置され、乗員拘束用のウエビングが巻取り引出し可能に巻き回された巻取軸と、前記脚板の一方における他方よりも延設された部分に軸線方向の一端部が固定され、作動して前記巻取軸を回転駆動するモータと、前記脚板間に架け渡されると共に前記モータの他端部を支持する支持部材と、を備えている。
【0017】
請求項1記載のウエビング巻取装置では、乗員拘束用のウエビングを巻き回した巻取軸が、フレームにおける背板によって互いに連結された一対の脚板間に回転可能に配置されており、この巻取軸の回転によってウエビングの巻取り引出しが可能とされる。
【0018】
フレームを構成する一対の脚板の一方における他方よりも延設された部分(他方の脚板と対向しない部分)には、モータの一端部が直接的または間接的に固定されている。モータの他端部は、脚板間を架け渡す支持部材が支持している。このモータは、所定の場合に作動して、巻取軸を強制的に回転駆動する。
【0019】
ここで、支持部材が一対の脚板間に架け渡されているため、フレームの片側のみを重量化することなく、該フレームの剛性が向上している。そして、この支持部材によってモータの他端部が支持されるため、例えば、車両振動や組み付け時におけるモータの車体(側の部品)への接触等の外力によるモータの変位が規制または防止される。これらにより、フレームの変形が著しく抑制され、ウエビング巻取装置は適正にその機能を果たすことができる。また、モータの一端部が一方の脚板における上記延設部分に固定されるため、モータの一方の脚板への固定が容易である。
【0020】
なお、支持部材は、上記外力がモータに作用するときに該モータの他端部を支持(変位を規制)すれば足り、通常はモータの他端部を自由状態としていても良い。
【0021】
このように、請求項1記載のウエビング巻取装置では、モータを適正に支持してフレームの変形を抑制することができる。
【0022】
請求項2記載の発明に係るウエビング巻取装置は、請求項1記載のウエビング巻取装置において、前記支持部材は、前記一方の脚板に固定される固定部と、他方の脚板に固定され前記モータを貫通孔に貫通させて支持するモータ受け部と、前記モータに対する前記背板または前記巻取軸との反対側において前記固定部とモータ受け部とを連結する連結部とを有する、ことを特徴としている。
【0023】
請求項2記載のウエビング巻取装置では、支持部材は、一方の脚板に固定された固定部と他方の脚板に固定されたモータ受け部とが連結部によって連結されて一対の脚板間を架け渡している。そして、一方の脚板に一端部が固定されたモータは、その他端部がモータ受け部の貫通孔を貫通して(貫通孔に挿通されて)支持部材により支持(支持可能に配置)されている。
【0024】
ここで、支持部材の連結部が、モータに対しフレームの背板の反対側(脚板の自由端側)またはモータに対し巻取軸の反対側に位置しているため、換言すれば、モータの外周部を露出する部分の一部が連結部よって覆われるため、連結部の内側に位置するモータが車体との接触に対し保護される。すなわち、仮にウエビング巻取装置の車体への組み付け時に該ウエビング巻取装置の外郭に干渉しやすい位置に車体側の部位があっても、該部位には連結部が干渉することでモータが車体に接触する確率が低減され、モータに変位を生じさせる外力の原因となる上記接触自体が生じ難い。これにより、ウエビング巻取装置を車両へ搭載する際の外力によるモータへのダメージが防止される。また、連結部が一方の脚板の自由端部(の近傍)に架け渡されることとなるため、フレームの剛性が一層向上し好適である。
【0025】
また、モータ受け部が、その貫通孔にモータを貫通させて支持するため、モータのあらゆる径方向の変位がモータ受け部によって規制または防止される。これにより、車両振動に伴うフレームの変形も確実に抑制される。さらに、モータ受け部が凹部等によってモータを支持する構成と比較して、支持部材の軽量化が図られる。
【0026】
請求項3記載の発明に係るウエビング巻取装置は、請求項2記載のウエビング巻取装置において、前記連結部は、前記モータの外周に対して、前記巻取軸と反対側に突出する部分と前記背板とは反対側に突出する部分とを共に有する、ことを特徴としている。
【0027】
請求項3記載のウエビング巻取装置では、支持部材の連結部が、モータの外周部よりも巻取軸の反対側に突出する部分と、モータの外周部よりも背板の反対側(脚板の自由端側)に突出する部分を共に有するため、換言すれば、連結部がウエビング巻取装置の角部に位置しているため、モータが車体との接触に対し確実に保護される。
【0028】
請求項4記載の発明に係るウエビング巻取装置は、請求項2または請求項3記載のウエビング巻取装置において、前記モータは、他端部が前記貫通孔に遊嵌されて前記モータ受け部に支持される、ことを特徴としている。
【0029】
請求項4記載のウエビング巻取装置では、モータは、その他端部が支持部材を構成するモータ受け部の貫通孔に遊嵌状態で支持される。すなわち、モータの他端部における外周部とモータ受け部における貫通孔の内縁部との間には、若干の隙間(遊び)が形成されている。このため、各部品の寸法や組み付け位置にばらつきがあっても該ばらつきが上記隙間によって吸収され、モータが適正に支持される。すなわち、上記寸法等にばらつきがある場合に懸念される、フレームにモータ及び支持部材を無理に取り付けることによる(ウエビング巻取装置の内力による)該フレームの歪みが防止される。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置10について、図1乃至図8に基づいて説明する。なお、説明の便宜上、各図に矢印A、矢印B、矢印Cが示されている場合、該矢印Aが指す側を上側、矢印Bが指す側を前側、矢印Cが示す側を右側とする。
【0031】
図1には、ウエビング巻取装置10が正面側からの斜視図にて示されている。また、図2にはウエビング巻取装置10の背面図が示されており、図3には後述するロックカバー38を取り除いたウエビング巻取装置10の側面図が示されている。
【0032】
これらの図に示される如く、ウエビング巻取装置10は、フレーム12を備えている。フレーム12は、背板14と、背板14の左端部から前方に延設された第1脚板16と、背板14の右端部から前方に延設された第2脚板18とを備えて平面視略「コ」字状に形成されている。また、背板14は、その幅(左右)方向中央部が下方に延出されており、該延出部分には、車体へのボルト締結用のボルト孔20が設けられている。
【0033】
すなわち、第1脚板16と第2脚板18とは、互いに平行に設けられて対向しており、背板14によって互いに連結されている。背板14、第1脚板16、第2脚板18は、プレス加工等によって一体に形成されている。また、これらの第1脚板16、第2脚板18は、それぞれ背板14の上端部14Aよりも上方へ延出されている。
【0034】
図6にも示される如く、第1脚板16、第2脚板18の上端部(上側自由端部)には、連結片22が架け渡されている。連結片22には、ウエビングW(後述)が挿通されるガイド孔24と、取付部26とが設けられており、取付部26には車体へのボルト締結用のボルト孔28が設けられている。また、第1脚板16、第2脚板18の前端部(背板14と反対側の自由端部)における上下方向の中間部には、サポートバー30が架け渡されている。
【0035】
以上により、フレーム12は、その上部において第1脚板16と第2脚板18とが、背板14、連結片22、サポートバー30によって互いに連結されており、強固な構造体を構成している。そして、このフレーム12の上部では、本発明における巻取軸を構成するスプール32が第1脚板16、第2脚板18間に配置されている。
【0036】
スプール32は、乗員拘束用のウエビングWが巻き回されるスプール軸32Aと、スプール軸32Aの第1脚板16側に設けられた第1フランジ部32Bと、スプール軸32Aの第2脚板18側に設けられた第2フランジ部32Cとで構成されている。スプール軸32Aには、ウエビングWが挿通されてその一端部が係止されるベルト通し孔34が設けられており、このベルト通し孔34に一端部が係止されたウエビングWがスプール軸32Aに層状に巻き回される構成である。
【0037】
このウエビングWは、上記通り、フレーム12の上端部に固定された連結片22のガイド孔24を挿通してその他端部が車体に固定されたアンカ部材に係止されている。すなわち、本実施の形態では、ウエビングWが上方に引出されるようになっている。
【0038】
図3に示される如く、第1フランジ部32Bの軸心部からは支軸36が突設されており、この支軸36は、第1脚板16の透孔16Aを貫通し該第1脚板16の外側に固定されたロックカバー38内で回転可能に軸支(図示省略)されている。一方、スプール32の第2フランジ部32C側の軸心部には、支軸を有するスリーブ(何れも図示省略)が一体回転可能に装着されており、このスリーブの支軸は、第2脚板18の透孔18Aを貫通し該第2脚板18に固定されたプリテンショナカバー40内で回転可能に軸支されている(図示省略)。
【0039】
以上により、スプール32は、互いに対向する第1脚板16、第2脚板18の上部間に配置され、これらの対向方向に軸方向を一致させて回転可能に支持されている。そして、プリテンショナカバー40内には、スプール32(スリーブの支軸)をウエビングWの巻取方向に付勢する付勢部材としてのぜんまいばね(図示省略)が配設されている。
【0040】
また、プリテンショナカバー40内には、図示しないプリテンショナ機構が配設されている。プリテンショナ機構は、衝突時等の車両急減速時にスプール32を強制的にウエビングWの巻取方向に回転させ、該急減速初期における乗員の前方への移動を抑制するものであり、駆動源としては、多量のガスを瞬時に発生させるガスジェネレータが用いられている。このガスジェネレータのコネクタ部42がプリテンショナカバー40における背板14側から露出している(図2参照)。また、ガスジェネレータのガス圧をスプール32の回転に変換する機構としては、ガス圧によって直線運動するピストン・シリンダ機構と、直線運動を開移転運動に変換するラック&ピニオン機構とを、ピストンにラックを固定して組み合わせたものが用いられている。
【0041】
一方、ロックカバー38内には、車両急減速時やウエビングWの急激な引出時にスプール32のウエビングW引出し方向の回転を阻止するロック機構が配設されている。図3に示される如く、ロック機構は、スプール32の第1フランジ部32B内に設けられ第1脚板16の透孔16A内縁に形成された内歯ラチェット44と対向するロックプレート46を備えている。
【0042】
ロックプレート46は、通常はリターンスプリング等の付勢力によって、そのロック歯46Aが内歯ラチェット44と噛み合わずスプール32のウエビングW引出し方向の回転を許容する位置に位置している。このロックプレート46は、車両減速時やウエビングWの急激な引出時に図示しないロック輪のウエビングW引出し方向の回転が阻止されると、スプール32に対し相対回転するロック輪によってロック歯46Aが内歯ラチェット44と噛み合う位置にガイドされ、スプール32のウエビングW引出し方向の回転を阻止する構成である。なお、このロックプレート46を保持する第1フランジ部32Bに相当する部分を、スプール32に対し相対回転可能に設けると共にトーションバー等を介してスプール32に連結し、上記回転ロック時にトーションバーを捩りつつスプール32の所定量のウエビングW引出し方向回転を許容する(エネルギ吸収を果たす)フォースリミッタ機構を備えた構成としても良い。
【0043】
また、ウエビング巻取装置10は、スプール32を強制的に回転駆動する機構としてのモータ48を備えている。そして、このモータ48を保持するために、フレーム12の第2脚板18は、背板14から離間した前側において下方に延設されたモータ保持部50を備えている。なお、第1脚板16には、このモータ保持部50に相当する部分は設けられていない。
【0044】
このモータ保持部50を含む第2脚板18の内面側(第1脚板16側)には、扁平ケース状に形成されたギヤケース52配設されている。図4にも示される如く、このギヤケース52は、第2脚板18(モータ保持部50を含む、以下同じ)に適宜設けられた透孔54(図6参照)を通して該第2脚板16の外側からねじ込まれたビス56によって、フレーム12に固定されている。
【0045】
そして、このギヤケース52におけるモータ保持部50に対応する下部、すなわちスプール32に対しウエビングWの引出し側とは反対側には、モータ48の一端部が固定されている。
【0046】
具体的には、略円筒状に形成されたモータ48の外周部及びギヤケース52の外周部から互いに対応して突出したビスボス48A、52Aに、ビスボス52A側からボルト58を貫通させ、該ボルト58の頭部をビスボス52Aの端面に係合させると共にビスボス48Aから突出したボルト58にナット60を螺合することで、モータ48がギヤケース52に固定されている。すなわち、モータ48は、その一端部がギヤケース52を介して第2脚板18のモータ保持部50に固定されてスプール32と平行に保持されている。また、モータ48の外周部には、略全長に亘り径方向外側に突出した突出部48Bが形成されている。
【0047】
ギヤケース52内には、減速機構及びクラッチ機構が配設されており、これらの減速機構及びクラッチ機構を介してモータ48の出力軸がスプール32に連結されている。クラッチ機構は、通常は切り離されてスプール32の回転をモータ48に伝達しないようになっており、所定の場合にモータ48が作動すると該モータ48の回転をスプール32に伝達する構成である。これにより、通常は、ウエビングWの巻取り引出しが自由とされ、所定の場合にウエビングWが強制的にスプール32に巻き取られ、またはスプール32から引出される構成である。なお、所定の場合の例については、本実施の形態の作用と共に後述する。
【0048】
さらに、ウエビング巻取装置10は、本発明における支持部材としてのジョイントバー62を備えており、ジョイントバー62は、フレーム12の第1脚板16と第2脚板18とを架け渡すようになっている。
【0049】
具体的には、図7にも示される如く、ジョイントバー62は、第1脚板16に固定されるモータ受け部64と、第2脚板18に固定される固定部66と、モータ受け部64と固定部66とを連結する連結部68とで構成されている。モータ受け部64と固定部66とは、それぞれ連結部68の異なる端部から互いに平行に延設されている。このジョイントバー62は、モータ受け部64、固定部66、及び連結部68とがプレス加工等によって一体に形成されている。
【0050】
図7(B)に示される如く、モータ受け部64には、貫通孔70が設けられている。貫通孔70は、モータ48の軸方向視における他端側の外形に対応して、略円形状の円孔部70Aとモータ48の突出部48Bに対応した略扇形状の扇孔部70Bとが連設して構成されている。この貫通孔70は、モータ48の他端側を貫通(挿通)状態で遊嵌させるようになっている。すなわち、図7(A)に示される如く、モータ受け部64における貫通孔70の内縁部とモータ48の外周部との間には、僅かな隙間Gが形成される構成である。また、扇孔部70Bの周長は、突出部48Bの周長よりも十分に大とされている。
【0051】
また、モータ受け部64には、複数(本実施の形態では2つ)の透孔72が設けられている。そして、図6に示される如く、モータ受け部64は、貫通孔70よりも上側部分を第1脚板16の下部外面に重ね合わせた状態で、該第1脚板16に固定されている。具体的には、第1脚板16には、モータ受け部64の各透孔72に対応する位置にねじ孔74(図4参照)が設けられており、透孔72を貫通してねじ孔74にねじ込まれたビス76の頭部がモータ受け部64外面に係合することで、モータ受け部64が第1脚板16に固定されている。
【0052】
一方、固定部66にも透孔72が設けられており、該固定部66は、その略全体を第2脚板18のモータ保持部50の下前端近傍における外面に重ね合わせた状態で該モータ保持部50に固定されている。すなわち、モータ保持部50の下前端近傍にはねじ孔74が設けられており、透孔72を貫通してねじ孔74にねじ込まれたビス76の頭部が固定部66の外面に係合することで、固定部66がモータ保持部50に固定されている。
【0053】
以上により、図6に示される如く、ジョイントバー62がフレーム12の第1脚板16、第2脚板18間を架け渡し、該フレーム12は、その下部においても強固な構造体を形成している。そして、図6と同じ方向から見た図5に示される如く、フレーム12を補強するジョイントバー62は、一端部がギヤケース52(を介して第2脚板18)に固定されたモータ48の他端部を支持して(支持可能に遊嵌させて)いる。また、ジョイントバー62の連結部68は、モータ保持部50とモータ受け部64との前方及び下方に開口した対向面間の一部を閉塞して、モータ48の露出部分を小さくしている。
【0054】
具体的には、ジョイントバー62の連結部68は、フレーム12への固定状態でウエビング巻取装置10の前下端に位置しており、下方(矢印Aとは反対方向)及び前方(矢印B方向)を共に向くように上下方向及び前後方向に対し傾斜している。そして、図3に示される如く、連結部68は、その前縁68Aがモータ48の外周部における前端(図3に示す線F)よりも前方に位置すると共に、その下縁68Bがモータ48の外周部における下端(図3に示す線L)よりも下方に位置するように、形状寸法または配置が決められている。
【0055】
このように、ジョイントバー62は、フレーム12を補強する機能と、モータ48の他端部を支持する機能と、モータ48の一部をカバーして露出部分を減らし該モータ48を保護する機能とを有する構成である。
【0056】
また、モータ48におけるモータ受け部64の貫通孔70を貫通して外(左)側に突出した他端部には、モータカバー78が被嵌されている。このモータカバー78は、モータ48に被嵌することでその内部でモータ48と電気的に接続されるようになっており、図3に示される如く、その上端部からは給電配線80(図1及び図5では図示省略)が導出されている。給電配線80はコネクタ82の端子に電気的に接続されており、コネクタ82は第1脚板16に固定されて背板14側に端子を露出させている。このコネクタ82は、図示しない制御回路を介して電源に接続されており、制御回路は上記所定の場合にモータ48に給電するようになっている。
【0057】
なお、図8に示される如く、モータカバー78の上方に張り出して複数の給電配線80をばらけないように配線孔84に挿通させて保持する配線保持部86を、ジョイントバー62におけるモータ受け部64の上端に一体に設けることも可能である。
【0058】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0059】
上記構成のウエビング巻取装置10では、通常はスプール32が回転自在とされており、ウエビングWの巻取り引出しが自由とされる。そして、ぜんまいばねの付勢力によってスプール32がウエビングWの巻取方向に付勢されているため、ウエビングWの不使用時には該ウエビングWがスプール32への巻取り状態で収容され、乗員のウエビングW装着時には該ウエビングWの弛みが除去される。
【0060】
また、車両急減速時やウエビングWの急激な引出しの際には、ロック機構が作動してウエビングWの引出しが阻止される。さらに、衝突等の車両加速度(減速度)が大きい場合には、プリテンショナ機構が作動し、ウエビングWが強制的にスプール32に巻き取られる。これにより、急減速初期の乗員の前方への移動が抑止される。
【0061】
そして、このウエビング巻取装置10では、所定の場合にはモータ48が作動し(制御回路から受電し)、スプール32が回転することでウエビングWが該スプール32に巻き取られたり、該スプール32から引出されたりする。
【0062】
具体的には、例えば、車両に設けられた衝突予測手段が、車両前方の他の車両や障害物との距離、車速、または上記距離の時間変化率等に基づいて衝突の確率が閾値以上であると判断した際には、モータ48を作動してプリテンショナ機構作動前にウエビングWを巻き取る方向にスプール32を回転させる。これにより、仮に車両が衝突に至った場合でも、該衝突初期の乗員の前方への移動が確実に抑止される。また例えば、乗員がウエビングWを引出す際には、モータ48を作動してスプール32をウエビングWの引出し方向に回転させ、ぜんまいばねの付勢力に抗する補助引出し力を作用させる。さらに例えば、居眠り検知装置や脇見検知装置等が、乗員の居眠りや脇見を検知した際には、モータ48を作動してウエビングWの巻取方向にスプール32を回転させ、該ウエビングWによる乗員拘束力を短時間だけ上昇させて乗員に対し注意を喚起する(警報機能を果たす)。
【0063】
以上数例を示したように、スプール32を強制的に回転駆動する駆動源として作動状態と非作動状態とを可逆的に制御可能なモータ48を備えることで、ウエビング巻取装置10は、安全や利便性を向上させるための能動制御性が高い。なお、モータ48の作動時期等の制御については、上記各例に限定されることはなく、様々な制御を行なうことが考えられる。
【0064】
ここで、ジョイントバー62がフレーム12の第1脚板16、第2脚板18間を架け渡すため、第2脚板18のモータ保持部50またはギヤケース52を補強する場合のようにフレーム12の片側(第2脚板18側)のみを重量化することなく、該フレーム12の剛性が向上する。
【0065】
そして、このジョイントバー62のモータ受け部64が、一端部を第2脚板18側に固定したモータ48の他端部を支持するため、例えば、車両振動や組み付け時におけるモータ48の車体(側の部品)への接触等の外力によるモータ48の変位が規制される。具体的には、モータ受け部64が、その貫通孔70の内縁部とモータ48の外周部との間に僅かな隙間Gが形成されるように該貫通孔70にモータ48を貫通させているため、外力によってモータ48が変位しようとしてもモータ48の外周部が貫通孔70の内縁部に当接して該変位が規制される。特に、閉じた形状の内縁部を有する貫通孔70にモータ48を貫通させるため、該モータ受け部64の強度が高く、またモータ48のあらゆる径方向の変位が規制される。このため、車両振動等に基づくモータ48の変位方向が特定されない外力に対しても、該外力に基づくモータ48の変位を確実に規制することができる。
【0066】
以上により、フレーム12の剛性が向上し、かつモータ48の変位が規制されるため、外力によるフレーム12の変形が著しく抑制される。
【0067】
またここで、ジョイントバー62の連結部68が、ウエビング巻取装置10の前下端角部(モータ48に対しスプール32とは反対側で、かつモータ48に対し背板14とは反対側)に位置してモータ48の一部を外側からカバーするため、例えば、ウエビング巻取装置10の車体への組み付け時における該モータ48への車体(側部品)の接触が生じ難い(接触の確率が低い)。
【0068】
具体的には、ウエビング巻取装置10を車体に組み付ける際には、通常、ウエビング巻取装置10の下端側を先頭に車体に対し取付位置まで移動するが、このとき仮にウエビング巻取装置10の外郭に干渉しやすい位置に車体側の部位があっても、該部位には連結部68が干渉することでモータ48が車体に接触する確率が低減され、モータ48変位を生じさせる外力の原因となる上記接触自体が生じ難い。すなわち、連結部68によってモータ48が接触に対し保護される。
【0069】
特に、この連結部68の前縁68Aがモータ48の前端(図3に示す線F)よりも前方に位置すると共に、下縁68Bがモータ48の外周部における下端(図3に示す線L)よりも下方に位置するため、モータ48と車体側との接触が一層生じ難く、モータ48が効果的に保護される。
【0070】
また、ジョイントバー62の連結部68がウエビング巻取装置10の前下端角部に位置するため、例えば連結部68がモータ48よりも上側に位置する場合と比較して、フレーム12とジョイントバー62とで構成される構造体の下部における剛性が高くなることは言うまでもない。
【0071】
このように、本実施の形態に係るウエビング巻取装置10では、モータ48を適正に支持してフレーム12の変形を抑制することができる。このため、スプール32、ロック機構、プリテンショナ機構、クラッチ機構、減速機構等の回転して機能する機構の位置精度が確保され、ウエビング巻取装置10は適正にその機能を果たすことができる。また、ウエビング巻取装置10の車両への搭載時の外力によるモータ48へのダメージが防止される。
【0072】
また、ウエビング巻取装置10では、モータ48の他端部がモータ受け部64の貫通孔70に遊嵌状態で支持され、該モータ受け部64の内縁とモータ48の外周部との間に僅かな隙間(遊び)Gが形成されるため、各部品の寸法や組み付け位置にばらつきがあっても該ばらつきが上記隙間Gによって吸収され、モータ48が適正に支持される。具体的には、例えば、フレーム12の透孔54やねじ孔74、ジョイントバー62の透孔72等の寸法誤差(の累積)によって、モータ48のフレーム12、ジョイントバー62に対する組み付け位置に、異なるウエビング巻取装置10毎にばらつき(個体差)が生じても、該ばらつきが上記隙間Gによって吸収される。このため、上記ばらつきがある場合に懸念される、フレーム12にモータ48及びジョイントバー62を無理に取り付けることによる(ウエビング巻取装置10の内力による)該フレーム12の歪みが防止される。
【0073】
さらに、ウエビング巻取装置10では、一端部がフレーム12の第2脚板18を延出したモータ保持部50側に固定されるモータ48の他端部が、該フレーム12とは別部材のジョイントバー62によって支持されるため、例えば、第1脚板16にモータ保持部50に対応する部分を延出してモータ48の他端部を支持すると共に該延設部位とモータ保持部50とをサポートバー30の如き部材で架け渡した構成と比較して、フレーム12へのモータ48の取り付けが容易で組み付け作業性が良い。
【0074】
すなわち、上記比較例の場合は、モータ48の他端部を第1脚板16の延設部分に設けられた貫通孔70に挿通させた非固定状態で、第2脚板18にギヤケース52を固定し、さらに該ギヤケース52にモータ48を固定する必要があるが、ウエビング巻取装置10では、モータ48を取り付ける際には、例えば、モータ48の一端部を第2脚板18に固定されたギヤケース52に固定し、この状態から貫通孔70にモータ48の他端部を挿通させつつジョイントバー62をフレーム12に対し位置決めし、該ジョイントバー62のフレーム12への固定後にモータカバー78をモータ48の他端部に被嵌すれば良く、組み付け性が良好である。この場合にも、ジョイントバー62の貫通孔70がモータ48外周部に対し隙間Gを生じさせる分だけ大きいことにより、フレーム12に固定されているモータ48に対しジョイントバー62の姿勢を変化させることができ、組み付け性が一層良好となる。
【0075】
なお、上記の実施の形態では、ウエビング巻取装置10が支持部材としてのジョイントバー62を備える好ましい構成としたが、本発明における支持部材は、第1脚板16、第2脚板18間を架け渡すと共にモータ48の他端部を外力に対し支持すれば足り、その形状や配置(による機能)等がジョイントバー62の好ましい構成に限定されることはない。また、ジョイントバー62は、モータ受け部64、固定部66、連結部68が一体に形成される好ましい構成に限定されることはない。したがって、本発明は、ジョイントバー62が固定部66を除き正面視略「L」字状に形成される好ましい構成限定されることはなく、例えば、ジョイントバー62がクランク状に形成されても良く、逆「T」字状に形成されても良い。これらの形状は、特にモータ48の全長が第1及び第2脚板16、18間の対向間隔よりも小である場合に適する。
【0076】
また、上記の実施の形態では、ジョイントバー62がビス止めでフレーム12に固定される構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、連結片22、サポートバー30のようにフレーム12側の被係合部に係合部を係合させることでジョイントバー62がフレーム12に固定される構成としても良い。
【0077】
さらに、上記の実施の形態では、モータ受け部64における貫通孔70の内縁とモータ48の外周部との間に隙間Gが形成される好ましい構成としたが、例えば、ジョイントバー62の透孔72を長孔としたりビス76に対し大径とすることで、各部品の寸法や組み付け位置のばらつき吸収する構成としても良い。この場合において貫通孔70をモータ48外周に対応して小径化する場合には、モータ48の組み付けの際に、貫通孔70にモータ48の他端部を貫通させた状態でジョイントバー62をフレーム12に仮止めし、モータ48をギヤケース52に固定した後にジョイントバー62をフレーム12に対し位置決めして固定すれば良い。
【0078】
さらにまた、上記実施の形態では、スプール32の下方にモータ48が位置するようにウエビング巻取装置10が車体に取り付けられる例を示したが、本発明はウエビング巻取装置10の車体への取り付け方向に限定されることはない。したがって、例えば、車両後席や2座の車両におけるシートベルト装置に適用され乗員の肩部後方に配置されるウエビング巻取装置10では、スプール32の後方(車両の後方)にモータ48が位置するように車体に取り付けられても良い。また、モータ48がスプール32に対し如何なる方向に取り付けられても(例えば、ウエビングWの引出し側に取り付けられても)良いことは言うまでもない。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るウエビング巻取装置は、モータを適正に支持してフレームの変形を抑制することができるという優れた効果を有する。また、本発明に係るウエビング巻取装置は、車両搭載の際の外力によるモータへのダメージを防止することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置の概略全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置の背面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置の一部部品を取り除いた側面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置の図1とは別方向から見た斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置のさらに別方向から見た斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置を構成するフレームとジョイントバーとを示す図5と同方向から見た斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置を構成するジョイントバーを示す図であって、(A)は側面図、(B)は図7(A)の7B−7B線に沿う断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るウエビング巻取装置を構成するジョイントバーの変形例を示す図1に対応する斜視図である。
【図9】従来のウエビング巻取装置を示す正面図である。
【符号の説明】
10 ウエビング巻取装置
12 フレーム
14 背板
16 第1脚板(一対の脚板の他方)
18 第2脚板(一対の脚板の一方)
32 スプール(巻取軸)
48 モータ
62 ジョイントバー(支持部材)
64 モータ受け部
66 固定部
68 連結部
W ウエビング

Claims (4)

  1. 互いに対向する一対の脚板が背板によって連結されたフレームと、
    前記脚板間に回転可能に配置され、乗員拘束用のウエビングが巻取り引出し可能に巻き回された巻取軸と、
    前記脚板の一方における他方よりも延設された部分に軸線方向の一端部が固定され、作動して前記巻取軸を回転駆動するモータと、
    前記脚板間に架け渡されると共に前記モータの他端部を支持する支持部材と、
    を備えたウエビング巻取装置。
  2. 前記支持部材は、前記一方の脚板に固定される固定部と、他方の脚板に固定され前記モータを貫通孔に貫通させて支持するモータ受け部と、前記モータに対する前記背板または前記巻取軸との反対側において前記固定部とモータ受け部とを連結する連結部とを有する、ことを特徴とする請求項1記載のウエビング巻取装置。
  3. 前記連結部は、前記モータの外周に対して、前記巻取軸と反対側に突出する部分と前記背板とは反対側に突出する部分とを共に有する、ことを特徴とする請求項2記載のウエビング巻取装置。
  4. 前記モータは、他端部が前記貫通孔に遊嵌されて前記モータ受け部に支持される、ことを特徴とする請求項2または請求項3記載のウエビング巻取装置。
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