JP4101918B2 - アルカリ現像型光硬化性組成物及びそれを用いて得られる焼成物パターン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの前面基板や背面基板に形成される導体回路パターンや隔壁パターン、さらには誘電体パターン、蛍光体パターン、ブラックマトリックスの形成に特に有利に適用でき、また蛍光表示管及び電子部品用の導電体、抵抗体、誘電体の形成にも適用できるアルカリ水溶液により現像可能な光硬化性組成物、及びそれを用いて得られる導体パターンやガラス質誘電体パターン、蛍光体パターンなどの焼成物パターンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プラズマディスプレイパネル、蛍光表示管、電子部品などにおける導体パターンや誘電体パターンの形成には、一般に極めて多量の金属粉又はガラス粉末を含有する導電性ペースト又はガラスペーストを用いてスクリーン印刷法によってパターン形成が行われていた。
しかし、近年、電子部品等においてはパターンの高精細化が要求されてきている。従来のスクリーン印刷法によるパターン形成では、熟練を要し、また印刷時における掠れや滲み、スクリーンの伸縮に起因する位置合わせや精度等の問題があり、高精細パターンへの対応が困難になってきている。
【0003】
上記のような問題を解決する方法として、最近では、感光性ペーストを用い、フォトリソグラフィー法により焼成物パターンを形成する種々の技術が開発されている。しかしながら、極めて多量の無機粉体を含有する感光性ペーストの場合、露光の際の光硬化深度が不充分で、現像後に解像性不良が起こるという問題がある。すなわち、多量の無機粉体の存在により光の透過性が悪いため、パターン深部まで光硬化し難くなる。その結果、現像時のアンダーカットによるパターンの欠損や、焼成時のパターンエッジ部のカール(反り)が起き易くなる。そのため、露光及び現像工程における条件設定を非常に狭い範囲で行わなくてはならず、量産時の歩留りが低下するなどの問題があった。一方、光硬化深度を向上させるために反応性希釈剤(光硬化性モノマー)を多量に添加した場合、露光の際に反応性希釈剤の不飽和基が未反応のまま残存する割合が多くなり、反応性希釈剤の未反応物が焼成時にゲル化して焼成残渣が発生したり、ゲル化による収縮でパターンのよれや線幅収縮等の問題を招き、ひどい場合には断線を発生することもある。
【0004】
また、セラミックス回路基板上に導体パターンを形成するための感光性導電性ペーストとしては、導電性粉末、側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体、例えばメタアクリル酸とメチルメタアクリレートとスチレンの共重合体にグリシジルアクリレートを付加反応させたポリマー、光反応性化合物及び光重合開始剤を含有するペースト組成物が、例えば特開平5−67405号や特開平5−271576号に開示されている。このような感光性導電性ペーストは、基板上に塗布した後、露光・現像により導体回路パターンを形成できるが、600〜1,000℃で焼成することが教示されており、プラズマディスプレイパネル作製時の焼成温度である600℃以下(プラズマディスプレイパネルの基板には一般にソーダガラスが用いられているため、焼成は600℃以下の温度で行う必要がある。)では焼成残渣が生じ、形成される電極回路の導電性の劣化を生ずるなどの影響があるため、プラズマディスプレイパネル用には不向きである。比較的に低い温度での焼成を可能にするためにこのような組成物に低融点ガラスフリットを同時に配合しようとした場合、共重合樹脂成分のメタアクリル酸に起因する強い酸性度により、得られる組成物の保存安定性が悪く、ゲル化や流動性の低下により塗布作業性が悪く、またアルカリ水溶液による現像性も安定しないという問題を生ずる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記のような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、その基本的な目的は、極めて多量に無機微粉体を含有しても保存安定性やアルカリ水溶液による現像性に優れると共に、焼成工程においてパターンエッジのカールや線幅収縮、あるいはさらに断線を生じることなく、高精細、高アスペクト比の焼成物パターンを形成できるアルカリ現像型の光硬化性組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、焼成性に優れ、比較的に低い温度で焼成でき、また乾燥、露光、現像、焼成の各工程において基板に対する安定した密着性を示す焼成物パターン形成用のアルカリ現像型光硬化性組成物を提供することにある。
本発明のより具体的な目的は、フォトリソグラフィー技術により作業性、生産性良く高精細な導体回路パターンやガラス質誘電体パターン、蛍光体パターンを形成でき、しかも画像に悪影響を及ぼす焼成残渣を生ずることなく600℃以下での焼成工程を行うことができる焼成物パターン形成用のアルカリ現像型光硬化性組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、このような光硬化性組成物から選択的露光、現像、及び焼成の一連の工程により生産性良く製造した高精細な焼成物パターン及びその製造技術を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の第一の側面によれば、焼成物パターン形成用のアルカリ現像型の光硬化性組成物が提供され、その基本的な態様は、(A)エポキシ化合物(a)と不飽和モノカルボン酸(b)を反応させ、生成した2級の水酸基に多塩基酸無水物(c)を反応させて得られる活性エネルギー線硬化性樹脂、(B)無機粉体、(C)光重合開始剤、(D)反応性希釈剤、(E)無機酸、有機酸、無機リン酸及び有機リン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸である安定剤、(F)溶剤、及び(G)アクリル系共重合樹脂を含有し、上記アクリル系共重合樹脂(G)を上記活性エネルギー線硬化性樹脂(A)100重量部当り1〜100重量部の割合で含有することを特徴としている。
【0007】
本発明の光硬化性組成物は、ペースト状形態であってもよく、また予めフィルム状に成膜したドライフィルムの形態であってもよい。特に前記態様の光硬化性組成物の場合、比較的容易にフィルム状に成膜することができる。
ペースト状形態の場合、前記無機粉体(B)として主として金属微粒子を用いれば光硬化性導電性ペースト組成物となり、ガラス粉末のみを用いれば光硬化性ガラスペースト組成物となる。また、ブラックマトリックス用ペースト組成物の場合、さらに黒色顔料を含有する。
上記無機粉体としては、10ミクロン以下の粒径の粉末が好適に使用できる。光硬化性導電性ペーストの場合の金属微粒子としては、金、銀、銅、パラジウム、白金、アルミ、ニッケル等を用いることができる。一方、光硬化性ガラスペーストの場合には、軟化点が300〜600℃の低融点ガラスを好適に使用できる。黒色顔料としては、Fe、Co、Cu、Cr、Mn、Alの1種又は2種類以上を主成分として含む金属酸化物からなる黒色顔料を好適に用いることができる。
【0008】
さらに本発明の他の側面によれば、前記のような光硬化性組成物から焼成物パターンを製造する方法が提供される。例えば、前記光硬化性組成物がペースト状形態の場合、基板上にペースト状光硬化性組成物を塗布し、乾燥して成膜し、一方、ドライフィルム形態の場合には基板上にラミネートし、その後、選択的露光、現像によりパターニングした後、焼成することにより、高精細な焼成物パターンが得られる。
このようにして形成される焼成物パターンは、前記無機粉体(B)として金属微粒子を用いた場合には導体パターンとなり、ガラス粉末を用いた場合にはガラス質誘電体パターンとなる。また、無機粉体として蛍光体粉末を用いることにより、蛍光体パターンを形成することもできる。
【0009】
【発明の実施の形態】
前記したように、従来の光硬化性ペースト組成物を用いて焼成物パターンを形成した場合、露光の際の光硬化深度が不充分で、現像後に解像性不良が生じたり、また焼成時にパターンのよれや線幅収縮、パターンエッジのカール等の問題も発生する。本発明者らは、このような現象について鋭意研究の結果、導体パターンや誘電体パターンなどの形成に用いられる光硬化性ペースト組成物は、粒径の極めて小さい金属微粒子等の無機粉体を極めて多量に含有しているため、露光の際に光の透過性が悪く、そのため光硬化不充分となり、また光硬化むらも生じ易くなることが大きな要因であることを見出した。このような現象は、皮膜厚さが厚くなる程、また皮膜の深部になる程顕著になる。
また、前記したように、無機粉体のバインダーとしてメタアクリル酸などの酸性度の強いモノマー成分を含む共重合樹脂のみを用いた場合、金属粉やガラス粉末が共存することにより組成物の保存安定性が悪くなる。
【0010】
そこで、本発明の光硬化性組成物においては、無機粉体のバインダーとして、エポキシ化合物に不飽和モノカルボン酸を反応させて不飽和二重結合を導入し、さらにこれに酸性度の比較的弱い多塩基酸無水物を反応させてカルボキシル基を導入した特定の活性エネルギー線硬化性樹脂を用いることを第一の特徴としている。すなわち、本発明で用いる活性エネルギー線硬化性樹脂(A)は、エポキシ化合物(a)のエポキシ基に、充分な光硬化深度が得られる程度にまで光硬化性を向上させる割合で、不飽和モノカルボン酸(b)のカルボキシル基を反応させ、例えばエポキシアクリレートを生成させると共に、上記付加反応で生成した2級の水酸基に多塩基酸無水物(c)をエステル化反応させ、側鎖にカルボキシル基を導入したことを特徴としている。このような活性エネルギー線硬化性樹脂(A)は、光硬化性に優れると共に、バックボーンポリマーのエポキシアクリレートは疎水性を示す。従って、本発明の光硬化性組成物を用いた場合、エポキシアクリレートの疎水性が有利に利用され、光硬化しにくいパターン深部の耐現像性が向上する。その結果、現像及び露光工程における条件設定の余裕度が広がり、量産時の歩留りを向上できると共に、焼成後のパターンエッジのカール発生を大幅に低減でき、高アスペクト比、高精細な焼成物パターンを形成できる。また、側鎖にカルボキシル基を有するため、アルカリ水溶液に対して可溶性である。そのため、本発明の光硬化性組成物から形成した皮膜は、選択的露光後にアルカリ水溶液により安定した現像が可能となる。
【0011】
さらに本発明の光硬化性組成物は、焼成時の熱により解重合し易いアクリル系共重合樹脂(G)を前記活性エネルギー線硬化性樹脂(A)と混合して用いることを特徴としており、それによってペースト組成物の焼結温度を下げることが可能となり、活性エネルギー線硬化性樹脂(A)を単独で添加した場合に比べて、焼成物の炭素残渣が低減し、より低い温度で焼成することが可能となる。
このような効果を得るためには、組成物中のアクリル系共重合樹脂(G)の配合割合は、活性エネルギー線硬化性樹脂(A)100重量部当り1〜100重量部の範囲が好ましい。活性エネルギー線硬化性樹脂に比べてアクリル系共重合樹脂の割合が過剰になると、活性エネルギー線硬化性樹脂使用による前記したような効果が得られ難くなる。
【0012】
本発明の光硬化性組成物においては、ガラスペーストを組成する場合には前記無機粉体(B)として低融点ガラス粉末が用いられるが、導電性ペーストを組成する場合の金属粉など、他の無機粉体を用いる場合にも少量の低融点ガラス粉末を配合することが好ましく、それによって600℃以下の温度での焼成が可能になり、また焼成物パターンの基板への密着性が向上する。但し、このような金属粉やガラス粉末を配合した組成物においては保存安定性が低下し易く、またゲル化や流動性の低下により塗布作業性が悪くなり易いという問題がある。そこで、本発明の光硬化性組成物においては、前記活性エネルギー線硬化性樹脂(A)、無機粉体(B)、光重合開始剤(C)、反応性希釈剤(D)、溶剤(F)あるいはさらにアクリル系共重合樹脂(G)と共に、無機酸、有機酸、無機リン酸及び有機リン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸である安定剤(E)を配合することを第二の特徴としている。
その結果、本発明の光硬化性組成物は、保存安定性の悪さや、ゲル化や流動性の低下により塗布作業性が悪いといった問題もなく、フォトリソグラフィー技術により容易に大面積の基板に高精細のパターンを形成でき、しかも600℃以下での焼成工程でも充分に使用でき、歩留まりの大幅な向上を実現できる。
【0013】
以下、本発明の光硬化性組成物の各成分について詳細に説明する。
本発明で用いる活性エネルギー線硬化性樹脂(A)は、エポキシ化合物(a)のエポキシ基に、不飽和モノカルボン酸(b)のカルボキシル基を反応させ、生成した2級の水酸基に多塩基酸無水物(c)を反応させて得られる樹脂である。
このような活性エネルギー線硬化性樹脂(A)は、組成物全量の5〜50重量%の割合で配合することが好ましい。該樹脂の配合量が上記範囲よりも少な過ぎる場合、形成する皮膜中の上記樹脂の分布が不均一になり易く、充分な光硬化性及び光硬化深度が得られ難く、選択的露光、現像によるパターニングが困難となる。一方、上記範囲よりも多過ぎると、焼成時のパターンのよれや線幅収縮を生じ易くなるので好ましくない。
【0014】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂(A)としては、重量平均分子量1,000〜50,000、及び酸価30〜160mgKOH/g、好ましくは40〜120mgKOH/gを有するものを好適に用いることができる。活性エネルギー線硬化性樹脂(A)の分子量が1,000より低い場合、現像時の皮膜の密着性に悪影響を与え、一方、50,000よりも高い場合、現像不良を生じ易くなるので好ましくない。また、酸価が30mgKOH/gより低い場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が不充分で現像不良を生じ易くなり、一方、160mgKOH/gより高い場合、現像時に皮膜の密着性の劣化や光硬化部(露光部)の溶解が生じ易くなるので好ましくない。
【0015】
また、前記活性エネルギー線硬化性樹脂(A)の不飽和基量としては、二重結合当量(不飽和基1個当りの分子量)で350〜2,000の割合で含有することが好ましい。不飽和基量が上記割合より多くなると、選択的露光による画像形成時にハレーション等の現象が発生し、シャープなパターン形成が困難になると共に、光硬化皮膜の焼成性が低下し、焼成残渣の発生が起こり易くなる。さらに、不飽和基が多いことにより、露光の際のラジカル重合時の硬化収縮やラジカル重合後に塗膜が堅くなりすぎることにより脆くなり、基板との密着不良が発生し易くなる。一方、不飽和基量が上記割合より少なすぎると、パターン形成時の露光量がより多く必要になったり、現像、水洗の工程においてパターンのかけが生じたりして、シャープなパターン形成が困難になり易い。このため、焼成時に解重合し易いアクリル系共重合樹脂(G)を添加し、使用する全樹脂中の二重結合濃度を調整する必要も生じてくる。
【0016】
前記エポキシ化合物(a)としては、全ゆるエポキシ樹脂が使用可能であるが、代表的な例としては、ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールAのノボラック型、ビフェノール型、ビキシレノール型、N−グリシジル型等の公知慣用のエポキシ化合物や、市販品として好適なものとしてはダイセル社製EHP−3150等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
不飽和モノカルボン酸(b)の具体例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
多塩基酸無水物(c)の具体例としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水アジピン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、一無水ピロメリット酸等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
前記エポキシ化合物(a)と不飽和モノカルボン酸(b)の反応は、エポキシ基の当量数/カルボキシル基の当量数が0.8〜1.2、好ましくは0.9〜1.05となる割合で行うことが好ましい。エポキシ基の当量数/カルボキシル基の当量数が0.8未満では、不飽和モノカルボン酸が残るため臭気の問題があり、一方、上記当量数が1.2を越えた場合、エポキシ基が多く残るため、多塩基酸無水物を反応させる段階でゲル化し易くなるので好ましくない。また、生成した2級の水酸基に対する多塩基酸無水物の反応比率は、最終的に得られる樹脂の酸価が前記した30〜160mgKOH/gの範囲内となるように調整する。一般には、エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸の反応で生成する水酸基1当量に対し、多塩基酸無水物の当量が0.3以上、好ましくは0.5以上である。
【0020】
本発明の光硬化性組成物を導電性ペーストとして処方する場合に用いる無機粉体(B)の具体例としては、金属微粒子(B−1)又は金属微粒子とガラス微粒子(B−2)の混合物が挙げられる。
金属微粒子(B−1)としては金、銀、銅、パラジウム、白金、アルミ、ニッケル等やこれらの合金を用いることができる。上記金属粉は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができ、平均粒径としては解像度の点から10ミクロン以下の粒径が好適である。また、これらの金属粉は、球状、ブロック状、フレーク状、デンドライト状の物を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
金属粉の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂(A)の量あるいはさらにアクリル系共重合樹脂(G)との合計量を100重量部としたときに25〜1,000重量部となる割合が適当である。金属粉の配合量が25重量部未満の場合、導体回路の線幅収縮や断線を生じ易くなり、一方、1,000重量部を超えて多量に配合すると、光の透過を損ない、組成物の充分な光硬化性が得られ難くなる。
さらに焼成後の皮膜の強度、基板への密着性向上のために、後述するようなガラス粉末(B−2)を金属粉100重量部に対し1〜30重量部の範囲で添加することができる。
【0022】
本発明の光硬化性組成物をガラスペーストとして処方する場合に用いるガラス粉末(B−2)としては、軟化点が300〜600℃の低融点ガラスが用いられ、酸化鉛、酸化ビスマス、又は酸化亜鉛を主成分とする10ミクロン以下の平均粒径のものが好適に使用できる。
ガラス粉末の配合量も、前記活性エネルギー線硬化性樹脂(A)、光重合開始剤(C)、反応性希釈剤(D)及び溶剤(F)、あるいはさらにアクリル系共重合樹脂(G)の合計量を100重量部としたときに50〜2,000重量部となる割合が適当である。
【0023】
酸化鉛を主成分とするガラス粉末の好ましい例としては、酸化物基準の重量%で、PbOが48〜82%、B203が0.5〜22%、SiO2が3〜32%、Al2O3が0〜12%、BaOが0〜10%、ZnOが0〜15%、TiO2が0〜2.5%、Bi2O3が0〜25%の組成を有し、軟化点が420〜590℃である非結晶性フリットが挙げられる。
【0024】
酸化ビスマスを主成分とするガラス粉末の好ましい例としては、酸化物基準の重量%で、Bi2O3が35〜88%、B203が5〜30%、SiO2が0〜20%、Al2O3が0〜5%、BaOが1〜25%、ZnOが1〜20%の組成を有し、軟化点が420〜590℃である非結晶性フリットが挙げられる。
【0025】
酸化亜鉛を主成分とするガラス粉末の好ましい例としては、酸化物基準の重量%で、ZnOが25〜60%、K2Oが2〜15%、B203が25〜45%、SiO2が1〜7%、Al2O3が0〜10%、BaOが0〜20%、MgOが0〜10%の組成を有し、軟化点が420〜590℃である非結晶性フリットが挙げられる。
【0026】
ペーストの色調を黒にする場合、Fe、Co、Cu、Cr、Mn、Alの1種又は2種類以上を主成分として含む金属酸化物からなる黒色顔料を添加することができる。
【0027】
本発明の光硬化性組成物を蛍光体ペーストに処方する場合に用いる無機粉体(B−3)としては、用途に応じて種々の蛍光体粉末を用いることができ、例えば酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、アルミナ、酸化セリウム等の短周期率表におけるIIa族、IIIa族、及びIIIb族に属する元素の金属酸化物の少なくとも一種に、賦活剤又は共賦活剤としてのSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb及びLuから選ばれた少なくとも一種の希土類元素を混合し、焼結させた一種のセラミックス構造を有する長残光性蛍光物質や、代表的燐光体である亜鉛又はアルカリ土類の硫化物等の蛍光物質を用いることができる。プラズマディスプレイパネルの蛍光層には、一般に、(Y,Gd)BO3:Eu(ユーロピウムを発光センタとしたイットリウム、ガドリニウムのホウ酸塩、赤色発光)、Zn2SiO4:Mn(マンガンを発光センタとしたケイ酸亜鉛、緑色発光)、BaO・6Al2O3:Mn(緑色発光)、BaMgAl14O23:Eu(ユーロピウムを発光センタとしたバリウムマグネシウムアルミネート、青色発光)、BaMgAl10O17:Eu(青色発光)などが用いられている。これら蛍光体粉末の平均粒径は10ミクロン以下、好ましくは5ミクロン以下が望ましく、またその配合割合は前記金属粉の場合と同様である。
【0028】
本発明で用いる無機粉体は、10ミクロン以下の粒径のものが好適に使用されるため、2次凝集防止、分散性の向上を目的として、無機粉体の性質を損わない範囲で有機酸、無機酸、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等で予め表面処理したものを用いたり、光硬化性組成物をペースト化する時点で上記処理剤を添加することが好ましい。無機粉体の処理方法としては、上記のような表面処理剤を有機溶剤や水などに溶解させた後、無機粉体を添加攪拌し、溶媒を留去した後、約50〜200℃で2時間以上加熱処理を施すことが望ましい。
【0029】
前記光重合開始剤(C)の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;又はキサントン類、(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネイト等のフォスフィンオキサイド類;各種パーオキサイド類などが挙げられ、これら公知慣用の光重合開始剤を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの光重合開始剤(C)の配合割合は、活性エネルギー線硬化性樹脂(A)100重量部当り1〜20重量部が好ましい。
【0030】
また、上記のような光重合開始剤(C)は、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類のような光増感剤の1種あるいは2種以上と組み合わせて用いることができる。
さらに、より深い光硬化深度を要求される場合、必要に応じて、可視領域でラジカル重合を開始するチバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製CGI784等のチタノセン系光重合開始剤、ロイコ染料等を硬化助剤として組み合わせて用いることができる。
【0031】
反応性希釈剤(D)の代表的な例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート類;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド,N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート類;及びメラミン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。さらに、水酸基含有(メタ)アクリレートと多価カルボン酸化合物の無水物との反応物が挙げられる。これらの不飽和基含有の反応性希釈剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができ、希釈剤として作用するだけでなく、組成物の光硬化の促進及び現像性向上に寄与する。
上記反応性希釈剤(D)の配合割合は、組成物の光硬化促進の点から、一般には前記活性エネルギー線硬化性樹脂(A)100重量部当り1〜200重量部、好ましくは20〜100重量部が適当である。
【0032】
本発明に係る光硬化性組成物では、組成物の保存安定性向上のため、金属あるいは酸化物粉末との錯体化あるいは塩形成などの効果のある化合物を、安定剤(E)として添加する。
安定剤(E)としては、無機酸、有機酸、リン酸化合物(無機リン酸、有機リン酸)などの酸を好適に用いることができる。このような安定剤は、無機粉体(B)100重量部当り0.1〜5重量部添加することが好ましい。
【0033】
無機酸としては、硝酸、硫酸、塩酸、ホウ酸等が挙げられる。
また、有機酸としては、ギ酸、酢酸、アセト酢酸、クエン酸、イソクエン酸、アニス酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、アゼライン酸、チリック酸、パレリック酸、カプロン酸、イソカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、ベヘニン酸、シュウ酸、マロン酸、エチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、ピルビン酸、ピペロニル酸、ピロメリット酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、酒石酸、レブリン酸、乳酸、安息香酸、イソプロピル安息香酸、サリチル酸、イソカプロン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、チグリン酸、エチルアクリル酸、エチリデンプロピオン酸、ジメチルアクリル酸、シトロネル酸、ウンデセン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、フェニル酢酸、ケイ皮酸、メチルケイ皮酸、ナフトエ酸、アビエチン酸、アセチレンジカルボン酸、アトロラクチン酸、イタコン酸、クロトン酸、ソルビン酸、バニリン酸、パルミチン酸、ヒドロキシケイ皮酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヒドロキシ酪酸、ビフェニルジカルボン酸、フェニルケイ皮酸、フェニル酢酸、フェニルプロピオル酸、フェノキシ酢酸、プロピオル酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ベラトルム酸、ペラルゴン酸、ベンジル酸、エナント酸、エライジン酸、エルカ酸、オキサロコハク酸、オキサロ酢酸、オクタン酸、カプリル酸、没食子酸、マンデル酸、ミリスチン酸、メサコン酸、メチルマロン酸、メリト酸、ラウリン酸、リシノール酸、リノール酸、リンゴ酸、等が挙げられる。
【0034】
無機リン酸としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、オルトリン酸、二リン酸、トリポリリン酸、ホスホン酸、等が挙げられる。
また、有機リン酸としては、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸プロピル、リン酸ブチル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジブチル、リン酸ジプロピル、リン酸ジフェニル、リン酸イソプロピル、リン酸ジイソプロピル、リン酸nブチル、亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸プロピル、亜リン酸ブチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸イソプロピル、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸nブチル−2−エチルヘキシルヒドロキシエチリレンジホスホン酸、アデノシン三リン酸、アデノシンリン酸、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、エチルジエチルホスホノアセテート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブチルピロホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、ジエチレングリコールアシッドホスフェート、(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0035】
その他の酸として、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸、エタンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、タウリン、メタニル酸、スルファニル酸、ナフチルアミンスルホン酸、スルホ安息香酸、スルファミン酸等のスルホン酸系の酸も用いることができる。
以上に列挙したような安定剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
溶剤(F)としては、全ゆる有機溶剤を用いることができる。
有機溶剤の代表的な例としては、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンや、エクソン化学(株)製ソルベッソ#100、ソルベッソ#150、ソルベッソ#200、エクソンアロマティックナフサNo.2、シェル(株)製LAWS、HAWS、VLAWS、シェルゾールD40、D70、D100、70、71、72、A、AB、R、DOSB、DOSB−8等の芳香族系溶剤;エクソン化学(株)製エクソンナフサNo.5、No.6、No.7、エクソンオーダーレスソルベント、エクソンラバーソルベント等の脂肪族系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、セロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、ブチルカルビトール等のアルコール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル系溶剤を挙げることができる。これらの有機溶剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
有機溶剤の使用量は、塗布方法に応じた光硬化性組成物の所望の粘度に調整できる量的割合であればよい。
【0037】
アクリル系共重合樹脂(G)としては、モノマー成分としてスチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレン;置換基としてメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、オクチル、カプリル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、イソボルニル、メトキシエチル、ブトキシエチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル等を有する(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート又はポリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、もしくはイソブチレン等の2種以上を組み合わせた共重合樹脂を使用することができる。
【0038】
好適なアクリル系共重合樹脂(G)としては、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物を共重合させて形成したアクリル系主鎖ポリマーにエチレン性不飽和基をペンダントとして付加させた樹脂が挙げられる。
不飽和カルボン酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、又はこれらの酸無水物などが挙げられる。一方、エチレン性不飽和化合物の具体的な例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ペンチル、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレンなどが挙げられるが、特にここに挙げたものに限られるものではない。そして、これらのアクリル系主鎖ポリマーの共重合成分として、前記に挙げたエチレン性不飽和化合物の中から少なくともメタクリル酸メチルを含むことによって、熱分解性の良好な共重合樹脂を得ることができる。
【0039】
エチレン性不飽和基を有するペンダントとしては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などがある。このようなペンダントをアクリル系主鎖ポリマーに付加させる方法は、アクリル系主鎖ポリマー中のカルボキシル基にグリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物や(メタ)アクリル酸クロライドを付加反応させる方法が一般的である。
ここでいうグリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物や(メタ)アクリル酸クロライドとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、α−エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテル、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、アリルクロライド、メタアリルクロライドや、下記式(1)〜(4)で示される化合物などが挙げられる。
【化1】
【0040】
前記アクリル系共重合樹脂(G)としては、重量平均分子量1,000〜100,000、好ましくは5,000〜50,000、及び酸価20〜150mgKOH/g、好ましくは40〜100mgKOH/gを有し、かつその二重結合当量が350〜2,000、好ましくは400〜1,500のものを好適に用いることができる。
アクリル系共重合樹脂(G)の分子量が1,000より低い場合、現像時の導電性皮膜の密着性に悪影響を与え、一方、100,000よりも高い場合、現像不良を生じ易くなるので好ましくない。また、20〜150mgKOH/gの酸価を有することにより、アルカリ水溶液に対する溶解性が充分で、安定した現像を行うことが可能となる。アクリル系共重合樹脂の二重結合当量が350よりも小さい場合、焼成時に残渣が残り易くなり、一方、2,000よりも大きい場合、現像時の作業余裕度が狭く、また光硬化時に高露光量を必要とするので好ましくない。
なお、前記したアクリル系共重合樹脂の中でも、メチルメタクリレートとメタクリル酸及び/又はアクリル酸との共重合物にグリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレートを付加させた共重合樹脂が最も好ましい。
【0041】
本発明の光硬化性組成物は、その所望の特性を損わない範囲で、さらに必要に応じて、各種顔料、特に耐熱性無機顔料、シリコーン系、アクリル系等の消泡・レベリング剤等の他の添加剤を配合することもできる。さらにまた、必要に応じて、導電性金属粉の酸化を防止するための公知慣用の酸化防止剤や、保存時の熱的安定性を向上させるための熱重合禁止剤、焼成時における基板との結合成分としての金属酸化物、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物などの微粒子を添加することもできる。
【0042】
本発明の光硬化性樹脂組は、前述のように導電性ペースト、ガラスペースト、蛍光体ペーストなどとして用いることができ、これらはフィルム化して使用もできるが、ペーストをそのまま使用する場合は、スクリーン印刷法、カーテンコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法等の適宜の方法により、ガラス板、セラミックス板等の各種基板に塗布する。塗布後、熱風循環式乾燥炉、遠赤外線乾燥炉等で例えば約60〜120℃で5〜40分間程度乾燥させてタックフリーの塗膜を得る。その後、選択的露光、現像、焼成を行って所定の導体パターン、ガラス質誘電体パターン、蛍光体パターンを形成する。
【0043】
露光工程としては、所定の露光パターンを有するネガマスクを用いた接触露光及び非接触露光が可能であるが、解像度の点からは接触露光が好ましい。露光光源としては、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、レーザー光、メタルハライドランプ、ブラックランプ、無電極ランプなどが使用される。露光量としては50〜1000mJ/cm2が好ましい。
【0044】
現像工程としてはスプレー法、浸漬法等が用いられる。現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウムなどの金属アルカリ水溶液や、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン水溶液、特に約1.5重量%以下の濃度の希アルカリ水溶液が好適に用いられるが、組成物中の活性エネルギー線硬化性樹脂(あるいはさらにアクリル系共重合樹脂)のカルボキシル基がケン化され、未硬化部(未露光部)が除去されればよく、上記のような現像液に限定されるものではない。また、現像後に不要な現像液の除去のため、水洗や酸中和を行うことが好ましい。
【0045】
焼成工程においては、現像後の基板を空気中又は窒素雰囲気下で約380〜600℃の加熱処理を行い、導体パターン、ガラス質誘電体パターン、蛍光体パターンなど所望のパターンを形成する。またこの時、焼成工程の前段階として、約300〜500℃に加熱してその温度で所定時間保持し、有機物を除去する工程を入れることが好ましい。
【0046】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、「部」及び「%」とあるのは、特に断りがない限り全て重量基準である。
【0047】
合成例1
温度計、攪拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えたフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂217g(エポキシ基1モル)とアクリル酸76g(1.05モル)を仕込み、溶媒としてカルビトールアセテート200g、触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド0.5g、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン0.5gを入れ、90℃で24時間攪拌し、樹脂を得た。この樹脂溶液に無水テトラヒドロフタル酸を76g(0.5モル)添加し、80℃で8時間付加反応させ、活性エネルギー線硬化性樹脂Aを得た。得られた樹脂Aのカルボン酸当量は722、二重結合当量は320であった。
【0048】
合成例2
温度計、攪拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えたフラスコに、メチルメタクリレート500g(5モル)とメタクリル酸258g(3モル)を仕込み、溶媒としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル600g、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルを入れ、窒素雰囲気下、80℃で2〜6時間攪拌し、樹脂溶液を得た。
この樹脂溶液を冷却し、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン0.2g、触媒としてテトラブチルホスホニウムブロミド0.5gを用い、グリシジルメタクリレート284g(2モル)を滴下し、95〜105℃で16時間反応させ、冷却後取り出し、アクリル系共重合樹脂Bを得た。得られた樹脂Bのカルボン酸当量は935、二重結合当量は500であった。
【0049】
上記合成例にて得られた各樹脂を用い、下記に示す組成比にて配合し、攪拌機により攪拌後、3本ロールミルにより練肉してペースト化を行った。
なお、ガラスフリットとしては、PbO 70%、B2O3 1.5%、SiO2 23%、Al2O3 1.5%、BaO 4%の組成を有し、ガラス転移点522℃であり、粉砕して平均粒径2.0μmとした非結晶フリットを使用した。また、導電性金属粉としては、平均粒径が1μmの銀粉末を脂肪酸で処理したもの(脂肪酸処理は、水:イソプロパノールの1:1混合液中リノール酸1重量%の溶液に銀粉400重量%を添加攪拌し、溶媒を留去した後、70℃で3時間加熱処理して行った。)を用いた。
【0050】
参考組成物例1
樹脂A 100部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 31部
トリメチロールプロパントリアクリレート 4部
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1− 4部
(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン
ガラスフリット 20部
マロン酸 1部
リノール酸処理銀粉 390部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 45部
芳香族炭化水素系溶剤 18部
【0051】
比較組成物例1
樹脂B 100部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 31部
トリメチロールプロパントリアクリレート 4部
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1− 4部
(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン
ガラスフリット 20部
マロン酸 1部
リノール酸処理銀粉 390部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 45部
芳香族炭化水素系溶剤 18部
【0052】
組成物例1
参考組成物例1 75部
比較組成物例1 25部
【0053】
組成物例2
参考組成物例1 50部
比較組成物例1 50部
【0054】
参考組成物例2
樹脂A 100部
トリメチロールプロパントリアクリレート 45部
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1− 10部
(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン
ガラスフリット 500部
黒色顔料 150部
セバシン酸 1部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 60部
芳香族炭化水素系溶剤 30部
【0055】
比較組成物例2
樹脂B 100部
トリメチロールプロパントリアクリレート 45部
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1− 10部
(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン
ガラスフリット 500部
黒色顔料 150部
セバシン酸 1部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 100部
【0056】
組成物例3
参考組成物例2 75部
比較組成物例2 25部
【0057】
組成物例4
参考組成物例2 50部
比較組成物例2 50部
【0058】
前記組成物例1〜4及び比較組成物例1、2を用い、ガラス基板上に300メッシュのポリエステルスクリーンを用いて全面に塗布した。次に、熱風循環式乾燥炉を用い、90℃で20分間乾燥して指触乾燥性の良好な皮膜を形成した。次に、ネガフィルムを用い、光源をメタルハライドランプとし、組成物上の積算光量が140mJ/cm2となるように露光した。その後、液温30℃の1wt%Na2CO3水溶液を用いてスプレー圧1kg/cm2で現像を行い、水洗した。最後に空気中にて5℃/分の昇温速度で昇温し、450℃で30分間放置後、さらに昇温し、空気中にて550℃で30分間焼成して基板を作製した。
【0059】
現像後の膜厚は表面粗さ計にて測定した。また、ブレイクポイント(B.P)は、種々の露光量で光硬化させたペースト皮膜が現像され、ガラス面が見えるまでの時間を意味する。パターン形状、焼成後のライン形状については、パターンを目視または顕微鏡にて観察し、ラインが直線でかつ断線していないかどうかで評価した。比抵抗値は0.4cm×10cmのパターンにて抵抗値、膜厚を測定して算出した。パターンエッジのカールは、表面粗さ計にてパターンエッジの表面粗さを測定し、評価した。剥離強度は、セロハン粘着テープによるピーリングを行い、剥離度合いを評価した。焼結点は、熱重量分析(TG/DTA)による測定(昇温速度5℃/分、空気中)で、溶剤を除いた有機成分の重量減少率が95%になった時点の温度を意味する。
前記各種特性についての評価結果を下記表1及び表2に併せて示す。
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【発明の効果】
以上のように、本発明のアルカリ現像型の光硬化性組成物は、保存安定性に優れると共に、光硬化性、基板に対する密着性や焼成性に優れ、焼成後のパターンエッジのカールや線幅収縮等の問題のない高精細な焼成物パターンを安定して形成することができる。また、比較的に厚膜であっても高精細なパターン形成が可能であり、また同一の膜厚では同じライン/スペースパターンを形成可能な最少露光量が少なくて済み、省エネルギーの観点からも有利である。
また、フォトリソグラフィー技術により容易に大面積の基板に高精細の導体パターン、ガラス質誘導体パターン、蛍光体パターンなどの焼成物パターンを作業性良く形成でき、しかも600℃以下での焼成工程でも充分に採用でき、歩留りの大幅な向上を実現できる。
Claims (6)
- (A)エポキシ化合物(a)と不飽和モノカルボン酸(b)を反応させ、生成した2級の水酸基に多塩基酸無水物(c)を反応させて得られる活性エネルギー線硬化性樹脂、(B)無機粉体、(C)光重合開始剤、(D)反応性希釈剤、(E)無機酸、有機酸、無機リン酸及び有機リン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸である安定剤、(F)溶剤、及び(G)アクリル系共重合樹脂を含有し、上記アクリル系共重合樹脂(G)を上記活性エネルギー線硬化性樹脂(A)100重量部当り1〜100重量部の割合で含有することを特徴とする焼成物パターン形成用のアルカリ現像型光硬化性組成物。
- 前記活性エネルギー線硬化性樹脂(A)は、重量平均分子量が1,000〜50,000、酸価が30〜160mgKOH/g、二重結合当量が350〜2,000であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
- 前記無機粉体(B)が、金属微粒子及び/又はガラス粉末及び/又は黒色顔料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
- 前記請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアルカリ現像型光硬化性組成物を成膜してなるドライフィルム。
- 基板上に前記請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアルカリ現像型光硬化性組成物を塗布・乾燥し、選択的露光及び現像によりパターニングした後、焼成することを特徴とする焼成物パターンの製造方法。
- 基板上に前記請求項4に記載のドライフィルムをラミネートし、選択的露光及び現像によりパターニングした後、焼成することを特徴とする焼成物パターンの製造方法。
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