JP4101353B2 - 保育器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、児を寝かせる長方形のベッドの周囲の3辺のそれぞれの辺毎に取り付けられた開閉自在な第1〜第3のベッド柵と、これら第1〜第3のベッド柵のそれぞれの下辺を軸として回動させることにより前記第1〜第3のベッド柵をそれぞれ開閉させることができる第1〜第3の開閉機構とをそれぞれ備えている保育器に関するもので、特に上記第1〜第3のベッド柵の開放時の騒音や衝撃の発生を防止するようにした保育器に関する。
【0002】
【従来の技術】
新生児を温度や湿度等が最適な環境下に置くことは重要である。殊に、低出生体重児やハイリスク児にとっては、さらに高精度な環境の維持が要求される。そこで、保育器内の環境要素たる温度、湿度、酸素濃度等を高精度に制御できる閉鎖式保育器が用いられる。しかしながら、この閉鎖式保育器は前記環境要素を容易に制御できるようにするため患児の周囲をフードで包囲しているものである。このフードの存在は、患児に対する迅速な処置を阻害するものである。また、この種の保育器は環境が整うまでのウォーミングアップに時間がかかるという欠点もある。そこで、迅速な処置を可能にし、ウォーミングアップに要する時間を僅かにするため、フードを用いず輻射熱によって直接患児を温め所望の体温に維持する開放式保育器も提供されている。さらに、他の医療施設への患児の運搬を目的にした携帯式保育器等も提供されており、使用目的に応じて選択できるようになっている。
【0003】
開放式保育器では、周囲が開放されたベッドに児を寝かせて観察する構造であるから、児の観察や診察、処置などは保育器の周囲の任意の方向から行なうことができる。このベッドから児が転落することがないように、あるいはベッドの上方に配されたヒータの輻射効率を向上させるために、ベッドの周囲にはベッド柵が設けられている。しかも、このベッド柵は、診察や処置を任意の方向から容易に行なえるようにするため、ベッド柵の下辺を軸として開閉自在に支持されており、必要に応じてベッド柵を開放できるようにしてある。なお、前記閉鎖式あるいは携帯式の保育器であっても、開閉自在なベッド柵を具備させることができることは勿論である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記ベッド柵および前記開閉機構を備えている従来の保育器では、ベッド柵の閉成時に該ベッド柵を係止している鉤部などを解除すればベッド柵が開放する構造であるから、次のような問題が生じるおそれがある。前記ベッド柵は下辺に取り付けられたヒンジによって回動自在に支持されているため、該ベッド柵をベッドの外側に傾倒させれば自重によって開放する。このとき、開放動作中はベッド柵に手を添えていなければ、該ベッド柵が自重によって急激に開放してしまい、ベッドフレームなどに衝突してしまう。この衝突により騒音や衝撃が発生し、ベッド上の児にとって好ましくない。また、衝撃によってベッド柵その他の機器が故障したり、破損してしまうおそれがある。ところが、管理者は診察や処置を短時間で行なう必要がある。特に、多数の児の診察などを行なう場合には、一人の児に費やせる時間が短くなってしまう。このため、ベッド柵を開放する場合に手を添えた状態で開放しなければならず、殊に緊急時には煩わしさを感じてしまうことになる。
【0005】
そこで、この発明は、ベッドのベッド柵を開放する場合に、該ベッド柵から手を離しても該ベッド柵が急激に開放することのない保育器を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、この発明に係る保育器は、児を寝かせる長方形のベッドの周囲の3辺のそれぞれの辺毎に取付けられた開閉自在な第1〜第3のベッド柵と、これら第1〜第3のベッド柵のそれぞれの下辺を軸として回動させることにより前記第1〜第3のベッド柵をそれぞれ開閉させることができる第1〜第3の開閉機構とをそれぞれ備え、前記第1〜第3のベッド柵のそれぞれは、前記第1〜第3の開閉機構のそれぞれによりこれら第1〜第3のベッド柵のそれぞれの下辺を軸として往復回動させられることによって、鉛直状態である閉成状態と、前記ベッドの縁部から吊り下がった状態との間を往復動するように構成されている保育器において、前記第1〜第3のベッド柵のそれぞれの回動時に負荷を作用させて回動速度を遅くさせる緩衝手段をさらに備え、前記緩衝手段は、前記第1〜第3のベッド柵のそれぞれが開放する方向に回動する動作に対してのみ作用するように構成されるとともに、前記第1〜第3のベッド柵を支持している軸に取り付けられている回動力緩衝機構からなっている。
【0007】
本発明によれば、前記第1〜第3のベッド柵のそれぞれを開放するために回動させると、前記緩衝手段の作用によって回動の速度が緩和され徐々に開放される。このため、第1〜第3のベッド柵のそれぞれは急激に回動することが防止され、ベッドフレームに衝突する際の騒音や衝撃の発生が抑制される。
【0008】
また、前記従来の開放式保育器によれば、第1〜第3のベッド柵のそれぞれはその開放時には自重により回動するから、騒音や衝撃の発生を防止するためには、前記緩衝手段によって回動速度を緩和させる必要があるが、閉成時には回動が阻害されては第1〜第3のベッド柵のそれぞれを閉成するまでの相当の時間を要してしまい不都合である。このため、閉成時の回動速度を緩和する必要がない。そこで、前記緩衝手段を第1〜第3のベッド柵のそれぞれの開成時にのみ作用する一方向緩衝手段とすることによって、第1〜第3のベッド柵のそれぞれの閉成を迅速に行うことができるようにしている。
開放する方向に回動する動作に対してのみ作用することを特徴としている。
【0009】
さらに、この発明においては、前記緩衝手段が前記第1〜第3のベッド柵のそれぞれを支持している軸に取り付けられている回動力緩衝機構からなっているから、前記緩衝手段 の設置スペースを別途必要とせず、保育器が大型化することがない。
【0010】
また、請求項2に係る保育器においては、前記閉成状態にそれぞれある前記第1〜第3のベッド柵のそれぞれは、上下方向に摺動することにより、前記往回動が阻止される状態と、前記往回動が許容される状態とに変更されるように構成されている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係る保育器を具体的に説明する。
【0012】
図3は開放式保育器1の外観を示す斜視図で、キャスター2を備えて移動自在とされた台車3に起立させて主フレーム4が設けられており、この主フレーム4の上部にはヒータユニット5が取り付けられている。主フレーム4の下部には児を寝かせるベッド6が設けられており、その下部には各種備品を収納する抽斗7が設けられている。また、主フレーム4のベッド6とヒータユニット5との間の位置には、児の体温を計測する体温プローブからの信号を受けて体温を表示したりヒータユニット5の温度調整などの制御を行なう体温計測ユニット8や、SpO2 計測ユニット9などが取り付けられている。なお、前記ヒータユニット5の熱源の輻射によってベッド6に寝かされた児を加温するようにしてある。
【0013】
前記ベッド6の周囲には、それぞれの辺毎に透明樹脂板などによって形成されたベッド柵11、12が取り付けられており、そのうち主フレーム4に臨んだ辺のベッド柵11は固定されており、それ以外のベッド柵12は開閉機構によって開閉自在とされている。
【0014】
前記開閉機構を、図1及び図2に基づいて説明する。ベッド6の四隅にはコーナーグリップ13が設けられており、このコーナーグリップ13の端面であって前記ベッド柵12の縁部を臨んだ支持面13aには、図1に示すように鉛直方向を長手方向としたガイド溝14が形成されている。このガイド溝14にスライダ15が摺動自在に支持されており、このスライダ15にはほぼ六角形の軸穴15aが形成されている。また、コーナーグリップ13の上面には前記支持面13aから適宜長さに切り込まれた係止凹部16が形成されている。
【0015】
前記ベッド柵12は前記コーナーグリップ13の間に位置させた柵ベース21と、この柵ベース21に差し込まれて支持された透明アクリルなどの透明樹脂板などによって形成された柵本体22と、この柵本体22の側端部と上端部を保護する柵フレーム23とから構成されている。前記柵ベース21の、コーナーグリップ13の支持面13aを臨んだ面には、緩衝手段を構成する回動力緩衝機構25が設けられている。この回動力緩衝機構25は、ハウジング25aの中に回動可能に軸25bが収容されたもので、該軸25bが一の方向に回動する場合には緩衝作用が働き、該軸25bの回動に対して負荷が加えられて低速度で回動し、他の方向に回動する場合には負荷が加えられずに迅速に回動させることができる。この種の回動力緩衝機構25としては、例えばタキゲン製造株式会社製ロータリーダンパーなどがある。この回動力緩衝機構25のハウジング25aと軸25bとは、いずれも外形がほぼ六角形に形成されている。そして、ハウジング25aが前記柵ベース21の下部に形成された凹部26に摺動自在に挿入されており、この凹部26はハウジング25aを収容するのに十分なほぼ六角形に形成され、該凹部26内でハウジング25aが回動することを防止してある。また、柵ベース21の側面にはカバー部材27が止着され、該カバー部材27に形成された透孔から回動力緩衝機構25の軸25bが突出するようにしてある。さらに、この凹部26内には圧縮コイルばねからなる押出しばね28が収容され、その復元力によって回動力緩衝手段25の軸25bが前記カバー部材27から突出するようにしてある。そして、前記軸25bが前記スライダ15の軸穴15aに挿入されると共に、軸25bが軸穴15a内で回動しないようにしてある。
【0016】
前記柵フレーム23の鉛直部分の外側の適宜位置には、図1に示すように、係止翼部29が突設されており、前記スライダ15の摺動によって該係止翼部29が前記係止凹部16と係脱するようにしてある。また、コーナーグリップ13の上端縁であって前記係止凹部16に隣接した部分は、適宜な丸みを持たせた形状に形成して案内部13bとされている。
【0017】
以上により構成したこの発明に係る保育器の実施形態について、ベッド柵およびその開閉機構の作用を以下に説明する。ベッド柵12をコーナーグリップ13に支持させる際には、前記回動力緩衝機構25の軸25bを押出しばね28の復元力に抗して押し込み、その先端を柵ベース21のカバー部材27に埋没させた状態を維持しながら、柵ベース21をコーナーグリップ13の間の位置に導入する。この柵ベース21を適宜にずらして、軸25bをスライダ15の軸穴15aに合致させると、該軸25bが押出しばね28の復元力によってカバー部材27から突出し、軸穴15aに挿入される。この状態で、ベッド柵12はコーナーグリップ13に軸25bによって支持された状態となる。そして、ベッド柵12の先端部を上方に旋回させると、前記係止翼部29がコーナーグリップ13の案内部13bに案内されてベッド柵12が上昇しながら、前記係止翼部29が係止凹部16に係合することになり、ベッド柵12がコーナーグリップ13に支持されて閉成された状態となる。
【0018】
ベッド柵12を開放するには、該ベッド柵12を上方に引き上げて前記係止翼部29を係止凹部16から離脱させる。このとき、ベッド柵12の前記回動力緩衝機構25の軸25bがスライダ15に挿入されているから、該スライダ15がガイド溝14に沿って摺動することにより、ベッド柵12の引き上げが許容される。係止翼部29が係止凹部16から離脱したならば、以後は手を離してベッド柵12の自重による移動に委ねる。すなわち、前記係止翼部29がコーナーグリップ13の案内部13bに案内されて、図1上二点鎖線で示すように、徐々に降下しながら外側方向に回動する。そして、ベッド6の縁部から吊り下がった状態となり、児の処置などの邪魔にならないようになる。ベッド柵12の回動は、スライダ15の軸穴15aに挿入させた前記回動力緩衝機構25の軸25bに対して、柵ベース21に設けられたハウジング25aが回動することにより行なわれる。そして、この方向にハウジング25aと軸25bとが相対的に回動する場合には、緩衝作用が働いて低速度で回動する。このため、ベッド柵12はその自重によって回動終端までゆっくりと回動し、ベッド6の縁部から吊り下げられた状態となる。したがって、ベッド6のベッドフレームなどに衝突して、騒音や衝撃を発生することがなく、ベッドフレームやベッド柵12などを破損してしまうこともない。
【0019】
ベッド柵12を閉成するには、該ベッド柵12の先端部を把持して持ち上げながら前記軸25bを中心として回動させる。このときに、軸25bに対するハウジング25aの回動の方向に対しては緩衝作用が働かないから、ベッド柵12を迅速に閉成位置まで回動させることができる。適宜位置まで回動したならば、前記係止翼部29が前記案内部13bに当接して以後の回動が案内され、該係止翼部29が係止凹部16に合致する位置に位置するので、ベッド柵12をスライド15と共に下方へ摺動させれば、係止翼部29と係止凹部16とが係合して、ベッド柵12が閉成された状態となる。
【0020】
ところで、前記回動力緩衝機構25はベッド柵12のいずれか一方の端部に設けるだけで、他方の端部はピンなどによって回動自在に支持させた構造としても、または双方の端部に該回動力緩衝機構25を設けた構造としても構わない。
【0021】
なお、ここに説明した実施形態は本発明の好ましい一形態であって、本発明はこれに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施できることは勿論である。例えば、本実施形態では、緩衝手段として回動力緩衝機構25を用いた構造について説明したが、ベッド柵12の回動をピストンロッドに連繋させ、オイルダンパやガスダンパを利用してこのピストンロッドの摺動を制御させる構造としても構わない。
【0022】
また、本実施形態では開放式保育器に実装したベッド柵の開閉機構についての構造を説明したが、閉鎖式保育器や携帯式保育器にもこの開閉機構を備えたベッド柵を実装することができる。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に係る保育器によれば、児を寝かせる長方形のベッドの周囲の3辺のそれぞれの辺毎に取り付けられた第1〜第3のベッド柵をそれぞれ開閉させることができる第1〜第3の開閉機構に緩衝手段を設けて、第1〜第3のベッド柵のそれぞれの回動速度を低速にするようにしたから、第1〜第3のベッド柵のそれぞれを把持しなくても自重によってゆっくりと回動させることができるので、該第1〜第3のベッド柵のそれぞれが回動終端で衝突する際の騒音や衝撃を抑制できると共に、ベッドフレームや第1〜第3のベッド柵などが破損してしまうことを防止できる。
【0024】
また、前記緩衝手段が、前記第1〜第3のベッド柵のそれぞれが開放する方向に回動する動作に対してのみ作用するように構成されているので、第1〜第3のベッド柵のそれぞれをそれらの開放時に自重により回動させる際に前記緩衝手段によって回動速度を緩和させて騒音や衝撃の発生を防止することができるものでありながら、第1〜第3のベッド柵のそれぞれの閉成時にはそれらの回動速度が緩和されることがなく、このために、第1〜第3のベッド柵のそれぞれの閉成を迅速に行なうことができる。
【0025】
さらに、前記緩衝手段が、前記第1〜第3のベッド柵を支持している軸に取り付けられている回動力緩衝機構からなっているので、前記緩衝手段を簡単な構造にでき、このために、前記緩衝手段の設置スペースが小さくなって、保育器が大型化してしまうことがない。
【0026】
また、請求項2に係る発明によれば、第1〜第3のベッド柵のそれぞれを上下方向に摺動させれば該第1〜第3のベッド柵のそれぞれの回動が阻止される状態と該回動を許容する状態とに変更できるから、該第1〜第3のベッド柵のそれぞれを開閉させる際の操作を簡便に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る保育器の一実施例におけるベッド柵およびその開閉機構の概略の構造を説明するための図である。
【図2】図1に示す開閉機構によって開閉するのに適したベッド柵を有する保育器のベッドの平面図である。
【図3】図1に示すベッド柵およびその開閉機構を実装するのに適した開放式保育器の概略の斜視図である。
【符号の説明】
1 開放式保育器
4 主フレーム
5 ヒータユニット
6 ベッド
11 ベッド柵
12 ベッド柵
13 コーナーグリップ
14 ガイド溝
15 スライダ
16 係止凹部(係止手段)
21 柵ベース
22 柵本体
23 柵フレーム
25 回動力緩衝機構
25a ハウジング
25b 軸
28 押出しばね
29 係止翼部(係止手段)
Claims (2)
- 児を寝かせる長方形のベッドの周囲の3辺のそれぞれの辺毎に取付けられた開閉自在な第1〜第3のベッド柵と、
これら第1〜第3のベッド柵のそれぞれの下辺を軸として回動させることにより前記第1〜第3のベッド柵をそれぞれ開閉させることができる第1〜第3の開閉機構とをそれぞれ備え、
前記第1〜第3のベッド柵のそれぞれは、前記第1〜第3の開閉機構のそれぞれによりこれら第1〜第3のベッド柵のそれぞれの下辺を軸として往復回動させられることによって、鉛直状態である閉成状態と、前記ベッドの縁部から吊り下がった状態との間を往復動するように構成されている保育器において、
前記第1〜第3のベッド柵のそれぞれの回動時に負荷を作用させて回動速度を遅くさせる緩衝手段をさらに備え、
前記緩衝手段は、前記第1〜第3のベッド柵のそれぞれが開放する方向に回動する動作に対してのみ作用するように構成されるとともに、前記第1〜第3のベッド柵を支持している軸に取り付けられている回動力緩衝機構からなることを特徴とする保育器。 - 前記閉成状態にそれぞれある前記第1〜第3のベッド柵のそれぞれは、上下方向に摺動することにより、前記往回動が阻止される状態と、前記往回動が許容される状態とに変更されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の保育器。
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