ところで、例えば、コンバインを山間地などの圃場に輸送する場合、山間地特有の道路状況などから、その輸送に軽トラックなどの小型の運搬車を使用しなければならないことがある。そのため、コンバインを、小型の運搬車の荷台に積載可能な大きさに構成すれば、山間地などの圃場でも使用できる汎用性の高いものとなる。
一方、コンバインにおいては、近年、作業効率の向上を図るための処理速度の向上や装備する作業装置の大型化などが臨まれており、そのためには、処理速度の向上や作業装置の大型化などによって増大する作業負荷に対応できる出力の高い大型のエンジンを採用する必要がある。しかしながら、エンジンは、大型になるほど、その出力軸に沿う方向の長さが出力軸に直交する方向の長さよりも長くなることから、上述した従来構造のうちの前者のコンバインにおいて大型のエンジンを採用すると、走行機体の左右一側部に配備されるエンジンやラジエータなどからなる原動部の左右長さが長くなり、コンバイン全体としての左右幅が小型の運搬車の荷台に積載不能な長さになる。
つまり、上述した従来構造のうちの前者のコンバインにおいては、大型のエンジンを採用することによって作業効率の向上を図れるものの、山間地などの圃場でも使用可能な小型の汎用性の高いものにすることが困難になる。
そこで、上述した従来構造のうちの後者のコンバインのように、エンジンをその出力軸が前後向きになる姿勢で走行機体に搭載することで、大型のエンジンを採用しながらも、コンバイン全体としての左右幅を小型の運搬車の荷台に積載可能な長さにすることが考えられている。
しかしながら、上述した従来構造のうちの後者のコンバインにおいては、選別方向が左右向きになるように構成された脱穀装置を、エンジン及び刈取搬送部の後方に搭載装備し、かつ、その脱穀装置の後方に穀粒貯留部を配備するといった特殊な構成を採用することによって、他のコンバインとの共通部品が大幅に減少することから、製造コストや組み付けの面で不利になる。
本発明の目的は、製造コストや組み付けの面で有利にしながら、山間地などの圃場でも使用可能な小型の汎用性の高いものにするとともに、作業効率の向上を図れるようにすることにある。
上記の課題を解決するための手段として、本発明(第1発明)では、エンジンをその出力軸が後方に突出させた状態で左右の走行装置で走行する走行機体の左右一側方に搭載し、そのエンジンの左右他側方に刈取搬送部を、その刈取搬送部の後方に脱穀装置を、その脱穀装置の左右一側方で、且つエンジンの後方に穀粒貯留部を配備し、前記エンジンの左右他側方で且つ左右の走行装置の間に、変速装置を内蔵したミッションケースと該ミッションケースに取付けた静油圧式無段変速装置を配置するとともに、エンジンの出力軸よりも前方に位置する状態で前記静油圧式無段変速装置の後部から後ろ向きに入力軸を突設し、エンジンの前記出力軸から伝動機構を介して脱穀装置に動力伝達するように構成し、エンジンの左右他側方に前後向き姿勢の中継軸を配設し、前記脱穀装置に対する前記伝動機構とは別の伝動機構を介してエンジンの出力軸と前記中継軸の後部とを連動連結するとともにこの中継軸の前部と当該中継軸の左右他側方に配設した静油圧式無段変速装置の後ろ向きの前記入力軸とを連動連結してある。
この構成によると、出力の高い大型のものであるほど、その出力軸に沿う方向の長さが出力軸に直交する方向の長さよりも長くなるエンジンを、その出力軸が前後向きになる後ろ向き姿勢で走行機体に搭載することから、その搭載姿勢を出力軸が左右向きになる姿勢に設定する場合に比較して、より出力の高い大型のエンジンを採用して、処理速度の向上や装備する作業装置の大型化に起因した作業負荷の増大に対応できるようにしながらも、コンバイン全体としての左右幅を、軽トラックなどの小型の運搬車の荷台に積載できる程度の狭いものできる。
又、エンジンの出力軸に連結される伝動系がエンジンの前後に配備されることになり、この点からも、エンジンの搭載姿勢をその出力軸が左右向きになる姿勢に設定する場合に比較して、コンバイン全体としての左右長さが短くなり、より出力の高い大型のエンジンを採用することが可能になる。
しかも、エンジンの左右他側方に刈取搬送部を、その刈取搬送部の後方に脱穀装置を、その脱穀装置の左右一側方に穀粒貯留部を配備するといったコンバインとしての一般的な構成を採用し、前述した従来構造のように、選別方向が左右向きになるように構成された脱穀装置を、エンジン及び刈取搬送部の後方に搭載装備し、かつ、その脱穀装置の後方に穀粒貯留部を配備する、といった特殊な構成を採用しないことから、他のコンバインとの共通部品を多数有するようになり、結果、製造コストや組み付けの面で有利になる。
更に、エンジンをその出力軸が前後向きになる後ろ向き姿勢で走行機体に搭載することで、その横側方に配備される刈取搬送や脱穀装置に対するエンジン動力の分配供給が行い易くなる。
従って、製造コストや組み付けの面で有利にしながら、山間地などの圃場でも使用可能な小型の汎用性の高いものにできるとともに、作業効率の向上を図れる処理能力の高いものにでき、更に、伝動構造の簡素化を図れる。
この構成によると、走行機体における変速装置を内蔵したミッションケース及び静油圧式無段変速装置の後方側に配備される脱穀装置や、それら静油圧式無段変速装置や脱穀装置などに対するエンジンからの伝動系などを、走行機体の前部側に寄せた状態で配備できるようになり、これによって、コンバイン全体としての前後長さを短くすることや、脱穀装置としてより処理能力の高いものを採用することが可能になる。
従って、コンバイン全体としての小型化や処理能力の向上を図る上において有利なものにできる。
この構成によると、前後方向に位置ずれさせた状態で配備されるエンジンから静油圧式無段変速装置への伝動を、ベルト式又はチェーン式の伝動機構あるいは一対の平歯車などによって、静油圧式無段変速装置の後方に、脱穀装置や静油圧式無段変速装置及び脱穀装置などに対するエンジンからの伝動系などが配備される空間を確保しながら簡単かつ安価に行える。
従って、伝動構造の簡素化や製造コストの削減を図りながら、コンバイン全体としての小型化や処理能力の向上を図る上において有利なものにできる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記穀粒貯留部を前記エンジンを覆うエンジンボンネットの上部に配設した運転座席の後方で、且つ側面視脱穀装置の前端よりも後方に配置してある。
この構成によると、前記第1発明と同じ作用効果を奏する。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記エンジンを水冷式とし、その前方にラジエータを配備してある。
この構成によると、ラジエータをエンジンの左右他側方に配備する場合に比較して、エンジンやラジエータなどからなる原動部の左右長さが短くなり、その分、より出力の高い大型のエンジンを採用することができる。
又、ラジエータに対向配備される冷却ファンを、エンジンの出力軸からの動力で簡単に駆動することができ、ラジエータをエンジンの左右他側方に配備する場合に要する比較的高価な冷却ファン駆動用の電動モータを不要にできる。
従って、山間地などの圃場でも使用可能な小型の汎用性の高いものとしながら、より一層の作業効率の向上を図れるより処理能力の高いものにできる上に、より製造コストの削減を図れるようになる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記刈取搬送部が、前後向きの入力軸を備えるネジ送り式の昇降装置の正逆転作動で、左右向きの軸心周りに昇降揺動するように構成し、前記昇降装置の前記入力軸に、前記出力軸からの動力を、前記第1中継軸から分配供給するように構成してある。
この構成によると、比較的に高価な油圧シリンダや切換弁などを要する油圧式や、比較的に高価な電動モータなどを要する電動式のものを採用する場合に比較して、昇降装置を安価に構成できる。
又、エンジンの出力軸から昇降装置の入力軸にわたる専用の伝動系を別途装備する場合に比較して、伝動系を簡単かつ安価に構成できる。
従って、構成の簡素化及び製造コストの削減を更に図ることができる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記変速装置に、前記出力軸からの前後向き軸心周りの回転動力を左右向き軸心周りの回転動力に変換する動力変換部を備え、前記変速装置からの動力が伝達される走行装置の左右向きの駆動軸を、前記走行機体の前端下部に配備してある。
この構成によると、変速装置に動力変換部を備えることで、伝動軸などを変速装置と動力変換部とに兼用させることが可能になり、もって、独立構造の動力変換部を別途備える場合に比較して、変速伝動系を簡単かつコンパクトに構成できる。
しかも、変速装置は、動力変換部による変換後の左右向き軸心周りの回転動力を出力し、又、前述したようにエンジンの後端よりも前方に位置する状態で配備されることで、走行機体の前端部に位置するようになって、走行機体の前端下部に配備される走行装置の左右向きの駆動軸に接近することから、変速装置から走行装置への伝動を簡単に行える。
従って、伝動構造の簡素化を効果的に図れるとともに、コンバイン全体としての小型化を図れる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記刈取搬送部に、前記走行機体の前端上部に位置する左右向きの入力軸を装備し、その入力軸に、前記変速装置からの動力を伝達するように構成してある。
この構成によると、変速装置は、前述したように動力変換部による変換後の左右向き軸心周りの回転動力を出力し、又、エンジンの後端よりも前方に位置する状態で配備されることで、走行機体の前端部に位置するようになって、走行機体の前端上部に配備される刈取搬送部の左右向きの入力軸に接近することから、変速装置から刈取搬送部への伝動を簡単に行える。
又、刈取搬送部に変速装置からの動力を伝達することで、刈取搬送部は、その変速装置によって変速操作される走行装置と同調して変速されるようになる。
従って、伝動構造の簡素化を更に図れるとともに、走行速度に応じた良好な刈り取り搬送を行える作業性に優れたものにできる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、後方に向けて延出する前記出力軸の後端よりも前方寄りに前記脱穀装置を配置してある。
この構成によると、脱穀装置として、前後方向の長さが長い扱胴や揺動選別機構を備える処理能力の高いものを採用しながら、コンバイン全体としての大型化を回避できる。
従って、山間地などの圃場でも使用可能な小型の汎用性の高いものでありながら、作業効率の向上を更に図れる処理能力のより高いものにできる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、エンジンボンネットを、前記エンジンを覆う作業姿勢と、機体横外方に変位して前記エンジンを開放するメンテナンス姿勢とに姿勢変更可能に装備してある。
この構成によると、エンジンボンネットをメンテナンス姿勢に姿勢変更することで、エンジンやその周辺機器の上方や機体横外側方などを大きく開放することができる。
従って、エンジンやその周辺機器に対するメンテナンス性の向上を図れる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記穀粒貯留部として、その上部に貯留ホッパを装備し、その下部に前記貯留ホッパから籾袋への穀粒の移し換えを行う作業空間を備えた袋詰め装置を採用してある。
この構成によると、エンジンの後方側に大きい空間を有することから、エンジンからその後方に配備される脱穀装置などにわたる伝動系に対するメンテナンスが行い易くなる。
殊に、エンジンボンネットを、エンジンを覆う作業姿勢と、機体横外方に変位してエンジンを開放するメンテナンス姿勢とに姿勢変更可能に装備するものにおいては、エンジンボンネットをメンテナンス姿勢に姿勢変更することで、エンジンやその周辺機器の上方や機体横外側方などに加えて、エンジンやその周辺機器の後方側を大きく開放することができることから、エンジンやその周辺機器及びエンジンから刈取搬送部や脱穀装置などにわたる伝動系に対するメンテナンスが更に行い易くなる。
従って、メンテナンス性の向上を更に図れるようになる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記穀粒貯留部として、前記脱穀装置に隣接する貯留位置と、前記脱穀装置から離れるメンテナンス位置とに変位可能に構成された穀粒タンクを採用してある。
この構成によると、穀粒タンクをメンテナンス位置に変位させることで、エンジンの後方側に大きい空間を形成することができ、エンジンからその後方に配備される脱穀装置などにわたる伝動系に対するメンテナンスが行い易くなる。
殊に、エンジンボンネットを、エンジンを覆う作業姿勢と、機体横外方に変位してエンジンを開放するメンテナンス姿勢とに姿勢変更可能に装備するものにおいては、穀粒タンクをメンテナンス位置に変位させるとともにエンジンボンネットをメンテナンス姿勢に姿勢変更することで、エンジンやその周辺機器の上方や機体横外側方などに加えて、エンジンやその周辺機器の後方側を大きく開放することができ、もって、エンジンやその周辺機器及びエンジンから刈取搬送部や脱穀装置などにわたる伝動系に対するメンテナンスが更に行い易くなる。
従って、メンテナンス性の向上を更に図ることができる。
図1には収穫機の一例である自脱形コンバインの全体右側面が、図2にはその全体平面がそれぞれ示されており、このコンバインは、走行機体1の右前部に搭乗運転部2を形成し、走行機体1の走行に伴って植立穀稈を刈り取って刈取穀稈として後方に向けて搬送する刈取搬送部3を、走行機体1の前部に、搭乗運転部2の左側方に位置するように連結配備し、刈取搬送部3からの刈取穀稈に対して脱穀・選別処理を施す脱穀装置4を、刈取搬送部3の後方に位置するように走行機体1に搭載配備し、脱穀・選別処理によって得られた単粒化穀粒を貯留するとともに袋詰め作業を可能にする袋詰め装置(穀粒貯留部の一例)5を、脱穀装置4の右側方に位置するように搭載配備し、排ワラとして搬送されてくる脱穀処理後の刈取穀稈を細断して機外に排出する排ワラ細断装置6を、脱穀装置4の後部に連結装備して構成されている。走行機体1は、その下部に連結装備した左右一対のクローラ式走行装置(走行装置の一例)7の作動で走行する。
図1〜7に示すように、搭乗運転部2は、エンジンルーム8を形成するエンジンボンネット9の上部に運転座席10を前寄りに配備し、エンジンボンネット9の下部前方に搭乗ステップ11を敷設し、その搭乗ステップ11の前方に十字揺動式で中立復帰型の操縦レバー12を備えたフロントパネル13を立設し、エンジンボンネット9の左側方に、変速レバー14、刈取クラッチレバー15、及び脱穀クラッチレバー16などを操作案内するレバーガイド17を備えて形成されている。
図1、図2、図8及び図9に示すように、刈取搬送部3は、走行機体1の前端上部に配置された左右向きの入力軸18を支点にして昇降揺動するように走行機体1に連結支持された刈取フレーム19に、倒伏した植立穀稈を条ごとにすくい上げる3つのデバイダ20、そのすくい上げた植立穀稈をすき起こす左右一対の引起装置21、植立穀稈の株元側を切断するバリカン形の刈取装置22、及び、刈取穀稈を縦向き姿勢から横向き姿勢に姿勢変更しながら後方の脱穀装置4に向けて搬送する穀稈搬送装置23、などを備えて2条分の刈り取り搬送を行うように構成されている。
図1、図2及び図10に示すように、脱穀装置4は、その左横側部に配備されたフィードチェーン24が、穀稈搬送装置23によって搬送された刈取穀稈の株元側を受け取り、そのフィードチェーン24の駆動による刈取穀稈の後方への搬送で、その内部に配備された扱胴25と受網26との間に刈取穀稈の穂先側を供給し、その扱胴25が前後向きの軸心周りに回転駆動されることで、フィードチェーン24により搬送される刈取穀稈の穂先側に対して脱穀処理を施し、扱胴25の前下方に配備した唐箕27が左右向きの軸心周りに回転駆動されることで、脱穀処理によって受網26から漏下した処理物に供給する選別風を生起して処理物を風力選別する風選別処理を施し、受網26の下方に配備した揺動選別機構28が前後方向に揺動駆動されることで、揺動選別機構28に供給された処理物を篩い分けする篩い選別処理を施し、揺動選別機構28の下方における選別方向上手側に配備した1番スクリュー29が左右向きの軸心周りに回転駆動されることで、揺動選別機構28の選別方向上手側から漏下した単粒化穀粒を揚送コンベヤ30に向けて搬送し、揺動選別機構28の下方における選別方向下手側に配設した2番スクリュー31が左右向きの軸心周りに回転駆動されることで、揺動選別機構28の選別方向下手側から漏下した未単粒化穀粒や切れワラなどの混在物をスロワ式の2番還元機構32に向けて搬送し、その2番還元機構32が駆動されることで、混在物を受網26上に還元して再処理するように構成されている。そして、処理物のうち、比重の軽い切れワラやワラ屑などの塵埃は、脱穀装置4の後部に形成した排塵口33から機外に排出される。
図1、図2及び図11に示すように、袋詰め装置5は、揚送コンベヤ30で搬送された単粒化穀粒を貯留する貯留ホッパ34がその上部に配備され、その貯留ホッパ34に貯留した単粒化穀粒の貯留ホッパ34から籾袋35への移し換えを行うための作業空間36がその下部に形成されている。貯留ホッパ34の底部には、単粒化穀粒を籾袋35に排出する前後一対の排出筒37が形成され、これらの排出筒37には、その排出口(図示せず)を開放する穀粒排出状態と排出口を閉塞する排出停止状態とに切り換えるシャッタ38が装備されている。作業空間36の上部には、籾袋35を支持する前後一対で前後二組の支持杆39が配備されている。
図示は省略するが、排ワラ細断装置6には、左右向きの回転軸に複数の回転刃を左右方向に並設した回転体を、それらの回転軸が前後方向に所定間隔を隔てるように配備して構成されるディスクカッタが採用されており、その上方から供給される左右向き姿勢の排ワラを複数の回転刃で細断し、その底部に形成された排出口から機外に排出する。排ワラ細断装置6の上方には、脱穀処理後の排ワラをフィードチェーン24から受け取って排ワラ細断装置6に対する供給位置まで搬送する排ワラ搬送装置が配備されている。
図1、図2、図4〜7、図11及び図12に示すように、エンジンルーム8には、処理速度の向上や脱穀装置4などの大型化などに起因して増大する作業負荷に対応できる高出力のエンジン40が、その出力軸41が前後向きになる姿勢で配備されている。エンジン40は、水冷式のディーゼルエンジンで、その前部に、その出力軸41からの動力で駆動される冷却ファン42が装備され、その冷却ファン42の前方に、冷却ファン42の駆動に伴って流動する冷却外気によって冷却されるラジエータ43が前後向きに配備され、そのラジエータ43の右下方にエアークリーナ44が前後向きに配備され、そのエアークリーナ44の後方にマフラ45が上下向きに配備されている。エンジン40の後方には、その出力軸41の後端部に連結されるベルトテンション式の第1伝動機構46とベルトテンション式の脱穀クラッチ47とが前後に並設されている。
つまり、エンジンルーム8内においてエンジン40やラジエータ43などを上記のように配備することで、例えば、エンジン40を、その出力軸41が左右向きになる姿勢で配備し、そのエンジン40の左右他側方にラジエータ43などを配備し、エンジン40の左右一側方に第1伝動機構46などを配備する場合に比較して、エンジン40やラジエータ43などからなる原動部の左右長さを短くでき、その分、より出力の高い大型のエンジン40の採用が可能となり、その結果、コンバイン全体としての左右幅を、軽トラックなどの小型の運搬車の荷台に積載できる程度の狭いものとしながら、より出力の高い大型のエンジン40を搭載することができ、処理速度の向上や装備する脱穀装置4などの大型化に起因した作業負荷の増大に対応でき、作業効率の向上を図れるようになる。
図7〜9、図12及び図13に示すように、走行機体1におけるエンジン40の左側方で刈取搬送部3の右後部下方に位置する箇所には、変速レバー14の左右方向への揺動操作に連動して変速操作されるギヤ式変速装置48を内蔵したミッションケース49が立設装備され、そのミッションケース49の後上部には、変速レバー14の前後方向への揺動操作に連動して変速操作される静油圧式無段変速装置50が、その入力軸51が後方に向けて延出する姿勢で連結装備され、それらミッションケース49及び静油圧式無段変速装置50は、エンジン40の後端よりも機体前方側に配置されている。そして、ギヤ式変速装置48と静油圧式無段変速装置50とから、このコンバインにおける変速装置が構成されている。
静油圧式無段変速装置50は、その入力軸51が、エンジン40の左後下部に近接配備された前後向きの第1中継軸52の前端部に、ベルトテンション式の第2伝動機構53を介して連動連結されている。第1中継軸52は、その後端部が第1伝動機構46を介してエンジン40の出力軸41に連動連結されている。つまり、静油圧式無段変速装置50は、エンジン40からの動力を変速するように構成されている。そして、静油圧式無段変速装置50がエンジン40の後端よりも機体前方側に配置されることから、その入力軸51に連結される第2伝動機構53も、エンジン40の後端よりも機体前方側に位置することになる。
図13に示すように、ギヤ式変速装置48には、静油圧式無段変速装置50からの前後向き軸心周りの回転動力を左右向き軸心周りの回転動力に変換する一対のベベルギヤ(動力変換部の一例)54を備え、その変換後の動力を出力する。
つまり、ミッションケース49の内部空間を有効利用して、静油圧式無段変速装置50からの前後向き軸心周りの動力を左右向き軸心周りの動力に変換することから、ミッションケース49の外部に専用の動力変換部を設ける場合に比較して、構成の簡素化を図れるとともにコンバイン全体としての大型化を回避できる。
ギヤ式変速装置48は、静油圧式無段変速装置50による変速後の動力を高低2段に変速するように構成されている。ミッションケース49の下部には、操縦レバー12の左右方向への揺動操作に基づいて、ギヤ式変速装置48から対応するクローラ式走行装置7への伝動状態を切り換えるとともに対応するクローラ式走行装置7を制動する状態に切り換えられる左右のサイドクラッチブレーキ装置55が内蔵されている。
つまり、操縦レバー12の左右方向への揺動操作によって、左右のクローラ式走行装置7を等速駆動する直進状態と、左右一方のクローラ式走行装置7を駆動し、左右他方のクローラ式走行装置7を従動させる緩旋回状態と、左右一方のクローラ式走行装置7を駆動し、左右他方のクローラ式走行装置7を停止させる急旋回状態とに切り換えられる。
図1、図8、図12及び図13に示すように、左右の各クローラ式走行装置1は、それらの前端部に配備される駆動スプロケット56を駆動する左右向きの駆動軸57が走行機体1の前下部に配置され、それらの駆動軸57が、ミッションケース49の内部において、対応するサイドクラッチブレーキ装置55の出力ギヤ58に伝動ギヤ59を介して連動連結されている。
つまり、エンジン40をその出力軸41が前後向きになる姿勢で配備し、そのエンジン40からの前後向き軸心周りの回転動力をエンジン40の後部から取り出すように伝動構成するものでありながら、ミッションケース49及び静油圧式無段変速装置50を前述のように配置設定したことで、ミッションケース49が、左右の各クローラ式走行装置7の駆動軸57が配置される走行機体1の前端部に位置するようになり、又、ミッションケース49内の伝動系を前述のように構成したことで、ミッションケース49内における左右のクローラ式走行装置7に対する最終伝動装置となる左右のサイドクラッチブレーキ装置55からは、左右向き軸心周りの回転動力が出力されるようになり、その結果、左右の各クローラ式走行装置7の駆動軸57と、それに対応するサイドクラッチブレーキ装置55の出力ギヤ58との連動連結を、それぞれ単一の伝動ギヤ59を介するだけの簡単な構成で行えるようになり、結果、左右の各クローラ式走行装置7に対する伝動構造の簡素化を図れる。
図8、図9、図12及び図13に示すように、ミッションケース49の上部には、ギヤ式変速装置48からの低速動力を出力する左右向きの動力取出軸60が装備され、その動力取出軸60からの動力が、刈取クラッチレバー15の前後方向への揺動操作に基づいて伝動状態を切り換えるベルトテンション式の刈取クラッチ61を介して、刈取搬送部3の入力軸18に伝達されるようになっており、これによって、刈取搬送部3を駆動させた作業走行時には、静油圧式無段変速装置50による走行変速に同調して刈取搬送部3の駆動速度が変速されるようになり、走行速度に応じた良好な刈り取り搬送を行える。
刈取搬送部3の入力軸18は、前述したように走行機体1の前端上部に左右向き姿勢で配置され、ミッションケース49は、前述したように走行機体1の前端部に位置することから、刈取搬送部3の入力軸18とミッションケース49の上部に配備された左右向きの動力取出軸60とが比較的近い位置に位置するようになり、これによって、刈取搬送部3の入力軸18とミッションケース49の動力取出軸60との伝動連結が行い易くなり、結果、刈取搬送部3に対する伝動構造の簡素化を図れる。
図8、図9及び図12に示すように、刈取搬送部3は、ネジ送り式に構成された昇降装置62の正逆転作動で昇降する。昇降装置62は、走行機体1に支持される前後向きの入力軸63と駆動軸64、入力軸63と駆動軸64とを連動連結するチェーン式の伝動機構65、駆動軸64に自在継手66を介して連動連結されたネジ軸67、及び、一端部にネジ軸67と螺合する雌ネジ68を備えるとともに他端部が刈取フレーム19に上下揺動可能に支持された筒軸69、などを備えて構成され、その入力軸63に、第1中継軸52に伝達されたエンジン40からの動力が、操縦レバー12の前後方向への揺動操作に基づいて、第1中継軸52から昇降装置62への伝動状態を切り換えるベルトテンション式の昇降クラッチ70を介して伝達され、その動力でネジ軸67が正転駆動されることで、筒軸69を刈取搬送部3側にネジ送りして刈取搬送部3を上昇揺動させる正転作動状態となる。又、ネジ軸67と雌ネジ68のリード角が、刈取搬送装置3の重量によるネジ軸67の逆転駆動を可能にする大きい角度に設定されており、刈取搬送装置3の重量でネジ軸67が逆転駆動されることで、筒軸69を走行機体1側にネジ送りして刈取搬送部3を下降揺動させる逆転作動状態となる。
そして、上記のように、第1中継軸52に伝達されたエンジン40からの動力を、昇降クラッチ70を介して昇降装置62に分配供給することから、エンジン40の出力軸41から昇降装置62の入力軸63にわたって昇降装置62に対する専用の伝動系を設ける場合に比較して、昇降装置62に対する伝動構造の簡素化を図れる。
昇降クラッチ70は、操縦レバー12が中立位置に位置する場合には、第1中継軸52から昇降装置62への伝動を遮断する切り状態となり、操縦レバー12が中立位置から前方の下降位置に操作された場合にはその切り状態を維持し、操縦レバー12が中立位置から後方の上昇位置に操作された場合にのみ、第1中継軸52から昇降装置62に伝動する入り状態に切り換えられる。又、刈取搬送部3が上限位置に到達するのに伴って、刈取搬送部3を上昇揺動させる入り状態から切り状態に切り換わるように、そのテンションアーム71が、走行機体1に上下方向に天秤揺動可能に支持された天秤アーム72を介して刈取フレーム19に連係されている。
昇降クラッチ70には、操縦レバー12が中立位置又は上昇位置に位置する場合に、昇降装置62の入力軸63と一体回転する従動プーリ73の正転を許容し逆転を阻止する姿勢で従動プーリ73に接当する接当状態となり、操縦レバー12が下降位置に位置する場合に、従動プーリ73から離間して従動プーリ73の正逆転を許容する離間状態となる制動アーム74が装備されている。
つまり、操縦レバー12を中立位置に復帰させると、昇降クラッチ70が切り状態になり、制動アーム74が接当状態になり、これによって、昇降装置62が、そのネジ軸67のエンジン40からの動力による正転駆動が昇降クラッチ70によって阻止され、かつ、刈取搬送装置3の重量による逆転駆動が制動アーム74によって阻止される作動停止状態になることから、刈取搬送部3を昇降停止させることができる。又、操縦レバー12を上昇位置に操作すると、昇降クラッチ70が入り状態になり、制動アーム74が接当状態になり、これによって、昇降装置62が、そのネジ軸67のエンジン40からの動力による正転駆動が昇降クラッチ70と制動アーム74によって許容される正転作動状態になることから、刈取搬送部3を上昇揺動させることができる。その上昇揺動で刈取搬送部3が上限位置に到達すると、天秤アーム72によって、昇降クラッチ70が切り状態に切り換えられて、ネジ軸67のエンジン40からの動力による正転駆動を阻止する一方で、制動アーム74が接当状態に維持されて、ネジ軸67の刈取搬送装置3の重量による逆転駆動を阻止するようになり、これによって、昇降装置62が作動停止状態になることから、その上限位置で刈取搬送部3を自動停止させることができる。逆に、操縦レバー12を下降位置に操作すると、昇降クラッチ70が切り状態になり、制動アーム74が離間状態になり、これによって、昇降装置62が、そのネジ軸67のエンジン40からの動力による正転駆動が昇降クラッチ70によって阻止され、かつ、刈取搬送装置3の重量による逆転駆動が制動アーム74によって許容される逆転作動状態になることから、刈取搬送部3を下降揺動させることができる。
そして、昇降装置62を、ネジ軸67のエンジン40からの動力による正転駆動や刈取搬送装置3の重量による逆転駆動で刈取搬送部3を昇降揺動させるネジ送り式に構成したことで、油圧ポンプや油圧シリンダなどを要する油圧式に構成する場合や、電動モータを要する電動式に構成する場合、あるいは、エンジン40からの動力を利用しながらも、その動力でネジ軸67を正逆転駆動させることで、ネジ軸67の回転方向を切り換えるための正逆転切換機構などを要する機械式に構成する場合など比較して、製造コストや維持費の削減及びメンテナンスの容易化を図れる。
図1〜3及び図12に示すように、脱穀装置4は、エンジン40の左側方に配備されることで、その前方に位置するようになるミッションケース49及び静油圧式無段変速装置50が、前述したようにエンジン40の後端よりも機体前方側に配置されることで、エンジン40の後端よりも機体前方寄りに配置することができ、これによって、コンバイン全体としての前後長さを、軽トラックなどの小型の運搬車の荷台に積載できる程度の短いものにしながらも、前後方向に長い扱胴25や揺動選別装置28などを備えた処理能力の高い脱穀装置4を採用でき、結果、作業効率や選別精度の向上を図れる。
図11及び図12に示すように、脱穀クラッチ47は、エンジン40の出力軸41を、第1中継軸52の左上方側に前後向き姿勢で近接配備された第2中継軸75の後端部に伝動可能に連結し、その第2中継軸75は、前後中間部が一対のベベルギヤ76を介して唐箕27の駆動軸77における右端部に連動連結され、前端部がベルトテンション式の第3伝動機構78を介して扱胴25の駆動軸79における前端部に連動連結され、唐箕27の駆動軸77は、その左端部がベルトテンション式の第4伝動機構80を介して、1番スクリュー29の駆動軸(図示せず)、2番スクリュー31及び2番還元機構32の駆動軸(図示せず)、並びに、フィードチェーン24の駆動軸(図示せず)などに連動連結されている。
そして、脱穀クラッチ47は、脱穀クラッチレバー16の前後方向への揺動操作に基づいて、エンジン40から脱穀装置4への伝動状態を切り換えるように構成されている。
以上のように、エンジン40、静油圧式無段変速装置50、刈取搬送部3、及び脱穀装置4を配置設定し、それらに対する伝動系を構成したことで、エンジン40の出力軸41からの動力を静油圧式無段変速装置50、刈取搬送部3、及び脱穀装置4に分配する、第1伝動機構46や脱穀クラッチ47、及び、第1中継軸52や第2伝動機構53、などで構成される分配伝動系がエンジン40の後部側に集中配備されることになり、結果、伝動系の簡素化や組み付け性の向上を図れる。
図1〜3、図5、図6及び図14に示すように、走行機体1には、脱穀装置4とエンジンボンネット9との間を通って上方に延びる支柱81が立設され、この支柱81の上端部には、燃料タンク82が、運転座席10と貯留ホッパ34との間に位置するように連結装備されている。つまり、エンジンボンネット9の上方で、運転座席10と貯留ホッパ34との間に形成される空間を燃料タンク82の配置空間に有効利用することで、コンバイン全体としての小型化を図れるようにしてある。又、燃料タンク82の位置が高くなることでフィードポンプを不要にすることができ、燃料供給構造の簡素化を図れる。
図14に示すように、燃料タンク82内の燃料は、燃料タンク82の底部から第1供給パイプ83を介してエンジン40の右側方に配備された燃料フィルタ84に供給され、この燃料フィルタ84で濾過された後、第2供給パイプ85を介して燃料噴射ポンプ86に供給され、この燃料噴射ポンプ86にて加圧された後、各インジェクションパイプ87を介して各燃料噴射ノズル88に圧送され、各燃料噴射ノズル88から各燃料室内に噴射される。そして、余剰燃料が各燃料噴射ノズル88から還元パイプ89を介して燃料タンク82内に還元される。
燃料フィルタ84の上部には、その内部に溜まった空気を抜くための空気抜き部90が形成されており、この空気抜き部90は、空気抜きパイプ91を介して還元パイプ89に接続されている。そのため、燃料切れなどの際に燃料フィルタ84内に溜まった空気は、空気抜き部90から空気抜きパイプ91と還元パイプ89とを介して燃料タンク82内に排出され、燃料タンク82の空気抜き部(図示せず)から機外に排出されることになる。
つまり、燃料噴射ノズル88からの燃料還元経路と燃料フィルタ84からの空気抜き経路とを合流させて燃料タンク82に接続することから、燃料噴射ノズル88からの燃料還元経路と燃料フィルタ84からの空気抜き経路とをそれぞれ独立形成して燃料タンク82に接続する場合に比較して、配管の簡素化を図れる。
又、燃料噴射ノズル88からの燃料還元経路と燃料フィルタ84からの空気抜き経路とをそれぞれ独立形成して燃料タンク82に接続する場合には、燃料フィルタ84が目詰まりした際に、その目詰まりに起因して空気が燃料噴射ポンプ86に供給される所謂エア噛みが生じてエンジン40が停止する不具合を招き易くなるが、この実施形態における燃料供給構造では、燃料還元経路と空気抜き経路とを合流させていることから、燃料フィルタ84が目詰まりした際には、燃料噴射ノズル88からの余剰燃料が燃料噴射ポンプ86に供給されることになり、結果、エア噛みによるエンジン停止を招き難くなる。
図15に示すように、上記の燃料供給構造に代えて、燃料噴射ノズル88からの燃料還元経路を形成する還元パイプ89を燃料フィルタ84の空気抜き部90に接続し、その燃料フィルタ84からの空気抜き経路を形成する空気抜きパイプ91を燃料タンク82に接続することで、燃料切れなどの際に燃料フィルタ84内に溜まった空気は、空気抜き部90から空気抜きパイプ91を介して燃料タンク82内に排出され、その燃料タンク82の空気抜き部(図示せず)から機外に排出され、又、燃料フィルタ84が目詰まりした際には、燃料噴射ノズル88からの余剰燃料が燃料噴射ポンプ86に供給されるようにしてもよい。
図4、図5、図7、図14及び図15に示すように、運転座席10は、その底部前端部に左右一対のブラケット92が装着され、これらのブラケット92が、エンジンボンネット9の前端上部に配備される支持部材93に、左右向きの支軸94を介してその軸心周りに前後揺動可能に連結されている。
つまり、運転座席10は、エンジンボンネット9の上方に位置する着座姿勢と、前方のフロントパネル13に向けて転倒させた転倒姿勢とに姿勢変更可能に構成されており、転倒姿勢に切り換えることで、非使用時における着座面などへの埃などの堆積を回避でき、又、燃料タンク82への燃料補給の際に運転座席10が邪魔になることを回避できるとともに、燃料補給の際に補給タンクを利用する場合には、エンジンボンネット9を補給タンクの仮置き台として利用することができ、結果、エンジンボンネット9の上方に配備した燃料タンク82への燃料補給が行い易くなる。
又、図16に示すように、運転座席10を、支持部材93の左端部をエンジンボンネット9に前後向きの連結ピン95を介して連結することで、その連結ピン95の軸心周りで上下揺動可能とし、又、支持部材93の右端部に、エンジンボンネット9の前端上部から前方に向けて突設した係合ピン96に対して係合可能なフック97を、前後向きの支軸98を介してその軸心周りに揺動操作可能に、かつ、支軸98に外嵌したバネ99によって係合付勢されるように装備して、上記の着座姿勢と転倒姿勢とに加えて、左方のレバーガイド17に向けて倒伏させた倒伏姿勢にも姿勢変更可能となるように構成すれば、燃料タンク82への燃料補給の際には、その倒伏姿勢に運転座席10を切り換えることで、運転座席10が邪魔になることを回避し、かつ、エンジンボンネット9を補給タンクの仮置き台として利用できるようにしながら、搭乗運転部2に乗り込んだ比較的高い位置から燃料補給を行えるようになり、結果、エンジンボンネット9の上方に配備した燃料タンク82への燃料補給が更に行い易くなる。
ところで、コンバインにおいては、作業途中での燃料切れを防止するために補給タンクを積んで作業を行うことがある。
そこで、図17及び図18に示すように、エンジンボンネット9における運転座席10の後方箇所に、補給タンク100を積載するための空間を確保するとともに、その空間に、燃料タンク82を支持する支柱81に装備したブラケット101、このブラケット101に回動可能かつ摺動可能に支持される支軸102、その支軸102のブラケット101から前方に向けて延出する延出部に装備した支持板103、及び、支軸102に装備した係止ピン104がブラケット101に穿設した一対の係止孔105に係入する方向に支軸102を付勢するバネ106などによって、エンジンボンネット9に載置した補給タンク100の左側面を受け止め支持する受止姿勢と、補給タンク100を燃料タンク82と同じ高さ位置で載置支持することが可能な載置姿勢とに姿勢切り換え可能に構成した支持部材107を設けて、作業走行時などにおいては、その支持部材107を受止姿勢に切り換えて補給タンク100を受け止め支持させることで、機体の傾斜などに起因した補給タンク100の転倒を防止でき、又、燃料補給時には、その支持部材107を載置姿勢に切り換えて補給タンク100を載置支持させることで、補給タンク100から燃料タンク82への燃料補給を容易に行えるようにしてもよい。
殊に、補給タンク100を燃料タンク82と同じ高さに位置させることができることによって、サイフォン方式の補給が可能となり、補給タンク100から燃料タンク82への燃料補給を更に容易にすることができる。
図1〜7及び図11に示すように、エンジンボンネット9は、風路108,109を備えるダクト状に形成された前壁110と右側壁111、運転座席10が装備される天井壁112、及び、多数の左右向きスリット状の排気口113が略全体にわたるように形成された後壁114などから構成されている。
前壁110は、その前面と上面と下面とを備えるように屈曲形成された第1板体115に、背面を形成する第2板体116と、左側面を形成する第1防塵網117と、第1板体115における前面の下端部から下面の前後中間部にわたって形成された開口を覆う第2防塵網118とを接合して、その右側端に右側壁111との連通口119を有するように形成され、又、その右側端に、右側壁111との隙間を埋める軟質性の第1防塵シール120が連通口119を囲むように貼着されている。第2板体116には、ラジエータ43に対する冷却外気供給用の第1供給口121と、エアークリーナ44に対する外気供給用の第2供給口122とが形成され、ラジエータ43との隙間を埋める軟質性の第2防塵シール123が第1供給口120を囲む状態に、又、エアークリーナ44の吸気管124との隙間を埋める軟質性の第3防塵シール125が第2供給口122を囲む状態にそれぞれ貼着されている。
右側壁111は、その左側面を形成する第1板体126と、右側面とその右側面から左側面を越えて左方に延出する長さを有する周面とを備えるように膨出形成された第2板体127と、第2板体127に形成された開口を覆う防塵網128とを接合して形成され、第1板体126の前端部に前壁110との連通口129が形成されている。
つまり、エンジンボンネット9は、ラジエータ43の後方に配備した冷却ファン42の吸引作用によって、外気導入部となる前壁左側面の第1防塵網117と、前壁下端部の第2防塵網118と、右側壁右外側面の防塵網128とのそれぞれから外気を導入し、第1防塵網117からの外気と第2防塵網118からの外気は、前壁110の風路108を介して、又、防塵網128からの外気は、右側壁111の風路109と前壁110の風路108とを介して、ラジエータ43には第1供給口121から、エアークリーナ44には第2供給口122からそれぞれ供給し、ラジエータ43を通過した外気を、エンジン40やマフラ45などの周囲に流動させた後、後壁114の複数の排気口113から機外に排出
するように構成されている。
その結果、前壁110の左右及び下方からの大量の外気を、冷却外気としてラジエータ43の全体に均一に供給することができるとともに、そのラジエータ通過後の冷却外気を、エンジン40やマフラ45などの周囲に流動させた後、搭乗運転部2の後方に速やかに排出することができ、もって、冷却効率の向上を図れるとともに、その排気が搭乗運転部2に向けて流動して運転者に不快感を与えるといった作業環境の悪化を回避できる。
殊に、本来より面積の大きい右側壁111の右側面に外気導入部としての防塵網128を設けることで、右側壁111における外気導入面積として大きい面積を確保でき、より多くの外気を導入することができ、又、外気導入面積が大きいことで、外気を導入する際に、その外気に含まれる塵埃が防塵網128に付着しても、その付着によって外気が導入されなくなる不都合が生じ難くなり、しかも、その右側壁111は機体の既収穫側に位置し、更に、その外気導入部としての防塵網128は既収穫側に面することから、その防塵網128から導入される外気としては、作業時に発生する塵埃の含有率が少ないものとなり、外気導入の際に、その外気に含まれる塵埃が防塵網128に付着して外気の導入に支障を来す不都合が生じ難くなる。
つまり、外気導入部の目詰まりに起因した作業中断回数を少なくしながら、より多くの外気を冷却外気として導入することができ、もって、作業効率と冷却性能の双方を向上させることができる。
又、外気導入部となる各防塵網117,118,128を、前壁110の左側面と下端部、及び、右側壁111の右外側面に備えたことで、エンジンルーム8で発生したエンジン音などが外気導入部から漏れ出したとしても、その漏れ出したエンジン音などが搭乗運転部2の運転者に不快感を与えることを効果的に抑制でき、結果、音漏れに起因した作業環境の悪化を回避できる。
更に、冷却外気排出用として、左右向きスリット状の排気口113を、後壁114の略全体にわたるように多数形成したことで、各排気口113から排出される冷却外気の流速を効果的に低下させることができ、これによって、その後方の作業空間36で作業する作業者が、各排気口113からの冷却外気によって不快感を覚えることを回避できる。
図7に示すように、エンジン40と静油圧式無段変速装置50との間には、ラジエータ43を通過した外気の静油圧式無段変速装置50への流動を阻止する遮蔽板130が立設されており、これによって、エンジンルーム8からの昇温外気が静油圧式無段変速装置50に悪影響を及ぼすことを回避できるようになっている。
図7及び図12に示すように、静油圧式無段変速装置50は、その後方に配備した冷却ファン131で生起される冷却風によって冷却される。
図3〜7、図11及び図19〜22に示すように、エンジンボンネット9において、その右側壁111は、走行機体1に対して左右揺動可能となるように、その底部に設けた前後一対の連結片132が、対応する前後向きの連結ピン133を介して走行機体1に連結されており、この右側壁111に、天井壁112と後壁114とが一体揺動するように連結され、天井壁112の左端部に配備した操作片134を備える係止リング135と、レバーガイド17の右端部の立設したフック136とからなるバックル式のロック具137によって、左右揺動が阻止された状態と許容される状態とに切り換えられる。又、天井壁112の左後端部には、第3伝動機構78の露出部を覆うカバー138との干渉を避けるための凹部139が形成されている。
一方、前壁110は、走行機体1に対して前後揺動可能となるように、その底部に設けた左右一対の連結片140,141が、走行機体1に備えた左右一対の左右向きの支軸142,143に支持され、その上端部が、左右一対のノブ付きボルト144を介してラジエータ43に連結されている。左右の連結片140,141のうち、左側の連結片140には左側の支軸142が挿通される貫通孔145が穿設され、右側の連結片141は右側の支軸143に対する上方からの係合を可能にする下向きのU字状に形成されている。左右の支軸142,143は、走行機体1に片持ち支持されるように、それらの右端部が走行機体1に連結され、左側の支軸142が右側の支軸143よりも短尺に形成され、右側の支軸143に、それらに対する前壁110の左方への摺動変位を阻止するベーターピン146が装着されている。
上記の構成から、エンジンボンネット9は、ロック具137を解除状態にすると、前壁110を残した状態で、エンジン40やラジエータ43などを覆う作業姿勢から、機体右外方に変位してエンジン40やラジエータ43などを開放するメンテナンス姿勢に姿勢変更できるように構成されており、又、その後方には、下部側に作業空間36が形成された袋詰め装置5が配備されることから、エンジンボンネット9を作業姿勢からメンテナンス姿勢に姿勢変更することで、エンジン40やラジエータ43、並びに、エンジン40の後部側に集中配備される、エンジン40の出力軸41からの動力を静油圧式無段変速装置50、刈取搬送部3、及び脱穀装置4に分配する分配伝動系などの上方、右側方、及び後方を大きく開放することができ、それらに対するメンテナンスを、機体の右外方やエンジンの後方から容易に行える。
又、図23に示すように、エンジンボンネット9の後方に、袋詰め装置5の代わりに、スクリュー搬送式の穀粒排出装置147を備えるとともに、その穀粒排出装置147における縦スクリュー148の軸心周りに、脱穀装置4に隣接して揚送コンベヤ30で搬送された単粒化穀粒を貯留する貯留位置と、脱穀装置4から離れてエンジンボンネット9の後方を大きく開放するメンテナンス位置とに揺動変位可能に構成された穀粒タンク149を採用する場合においては、エンジンボンネット9のメンテナンス姿勢への姿勢変更操作とともに、穀粒タンク149のメンテナンス位置への変位操作を行うようにすれば、エンジン40やラジエータ43、並びに、エンジン40の後部側に集中配備される分配伝動系などの上方、右側方、及び後方を大きく開放することができ、それらに対するメンテナンスを、機体の右外方やエンジンの後方から容易に行える。
しかも、エンジンボンネット9の姿勢変更を、前壁110を残した状態で行うことから、前壁110を含むエンジンボンネット9の全体を単純に姿勢変更させる場合に生じる、前壁110とラジエータ43との間に介装される第2防塵シール123や、前壁110とエアークリーナ44の吸気管123との間に介装される第3防塵シール125の、ラジエータ43や吸気管123との摺接による拗れなどに起因した破損を未然に回避でき、前壁110とラジエータ43との隙間や前壁110とエアークリーナ44の吸気管123との隙間から塵埃が流入する虞を長期にわたって確実に防止できる。
一方、左右のノブ付きボルト144による前壁110とラジエータ43との連結を解除し、右側の支軸142からベーターピン146を取り外して、前壁110の左方への摺動変位を許容すれば、その前壁110を、右側壁111における第2板体127の周面との干渉を回避できる位置まで左方に摺動変位させることで、エンジンボンネット9の作業姿勢とメンテナンス姿勢との姿勢変更にかかわらず、前壁110をラジエータ43やエアークリーナ44の吸気管123から離間させる前壁110の前傾姿勢への姿勢変更や走行機体1からの取り外しが可能となり、ラジエータ43やエアークリーナ44に対する前方からのメンテナンスが行い易くなる。
殊に、エンジンボンネット9の作業姿勢では、前壁110を左方に摺動変位させることで、右側壁111との間に介装される第1防塵シール120を右側壁111から離間させることができ、前壁110の姿勢変更や着脱の際に、第1防塵シール120が右側壁111との摺接で拗れることなどに起因して破損する虞を未然に回避でき、前壁110と右側壁111との隙間から塵埃が流入する虞を長期にわたって確実に防止できる。
尚、前壁110は、その第1板体115が搭乗ステップ11に接当することで、前方への倒伏が阻止される。
図示は省略するが、上記の構成に代えて、エンジンボンネット9の作業姿勢では、前壁110の左方への摺動変位にかかわらず、右側壁111における第2板体127の周面が前壁110に干渉するように構成して、エンジンボンネット9をメンテナンス姿勢に姿勢変更した場合にのみ、前壁110の姿勢変更及び着脱を行えるようにしてもよく、又、エンジンボンネット9の作業姿勢では、右側壁111における第2板体127の周面が前壁110に干渉するまでの範囲で、前壁110の姿勢変更を行えるようにしてもよい。
図24〜図29に示すように、上記の構成に代えて、エンジンボンネット9を、前壁110を含むエンジンボンネット9の全体を作業姿勢とメンテナンス姿勢とに姿勢変更可能にする場合には、前壁110の底部に設けた左右一対の連結片140,141のうち、右側の連結片141を、右側壁111の第1板体126から左方に向けて延設した支軸150に支持させるようにし、左右のノブ付きボルト144による前壁110のラジエータ43への連結を、天井壁112を介在させた状態で行うようにし、左右の連結片140,141のうち、左側の連結片140を左側の支軸142に対する上方からの係合を可能にする下向きのU字状に形成し、右側の連結片141に、右側壁111の支軸150が挿通される貫通孔151を穿設し、右側壁111の支軸150に、前壁110の左方への摺動変位を抑制するベーターピン146を装着するようにすれば、左右のノブ付きボルト144による前壁110のラジエータ43との連結を解除し、ロック具137を解除状態にすると、前壁110を含むエンジンボンネット9全体の左右揺動、及び、前壁110の独立した前後揺動を許容する状態となり、エンジンボンネット9を作業姿勢からメンテナンス姿勢に姿勢変更する際の初期操作に伴って、又は、姿勢変更する前の段階から、前壁110を、ラジエータ43との間に介装される第2防塵シール123がラジエータ43から離間し、エアークリーナ44の吸気管123との間に介装される第3防塵シール125が吸気管123から離間する前傾姿勢まで姿勢変更させることができ、結果、第2防塵シール123及び第3防塵シール125がラジエータ43や吸気管123に摺接して拗れることなどに起因した破損を招くことなく、エンジンボンネット9の全体を姿勢変更することができ、メンテナンス姿勢に姿勢変更した状態では、エンジン40やラジエータ43などの周りを大きく開放できる。
又、前壁110が前後揺動する際には、ロック具137の解除に伴って、前壁110と右側壁111との間に介装される第1防塵シール120の右側壁111への圧接が解除されることから、その第1防塵シール120の右側壁111との摺接による拗れなどに起因した破損を未然に回避できる。
更に、前壁110は、右側壁111の支軸150からベーターピン146を取り外し、左右のノブ付きボルト144による天井壁112との連結を解除することで、左方への摺動変位が許容されて、エンジンボンネット9から取り外すことができ、もって、ラジエータ43やエアークリーナ44の周りをより大きく開放できる。
つまり、前壁110とラジエータ43との隙間や、前壁110とエアークリーナ44の吸気管123との隙間、更には前壁110と右側壁111との隙間から、塵埃が流入する虞を長期にわたって確実に防止できるとともに、エンジン40やラジエータ43、並びにエアークリーナ44などに対するメンテナンス性を更に向上させることができる。
尚、前壁110は、その第1板体115が右側壁111における第2板体127の周面に接当することで、前方への倒伏が阻止される。
ところで、図示は省略するが、前壁110を左右のノブ付きボルト144で固定する構造に代えて、井壁112とレバーガイド17とにわたって設けたバックル式のロック具137と同様のものを天井壁112と前壁110とにわたって設けるようにすれば、前壁110の固定及び固定解除をより簡単に行えるようになり、これによって、エンジンボンネット9の姿勢変更や前壁110の着脱を行う際の操作性の向上を図れる。
ちなみに、図3及び図6に示すように、天井壁112は、その左後端部にカバー138との干渉を避けるための凹部139を形成したことで、エンジンボンネット9の姿勢変更の際に、エンジンボンネット9の上方に配備した燃料タンク82に干渉する虞を回避できるようになっており、これによって、エンジンボンネット9との干渉を回避するために燃料タンク82の配設位置が高くなり過ぎることに起因して、燃料タンク82に対する燃料補給が行い難くなるなどの不都合が発生することを、燃料タンク82との干渉を回避するための専用の凹部を形成することなく回避できる。
又、前述したように、走行機体1に立設した支柱81に燃料タンク82を支持させたことで、燃料タンク82をエンジンボンネット9に搭載装備する必要がなく、これによって、エンジンボンネット9に燃料タンク82を搭載装備する場合に要していたエンジンボンネット9に対する補強構造を不要にでき、又、エンジンボンネット9に燃料タンク82を搭載装備する場合に生じていた、燃料タンク82がエンジンボンネット9と一体で姿勢変更することによる燃料タンク82に対する配管構造の複雑化を回避できることから、構成の簡素化を図れるとともに、エンジンボンネット9を姿勢変更する際の操作性の面で有利になる。
尚、図8に示すように、走行機体1と刈取搬送部3とにわたって、刈取搬送部3の上昇揺動をアシストし、かつ、刈取搬送部3の急激な下降揺動を阻止するエアーシリンダ152が架設されており、刈取搬送部3の昇降操作を快適に行える。
〔別実施例〕
以下、本発明の別実施例を列記する。
〔1〕エンジン40としては空冷式のものであってもよい。
〔2〕エンジン40の左右他側方に電動式の冷却ファン42とラジエータ43とを配備するようにしてもよい。
〔3〕変速装置として、ギヤ式変速装置48のみを備えるものであってもよく、又、静油圧式無段変速装置50のみを備えるものであってもよい。