以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる「右」「左」「上」「下」「前」「後」という語句は、特にことわらない限り、いずれも図1に示す状態のものを意味している。
まず、本実施形態の換気装置(1)の構成について図1〜図9を参照しながら説明する。本実施形態の換気装置(1)は、室内の床面に設置される、いわゆる床置型の換気装置を構成している。図1及び図2に示すように、換気装置(1)は、縦長の直方体状に形成されたケーシング(10)を備えている。ケーシング(10)は、前面が開放されたケーシング本体(11)と、ケーシング本体(11)の前側の開放部に着脱自在な前面パネル(12)とを備えている。
ケーシング本体(11)には、その上部に上面板(13)が形成され、その後方側に背面板(14)が形成されている。上面板(13)には、室外吸込口(21)と室内吸込口(22)と室内給気口(23)と室外排気口(24)とが形成されている。室外吸込口(21)は上面板(13)の左側後寄りに、室内吸込口(22)は上面板(13)の左側前寄りに、室内給気口(23)は上面板(13)の右側前寄りに、室外排気口(24)は上面板(13)の右側後寄りにそれぞれ形成されている。
前面パネル(12)は、後側が開放された箱状に形成されている。ケーシング本体(11)に前面パネル(12)が取り付けられた状態では、前面パネル(12)の後側に矩形状の内部空間が形成される(図2参照)。
前面パネル(12)は、前面パネル仕切板(12a)と、閉塞部材(12b)と、操作部(12c)とを備えている。前面パネル仕切板(12a)は、前面パネル(12)の内側に取り付けられている。この前面パネル仕切板(12a)は、前面パネル(12)の内側の空間を上下2つの空間に仕切っている。閉塞部材(12b)は、前面パネル(12)の下部に取り付けられている。この閉塞部材(12b)は、前面パネル(12)から取り外し可能に構成されている。つまり、閉塞部材(12b)は、前面パネル(12)と別体となってケーシング(10)から着脱自在となっている。操作部(12c)は、前面パネル(12)の前面の上部寄りに形成されている。この操作部(12c)には、換気装置(1)の運転操作を行うためのスイッチ等が設けられている。
図3に示すように、ケーシング本体(11)内には、その上部寄りに第1仕切板(31)が設けられている。この第1仕切板(31)は、ケーシング本体(11)の内部の空間を上下2つの空間に仕切っている。この上下2つの空間のうち上側の空間には、前後に延びる第2仕切板(32)が設けられている。この第2仕切板(32)は、この上側の空間を更に左右2つの空間に仕切っている。この左右2つの空間のうち左側の空間には、第3仕切板(33)と第4仕切板(34)とが設けられ、右側の空間には、第5仕切板(35)が設けられている。
第3仕切板(33)の後側には室外吸込通路(41)が形成されている。この室外吸込通路(41)は、上記室外吸込口(21)と連通している。第4仕切板(34)の前側には室内吸込通路(42)が形成されている。この室内吸込通路(42)は、上記室内吸込口(22)と連通している。また、室内吸込通路(42)は、上述した前面パネル(12)内の上側の空間と連通している(図2参照)。第5仕切板(35)の前側には室内給気通路(43)が形成されている。この室内給気通路(43)は、室内給気口(23)と連通している。また、室内給気通路(43)は、図示しない仕切板によって、前面パネル(12)内の上側の空間と仕切られている。第5仕切板(35)の後側には室外排気通路(44)が形成されている。この室外排気通路(44)は、室外排気口(24)と連通している。
第3仕切板(33)と第4仕切板(34)との間には、バイパス通路(45)が形成されている。このバイパス通路(45)は、第4仕切板(34)に形成されるバイパス導入口(34a)を介して上記室内吸込通路(42)と連通している。また、第4仕切板(34)には、バイパス導入口(34a)を開閉自在な開閉ダンパ(34b)が取り付けられている。
図3及び図4に示すように、第1仕切板(31)には、第1連通口(31a)と第2連通口(31b)と第3連通口(31c)とが形成されている。第1連通口(31a)は、室外吸込通路(41)に開口している。第2連通口(31b)は、バイパス通路(45)と室外排気通路(44)とに跨るようにして両通路(44,45)に開口している。第3連通口(31c)は、室内給気通路(43)に開口している。また、第1仕切板(31)は、その前端面が下側に屈曲している。
第1仕切板(31)の下側には、第1から第5までの部材(51,52,53,54,55)と、第1と第2の熱交換エレメント(61,62)とが設けられている(例えば図3参照)。
図4に示すように、第1部材(51)は、第1仕切板(31)の後側略半分と一致するような横長の形状をしている。この第1部材(51)には、その後寄りに上部給気通路(51a)が、その前寄りに上部排気通路(51b)が形成されている。上部給気通路(51a)は、上記第1連通口(31a)を介して室外吸込通路(41)と連通している。上部排気通路(51b)は、上記第2連通口(31b)を介して室外排気通路(44)及びバイパス通路(45)と連通している。
第2部材(52)は、第1部材(51)の下側で、且つケーシング(10)の最も後側寄りに設けられている。第2部材(52)は、前方が開放された水平断面コの字型の形状をしている。そして、第2部材(52)の内側には、上下方向に延びる中間部給気通路(52a)が形成されている。中間部給気通路(52a)は、上記上部給気通路(51a)と連通している。
中間部給気通路(52a)は、ケーシング本体(11)の一側面である背面板(14)に沿って形成されている。中間部給気通路(52a)は、本発明の第1通路であって、各熱交換エレメント(61,62)へ流入する前の室外空気が流れるように構成されている。
第3部材(53)は、ケーシング(10)の下部の前側寄りに設けられている。第3部材(53)は、その左右両側に下部排気通路(53a,53a)をそれぞれ形成している。各下部排気通路(53a,53a)は、その前端開口部からその後方寄りの上端開口部までに亘って形成されている。また、第3部材(53)は、両下部排気通路(53a,53a)の間に下部給気通路(53b)を形成している。下部給気通路(53b)は、上記中間部給気通路(52a)と連通している。また、下部給気通路(53b)の前端の開口部は、前面パネル(12)の閉塞部材(12b)によって閉塞される(図2参照)。
第3部材(53)の上端には、下側枠部材(56)が設けられている。この下側枠部材(56)は、第3部材(53)の左右側端部に沿って延びる一対の棒状のガイド部と、これらのガイド部の後端部から左右に延びる棒状の中間ガイド部とで構成されている。下側枠部材(56)の内側には、上記第2熱交換エレメント(62)の下端部が嵌り込むようになっている。つまり、下側枠部材(56)は、第2熱交換エレメント(62)の位置決め部材として機能する。また、下側枠部材(56)は、第2熱交換エレメント(62)を通過する空気のシール部材としても機能する。更に、下側枠部材(56)の前端部には、前側ガイド板(57)が取り付けられる(例えば図3参照)。
図5に示すように、第4部材(54)は、上記第2部材(52)の前側で、且つ第3部材(53)の上側に設けられている。第4部材(54)は、前側が開放された水平断面コの字型の形状をしている。そして、第4部材(54)の内側には、上下方向に延びる中間部排気通路(54a)が形成されている。中間部排気通路(54a)は、その下端側が2つの下部排気通路(53a,53a)と接続し、その上端側が上記上部排気通路(51b)と接続している。
中間部排気通路(54a)は、ケーシング(10)の背面板(14)に沿って上記中間部給気通路(52a)と重なるように形成されている。具体的に、上記中間部給気通路(52a)は、背面板(14)側に位置して背面板(14)と隣り合っている形成されているのに対し、この中間部排気通路(54a)は、上記中間部給気通路(52a)よりもケーシング(10)の前後方向の内部側寄りに形成されている。つまり、中間部排気通路(54a)は、中間部給気通路(52a)と隣り合う一方、ケーシング(10)の背面板(14)とは隣り合っていない。この中間部排気通路(54a)は、本発明の第2通路であって、各熱交換エレメント(61,62)を通過後の室内空気が流れるように構成されている。
第4部材(54)の下端部には、左右に延びる板状の蓋部材(54b)が設けられている。この蓋部材(54b)は、中間部排気通路(54a)と上記下部給気通路(53b)とを互いに仕切っている。
図6に示すように、第5部材(55)は、上記第4部材(54)の前側で、且つ第3部材(53)の上側に設けられている。第5部材(55)は、前側が開放された箱状に形成されている。第5部材(55)の内側には、上下方向に延びる連絡排気通路(55a)が形成されている。連絡排気通路(55a)は、第5部材(55)の天板によって上記上部排気通路(51b)と仕切られ、第5部材(55)の底板によって上記下部給気通路(53b)と仕切られている。
連絡排気通路(55a)は、上述した中間部排気通路(54a)と重なり合うように形成されている。具体的に、連絡排気通路(55a)は、中間部排気通路(54a)の前側で、且つ中間部排気通路(54a)と隣り合うように形成されている。連絡排気通路(55a)は、本発明の第3通路であって、第1熱交換エレメント(61)の通過後で、且つ第2熱交換エレメント(62)へ流入する前の室内空気が流れるように構成されている。
第5部材(55)には、上側枠部材(58)が取り付けられている。上側枠部材(58)は、前後左右にそれぞれ棒状のガイド部が形成されている。上側枠部材(58)の内側には、上記第2熱交換エレメント(62)の上端部と、第1熱交換エレメント(61)の下端部とが嵌り込むようになっている。つまり、上側枠部材(58)は、各熱交換エレメント(61,62)の位置決め部材として機能する。また、上側枠部材(58)は、各熱交換エレメント(61,62)を通過する空気のシール部材としても機能する。
第1熱交換エレメント(61)及び第2熱交換エレメント(62)は、本発明の熱交換部材を構成し、上記第5部材(55)の前側に設けられている。第1熱交換エレメント(61)は、上側枠部材(58)と第1仕切板(31)の間に、第2熱交換エレメント(62)は、上記下側枠部材(56)と上側枠部材(58)の間にそれぞれ配置されている(例えば図3参照)。また、各熱交換エレメント(61,62)は、前面パネル(12)の裏側に位置している。つまり、各熱交換エレメント(61,62)は、前面パネル(12)を取り外すことで、その前面側がケーシング(10)の外部に露出されるように配置されている。
図7に示すように、各熱交換エレメント(61,62)は、左右の端面が正方形となった四角柱状に形成されている。熱交換エレメント(61,62)では、平板部材(63)と波板部材(64)とがその長手方向へ交互に配置されている。この熱交換エレメント(61,62)では、室外空気を流すための外気流路(65)と、室内空気を流すための内気流路(66)とが、平板部材(63)を挟んで交互に形成されている。四角柱状の熱交換エレメント(61,62)では、隣り合った側面の一方に外気流路(65)が、他方に内気流路(66)がそれぞれ開口している。このように、熱交換エレメント(61,62)は、外気流路(65)の伸長方向と内気流路(66)の伸長方向とが互いに直交する直交流型の熱交換器を構成している。
熱交換エレメント(61,62)の平板部材(63)は、例えば紙などの透湿性の材料で構成されている。熱交換エレメント(61,62)では、外気流路(65)を流れる室外空気と内気流路(66)を流れる室内空気の一方から他方へ熱と水分が移動する。つまり、熱交換エレメント(61,62)は、湿り空気同士の間でエンタルピを交換する、いわゆる全熱交換器を構成している。
図3に示すように、各熱交換エレメント(61,62)は、外気流路(65)が鉛直方向に延び、内気流路(66)が前後方向に延びる姿勢でケーシング本体(11)内に保持されている。第2熱交換エレメント(62)の外気流路(65)は、その下端側が下部給気通路(53b)と連通し、その上端側が第1熱交換エレメント(61)の外気流路(65)の下端側と連通している。また、第1熱交換エレメント(61)の外気流路(65)の上端側は、第3連通口(31c)を介して室内給気通路(43)と連通している。
図8(A)及び図8(B)に示すように、第2熱交換エレメント(62)の内気流路(66)の前端側は、前面パネル(12)内の下側の空間を介して上記各下部排気通路(53a,53a)と連通している。また、第1熱交換エレメント(61)の内気流路(66)の前端側は、前面パネル(12)内の上側の空間を介して室内吸込通路(42)と連通している。一方、各熱交換エレメント(61,62)の後端側は、それぞれ上記連絡排気通路(55a)と連通している。
以上のようにして、ケーシング(10)内には、上記室外吸込口(21)から上記室内給気口(23)に亘って室外空気が流れる給気通路が形成される。また、ケーシング(10)内には、上記室内吸込口(22)から上記室外排気口(24)に亘って室内空気が流れる排気通路が形成される。
換気装置(1)は、フィルタ部材(71)と電装品箱(72)と給気ファン(73)と排気ファン(74)とを備えている。
フィルタ部材(71)は、例えば図2〜図4に示すように、第2熱交換エレメント(62)の下側であって、下部給気通路(53b)内に配置されている。このフィルタ部材(71)は、板状の基材に、空気中の塵埃を捕集するフィルタが取り付けられて構成されている。フィルタ部材(71)では、鉛直方向に空気の流通路が形成されている。
また、フィルタ部材(71)は、前面パネル(12)の閉塞部材(12b)の裏側に位置している。つまり、フィルタ部材(71)は、閉塞部材(12b)を取り外すことで、ケーシング(10)の外部に露出するように配置されている。更に、フィルタ部材(71)は、前後へのスライド動作が可能となるように第3部材(53)に支持されている。
電装品箱(72)には、換気装置(1)の運転に必要な各種の電装品が収納されている。この電装品箱(72)は、ケーシング(10)の上部に取り付けられている。ところで、工事の施工不良等の何らかの原因により、ケーシング(10)内の空気通路に水分が侵入するとは、この水分は最終的にはケーシング(10)の下部側に溜まり込み易い。これに対し、本実施形態では、このように電装品箱(72)をケーシング(10)の上部寄りに配置することで、電装品箱(72)の周囲が湿潤状態となるのを防ぎ、各電装品の電気的な不具合等を防止するようにしている。また、電装品箱(72)は、前面パネル(12)の操作部(12c)の裏側に位置している。つまり、電装品箱(72)は、前面パネル(12)を取り外すことで、ケーシング(10)の外部に露出するように配置されている。
給気ファン(73)は、給気通路を流れる室外空気を搬送するためのものであり、排気ファン(74)は、排気通路を流れる室内空気を搬送するためのものである。図8(B)に示すように、給気ファン(73)及び排気ファン(74)は、それぞれケーシング(10)内の上部寄りに設けられている。具体的には、給気ファン(73)は上記室内給気通路(43)に設けられ、排気ファン(74)は上記室外排気通路(44)に設けられている。このように、各ファン(73,74)をケーシング(10)の上部寄りに配置することで、上述した電装品箱(72)と同様に、各ファン(73,74)の周囲が湿潤状態となるのを防ぎ、各ファン(73,74)の電気的な不具合を防止するようにしている。
給気ファン(73)は、給気通路における各熱交換エレメント(61,62)の下流側に設けられている。つまり、給気ファン(73)は、その吸込側に各熱交換エレメント(61,62)が位置している。このため、給気ファン(73)を各熱交換エレメント(61,62)の上流側に配置する場合と比較して、給気ファン(73)に搬送される室外空気は、各熱交換エレメント(61,62)の外気流路(65)の全域を均一に流通し易くなる。
排気ファン(74)は、この排気ファン(74)は、排気通路における各熱交換エレメント(61,62)の下流側に設けられている。つまり、排気ファン(74)は、その吸込側に各熱交換エレメント(61,62)が位置している。このため、排気ファン(74)を各熱交換エレメント(61,62)の上流側に配置する場合と比較して、排気ファン(74)に搬送される室内空気は、各熱交換エレメント(61,62)の内気流路(66)の全域を均一に流通し易くなる。
図9に示すように、本実施形態に係る換気装置(1)は、例えば室内のクローゼット等の収納空間(80)内に配置されている。この換気装置(1)は、その前面パネル(12)が収納空間(80)の前側の開放部に位置するように設置される。この換気装置(1)では、上述した室外吸込口(21)と室内吸込口(22)と室内給気口(23)と室外排気口(24)とが、上面板(13)において上方を向くように開口している。そして、収納空間(80)内では、天井側から鉛直下方に延びる4本のダクト(81,82,83,84)が、各吸込口(21,22)及び給/排気口(23,24)にそれぞれ接続される。具体的には、上記室外吸込口(21)には、室外空間と繋がる室外吸込ダクト(81)が、上記室内吸込口(22)には、室内空間と繋がる室内吸込ダクト(82)が、上記室内給気口(23)には、室内空間と繋がる室内給気ダクト(83)が、上記室外排気口(24)には、室外空間と繋がる室外排気ダクト(84)が、それぞれ接続されている。
−運転動作−
本実施形態の換気装置(1)では、熱交換換気運転と普通換気運転とが切り換え可能となっている。
〈熱交換換気運転〉
熱交換換気運転について図10(A)及び図10(B)を参照しながら説明する。この運転は、例えば冬季や夏季のように、空調されている室内空間と室外空間との間の気温差や湿度差が大きい場合に行われる。
熱交換換気運転では、開閉ダンパ(34b)がバイパス導入口(34a)を塞ぐ位置に設定される(図10(A)参照)。この状態において、給気ファン(73)及び排気ファン(74)を運転すると、室外空気が室外吸込ダクト(81)を通って室外吸込口(21)内に流入し、室内空気が室内吸込ダクト(82)を通って室内吸込口(22)内に流入する。
室外吸込口(21)よりケーシング(10)内に流入した室外空気は、室外吸込通路(41)及び上部給気通路(51a)を通過して、中間部給気通路(52a)を流れる。中間部給気通路(52a)を流れる室外空気は、下部給気通路(53b)を通った後、フィルタ部材(71)を上方に流通する。フィルタ部材(71)では、室外空気中に含まれる塵埃等が捕捉される。フィルタ部材(71)を通った室外空気は、下側から上側に向かって、第2熱交換エレメント(62)と第1熱交換エレメント(61)とを順に通過する。
室内吸込口(22)よりケーシング(10)内に流入した室内空気は、室内吸込通路(42)を通過して、前面パネル(12)内の上側の空間を流れる。その後、室内空気は、第1熱交換エレメント(61)を通過し、連絡排気通路(55a)を経由して第2熱交換エレメント(62)を通過する。
各熱交換エレメント(61,62)では、外気流路(65)を流れる室外空気と内気流路(66)を流れる室内空気との間で熱と水分の授受が行われる。
例えば、冬期に室内を空調している状態において、室内空気の温度及び湿度は、室外空気の温度及び湿度に比べて高くなっている。従って、この状態で熱交換換気運転を行う場合、熱交換エレメント(61,62)では、室内空気から室外空気へ熱と水分が移動する。つまり、室内へ供給される室外空気は、室外へ排出される室内空気によって加熱され且つ加湿される。
また、夏季に室内を空気調和している状態において、室内空気の温度及び湿度は、室外空気の温度及び湿度に比べて低くなっている。従って、この状態で熱交換換気運転を行う場合、熱交換エレメント(61,62)では、室外空気から室内空気へ熱と水分が移動する。つまり、室内へ供給される室外空気は、室外へ排出される室内空気によって冷却され且つ減湿される。
第2熱交換エレメント(62)と第1熱交換エレメント(61)とを順に通過した室外空気は、室内給気通路(43)を通った後、室内給気口(23)を介してケーシング(10)の外部へ吹き出される。この空気は、室内給気ダクト(83)を経由して所定の室内空間へ供給される。
第1熱交換エレメント(61)と第2熱交換エレメント(62)とを順に通過した室内空気は、前面パネル(12)の下側の空間を流れる。その後、室内空気は、2つの下部排気通路(53a)に分流し、中間部排気通路(54a)で再び合流する。中間部排気通路(54a)を流れる室外空気は、上部排気通路(51b)及び室外排気通路(44)を通った後、室外排気口(24)を介してケーシング(10)の外部へ吹き出される。この空気は、室外排気ダクト(84)を経由して室外空間へ排出される。
〈普通換気運転〉
普通換気運転について図11(A)及び図11(B)を参照しながら説明する。この運転は、例えば中間期(春季や秋季)のように、空調されている室内空間と室外空間との間における気温差や湿度差がさほど大きくない場合に行われる。
普通換気運転では、開閉ダンパ(34b)がバイパス導入口(34a)を開放する位置に設定される(図12(A)参照)。この状態では、室内吸込口(22)と室内吸込通路(42)との間が開閉ダンパ(34b)によって遮断される。この状態において、給気ファン(73)及び排気ファン(74)を運転すると、室外空気が室外吸込ダクト(81)を通って室外吸込口(21)内に流入し、室内空気が室内吸込ダクト(82)を通って室内吸込口(22)内に流入する。
室内吸込口(22)よりケーシング(10)内に流入した室内空気は、バイパス通路(45)及び上部排気通路(51b)を通って室外排気通路(44)に流入する。つまり、この普通換気運転では、室外空気が各熱交換エレメント(61,62)をバイパスして室外排気通路(44)へ送り込まれる。
一方、ケーシング(10)内へ流入した室外空気は、熱交換換気運転と同様の給気通路を流れる。ここで、この普通換気運転では、各熱交換エレメント(61,62)の内気流路(66)に室内空気が流れていない。このため、室外空気が各熱交換エレメント(61,62)を通過する際には、室内空気との間で熱と水分の授受が行われない。
以上のように、この普通換気運転では、室外吸込口(21)より取り込まれた室外空気が、温湿度がほとんど変わらずに室内給気口(23)より吹き出され、室内給気ダクト(83)を経由して所定の室内空間へ供給される。また、室内吸込口(22)より取り込まれた室内空気は、温湿度がほとんど変わらずに室外排気口(24)より吹き出され、室外排気ダクト(84)を経由して所定の室外空間へ供給される。
−換気装置の設置状況とメンテナンスについて−
図9を示して上述したように、本実施形態の換気装置(1)は、ケーシング(10)の上面板(13)に、室外吸込口(21)、室内吸込口(22)、室内給気口(23)、及び室外排気口(24)が形成され、各吸込口(21,22)や給/排気口(23,24)には、天井側から鉛直に延びる4本のダクト(81,82,83,84)が接続されている。このため、本実施形態では、換気装置(1)の左右側方や前後方向に各ダクト(81,82,83,84)が配設されることがない。このため、クローゼット等の比較的狭い収納空間(80)に換気装置(1)を設置することが可能となっている。
また、本実施形態では、このようにして換気装置(1)を床置型としているため、ユーザーやメンテナンス業者等が、室内側から換気装置(1)のメンテナンスを容易に行うことができる。この点について以下に説明する。
換気装置(1)は、ケーシング(10)の前面パネル(12)が収納空間(80)の開放部側に露出されるように設置されている。ユーザー等がフィルタ部材(71)の清掃や交換を行う場合には、前面パネル(12)の閉塞部材(12b)を前方にスライドさせ、ケーシング(10)から閉塞部材(12b)を取り外す。その結果、図2に示すフィルタ部材(71)がケーシング(10)の外部に露出されることになる。ユーザーは、更にフィルタ部材(71)を前方にスライドさせ、フィルタ部材(71)の清掃や交換を行う。
ところで、このフィルタ部材(71)は、第2熱交換エレメント(62)の下側に位置している。このため、上述の換気装置(1)の運転動作において、フィルタ部材(71)で捕捉できなかった比較的小径の塵埃が第2熱交換エレメント(62)の下面に付着したとしても、その後に換気装置(1)を停止させると、これらの小径の塵埃が落下し、フィルタ部材(71)の上面に積もることになる。従って、ユーザーは、これらの小径の塵埃をフィルタ部材(71)で捕捉した塵埃と共に併せて清掃することができる。また、このようにフィルタ部材(71)を各熱交換エレメント(61)の下側に配置すると、フィルタ部材(71)を交換する際等にフィルタ(71)から埃等が剥がれ落ちても、この埃が熱交換エレメント(61)の上側に付着してしまうことがない。
また、図2に示すように、ケーシング本体(11)から前面パネル(12)を取り外すことで、各熱交換エレメント(61,62)及び電装品箱(72)がケーシング(10)の外部に露出されることになる。このため、メンテナンス業者等は、換気装置(1)の前側から各熱交換エレメント(61,62)や電装品箱(72)内の各電装品のメンテナンスを容易に行うことができる。
−熱ロスの削減効果について−
ところで、図9に示すように、換気装置(1)を室内に設置して使用する場合、上述した熱交換換気運転において、排気通路より室外へ排出される空気(排出空気)と室内空間の室内空間との間で熱のやりとりが行われ、室内の暖房負荷や冷房負荷が増大してしまう虞がある。
具体的には、例えば冬期において、各熱交換エレメント(61,62)で熱を奪われた室内空気は、排気通路を経由して室外へ排出されることになる。このため、各熱交換エレメント(61,62)の下流側の排気通路には、比較的低温の空気(排出空気)が流れることになる。一方、ケーシング(10)の周囲の温度(室内温度)は、この排出空気の温度よりも高い温度となり易い。このため、冬期の運転では、室内空間の熱がケーシング(10)を介して排出空気に伝わってしまい、この排出空気が加温されてしまうことがある。この排出空気は、その後に室外へ排出されることになる。その結果、この換気装置(1)により室内に供給された熱が、結局は室外へ捨てられることになり、冬期の暖房負荷が増大してしまうという問題が生じる。
また、例えば夏期において、各熱交換エレメント(61,62)で熱が付与された室内空気は、排出通路を経由して室外へ排出されることになる。このため、各熱交換エレメント(61,62)の下流側の排気通路には、比較的高温の排出空気が流れることになる。一方、ケーシング(10)の周囲の室内温度は、この排出空気の温度よりも低い温度となり易い。このため、夏期の運転では、排出空気の熱がケーシング(10)を介して室内へ伝わってしまうことがある。その結果、室内の温度が上昇し、夏期の冷房負荷が増大してしまうという問題が生じる。
そこで、本実施形態の換気装置(1)では、例えば図10に示すように、ケーシング(10)の背面板(14)からケーシング(10)の内部側(前側)へ向かって、中間部給気通路(52a)、中間部排気通路(54a)、及び連絡排気通路(55a)を順に並べて形成するようにしている。その結果、この換気装置(1)の熱交換換気運転では、室内空間の暖房負荷や冷房負荷が増大してしまうのを、以下に説明するようにして防止している。
まず、冬期において、各熱交換エレメント(61,62)で冷却された室内空気は、比較的低温(例えば5℃)の状態で中間部排気通路(54a)を流れる。ここで、この中間部排気通路(54a)は、ケーシング(10)の背面板(14)と隣り合っていない。このため、室内空間で比較的高温(例えば20℃)となった室内空気の熱が、ケーシング(10)を介して中間部排気通路(54a)を流れる排出空気へ伝わってしまうのを回避できる。その結果、室内の暖房負荷の増大を抑制できる。
また、中間部排気通路(54a)は、中間部給気通路(52a)と隣り合っている。ここで、中間部給気通路(52a)には、比較的低温(例えば−5℃)の室外空気が流れている。このため、中間部排気通路(54a)を流れる排出空気の熱は、第4部材(54)の側壁を介して中間部給気通路(52a)を流れる室外空気に付与され、この室外空気が加熱される。つまり、本実施形態では、中間部排気通路(54a)を流れる排出空気の熱が中間部給気通路(52a)の室外空気に回収される。このようにして熱を回収した室外空気は、上述したようにして最終的に室内へ供給される。
更に、この換気装置(1)では、室内空気が中間部排気通路(54a)を上方へ流れ、室外空気が中間部給気通路(52a)を下方へ流れる。つまり、中間部排気通路(54a)と中間部給気通路(52a)とでは、熱交換される空気同士が対向流となっている。このため、両者の空気の熱交換効率が増し、中間部給気通路(52a)を流れる室外空気に回収される熱量も増大する。
また、中間部排気通路(54a)は、連絡排気通路(55a)とも隣り合っている。ここで、連絡排気通路(55a)には、第1熱交換エレメント(61)で冷却されて比較的低温(例えば12℃)の室内空気が流れている。このため、連絡排気通路(55a)に第1熱交換エレメント(61)で冷却される前の高温(例えば20℃)の室内空気を流すようにすると、室内空気の熱が中間部排気通路(54a)を流れる排出空気へ伝達してしまい易いのに対し、本実施形態では、連絡排気通路(55a)を流れる室内空気の熱が排出空気へ伝達しにくくなる。その結果、排気通路を介して室外へ排出される熱量を最小限に抑えることができる。
一方、夏期において、各熱交換エレメント(61,62)で加熱された室内空気は、比較的高温(例えば30℃)の状態で中間部排気通路(54a)を流れる。ここで、この中間部排気通路(54a)は、ケーシング(10)の背面板(14)と隣り合っていない。このため、中間部排気通路(54a)を流れる排出空気の熱が、ケーシング(10)を介して室内空間の室内空気(例えば25℃)へ伝わってしまうのを回避できる。その結果、室内の冷房負荷の増大を抑制できる。
また、中間部排気通路(54a)は、中間部給気通路(52a)と隣り合っている。ここで、中間部給気通路(52a)には、比較的高温(例えば32℃)の室外空気が流れている。このため、中間部給気通路(52a)を流れる室外空気の熱が第4部材(54)の壁面を介して中間部排気通路(54a)を流れる排出空気に付与され、中間部給気通路(52a)の室外空気が冷却される。つまり、本実施形態では、中間部排気通路(54a)を流れる排出空気の冷熱が中間部給気通路(52a)の室外空気に回収される。このようにして冷熱を回収した室外空気は、上述したようにして最終的に室内へ供給される。
また、この換気装置(1)では、室内空気が中間部排気通路(54a)を上方へ流れ、室外空気が中間部給気通路(52a)を下方へ流れる。つまり、中間部排気通路(54a)と中間部給気通路(52a)では、熱交換される空気同士が対向流となっている。このため、両者の空気の熱交換効率が増し、中間部給気通路(52a)を流れる室外空気に回収される冷熱量も増大する。
また、中間部排気通路(54a)は、連絡排気通路(55a)とも隣り合っている。ここで、連絡排気通路(55a)には、第1熱交換エレメント(61)で加熱されて比較的高温(例えば28℃)の室内空気が流れている。このため、連絡排気通路(55a)に第1熱交換エレメント(61)で冷却される前の低温(例えば25℃)の室内空気が流れていると、中間部排気通路(54a)を流れる排出空気からこの連絡排気通路(55a)を流れる室内空気へ熱が伝達してしまい易いのに対し、本実施形態では、排出空気の熱が連絡排気通路(55a)を流れる室内空気へ伝達しにくい。その結果、排気通路を介して室外へ排出される冷熱量を最小限に抑えることができる。
−実施形態の効果−
上記実施形態によれば、図10(A)及び図10(B)に示すように、ケーシング(10)の背面板(14)に沿うようにして、中間部給気通路(52a)と中間部排気通路(54a)とを重なって形成するようにし、ケーシング(10)の背面板(14)側寄りの中間部給気通路(52a)に各熱交換エレメント(61,62)の上流側の室外空気を流通させ、ケーシング(10)の内部側の中間部排気通路(54a)に各熱交換エレメント(61,62)の下流側の室内空気を流通させるようにしている。このため、上記実施形態によれば、冬期の熱交換換気運転において、ケーシング(10)の周囲の室内の熱が中間部排気通路(54a)を流れる排出空気へ伝わってしまうのを回避でき、暖房負荷の増大を未然に防止することができる。また、中間部排気通路(54a)を流れる排出空気の熱を、中間部給気通路(52a)を流れる室外空気で回収することができ、暖房負荷を更に低減することができる。
また、上記実施形態によれば、夏期の熱交換換気運転において、中間部排気通路(54a)を流れる排出空気の熱がケーシング(10)の周囲の室内空間へ伝わってしまうのを回避でき、冷房負荷の増大を未然に防止することができる。また、中間部排気通路(54a)を流れる排出空気の冷熱を、中間部給気通路(52a)を流れる室外空気で回収することができ、冷房負荷を更に低減することができる。
また、上記実施形態によれば、中間部排気通路(54a)と隣り合うように連絡排気通路(55a)を形成し、第1熱交換エレメント(61)を通過した室内空気を連絡排気通路(55a)に流通させるようにしている。このため、上記実施形態によれば、例えば第1熱交換エレメント(61)を通過する前の室内空気を連絡排気通路(55a)に流通させる場合と比較して、中間部排気通路(54a)を流れる排出空気と連絡排気通路(55a)を流れる室外空気との間の熱の移動量を少なくすることができ、この熱の移動に伴う暖房負荷や冷房負荷の増大を防止することができる。
更に、上記実施形態によれば、中間部給気通路(52a)を流れる室外空気と中間部排気通路(54a)を流れる排出空気とを対向流としているので、これらの空気の熱交換効率を高めることができる。このため、上記実施形態によれば、冬期には暖房負荷を更に低減でき、夏期には冷房負荷を更に低減することができる。
《その他の実施形態》
上記実施形態は、縦長の換気装置(1)を室内に設置するようにしている。しかしながら、この換気装置(1)は、横長のものであっても良いし、他の形状であっても良い。また、この換気装置(1)を例えば天井裏の空間等、室内と同じ雰囲気の空間に設置するようにしても良い。
また、上記実施形態の換気装置(1)では、室外空気と室内空気の間で熱と水分(つまり顕熱と潜熱)の両方を交換させる熱交換エレメント(61,62)を用いているが、これに代えて、室外空気と室内空気との間で顕熱だけを交換させる顕熱交換エレメントを用いてもよい。また、熱交換エレメント(61,62)の個数は、2つに限定されるものではなく、1つであっても良いし、3つ以上であっても良い。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。