JP4099601B2 - 電位制御電解による好気性化学独立栄養細菌の培養方法および培養装置 - Google Patents

電位制御電解による好気性化学独立栄養細菌の培養方法および培養装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電位制御電解による好気性化学独立栄養細菌の培養方法および培養装置に関するものである。より詳しくは、本発明は、バクテリアリーチングや石炭の脱硫に有用な鉄酸化細菌等の好気性化学独立栄養細菌を高い増殖速度で高濃度まで培養する方法および該方法を適用して培養するための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
細菌等の微生物による物質生産は発酵法として医薬品工業、食品工業、発酵工業等のさまざまな分野に利用されている。しかし、この目的に主として使用されるのは、植物由来の有機物をエネルギー源として物質生産を行う従属栄養微生物であり、これらの微生物のエネルギー利用効率は太陽光を最初のエネルギー源として換算すると1%未満であり、非常に低い。一方、独立栄養微生物は光や還元性の化合物等からエネルギーを直接取りだし、微量元素と二酸化炭素とを利用して生育することができる。
【0003】
太陽光を直接利用できる光独立栄養微生物(光合成微生物)はエネルギー利用効率が約5%と比較的高い。しかし、光合成微生物は増殖が遅く、光エネルギーの効率の良い供給が難しいため、物質生産に用いられることはほとんどない。また、人工的な培養の場合、夜間は電気エネルギーから光エネルギーを作り出して供給しなければならないため、光合成微生物を用いた物質生産全体のエネルギー利用効率は低下する。
【0004】
太陽電池を用いた場合、太陽光を電気エネルギーに変換する際のエネルギー効率は15〜20%になる。従って、電気エネルギーを微生物の培養に利用できれば、エネルギー利用効率の高い微生物培養系または物質生産系が構築できる。
ここで、化学独立栄養細菌と呼称される一群の細菌は、無機物である硫化水素やその他の還元状態の硫黄化合物、アンモニア、亜硝酸、一酸化炭素、水素分子、第一鉄イオン等の酸化により生育できるものである。すなわち、化学独立栄養細菌は電子供与体と呼ばれる上記物質から電子を得てATPおよびNADH等の高エネルギー物質に変換し、生体エネルギーとして用いることにより二酸化炭素を還元し生育している。そのため、上記還元状態の無機物を電気化学的に生成させて、該還元状態の無機物を介して電気エネルギーを間接的に細菌に供給することが考えられる。また、そのような還元状態の無機物を介さずに電気エネルギーを直接菌体に供給できれば、エネルギー利用効率はより向上するものと考えられる。これら電気エネルギーを利用した細菌培養系または物質生産系が確立されれば、従来の発酵法に代わる細菌培養技術または物質生産技術とすることができる。
【0005】
これまでに、電気エネルギーを使用して培養できる微生物として、水素細菌や鉄酸化細菌等の化学独立栄養細菌の培養が検討されてきた。水素細菌は、その菌体中のタンパク質含量が高いことから宇宙での長期間にわたる食糧供給源の候補として、米国航空宇宙局(NASA)によりその培養に関する研究が始められたものであり、水素ガスをエネルギー源として増殖できるため、水素ガスを電気化学的に生成させることにより培養できる。しかし、培養時にスーパーオキシドや過酸化水素が発生し、細菌の増殖を妨げる等、解決しなければならない問題が多い。また、爆発の危険性の高い水素ガスの発生を必要とするため、電気的エネルギーを供給することによる大量培養や高濃度培養については何ら検討されていないのが現状である。
【0006】
一方、鉄酸化細菌は、石炭脱硫や金、ウラン等の稀少金属の回収(バクテリアリーチング)に使用される有用な微生物である。この鉄酸化細菌はFe2+をエネルギー源として用いて生育するが、これはFe2+をFe3+に酸化する際の電子(e- )をエネルギーとして取り出しているものである。しかし、培地中のFe2+を濃度を高くすると基質阻害が起こる上、酸化後に生じるFe3+により培地中に沈澱が生成され増殖阻害が起こるため、エネルギー源である培地中のFe2+濃度を高めることができず、高濃度までの培養および大量培養が妨げられていた。
【0007】
これまでに報告されている電気エネルギーを用いた鉄酸化細菌の培養は、電流制御および電圧制御により検討されているが、その中でBlake 等〔Appl. Environ. Microbiol. 60: 2704-2710 (1994)〕の方法による菌体生産性が最も高く、60日間の培養時間で1010細胞/mlの高濃度培養ができることを報告している。しかし、Blake 等による報告では、短時間で増殖速度が低下しているため、1010細胞/mlの濃度まで到達するまでの培養時間が60日間と非常に長く、菌体生産性もそれほど高くない。このため、Blake 等の方法を、鉄酸化細菌を工業的に利用するための培養に適用することは到底できない。
【0008】
これに対し、本発明者等は、鉄酸化細菌等の化学独立栄養細菌に電気エネルギーを直接または間接的に供給し、利用可能とする培養方法を開発し先に出願した(特願平7−205256号)が、ある程度の増殖速度および増殖濃度は得られたものの、バクテリアリーチング等に工業的に利用し得る程度に高い増殖速度および菌体濃度までには至らなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況を考慮してなされたものであり、バクテリアリーチングや石炭の脱硫のために有用な鉄酸化細菌等を工業的に使用するために十分量で供給することを可能にする程度に、好気性化学独立栄養細菌を非常に高い増殖速度で十分に高濃度まで培養する方法およびそのような培養を行うための装置の提供を課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、好気性化学独立栄養細菌が増殖する際の律速要因を解明し、該要因を除去できれば、上記課題を解決し得ると考え、種々検討を重ねた結果、上記細菌が増殖のためのエネルギーとして利用する電子供与体および酸素が律速要因であることを解明し、それらの増殖を阻害しない様式で十分に供給することにより、十分に高い増殖速度で十分に高濃度まで上記細菌の培養が可能であることを見出し、さらに鋭意検討の末、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、好気性化学独立栄養細菌を該細菌のための電子供与体を含有する培地中で培養する際に、該培地を定電位電解して、酸化された電子供与体を前記細菌が利用し得る元の電子供与体に還元し、かつ、前記細菌が増殖するために十分な量の酸素を培地中に供給することを特徴とする好気性化学独立栄養細菌の培養方法に関する。
【0012】
本発明において好気性化学独立栄養細菌とは、化学的暗反応により電子供与体を酸化してエネルギーを得、かつ増殖のために酸素を必要とするものであり、例えば鉄酸化細菌〔代表菌チオバチルス(Thiobacillus)〕、硫黄酸化細菌〔代表菌チオバチルス〕、脱窒細菌〔代表菌パラコッカス(Paracoccus)〕、水素細菌〔代表菌アルカリゲネス(Alcaligenes) 〕、アンモニア酸化細菌〔代表菌ニトロソモナス(Nitrosomonas)〕、亜硝酸酸化細菌〔代表菌ニトロバクター(Nitrobacter) 〕等を包含する。
【0013】
また、本発明において電子供与体とは、好気性化学独立栄養細菌がエネルギー源として使用し得、それを酸化してエネルギーを獲得するための物質で、電気化学的に再生可能でなければならず、それぞれの好気性化学独立栄養細菌により異なる。例えば、鉄酸化細菌や硫黄酸化細菌にとっては第一鉄イオン(Fe2+)および/または還元性の硫黄分子であり、脱窒細菌や水素細菌にとっては水素分子(H2 )であり、アンモニア酸化細菌にとってはアンモニウムイオン(NH4 + )であり、亜硝酸酸化細菌にとっては亜硝酸イオン(NO2 - )である。なお、上記以外の好気性化学独立栄養細菌のための電子供与体は当該分野の文献等に容易に見出すことができる。
【0014】
本発明において使用される培地は、好気性化学独立栄養細菌のための上記それぞれの電子供与体を含有していれば、その他の成分は特に制限されず、培養する好気性化学独立栄養細菌の増殖に必要であり、かつ上記電子供与体の酸化・還元を阻害する等の悪影響を与えないものであれば、含有し得ることはいうまでもない。なお、上記培地は、培地の定電位電解が可能であり、培地中の電子供与体の自由な移動が妨げられないならば、固体と液体の混合状態でも、固体状のものであってもよいが、培地の製造性や使用性等の点から液体であることが好ましい。
【0015】
また、本発明における好気性化学独立栄養細菌の培養の際の培地の定電位電解は、酸化された電子供与体を前記細菌が利用し得る元の電子供与体に還元する反応のみ実質的に起こる一定の電位を印加し培地を電解することを意味する。通常、電位の制御は、培地中に作用極、対極および参照極を配置し、作用極に特定の電位を印加して行われる。このとき、電子供与体の再酸化を防止するために、作用極と対極とはイオン交換膜で隔てて配置することが好ましい。また、上記各電極、特に作用極の材質等は培養する細菌に応じて、所望の電子移動が行われ得るように選択されることが好ましい。
印加される定電位は、使用する電極、それぞれの好気性化学独立栄養細菌およびその電子供与体等に応じて容易に決定し得る。例えば鉄酸化細菌の場合、通常1.0〜−1.0V vs.Ag/AgClの範囲から選択され得る。
【0016】
本発明の培養方法において、上記細菌が増殖に必要とする十分な量の酸素の強制的な供給が必須である。好ましくは、培地中の溶存酸素が上記細菌の増殖に必要な量以上となるように供給される。なお、必要な酸素量はそれぞれの好気性化学独立栄養細菌やその培養条件等に応じて異なるが、それぞれの場合において簡単な実験により決定することができる。また、この酸素供給は、慣用の送気管等を介して行われてもよいが、培地中の溶存酸素量をより効率的に増加させるために、微小気泡発生装置等により行われることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る培養は、上記のように培地の定電位電解および酸素の強制的供給以外、適当なpHおよび温度の下、好ましくは上記細菌の至適条件下、一般の好気性化学独立栄養細菌の培養と同様に上記培地中で行われ得る。また、上記の条件を満足するものであれば、培養は回分式で行っても、連続式で行ってもよい。
【0018】
本発明はまた、第一鉄イオン(Fe2+)を含有する培地中で鉄酸化細菌を培養する際に、該培地を定電位電解して、培地中の第二鉄イオン(Fe3+)を還元して第一鉄イオン(Fe2+)とし、かつ、鉄酸化細菌が増殖するために十分な量の酸素を培地中に供給することを特徴とする鉄酸化細菌の培養方法に関する。
【0019】
ここで、鉄酸化細菌は上記のようにチオバチルス、例えばチオバチルス・フェロオキシダンス(Thiobacillus ferrooxidans) 等の他、シデロカプサ(Siderocapsa) 、シデロコッカス(Siderococcus)等が代表的なものである。
【0020】
さらに、本発明は、好気性化学独立栄養細菌を該細菌のための電子供与体を含有する培地中で培養するための培養部と、前記培地を定電位電解し、酸化された電子供与体を前記細菌が利用し得る元の電子供与体に還元するための定電位電解手段と、前記細菌に増殖するために十分な量の酸素を培地中に供給するための酸素供給手段とからなることを特徴とする好気性化学独立栄養細菌の培養装置に関する。
【0021】
本発明はまた、第一鉄イオン(Fe2+)を含有する培地中で鉄酸化細菌を培養するための培養部と、前記培地を定電位電解し、培地中の第二鉄イオン(Fe3+)を還元して第一鉄イオン(Fe2+)とするための定電位電解手段と、鉄酸化細菌が増殖するために十分な量の酸素を培地中に供給するための酸素供給手段とからなることを特徴とする鉄酸化細菌の培養装置に関する。
【0022】
本発明の鉄酸化細菌等の好気性化学独立栄養細菌の培養装置において、培養部、定電位電解手段および酸素供給手段はそれぞれ独立して培養装置が構成されていても、また、2または全ての部分が一体化された構成を採ってもよい。また、例えば、定電位電解槽の形態にある定電位電解手段と、通気槽の形態にある酸素供給手段とからなり、上記両槽が連通して培地が循環され、かつ、上記両槽が同時に培養部を兼ねる構造の培養装置であってもよい。本発明の培養装置は、少なくとも培養部、好ましくは全体が一定温度に保持される。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の電位制御電解による好気性化学独立栄養細菌の培養方法および培養装置を鉄酸化細菌の場合を例にとり説明する。約30℃の恒温槽に浸された電解槽と通気槽とがあり、これらは連通路により連結されており、培地は上記2つの槽を循環するように構成され、それら両槽およびそれらの連通路はまた培養槽の役目も果たし、該培養槽、すなわち電解槽、通気槽およびそれらの連通路において鉄酸化細菌の増殖が起こる(図1参照)。電解槽では白金電極により十分な定電位電解が行われるが、この際の電極電位は培地中でのサイクリックボルタモグラムによりFe3+のFe2+への還元のみが起こる0.0V vs.Ag/AgClに設定される。また、通気槽では微小気泡発生装置により培地に十分な酸素供給が行われるようにしてある。培地のFe2+濃度は細菌の酸素消費活性が最大であった150mMに設定し、pHは増殖速度が高く、かつ沈澱が生じない2.0とする。この結果、6日間の培養で1×1010細胞/ml(菌濃度を表す単位であり、以下においてcells/mlとも記載する)に達する。上記の結果を図2に、上掲のBlake 等の方法と対比して示す(○が本発明の方法,●がBlake 等の方法)。
【0024】
【実施例】
以下実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:鉄酸化細菌の培養条件の検討
最初に本実施例で使用される材料および行われる試験の方法について説明し、次にその試験の結果について説明する。
A.材料および方法
(1)鉄酸化細菌の培養
鉄酸化細菌はチオバチルス・フェロオキシダンス(Thiobacillus ferrooxidans) ATCC23270を用いた。培養には、m9K改変培地(m9K+CaMg)を用いた。本培地は、脱イオン水500ml中に(NH4 2 SO4 ;3.0g、KH2 PO4 ;0.05g、MgSO4 ・7H2 O;0.5g、Ca(NO3 2 ・4H2 O;0.01gを添加した溶液Aと、脱イオン水500ml中ににFeSO4 ・7H2 Oを22.2g添加した溶液Bをそれぞれオートクレーブで滅菌した後、混合したものである。該培地のpHはオートクレーブ前に硫酸を用いてそれぞれ0.5〜4.5に調整した。また、脱イオン水は純水製造器(ミリポア社製,商品名Milli−Q)により製造したものを用いた。培地のpHはガラス電極(コーニング社製,商品名pHメーター220)を用い測定した。培養は温度30℃、1リットル/分の通気下で行った。実験には、培養3〜4日後の定常期の菌体を接種源として用いた。
【0025】
(2)培養条件の設定と測定項目
鉄イオンの電極反応における電気化学的な挙動、鉄酸化細菌の鉄酸化活性および増殖に対する、電極、pH、塩濃度、鉄イオン濃度に対する影響を検討した。
電極の種類による鉄イオンの電極反応の違いは、白金電極とグラッシーカーボン電極を用い、次項に示すサイクリックボルタンメトリー(以下、CVと略す)によって評価した。すなわち、鉄イオンの還元電流のピーク電位と酸化電流のピーク電位の差(ピークセパレーション)により、電極反応に必要とする余分な過電圧から評価した。
pHの影響については、硫酸を用い0.5〜4.5に調整した鉄を含まない培地を用い、電導度を測定した。また、同様にしてpHを調整した80mMのFe2+を含む培地を用い、電導度、鉄イオンの電極反応、鉄酸化細菌の鉄酸化活性および増殖に対する影響を調べた。
塩濃度の影響については、Na2 SO4 を0〜1.0Mの濃度で調整した溶液を作成し、培地の電導度、鉄イオンの電極反応、鉄酸化細菌の鉄酸化活性および増殖に対する影響を調べた。
初期Fe2+濃度の影響については、培地中のFe2+濃度が0〜700mMになるようにFeSO4 ・7H2 Oを添加し、鉄酸化細菌を培養し、鉄酸化活性および増殖効率に対する影響を調べた。
また、鉄酸化細菌の増殖に使った後の培地についても、鉄酸化活性に対する影響を調べた。すなわち、定常期の培養液を遠心分離して、菌体を除去した上澄み液(50ml)を用い、同様の方法で鉄酸化活性を測定した。
【0026】
(3)電導度の測定および電極反応の評価
培地の電導度は、温度補正付きの電気伝導率計(東亜電波社製,商品名CM−20S)を用い測定した。電極反応の評価はCVにより行った。電導度に対する培地pHの影響には、pHを0.5〜4.5に調整した鉄を含まない培地、および80mMのFe2+を含む培地を用いた。同様に塩濃度の影響には、Na2 SO4 を0〜1.0Mの濃度で調整した溶液を作成し、測定に用いた。
CVは、電気化学測定器(BAS社製,商品名BAS100B/W)を用いて行った。作用極には、白金電極(直径;1.6mm,BAS社製,商品名11−2013)またはグラッシーカーボン電極(直径;3mm,BAS社製,商品名11−2012)、対極には白金線(BAS社製,商品名51−2233)、参照極には銀塩化銀電極(Ag/AgCl,BAS社製,商品名11−2020)を用いた。
【0027】
(4)鉄酸化活性の測定
鉄酸化活性は酸素電極(エイブル社製,商品名BO−G)を用いて測定した。酸素電極表面に鉄酸化細菌(3.2×109 細胞)を吸引固定したメンブランフィルター(アドバンテック製,ニトロセルロース膜,直径13mm,孔径0.45μm)をナイロンメッシュで固定し鉄酸化活性測定用電極を作成した。活性変化は酸素の定常還元電流の変化で評価した。すなわち、上記菌体による鉄酸化反応は最終電子伝達体が酸素分子であるため、Fe2+イオンの添加に伴って酸素濃度が減少することから、菌体の鉄酸化活性を評価することができる。なお、本電極の応答再現性は高く、応答時間は15分、誤差11%(0.16mMの場合)、室温放置で3日間は応答性が保たれることが確認された。
pHに対する影響は、pHを0.5〜4.5に調整した培地溶液A(20ml)に160mMのFe2+溶液を100μl添加し、電流値の減少により評価した。
塩濃度の影響の測定には、本実施例で使用される培地に含まれている(NH4 2 SO4 、MgSO4 、Ca(NO3 2 の他にK2 HPO4 、KCl、NH4 Cl、CaCl2 、Na2 SO4 を用いた。塩は最終濃度が、0.1Mおよび1.0Mとなるように培地溶液A(20ml)に添加した後、さらに160mMのFe2+溶液を200μl添加し、同様に鉄酸化活性を測定した。
培地中のFe2+濃度の影響は、培地溶液A(20ml)に160mMのFe2+溶液を順次20μlづつ添加し、鉄酸化活性を測定した。
【0028】
(5)鉄酸化細菌の増殖に対する影響
鉄酸化細菌の増殖に対する培養条件の影響の測定には、pH0.5〜4.5および塩濃度(Na2 SO4 )0〜1.0Mの培地を用いた。培地のFe2+濃度は80mMに調整した。植菌量は10%とし、他の培養条件は上記(1)と同様にした。培養は4日間行い、定常期の菌濃度をバクテリア計数盤を用いて測定した。
【0029】
(6)鉄酸化細菌の増殖効率に対する初期Fe2+濃度の影響
培地中のFe2+の濃度が0〜700mMになるようにFeSO4 ・7H2 Oを添加し、鉄酸化細菌を培養した。菌濃度は定常期に測定した。供給した電荷量(C;クーロン)あたりの菌体生成量である増殖効率(細胞/C)は以下の式:
増殖効率(細胞/C)=〔定常期菌濃度(細胞/ml)−初期菌濃度(細胞/ml)〕/〔初期Fe2+濃度(モル/ml)×96500(C/モル)〕
により算出した。供給電荷量は1モルのFe2+に対し、96500Cの電荷量を供給したものとして計算した。
【0030】
B.結果
(1)電極の影響
白金電極(Pt)およびグラッシーカーボン電極(GC)を用い鉄イオンのCVを測定したところ、白金電極に比べ炭素電極を用いた場合では、酸化電位と還元電位のピークセパレーションが大きかった(図3)。ピークセパレーションが大きいと余分な過電圧を必要とするため、電気培養には白金電極を用いることとした。
【0031】
(2)pHの影響
まず、培地の電導度に対するpHの影響について検討したところ、pH2.0以下で電導度の急激な増加が確認された(図4)。これは硫酸添加によるイオン濃度の上昇によるものと推測される。さらに、電極反応に対する影響について検討したところ、図5に示すようにpHの上昇に伴ってピーク電位のセパレーションが大きくなることがわかった。すなわち、電気培養におけるFe2+の電気化学的再生において、pHが低いほど電導度が高く、過電圧を要しないため、エネルギー的に有利であることが判明した。
【0032】
次に、酸素電極を用いて鉄酸化活性を検討したところ、pH2.0〜4.5で安定した活性を示す一方、pH2.0以下では活性が阻害され、pH1.0で活性は80%以上阻害された(図6)。同様のpHにおいて、鉄酸化細菌の増殖との関係について検討したところ、図7に示すように、初期pH1.5以上では阻害は見られなかったものの、pH1.0以下で増殖はほぼ完全に阻害された。このときの比増殖速度を比較してみると、pH2.5が最も高かった(図8)。すなわち、鉄酸化細菌の増殖にはpHは1.5より高い必要があることがわかった。
【0033】
上記のpHについての知見と、pH2.0以上では酸化状態の鉄イオン(Fe3+)が不溶性の沈澱を生じることを併せて考えると、比増殖速度は最大ではないがFe2+の電気化学的再生および鉄酸化活性の阻害に基づく増殖阻害の起きないpH1.5〜2.0が、電気培養を行うことができるpH範囲であることが明らかとなった。
【0034】
(3)塩の影響
塩の添加は、培地の電導度を上げる効果が予測され、電気培養における電極上で鉄イオンの還元反応を促進することが期待される。そこでまず、鉄酸化活性を阻害しない塩を検索した。ここでは、電極反応に関与しないと考えられ、一般的な細菌に対し殺菌等の影響を示さない、KCl、NH4 Cl、K2 HPO4 、CaCl2 、(NH4 2 SO4 、MgSO4 (1.0M)、Na2 SO4 を用いた。
【0035】
終濃度が0.1Mまたは1.0Mとなるように各塩を添加し、鉄酸化活性を測定したところ、表1に示すようにKCl(0.1M)、NH4 Cl(0.1M)、K2 HPO4 (0.1M)、CaCl2 (0.1M)を用いたとき活性が阻害され、一方、(NH4 2 SO4 (0.1M,1.0M)、MgSO4 (1.0M)、Na2 SO4 を用いたときには阻害は起きなかった。このことから、阻害は、Cl- 、PO4 3- 等の陰イオンによることが示唆された。これは、鉄酸化酵素がFe2+のSO4 2-六配位錯体を認識しており、他の錯体は確認できないためと考えられる。
【0036】
【表1】
Figure 0004099601
【0037】
阻害活性を示さなかった(NH4 2 SO4 、MgSO4 、Na2 SO4 について同様の濃度で、増殖に対する影響について検討したところ、表2に示すようにNa2 SO4 以外では0.1Mにおいても15〜35%の阻害を示したことから、以下の実験ではNa2 SO4 を用い、電極反応および増殖に対する濃度の影響について検討した。
【0038】
【表2】
Figure 0004099601
【0039】
まず、電極反応に対する影響をCVによって検討したところ、0.2M以上では塩濃度の上昇に伴いピークセパレーションが大きくなり、ピーク電流も減少した(図9)。すなわち、塩濃度の増加により鉄イオンの電極反応が阻害されることが示された。次に、増殖に対する影響について検討したところ、同様に0.2M以上で増殖が50%以上阻害されることが明らかとなった(図10)。酸素電極を用いた鉄酸化活性の測定では、塩濃度1.0Mでも活性は阻害されていないことから、増殖阻害は浸透圧変化など鉄酸化反応とは別の要因によると考えられる。
【0040】
以上のことから、電気培養において増殖阻害を起こさず使用できる塩は0.1M以下のNa2 SO4 であることが明らかとなった。しかし、該塩の使用による細菌の増殖および電気化学的なメリットは見出されなかったことから、塩濃度の低下による電気化学反応への阻害が起きた場合のみ上記のような塩を添加するだけで十分であることが判明した。
【0041】
(4)培地および鉄イオン濃度の影響
鉄イオンは、培地成分の中でも最も含量が高く、電気培養におけるエネルギー運搬体でもあることから菌体の増殖に大きく関与すると予測される。そこで、まず回分培養における増殖効率(増殖菌数/2価鉄イオン量)に対する初期2価鉄イオン濃度の影響について検討した。その結果、図11に示すように、2価鉄イオンの濃度により増殖効率が異なり、100mM前後で増殖効率が高いことがわかった。これは、初期2価鉄イオンが低濃度の場合、大部分の2価鉄イオンが菌体の増殖ではなく、維持に費やされているため、増殖効率が低下したものである。一方、高濃度の初期2価鉄イオンの場合の増殖効率の低下は、2価鉄イオン自身または菌体の増殖によって生成した高濃度の3価鉄イオンによる阻害効果である。
【0042】
そこで次に、鉄酸化活性に及ぼす鉄イオン濃度の影響について、菌体を固定した酸素電極を用い検討した。Fe2+を順次添加したところ、電流値が階段状減少する応答を示し、Fe2+0.16〜2.24mMまで鉄酸化活性に対する阻害が見られないことがわかった(図12)。一方、高濃度の3価鉄イオン(約80mM)を含む培養後の上澄みを用い鉄酸化活性を検討したところ、活性が1/3に減少した(図13)。後記するように、電気培養による高濃度培養において、培地中に阻害性の有機物や栄養塩の減少による増殖阻害などが見られなかったことから、本阻害効果は3価鉄イオンによるものと結論づけることができる。電気培養における鉄イオンの濃度は100mM前後、特に70〜130mMが望ましく、また、電気化学的還元により培地中の3価鉄イオンをできるだけ少なくする必要があることが明らかなった。
【0043】
実施例2:電気培養による鉄酸化細菌の半連続生産
80mMの2価鉄イオンを含むm9K+CaMgを用い、電気培養による鉄酸化細菌の半連続生産について検討した。作用極と対極を陰イオン交換膜で隔てた内容量250mlの小型の電解槽を用い、慣用の送気管による通気下で、作用極に−0.6Vまたは0V vs.Ag/AgClのいずれかの定電位を印加し、培養した。電極には、白金網電極(80メッシュ,10×5cm)を用いた。培養は約5日毎に定期的に培養液を4/5取り出し、新しい培地を加え全量を250mlとして30日間継続した。
【0044】
その結果、0Vの定電位の印加では、約150mAの電流が定常的に流れ、図14に示すように、約3.5×109 細胞/mlの濃度まで半連続的に培養できることがわかった。このときの菌体生産速度は、同量の培地を用いた通常培養(電位制御なし)の約8.8倍(8.8×1010細胞/日)であった。また、培養液あたりの生産性は、同様に通常培養の8.8倍であり、3.5×108 細胞/ml/日となった。
【0045】
また、半連続培養における増殖効率を検討したところ、0Vのときが9.8×106 細胞/C(63%)、−0.6Vのときが9.2×106 細胞/C(59%)であり、0Vの方が増殖効率が若干高かった。これは、−0.6Vの場合の方が、生成菌体の対する消費電流が大きく、鉄イオン還元以外の副反応(酸素4電子還元等)が起きたためと推測される。このことから、Fe3+からFe2+への還元は0V vs.Ag/AgClの定電位の方が効率的であることが判明した。また、生産速度は電流(供給電気エネルギー量)および増殖効率に依存することから、以下の電気培養における菌体生産は0V vs.Ag/AgClの定電位で行うこととした。
【0046】
実施例3:電気培養による鉄酸化細菌の高濃度培養
電気培養による鉄酸化細菌の高濃度培養を検討するために、図1に示す電気培養装置1を用いた。該装置1は、定電位を印加し培地13を電解するための電解槽2と、培地への酸素供給を効率よく行うための通気槽3と、電解槽2および通気槽3とを浸しそれらを一定温度に保持する恒温槽4と、電解槽2および通気槽3中の培地13を一方から他方へ送る通路を形成する連通路a,b,cとから概略構成される。電解槽2には、作用極5として白金網電極(80メッシュ,10×25cm)、対極6としてカーボンファイバー、そして参照極7として銀塩化銀電極(Ag/AgCl)が備えられ、いずれの電極も電位制御装置8に連結されている。作用極5と対極6は陰イオン交換膜9で隔てられ、対極6でのFe2+の再酸化が防止されている。通気槽3には、pH電極10が備えられ、pHを検知して一定値に維持し、そしてエアコンプレッサー11から培地13中に微小気泡の形態で酸素が供給される。電解された培地13は連通路aを介して電解槽2から通気槽3に送られ、通気槽3にて酸素が供給された後、連通路b,cを介してポンプ12により電解槽2に戻される。このように循環される培地13中で鉄酸化細菌の増殖は進行する。
実施例2の場合の約2倍濃度のFe2+(150mM)を含む600mlの培地中で1リットル/分の通気槽での通気条件下、30℃の一定温度で、0V vs.Ag/AgClの定電位を印加し電気培養を行った。この場合の電流は実施例2における半連続培養時の約10倍(約1.5A)になった。
【0047】
上記培養装置1による電気培養の結果を図15に示す〔本発明は(●)〕。菌体は早い増殖速度(倍加時間が12時間以下)を維持し、通常培養〔2.5×108 細胞/ml,図中(○)〕の50倍の菌濃度(1.25×1010細胞/ml)まで約6日間の高濃度培養を行うことができた。この結果は、現状での世界最高の増殖速度のデータであり、上掲のBlake 等による文献で報告された結果〔60日間の培養時間で1010細胞/ml,図中(△)〕に比べ、1010細胞/mlの濃度に達するまでの時間を1/10に短縮できた。
上記の結果から本発明の場合とBlake 等による方法の場合とを培養6日目までの菌濃度の推移を抽出して示したのが図2である。本発明による増殖速度の顕著な向上が明らかである。
【0048】
また、このときの菌体生産速度は半連続生産(実施例2)の約16倍(1.4×1012細胞/日)であり、培養液あたりの生産性は、半連続生産の約6.6倍、通常培養の58倍である2.3×109 細胞/ml/日であった。さらに、増殖効率を検討したところ、1.47×107 細胞/Cとなり、半連続培養時に比べ高い値を示した。
【0049】
一方、培地成分(NH4 + ,K+ ,Mg2+,Ca2+)の変化について調べたところ、表3に示すように、いずれの塩も減少していないことから、1.25×1010細胞/ml付近での増殖速度の低下は、栄養塩の減少によるものではなく、エネルギー供給速度(電流)が増殖速度に間に合わなかったためと結論づけることができる。
【0050】
【表3】
Figure 0004099601
【0051】
実施例4:大型電気培養装置による鉄酸化細菌の大量生産
大量の培養液を得るために、大容量(17リットル)、大電極面積(60×70cm)の大型電気培養装置を用い、菌体生産を行った。なお、該装置は全体が大型になったことを除いて、基本的には図1に示すものと同様のものを用いた。培地には鉄イオン濃度が80mMのm9K+CaMg培地を用いた。培養は、印加電圧0V vs.Ag/AgCl、通気速度は10リットル/分以上で行った。電極として工業的な適用を考慮して白金より安価なチタンメッシュに白金を蒸着したものを用いた。
【0052】
上記大型電気培養装置において、電流が約10〜14Aと半連続生産(実施例2)の約80倍、高濃度培養装置(実施例3)の約8倍となり、生産速度は2.0×1013細胞/日とそれぞれ約230倍および約14倍となった。培地あたりの供給エネルギー量が低かったため、菌濃度は図16に示すように5×109 細胞/mlであり、培養液容量あたりの生産性は1.2×109 細胞/ml/日で、いずれも高濃度培養(実施例3)の約1/2に留まった。このように菌体生産性は高濃度培養装置に劣るものの、培養装置の単位体積あたりの電極面積を上げることで、さらに生産性を向上させ得ることが期待される。
また、増殖効率は培養期間により異なり、図17に示すように1.0〜3.5107 細胞/Cとなった。これは、Fe2+濃度と相関があり、実施例3と同様の高濃度のFe2+存在下で効率が高かったことが示された。すなわち、本実施例において培養後期における増殖効率の低下は、主にFe3+イオン濃度が高くなったことによる阻害効果によるものであり、Fe3+からFe2+への還元の重要性がここでも確認できた。
【0053】
実施例5:菌体生産におけるエネルギー利用効率
鉄酸化細菌の生産における電気エネルギー利用効率を求めるために、鉄酸化細菌の乾燥重量あたりのエネルギーを調べた。ポンプカロリメーターを用いて分析した結果、乾燥重量あたりのエネルギーは456kcal/100gとなった(財団法人・日本食品分析センター調べ)。クロレラの相当する値が560kcal/100gであることから、上記の鉄酸化細菌に対する値は妥当と考えられる。これをもとに、乾燥菌体重量あたりの菌体数4.6×1012細胞/gを参考に、菌体あたりに有するエネルギーを求めたところ、1.00×10-12 kcal/細胞となった。
一方、電気培養における菌体あたりの生産エネルギー(Pe;kcal/細胞)は、以下の式:
Pe=1細胞/Pr/1秒×Ve×(2.3885×10-8
で示される。ここで、1W秒=2.3885×10-8kcal、増殖効率(Pr;細胞/C)=1.0〜3.5×107 細胞/C、槽電圧(Ve;V)を3Vとすると、Pe=2.1〜7.2×1011kcal/細胞となる。すなわち、電気培養における、現状での電気エネルギーの利用効率は1.4〜4.9%であり、太陽光をエネルギー源として換算した従属栄養微生物等の利用効率(0.28〜0.98%)に比し、かなり高い値であることがわかる。
【0054】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の好気性化学独立栄養細菌の培養方法は、定電位電解により培地中に常に一定濃度以上の電子供与体が前記細菌の利用し得る形態で存在し、しかも、増殖のために十分な量の酸素が培地中に供給されていることにより、これまで報告されたことのない、高い増殖速度で高濃度まで前記細菌の培養を可能とした。このように、本発明の方法は、従来報告されたことのない、好気性化学独立栄養細菌の培養系であり、電気エネルギーを効率よく利用して前記細菌の大量および高濃度培養を可能とするものである。
また、本発明は、好気性化学独立栄養細菌の一種である鉄酸化細菌が、6日間で1×1010細胞/mlの菌濃度まで培養され得ることを可能にした。このような高速での高濃度までの鉄酸化細菌の増殖はこれまで報告されたことがなく、これにより、バクテリアリーチングや石炭の脱硫に有用な鉄酸化細菌をより良好なエネルギー効率で、低コストで培養ができるようになった。
さらに、本発明は、上記の効果を奏する培養方法をより効率的に実施するための培養装置をも提供することを可能にした。
【0055】
上記したように、本発明は、鉄酸化細菌や水素細菌等の好気性化学独立栄養細菌に電気エネルギーを供給することにより、高いエネルギー効率での前記細菌の大量および高濃度培養を可能とするものである。このため、本発明の培養方法によれば、菌体そのものを食糧として利用し得る水素細菌を電気エネルギーの利用により大量に供給することができ、また、石炭脱硫や稀少金属回収に有用な鉄酸化細菌を高いエネルギー効率で大量に低コストで提供することができる。さらには、好気性化学独立栄養細菌に慣用の遺伝子操作技術を適用して有用物質産生遺伝子を導入した後に、本発明の高効率の培養を行うことにより、二酸化炭素を原料として酵素や医薬品等の有用物質をエネルギー効率良く、低コストで製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において使用される電気培養装置を模式的に示す図面である。
【図2】本発明の培養方法により達成される菌濃度を従来の方法のものと対比して示すグラフである。(○);本発明,(●)従来法。
【図3】電極素材が鉄イオンの電極反応に及ぼす影響を示すグラフである。(○);グラッシーカーボン電極(GC),(●);白金電極(Pt)。
【図4】電導度に対するpHの影響を示すグラフである。(●);鉄イオンあり(80mM),(○);鉄イオンなし。
【図5】pHが鉄イオンの電極反応に及ぼす影響を示すグラフである。
【図6】鉄酸化活性に対するpHの影響を示すグラフである。
【図7】菌濃度に対するpHの影響を示すグラフである。
【図8】比増殖速度に対する初期pHの影響を示すグラフである。
【図9】(A)はピーク電流に対するNa2 SO4 濃度の影響を示すグラフであり、そして(B)はピークセパレーションに対するNa2 SO4 濃度の影響を示すグラフである。(●);酸化電流ピーク,(○)還元電流ピーク,+は標準偏差。
【図10】菌体増殖(菌濃度)に対するNa2 SO4 濃度の影響を示すグラフである。+は標準偏差。
【図11】細菌の増殖効率に対する鉄イオン濃度の影響を示すグラフである。
【図12】鉄酸化活性に対するFe2+濃度の影響を示すグラフである。
【図13】鉄酸化活性に及ぼす培地の影響を示すグラフであり、(A)は新しい培地中、(B)は培養後の培地中での鉄酸化活性の酸素電極での電流減少を測定した結果を示す。矢印はFe2+の添加時点を示す(培地50mlに対して160mMのFe2+溶液を100μl添加)。
【図14】鉄酸化細菌の半連続培養の結果を示すグラフである。矢印は培地交換の時点を示す。
【図15】鉄酸化細菌の高濃度培養の結果を示すグラフである。(●);本発明(Fe;150mM,0V vs.Ag/AgCl),(○);通常培養(Fe;150mM),(△)Blake 等〔Appl. Environ. Microbiol. 60: 2704-2710 (1994)〕による電気培養(定電流制御)。
【図16】大型電解培養装置による鉄酸化細菌の電気培養の結果を示すグラフである。
【図17】大型電解培養装置による鉄酸化細菌の電気培養における2価鉄イオン(Fe2+)濃度と増殖効率の時間変化を示すグラフである。(●);Fe2+濃度,(○);増殖効率。

Claims (3)

  1. 鉄酸化細菌を該細菌のための電子供与体を含有する培地中で培養するための培養部と、前記培地を定電位電解し、酸化された電子供与体を前記細菌が利用し得る元の電子供与体に還元するための定電位電解手段とを備えた電解槽と、前記細菌に増殖するために十分な量の酸素を培地中に供給するための酸素供給手段として、培地中に酸素を微小形態で吹き込む微小気泡発生装置を備えた通気槽と、電解槽内の培地を通気槽を経て電解槽に循環させる培地循環手段とからなり、電解槽がイオン交換膜で二つの区画に仕切られていて、一方の区画内に対極と参照極を配置し、他方の区画内に作用極を配置してなり、電解槽の対極と参照極が配置された区画が培地循環手段によって通気槽と接続されていることを特徴とする鉄酸化細菌の培養装置。
  2. 子供与体が第一鉄イオン(Fe2+)であって、定電位電解が培地中の第二鉄イオン(Fe3+)を還元して第一鉄イオン(Fe2+)とすることである請求項1記載の鉄酸化細菌の培養装置。
  3. 請求項1又は2に記載の装置を用いて鉄酸化細菌を培養する方法。
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