JP6104005B2 - 水素細菌の代謝制御方法 - Google Patents

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本発明は、水素細菌の代謝制御方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、特にハイドロジェノバクター サーモフィラス(Hydrogenobacter thermophilus)遺伝子組換え株に適用して好適な代謝制御方法と、この方法を利用した有用物質の生産方法に関する。
大気中の二酸化炭素等の温室効果ガスの増加は、地球温暖化や気候変動等を引き起こす要因となり得ることから、地球規模の環境問題として重要視されている。例えば、電気事業においては、火力発電所から多量の二酸化炭素が排出される。このような排出二酸化炭素の回収処分方法として、水素細菌を利用した二酸化炭素固定法が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
水素細菌とは、水素(遊離水素)をエネルギー源とし、二酸化炭素を唯一炭素源として増殖可能な独立栄養生物である。水素細菌は増殖速度(炭酸同化速度)が速いことから、大量の二酸化炭素を固定・資源化する上で非常に有用であると考えられている。
電力中央研究所報告U92058
ところで、水素細菌の有用性をより向上させる上では、水素細菌の代謝を制御して、二酸化炭素固定産物として水素細菌により産生される代謝産物中の有用物質量を増大させることが有効であると考えられる。
そこで、本発明は、水素細菌の代謝を制御する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、水素細菌の代謝を制御することによって、有用物質を生産する方法を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、本願発明者が鋭意研究を行った結果、ハイドロジェノバクター サーモフィラス TK−6(Hydrogenobacter thermophilus TK-6)に対し、酸化体と還元体の両形態をとり得る電子媒体物質を介して電子を供給しながら培養を行うことによって、通常の培養を行う場合よりもアミノ酸、カルボン酸、アミン、ラクトン、リン酸エステル及びフラビンアデニンジヌクレオチドの産生を増大させる方向に代謝を制御できることを知見するに至った。
さらに、本願発明者が鋭意研究を行った結果、サーマス サーモフィラス(Thermus thermophilus)由来の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を導入したハイドロジェノバクター サーモフィラス TK−6(Hydrogenobacter thermophilus TK-6)の遺伝子組換え株に対し、酸化体と還元体の両形態をとり得る電子媒体物質を介して電子を供給しながら培養を行うことによって、通常の培養を行う場合よりも乳酸の産生を増大させる方向に代謝を制御できることを知見するに至った。
本願発明者は、上記知見から、サーマス サーモフィラス(Thermus thermophilus)由来の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を導入したハイドロジェノバクター サーモフィラス TK−6(Hydrogenobacter thermophilus TK-6)の遺伝子組換え株について、酸化体と還元体の両形態をとり得る電子媒体物質を介して電子を供給することによって、代謝を制御できる可能性が導かれることを知見するに至り、さらに種々検討を重ねて本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の水素細菌の代謝制御方法は、培地中の水素細菌に対し、酸化体と還元体の両形態をとり得る電子媒体物質を介して電子の供給を行いながら、水素と二酸化炭素と水素細菌の最終電子受容体として機能する物質とを与えて培養を行うようにしている。
ここで、本発明の水素細菌の代謝制御方法において、電子の供給は、培地に電子媒体物質を添加すると共に培地に電極を接触させて、電極に還元電位を印加することにより行うことが好ましい。
また、本発明の水素細菌の代謝制御方法において、電子媒体物質は、キノン類とすることが好ましい。
また、本発明の水素細菌の代謝制御方法において、水素細菌は、サーマス サーモフィラス(Thermus thermophilus)由来の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を導入したハイドロジェノバクター サーモフィラス TK−6(Hydrogenobacter thermophilus TK-6)の遺伝子組換え株である。
次に、本発明の有用物質の生産方法は、本発明の水素細菌の代謝制御方法を、サーマス サーモフィラス(Thermus thermophilus)由来の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を導入したハイドロジェノバクター サーモフィラス TK−6(Hydrogenobacter thermophilus TK-6)の遺伝子組換え株を用いて実施する工程を含むようにしている。これにより、乳酸を生産(増産)することができる。
本発明の水素細菌の代謝制御方法によれば、水素細菌の代謝を制御して、二酸化炭素固定産物として水素細菌により産生される代謝産物中の有用物質量を増大させることが可能となる。
また、本発明の有用物質の生産方法によれば、本発明の水素細菌の代謝制御方法を利用しているので、二酸化炭素固定産物として水素細菌により産生される代謝産物中の有用物質量を増大させることができる。したがって、二酸化炭素を資源(炭素源)とする水素細菌の代謝を利用した有用物質の生産効率を向上させることが可能となり、水素細菌の有用性をより向上させることが可能となる。
本発明の水素細菌の代謝制御方法の実施形態の一例を示す図である。 実施例にて使用した電気培養装置の構成概略図である。 Hydrogenobacter thermophilus TK-6の培養試験における電流値の経時変化を示す図である。 Hydrogenobacter thermophilus TK-6の培養試験における菌体密度と硝酸濃度の経時変化を示す図である。 Hydrogenobacter thermophilus TK-6とThermus thermophilus由来の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を導入したHydrogenobacter themophilus TK-6の遺伝子組換え株について、菌体密度の経時変化を比較した図である。 Hydrogenobacter thermophilus TK-6とThermus thermophilus由来の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を導入したHydrogenobacter thermophilus TK-6の遺伝子組換え株について、乳酸生産量を比較した図である。 Thermus thermophilus由来の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を導入したHydrogenobacter thermophilus TK-6の遺伝子組換え株の培養試験における電流値の経時変化を示す図である。 Thermus thermophilus由来の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を導入したHydrogenobacter thermophilus TK-6の遺伝子組換え株について、通電の有無による乳酸生産量を比較した図である。 Thermus thermophilus由来の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を導入したHydrogenobacter thermophilus TK-6の遺伝子組換え株について、通電した際に乳酸生産量が増加するメカニズムを示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1に、本発明の水素細菌の代謝制御方法の実施形態の一例を概念的に示す。本発明の水素細菌の代謝制御方法は、培地4中の水素細菌2に対し、酸化体と還元体の両形態をとり得る電子媒体物質5を介して電子の供給を行いながら、水素(H)と二酸化炭素(CO)と水素細菌の最終電子受容体として機能する物質(例えば、NO3−)とを与えて培養を行うようにしている。
図1に示す実施形態において、水素細菌2からの電子の供給は、培地(培養液)4に電極9を接触(浸漬)させて、電極9に還元電位を印加することにより行うようにしている。電極9に還元電位を印加することで、水素細菌2に酸化された電子媒体物質5が還元されて、水素細菌2への電気化学的な電子の供給を持続的に行うことができる。
本発明の水素細菌の代謝制御方法を適用する対象となる水素細菌は、水素(遊離水素)をエネルギー源とし、二酸化炭素を唯一炭素源として増殖可能な独立栄養生物であれば特に限定されるものではない。例示すると、Alcaligenes eutrophus (Cupriavidus necator), Alcaligenes hydrogenophilus, Alcaligenes ruhlandii, Alcaligenes latus, Alcaligenes paradoxus, Aquaspirillum autotrophicum, Azospirillum lipoferum, Calderobacterium hydrogenophilum, Derxia gummosa, Flavobacterium autothermophilum, Hydrogenobacter thermophilus, Microcyclus aquaticus, Microcyclus ebruneus, Paracoccus denitrificans, Pseudomonas facilis, Pseudomonas flava, Pseudomonas pseudoflava, Pseudomonas hydrogenovora, Pseudomonas hydrogenothermophila, Pseudomonas palleronii, Pseudomonas thermophila, Pseudomonas saccharophila, Renobacter vacuolatum, Rhizobium japonicum, Xanthobacter autotrophicus, Xanthobacter flavus, Arthrobacter spp., Bacillus schlegelii, Bacillus tusciae, Mycobacterium gordonae, Nocardia autotrophica, Nocardia opaca, Hydrogenovibrio marinus等が挙げられ、特にHydrogenobacter thermophilusが好適である。また、Hydrogenobacter thermophilusの中でも、特にHydrogenobacter thermophilus TK-6が好適である。Hydrogenobacter thermophilus TK-6は、増殖速度が速く(1.5時間で2倍に増殖)、二酸化炭素の固定能を有する微生物の中でも最高レベルの増殖速度を有している。尚、水素細菌は自然界の至る所から簡単に単離することのできる微生物であることから、本発明は入手が容易な細菌を利用して実施できるという利点もある。
ここで、水素細菌は、遺伝子組換えにより新たな機能が付加された遺伝子組換え体としてもよい。一般的に、細菌に所望の機能を付加すべく遺伝子組換えを行うと、酸化還元のバランスが崩れ、当該所望の機能を十分に発揮できなかったり、あるいは当該所望の機能は発揮できるものの増殖が起こらなくなること等がある。本発明では、遺伝子組換えがされた水素細菌に対して電子を供給することで、遺伝子組換え体の酸化還元バランス崩壊を抑制し、遺伝子組換えにより付加された所望の機能を十分に発揮させつつ、増殖が起こらなくなること等を防ぐことができる。本発明の水素細菌の代謝制御方法には、このような遺伝子組換えがされた水素細菌に対する代謝制御も包含される。
遺伝子組換えにおいて水素細菌に導入される遺伝子としては、例えば乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子、アルコールデヒドロゲナーゼ等が挙げられるが、特に乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子が好適である。本願発明者の実験によると、サーマス サーモフィラス(Thermus thermophilus)由来の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を導入することで乳酸産生能を向上させたハイドロジェノバクター サーモフィラス TK−6(Hydrogenobacter thermophilus TK-6)の遺伝子組換え株を本発明の代謝制御方法に供することによって、乳酸生産量をさらに増大させることが可能であることが確認されている。
水素細菌2の培養のための培地4は、水素細菌2の培地として一般的なものを、水素細菌2の種類に応じて適宜選択すればよい。また、水素と二酸化炭素の供給量及び培養温度についても、使用する水素細菌2の種類に応じて適宜選択すればよい。
水素細菌2の最終電子受容体として機能する物質は、水素細菌2に対する好ましい培養環境の条件(好気であるか嫌気であるか)に応じて適宜選択される。即ち、培養環境を好気条件とする場合には、最終電子受容体として機能する物質を、培地4にバブリング等により供給される酸素とすればよい。培養環境を嫌気条件とする場合には、最終電子受容体として機能する物質を、例えば硝酸イオン等として水素細菌2に硝酸呼吸を行わせればよい。尚、Hydrogenobacter thermophilusは、培養環境を好気条件と嫌気条件のいずれとしても、生育・増殖させることが可能である。
電子媒体物質5としては、酸化体と還元体の両形態をとり得る物質であり、水素細菌2を失活させることなく、水素細菌2により酸化され得る物質を適宜選択すればよい。例えば、アントラキノン誘導体(アントラキノン−1−スルホン酸ナトリウム、アントラキノン−1,5−ジスルホン酸ジナトリウム、アントラキノン−1,8−ジスルホン酸ジカリウム、アントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム、1−アミノ−4−ブロモアントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム及びアントラキノン−2,6−ジスルホン酸ジナトリウム等)及び2−メチル−1,4−ナフトキノン等のキノン類、メチルビオロゲン等の農薬系物質、インジゴカルミン、レマゾールブリリアントブルー、クリスタルバイオレット、2,6−ジクロロフェノール−インドフェノール、アルシアンブルー、サフラニン及びチオニン等の色素系物質、ヘキサシアノ鉄酸カリウム、鉄イオン錯体(鉄(III)−EDTA等)、Mn(II)Cl、ヨウ化カリウム及びセレン酸等の金属系物質等からなる群から選択される1種以上を用いることができ、これらの中でも特にキノン類の使用が好適である。
電子媒体物質5の添加量は、電子媒体物質5の種類、使用する水素細菌2の種類、菌体密度等に応じてその最適量が適宜変化するが、概ね0.02〜2mM、好適には0.05〜1mM、より好適には0.1〜0.5mM、さらに好適には0.2mM程度である。電子媒体物質5の添加量が少なすぎると水素細菌2への電子の供給が十分に起こらず、代謝制御効果が得られにくくなる。また、電子媒体物質5の添加量が多すぎると、電子媒体物質5の種類によっては水素細菌2の活性が阻害されることもあり得る。
電極9としては、例えば炭素板やグラッシーカーボン等の炭素電極、白金電極等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
水素細菌2は、還元型の電子媒体物質5を酸化して酸化型の電子媒体物質5に変換する(換言すると、還元型の電子媒体物質5から電子を引き抜いて酸化型の電子媒体物質5に変換する)機能を有している。したがって、電極9に還元電位を印加することで、酸化型の電子媒体物質5に電子が供給されて還元型の電子媒体物質5に変換される。これら一連の流れにより、水素細菌2への電気化学的な電子の供給が持続的に起こり、水素細菌2の代謝が制御される。
ここで、電極9に印加する還元電位の値は、電子媒体物質5のサイクリックボルタモグラムに基づいて求めることができる。例えば、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸ジナトリウムを用いる場合には、電極9に−0.6V〜−0.8V程度(銀・塩化銀参照電極基準)の電位を印加すればよい。
本発明の水素細菌の代謝制御方法により水素細菌2の代謝を制御することで、水素細菌2の代謝産物中に含まれる有用物質の割合を増大させることができる。具体的には、水素細菌2をHydrogenobacter thermophilusとする場合には、アミノ酸、カルボン酸、アミン、ラクトン、リン酸エステル及びフラビンアデニンジヌクレオチドからなる群から選択される1種以上の有用物質の生産量を増大させることができる。詳細には、例えば以下に示す有用物質の生産量増大させることができる。
(A)アミノ酸
・γ−アミノ酪酸(GABA)
・アスパラギン酸
・トリプトファン
・オルニチン
・アルギニン
・グルタミン酸
(B)カルボン酸
・5−オキソヘキサン酸
・2−ヒドロキシ吉草酸
・乳酸
・m−トルイル酸
・2−フランカルボン酸
・安息香酸
・リンゴ酸
・3−フェニルプロピオン酸
(C)アミン
・エタノールアミン
・トリエタノールアミン
(D)ラクトン
・メバロノラクトン
(E)リン酸エステル
・CMP(シチジル酸)
・UMP(ウリジル酸)
・GMP(グアニル酸)
・GDP(グアノシン二リン酸)
・AMP(アデノシン一リン酸)
・トレハロース 6−リン酸
・ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸
(F)その他
・フラビンアデニンジヌクレオチド
上記代謝産物のうち、γ−アミノ酪酸(GABA)、アスパラギン酸、トリプトファン、オルニチン、アルギニン、グルタミン酸、CMP、GMPは、例えば食品添加物やサプリメント原料として有用である。
また、2−ヒドロキシ吉草酸は向精神薬等として有用である。乳酸は生分解性プラスチックであるポリ乳酸の原料等として有用である。m−トルイル酸は昆虫駆除剤DEETの前駆体等として有用である。2−フランカルボン酸は保存料、殺菌剤及び香料原料等として有用である。安息香酸は保存料、並びにフェノール及び可塑剤合成原料等として有用である。リンゴ酸は酸味料、pH調整剤、乳化剤及び金属表面の洗浄剤等として有用である。
また、エタノールアミンは抗ヒスタミン剤の部分構造であり、酸性ガスの吸着材、界面活性剤及び乳化剤等として有用である。トリエタノールアミンは、pH調整剤やキレート剤等として有用である。メバロノラクトンは化粧品原料、食品添加物及びイソプレノイドの合成原料等として有用である。
その他の代謝産物についても、有用物質合成の前駆体や誘導物質として有用である。
ここで、上記代謝産物のうち、以下の代謝産物については、培養開始から対数増殖期初期まで本発明の代謝制御方法を適用した場合、培養開始から対数増殖期中期まで本発明の代謝制御方法を適用した場合のいずれにおいても、本発明の代謝制御方法を適用しない場合と比較して菌体当たりの生産量が向上することが確認されている。したがって、以下の代謝産物については、菌数の増加分を考慮した場合には、培養開始から対数増殖期中期まで本発明の代謝制御方法を適用して生産を行うことが好適であると言える。
(A)アミノ酸
・γ−アミノ酪酸(GABA)
・グルタミン酸
(B)カルボン酸
・5−オキソヘキサン酸
・2−ヒドロキシ吉草酸
・乳酸
・m−トルイル酸
・2−フランカルボン酸
・安息香酸
(C)アミン
・トリエタノールアミン
(E)リン酸エステル
・CMP(シチジル酸)
(F)その他
・フラビンアデニンジヌクレオチド
また、培養開始から対数増殖期初期までの段階で本発明の代謝制御方法を適用することで、以下の代謝産物(特にアミノ酸)を好適に生産することができる。
(A)アミノ酸
・アスパラギン酸
・トリプトファン
・オルニチン
・アルギニン
(C)アミン
・エタノールアミン
また、培養開始から対数増殖期中期までの段階で本発明の代謝制御方法を適用することで、以下の代謝産物(特にリン酸エステル)を好適に生産することができる。
(B)カルボン酸
・リンゴ酸
・3−フェニルプロピオン酸
(D)ラクトン
・メバロノラクトン
(E)リン酸エステル
・UMP(ウリジル酸)
・GMP(グアニル酸)
・GDP(グアノシン二リン酸)
・AMP(アデノシン一リン酸)
・トレハロース 6−リン酸
・ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸
尚、対数増殖期初期とは、具体的には、菌体密度が1×108 cells/mlに到達した時間を指し、例えば培養開始から6〜11時間、好適には10時間程度経過後である。また、対数増殖期中期とは、具体的には、菌体密度が2×108 cells/mlに到達した時間を指し、例えば培養開始から11〜14時間、好適には11.5時間程度経過後である。
また、水素細菌2を、サーマス サーモフィラス(Thermus thermophilus)由来の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を導入したハイドロジェノバクター サーモフィラス TK−6(Hydrogenobacter thermophilus TK-6)の遺伝子組換え株とした場合には、乳酸の生産量(さらには酢酸の生産量)を増大させることができる。
上記有用物質は、水素細菌の菌体及び/又は培地から回収し、定法により適宜分離・精製等されて利用に供される。
上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では、電極9を用いて電気化学的に電子媒体物質5を還元することにより、水素細菌2への持続的な電子の供給を可能としていたが、水素細菌2への持続的な電子の供給は、電気化学的な手法によるものには限定されない。例えば、電子媒体物質5の還元体を定期的に培地に投入することによって、水素細菌2への電子媒体物質5を介した電子の供給を持続的に行いながら培養を実施し、水素細菌2の代謝制御を行うことも可能である。
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(使用菌体)
1.ハイドロジェノバクター サーモフィラス TK−6
東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻応用微生物研究室より分譲を受けたハイドロジェノバクター サーモフィラス TK−6(Hydrogenobacter thermophilus TK-6)を水素細菌として用いた。以降の説明では、この水素細菌を単に「TK−6」と呼ぶこともある。尚、TK−6は、理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室からも入手可能である。
2.TK−6 pMKT201KLDH
以下に説明する手法により、サーマス サーモフィラス由来LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)導入株であるTK−6 pMKT201KLDHを作製した。クローニングベクターpEX18T (Accession No. AF004910) のマルチクローニングサイトのEcoRI/SacIサイトにrpoDプロモーター (TK-6株由来 HTH_PproD) を挿入し、その下流のSacI/SalIサイトにThermus thermophilus HB27由来 乳酸脱水素酵素遺伝子 (Accession No. TTC0748)、PstIサイトにカナマイシン耐性遺伝子 (Accession number AB121443) およびPstI/SphIサイトに相同組み換えに必要であるHTH_1029 (TK-6株由来 sensor protein) 断片を挿入することで組換え用プラスミドpMKT201KLDHを作製した。このpMKT201KLDHを大腸菌S17-1 (DSM9079) を介した接合伝達によってTK-6株に導入し、相同組み換えによりTK-6株ゲノム上に乳酸脱水素酵素遺伝子を組み込むことで組換え株TK-6 pMKT201KLDHを作製した。以降の説明では、この遺伝子組換え株を単に「TK−6組換え株」と呼ぶこともある。尚、TK−6組換え株は、乳酸産生能を恒常発現し、カナマイシン(Km)耐性は500μg/mLであった。
(培地)
TK−6及びTK−6組換え株の培養に使用した培地の組成を以下に示す。尚、後述する培養試験(実施例1及び2)においても、以下の組成を有する培地を使用した。
[培地組成(脱イオン水1L中)]
(NHSO 3g
KHPO 1g
HPO 2g
NaCl 0.25g
FeSO・7HO 0.014g
MgSO・7HO 0.5g
CaCl 0.03g
微量元素溶液 500μL
[微量元素溶液(脱イオン水1L中)]
MoO 4mg
ZnSO・7HO 28mg
CuSO・5HO 2mg
BO 4mg
MnSO・5HO 4mg
CoCl・6HO 4mg
TK−6及びTK−6組換え株は、前培養してから後述する培養試験に供した。即ち、上記培地を使用し、嫌気条件下(培養容器であるガラスバイアル瓶内の気相部分のガス組成をH:N:CO=75:10:15(1.5kPa)に制御)にて、70℃で振とう培養してから、後述する培養試験に供した。
(実施例1)
TK−6に対し、電子媒体物質を介して電気化学的に電子を供給することによる影響について検討した。換言すると、TK−6細胞内の電子の流れ(酸化還元バランス)を、電気化学的に変化させることによる影響について検討した。
本実施例においては、TK−6に対し、電子媒体物質を介した電子の供給を行うために、図2に示す電気培養装置1を使用した。
図2に示す電気培養装置1は、その側面に2つのサンプル採取口20a及び20bを備える250mL容ガラスバイアル瓶(Duran)(以下、容器20と呼ぶ)を培養槽としたものである。容器20には蓋30を取り付けた。蓋30の上面30aにはシリコーンゴム栓を設けて、配線や電極、管を通した際の容器20の密閉性を確保した。サンプル採取口20a及び20bのキャップについても同様とした。
対極槽としての小容器21は、イオン交換膜6を成型して袋状(以下、袋21と呼ぶこともある)とした。具体的には、陽イオン交換膜(デュポン製、ナフィオンK)をヒートシーラーで熱圧着により加工し上部はシリコン系接着剤で埋めて密閉した。陽イオン交換膜6の片側面積は21.25cmに相当するものとした。袋21の内部には電解液4aを収容すると共に対電極10を収容して電解液4aに浸した。電解液4aは、上記培地とした。
容器20に培養液4(上記培地)を230mL収容し、培養液4に小容器21と作用電極9を浸した。作用電極9と対電極10の配線は、蓋30に設けたシリコーンゴム栓を介して容器20の外側に引き出した。銀・塩化銀参照電極11(RE−1B、BAS株式会社)は容器20のサンプル採取口20aのキャップに突き刺して培養液4と接触させた。作用電極9と対電極10と参照電極11は電源12に結線し、作用電極9の電位を3電極方式で制御するようにした。また、容器内には撹拌子40を投入し、培養期間中は培養液4をホットプレートスターラー41で加熱しながら撹拌するようにした。
ガス供給源60から供給されたガスは、ガスブレンダー61によりH:N:CO=75:10:15(体積比)に制御した後、滅菌用フィルター(製品名:ポリベントディスク型、GEヘルスケアジャパン)62を介して容器20のサンプル採取口2bから供給した。また、容器20のヘッドスペースと容器20の外とを連通する配管63からヘッドスペースに滞留するガスを排出し、前段の2つのトラップ66、67で当該ガス中の蒸気を捕捉した後、活性炭を充填したトラップ68を介して屋外に排気した。
作用電極9と対電極10は共に炭素板とした。作用電極9のサイズは7.5cm×2.5cmとした。対電極10のサイズは6.0cm×1.0cmとした。
電子媒体物質5は、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸ジナトリウム(以下、AQDSと呼ぶ)とし、培養液4中の濃度を0.2mMとした。
また、最終電子受容体は硝酸とし、培養液4中に、NaNOを60mMとなるように添加した。
培養温度は70℃とした。
以下の5条件で通電試験を実施した。通電有りの場合、作用電極9への印加電位は−0.6Vとした。通電無しの場合には、作用電極9への電位の印加は行わなかった。
(a)TK−6有り、AQDS無し、通電有り
(b)TK−6有り、AQDS有り、通電有り
(c)TK−6無し、AQDS有り、通電有り
(d)TK−6無し、AQDS無し、通電有り
(e)TK−6有り、AQDS有り、通電無し
まず、(a)〜(d)の培養試験中における電流値の経時変化を図3に示す。(b)の条件、即ちTK−6とAQDSの両者が存在するときにのみ、電流が検出された。このことから、AQDSを介して作用電極9からTK−6細胞内に電子が供給されたことが明らかとなった。
次に、(b)と(e)の培養試験中における菌体密度の経時変化と硝酸濃度の経時変化を図4に示す。図中、◆が(b)の培養試験中の菌体密度変化を示し、■が(e)の培養試験中の菌体密度変化を示し、▲が(b)の培養試験中の硝酸濃度変化を示し、×が(e)の培養試験中の硝酸濃度変化を示している。図4に示される結果から、通電及び非通電時でTK−6の増殖状態はほぼ変わらないことが明らかとなった。このことから、供給された電子は増殖ではなく、代謝や呼吸に用いられているものと推定された。
次に、以下の3種類の試料を採取し、メタボローム解析に供した。
・試料1:培養試験(e)において、菌体密度が2×10cells/mLに達した時
に培養液を5mL回収
・試料2:培養試験(b)において、菌体密度が1×10cells/mLに達した時
(対数増殖期初期)に培養液を10mL回収
・試料3:培養試験(b)において、菌体密度が2×10cells/mLに達した時
(対数増殖期中期)に培養液を5mL回収
回収した培養液に含まれる菌体を吸引ろ過装置を用いて、フィルター(Millipore Isopore Membrane Filter HTTP 0.4μm pore 47mm diameter, Millipore)上に回収した。フィルター上に回収した菌体を10mLのMilliQ水で2回洗浄し、内部標準(H3304−1002,HMT)を含有するメタノール(LC/MS用,Wako)2mLを入れた密閉シャーレにフィルターの菌体付着面を下にしてフィルターをメタノールに浸漬させた。メタノールに浸漬させたフィルターを30秒、超音波処理を行い、代謝産物抽出液を得た。回収した菌数は試験1〜3のいずれにおいても、1×10cellsであった。
回収した菌体は、1600μLのクロロホルム及び640μLのMilliQ水を加えて撹拌し、遠心分離(2300×g、4℃、5分)を行った。遠心分離後、水層を限外ろ過チューブ(MILLIPORE、ウルトラフリーMC PLHCC HMT 遠心式フィルターユニット 5kDa)に325μL×4本移し取った。これを遠心(9100×g、4℃、120分)し、限外ろ過処理を行った。ろ液を乾固させ、再び50μLのMilli−Q水に溶解し、代謝産物の測定に供した。
代謝産物の分析はCE−TOF MS system(Agilent)を使用し、陽イオン性物質および陰イオン性物質をカチオンモード、アニオンモードでそれぞれ測定した。カチオンモードとアニオンモードの測定条件を以下に示す。
[カチオンモードの測定条件]
Run buffer : Cation Buffer Solution (p/n : H3301-1001)
Rinse buffer : Cation Buffer Solution (p/n : H3301-1001)
Sample injection : Pressure injection 50 mbar, 10 sec
CE voltage : Positive, 27 kV
MS ionization : ESI Positive
MS capillary voltage : 4,000 V
MS scan range : m/z 50-1,000
Sheath liquid : HMT Sheath Liquid (p/n : H3301-1020)
[アニオンモードの測定条件]
Run buffer : Anion Buffer Solution (p/n : H3302-1021)
Rinse buffer : Anion Buffer Solution (p/n : H3302-1022)
Sample injection : Pressure injection 50 mbar, 25 sec
CE voltage : Positive, 30 kV
MS ionization : ESI Negative
MS capillary voltage : 3,500 V
MS scan range : m/z 50-1,000
Sheath liquid : HMT Sheath Liquid (p/n : H3301-1020)
CE−TOF MSで検出されたピークは自動積分ソフトウェアのMasterHands ver.2.9.0.9(慶應義塾大学開発)を用いて自動抽出し、ピーク情報として質量電荷比(m/z)、泳動時間(Migration time:MT)とピーク面積値を得た。得られたピーク面積値は下記の[式1]を用いて相対面積値に変換した(菌体試料については、採取細胞数による補正を行った。つまり、下記の式[1]中の試料数を採取細胞数として計算した。)。また、これらのデータにはNaやKなどのアダクトイオン及び、脱水、脱アンモニウムなどのフラグメントイオンが含まれているので、これらの分子量関連イオンを削除した。しかし、物質特異的なアダクトやフラグメントも存在するため、すべてを精査することはできなかった。精査したピークについて、m/zとMTの値をもとに、各試料間のピークの照合・整列化を行った。
相対面積値=目的ピークの面積値/(内部標準物質の面積値×試料量)・・・[式1]
検出されたピークに対してm/zとMTの値をもとにHMT代謝物質データベースに登録された全物質との照合、検索を行った。検索のための許容誤差はMTで±0.5min、m/zでは±10ppmとした。
質量誤差(ppm)=(実測値−理論値×10)/実測値
主要代謝産物として108物質について定量解析を行った。検量線は内部標準物質により補正したピーク面積を用い、各物質について100μMの一点検量(内部標準物質200μM)として濃度を算出した。
メタボローム解析を行った結果、79ピーク(カチオン46、アニオン33)を検出し、このうち42物質(カチオン26、アニオン16)を定量可能であった。
非通電時よりも通電時(培養初期)の方が増加した代謝産物を表1に示す。尚、表1中、「1<」は非通電時には検出されず、通電時においてのみ検出された物質である。また、太字とした物質は、培養中期まで通電を行った場合にも増産が確認された物質である。
具体的には、以下の有用物質の生産量が増大した。
・GABA(γ−アミノ酪酸)
・5−Oxohexanoic acid(5−オキソヘキサン酸)
・FAD_divalent(フラビンアデニンジヌクレオチド(二価))
・CMP(シチジル酸)
・Asp(アスパラギン酸)
・2−Hydroxyvaleric acid(2−ヒドロキシ吉草酸)
・Ethanolamine(エタノールアミン)
・Lactic acid(乳酸)
・m−Toluic acid(m−トルイル酸)
・Triethanolamine(トリエタノールアミン)
・2−Furoic acid(2−フランカルボン酸)
・Trp(トリプトファン)
・Ornithine(オルニチン)
・Arg(アルギニン)
・Benzoic acid(安息香酸)
・Glu(グルタミン酸)
また、非通電時よりも通電時(培養中期)の方が増加した代謝産物を表2に示す。
具体的には、以下の有用物質の生産量が増大した。
・GABA(γ−アミノ酪酸)
・UMP(ウリジル酸)
・5−Oxohexanoic acid(5−オキソヘキサン酸)
・Mevalonolactone(メバロノラクトン)
・FAD_divalent(フラビンアデニンジヌクレオチド(二価))
・CMP(シチジル酸)
・2−Hydroxyvaleric acid(2−ヒドロキシ吉草酸)
・m−Toluic acid(m−トルイル酸)
・Benzoic acid(安息香酸)
・GMP(グアニル酸)
・Lactic acid(乳酸)
・Malic acid(リンゴ酸)
・NADP(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)
・Trehalose 6−phosphate(トレハロース 6−リン酸)
・GDP(グアノシン二リン酸)
・2−Furoic acid(2−フランカルボン酸)
・AMP(アデノシン一リン酸)
・Triethanolamine(トリエタノールアミン)
・3−Phenylpropionic acid(3−フェニルプロピオン酸)
・Glu(グルタミン酸)
以上の結果から、通電を行う期間を、培養開始時から対数増殖期初期及び中期までのいずれとした場合においても、γ−アミノ酪酸、5−オキソヘキサン酸、フラビンアデニンジヌクレオチド(二価)、シチジル酸、2−ヒドロキシ吉草酸、乳酸、m−トルイル酸、トリエタノールアミン、2−フランカルボン酸、安息香酸及びグルタミン酸を増産可能であることが明らかとなった。したがって、これらの有用物質を生産する際には、微生物数がより多くなっている対数増殖期中期まで通電を行うことで、生産量をより向上させることができると考えられた。
また、通電を行う期間を、培養開始時から対数増殖期初期までとすることで、上記有用物質に加えて、さらにアスパラギン酸、エタノールアミン、トリプトファン、オルニチン及びアルギニンを増産可能であることが明らかとなった。
さらに、通電を行う期間を、培養開始時から対数増殖期中期までとすることで、上記有用物質に加えて、さらにウリジル酸、メバロノラクトン、グアニル酸、リンゴ酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、トレハロース 6−リン酸、グアノシン二リン酸、アデノシン一リン酸及び3−フェニルプロピオン酸を増産可能であることが明らかとなった。
尚、乳酸の生産量に着目した場合、非通電時では1536±591pmol/10cells、通電時(対数増殖期初期まで)では3254±146pmol/10cells、通電時(対数増殖期中期まで)3043±467pmol/10cellsであった。したがって、菌体を回収して乳酸を回収する場合、乳酸回収量を向上させるという点においては、対数増殖期中期まで通電を行うことが効果的であると考えられた。
(実施例2)
TK−6組換え株に対し、電子媒体物質を介して電気化学的に電子を供給することによる影響について検討した。換言すると、TK−6組換え株の細胞内の電子の流れ(酸化還元バランス)を、電気化学的に変化させることによる影響について検討した。
実験に使用した電気培養装置は実施例1と同様とした。培養試験条件は、以下の(a)〜(c)以外は、実施例1と同様とした。通電有りの場合、作用電極9への印加電位は−0.8Vとした。通電無しの場合には、作用電極9への電位の印加は行わなかった。
(a)TK−6組換え株有り、AQDS有り、通電有り
(b)TK−6組換え株有り、AQDS有り、通電無し
(c)TK−6有り、AQDS有り、通電無し
まず、(b)と(c)の培養試験結果を比較し、乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の導入による生育への影響について検討した結果を図5に示す。図中、「wt」がTK−6の実験結果であり、「201」がTK−6組換え株の実験結果である。図5に示す結果から、TK−6とTK−6組換え株の増殖傾向に差異は見られず、TK−6への乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の導入による生育への影響はないと判断された。
次に、(b)と(c)の培養試験において、培養開始後 33時間のタイミングで菌体を回収し、乳酸生産量を測定した。乳酸生産量の測定は、以下の方法により実施した。菌体を超音波処理後、Lactate Assay Kit (Biovision) を用い、乳酸の存在に起因する吸光度(570 nm)を分光光度計(Hitachi U-3010 spectrophotometer)にて測定することにより乳酸の定量を行った。結果を図6に示す。図6に示す結果から、乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の導入されたTK−6組換え株において、TK−6よりも乳酸の生産量が増大していることが明らかとなった。
次に、(a)の培養試験中における電流値の経時変化を図7に示す。電流が検出されたことから、AQDSを介して作用電極9からTK−6組換え株の細胞内に電子が供給されていることが明らかとなった。
次に、(a)の培養試験において、(b)と(c)の培養試験における乳酸生産量測定のための菌体の回収タイミングと同じタイミングで菌体を回収し、乳酸生産量を測定した。(a)〜(c)の培養試験における乳酸生産量の測定結果を図8に示す。TK−6組換え株に通電を行うことで、非通電の場合の10倍程度、乳酸生産量が向上することが確認された。この結果から、細胞内への電子供給によって、遺伝子組換えされた水素細菌についても代謝を制御し得ることが明らかとなった。
TK−6組換え株に通電を行うことによる乳酸発生量の増加メカニズムを図9に示す。電極から供給される電子が、電子媒体物質(AQDS)を介してTK−6組換え株の細胞内でNADをNADHに還元する還元力として機能し、これが乳酸生産量の増大に寄与しているものと推定される。
2 水素細菌
4 培地(培養液)
5 電子媒体物質
9 電極(作用電極)

Claims (4)

  1. 培地中の水素細菌に対し、酸化体と還元体の両形態をとり得る電子媒体物質を介して電子の供給を行いながら、水素と二酸化炭素と前記水素細菌の最終電子受容体として機能する物質とを与えて培養を行い、前記水素細菌は、サーマス サーモフィラス(Thermus thermophilus)由来の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を導入したハイドロジェノバクター サーモフィラス TK−6(Hydrogenobacter thermophilus TK-6)の遺伝子組換え株であることを特徴とする水素細菌の代謝制御方法。
  2. 前記電子の供給は、前記培地に前記電子媒体物質を添加すると共に前記培地に電極を接触させて、前記電極に還元電位を印加することにより行う、請求項1に記載の水素細菌の代謝制御方法。
  3. 前記電子媒体物質は、キノン類である、請求項1又は2に記載の水素細菌の代謝制御方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の水素細菌の代謝制御方法を実施する工程を含む、乳酸の生産方法。
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