JP4098486B2 - 燃料電池システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は燃料電池システムに係り、特に酸化剤極から排出される排ガス中の水分を有効利用できる燃料電池システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、燃料が有する化学エネルギを熱エネルギや機械エネルギを経由することなく直接電気エネルギに変換するため、高いエネルギ変換効率が実現可能な発電装置として知られている。
【0003】
この燃料電池は、酸化剤極に酸素を含有する酸化剤ガスの供給を受け、燃料極に水素を含有する燃料ガスの供給を受ける。燃料極では(1)式に示す電気化学反応により水素が電離して水素イオンと電子になる。電子は外部回路を通じて酸化剤極に到達し、水素イオンは酸化剤極まで電解質中を移動する。酸化剤極では、(2)式に示す電気化学反応により水が生じる。燃料電池全体としては、(3)式の化学反応が生じたことになる。
【0004】
【数1】
H2→2H++2e− …(1)
(1/2)O2+2H++2e−→H2O …(2)
H2+(1/2)O2→H2O …(3)
このように、燃料電池における電気化学反応では、水素と酸素から水が生じる。また燃料電池の電解質層の乾燥によるイオン伝導性の低下を防ぐ目的で、燃料ガスや酸化ガスには水蒸気が加えられている。このため、酸化剤極出口から排出される排ガス中には、加湿された水分に加えて、電気化学反応による生成水が含まれている。通常、この排ガス中の水分は、酸化剤極の出口に備えられた水回収用の熱交換器(コンデンサ)により水分を凝縮させて回収し、加湿器で消費した水分を補うべく再循環させている。
【0005】
このような従来技術としては、例えば特開2000−30727号公報記載の燃料電池システムが知られている。この技術によれば、燃料電池スタックから排出される空気中の水蒸気を回収する水回収装置を設け、水供給系のタンクの水量に応じて、水回収装置の電動冷却ファンをオン・オフ制御している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
燃料電池システムを車両に搭載するためには、燃料電池システム中のかなりの重量及び容積を占める燃料電池本体を車両の床下など安全な位置に配置する必要がある。また燃料電池本体の酸化剤極から排出された排ガス中の水分を熱交換器(コンデンサ)によって回収し、この回収された水分を加湿器に供給するための純水タンクに戻す必要がある。上記のことを考慮し、さらに車両搭載性を考慮すると、必然的に、純水タンクの上部に熱交換器を配置することとなる。このため、燃料電池本体が床下近傍で、かつ、熱交換器が燃料電池本体よりも高い位置にあるため、燃料電池システムの運転状態によっては、燃料電池本体の酸化剤極から排出される生成水と水分を含む排ガス中の水分が熱交換器へ至る配管中で凝縮して、溜まる可能性がある。このため、溜まった純水を純水供給タンクに戻すために、わざわざ水ポンプなどを設置しなければならないという問題点があった。
【0007】
また、燃料電池本体の酸化剤極から排出される排ガスから回収された純水は、比較的高温となっているが、これを直接純水タンクに戻したのでは、この熱エネルギーを利用できないという問題点があった。
【0008】
以上の問題点に鑑み、本発明の目的は、燃料電池本体と、燃料電池から水回収用の熱交換器へ至る配管内に溜まる水を、ポンプ等を設けることなく純水タンクへ回収することができる燃料電池システムを提供することである。
【0009】
また本発明の目的は、燃料電池本体の酸化剤極から排出される排ガスから回収された高温の純水が持つ熱エネルギーを利用し、加湿器を小型化することができる燃料電池システムを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、電解質膜を挟んで燃料極と酸化剤極とが対設された燃料電池本体と、所望の流量及び圧力で水素を含む燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、空気を圧縮して所望の流量及び圧力で吐出することができる空気コンプレッサと、該空気コンプレッサから吐出された圧縮空気を冷却する空気冷却器と、該空気冷却器で冷却された空気及び前記燃料ガスを密閉型純水タンクから供給された純水でそれぞれ加湿して前記燃料電池本体に供給するための加湿器と、前記燃料電池本体の酸化剤極出口から排出される排ガスを冷却して水分を回収する熱交換器と、前記燃料電池本体の酸化剤極出口と前記熱交換器とを連通する排ガス流路の下方に配設された水回収用チャンバと、該水回収用チャンバと前記排ガス流路との間を開閉する第1の開閉バルブと、を備え、前記空気冷却器と前記加湿器とを接続する空気流路上に、前記水回収用チャンバを経由する流路と該水回収用チャンバをバイパスするバイパス流路とを切り換える流路切換弁を配設し、該流路切換弁が前記水回収用チャンバを経由する流路に切り換えているとき、前記空気冷却器で冷却された空気が前記水回収用チャンバ内で加湿された後に前記加湿器で加湿されることを要旨とする燃料電池システムである。
【0012】
上記目的を達成するため、請求項2記載の発明は、請求項1記載の燃料電池システムにおいて、前記密閉型純水タンクと前記水回収用チャンバとの間を開閉する第2の開閉バルブを備えたことを要旨とする。
【0013】
上記目的を達成するため、請求項3記載の発明は、請求項2記載の燃料電池システムにおいて、前記水回収用チャンバから前記燃料電池システム外へ余分な水を排出する第3の開閉バルブを備えたことを要旨とする。
【0014】
上記目的を達成するため、請求項4記載の発明は、請求項3記載の燃料電池システムにおいて、前記水回収用チャンバの水位を検知する第1の水位センサを備えたことを要旨とする。
【0015】
上記目的を達成するため、請求項5記載の発明は、請求項4記載の燃料電池システムにおいて、前記第1の水位センサが検出した前記水回収用チャンバ内の水位が所定値以上の場合には、前記第1、第2、及び第3の開閉バルブを全て閉じる一方、前記流路切換弁を前記水回収用チャンバを経由する流路に切り換えて、前記水回収用チャンバで加湿を行った空気を前記加湿器に流入させることを要旨とする。
【0016】
上記目的を達成するため、請求項6記載の発明は、請求項4記載の燃料電池システムにおいて、前記第1の水位センサが検出した前記水回収用チャンバ内の水位が所定値未満の場合には、前記第1の開閉バルブを開き、前記第2及び第3の開閉バルブを閉じる一方、前記流路切換弁を前記水回収用チャンバをバイパスするバイパス流路に切り換えて、前記水回収用チャンバを通過しない空気を前記加湿器に流入させることを要旨とする。
【0017】
上記目的を達成するため、請求項7記載の発明は、請求項4記載の燃料電池システムにおいて、前記密閉型純水タンクの水位を検出する第2の水位センサを備え、前記第1の水位センサが検出した前記水回収用チャンバ内の水位が所定値以上で、かつ前記第2の水位センサが検出した前記密閉型純水タンクの水位が所定値未満の場合には、前記第1、及び第3の開閉バルブを閉じ、前記第2の開閉バルブを開く一方、前記流路切換弁を前記水回収用チャンバを経由する流路に切り換えて、前記空気コンプレッサの吐出圧力により、前記水回収用チャンバから前記密閉型純水タンクへ水を移送することを要旨とする。
【0018】
上記目的を達成するため、請求項8記載の発明は、請求項4記載の燃料電池システムにおいて、前記密閉型純水タンクの水位を検出する第2の水位センサを備え、前記第1の水位センサが検出した前記水回収用チャンバ内の水位が所定値以上で、かつ前記第2の水位センサが検出した前記密閉型純水タンクの水位が所定値以上の場合には、前記第1、及び第2の開閉バルブを閉じ、前記第3の開閉バルブを開く一方、前記流路切換弁を前記水回収用チャンバを経由する流路に切り換えて、前記空気コンプレッサの吐出圧力により、前記水回収用チャンバから余分な水を燃料電池システム外へ排出することを要旨とする。
【0019】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、電解質膜を挟んで燃料極と酸化剤極とが対設された燃料電池本体と、所望の流量及び圧力で水素を含む燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、空気を圧縮して所望の流量及び圧力で吐出することができる空気コンプレッサと、該空気コンプレッサから吐出された圧縮空気を冷却する空気冷却器と、該空気冷却器で冷却された空気及び前記燃料ガスを密閉型純水タンクから供給された純水でそれぞれ加湿して前記燃料電池本体に供給するための加湿器と、前記燃料電池本体の酸化剤極出口から排出される排ガスを冷却して水分を回収する熱交換器と、前記燃料電池本体の酸化剤極出口と前記熱交換器とを連通する排ガス流路の下方に配設された水回収用チャンバと、該水回収用チャンバと前記排ガス流路との間を開閉する第1の開閉バルブと、を備え、前記空気冷却器と前記加湿器とを接続する空気流路上に、前記水回収用チャンバを経由する流路と該水回収用チャンバをバイパスするバイパス流路とを切り換える流路切換弁を配設し、該流路切換弁が前記水回収用チャンバを経由する流路に切り換えているとき、前記空気冷却器で冷却された空気が前記水回収用チャンバ内で加湿された後に前記加湿器で加湿されるようにしたので、排ガスを冷却して水分を回収する熱交換器を例えば燃料電池本体よりも高い位置に配置しても両者を連通する排ガス流路に溜まる凝縮水を第1の開閉バルブを開いて水回収用チャンバへ回収することができるという効果がある。
【0020】
また、密閉型純水タンクに戻りきらなかった凝縮水を再利用することができるとともに、予め水回収用チャンバ内で加湿された空気を加湿器が加湿するので加湿器の負担が減少し、加湿器を小型化することができるという効果がある。
【0021】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、前記密閉型純水タンクと前記水回収用チャンバとの間を開閉する第2の開閉バルブを備えたことにより、水回収用チャンバ内の純水を密閉型純水タンクに戻して再利用することができるという効果がある。
【0022】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明の効果に加えて、前記水回収用チャンバから前記燃料電池システム外へ余分な水を排出する第3の開閉バルブを備えたことにより、純水の量が過剰となった場合、燃料電池システム外へ排水管から排水して純水の量を適度に保つことができるという効果がある。
【0023】
請求項4の発明によれば、請求項3の発明の効果に加えて、前記水回収用チャンバの水位を検知する第1の水位センサを備えたことにより、水回収用チャンバの水位を正確に制御することができるという効果がある。
【0024】
請求項5の発明によれば、請求項4の発明の効果に加えて、前記第1の水位センサが検出した前記水回収用チャンバ内の水位が所定値以上の場合には、前記第1、第2、及び第3の開閉バルブを全て閉じる一方、前記流路切換弁を前記水回収用チャンバを経由する流路に切り換えて、前記水回収用チャンバで加湿を行った空気を前記加湿器に流入させるようにしたので、水回収用チャンバ内に純水が充分あるときに、これにより加湿した空気を加湿器へ供給し、加湿器における純水の消費量を低減することができるという効果がある。
【0025】
請求項6の発明によれば、請求項4記載の発明の効果に加えて、前記第1の水位センサが検出した前記水回収用チャンバ内の水位が所定値未満の場合には、前記第1の開閉バルブを開き、前記第2及び第3の開閉バルブを閉じる一方、前記流路切換弁を前記水回収用チャンバをバイパスするバイパス流路に切り換えて、前記水回収用チャンバを通過しない空気を前記加湿器に流入させるようにしたので、燃料電池本体の酸化剤極出口と熱交換器とを連通する排ガス流路に滞留した凝縮水を速やかに水回収用チャンバに回収することができるという効果がある。
【0026】
請求項7の発明によれば、請求項4記載の発明の効果に加えて、前記密閉型純水タンクの水位を検出する第2の水位センサを備え、前記第1の水位センサが検出した前記水回収用チャンバ内の水位が所定値以上で、かつ前記第2の水位センサが検出した前記密閉型純水タンクの水位が所定値未満の場合には、前記第1の開閉バルブ及び前記第3の開閉バルブを閉じ、前記第2の開閉バルブを開く一方、前記流路切換弁を前記水回収用チャンバを経由する流路に切り換えて、前記空気コンプレッサの吐出圧力により、前記水回収用チャンバから前記密閉型純水タンクへ水を移送するようにしたので、純水回収用のポンプを設けることなく、密閉型純水タンクへ純水を供給することができるという効果がある。
【0027】
請求項8の発明によれば、請求項4記載の発明の効果に加えて、前記密閉型純水タンクの水位を検出する第2の水位センサを備え、前記第1の水位センサが検出した前記水回収用チャンバ内の水位が所定値以上で、かつ前記第2の水位センサが検出した前記密閉型純水タンクの水位が所定値以上の場合には、前記第1の開閉バルブ及び前記第2の開閉バルブを閉じ、前記第3の開閉バルブを開く一方、前記流路切換弁を前記水回収用チャンバを経由する流路に切り換えて、前記空気コンプレッサの吐出圧力により、前記水回収用チャンバから余分な水を燃料電池システム外へ排出するようにしたので、純水のオーバフローによる空気の圧力上昇などを防止することができるという効果がある。
【0028】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照して、本発明に係る燃料電池システムの実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明に係る燃料電池システムの構成を示すシステム構成図であり、燃料電池車両に好適な燃料電池システムを示している。同図において、燃料電池本体(燃料電池スタック)2は、固体高分子電解質膜を挟んで酸化剤極と燃料極を対向配置した燃料電池構造体をセパレータで扶持し、複数これを積層したものである。また、加湿器1は、燃料ガスとしての水素、酸化剤ガスとしての空気をそれぞれ半透膜を介して純水と隣接させ、水分子が半透膜を通過することにより、それぞれのガスに加湿を行うものである。
【0029】
水素タンク4に貯えられた水素ガスは、図示しない調圧弁により調圧された後、加湿器1により加湿されて、燃料電池本体2の燃料極の入口に供給される。燃料極の出口からの排気は、エゼクタ(水素循環装置)3にて水素タンク4から新たに供給される水素ガスと合流・混合させられて、加湿器1を介して、燃料電池本体2の燃料極に再循環させられる。
【0030】
酸化剤としての空気は、空気コンプレッサ12によって圧縮された後、空気冷却器11により冷却されて、水回収用チャンバ9またはバイパス流路10のいずれか一方の流路を介して加湿器1に供給される。この空気流路を切り換えるのが3方弁19及び22(流路切換弁)である。即ち、空気冷却器11からの空気は、これら3方弁19、22の開状態のとき水回収用チャンバ9を通り、3方弁19、22が閉状態のときバイパス流路10を通って加湿器1に流入する。加湿器1で加湿された空気は、燃料電池本体2の酸化剤極入口へ供給される。
【0031】
燃料電池本体2の酸化剤極の出口からの排気は、水蒸気と液水を含んでいるため、コンデンサ(熱交換器)5によって水分を凝縮させた後、密閉型純水タンク6へ流入する。排気と水とは密閉型純水タンク6で分離され、排気は排圧調整バルブ24を介して大気に放出され、水は密閉型純水タンク6に貯留される。密閉型純水タンク6内の水は、水ポンプ7で加湿器1へ圧送され、一部が加湿により消費されて、残った水が密閉型純水タンク6に戻される。また、密閉型純水タンク6の内部には、その水位を検出する水位センサ26が設けられている。
【0032】
コンデンサ5は、液冷式のコンデンサであり、コンデンサ5を冷却する冷却液は、ラジエータ14から、ポンプ16、電力制御装置13、空気コンプレッサ12、空気冷却器11、コンデンサ5を経て、ラジエータ14に戻る経路で循環するようになっている。尚、コンデンサ5への冷却水流入口と同流出口との間には、通常閉状態の開閉バルブ23が設けられている。開閉バルブ23を開いたとき、冷却水がコンデンサ5をバイパスして、コンデンサ5では殆ど水分が凝縮されないようになっている。電力制御装置13は、電気自動車の電力を制御する装置であり、燃料電池の高圧直流電圧を補機用の低圧(例えば12V)直流電圧に変換するDC/DCコンバータ、或いは交流駆動モータ用の交流電圧に変換するDC/ACインバータ等を含むものである。さらに駆動モータ自体に冷却の必要があれば、上記冷却系に組み込んでもかまわない。尚、図示しないが燃料電池本体2を冷却する冷却系が別途設けられている。
【0033】
ここで、燃料電池本体2とコンデンサ5は排ガス流路8aの配管で連通しているため、排ガス流路8a内部に液水や凝縮した水分が溜まり、排気が円滑にコンデンサ5へ流れにくくなる。特に、燃料電池本体2は、本燃料電池システムのかなりの容積と重量を占めるので、車載用としては、車両の重心を低下させるために車両の底部等の低い位置に配設されているが、コンデンサ5は、燃料電池本体2より小型軽量であるので配置の自由度が大きく、コンデンサ5が燃料電池本体2より高い位置に配設される場合には、排ガス流路8a内部に液水や凝縮した水分が溜まり、排気が著しく流れにくくなる。
【0034】
このため、本発明では、排ガス通路8aから下方へ分岐する分岐ガス流路である排ガス流路8bを設け、排ガス流路8bの下端部に水回収用チャンバ9と、排ガス流路8aと水回収用チャンバ9との連通を開閉する開閉バルブ18(第1の開閉バルブ)とを設けている。水回収用チャンバ9の内部には、水位センサ25が設けられ、水位センサ25が検出した水位に応じて、開閉バルブ21(第2の開閉バルブ)を介して水回収用チャンバ9から密閉純水タンク6へ送水できるようになっている。さらに過剰な水を水回収用チャンバ9から燃料電池システム外へ排出するための開閉バルブ20(第3の開閉バルブ)が設けられている。水位センサ25、26が検出する各水位の信号は、図示しない制御装置へ入力され、制御装置は、これらの水位に応じて、開閉バルブ18、20、21、23、及び3方弁19、22を制御できるようになっている。
【0035】
図2、図3は、燃料電池システム起動時の制御を説明するフローチャートである。図2において、燃料電池システムの起動時においては、まず開閉バルブ18,20,21,23及び三方弁19,22は全て閉となるように制御される(S10〜S20)。次いで密閉型純水タンク6の水位センサ26が検出する水位:L2の値が読み込まれ(S22)、燃料電池起動に要する最低水位TL以上か否かを判定する(S24)。L2がTL以上であれば、図3のバルブ制御(S30)へ移る。L2がTL未満であれば、水漏れ等により最低水位に満たなかったものとして、起動を中止しシステム終了する。
【0036】
図3のS30では、水回収用チャンバ9の水位センサ25が検出する水位:L1の値を読み込み(S32)、L1が所定の低レベルしきい値CLを超えているか否かを判定する(S34)。L1がCLを超えていなければ、開閉バルブ18を開いて、燃料電池本体2とコンデンサ5とを連通する排ガス流路8aと、水回収用チャンバ9と、を連通させ、排ガス流路8aで凝縮した水分を水回収用チャンバ9に流下させるようにして(S36)、S32へ戻る。S34の判定でL1がCLを超えていれば、燃料電池の運転モードである定常・過渡バルブ制御を行うため、図4のS40へ移る。
【0037】
本発明の実施形態として、燃料電池システムの起動時においては、空気コンプレッサ12から所定の流量および圧力にて酸化剤ガスを吐出して、加湿器1にて所定の露点まで加湿して燃料電池本体2に供給する。ここで、三方弁19,22が閉じているので、酸化剤ガスは、水回収用チャンバ9内を通過しないでバイパス流路10を介して加湿器1に流入するようになっている。一方、水素タンク4から吐出された燃料ガスも、加湿器1にて所定の露点まで加湿して燃料電池本体2に供給する。このとき、排圧調整バルブ17および24にて燃料電池本体2へ供給する各々のガス供給圧力を調整する。
【0038】
このようにして燃料電池で発電を開始すると、燃料電池システム全体が定常運転温度まで暖まっていないので、燃料電池本体2の酸化剤極から排出される酸化ガス中に含まれる水分が排ガス流路8a内で凝縮し、コンデンサ5に至らず排ガス流路8a中に溜まり、さらに、燃料電池の発電によって生成した純水もコンデンサ5に至らず排ガス流路8a中に溜まることが予想される。この要因は、燃料電池本体2とコンデンサ5の車両レイアウトでの相対的な位置(高低差)が大きく寄与しており、かつ、起動時においては燃料電池本体2に供給する酸化剤ガスおよび燃料ガスの流量および圧力は高くないことから上記の現象が起きる。
【0039】
そこで、燃料電池システム起動時は、開閉バルブ18を開き、排ガス流路8aで凝縮する水を水回収用チャンバ9内に流下させる。このように制御することによって、排ガス流路8a内で凝縮する、あるいは、コンデンサ5まで至らない純水によって、酸化剤極の圧力上昇や、圧力変動などを防止することが可能となる。
【0040】
次に、水回収用チャンバ9に一時的に溜まった純水が水位センサ25によりある所定の低レベルしきい値CLを超えた場合、三方弁19,22を開にし、開閉バルブ18を閉じ、空気コンプレッサ12により吐出された酸化剤ガスを水回収用チャンバ9を通過させることによって、一時的に溜めた純水により加湿器1に入る前に空気を予め加湿して加湿器1に流入させる。このように制御することで加湿器1での純水の消費量を削減することができ、かつ、余剰水となっている純水を再利用することができる。以上についてのバルブ制御のフローチャートを図4に示す。
【0041】
図4の定常・過渡バルブ制御(S40)において、まず、水回収用チャンバ9の水位センサ25が検出する水位:L1の値を読み込み(S42)、L1が所定の高レベルしきい値CHを超えているか否かを判定する(S44)。L1がCHを超えていれば、図5の水の移動制御(S60)へ移る。L1がCHを超えていなければ、L1が所定の低レベルしきい値CL未満か否かを判定する(S46)。L1がCL未満であれば、3方弁19、22を閉じて空気冷却器11で冷却された空気が水回収用チャンバ9をバイパスするバイパス流路10を通じて加湿器1に供給されるようにし(S54、S56)、開閉バルブ18を開いて排ガス流路8aに溜まった凝縮水を水回収用チャンバ9へ流下させるようにして(S58)、S30のバルブ制御へ移る。
【0042】
S46の判定で、L1がCL未満でなければ、水回収用チャンバ9の水位が適切であるので、水回収用チャンバ9で空気に対して補助的な加湿を行った後、加湿器1で加湿されるように、開閉バルブ18を閉じて水回収チャンバ9から排ガス流路8aへの空気の逆流を防ぎ(S48)、3方弁19、22を開くことにより空気冷却器11からの空気が水回収用チャンバ9を通って加湿器1へ供給されるようにして(S50、S52)、S42へ戻る。
【0043】
一方、水回収用チャンバ9に一時的に溜まる純水量が多く、ある所定の高レベルしきい値CHより高くなった場合は、密閉型純水タンク6内の純水の量を水位センサ26により検知し、所定の高レベルしきい値TH以下であれば、水回収用チャンバ9に溜まった純水を密閉型純水タンク6に移動させる。この場合、水回収用チャンバ9と密閉型純水タンク6との間を連通するため開閉バルブ21を開き、空気コンプレッサ12により吐出された空気の圧力を利用して、密閉型純水タンク6に純水を戻す。そして、水回収用チャンバ9に溜まった純水を密閉型純水タンク6に戻した後、再度、図4に示した定常・過渡バルブ制御を行う。
【0044】
図5は、水回収用チャンバ9から密閉型純水タンク6への水の移動制御を説明するフローチャートである。まず、密閉型純水タンク6の水位センサ26が検出する水位:L2の値を読み込み(S62)、L2が所定の高レベルしきい値THを超えているか否かを判定する(S64)。L2がTHを超えていれば、水分過剰なので図6の水排出制御(S80)へ移る。L2がTHを超えていなければ、開閉バルブ21を開いて(S66)、水回収用チャンバ9の水位センサ25が検出する水位:L1の値を読み込み(S68)、L1が所定の高レベルしきい値CH未満か否かを判定する(S70)。L1がCH未満となれば、開閉バルブ21を閉じて水の移動を終了し(S72)、定常・過渡バルブ制御(S40)へ戻る。S70の判定で、L1がCH未満でなければ、未満となるまで水の移動を続けるため、S68へ戻る。
【0045】
このように制御を行うことによって、水回収用チャンバ9と密閉型純水タンク6との間に水ポンプなどを必要とせず、純水を密閉型純水タンク6に戻すことが可能となる。
【0046】
次に、水回収用チャンバ9および密閉型純水タンク6内の純水量が水位センサ25,26によりあらかじめ定められた所定値より大きい場合は、開閉バルブ20を開き、水回収用チャンバ9から燃料電池システム外へ純水を排出する。この時、コンデンサ5にて燃料電池本体2の酸化剤極から排出される排ガスに含まれる水蒸気を液水として回収しないように、冷却水バイパス用の開閉バルブ23を開き、コンデンサ5に冷却水を流さないように制御する。
【0047】
図6は、上記の水分過剰時の水排出制御を説明するフローチャートである。まず、開閉バルブ23、20を開き(S82、S84)、水回収用チャンバ9の水位センサ25が検出する水位:L1の値を読み込み(S86)、L1が所定の高レベルしきい値CHを超えるか否かを判定する(S88)。L1がCHを超えていれば、水位を監視しつつ排水を続けるためS86へ戻る。L1がCHを超えていなければ、開閉バルブ20、23を閉じて排水を終了し(S90、S92)、定常・過渡バルブ制御(S40)へ戻る。
【0048】
以上の制御により水分過剰時には、コンデンサ5で酸化剤極の排ガス中の水分を回収しないため、冷却系のラジエータ14における放熱量を低減させることができ、省燃費化につながる。また、水余り現象に伴う酸化剤極の圧力上昇や圧力変動を回避でき、省燃費化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料電池システムの構成を示すシステム構成図である。
【図2】燃料電池起動時の動作を説明するフローチャートである。
【図3】燃料電池起動時の動作を説明するフローチャートである。
【図4】燃料電池システムの定常運転時及び過渡運転時のバルブ制御を説明するフローチャートである。
【図5】水回収用チャンバから密閉型純水タンクへの水の移動制御を説明するフローチャートである。
【図6】過剰な水分を排出する水排出制御を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1 加湿器
2 燃料電池本体
3 エゼクタ
4 水素タンク
5 コンデンサ
6 密閉型純水タンク
7 水ポンプ
8a、8b 排ガス流路
9 水回収用チャンバ
10 バイパス流路
11 空気冷却器
12 空気コンプレッサ
13 電力制御装置
14 ラジエータ
15 ラジエータファン
16 冷却水ポンプ
17 排圧調整バルブ
18 開閉バルブ(第1の開閉バルブ)
19 三方弁(流路切換弁)
20 開閉バルブ(第3の開閉バルブ)
21 開閉バルブ(第2の開閉バルブ)
22 三方弁(流路切換弁)
23 開閉バルブ
24 排圧調整バルブ
25 水位センサ
26 水位センサ
Claims (8)
- 電解質膜を挟んで燃料極と酸化剤極とが対設された燃料電池本体と、
所望の流量及び圧力で水素を含む燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、
空気を圧縮して所望の流量及び圧力で吐出することができる空気コンプレッサと、
該空気コンプレッサから吐出された圧縮空気を冷却する空気冷却器と、
該空気冷却器で冷却された空気及び前記燃料ガスを密閉型純水タンクから供給された純水でそれぞれ加湿して前記燃料電池本体に供給するための加湿器と、
前記燃料電池本体の酸化剤極出口から排出される排ガスを冷却して水分を回収する熱交換器と、
前記燃料電池本体の酸化剤極出口と前記熱交換器とを連通する排ガス流路の下方に配設された水回収用チャンバと、
該水回収用チャンバと前記排ガス流路との間を開閉する第1の開閉バルブと、を備え、
前記空気冷却器と前記加湿器とを接続する空気流路上に、前記水回収用チャンバを経由する流路と該水回収用チャンバをバイパスするバイパス流路とを切り換える流路切換弁を配設し、
該流路切換弁が前記水回収用チャンバを経由する流路に切り換えているとき、前記空気冷却器で冷却された空気が前記水回収用チャンバ内で加湿された後に前記加湿器で加湿されることを特徴とする燃料電池システム。 - 前記密閉型純水タンクと前記水回収用チャンバとの間を開閉する第2の開閉バルブを備えたことを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
- 前記水回収用チャンバから前記燃料電池システム外へ余分な水を排出する第3の開閉バルブを備えたことを特徴とする請求項2記載の燃料電池システム。
- 前記水回収用チャンバの水位を検知する第1の水位センサを備えたことを特徴とする請求項3記載の燃料電池システム。
- 前記第1の水位センサが検出した前記水回収用チャンバ内の水位が所定値以上の場合には、前記第1、第2、及び第3の開閉バルブを全て閉じる一方、前記流路切換弁を前記水回収用チャンバを経由する流路に切り換えて、前記水回収用チャンバで加湿を行った空気を前記加湿器に流入させることを特徴とする請求項4記載の燃料電池システム。
- 前記第1の水位センサが検出した前記水回収用チャンバ内の水位が所定値未満の場合には、前記第1の開閉バルブを開き、前記第2及び第3の開閉バルブを閉じる一方、前記流路切換弁を前記水回収用チャンバをバイパスするバイパス流路に切り換えて、前記水回収用チャンバを通過しない空気を前記加湿器に流入させることを特徴とする請求項4記載の燃料電池システム。
- 前記密閉型純水タンクの水位を検出する第2の水位センサを備え、
前記第1の水位センサが検出した前記水回収用チャンバ内の水位が所定値以上で、かつ前記第2の水位センサが検出した前記密閉型純水タンクの水位が所定値未満の場合には、前記第1、及び第3の開閉バルブを閉じ、前記第2の開閉バルブを開く一方、前記流路切換弁を前記水回収用チャンバを経由する流路に切り換えて、前記空気コンプレッサの吐出圧力により、前記水回収用チャンバから前記密閉型純水タンクへ水を移送することを特徴とする請求項4記載の燃料電池システム。 - 前記密閉型純水タンクの水位を検出する第2の水位センサを備え、
前記第1の水位センサが検出した前記水回収用チャンバ内の水位が所定値以上で、かつ前記第2の水位センサが検出した前記密閉型純水タンクの水位が所定値以上の場合には、前記第1、及び第2の開閉バルブを閉じ、前記第3の開閉バルブを開く一方、前記流路切換弁を前記水回収用チャンバを経由する流路に切り換えて、前記空気コンプレッサの吐出圧力により、前記水回収用チャンバから余分な水を燃料電池システム外へ排出することを特徴とする請求項4記載の燃料電池システム。
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