JP4098023B2 - 内燃機関の冷却装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却液を蓄える保温タンクを備えた内燃機関の冷却装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃機関の冷却装置としては、例えば実開平6−74408号公報に記載されたものが知られている。同公報に記載の装置は、冷却液を蓄える保温タンク(蓄熱器)を備えている。そして、内燃機関の冷間時には冷却液の供給経路を切り替えて、相対的に高温となる保温タンク内の冷却液を空調装置(ヒータ)のヒータコアのみに供給し、迅速な暖房開始を実現している。
【0003】
また、こうした内燃機関の冷却装置において、上記機関の冷間時には相対的に高温となる保温タンク内の冷却液を同機関に供給し、その暖機性の向上を図ったものも知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、こうした冷却装置では、内燃機関の暖機性の向上のために保温タンクから内燃機関への冷却液の供給経路の圧力損失を小さく抑える必要がある。これにより、相対的に高温となる保温タンク内の冷却液は迅速に内燃機関へと供給される。
【0005】
しかしながら、上記機関の暖機後、切替弁の操作等により相対的に高温となる同機関からの冷却液を保温タンクに蓄えようとすると、これと入れ替わりに排出される保温タンク内の冷却液が急激に内燃機関へと供給される(戻される)。この場合、相対的に低温となる保温タンク内の冷却液が内燃機関へと戻されることで同機関が冷やされ、その効率やエミッション等を悪化させることがある。
【0006】
このため、上記機関からの冷却液を保温タンクに蓄える場合には、入れ替わりに排出される保温タンク内の冷却液が徐々に内燃機関へと戻されるようにしている。具体的には、機関の冷間時の流量とは異なる小流量となるような切替弁の新たなポジションを設定したり、切替弁を頻繁に開閉作動させて実質的に流量を低減させたりしている。この場合、切替弁のポジション追加に伴う大型化、あるいは切替弁の頻繁な開閉作動に伴う信頼性確保の困難性といった別の問題が生じてしまう。
【0007】
本発明の目的は、内燃機関からの冷却液を保温タンクに蓄える際に、これと入れ替わりに排出される保温タンク内の冷却液が急激に内燃機関へと戻されることを簡易な構成で抑制することができる内燃機関の冷却装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、冷却液を蓄える保温タンクを備えた内燃機関の冷却装置において、前記保温タンクと内燃機関とを接続する冷却液の経路に、該冷却液の流れ方向に応じて該経路の圧力損失が切り替わる回路部を設けたことを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の冷却装置において、前記回路部は、前記保温タンクから前記内燃機関に供給される冷却液の流れを許容するとともに、該内燃機関から該保温タンクに供給される冷却液の流れを禁止する1方向弁と、前記1方向弁をバイパスする通路に設けられた絞りとを備えることを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の内燃機関の冷却装置において、前記経路に、前記保温タンクと前記内燃機関との連通・遮断を切り替える切替弁を設けたことを要旨とする。
【0011】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、保温タンクと内燃機関とを接続する冷却液の経路に、該冷却液の流れ方向に応じて該経路の圧力損失が切り替わる回路部が設けられている。従って、例えば保温タンクから前記内燃機関に供給される冷却液の流れに対して圧力損失が小さくなり、反対に内燃機関から該保温タンクに供給される冷却液の流れに対して圧力損失が大きくなるように切り替わる回路部とする。
【0012】
これにより、内燃機関の冷間時において保温タンクの冷却液を内燃機関に供給する際には、圧力損失が小さくなる分、迅速に保温タンクから内燃機関へと冷却液が供給される。そして、上記機関は、相対的に高温となる保温タンクからの冷却液により迅速に暖められる。
【0013】
一方、内燃機関からの冷却液を保温タンクに供給してこれを蓄える際には、圧力損失が大きくなる分、緩やかに内燃機関から保温タンクへと冷却液が供給される。そして、これと入れ替わりに排出される保温タンク内の冷却液も緩やかに内燃機関へと戻される。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、上記回路部は、1方向弁及びこれをバイパスする通路に設けられた絞りを備えた極めて簡易な構成とされる。
請求項3に記載の発明によれば、上記経路に、前記保温タンクと前記内燃機関との連通・遮断を切り替える切替弁が設けられている。従って、例えば機関の暖機運転時などでは、上記切替弁により保温タンクと内燃機関とを遮断するように切り替える。これにより、冷却液の循環が抑制され、内燃機関の暖機性が向上される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図4に従って説明する。図1〜図4は、本実施形態が適用される内燃機関の冷却システムをその動作と併せて示す概略構成図である。同図に示されるように、この冷却システムは、内燃機関としてのエンジン1と、同エンジン1に駆動連結された機械駆動式のウォータポンプ2と、ヒータ3と、サーモスタット4と、ラジエータ5と、蓄熱システム6とを備えている。そして、エンジン1、ヒータ3及びウォータポンプ2を接続する冷却液の経路7が形成されている。また、経路7においてエンジン1及びヒータ3の一側(上流側)の間には、切替弁8が設けられている。この切替弁8は、上記蓄熱システム6の一側にも接続されており、そのポジションに応じてエンジン1とヒータ3及び蓄熱システム6のいずれかとを連通し、あるいはこれらヒータ3及び蓄熱システム6との連通を遮断する。なお、この切替弁8のポジションは、図示しない制御装置にて制御されている。
【0016】
上記ウォータポンプ2は、経路7においてヒータ3の他側(下流側)とエンジン1との間に設けられている。このウォータポンプ2は、例えば上記切替弁8によりエンジン1とヒータ3とが連通されている状態において、経路7に沿って冷却液を循環させる。このとき、冷却液の温度が低く上記サーモスタット4が閉状態の時には、冷却液はエンジン1内(シリンダヘッド等)を通過し、ヒータ3へと供給される。また、冷却液の温度が高く上記サーモスタット4が開状態の時には、上記に併せてエンジン1内を通過した冷却液の一部はラジエータ5へと供給される。
【0017】
上記蓄熱システム6は、保温タンク11と、電動ウォータポンプ12と、回路部13を構成する1方向弁14及び絞り15とを備えている。そして、前記切替弁8及びヒータ3の他側(下流側)間において、回路部13、保温タンク11及び電動ウォータポンプ12を接続する冷却液の経路16が形成されている。この経路16は、ヒータ3の他側(下流側)において経路7に連通する。
【0018】
上記保温タンク11は、保温性を有するタンクであって、内部に蓄えられた冷却液を保温する。詳述すると、この保温タンク11は、一側及び他側がそれぞれ電動ウォータポンプ12及び回路部13に連通する冷却液の流路を有しており、同流路内において冷却液を蓄え、これを保温する。また、保温タンク11は、一側及び他側のいずれか一方から冷却液が供給されると、これと入れ替わりに他方から冷却液を排出する。すなわち、保温タンク11は、一方から冷却液が供給される分だけ、他方から冷却液を排出する。
【0019】
上記電動ウォータポンプ12は保温タンク11の一側に接続されており、例えば上記切替弁8によりエンジン1と蓄熱システム6とが連通されている状態において、経路16及び経路7の一部に沿って冷却液を循環させる。
【0020】
上記回路部13の1方向弁14は、保温タンク11の他側及び前記切替弁8間に設けられている。この1方向弁14は、保温タンク11の他側から切替弁8への冷却液の流れを許容するとともに、切替弁8側から保温タンク11への冷却液の流れを禁止する。この1方向弁14を介して経路16を流れる冷却液の圧力損失は、十分に小さくなるように設定されている。
【0021】
上記絞り15は、上記1方向弁14をバイパスする通路17に設けられており、同通路17を流れる冷却液の圧力損失を増大させてその流量を低減させる。
次に、この冷却システムの動作について説明する。図1〜図4において、各動作に対応する冷却液の流れ方向を矢印にて併せ示している。
【0022】
図1は、エンジン冷間時におけるエンジン1のプレヒートの動作に対応しており、このときの冷却液の流れ方向を矢印にて示している。このプレヒートは、エンジン1の暖機運転に先立って同エンジン1を暖めるための動作である。この状態においては、前記切替弁8によりエンジン1と蓄熱システム6(回路部13)とが連通されるとともに、同エンジン1とヒータ3とが遮断される。ここで、前記電動ウォータポンプ12が駆動され、経路7の冷却液が導入されて保温タンク11の一側へと供給されると、これと入れ替わりに相対的に高温に保たれていた保温タンク11内の冷却液が他側から排出される。そして、この排出された保温タンク11内の冷却液は、回路部13及び切替弁8を介してエンジン1に供給され、同エンジン1を暖めたる。このとき、順方向となる上記1方向弁14は開状態となり圧力損失の低減された経路が形成されるため、保温タンク11内の冷却液は迅速にエンジン1へと供給され、その暖機性が向上する。
【0023】
次に、図2は、エンジン冷間時におけるエンジン1の暖機運転中の動作に対応している。この状態においては、前記切替弁8により蓄熱システム6(回路部13)及びヒータ3ともにエンジン1から遮断される。従って、暖機運転中は、冷却液はエンジン1内のみを循環するため、同エンジン1は速やかに暖められてその暖機性が向上する。
【0024】
図3は、エンジン温間時(通常走行時など)の動作に対応しており、このときの冷却液の流れ方向を矢印にて示している。この状態においては、前記切替弁8によりエンジン1とヒータ3とが連通されるとともに、同エンジン1と蓄熱システム6(回路部13)とが遮断される。そして、ウォータポンプ2の駆動により冷却液は経路7に沿って循環する。これにより、エンジン1を通過した冷却液はヒータ3へと供給され、例えば室内暖房に供される。このとき、冷却液温が高いときには、前記サーモスタット4の作動によりエンジン1を通過した冷却液の一部がラジエータ5へと循環されるのは既述のとおりである。
【0025】
次に、図4は、エンジン温間時において蓄熱システム6における蓄熱を行う際の動作に対応しており、このときの冷却液の流れ方向を矢印にて示している。この状態においては、前記切替弁8によりエンジン1と蓄熱システム6(回路部13)とが連通されるとともに、同エンジン1とヒータ3とが遮断される。ここでは、前記電動ウォータポンプ12は駆動されず、ウォータポンプ2の駆動によりエンジン1からの冷却液は切替弁8を介して蓄熱システム6へと導入され、経路16等に沿って循環する。このとき、逆方向となる上記1方向弁14は閉状態となるため、エンジン1を通過した高温の冷却液は前記通路17に設けられた絞り15を介して保温タンク11の他側に供給される。この供給された冷却液が保温タンク11に蓄えられて保温されることで、蓄熱システム6での蓄熱が行われる。一方、これと入れ替わりに相対的に低温となる冷却液が、保温タンク11内から排出される。このとき、絞り15を介した圧力損失の増大された経路が形成されるため、保温タンク11内の冷却液は電動ウォータポンプ12のインペラの間隙を通過して徐々に経路7へと排出される。これにより、相対的に低温となる保温タンク11内の冷却液が急激にエンジン1へと供給されて同エンジン1を冷やしたりすることが回避されている。
【0026】
なお、エンジン温間時における蓄熱システム6での蓄熱(図4)は、エンジン1からヒータ3へと冷却液を供給する間(図3)において、ヒータ性能に影響を及ぼさない程度の小時間だけ切替弁8のポジションを切り替えることで徐々に行う。
【0027】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、保温タンク11とエンジン1とを接続する冷却液の経路16に、冷却液の流れ方向に応じて経路16の圧力損失が切り替わる回路部13が設けられている。そして、保温タンク11からエンジン1に供給される冷却液の流れに対して圧力損失が小さくなり、反対にエンジン1から保温タンク11に供給される冷却液の流れに対して圧力損失が大きくなるようにした。
【0028】
これにより、エンジン1の冷間時において保温タンク11の冷却液をエンジン1に供給する際には、圧力損失が小さくなる分、大流量にて迅速に保温タンク11からエンジン1へと冷却液を供給できる。そして、相対的に高温となる保温タンク11からの冷却液によりエンジン1を迅速に暖めることができ、その暖機性が向上する。
【0029】
一方、エンジン1からの冷却液を保温タンク11に供給してこれを蓄える際には、圧力損失が大きくなる分、小流量にて緩やかにエンジン1から保温タンク11へと冷却液を供給できる。そして、これと入れ替わりに排出される保温タンク11内の冷却液も緩やかにエンジン1へと戻すことができる。これにより、相対的に低温となる保温タンク11内の冷却液が急激にエンジン1へと戻されることで同エンジン1が冷やされ、その効率やエミッション等を悪化させることも回避できる。
【0030】
特に、エンジン1からの冷却液を保温タンク11に供給してこれを蓄える際に、エンジン1の冷間時の流量とは異なる小流量となるような切替弁(8)の新たなポジションを設定する必要がないため、これに伴う切替弁の大型化やコストの増大も回避できる。あるいは、切替弁(8)を頻繁に開閉作動させて実質的に流量を低減させたりする必要がないため、その信頼性確保のための困難性も解消できる。
【0031】
(2)本実施形態では、回路部13を、1方向弁14及びこれをバイパスする通路17に設けられた絞り15からなる極めて簡易な構成にできる。
(3)本実施形態では、エンジン1の暖機運転時において、切替弁8によりヒータ3及び蓄熱システム6とエンジン1とを遮断するように切り替えることにより、冷却液の循環を抑制し、エンジン1の暖機性を向上することができる。
【0032】
(4)本実施形態では、回路部13において、冷却液の流れ方向が切り替わることに対応して自動的にその圧力損失が切り替わる。
なお、本発明の実施の形態は上記実施形態に限定されるものではなく、次のように変更してもよい。
【0033】
・前記実施形態において、絞り15は通路17を絞って形成してもよく、あるいは別途、絞り弁を設けてもよい。
・前記実施形態においては、ウォータポンプ2を機械駆動式としたが、電動式であってもよい。
【0034】
・前記実施形態において、冷却システムの冷却液の流路構成は一例であってその他の構成を採用してもよい。
次に、以上の実施形態から把握することができる技術的思想を、その効果とともに以下に記載する。
【0035】
(イ)請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の冷却装置において、前記経路に、前記保温タンクから前記内燃機関に供給される冷却液の流れを作る電動ポンプを備えたことを特徴とする内燃機関の冷却装置。同構成によれば、電動ポンプにより保温タンクから内燃機関に供給される冷却液の流れが簡易に作られる。また、ポンプ容量の設定により、内燃機関の規格等に応じた好適な冷却液の供給量調整が可能ととなる。
【0036】
(ロ)上記(イ)に記載の内燃機関の冷却装置において、前記電動ポンプは、前記内燃機関から前記保温タンクに供給される冷却液の流れを通過させることを特徴とする内燃機関の冷却装置。同構成によれば、電動ポンプの設置によって内燃機関から保温タンクに供給される冷却液の流れが遮断されることはない。
【0037】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1又は2に記載の発明によれば、内燃機関からの冷却液を保温タンクに蓄える際に、これと入れ替わりに排出される保温タンク内の冷却液が急激に内燃機関へと戻されることを簡易な構成で抑制することができる。
【0038】
請求項3に記載の発明によれば、内燃機関の暖機性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の動作を示す概略構成図。
【図2】同実施形態の動作を示す概略構成図。
【図3】同実施形態の動作を示す概略構成図。
【図4】同実施形態の動作を示す概略構成図。
【符号の説明】
1 内燃機関としてのエンジン
6 蓄熱システム
7,16 経路
8 切替弁
11 保温タンク
13 回路部
14 1方向弁
15 絞り
17 通路
Claims (3)
- 冷却液を蓄える保温タンクを備えた内燃機関の冷却装置において、
前記保温タンクと内燃機関とを接続する冷却液の経路に、該冷却液の流れ方向に応じて該経路の圧力損失が切り替わる回路部を設けたことを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - 請求項1に記載の内燃機関の冷却装置において、
前記回路部は、
前記保温タンクから前記内燃機関に供給される冷却液の流れを許容するとともに、該内燃機関から該保温タンクに供給される冷却液の流れを禁止する1方向弁と、
前記1方向弁をバイパスする通路に設けられた絞りとを備えることを特徴とする内燃機関の冷却装置。 - 請求項1又は2に記載の内燃機関の冷却装置において、
前記経路に、前記保温タンクと前記内燃機関との連通・遮断を切り替える切替弁を設けたことを特徴とする内燃機関の冷却装置。
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