JP4098020B2 - 尿中のプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター−1測定による糖尿病性腎症の進展度の判定方法 - Google Patents

尿中のプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター−1測定による糖尿病性腎症の進展度の判定方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、尿中のプラスミノーゲン アクチベーター インヒビター−1および/またはウロキナーゼとプラスミノーゲン アクチベーター インヒビター−1の複合体の存在または量を検出することを特徴とする糖尿病性腎症の進展度を判定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
糖尿病性腎症は、腎生検が困難なことから持続性蛋白尿、腎機能障害、高血圧等の知見から臨床診断がなされてきた。しかし、尿蛋白が出現すると治療が難しく、5〜6年経過で末期腎不全に陥るのが通例である。そのため、通常の尿試験紙法で尿蛋白が陽性となる前に腎病変の進展度を判定して、早期治療を行うことが臨床医学の立場から強く望まれている。
【0003】
約30年前から、放射線免疫測定法、酵素免疫測定法、ラテックス凝集免疫比濁法、免疫沈降法により尿中の微量アルブミンの測定が行われるようになり、尿試験紙法による尿蛋白が陰性の早期から糖尿病性腎症の診断ができるようになった。しかし、尿中アルブミンは日内変動および日差変動が大きく、1回のみの検査では確定診断ができない。さらには、微量アルブミン尿の診断には畜尿が必要である。そこで、一般的には、より実用的な随時尿を用いての尿アルブミン指数:アルブミン・クレアチン比が実用的表示法として多用されているが、この方法も、測定物質と補正物質の排泄動態が両成分とも糸球体血圧により制御されている関係上、補正値は生データの特性を示さなくなることが知られている。このように、糖尿病性腎症の進展度を判定する方法は確立されているとはいえなかった。
【0004】
プラスミノーゲン アクチベーター インヒビター−1(以下、これを「PAI−1」と称することがある)は、血糖値やインスリン、血清脂質、炎症性サイトカインなどにより発現調節を受ける線溶因子であるが、プラスミンの抑制を介して、血栓傾向と組織での細胞外基質の増加、線維化を誘導すると考えられている。該因子は、従来、急性心筋梗塞症、深部動脈血栓症、アテローマ性動脈硬化症、敗血症、DIC(播種性血管内凝固症候群)等の疾患における血管内皮障害を反映し、血液中のPAI−1の測定はこのような疾患の検出等に有用であることが報告されている。また、PAI−1と腎疾患との関連性を示唆する報告もなされている。例えば、糖尿病性腎症は糸球体内の細胞外基質の増加と間質の線維化が特徴であり、組織免疫染色では、PAI−1の糸球体と尿細管における発現が増強されるとの報告がある[Aya N, et al., J Pathol, 166, P289-295 (1992)]。近位尿細管培養では高血糖条件でPAI−1の産生増加が認められ、腎間質線維化モデルマウスではPAI−1の腎組織内発現とマクロファージの浸潤との関連性が指摘されている。
【0005】
近年、ネフローゼ症候群患者の1日の蓄尿を濃縮し、PAI−1に対するモノクローナル抗体とポリクローナル抗体を用いたサンドイッチELISAキット("tintElize PAI-1", Biopool社製(Umea, Sweden))により尿中のPAI−1濃度を測定した結果、ネフローゼ症候群患者でPAI−1濃度が高くなることが報告された[Y. Yoshida et al., Nephron, 88, P24-29 (2001)] 。しかし、この方法では、使用したELISAキットの感度が2ng/mLであることより患者尿の濃縮操作が必須であり、臨床医学の立場からは実用的とは言い難い。また、前述したように、糖尿病性腎症ではネフローゼを発症する前の早期腎症の時期に診断を行い適切な治療方針を立てることが病気の重篤化の予防に役立つが、早期の糖尿病性腎症の検出とPAI−1との関連性については一切知見が得られていなかった。
【0006】
本発明者らは、先に急性心筋梗塞、深部静脈血栓症、糸球体腎炎、アテローマ性動脈硬化症、敗血症、DIC(汎種性血管内凝固症候群)等を検知するために、試料中のPAI−1を検出するラテックス凝集免疫測定法を完成させている(特開平9−33524号公報)。この方法では、主に血液試料中の8ng/mL〜270ng/mLの濃度範囲のPAI−1を測定することができるが、尿を試料とする場合については詳しい検討がなされていなかった。尿を試料とする場合には血液試料中よりも含まれるPAI−1濃度が低いことが推測され、未濃縮尿を用いても十分な測定感度で尿中のPAI−1を測定するために、従来の測定系の改良が要望されていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、通常の尿試験紙法や臨床症状による判定がなされるより前に、早期に糖尿病性腎症を検出し進展度を判定する方法を提供するためになされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、ヒト尿中のPAI−1、および/または、ウロキナーゼとPAI−1の複合体の存在または量を検出することにより、糖尿病性腎症の進展度を判定できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
【0009】
(1)ヒト尿中の、PAI−1、および/または、ウロキナーゼとPAI−1の複合体の存在または量を免疫学的手法により検出することを特徴とする糖尿病性腎症の進展度の判定方法。
(2)PAI−1、および、ウロキナーゼとPAI−1の複合体の存在または量を免疫学的手法により検出することを特徴とする(1)に記載の方法。
(3)ヒト尿が未濃縮尿であることを特徴とする(1)または(2)に記載の方法。
(4)免疫学的手法による検出が、PAI−1、および、ウロキナーゼとPAI−1の複合体に特異的に結合するポリクローナル抗体を用いて行われることを特徴とする(2)に記載の方法。
(5)免疫学的手法が、酵素免疫測定法またはラテックス凝集免疫測定法である(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)PAI−1、および、ウロキナーゼとPAI−1の複合体に特異的に結合する抗体を少なくとも含み、ヒト尿中の、PAI−1、および/または、ウロキナーゼとPAI−1の複合体の存在または量を免疫学的手法により検出することにより、糖尿病性腎症の進展度を判定するためのキット。
(7)前記抗体がポリクローナル抗体であることを特徴とする(6)に記載のキット。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、蛋白質の精製、解析、抗体の作製等の手法は、特に明記しない限り、「新生化学実験講座(日本生化学会編、東京化学同人)」、「Antibodies - A Laboratory Manual(E.Harlow, et al., Cold Spring Harbor Laboratory(1988))」、「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ−技術と応用−(日本臨床病理学会編、臨床病理刊行会(1983))」等の一般的実験書に記載の方法又はそれに準じて行うことができる。
【0011】
<1>糖尿病性腎症およびPAI−1
糖尿病性腎症とは、糖尿病患者における合併症のひとつであり、腎臓透析患者の原因疾患の上位を占める重篤な疾患である。糖尿病性腎症の病期分類として知られるMogensenの分類によれば、該疾患は第I期から第V期に分類される。疾患の初期にあたる第I期から臨床症状のない病変期である第II期まで(以下、これらを「腎症前期」と称することがある)は、通常の尿試験紙法による尿蛋白の検出は陰性である。第III期は糖尿病性腎症の初期にあたり、腎臓の形態的変化に加えて尿蛋白が検出される。第IV期では明らかな糖尿病性腎症を呈し、尿蛋白の他に、浮腫、高血圧、糸球体濾過量(GFR)の低下が見られる。第V期になると腎不全を呈する。
【0012】
尿蛋白の出現以後は治療が困難で、予後が悪く、5〜6年経過で末期腎不全に陥るのが通例である。しかし、早期に適切な治療を施すことによりその発症率を大きく抑制できることも知られており、その進展度の把握及び進展の抑制は臨床上大きな意義を持っている。
【0013】
本発明の糖尿病性腎症の進展度の判定方法は、ヒト尿中の、PAI−1、および/または、ウロキナーゼとPAI−1の複合体の存在または量を免疫学的手法により検出することを特徴とする方法である。本法によれば、通常の尿試験紙法により尿蛋白が検出されるより前の、腎症前期の段階から糖尿病性腎症の進展度を判定することができ、早期治療の指針として役立てることができる。ここでPAI−1とは、分子量が約5万の379アミノ酸残基からなる一本鎖の糖蛋白であり(Progress in Hemostasis and Thrombosis, Coller, B.S., ed. WB Saundears Philadelphia, 87-115 (1989))、ヒト尿においてウロキナーゼをはじめとするプラスミノーゲン アクチベーターと複合体を形成したり(以下、これを「複合体」と称することがある)、それ自体フリーで存在(以下、これを「遊離体」と称することがある)したりする。本発明おいて単に「PAI−1」と称した場合には、PAI−1活性の有無に関わらず、主にヒト尿に存在するPAI−1の遊離体を意味する。「ウロキナーゼとプラスミノーゲン アクチベーター インヒビター−1の複合体」とは、腎臓で合成されて尿中に排泄されるプラスミノーゲン アクチベーターの一つであるウロキナーゼとPAI−1が尿中で複合体を形成して存在しているものをいう。すなわち、本発明の方法は、このような複合体又は遊離体の一方又は両方の存在又は量を免疫学的手法により検出することを含んでいる。尚、本発明においては、前記複合体又は遊離体の両方を測定することが好ましい。
【0014】
<2>PAI−1および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体の存在または量の検出に用いられる抗体
本発明においては、ヒト尿中の、PAI−1および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体の存在または量の検出は免疫学的手法により行われる。PAI−1、および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体の存在または量を検出するための抗体としては、PAI−1、および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体に特異的に結合する能力を有するものであればいかなるものでもよく、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。その中でも、PAI−1、および、ウロキナーゼとPAI−1の複合体の両方に特異的に結合する能力を有する抗体(以下、これを「抗PAI−1抗体」と称することがある)が好ましく、特にポリクローナル抗体が特に好ましく用いられる。
【0015】
このような抗PAI−1抗体は、例えば、公知の手法に従ってPAI−1に対するポリクローナル抗体を作製して、作製されたポリクローナル抗体の中から、PAI−1にもウロキナーゼとPAI−1の複合体にも結合するものを選択して用いればよい。このような抗体を選択することにより、糖尿病性腎症の進展に従って病態が変化し、尿中のPAI−1の存在形態やその比率に変化が生じた場合でも、測定値が影響を受けることがなく、安定的に前記進展度の判定を行うことができる。
【0016】
抗体の作製方法としては、それ自体公知の通常用いられる抗体の作製方法を用いることができるが、具体的には、特開平9−33524号公報に記載の方法等に準じて行うことができる。例えば、ポリクローナル抗体を作製する場合には、抗原として調製したPAI−1を必要に応じてアジュバントと混合し、ラット、モルモット、ウサギ、マウス、ヤギ、ヒツジ、馬、牛、ニワトリなどの通常抗体の製造に用いられる動物の皮下又は腹腔に2〜3週間毎に繰り返し免疫する。免疫後、適宜試験的に採血を行って、酵素免疫測定法(以下、これを「ELISA法」と称することがある)、ウエスタンブロッティング法等の免疫学的方法により力価(抗体価)が十分に上昇していることを確認することが好ましい。十分な力価の上昇が確認された動物から採血を行い、血清を分離することによって抗血清が得られる。ニワトリの場合には、鶏卵から採取した卵黄から水溶性の画分を分取して卵黄抽出液を調製し、これも抗血清同様に用いることができる。
【0017】
本発明においては、得られた抗血清等を精製することなくそのまま用いることもできるが、以下の方法により精製して用いることが好ましい。精製法としては、例えば、Protein Aを用いた精製法、硫酸アンモニウムを用いた塩析による方法(例えば、Nisonoffらの方法(Nisonoff, A. Methods in MedicalResearch, Eisen H. N. (ed). Year Book Medical Publishers, Chicago, (1964) 10, 134-141))、イオン交換クロマトグラフィー等によって、イムノグロブリン画分を精製する方法、あるいは、特定のポリペプチドを固定化したカラムを用いたアフィニティーカラムクロマトグラフィーによって精製する方法等が挙げられる。
【0018】
また、モノクローナル抗体を作製する場合には、上記と同様にして免疫した動物の脾臓から抗体産生細胞を採取し、常法によって、同系動物等由来のミエローマ細胞等の培養細胞と融合させてハイブリドーマを作製(Milstein et al., Nature, 256, 495(1975))する。培養を行って、適宜ELISA法やウエスタンブロッティング法等により抗体価を確認して、目的のエピトープを認識するモノクローナル抗体を産生し、かつ、抗体産生能の高いハイブリドーマを選択すればよい。かくして選択されるハイブリドーマの培養上清から、目的のモノクローナル抗体を得ることができる。モノクローナル抗体を用いる場合には、PAI−1とウロキナーゼとPAI−1の複合体とをそれぞれ認識することができるように、エピトープが異なる2種類以上のモノクローナル抗体を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
免疫に用いるPAI−1としては、例えば、WI38 VA13 2RA株(ATCCCCL75.1)、HT1080株(ATCC CCL121)、CaSKi株(ATCC CRL1550)等のヒト由来PAI−1産生細胞株の培養上清から得ることができる。このような細胞株を、無血清DMEM培地等の適当な培地で培養すれば、培養液中にPAI−1が分泌される。その際、培地にデキサメタゾンを2×10-6M程度添加しておくと、PAI−1が効率よく産生される。これを任意の蛋白質の精製法を用いて精製すれば、精製PAI−1を得ることができる。尚、細胞株の培養にウシ胎児血清(FCS)を含む培地を用いた場合は、抗FCSポリクローナル抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより、PAI−1標品からFCSを除去することができる。
【0020】
また、PAI−1は、遺伝子組換え技術により作製されたPAI−1を発現する大腸菌を培養することによっても得られる。培養上清からのPAI−1の粗精製は、後記実施例では、抗PAI−1マウスモノクローナル抗体固定セファロース4B(ファルマシア社製)を用いたアフィニティクロマトグラフィーにより行ったが、モノクローナル抗体の代わりにコンカナバリンA固定セファロースによって粗精製することもできる。得られた粗精製物をゲル濾過クロマトグラフィーにより分画することによって、さらに精製されたPAI−1が得られる。各フラクション中のPAI−1の相対量は、SDS−PAGE、ウェスタンブロット法で確認できる。
【0021】
かくして得られる精製PAI−1は、免疫原として用い得るだけでなく、各種の免疫学的手法において、標準品としても用いることができる。例えば、上記のようにして得られたPAI−1に対する抗体は、精製PAI−1との反応性を、ラテックス凝集免疫測定法やウエスタンブロッティング法等により調べることによって評価することができる。例えば、ウエスタンブロッティング法により調べる場合には、精製PAI−1をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に供し、泳動後のゲルをニトロセルロース膜等に転写し、前記抗体、抗体の調製に用いた免疫動物のイムノグロブリンに対する他の動物の抗体をアルカリフォスファターゼ等で標識した二次抗体、及び酵素反応により発色する基質色素と順次インキュベートして発色させることにより、精製PAI−1と作製された抗体との反応性を調べることができる。かくして評価されたポリクローナル抗体の中から、PAI−1の遊離体とウロキナーゼとPAI−1の複合体との両方に対して特異的に結合する抗体を選択し、これを本発明の方法に用いることが好ましい。すなわち、反応性を評価する際に、ウロキナーゼとの複合体等を含む種々の形態のPAI−1や、他の血漿タンパクも同じゲルで泳動し、前記抗体がPAI−1の活性や形態に関わらず結合し、他の血漿タンパクには結合しないことを確認して選択することが好ましい。
【0022】
例えば、PAI−1の遊離体として、精製PAI−1を活性化することにより得られる活性型PAI−1や、これを不活性化することにより得られる潜在型PAI−1等を用いることができる。また、PAI−1の複合体として、ウロキナーゼとPAI−1との複合体を用いることができる。具体的には、例えば、活性型PAI−1は、精製PAI−1を4Mグアニジン塩酸(pH7.2)中、37℃2時間反応させた後、少量の0.1M酢酸を添加し反応を停止し、20mMトリス-塩酸(pH7.6)/0.01% Tween80で4℃20時間透析することにより得ることができる。潜在型PAI−1は、活性型PAI−1を2回凍結融解することにより調製することができる。ウロキナーゼとPAI−1の複合体は、前記活性型PAI−1をヒト重鎖ウロキナーゼ(American diagnostica社製)とともに37℃ 30分間反応させることにより複合体を形成させ、これを用いることができる。本発明においては、これら全ての形態のPAI−1に結合する能力を有する抗体が特に好ましく用いられる。
【0023】
なお、本発明において抗体とは、全長の抗体のみならずその断片をも含む。例えば、抗体は、IgGそのものでもよいが、IgGをペプシン、パパインなどの消化酵素、あるいはジチオスレイトール、メルカプトエタノールなどの還元剤を用いてF(ab’)2、Fab、Fab’などにフラグメント化した機能性のある断片も同様に用いることができる。IgMなどの他のクラスの抗体も同様の処理をして使用することができる。
【0024】
また、本発明の抗体は、後述する種々の免疫学的手法において用いられる際に、適宜固相に担持されたり、標識化されて用いられることがある。このような抗体も、すべて本発明の範囲内である。
【0025】
<3>PAI−1、および/または、ウロキナーゼとPAI−1の複合体の存在または量の免疫学的手法による検出
本発明においては、ヒト尿中のPAI−1、および/または、ウロキナーゼとPAI−1の複合体の存在または量の検出は、免疫学的手法により行われる。免疫学的手法としては、それ自体公知の通常用いられる蛋白質の免疫学的検出方法から任意に選択して用い得る。具体的には、例えば、酵素免疫測定法、ラテックス凝集免疫測定法、化学発光免疫測定法、蛍光抗体法、放射免疫測定法、免疫沈降法等が挙げられ、その中でも、酵素免疫測定法もしくはラテックス凝集免疫測定法が好ましく用いられる。
【0026】
酵素免疫測定法、化学発光免疫測定法、蛍光抗体法、放射免疫測定法等の標識化された二次抗体を用いる方法により検出を行う場合には、サンドイッチ法または競合法により行うこともできる。サンドイッチ法の場合には、固相化される一次抗体あるいは標識化抗体のいずれかが抗PAI−1抗体であればよい。例えば、ウロキナーゼとPAI−1の複合体の存在または量を検出する場合には抗PAI−1抗体と抗ウロキナーゼ抗体を組み合わせて用いることができる。PAI−1、および、ウロキナーゼとPAI−1の複合体の両方の存在または量を検出する場合には、一次抗体および標識化抗体の両方に抗PAI−1抗体を用いる。本発明においては、一次抗体と標識化抗体の両方に抗PAI−1抗体を用いることが好ましい。
【0027】
固相としては、抗体を担持させるのに使用できる不溶性担体であればよく、プラスチック、ガラス等の物質からなるプレート、試験管もしくはチューブ等、ビーズ、ボール、フィルター、メンブレン等を用いることができる。また、磁性粒子等を用いることもでき、具体的には、例えば、四酸化三鉄(Fe3O4)、三酸化二鉄(Fe2O3)、種々のフェライト、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、クロムなどの金属、コバルト、ニッケル、マンガンなどの合金からなる微粒子等の磁性粒子が好ましく用いられる。さらに、これらの磁性粒子を、ポリスチレン等の高分子のラテックスや、ゼラチン、リポソーム等の内部に含まれる形で調製したり、表面に固定化したものも用いることができる
【0028】
一般的な測定の手法は、それ自体公知の通常用いられる方法に準じて行うことができるが、例えば、固相化抗体と試料とを反応させ、同時に、または洗浄の後に標識化抗体と反応させて、免疫複合体を形成させる。未反応の標識化抗体を洗浄除去した後に、結合した標識化抗体の量により試料中に存在する抗原の量を求めることができる。
前記したような磁性粒子を用いた場合には、例えば、永久磁石、電磁石等で磁場を与え、磁力を利用することにより未反応の抗体等の洗浄操作(B/F分離)を行うこともできる。
【0029】
標識化抗体の量は、酵素免疫測定法の場合には、標識化した酵素にその基質を反応させ、反応生成物の量を光学的手法等により測定すればよい。化学発光免疫測定法の場合には、発光反応系による発光量を測定する。蛍光抗体法の場合には蛍光物質に由来する蛍光強度を、放射免疫測定法の場合には、放射性物質由来の放射線量を測定すればよい。標識物質の具体例としては、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ等の酵素、フルオレセインイソチアネート、希土類金属キレート等の蛍光物質、3H、14C、125I等の放射性同位体、ビオチン、アビジン、化学発光物質等が挙げられる。酵素、化学発光物質等の場合には、それ自体単独では測定可能なシグナルをもたらすことはできないことから、それぞれ対応する適当な基質等を選択して用いればよい。
【0030】
ラテックス凝集免疫測定法を用いる場合には、例えば、抗体を担持させる固相担体としては、ラテックス、ゼラチン、リポソーム、赤血球、シリカ、スチレン−ブタジエン共重合体、アルミナ、またはセラミックス等の粒子を用いることができる。中でもラテックス粒子が好ましく用いられ、ポリスチレンラテックス、スチレンとジビニルベンゼンの共重合体、アクリル酸とスチレンの共重合体、スチレンとマレイン酸の共重合体、スチレンとメタクリル酸の共重合体、スチレンとアクリル酸とアルキルアクリレートなどの共重合体、酢酸ビニルとアクリル酸の共重合体等が挙げられる。ラテックス粒子の粒径としては、0.1〜1.0μm程度が好ましい。これらの担体粒子に、物理的吸着法、化学結合法等を利用して抗PAI−1抗体を担持させる。この固相担体に担持された抗体と試料とを反応させ、免疫複合体を形成させることにより凝集体を生じさせ、透過光や散乱光を利用して光学的方法により測定したり、目視により判定すればよい。
【0031】
本発明において試料として用いられるヒト尿としては、随時尿、蓄尿等があるが、臨床医学的な立場から、随時尿が好ましく用いられる。採取された尿は、直ちに解析に供されることが好ましいが、4〜−80℃、好ましくは4〜−20℃等の低温条件下で保存しておくこともできる。保存に際しては、必要に応じて蛋白質の変性等を抑制するような保存剤や、腐敗を防止するための防腐剤等を添加してもよい。また、これらの試料は、必要に応じて濃縮、精製等の前処理を行ってから解析に供してもよいが、濃縮の操作を加えずに未濃縮尿のまま解析に供されることが好ましい。
【0032】
試料として解析に供されるヒト尿の量としては、用いる免疫学的手法や抗体の感度等により適宜調節すればよい。具体的には、例えば、酵素免疫測定法を用いて測定を行う場合には、用いるELISAプレートのウェルの内容量等に応じて、試料量を決定すればよい。例えば、ラテックス凝集免疫測定法を用いる場合には、試料量とラテックス試薬の量の比率を様々に変えて凝集の程度を確認し、最も良く凝集を生じる比率に設定すればよい。
【0033】
<4>本発明の糖尿病性腎症の進展度の判定方法
上記<2>および<3>において詳述した抗体および免疫学的手法を用いて、ヒト尿中のPAI−1および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体の存在または量の検出を行い、糖尿病性腎症の進展度の判定を行う。
【0034】
具体的には、例えば、糖尿病性腎症の疑いのある患者から検体として採取された尿を、前記抗体を用いた免疫学的手法により解析し、該尿中のPAI−1および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体の存在または量を検出する。一方で健常人から検体として採取された尿を同様に解析し、該尿中のPAI−1および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体の存在または量を検出し、これらの結果を比較、解析すればよい。
【0035】
ここで、健常人の検体ではPAI−1および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体が実質的に検出されず、糖尿病性腎症の疑いのある患者から採取された検体においてPAI−1および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体の存在が検出された場合に、該患者は糖尿病性腎症であると判定することができる。あるいは、健常人の検体において検出されたPAI−1および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体の量に比べて、糖尿病性腎症の疑いのある患者の検体において検出されたPAI−1および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体の量が有意に多い場合に、該患者は糖尿病性腎症であると判定することができる。また、糖尿病性腎症の疑いのある患者の検体において検出されたPAI−1および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体の量に応じて、その量が多いほど、糖尿病性腎症が進展していると判定することができる。
【0036】
一方、糖尿病性腎症の疑いのある患者の検体においても、健常人の検体においても、PAI−1および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体が検出されなかった場合、もしくは、糖尿病性腎症の疑いのある患者の検体において検出されたPAI−1および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体の量と、健常人において検出されたPAI−1および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体の量に有意な差がない場合には、該患者は糖尿病性腎症ではないと判定される。
【0037】
ここで、健常人において検出されたPAI−1および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体の量は、あらかじめ多数の検体を用いて解析を行った結果から平均値もしくは平均的な濃度範囲を求めておいて、これらを用いて比較、解析を行ってもよい。また、例えば、糖尿病性腎症の疑いのある患者の検体において検出されるPAI−1および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体の量と、健常人において検出されるPAI−1および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体の量のそれぞれの平均値もしくは平均的な濃度範囲が得られている場合には、判定のための閾値を設定し、測定した検体中に存在するPAI−1および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体の量が該閾値よりも大きかった場合に、該患者は糖尿病性腎症であると判定することができる。
【0038】
また、さらに、糖尿病性腎症の病期分類に応じて、第I期〜第V期のそれぞれの期にある患者から得られた複数の検体を用いて、各期におけるPAI−1および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体の量の平均値もしくは平均的な濃度範囲を求め、それぞれの期ごとに判定のための濃度範囲を設定しておくことにより、糖尿病性腎症の疑いのある患者から得られた検体を解析し、得られた測定値がどの期の濃度範囲に含まれるかを指標にして、該患者の糖尿病性腎症の進展度を判定することもできる。
【0039】
ここで、解析において「有意に多い」とは、統計学的な解析の結果、有意差があることを意味する。また、検体として用いられるヒト尿は、採取方法、採取時間帯、保存方法等をそろえたもので比較、解析されることが好ましい。
【0040】
免疫学的手法を用いて検出された、尿中のPAI−1および/またはウロキナーゼとPAI−1の複合体の量を示す値は、患者間の腎機能の差を補正する補正処理等を行って、統計処理を行ってもよい。このような補正により、患者の個体差、尿を採取した時間等により生じる差を補正して比較、解析を行うことができる。ただし、腎機能の差を補正する指標は、腎不全患者等の腎機能が失われた患者の尿においては無意味であるので、腎機能が保持されている患者から採取された尿において行われることが好ましい。
【0041】
このような補正に用いられる腎機能の指標としては、クレアチニン(Cr)、クレアチニンクリアランス(CCr)、尿素窒素(BUN)、尿中β-D-Nアセチルグルコサミニダーゼ等が挙げられる。中でも、医薬・臨床検査分野では、一般的にCCrまたはCrが好ましく用いられる。
【0042】
具体的には、例えば、PAI−1値の生データについてクレアチニンを指標にした補正を行う方法としては、尿中PAI−1値が一定の値よりも低い検体、例えば0.03ng/mL未満の検体では、尿中Cr値が中央値以上の試料のみを採用する。尿中PAI−1値を尿中Cr値で除した値を、尿中補正PAI−1値とすればよい。
【0043】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0044】
【実施例1】
精製PAI−1、抗PAI−1ポリクローナル抗体、ラテックス試薬、及びウロキナーゼとPAI−1の複合体の調製
特開平9−33524号公報に記載の方法に準じて、抗PAI−1抗体、該抗体を担持させたラテックス試薬、および精製PAI−1(PAI−1標準品)を調製した。
【0045】
(1)精製PAI−1は、具体的には、以下のようにして調製した。ヒト由来PAI−1産生細胞株WI38 VA13 2RA(ATCC CCL75.1)を、10%ウシ胎児血清(FCS)添加DMEM培地(日水製)で、ローラーボトル中で増殖させ、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で細胞を洗浄した後、デキサメタゾン2×10-6Mを含む無血清DMEM培地中で10日間培養した。その後、培養上清を回収し、抗PAI−1マウスモノクローナル抗体固定セファロース4Bアフィニティカラムに通してPAI−1を吸着させた後、3M MgCl2で溶出し、粗精製PAI−1を得た。抗PAI−1マウスモノクローナル抗体固定セファロース4Bは、マウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ(米国カリフォルニア、ラ ジョラのスクリップスクリニック アンド リサーチファウンデーション(Scripps Clinic and Research Foundation)のD.J.ロスクトフ(D. J. Loskutoff)博士より恵与された。J. Clin. Invest., 83, 1747-1752 (1989)参照)から抗PAI−1モノクローナル抗体を調製し、これをCNBr−セファロース4B(ファルマシア社製)に結合することにより作製した。
【0046】
上記で得られた溶出物を、抗FCSポリクローナル抗体固定化セファロース4Bアフィニティカラムに通して培養液中の残存FCSの吸着除去を行い、精製PAI−1を得た。
【0047】
(2)抗PAI−1ポリクローナル抗体及びラテックス試薬は、次のようにして調製した。上記で得られたPAI−1を、限外濾過膜(アミコン社、YM−10)を用いて400μg/mlに濃縮した。これとフロイントの完全アジュバントとの混合物でニュージーランド白色ウサギを免疫し、8〜10週間後に追加免疫を行った。初回免疫より10〜14週間後に採血し、抗PAI−1抗血清を得た。この上記抗PAI−1血清を、Nisonoffらの方法(Nisonoff, A. Methods in Medical Research, Eisen H. N. (ed). Year Book Medical Publishers, Chicago, (1964) 10, 134-141)により精製し、抗PAI−1ポリクローナル抗体を得た。すなわち、抗血清から硫酸アンモニウム塩析により、粗γ−グロブリン分画を得、ペプシン消化によりF(ab’)2を得た(以下、「抗PAI−1抗体」という)。このPAI−1 F(ab’)2を、平均粒径0.53μmのポリスチレンラテックス(アレクソントレンド社製)表面に常法により固定し、ラテックス試薬とした。試薬中のラテックス濃度は0.1〜0.5%であり、PAI−1 F(ab’)2の濃度は0.025〜0.25μg/μlであった。
【0048】
抗PAI−1抗体は、活性型PAI−1、潜在型PAI−1、およびウロキナーゼとPAI−1の複合体に反応性を有することを、あらかじめLPIA法(ラテックス凝集免疫測定法)により確認した。
活性型PAI−1は、精製PAI−1を4Mグアニジン塩酸(pH7.2)中、37℃2時間反応させた後、少量の0.1M酢酸を添加し反応を停止し、20mMトリス-塩酸(pH7.6)/0.01% Tween80で4℃20時間透析することにより得た。潜在型PAI−1は、活性型PAI−1を2回凍結融解することにより調製した。また、活性型PAI−1をヒト重鎖ウロキナーゼ(American diagnostica社製)とともに37℃ 30分間反応させることにより複合体を形成させ、これをウロキナーゼとPAI−1の複合体として用いた。
【0049】
【実施例2】
ラテックス凝集免疫測定法を用いた測定系の構築
まず、精製PAI−1を用いてPAI−1測定用検量線を作製した。Bradfordの方法(Anal. Biochem., 72, 248-254 (1976))を用いて精製PAI−1のタンパク質量を定量し、BSA(ウシ血清アルブミン)添加トリス緩衝液で0.094、1.88、3.75、7.5、15ng/mlに希釈し、PAI−1測定用標準品とした。
【0050】
このPAI−1標準品溶液各40μl、BSA含有トリス−塩酸緩衝液35μl、前記ラテックス試薬40μlを混合し、反応キュベットに自動分注後、近赤外(950nm)の吸収の増加を10分間測定することにより、免疫反応を観察した。測定は、ラテックス凝集全自動測定器(三菱化学(株)製:LPIA−200システム)を用いて行い、20分以内に完了した。その結果、PAI−1量とラテックス凝集率は直線性を示し、検量線を得た。
【0051】
【実施例3】
各種腎臓病患者の随時尿のラテックス凝集免疫測定法による解析
上記実施例2で構築したラテックス凝集免疫測定法および検量線を用いて、慢性腎炎患者11名、糖尿病性腎症患者25名、ネフローゼ症候群患者6名、健常人12名の随時尿を検体として解析を行った。
【0052】
各検体40μl、BSA含有トリス−塩酸緩衝液35μl、前記ラテックス試薬40μlを混合し、反応キュベットに自動分注後、近赤外(950nm)の吸収の増加を10分間測定することにより、免疫反応を観察した。測定は、ラテックス凝集全自動測定器(三菱化学(株)製:LPIA−200システム)を用いて行い、20分以内に完了した。
【0053】
得られた測定値の中で、尿中PAI−1値が0.03ng/mL未満の検体では、尿中Cr値が中央値の56mg/ml以上のサンプルのみを採用して尿中PAI−1値を0.02ng/mlと仮定し、尿中PAI−1値を尿中Cr値で除した値を尿中補正PAI−1値とした。
【0054】
その結果、糖尿病性腎症群では尿中補正PAI−1値が0.20(尿中PAI−1=0.00−8.50)であったのに対して、慢性腎炎群は0.03(尿中PAI−1=0.00−0.28)、ネフローゼ症候群の群では0.05(尿中PAI−1=0.01−0.44)、健常人群は0.02(尿中PAI−1=0.00−0.05)であった。これらの値より、糖尿病性腎症のみにおいて尿中補正PAI−1値が有意に高く、尿中PAI−1値が糖尿病性腎症の検出に非常に有用な指標となることが示された(図1)。
【0055】
【実施例4】
酵素免疫測定法(ELISA法)を用いた測定系の構築
実施例1で得た抗PAI−1ポリクローナル抗体を精製し、PBS(Phosphate buffered saline)にて0.3mg/mLに希釈し、96穴EIAプレート(ヌンク社製)に各ウェル100μLずつ添加し、4℃にて一晩コーティングした。次に過剰の抗体をPBS+0.1%Tween20で洗浄除去したのち、6%BSAを含むPBSを各ウェル200μLずつ添加し、4℃で一晩ブロッキングを行った。
【0056】
PBS+0.1%Tween20でブロッキング液を洗浄除去したのち、100μLの尿検体、または実施例2で得たPAI−1測定用標準品を添加し、室温にて1時間反応を行った。PBS+0.1%Tween20で反応液を洗浄除去したのち、Pierce社製ビオチン標識試薬を用いて標識化しておいた0.05mg/mLビオチン標識抗PAI−1ポリクローナル抗体100μLを添加し、室温にて1時間反応を行った。反応後、上記と同様に洗浄を行ったのち、0.1μg/mLアビジン結合アルカリフォスファターゼ溶液(Pierce社製)100μLを添加し、室温にて1時間反応を行い、洗浄後、アルカリフォスファターゼ/リン酸基質液(Pierce社製)を各ウェルに100μL添加し、37℃にて30分間反応させた。
【0057】
マイクロプレート用比色計で450nmの吸光値を測定し、695nmの吸光値をバックグランウンドとして差し引き、解析を行った。
【0058】
【実施例5】
健常人および糖尿病患者の随時尿のELISA法による解析健常人3名、糖尿病患者でDICから多臓器不全を起こして入院中の患者5名、糖尿病と診断された外来患者6名の随時尿を検体として、上記実施例4に記載の方法に従って、ELISA法を用いて測定した。測定にあたっては、採取された尿は濃縮せずにそのまま用いた。ここで、糖尿病患者でDICから多臓器不全を起こして入院中の患者とは、糖尿病製腎症が進行している患者であり、本発明の方法で判定結果が陽性になると考えられる群である。糖尿病と診断された外来患者とは、糖尿病性腎症を発症しているかどうかが不明の群である。
【0059】
解析の結果、DICから多臓器不全を起こして入院中の重症患者群では、全例において尿中PAI−1値が有意に高値を示した。一方、糖尿病と診断された外来患者群は健常人に比べ有意に高値を示したが、各検体ごとの測定値にはばらつきが見られ、有意に高値をしめしたものと、健常人との有意差が見られないものとがあった(図2)。この結果より、本発明の方法を用いれば、糖尿病性腎症の進展度を判定することができることが示された。
【0060】
【発明の効果】
本発明の方法によって、簡便性、迅速性、および特異性に優れた糖尿病性腎症の進展度の判定法が提供される。本発明の方法によれば、通常の尿試験紙法や臨床症状による判定がなされるより前に、患者への侵襲性の低い尿検体を用いて、早期に糖尿病性腎症を検出し進展度を判定することができる。早期に糖尿病性腎症を検出し進展度を判定することにより、早期に適切な治療を施すことができ、その発症率や腎不全への進行を大きく抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 各種腎疾患での尿中補正PAI−1値の補正値の比較を示す図である。縦軸にPAI−1量(クレアチニン(g)に対する総PAI−1量(μg))、横軸に各検体名を示した。
【図2】 健常人及び患者における尿中PAI−1濃度を示した図である。縦軸にPAI−1濃度、横軸に各検体名を示した。

Claims (5)

  1. ヒト尿中の、プラスミノーゲン アクチベーター インヒビター−1、および/または、ウロキナーゼとプラスミノーゲン アクチベーターインヒビター−1の複合体の存在または量を免疫学的手法により検出することを特徴とする糖尿病性腎症の進展度の判定方法。
  2. プラスミノーゲン アクチベーター インヒビター−1、および、ウロキナーゼとプラスミノーゲン アクチベーター インヒビター−1の複合体の存在または量を免疫学的手法により検出することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. ヒト尿が未濃縮尿であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 免疫学的手法による検出が、プラスミノーゲン アクチベーター インヒビター−1、および、ウロキナーゼとプラスミノーゲン アクチベーター インヒビター−1の複合体に特異的に結合するポリクローナル抗体を用いて行われることを特徴とする請求項2に記載の方法。
  5. 免疫学的手法が、酵素免疫測定法またはラテックス凝集免疫測定法である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
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