JP4092453B2 - 水酸化アルミニウム粉末の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水酸化アルミニウム粉末の製造方法に関するものである。詳細には、樹脂に対し高充填可能な充填材としての水酸化アルミニウム粉末の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水酸化アルミニウム粉末は樹脂成形体の充填材として広く使用され、特に、難燃性樹脂成形体の分野で需要が増加している。
【0003】
充填材として用いられる水酸化アルミニウム粉末は、通常、アルミン酸ナトリウム溶液を加水分解して得られる水酸化アルミニウムを振動ミルで粉砕する方法により製造されている。
【0004】
一般に、樹脂成形体の難燃性を高めるためには、多くの水酸化アルミニウム粉末を樹脂に充填することが望ましいが、この方法で製造した水酸化アルミニウム粉末は、樹脂に多量に充填すると成形に支障をきたすため、高充填することが困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、樹脂への充填性を改良し、高充填可能な水酸化アルミニウム粉末の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、水酸化アルミニウム粉末の製造方法について検討を重ね、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、原料水酸化アルミニウムを捏和機で粉砕することを特徴とする水酸化アルミニウム粉末の製造方法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる原料水酸化アルミニウムはAl2O3・3H2Oの組成式を有し、その結晶構造は例えばギブサイト型、バイヤライト型等であり、好ましくはギブサイト型である。この原料水酸化アルミニウムは過飽和状態にあるアルミン酸ナトリウム溶液に種晶を添加し、攪拌しながら加水分解して水酸化アルミニウムを析出させ、得られた水酸化アルミニウムをろ過洗浄し、乾燥する方法によって製造することができる。また、前記の組成式や結晶構造を有するものであれば、市販の水酸化アルミニウムを用いてもよい。
【0009】
この原料水酸化アルミニウムは粉末であることが好ましく、その平均二次粒子径は1μm〜150μm、好ましくは5μm〜70μmであり、その一次粒子の平均粒子径(以下、平均一次粒子径という。)はその平均二次粒子径の1/8〜1/2、好ましくはその平均二次粒子径の1/6〜2/5である。平均二次粒子径はレーザー散乱回折法により求めることができ、平均一次粒子径は顕微鏡法により求めることができる。
【0010】
本発明では、前記の原料水酸化アルミニウムを捏和機を使って粉砕する。捏和機はニーダーと呼ばれることもあり、通常、粉末と樹脂とを混合する目的で使われる装置である。本発明では、原料水酸化アルミニウムを粉砕するために捏和機を適用することによって、樹脂へ高充填可能な水酸化アルミニウム粉末が製造できる。
【0011】
捏和機内には、固相として原料水酸化アルミニウムが存在し、その他に、通常、気相として空気等、液相として水等が存在する(液相として水が存在しないときもある)。粉砕時における捏和機内のそれらの状態が粉砕により得られる水酸化アルミニウム粉末の物性に影響を及ぼすことがあるので、粉砕は、固相、液相及び気相の充填形態が(a)固相及び気相が連続し液相が実質的に存在しないドライ(Dry)状態、(b)固相及び気相が連続で液相が不連続なペンデュラー(Pendular)状態又は(c)固相、気相及び液相が連続なファニキュラーI(Funicular I)状態で行われることが好ましい。このような充填形態は外観上、サラサラないしパサパサした混合系を構成している。
【0012】
捏和機としては、原料水酸化アルミニウム等を圧縮下で剪断力を加えて練ることができる装置が挙げられ、例えば、コニーダー、オンレーター、セルフクリーニング型捏和機、ギヤコンパウンダー、一軸式スクリュー型捏和機、二軸式スクリュー型捏和機等がある。捏和機は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組合せて用いてもよい。また、捏和機は回分式、連続式のいずれの形式も適用できるが、単位重量当りの粉砕エネルギーを低減する観点からは連続式が好ましい。連続式捏和機を使用するとき、捏和機内の原料水酸化アルミニウムが必ずしも全体的に粉砕されている必要はなく、例えば原料水酸化アルミニウムの移送方向(軸方向)に順次粉砕度が高くなるようにすればよい。
【0013】
原料水酸化アルミニウム等を圧縮するために捏和機に要求される圧縮能力は、具体的には、下限が5kgf/cm2(0.5MPa)、さらには10kgf/cm2(1MPa)であることが好ましく、上限が500kgf/cm2(50MPa)、さらには200kgf/cm2(20MPa)であることが好ましい。スクリュー型捏和機の場合、圧縮能力は例えばスクリューの形状、長さや回転数、ローター(原料をスクリューに移送する作用をする。)の回転数等により調節することができる。原料水酸化アルミニウムが粒子径の小さい一次粒子が凝集した構造を有する場合、捏和機を使って前記範囲の圧縮下で粉砕することにより、この原料水酸化アルミニウムは一次粒子が実質的に破壊されることなく、効率良く凝集構造がとかれることになる。したがって、一次粒子の粉砕に費やされる粉砕エネルギーを節約できることから、樹脂へ高充填可能な水酸化アルミニウム粉末を少ない粉砕エネルギーで得ることができる可能性がある。
【0014】
粉砕は、粉砕時においてドライ状態、ペンデュラー状態又はファニキュラーI状態が達成されるように、原料水酸化アルミニウムの含液率を粉砕前に調節してから行うことが好ましい。含液率の調節は、例えば、原料水酸化アルミニウムを乾燥したり又は水、アルコール等の液体を添加したりして行えばよい。好ましい含液率は、原料水酸化アルミニウムの平均二次粒子径や粒度分布等によって異なり一義的ではないが、例えば、30重量%以下、より好ましくは10重量%以下であり、また1重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。含液率が高くなり過ぎると、原料水酸化アルミニウムを効率的に粉砕することは困難となる。
【0015】
また、表面処理剤の共存下に粉砕を行ってもよい。この表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤及びアルミネートカップリング剤等の各種カップリング剤、オレイン酸及びステアリン酸等の脂肪酸並びにそれらの脂肪酸エステル、リン酸エステル、アルキルリン酸エステル、メチルシリケート及びエチルシリケート等のシリケート等が挙げられる。
【0016】
粉砕時に水等の液体を添加したり、水等を含む原料水酸化アルミニウムを粉砕したとき、粉砕後の水酸化アルミニウム粉末には、通常、乾燥が施される。乾燥は例えば、公知の乾燥機を使う方法、又は粉砕を連続式捏和機で行うときにはこの捏和機の一部を加熱する方法等によって行うことができる。
【0017】
こうして得られる水酸化アルミニウム粉末は、通常、BET比表面積が1.2m2/g〜4m2/gであり、振動ミルで粉砕して得られる同一平均粒子径の水酸化アルミニウム粉末に比較してBET比表面積が高くなる傾向にある。この水酸化アルミニウム粉末を樹脂へ充填して成形体とする場合、樹脂と水酸化アルミニウム粉末の接触面積を、振動ミルで粉砕して得られる水酸化アルミニウム粉末を用いるときに比べて増加させ、接触面の強度を向上させることができる可能性がある。
【0018】
本発明により得られる水酸化アルミニウム粉末は、樹脂へ高充填することが可能であり、難燃性樹脂成形体や人工大理石等の充填材として好適である。適用可能な樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレン及び/又はプロピレンと例えばブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、4−メチルペンテン−1、デセン−1等の他のα−オレフィンとの共重合体で代表されるポリオレフィン、スチレン(共)重合体、メタクリル酸メチル(共)重合体、ポリアミド、ポリカーボネート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリフェニレンオキサイド、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリメチルペンテン等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。もちろん、この水酸化アルミニウム粉末は前記の樹脂に限らず、他の合成樹脂、天然樹脂又は紙等の充填材として使用することも可能である。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。これら実施例では、水酸化アルミニウム粉末のフタル酸ジオクチル吸油量(以下、DOP吸油量という。)を測定することによって、樹脂への充填性を評価している。水酸化アルミニウム粉末のDOP吸油量が低いほど、樹脂への充填性が向上し、単位重量当りの樹脂に対してより多くの水酸化アルミニウム粉末を充填することができる。原料水酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウム粉末の物性測定は以下の方法で行った。
【0020】
原料水酸化アルミニウムの物性
結晶構造:X線回折法により求めた。
平均二次粒子径(μm): レーザー散乱式粒度分布計〔リード アンド ノースラップ(LEED&NORTHRUP)社製マイクロトラックHRA〕により測定した。
平均一次粒子径(μm): 走査型電子顕微鏡により観察して求めた。
DOP吸油量(ml/100g): JIS-K6221に準拠した方法で測定した。
【0021】
水酸化アルミニウム粉末の物性
平均粒子径(μm): レーザー散乱式粒度分布計〔リード アンド ノースラップ(LEED&NORTHRUP)社製マイクロトラックHRA〕により測定した。
DOP吸油量(ml/100g): JIS-K6221に準拠した方法で測定した。
BET比表面積(m2/g): 窒素吸着法により測定した。
【0022】
参考例1
過飽和状態にあるアルミン酸ナトリウム溶液に種晶を添加し、攪拌しながら加水分解して粗水酸化アルミニウムを析出させた後、粗水酸化アルミニウムをろ過洗浄し、脱水して原料水酸化アルミニウム(結晶構造ギブサイト型、平均二次粒子径68μm、平均一次粒子径12μm、DOP吸油量29.9ml/100g、含水率5%)を得た。
【0023】
得られた原料水酸化アルミニウムを一軸式スクリュー型捏和機MP−30−1型(宮崎鉄工(株)製、スクリュー長さ210mm、スクリュー直径30mm、スクリュー回転数49rpm、ローター回転数10rpm)に連続的に投入して粉砕した。次いで、得られた粉砕物を前記一軸式スクリュー型捏和機に連続的に投入して粉砕した後、120℃で乾燥し水酸化アルミニウム粉末を得た。得られた水酸化アルミニウム粉末の物性を表1に示す。
【0024】
比較例1
参考例1で用いたと同じ原料水酸化アルミニウムを乾燥して含水率0%としたた後、振動ミル(内容積2L、原料水酸化アルミニウム仕込量0.3kg、8mmφボール仕込量2.9kg、振幅3mm)で30分間粉砕し、水酸化アルミニウム粉末を得た。得られた水酸化アルミニウム粉末の物性を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
参考例2
市販の水酸化アルミニウムH−100ME(商品名、昭和電工(株)より入手可能、結晶構造ギブサイト型、平均二次粒子径67μm、平均一次粒子径22μm、DOP吸油量27.8ml/100g)を含水率5%に調整し、一軸式スクリュー型捏和機MP−30−1型(宮崎鉄工(株)製、スクリュー長さ210mm、スクリュー直径30mm、スクリュー回転数49rpm、ローター回転数10rpm)に連続的に投入して粉砕した。次いで、得られた粉砕物を、前記一軸式スクリュー型捏和機に連続的に投入して、2回くりかえし粉砕した後、120℃で乾燥し水酸化アルミニウム粉末を得た。得られた水酸化アルミニウム粉末の物性を表2に示す。
【0027】
比較例2
参考例2で用いたと同じ原料水酸化アルミニウムを振動ミル(内容積2L、原料水酸化アルミニウム仕込量0.3kg、8mmφボール仕込量2.9kg、振幅3mm)で15分間粉砕し、水酸化アルミニウム粉末を得た。得られた水酸化アルミニウム粉末の物性を表2に示す。
【0028】
比較例3
比較例2において、振動ミルの粉砕時間を30分間に変えた以外は同様にして行った。得られた水酸化アルミニウム粉末の物性を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
実施例1
市販の水酸化アルミニウムB−30(商品名、アルコア化成(株)より入手可能、結晶構造ギブサイト型、平均二次粒子径61μm、平均一次粒子径20μm、DOP吸油量34.2ml/100g)を含水率2%に調整し、一軸式スクリュー型捏和機MP−30−1型(宮崎鉄工(株)製、スクリュー長さ210mm、スクリュー直径30mm、スクリュー回転数49rpm、ローター回転数10rpm)に連続的に投入して粉砕した。次いで、得られた粉砕物を、前記一軸式スクリュー型捏和機に連続的に投入して、2回くりかえし粉砕した後、120℃で乾燥し水酸化アルミニウム粉末を得た。得られた水酸化アルミニウム粉末の物性を表3に示す。
【0031】
比較例4
実施例1で用いたと同じ原料水酸化アルミニウムを乾燥して含水率0%としたた後、振動ミル(内容積2L、原料水酸化アルミニウム仕込量0.3kg、8mmφボール仕込量2.9kg、振幅3mm)で15分間粉砕し、水酸化アルミニウム粉末を得た。得られた水酸化アルミニウム粉末の物性を表3に示す。
【0032】
比較例5
比較例4において、振動ミルの粉砕時間を30分間に変えた以外は同様にして行った。得られた水酸化アルミニウム粉末の物性を表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
参考例3
過飽和状態にあるアルミン酸ナトリウム溶液に種晶を添加し、攪拌しながら加水分解して粗水酸化アルミニウムを析出させた後、粗水酸化アルミニウムをろ過洗浄し、脱水して原料水酸化アルミニウム(結晶構造ギブサイト型、平均二次粒子径81μm、平均一次粒子径16μm、DOP吸油量37.9ml/100g、含水率5%)を得た。この原料水酸化アルミニウムを一軸式スクリュー捏和機MP−100(宮崎鉄工(株)製、スクリュー長さ615mm、スクリュー直径100mm、スクリュー回転数20rpm、ローター回転数16rpm)に連続的に投入して粉砕した。次いで得られた粉砕物を、前記一軸式スクリュー型捏和機に連続的に投入して2回繰り返して粉砕した後、120℃で乾燥し水酸化アルミニウム粉末を得た。総計3回の捏和のうち、2回目の捏和時に測定した最大の圧縮圧力は10.2kgf/cm2(1.00MPa)であった。得られた水酸化アルミニウム粉末の物性を表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、DOP吸油量が低く、樹脂へ高充填可能な水酸化アルミニウム粉末を簡易に製造することができる。
Claims (3)
- 含液率1重量%以上5重量%未満であり平均二次粒子径が1μm〜150μmであり、平均一次粒子径が平均二次粒子径の1/8〜1/2である原料水酸化アルミニウムをスクリュー型捏和機で、一次粒子を実質的に破壊することなく、平均一次粒子径が平均二次粒子径の1/2超になり、BET比表面積が1.2m2/g〜4m2/gになるように粉砕することを特徴とする水酸化アルミニウム粉末の製造方法。
- 原料水酸化アルミニウムの結晶構造がギブサイト型である請求項1に記載の方法。
- スクリュー型捏和機の圧縮能力が5kgf/cm2〜500kgf/cm2である請求項1〜請求項2のいずれか1項に記載の方法。
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