JP4091255B2 - 液滴前駆物質領域の分析に基づくフローサイトメータの液滴の選択的精製および富化選別 - Google Patents
液滴前駆物質領域の分析に基づくフローサイトメータの液滴の選択的精製および富化選別 Download PDFInfo
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Description
〔発明の分野〕
本発明は、一般にフローサイトメータ(flow cytometer)といったような流体分析システムに関し、特に、予め選択されたタイプの血球といったような規定の成分の存在について、ヒト血球を含有する流体といったような流体を分析し、その後選択された複数の隣接する液滴前駆物質領域(droplet precursor region)の成分構成に基づいて、複数の収集貯蔵庫のうちの選択されたものへ、連続的に生成された流体液滴を選別するための方法に向けられている。
〔発明の背景〕
フローサイトメータは、疾病の診断または治療に対する補助として患者の体液(例えば血球)中の粒子を分析するため、医療業界において一般的に利用されている。制限的意味のない一例としては、化学療法治療の間にこのような計器は、化学療法に先立ち患者の骨髄から取り出された一定量の血液から健康な血球(ステンシル:stencil)を選別し収集するために使用することができる。1回の化学療法治療セッションがひとたび完了すると、このとき、収集された一定量のこれらの細胞は、移動(migration)および健康な血球の増殖を容易にすべく、患者の体内に戻すよう注射される。かかるフロー細胞サイトメータの例は、 Auer に対する米国特許第4,981,580号の中で記述されている。
【0002】
この目的で、図1に概略的に例示されているように、コンテナ12内に貯蔵された遠心分離済み血液標本の細胞といった分析対象の粒子は、(加圧された)連続したまたは間断のない担体流体(例えば食塩水)14の中に粒子を注入し、1またはそれ以上のレーザー18といったような光学照明サブシステムによって放射された出力ビーム16の中を通過する流路15に沿ってこの担体流体を導くことによって、分析される。中を通る担体流体によって遮断された後のレーザー出力ビーム16の経路内に光学的に配置されているのは、光検出器サブシステム21の1またはそれ以上の光検出器である。
【0003】
この光検出器サブシステム21は、細胞から反射されたものを含む、流路15内の流体(の中の粒子/細胞)の中味、細胞による光の遮断および細胞に付着した螢光染料抗体(fluorescent dye antibody)からの発光によって変調されるような光を受光するように位置づけされている。どの光検出器の出力信号がどの照明された細胞を表しているかについての混同を避けるため、サイトメータを通る流体流路は、レーザーの出力ビーム16との交差場所19を通して一度に1個の割合で粒子または細胞を通すように構成されサイズ決定されている。その結果として、光検出器サブシステム21からの出力信号が、担体流体中の粒子によって変調されるにつれて、各変調信号を、流体担体流内のそれぞれの細胞と結びつけることができる。
【0004】
光検出器サブシステム21の出力が、所望の細胞の1またはそれ以上のパラメータに結びつけられた規定の「選別」基準を満たす場合には、「選別遅延」に続いて、その細胞を含有する担体流体の液滴が、音響(例えば圧電)駆動の液滴発生器25を用いて、液滴流23の形にひとたび形成された時点で、(下流側液滴選別器30を用いて)この液滴の選別を制御するために、光検出器の出力信号を使用することができる。この目的で、光検出器の出力は標準的にはディジタル化され、次に連係する監視制御プロセッサによって実行される細胞タイプマッピングまたは同定アルゴリズムにより分析される。この分析に基づいて、制御プロセッサは、液滴を選別するかアボート(abort )するよう、液滴選別器に命令する。
【0005】
選別遅延は、交差場所19でレーザービームにより照明されるにつれてその細胞のための出力信号を光検出器が生成する瞬間と、その細胞を含有する流体流(fluid stream)の一部分が或る下流側の場所29で液滴の形に分裂する時間との間に経過する時間的間隔である。選別遅延は、問題の細胞を含有する担体流体(carrier fluid )の領域部分がレーザービームによる照射を受ける時点と、問題の細胞を含有する液滴が最終的に担体流体流(carrier fluid stream)から分離する時点との間の時間差を計数器の出力が示すように、高速選別制御クロックによって駆動される計数器といったような遅延タイマーによって規定されうる。
【0006】
液滴発生器25によって生成される個々の液滴23は、液滴発生器の出口ポート27で直ちに形成されるのではなくむしろ、出口ポート27の下流側の場所29で、自然にかつ無作為な形で分裂する。液滴が個々に形成される出口ポート27の下流側の空間内の点29は、液滴発生器25の圧電トランスジューサへの駆動信号のパラメータを変動させることによって調整でき、また液滴23が、液滴発生器25の圧電振動の周波数と同期化状態となるようにすべく規定することができる。制限的意味のない一例としては、液滴発生器25に適用される音響駆動周波数は約3〜70psiの流体圧力で約4〜100KHzでありうる。
【0007】
ひとたび液滴23が、間隔どりされた形で順次個別に形成された時点で、これらの液滴を、液滴選別器30を用いて収集コンテナ41内へ制御可能な形で選別するかまたは、アボートされるかまたは廃棄された廃棄物のコンテナ43の中へ、主走行経路24に沿って選別されない状態でこれらを通すことができる。液滴選別器の静電荷電用カラー31は、個々の液滴23が流体流から分離する液滴流22内の点をとり囲む金属リングを含んでいてよく、標準的には長さが数滴分である。これは液滴発生器25の出口ポート27の下流側で垂直に、かつ、帯電した液滴23が収集および廃棄物コンテナに向かって下向きに走行するにつれて間を通る、連係する1セットの静電(反対の極性、高圧)偏向板33および35の上流側に、位置づけされる。
【0008】
システムワークステーション50によって実行される細胞分析および選別ルーチンの制御下で、規定の荷電電圧が、偏向制御回路52を介して、選別遅延により決定された時点で荷電用カラー31に選択的に印加され、かくして細胞を含有する流体流のそのセグメントに荷電し、そのため、その点で流れから分裂し、問題の細胞を含有するあらゆる液滴がカラーにより誘起された電荷を運ぶことになる。このとき、この電荷を運ぶ個々の帯電した液滴(その1つが23Cに示されている)が、2つの相対する極性の高圧偏向板33および35の間を通過するにつれて、この液滴は、同時に同じまたは類似の電荷をもつ偏向板によってはね返される一方で、反対の電荷をもつ偏向板にひきつけられる。選別すべき細胞を含有する液滴については、この静電ステアリング作用は、帯電した液滴23Cを経路26に沿って主要流の走行経路24の片側まで、そして主要液滴流の経路の側に配置された収集コンテナ41の中に導く。
【0009】
選別電荷が加わった時点で流れから分裂する液滴のみが偏向板によって偏向されその後標的選別コンテナの中に収集されることになるため、個々の液滴23が連続する流体流22を形成するかまたはそこから分裂する点29の場所は、液滴の正確な選別にとって非常に重要である。上述のように、流体流22内の任意の与えられた細胞について、光検出器サブシステム21がその細胞についての出力信号を生成する時点とその細胞を含む液滴23が流体流から分裂する時点との間の「選別」遅延が存在する。前述したとおり、この選別遅延の間、光検出器からの出力信号はディジタル化され、次に、問題の細胞を含有する液滴が収集コンテナ41内に選別されるべきかまたは廃棄物コンテナ43内にアボートされるべきかを決定するため、(ワークステーション50により制御されるかまたはその中に設置された)システムの制御プロセッサによって実行される液滴選別ルーチンにより、分析され処理される。
【0010】
選別遅延は、担体流体の圧力、なかんづく液滴発生器出口ポートのサイズおよび表面の特徴、担体流体の粘度および圧電振動の振幅により影響されることから、液滴形成点を正確に場所設定するために予備較正サイクルが行われる。制限的意味のない例として、これは、流体流22を観察するため顕微鏡対物レンズまたはビデオシステムを用いて、レーザー交差点19から予め定められた距離のところに液滴形成点29を手動で位置づけすることによって達成できる。液滴発生器25に対する駆動信号の励振周波数と同期的に発光ダイオードをストロボ発光させることによって、流体流22から形成された液滴23は、静止しているように見えることになる。圧電アクチュエータ28に対する駆動信号の振幅を増減させることにより、液滴形成点29をレーザー交差点19から近くまたは遠くなるように動かすことができる。システムオペレータはこのとき、最初に液滴が形成する点を、基準または位置づけマークに調整することができる。
【0011】
次にオペレータは、実際の選別遅延時間から数滴以内にシステムを置くように、以前の実験に基づいて決定された選別遅延時間を、選別システムに入力する。システムを1滴の精度以内にもってくるために、オペレータは、サイズに関して生体細胞を模擬するテストビードを用いて、較正選別作業を段取りし実行する。ビードは、スライド上に選別され、スライド上のビード数が、選別されたものとしてシステムが報告したビードの数と一致するか否かを決定するために、このスライドを顕微鏡で観察する。数が一致しない場合には、システムは、選別遅延時間を変更することによってかまたは音響駆動信号を調整して、液滴形成点を移動させることによって調整される。この作業は、ビード計数が正しくなるまで必要なだけ反復的に繰返される。システムをかくしてまず較正した状態で、オペレータが流体流および液滴を移動に関して観察を行いながら、このシステムを、ドリフトについて視覚的に監視することが可能である。選別パラメータが同じであり続けるのを確認するため、上述のスライドおよびビード分析シーケンスを繰返すことができる。
【0012】
フローサイトメータの粒子(例えば血球)処理速度は、往々にして比較的低いデータ速度(例えば1秒あたり約10000〜30000細胞の範囲)に制限されることから、このときおおよそ5%以下にすぎない所望の細胞の普通の収量率に対し、高度に精製された一定量の細胞(例えばおよそ100万以上)を収集または収獲するのに必要とされる時間は、6時間にも及び得る。この比較的長い収獲時間の原因の1つは、システムの監視用コンピュータによって実行される選別ルーチンが、慣例的に、唯一良い細胞以外の「事象」(event )を含む(近くに有する)と判定された液滴を、たとえかかる液滴が所望の細胞をも含有したとしても廃棄物コンテナ内にアボートする(廃棄する)ことになる、という事実にある。良い細胞を含有するかかるアボートされた液滴は、ひとたび廃棄されると、回収不能である。
【0013】
残念なことに、データ速度を増大させることは実際には分離細胞および液滴を減少させ、かくして所望でない成分または異常(anomaly )を、空間的に所望の細胞のより近くに置き、より多くの細胞(最高50パーセント)をアボートさせることになるため、単にサイトメータを通してデータ速度(液滴処理速度)を増大させることによって収獲時間を短縮させることはできない。また、データ速度を増大させることでシステムジッタ(system jitter )が増大する可能性がある。これらの条件のいずれもが、所望の細胞を含有する液滴をアボートさせてしまうほど、問題のタイプの細胞に充分に近いところに異常を置く可能性がある。
〔発明の要約〕
本発明によると、従来のフローサイトメータ選別スキーム(scheme)がもつ上述の欠点は、新しくかつ改善されたフローサイトメータ選別機構により有効に解消され、該選別機構は、その回収可能な中味が、遠心分離済み血球を含有するものといったような、もとの貯蔵コンテナの中味のものと比べて著しく高い有用な細胞の密度をもつ複数の収集貯蔵庫のうちから選択されたものまで、連続的に生成された流体液滴を制御可能な形で選別するためのシステムの監視用コンピュータによって容易に実行可能である。
【0014】
本発明の選別ルーチンは、問題の標的液滴内に含まれている担体流体の複数の隣接前駆物質領域および標的液滴のいずれかの側の液滴についての前駆物質領域、の中味に応じて、それぞれの「標的」流体液滴を選別するように動作する。以下で記述するように、この多領域(multi-region)選別ウインドウスキームは、高度に精製された一定量の特定のタイプの細胞を収獲するための所要時間を短縮する上で特に有用である。進歩性ある方法の1つの態様によると、所望の細胞のみを含む液滴が、高度に精製された収集貯蔵庫まで選別されるばかりでなく、かつ、所望でない細胞が単にアボートされるのではなく、むしろ所望の細胞の予め定められた近傍内で万一検出された場合に、液滴は、その中味をその後の再選別のため回収することのできる補助的「富化」(enrichment)コンテナ内へと選別される。全ての液滴が複数の回収コンテナのうちの1つに選別されることから、従来の近傍ベースのアボート決定の場合のように、細胞が失なわれることは実質的に全くない。その結果、富化コンテナの中味の2重収集および再選別を通して、合計収獲時間を大幅に削減することができる。
【0015】
本発明による多数の回収可能な収集貯蔵庫を利用するフローサイトメータシステムの計装アーキテクチャは、基本的に、上述した図1のサイトメータと同じコンポーネントを含んでいるが、液滴は、主液滴走行経路の相対する側に配置されている複数の粒子回収コンテナのうちのいずれかに選別可能であり、そうでなければ選別されずに廃棄物コンテナへと直接送られる。回収コンテナというのは、そこからさらなる使用のため(例えば上述の化学療法治療の場合のように患者の体内に戻すための再注入)一定量の極く純粋な選別された液滴が回収され得るか、またはそこから、一定量の極純粋以下の純度であるもののもとの供給源のものに比べて著しく高い所望の粒子/細胞の密度をもつ液滴を、本発明のサイトメータ選別機構を通した再処理のために取り出すことができるような、選別済み液滴の収集コンテナまたは貯蔵庫のことである。
【0016】
複数の粒子回収コンテナの使用と連係して、システムワークステーションによって実行される選別制御ルーチンは、問題の液滴が形成されるもととなる流体流の部分の中と同様に、問題の液滴のいずれかの側にある液滴が形成されるもととなる流体流の隣接部分の中の複数の隣接する液滴前駆物質領域の中味に基づいて、それぞれの流体液滴を選別するように動作する。
【0017】
液滴前駆物質領域というのは、隣接する流体流から分裂したそれぞれの液滴内に最終的に含有されることになる粒子/細胞担体流体内の複数の逐次的に隣接する領域の1つを意味する。「前駆物質」という語は、液滴分離場所の上流側の場所にある流体流内、特にレーザー出力ビームによって照明された担体流体の部分内で、流体流が、最終的には実際の液滴になる予定ではあるもののまだその形にはなっていない一続きの隣接する領域で構成されているものとみなされうる、という事実を反映している。
【0018】
それぞれの液滴内の流体がそのような複数の前記液滴前駆物質領域へと細分化され得る分解能は、レーザービーム交差場所と下流側液滴形成場所との間の選別遅延を測定する、上述の選別遅延計数器を刻時するのに使用されるような、クロック信号の周波数に従って設定できる。
1つの液滴につき、制限的意味のない4つの液滴前駆物質領域という分解能について、最終的に流れから分裂し、複数の回収コンテナのうちの1つへと選別されるかもしくはアボートされる標的液滴となる連続的流体流の部分は、12の液滴前駆物質領域からなるシーケンス全体の中に4つの液滴前駆物質領域からなる最も内側または中間のシーケンスを含むことになる。残りの8つの領域のうち、最初の4つは、直ぐ隣接する下流液滴と結びつけられ、最後の4つは、すぐ隣接する上流液滴と結びつけられる。
【0019】
本発明によると、3つの液滴からなるシーケンス内の中央または第2の(標的)液滴が選別またはアボートされるべきか、また選別される場合にはどのように選別されるべきかを決定するため、選別基準ウインドウを規定することによってそれぞれに異なる選別モードを実行することができる。制限的意味のない例としては、選別モードには、以下のモードが含められる。最大幅の非アボート(アボートオフ)モードは、標的液滴およびその直ぐ隣接する各々の液滴の液滴前駆物質領域の全てを含む選別ウインドウを有する。この選別モードは、所望の細胞の最も高い収量を提供するように意図されているが、また、所望のもの以外の粒子を収集することをも可能にし、かくして所望の細胞の純度は100%未満となることが予期され得る。この第1の選別モードでは、問題となっている少なくとも1つの所望の細胞/粒子が(3つの液滴について12全ての前駆物質領域を含む)選別ウインドウ内のいずれかの場所で検出された場合、標的液滴は、回収コンテナへと選別される。
【0020】
多重選別モードは、それぞれの回収コンテナまで多数のタイプの細胞を選択的に選別するためまたは、選別ウインドウ内の細胞純度に基づいて異なる回収コンテナへと同一タイプの細胞を選択的に選別するために使用することができる。
多数のタイプの細胞を選別する場合、標的液滴は、以下の条件が満たされた場合、問題のタイプの細胞を収集するように予め定められた回収コンテナの1つに選別されることになる。まず最初に、問題の異なるタイプの細胞/粒子のうちの少なくとも1つが、標的液滴の全ての領域および隣接する下流側液滴のすぐ隣接する領域および隣接する上流側液滴のすぐ隣接する領域を含むものといったような、規定の多重前駆物質領域内のどこかに発見されなくてはならない。第2にその細胞タイプに関して、選別ウインドウ内に、その他のタイプの受容可能な細胞を含め、他のいかなる事象も存在してはならない。この後者の必要条件は、選別ウインドウが両方のタイプの細胞を含んでいる場合、それはアボートされるということを意味している。
【0021】
このモードで同じタイプの細胞を選別する場合には、標的液滴がアボートされることは決してない。このモードは、高純度コンテナに一定の与えられたタイプの粒子のみを含有する標的液滴を選別するものの、そうでなければ標的液滴をアボートするのではなくむしろ補助的富化コンテナに標的液滴を選別するように設計されている。いかなる液滴もアボートされることはない。その結果、そうでなければ1またはそれ以上の所望の細胞を含有する標的液滴となるものを高純度コンテナに選別することを選別ウインドウ内の或る異常が妨げている場合、標的液滴は、アボートされ有意な数の所望の細胞となり得たものを失なう代りに、その中味が再度遠心分離に付されその後本発明のサイトメータシステムを通して再び処理されうるような富化コンテナに直接選別されることになる。
【0022】
標的液滴を高純度コンテナに選別するためには、2つの必要条件が満たされなくてはならない。第1に、選別ウインドウ(例えば標的液滴の領域および隣接する下流および上流側液滴の領域を含む多領域ウインドウ)内に、少なくとも1つの規定のタイプの細胞/粒子が存在しなくてはならない。第2に、選別ウインドウ内にはその他のいかなるタイプの細胞も事象も存在してはならない。これらの必要条件の両方が満たされた場合にのみ、標的液滴は高純度回収コンテナに選別される。その他の全てのケースについて、標的液滴は富化コンテナに選別されることになる。
【0023】
多重領域選別ウインドウスキームは、高度に精製された一定量の特定のタイプの細胞を収獲するために必要とされる時間を短縮する上で特に有用である。所望の細胞のみを含む標的液滴が高度に精製された収集貯蔵庫に選別されるばかりでなく、万一所望でない細胞が所望の細胞の予め定められた近傍内で検出された場合、標的液滴はアボートされ従って失なわれるのではなく、むしろ、その後再選別のためその中味を回収できる富化コンテナの中に選別される。全ての液滴が複数の回収コンテナのうちの1つに選別されることから、従来の近傍ベースのアボート決定の場合のように細胞が失われることは全く無い。その結果、富化コンテナの中味の2重収集および再選別を通して、合計収獲時間を著しく削減することができる。
【0024】
比較的狭い包有ウインドウを使用することによって、所望の細胞の非常に高い純度を達成するために、付加的なアボートオンモードを使用することができる。このモードでは、あらゆる粒子/細胞(所望のタイプの粒子を含む)の存在が標的液滴のアボートをひきおこすことになるような比較的広い第2の排除ウインドウによって制限されている、所望の細胞のみのための第1の比較的狭い選別ウインドウを採用する。選別ウインドウの幅は、標的液滴の液滴前駆物質領域により少ないものまたはその全てが構成されていてよい。
【0025】
本発明の新しい改良型フローサイトメータ選別スキームについて詳述する前に、本発明が、第1に、実際には従来のフローサイトメータ計装およびそれに連係するディジタル信号処理コンポーネントおよびかかる回路およびコンポーネントの動作を制御する専用の付帯的監視用制御回路を規定通りに配置したものにある、ということを考慮すべきである。その結果、かかる回路およびコンポーネントの構成およびそれらがその他の通信システム機器とインタフェースされる要領は、大部分が、本明細書中の記述を理解する当業者には直ちに明らかとなる細部によって開示をあいまいにさせないことを目的として、本発明に関係するような特定的細部のみを示した、容易に理解可能なブロック図の中に例示されている。かくして、ブロック図の例示は、主として、本発明をより容易に理解できるようにするのに便利な機能的グループの形で、フローサイトメータシステムの主要コンポーネントを示すように意図されている。
【0026】
図2は、本発明による多数の回収可能な収集貯蔵庫を利用するフローサイトメータシステムの計装アーキテクチャを概略的に例示している。その中で示されているように、システムは基本的に、上述の図1に示されたものと同じコンポーネントを含んでなるが、液滴は、主液滴走行経路24に相対する側に配置された複数の粒子回収コンテナ61および62のうちのいずれかに選別可能であり、そうでなければ選別されずに廃棄物コンテナ63へと直接送られる。回収コンテナというのは、そこからさらなる使用(例えば上述の化学療法治療の場合のように患者の体内に戻すための再注入)のため一定量の極く純粋な選別された液滴が回収され得るか、またはそこから、一定量の極純粋以下の純度であるもののもとのコンテナ12のものに比べて著しく高い所望の粒子/細胞の密度をもつ液滴を、本発明のサイトメータ選別機構を通した再処理のために取り出すことができるような、選別済み液滴の収集コンテナまたは貯蔵庫のことである。
【0027】
さらに以下で記述するように、複数の粒子回収コンテナの使用と連係して、システムワークステーション50によって実行される選別制御ルーチンは、問題の液滴が形成されるもととなる流体流の隣接部分内と同様、問題の液滴のいずれかの側にある液滴が形成されるもととなる流体流の隣接部分内の複数の隣接する液滴前駆物質領域の中味に基づいて、それぞれの流体液滴を選別するように動作する。
【0028】
より特定的には、図3に概略的に示されているように、液滴前駆物質領域というのは、隣接する流体流から分裂したそれぞれの液滴23内に最終的に含有されることになる、その通路を含めた流路15の中の担体流体内の複数の逐次的に隣接するセグメントまたは領域22−iの1つを意味する。「前駆物質」という語は、場所19でレーザー出力ビーム16と交差する担体流体の部分内を含めた液滴分離場所29の上流側の場所にある流体流内で、流体流22が、最終的には液滴分離場所29で間断のない流体流から分裂する実際の液滴になる予定ではあるもののまだその形にはなっていない一続きの隣接する領域で構成されているものとみなされうる、という事実を反映するために用いられる。
【0029】
それぞれの液滴23内の流体が複数Nの前記液滴前駆物質領域まで細分化され得る分解能は、レーザービーム交差場所19と液滴形成場所29との間の選別遅延すなわち流体走行時間を測定する、上述の選別遅延計数器を刻時するのに使用されるような、クロック信号の周波数に従って設定できる。制限的意味のない一例として、図4は、最終的にそれぞれの液滴23に形成される予定の流体流22内のN=4個の連続した液滴前駆物質領域22−1、22−2、22−3および22−4からなるセットを示している。すなわち流体領域22−1、....22−4のシーケンス内の流体および粒子の合計体積は、液滴形成場所において流体流から分裂する流体および粒子量を含む液滴23と同じ体積を占めることになる。1滴あたりのかかる領域の数は、この数またはその他の任意の数に制限されず、システムのパラメータおよびユーザーの必要条件に従って変動しうる、ということを考慮すべきである。
【0030】
本発明の選別制御ルーチンが、その液滴についての複数の隣接する液滴前駆物質領域および問題の液滴のいずれかの側における液滴前駆物質領域の中味に基づいて、それぞれの流体液滴を制御可能な形で選別する要領が、図5に概略的に示されている。1滴につき4つの液滴前駆物質領域という分解能のこの制限的意味のない例については、最終的に問題の「標的」液滴23−2(すなわち複数の回収コンテナのうちの1つの中に選別されるかまたはアボートされるべき液滴)となる予定の連続した流体流22の部分は、12の液滴前駆物質領域22−1....22−12のシーケンス内に、液滴前駆物質領域22−5、22−6、22−7および22−8の中心セットを含んでいる。さまざまなモードリスト内で、これらの領域は、括弧に入れて領域(1)−(12)と記されている。この12の液滴前駆物質領域のシーケンスは、一般に楕円形の液滴23−1、23−2および23−3のシーケンスとして例示されている3つのすぐ連続した液滴の中味となる予定のものを定義する。
【0031】
12の担体流体前駆物質領域22−1....22−12のシーケスおよびそれらに付随する液滴23−1、23−2および23−3のすぐ下に示されているのは、3つの液滴23−1、23−2および23−3のシーケンス内の中央のまたは第2の(標的)液滴23−2を選別すべきかまたはアボートすべきか、および選別するならばいかにしてそれを選別すべきかを決定するため、以下で個別に記述するそれぞれの選別モードM0〜M8によって採用される選別基準ウインドウである。
【0032】
M0モード(最大幅選別ウインドウ−アボートオフ)
この第1の選別モードは、所望の細胞の最も高い収量を提供することを意図されたものであるが、また、所望の細胞の純度が100パーセント未満となり得るように、所望のもの以外の粒子を収集できるようにもする。この第1の選別モードに従うと、問題の所望の細胞/粒子(図5全体を通して「善玉(good guy)」とラベルづけされている)が最大サイズの選別ウインドウ(12の前駆物質領域22−1....22−12を全て含むもの)の中のどこかに発見された場合、そうでなければ液滴をアボートする(アボートはオフにされている)可能性のある事象/異常(event/anomaly )が存在するか否かとは無関係に、液滴走行経路24の「左」側に示されたコンテナ61といったような回収コンテナのうちの選択されたものに標的液滴22−2を選別する決定が下される。図5では、この選別決定は、「優先性左側選別」(Priority SORT LEFT)とラベルづけされている。このモードでは、選別されるために(左)、標的液滴23−2が、問題の細胞を実際に含有している必要はない。必要とされるのは、12の前駆物質領域22−1....22−12のうちの少なくとも1つが少なくとも1つの所望の細胞を含有していることだけである。
【0033】
モードM1(4分の1液滴重複選別ウインドウ−アボートオン)
この第2の選別モード(そしてまたそれぞれM2およびM3という第3および第4の選別モード)は、液滴走行経路24の「左」側のコンテナ61に選別されるものおよび液滴を走行経路24の「右」側のコンテナ62に直接選別されるものという2つのタイプの粒子のいずれをも選別するように意図されている。この選別モードでは、標的液滴23−2は、以下で示す条件が満たされた場合にのみ、問題のタイプのセルを収集すべく予め定められた回収コンテナのうちの1つに選別されることになる。そうでなければ標的液滴23−2はアボートされることになる。
【0034】
まず第1に、問題の2つの規定された細胞/粒子のいずれか(その各々が「善玉」である)のうちの少なくとも1つが、標的液滴23−2の4つの領域22−5....22−8の全てと、隣接する下流側液滴23−1の直ぐ隣接する領域22−4と、上流側液滴23−3のすぐ隣接する領域22−9とを含む6つの前駆物質領域選別ウインドウの中のどこかに、発見されなくてはならない。
【0035】
第2に、2つの可能性ある「善玉」のうちの検出されたものに対して、その6つの前駆物質領域ウインドウ内で、その他のタイプの細胞または事象(もう1つのタイプの善玉を含む)であってはならない。この後者の必要条件は、選別ウインドウが両方のタイプの善玉を含む場合、それはアボートされることになるということを意味している。
【0036】
制限的意味のない例としては、処理対象の流体標本は、赤色および緑色の螢光染料抗体で染色され、それぞれコンテナ61および62の中に収集されることになる2つの異なるタイプの血球を含む可能性がある。この場合、6領域ウインドウ内で少なくとも1つの緑色細胞(善玉)が検出され、そのウインドウ内には他のタイプ(悪玉(bad guy ))の細胞または異常(例えば赤色細胞、ただしこれに限られるわけではない)が全く検出されない場合、標的液滴23−2は、緑色細胞コンテナ62に直接選別されることになる。そうでなければ、標的液滴は、アボートされることになる。
【0037】
逆に、6領域ウインドウ内に少なくとも1つの赤色細胞(同じ善玉)が検出され、そのウインドウ内にその他のタイプ(悪玉)の細胞または異常(例えば緑色細胞、ただしこれに限られるわけではない)が全く検出されない場合は、標的液滴23−2は赤色細胞コンテナ61の左側に選別されることになる。そうでなければ、標的液滴23−2はアボートされる。
【0038】
モードM0の場合のように、モードM1では、標的液滴23−2は、左右いずれかに選別されるべき問題の細胞を実際に含有している必要はない。必要とされるのは、6つの前駆物質領域22−4....22−9のうちの少なくとも1つが少なくとも1つの所望の細胞を含有し、悪玉細胞を全く含まないことだけである。
モードM2(2分の1滴重複選別ウインドウ−アボートオン)
上述のように、この第3の選別モードは、液滴走行経路24の「左」側のコンテナ61により選別されるものおよび液滴走行経路24の「右」側のコンテナ62に選別されるもの、という2つのタイプの粒子のいずれをも選別する。モードM2は、隣接する液滴23−1および23−3の前駆物質領域内への50%の重複を網羅するように選別ウインドウが拡張されるという点を除いて、モードM1と同一である。すなわち、この第3の選別モードでは、問題の2つの規定された(善玉)細胞/粒子のいずれかが標的液滴23−2の4つの領域22−5....22−8の全てと、隣接する下流側液滴23−1の2つの直ぐ隣接する領域22−3および22−4と、上流側液滴23−3の2つのすぐ隣接する領域22−9および22−10とを含む8つの前駆物質領域ウインドウの中のどこかに発見され、その選別ウインドウ内にはその他の検出されたタイプの細胞または事象が全く存在しない場合には、問題のタイプの細胞を収集すべく予め定められた回収コンテナのうちの1つに、標的液滴23−2を選別するという決定が下される。そうでなければ標的液滴は廃棄物コンテナ63へとアボートされる。
【0039】
モードM3(全液滴重複選別ウインドウ−アボートオン)
第4の選別モードM3は、隣接する液滴23−1および23−3の前駆物質領域全ての中への100%の重複を網羅するように選別ウインドウが拡張されるという点を除いて、モードM1およびM2と同一である。すなわち、この第4の選別モードでは、問題の2つの規定された(善玉)細胞/粒子のいずれかのうちの少なくとも1つが、第1の液滴23−1の4つの領域22−1....22−4の全てと、標的液滴23−2の4つの領域22−5....22−8の全てと、第3の液滴23−3の4つ領域22−9....22−12の全てとを含む12の前駆物質領域ウインドウ内のどこかに発見され、12の領域ウインドウ内にはその他のタイプの細胞または事象が全く検出されない場合には、問題のタイプの細胞を収集すべく予め定められた回収コンテナのうちの1つに、標的液滴23−2を選別するという決定が下され、そうでなければ、標的液滴23−2はアボートされる。
【0040】
モードM4(4分の1液滴重複選別ウインドウ−富化選別)
第5の選別モード(またそれぞれM5およびM6という第6および第7の選別も)においては、標的液滴がアボートされることは決してない。これらのモードは、一定の与えられたタイプの粒子のみを、液滴走行経路24の「左」側にあるコンテナ61内といったような高純度コンテナに選別するが、そうでなければ標的液滴を、アボートするのではなくむしろ液滴走行経路24の「右」側にあるコンテナ62といったようなもう1つのコンテナに選別するように設計されている。換言すると、これらのモードの各々が一定の与えられたタイプの細胞についての2重選別モードである。2重選別は、1つの回収コンテナ内の高純度の一定量の所望の細胞を提供し、また、さらなる選別のために回収されうる「善玉」細胞の第2のコンテナをも提供する。
【0041】
この後者の蓄積は、第5〜第7のモードM4〜M6の各々において、検出済みまたは処理済みのいかなる標的細胞も廃棄またはアボートされない、という事実に起因するものである。結果として、そうでなければ少なくとも1つの所望の細胞を含有する標的液滴なるはずのものを高純度コンテナに選別するのを選別ウインドウ内の或る異常が妨げている場合、標的液滴は、アボートされ有意な数の所望の細胞となりうるものを失なうのではなく、その中味が再度遠心分離に付され次に本発明のサイトメータシステムを通して再び処理されうるような富化コンテナへと直接選別されることになる。
【0042】
標的液滴を高純度コンテナに選別するためには、2つの必要条件が満たされなくてはならない。第1に、選別ウインドウ、すなわち標的液滴23−2の4つの領域22−5....22−8の全てと、隣接する下流液滴23−1のすぐ隣接する領域22−4と、上流液滴23−3のすぐ隣接する領域22−9とを含有する6つの前駆物質領域ウインドウ内に、少なくとも1つの規定のタイプの細胞/粒子「善玉」が存在しなくてはならない。第2に、6つの前駆物質領域選別ウインドウ内にはその他のいかなるタイプの細胞または事象も存在してはならない。これらの必要条件の両方が満たされた場合にのみ、標的液滴23−2は、回収コンテナのうち、問題のタイプの細胞を収集するように予め定められたコンテナ(例えばコンテナ61へ向かい左に選別)に選別されることになる。
【0043】
その他のあらゆるケースについて、標的液滴23−2は、実際に富化コンテナとして役立つもう1つの回収コンテナ62に(右へ)選別されることになる。また、モードM4〜M6の各々において、標的液滴23−2は、高純度コンテナへと左に選別されるべき問題の細胞を実際に含む必要はない。必要なのは、6つの前駆物質領域22−4....22−9のうちの少なくとも1つが所望の細胞を含み、いかなる悪玉細胞も含まないことだけである。
【0044】
モードM5(2分の1液滴重複選別ウインドウ−富化選別)
(8つの前駆物質領域まで拡大された)選別ウインドウのサイズを除いて、第6の選別モードは、上述の第5の選別モードと同一であり、高純度コンテナ61に対し一定の与えられたタイプの粒子のみを「左に選別する」が、そうでなければ富化コンテナ62に標的液滴を選別するように設計されている。モードM5の選別ウインドウの8つの前駆物質領域は、標的液滴23−2の4つの領域22−5....22−8の全てと、隣接する下流側液滴23−1の2つのすぐ隣接する領域22−3および22−4と、上流側液滴23−3の2つの直ぐ隣接する領域22−9および22−10である。
【0045】
モードM6(全液滴重複選別ウインドウ−富化選別)
モードM6は、選別ウインドウが、隣接する液滴23−1および23−3の前駆物質領域の全ての中へ100%の完全な重複を網羅すべく拡張させられるという点を除いて、モードM4およびM5と同一である。
モードM4〜M6の多領域選別ウインドウスキームは、高度に精製された一定量の特定のタイプの細胞を収獲するために必要とされる時間を短縮する上で特に有用であるということがわかるだろう。所望の細胞のみを含む標的液滴が、高度に精製された収集貯蔵庫に選別されるばかりでなく、万一所望でない細胞が所望の細胞の予め定められた近傍内で検出された場合、標的液滴は単純にアボートされるのではなく、むしろ、その後再選別のためその中味を回収できる補助的「富化」コンテナの中に選別される。全ての標的(所望の細胞を含有する)液滴が、複数の回収コンテナのうちの1つに選別されることから、従来の近傍ベースのアボート決定の場合のように検出/処理済み細胞が失なわれることは全く無い。その結果は、富化コンテナの中味の2重収集および再選別を通して、合計収獲時間を著しく削減することができる。
【0046】
制限的意味のない例として、30,000細胞/秒のデータ速度で善玉細胞のみを含む標的液滴を選別するため、モードM6の液滴重複ウインドウを用いて100万個の(血球)細胞個体群を収獲する場合、2分の1%の個体群密度は、毎秒可能な細胞150個という潜在的収量速度を提供する。しかしながら、その他のタイプの細胞が近接していることから、選別された所望の細胞のみの個体群はさらに一定の百分率(例えばわずか55パーセント)だけ削減されるものと予想でき、その結果、実際には毎秒75個の細胞という高純度の収量速度をもたらすことになる。この収量速度では、高純度コンテナは500K/75または6, 666秒=1. 85時間で、合計500K個の細胞(所望の細胞個体群の2分の1)を蓄積することになる。毎秒標的細胞150個という残りの50%分の富化コンテナデータ速度については、対応する収量速度は75個/秒である。この補助的収量速度で、その間、富化コンテナは、500K/7500または66. 66秒(1. 1時間)すなわち高純度コンテナが500Kの細胞を蓄積するのに必要とされる時間(1. 85時間)内で合計量500Kの所望の細胞を蓄積することになる。
【0047】
モードM7およびM8
モードM7およびM8は、比較的狭い包有(inclusion )ウインドウを使用することにより非常に高い純度の所望の細胞を提供するように意図されている。これら2つのモードの各々は、何らかの粒子/細胞の存在が標的液滴をアボートすることになるような比較的広い排除(exclusion )ウインドウによって制限されている、所望の細胞のみのための第1の比較的狭い選別包有ウインドウを採用する。
【0048】
モードM7(絶対計数−アボートオン)
モードM7は、非常に高純度の所望の細胞を提供するように意図されている。この目的で、このモードM7は、何らかの粒子/細胞の存在が標的液滴をアボートすることになるような比較的広い排除ウインドウによって制限されている、所望の細胞のみのための第1の比較的狭い選別包有ウインドウを採用する。より特定的に言うと、この第8の選別モードでは、標的液滴23−2を回収コンテナに保持しまたは選別するためには、標的液滴23−2についての中央の2つの前駆物質領域22−6および22−7からなる比較的狭い選別包有ウインドウ内に、少なくとも1つの問題の所望の細胞/粒子(「善玉」)が見られその他のタイプの粒子または事象は全く見い出せないことが必要である。第2に、残りの前駆物質領域22−1....22−5および22−8....22−12は、空でなくてはならない。そうでなければ標的液滴はアボートされる。
【0049】
モードM8(マトリクスモード−アボートオン)
モードM8は、選別包有ウインドウが標的液滴に伴う前駆物質領域の全てを包含しており、かつ、排除ウインドウが2つの隣接する液滴についての前駆物質領域の全てを含有しているという点を除いて、モードM7と実質的に同じである。すなわち、より特定的に言うと、この第9の選別モードでは、標的液滴23−2を回収コンテナに保持しまたは選別するためには、標的液滴23−2についての全ての前駆物質領域22−5....22−8からなる選別包有ウインドウ内に、問題となっている少なくとも1つの所望の細胞/粒子(「善玉」)が見られその他のタイプの粒子または事象は全く見い出せないことが必要である。第2に、隣接する下流側液滴23−1についての前駆物質領域22−1....22−4および隣接する上流側液滴23−3についての前駆物質領域22−9....22−12は、空でなくてはならない。そうでなければ標的液滴23−2はアボートされる。
【0050】
以上の記述からわかるように、従来のフローサイトメータ選別スキームの欠点は、問題の標的液滴内に含まれている担体流体の複数の隣接する前駆物質領域および標的液滴のいずれかの側の液滴についての前駆物質領域の中味に従って連続的に生成された流体液滴を制御可能な形で選別するように動作する、本発明のフローサイトメータ選別機構によって有効に解消される。所望の細胞のみを含む標的液滴が高度に精製された収集貯蔵庫に選別されるばかりでなく、万一所望でない細胞が所望の細胞の予め定められた近傍内で検出された場合、液滴は単にアボートされるのではなく、むしろ、その後再選別のためその中味を回収できる補助的富化コンテナの中に選別されることから、この多領域選別ウインドウスキームは、高度に精製された一定量の特定のタイプの細胞を収獲するために必要とされる時間を短縮する上で特に有用である。全ての液滴が複数の回収コンテナのうちの1つに選別されることから、従来の近傍ベースのアボート決定の場合のように、検出/処理済み細胞が失なわれることは全く無い。その結果、富化コンテナの中味の2重収集および再選別を通して、合計収獲時間を著しく削減することができる。
【0051】
本発明に従ったさまざまな実施形態を示し説明してきたが、本発明はこれらの形態に制限されるわけではなく、当業者にとっては既知の数多くの変更および修正を受けることが可能であり、従って、本明細書に示し記述した細部に制限されることを望んでいるのではなく、当業者にとって明白なものであるような全ての変更および修正を網羅することを意図する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 フローサイトメータの一般的計装アーキテクチャを概略的に例示する図である。
【図2】 本発明による多数の回収可能な収集貯蔵庫を利用したフローサイトメータシステムの一般的計装アーキテクチャを概略的に例示する図である。
【図3】 連続する流体流から分裂したそれぞれの標的液滴内に最終的に含有されることになる担体流体内の複数の液滴前駆物質領域を概略的に例示する図である。
【図4】 4つの連続する隣接液滴前駆物質領域のセットを示す図である。
【図5A】 本発明の選別制御ルーチンのさまざまなモードが、標的液滴についての複数の隣接する液滴前駆物質領域および標的液滴のいずれかの側の液滴についての液滴前駆物質領域の中味に基づいてそれぞれの標的液滴を選別する要領を概略的に例示する図である。
【図5B】 本発明の選別制御ルーチンのさまざまなモードが、標的液滴についての複数の隣接する液滴前駆物質領域および標的液滴のいずれかの側の液滴についての液滴前駆物質領域の中味に基づいてそれぞれの標的液滴を選別する要領を概略的に例示する図である。
Claims (23)
- 流体流の中に存在しうる第1の規定の成分をある量蓄積すべく、最終的に該流体流から分離される液滴となる前に、所定の間隔で前記流体流を細分化した各液滴前駆物質領域を画定し、該所定の間隔は各前記液滴内が複数に分割されて一連の液滴前駆物質領域をなす間隔であり、該一連の液滴前駆物質領域を含む前記流体流から、各標的液滴を選別する方法において、
(a)前記流体流を、前記各標的液滴となる予定の該流体流の第1の一連の液滴前駆物質領域と、前記第1の一連の液滴前駆物質領域の一方の側とその反対側とにそれぞれ位置する第2および第3の一連の液滴前駆物質領域と、に細分する段階であって、ここに該第2および第3の一連の液滴前駆物質領域は、最終的に、前記各標的液滴の上流側と下流側においてそれぞれ第1および第2の液滴となるような、前記の細分する段階と、
(b)前記第1、第2および第3の一連の液滴前駆物質領域のそれぞれについて、前記第1の規定の成分の存在および該第1の規定の成分以外の第2の規定の成分の存在を検査する段階と、
(c)前記各標的液滴を、複数の液滴収集経路のうちの1つへと選別する段階であって、前記段階(b)の検査結果によって前記各標的液滴の前記の選別を行う段階と、
を含んでなる液滴選別方法。 - 前記の選別は、前記段階(b)にて前記第1の一連の液滴前駆物質領域の一部または全部を含むように選択された一連の前記液滴前駆物質領域内に前記第1の規定の成分の存在を検出したことに応答して、かつ、前記選択された一連の液滴前駆物質領域以外の前記第1、第2および第3の一連の液滴前駆物質領域の中味に応じて、行う段階、
をさらに含んでなる請求項1に記載の液滴選別方法。 - 前記複数の液滴収集経路が、中味が回収可能である少なくとも1つのコンテナを含む請求項1に記載の方法。
- 前記選択された一連の液滴前駆物質領域の数が、前記第1の一連の液滴前駆物質領域をなす全ての領域の数よりも少ない請求項2に記載の方法。
- 前記選択された一連の液滴前駆物質領域は、前記第1の一連の液滴前駆物質領域の全てを含む請求項2に記載の方法。
- 前記選択された一連の液滴前駆物質領域が、前記第1の一連の液滴前駆物質領域と、前記第2および第3の一連の液滴前駆物質領域のうちの少なくとも一方の液滴前駆物質領域とを含む請求項2に記載の方法。
- 前記少なくとも一方の液滴前駆物質領域は、前記第2および第3の一連の液滴前駆物質領域の両方である請求項6に記載の方法。
- 前記段階(c)には、前記選択された液滴前駆物質領域のうちの前記第1の規定の成分の存在を段階(b)にて検出したことに応答して、前記複数の液滴収集経路のうちの1つへと前記液滴を選別する段階が含まれる請求項1に記載の方法。
- 前記段階(a)−(c)がフローサイトメータ内で実施される請求項1に記載の方法。
- 少なくとも前記第1の規定の成分そして潜在的には該第1の規定の成分以外の第2の規定の成分を含有するサンプルを、前記流体流の中に射出し、光学エネルギービームの照明および検出器のサブシステムによってさえぎられる流路に沿って前記流体流を導くように前記フローサイトメータが構成されており、前記サブシステムは、前記光学エネルギービームによって照明されて前記一連の液滴前駆物質領域の中味を表す出力信号を生成するように動作し、前記流路は、前記液滴を形成する下流側液滴発生器および、前記液滴が中を通りしかも、前記第1、第2および第3の一連の液滴前駆物質領域内の前記選択された一連の液滴前駆物質領域内の前記第1の規定の成分の前記存在を前記サブシステムにより生成された出力信号が表していることに応答して、かつ前記選択された一連の液滴前駆物質領域以外の前記第1、第2および第3の一連の液滴前駆物質領域の中味に従って、前記複数の液滴収集経路のうちの1つへと前記液滴を選別するように動作する液滴選別器に結合されている、請求項9に記載の方法。
- 前記液滴が、複数の血球を含有する流体から得られ、前記第1の規定の成分が第1のタイプの血球に対応する請求項1に記載の方法。
- 前記段階(c)には、前記選択された一連の液滴前駆物質領域が前記第1の規定の成分のみを含んでいることに応答して第1の液滴収集物貯蔵庫へと前記液滴を選別する一方、前記第1の規定の成分以外の第2の規定の成分を前記選択された一連の液滴前駆物質領域が含んでいることに応答して第2の液滴収集物貯蔵庫へと前記液滴を選別する段階が含まれる請求項1に記載の方法。
- 前記段階(c)に従って前記第2の液滴収集物貯蔵庫から回収された液滴を再び前記段階(a)に戻す請求項12に記載の方法。
- 前記段階(c)には、前記第1、第2および第3の一連の液滴前駆物質領域のうちの任意の隣接する液滴前駆物質領域における前記第1の規定の成分の存在を前記段階(b)にて検出したことに応答して、前記複数の液滴収集経路のうちの1つへと前記液滴を選別する段階が含まれる請求項1に記載の方法。
- 少なくとも第1の規定の成分および潜在的にはこの第1の規定の成分以外の第2の規定の成分を含む流体流が中を通り、しかも光学エネルギービームの照明および検出器のサブシステムによってさえぎられる流路を含んでなるフローサイトメータにおいて、
前記サブシステムは、前記光学エネルギービームにより照明されて一連の液滴前駆物質領域のそれぞれの中味を表す出力信号を生成するように動作し、前記流体流は、前記流路が結合された下流側の液滴発生器によって前記流体流から分離されて液滴になる前に、所定の間隔で前記流体流を細分化した各液滴前駆物質領域を画定し、該所定の間隔は各前記液滴内が複数に分割されて一連の液滴前駆物質領域をなす間隔であり、該一連の液滴前駆物質領域すなわち各標的液滴となる第1の一連の液滴前駆物質領域と、前記第1の一連の液滴前駆物質領域の一方の側とその反対側とにそれぞれ位置する第2および第3の一連の液滴前駆物質領域とを含み、さらに、前記液滴が中を通る液滴選別器を含んでなり、この液滴選別器は、前記第1、第2および第3の一連の液滴前駆物質領域から該第1の一連の液滴前駆物質を一部または全部含むように選択された一連の液滴前駆物質領域内の前記第1の規定の成分の存在を、前記サブシステムにより生成された出力信号が表していることに応答して、また、前記選択された一連の液滴前駆物質領域以外の前記第1、第2および第3の一連の液滴前駆物質領域の中味に応じて、複数の液滴収集経路のうちの1つへと前記液滴を選別するように動作する、フローサイトメータ。 - 前記選択された一連の液滴前駆物質領域の数が、前記第1の一連の液滴前駆物質領域をなす全ての領域の数よりも少ない請求項15に記載のフローサイトメータ。
- 前記選択された一連の液滴前駆物質領域は、前記第1の一連の液滴前駆物質領域の全てを含む請求項15に記載のフローサイトメータ。
- 前記選択された一連の液滴前駆物質領域が、前記第1の一連の液滴前駆物質領域と、前記第2および第3の一連の液滴前駆物質領域のうちの少なくとも一方の液滴前駆物質領域とを含む請求項15に記載のフローサイトメータ。
- 前記少なくとも一方の液滴前駆物質領域は、前記第2および第3の一連の液滴前駆物質領域の両方である請求項18に記載のフローサイトメータ。
- 前記液滴選別器は、前記第1、第2および第3の一連の液滴前駆物質領域のうち前記選択された一連の液滴前駆物質領域内の前記第1の規定の成分の存在を前記サブシステムが検出したことに応答して、前記複数の液滴収集経路のうちの1つへと前記液滴を選別するように動作する請求項15に記載のフローサイトメータ。
- 前記液滴が、複数の血球を含有する流体から得られ、前記第1の規定の成分が第1のタイプの血球に対応する請求項15に記載のフローサイトメータ。
- 前記液滴選別器は、前記選択された一連の液滴前駆物質領域が前記第1の規定の成分のみを含んでいることに応答して第1の液滴収集物貯蔵庫へと前記液滴を選別する一方、前記第1の規定の成分以外の第2の規定の成分を前記選択された一連の液滴前駆物質領域が含んでいることに応答して第2の液滴収集物貯蔵庫へと前記液滴を選別するように動作する請求項15に記載のフローサイトメータ。
- 前記液滴選別器は、前記第1、第2および第3の一連の液滴前駆物質領域のうちの任意の隣接する液滴前駆物質領域における前記第1の規定の成分の存在を前記サブシステムが検出したことに応答して、前記複数の液滴収集経路のうちの1つへと前記液滴を選別するように動作する請求項15に記載のフローサイトメータ。
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