JP4089884B2 - 建築物の外装材支持用結合筋及び建築物外装構造体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の躯体コンクリートの外側に配置される外装材を支持する結合筋及び建築物の外装構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築物の躯体コンクリートの外側に配置される外装材を支持する結合筋として、鉄筋アンカーボルトや頭付きアンカーボルト等が用いられてきた。これらは躯体コンクリート面に対して垂直に埋め込まれるものである。
【0003】
また、特許文献1の特開2002−285676号公報には、外断熱を考慮した断熱PCコンクリート板において、内板となるプレキャストコンクリート板の外側に配置される外板プレキャストコンクリート板を支持する結合筋として、山形筋(トラス筋)が開示されている。この結合筋はプレキャストコンクリート板の鉛直方向及び水平方向に分散配置されるものである。また、建築物の躯体コンクリートの外側に配置される外装材を、鉛直方向に延出するように付設されたトラス筋で吊り下げ状に取り付ける方法も検討されている。
【0004】
このような従来の方法で使用されるトラス筋のアンカー(以下、定着部ともいう)の形状としては、図7に示すようなU字形状(A)、L字形状(B)、逆Y字形状(C)、逆T字形状(D)及び拡径I字形状(E)などがある。また、アンカー部を含めた棒材の断面形状としては、円形断面、異形断面及び角形断面などがある。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−285676号(請求項1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、結合筋として鉄筋アンカーボルトや頭付きアンカーボルト等を用いる場合、曲げ耐力により外装材を支持するため、本数が増えるか、あるいは断面が太くなりアンカーからの熱損失が大きくなるという問題がある。一方、結合筋としてトラス筋を用いる場合、外装体を躯体コンクリートの壁面に対して斜め方向に支持するため、アンカーとしての定着が不安定となったり、コンクリートの界面剥離を起こすという問題がある。具体的には、図8に示すように薄肉板83に対してアンカーを下に向ける、すなわち図8中、アンカー部の斜め筋81の第1屈曲点82の曲がり方向が下方に向いているものは、アンカーの定着長さが短くなるため、強固な定着ができない。また、トラスを連続体とすることもできない。逆に図9に示すようにアンカーを上に向ける、すなわち図9中、アンカー部の斜め筋81の第1屈曲点82の曲がり方向が上方に向いているものは、斜め筋方向におけるアンカーの定着長さは深くなるため、強固な定着ができる。しかし、斜め筋81に沿った引張り力aが作用すると、上方bへの力が発生するためコンクリートの表面が破壊され易くなる。また、図9の一番左に記載されたアンカーがV字形状の連続体の場合、結合筋の全体長さが長くなり、小さなスペースでは使用し難いという問題がある。また、外断熱を考慮した断熱PCコンクリート板の場合、内板及び外板となるPCコンクリート板の板厚は、通常40〜200mmと薄く、十分な埋め込み深さを確保し難いという問題がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、建築物の躯体コンクリートの外側に配置される外装材を支持する結合筋であって、例え外装体がコンクリート薄板であっても、十分な耐力が得られ、定着安定性に優れる建築物の外装材支持用結合筋及びこれを用いた建築物の外装構造体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、アンカーの形状、すなわち、定着部の形状を棒材を屈曲させて得られるα字形状とすれば、外装体を結合筋で支持する際、例え外装体がコンクリート薄板であっても、十分な耐力が得られ、定着安定性やトラスの連続性に優れることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明(1)は、建築物の躯体コンクリートの外側に配置される外装材を支持する棒材を屈曲させて得られる略V字形状又は略W字形状の結合筋であって、略V字形状の結合筋は、該躯体コンクリートに埋没する2つの第1定着部と、該外装材に埋没する1つの第2定着部と、該2つの第1定着部と第2定着部を連接する斜め筋である連接部からなり、略W字形状の結合筋は、該躯体コンクリートに埋没する3つの第1定着部と、該外装材に埋没する2つの第2定着部と、該3つの第1定着部と2つの第2定着部を連接する斜め筋である連接部からなり、該略V字形状の結合筋の3つの定着部形状及び略W字形状の結合筋の5つの定着部形状が、いずれもα字形状であり、且つα字形状における斜め筋の第1屈曲点の曲がり方向が2つの斜め筋又は3つの斜め筋で形成される平面と略同一面内であることを特徴とする建築物の外装材支持用結合筋を提供するものである。本発明の外装材支持用結合筋は、棒材に対し曲げ加工を施すことにより簡易に得ることができる。また、躯体コンクリートの壁面に対して、外装体を斜め方向に支持するように結合筋を配置する場合、例え外装体がコンクリート薄板であっても、十分な耐力が得られ、定着安定性やトラスの連続性に優れる。
【0010】
また、本発明(2)は、建築物の躯体コンクリートと、該躯体コンクリートの外側に付設される断熱材と、該断熱材の外側に付設される外装材と、請求項1〜4のいずれか1項記載の建築物の外装材支持用結合筋を有する建築物の外装構造体を提供するものである。本発明の外装構造体によれば、躯体コンクリートと外装材が簡易な構造の外装材支持用結合筋により安定して固定されるため、構造強度に優れたものとなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の建築物の外装材支持用結合筋(以下、単に「外装材支持用結合筋」とも言う)において、建築物の躯体コンクリートの外側に配置される外装材としては、特に制限されないが、通常コンクリート材である。このうち、該コンクリート材が、厚み40〜200mmの薄板であっても、当該結合筋の耐力が十分に採れるため、特に本発明の効果が顕著に表れる。また、外装材支持用結合筋は、該躯体コンクリートに埋没する第1定着部と、該外装材に埋没する第2定着部と、該第1定着部と第2定着部を連接する連接部からなり、該2つの定着部のうち、少なくともいずれか一方の定着部形状が、棒材を屈曲させて得られるα字形状である。従って、外装材支持用結合筋の全体形状としては、使用状態にある該結合筋を側面視且つ時計回り又は半時計回りに90度回転した位置で略I字形状、略V字形状、略W字形状又は当該略V字形状を繰り返した略鋸刃形状である。また、連接部は、通常該躯体コンクリートと該外装材間に付設される断熱材に埋設されている。
【0012】
本発明において、参考例として示す全体形状が略I字形状の外装材支持用結合筋としては、例えば図1に示す結合筋が挙げられる。図1は該外装材支持用結合筋の使用状態における概略図である。外装材支持用結合筋10はα字形状の第1定着部11と、α字形状の第2定着部12と、第1定着部11と第2定着部12を連接する直筋の連接部13からなる。なお、符号14は内板とも称される建築物の躯体コンクリート板であり、符号15は断熱材であり、符号16は外装材であるコンクリート板である。図1中、第1定着部11がα字形状であれば第2定着部は例えばU字形状、L字形状、逆Y字形状などであってもよく、逆に、第2定着部12がα字形状であれば第1定着部は例えばU字形状、L字形状、逆Y字形状などであってもよい。外装材支持用結合筋10は、棒材を屈曲させるという簡易な方法で得ることができる。また、躯体コンクリート14及び外装材16がコンクリート薄板であっても、十分な耐力が得られ、定着安定性に優れる。
【0013】
本発明において、全体形状が略V字形状の外装材支持用結合筋としては、例えば図2に示す結合筋が挙げられる。図2は該外装材支持用結合筋の使用状態における概略図である。図2において、図1と同一構成要素には同一符号を付してその説明を省略し、異なる点について主に説明する。外装材支持用結合筋10aはα字形状の2つの第1定着部11a、11bと、α字形状の第2定着部12と、一方の第1定着部11aと第2定着部12を連接する斜め筋である第1連接部13aと、他方の第1定着部11bと第2定着部12を連接する斜め筋である連接部13bからなる棒材を曲げ加工して得られる一体物である。外装材支持用結合筋10aにおいて、端部のα字形状としては、図2に示す形態に限定されず、例えば図2の第1定着部11bであれば、図3(A)、(B)に示すような略ドーナツ状のものであってもよい。また、第1定着部11a、11bがα字形状であれば第2定着部12は例えばU字形状、L字形状、逆Y字形状などであってもよく、逆に、図4に示すように第2定着部12がα字形状であれば第1定着部11a、11bは例えばU字形状などであってもよい。なお、図4は本発明において参考例となるものである。外装材支持用結合筋10aによれば、例えば複数個の外装材支持用結合筋10aを鉛直方向に適宜の間隔で設置すれば、1つのトラス筋と同様の外装材支持安定性を得ることができる。また、躯体コンクリート14及び外装材16がコンクリート薄板であっても、十分な耐力が得られ、定着安定性に優れる。すなわち、図2の場合、第2定着部12において、斜め筋である第1連接部13a及び第2連接部13bの第1屈曲点18、18の曲がり方向が向かい合っているため、該斜め筋に沿った引張り力aが作用すると、第2定着部12の底部121に掛かる力bは第2定着部12の中心方向へ向くため耐力が安定するのである。また、図4では、第1定着部11a、11bのU字形状の配置方向に起因して、該斜め筋に沿った引張り力aが図4中、矢印方向に作用する。この場合、第2定着部12の底部121に掛かる力bは打ち消されることになる。
【0014】
本発明において、全体形状が略W字形状の外装材支持用結合筋としては、例えば図5に示す結合筋が挙げられる。図5は該外装材支持用結合筋の使用状態における概略図である。図5において、図2と同一構成要素には同一符号を付してその説明を省略し、異なる点について主に説明する。外装材支持用結合筋10bはα字形状の3つの第1定着部11a、11b、11cと、α字形状の2つの第2定着部12a、12bと、一方の第1定着部11aと一方の第2定着部12aを連接する斜め筋である第1連接部13aと、中間の第1定着部11bと一方の第2定着部12aを連接する斜め筋である連接部13bと、中間の第1定着部11bと他方の第2定着部12bを連接する斜め筋である第3連接部13cと、他方の第1定着部11cと他の第2定着部12bを連接する斜め筋である連接部13dからなる棒材を曲げ加工して得られる一体物である。外装材支持用結合筋10bにおいて、第1定着部11a、11b、11cがα字形状であれば第2定着部12a、12bは例えばU字形状、L字形状、逆Y字形状などであってもよく、逆に、図6に示すように第2定着部12a、12bがα字形状であれば第1定着部11d、11eは例えばU字形状などであってもよい。外装材支持用結合筋10bによれば、前記外装材支持用結合筋10aと同様の効果を奏する他、結合筋の全体長さが短くなり、小さなスペースでも使用できる。すなわち、図5の結合筋10bは、該結合筋10bと同じ長さの棒材を使用した従来例の図10の結合筋100と比較して、その全体長さを(X/Y)約半分に低減することができる。また、本発明において、外装材支持用結合筋の全体形状としては、上記実施の形態例に限定されず、例えば当該略V字形状を繰り返した略鋸刃形状であってもよい。
【0015】
本発明において、外装材支持用結合筋10、10a、10bに使用される棒材としては、特に制限されず、例えば円形断面、異形断面及び角形断面の棒材を挙げることができる。図11は異形断面の棒材を説明する図であり、図11(B)は、図11(A)のZ―Z線で切断される断面図である。すなわち、異形断面の棒材111は、径dの丸棒に対し、凹部112を所定のピッチで多数設けると共に、一方の側面と他方の側面の凹部112を互い違いに設けたものである。
【0016】
本発明において、外装材支持用結合筋は、第1定着部又は第2定着部のα字形状の少なくとも1つに貫通する補助アンカー筋と組み合わせて用いることができる。すなわち、図5にその一例を示すように、直筋である5本の補助アンカー筋19を、α字形状の第1定着部11a〜11c及び第2定着部12a〜12bの孔に貫通させて使用するものである。図5中、補助アンカー筋19は紙面に対して前後方向、実際の使用形態において左右方向に延出している。第1定着部又は第2定着部のα字形状と補助アンカー筋は接合又は非接合のいずれであってもよい。補助アンカー筋19はα字形状の定着部の全てに組み合わせて使用する以外に、適宜選定されたα字形状の定着部に嵌合するものであってもよい。
【0017】
本発明の外装材支持用結合筋は、建築物の躯体コンクリートの外側に配置される外装材を支持する用途に使用されるものであれば、特に制限されない。従って、該外装材支持用結合筋を用いた建築物外装構造体としては、例えば外装材となるプレキャストコンクリート板、通気層を有していてもよい断熱材及び躯体コンクリートとなるプレキャストコンクリート板をこの順序で積層してなる断熱PCコンクリート板が挙げられる。この断熱PCコンクリート板は通常、工場で作製された後、現場に搬入し、設置されるものである。
【0018】
【発明の効果】
本発明の建築物の外装材支持用結合筋は、棒材に対し曲げ加工を施すことにより簡易に得ることができる。また、躯体コンクリートの壁面に対して、外装体を斜め方向に支持するように結合筋を配置する場合、例え外装体がコンクリート薄板であっても、十分な定着長が得られ、定着安定性に優れる。
また、本発明の建築物の外装構造体は、躯体コンクリートと外装材が簡易な構造の外装材支持用結合筋により安定して固定されるため、構造強度に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の参考の形態の外装材支持用結合筋の使用状態における概略図である。
【図2】本発明の他の実施の形態の外装材支持用結合筋の使用状態における概略図である。
【図3】外装材支持用結合筋の端部における定着部の形状例を示す図である。
【図4】本発明の他の参考の形態の外装材支持用結合筋の使用状態における概略図である。
【図5】本発明の他の実施の形態の外装材支持用結合筋の使用状態における概略図である。
【図6】本発明の他の実施の形態の外装材支持用結合筋の使用状態における概略図である。
【図7】従来のトラス筋の定着部(アンカー)の形状を示す図である。
【図8】従来のトラス筋の定着部(アンカー)の設置例を示す図である。
【図9】従来のトラス筋の他の定着部(アンカー)の設置例を示す図である。
【図10】従来のW字形状のトラス筋の使用状態における概略図である。
【図11】異形断面の棒材を説明する図である。
【符号の説明】
10、10a、100 外装材支持用結合筋
11、11a〜11e 第1定着部
12、12a、12b 第2定着部
13、13a〜13d、81 連接部
14 建築物の躯体コンクリート板
15 断熱材
16 外装材
18、81 第1屈曲点
19 補助アンカー筋

Claims (5)

  1. 建築物の躯体コンクリートの外側に配置される外装材を支持する棒材を屈曲させて得られる略V字形状又は略W字形状の結合筋であって、
    略V字形状の結合筋は、該躯体コンクリートに埋没する2つの第1定着部と、該外装材に埋没する1つの第2定着部と、該2つの第1定着部と第2定着部を連接する斜め筋である連接部からなり、
    略W字形状の結合筋は、該躯体コンクリートに埋没する3つの第1定着部と、該外装材に埋没する2つの第2定着部と、該3つの第1定着部と2つの第2定着部を連接する斜め筋である連接部からなり、
    該略V字形状の結合筋の3つの定着部形状及び略W字形状の結合筋の5つの定着部形状が、いずれもα字形状であり、且つα字形状における斜め筋の第1屈曲点の曲がり方向が2つの斜め筋又は3つの斜め筋で形成される平面と略同一面内であることを特徴とする建築物の外装材支持用結合筋。
  2. 棒材を屈曲させて得られるものであって、全体形状が略V字形状を繰り返した略鋸刃形状であり、全ての定着部形状がα字形状であることを特徴とする請求項1記載の建築物の外装材支持用結合筋。
  3. 前記連接部は、該躯体コンクリートと該外装材間に付設される断熱材に埋設されることを特徴とする請求項1又は2記載の建築物の外装材支持用結合筋。
  4. 前記第1定着部又は第2定着部のα字形状に貫通する補助アンカー筋と組み合わせて用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の建築物の外装材支持用結合筋。
  5. 建築物の躯体コンクリートと、該躯体コンクリートの外側に付設される断熱材と、該断熱材の外側に付設される外装材と、請求項1〜4のいずれか1項記載の建築物の外装材支持用結合筋を有することを特徴とする建築物の外装構造体。
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