JP4089055B2 - 密閉加熱分解器具、それを用いた試料の前処理方法、分析方法及びそのための装置 - Google Patents

密閉加熱分解器具、それを用いた試料の前処理方法、分析方法及びそのための装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機物を含むことのある試料中の成分を分析する際の前処理のための密閉加熱分解器具及びそれを用いた前処理の方法に関する。さらに詳しくは、有機物を含むことのある試料中の成分を定量あるいは検出して分析するに際して、有機物を加熱分解し、その後に被検成分を吸収液に吸収させるための密閉加熱分解器具及び、それを用いた試料の加熱分解及び試料中の被検成分を吸収するための前処理方法に関する。また、密閉加熱分解器具を用いた試料の分解、被検成分の吸収及び分析を自動化した装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、有機物中のハロゲン、硫黄といった成分の分析には、通常、有機物を加熱もしくは燃焼分解し、被検成分を吸収液に吸収させるという前処理操作を行った後、イオンクロマト法、滴定法、比色法、イオン電極法等により定量分析操作を行っている。この前処理の方法としては、酸素フラスコ法、燃焼管燃焼法、封管燃焼法、ホットフラスコ法、縦型密閉管法が知られている。
【0003】
これらの内、酸素フラスコ法は、例えば有機微量分析研究懇談会編、有機微量定量分析、南光堂、383頁(1969年)に記載されている。すなわち、三角フラスコのような反応容器に吸収液を入れ酸素を充填し、数十mg程度の試料を助燃剤であるろ紙に秤量して包み込み、白金網などにはさんで着火した後、素早く反応容器中に挿入して栓と反応容器をしっかり押さえ、上下を逆にする。試料が燃焼する間、吸収液がフラスコと栓の間をさえぎっており、燃焼後、反応容器をよく振とうして被検成分を吸収液に吸収させる、といった操作を行うものである。この酸素フラスコ法は反応容器以外に特に用意する器具はないが、試料を包むろ紙からの汚染があるため微量分析が不可能であること、ろ紙の燃焼に必要な酸素量を確保するため数百mlオーダーの反応容器を使用しなければならず、実験場所として広い面積を必要とすること、試料に着火して反応容器中で燃焼させる操作などに熟練が必要であること等の課題があった。
【0004】
燃焼管燃焼法は、例えば本間らによって分析化学、第35巻、536頁(1986年)に詳しく記述されている。すなわち、高温の炉内に設置した石英等の管に、酸素気流を通じつつ試料を挿入し、触媒を通して完全燃焼させ、被検成分をガス化して吸収液に吸収させる、といった操作を行うものである。この燃焼管燃焼法は操作が簡単であるため自動化に適しているが、試料中にアルカリ金属等の灰分を含有する場合、被検成分が灰分に捕捉されて吸収液へ完全に移行せず、正確な分析を行うことが困難な場合があるなどの欠点があった。
【0005】
封管燃焼法は、例えば穂積らによって分析化学、第38巻、259頁(1989年)に詳しく記述されている。すなわち、試料と酸素を封入した封管全体を高温の炉内に挿入して加熱し、放冷後吸収液の入った容器に封管部分を落下させて割る。封管内は負圧になっており、吸収液が封管内に浸入するため、そのまま放置して被検成分を吸収液に吸収させる、といった操作を行うものである。この封管燃焼法は助燃剤を使用しないため汚染がほとんどなく、また、試料量が1mg以下の微量で済むといった利点を有するが、試料ごとに面倒な封管操作が必要であること、また使用した封管は使い捨てとなるため不経済であること、封管操作が困難となるため事実上石英ガラス等の耐熱材料を使用できず、封管への加熱はせいぜい600℃までとなり、難燃性試料では分解不能等の欠点があった。
【0006】
ホットフラスコ法は3通りの分解及び吸収方法が知られており、便宜上これらを「横−回転方式」、「縦方式」、「横方式」と呼称する。
【0007】
これらのうち、「横−回転方式」は、例えばW.J.KirstenによってMicrochem.J.,第7巻、34頁(1963年)に詳しく記述されている。すなわち、入り口付近にふくらみを付けそのふくらみに吸収液を入れた、一方の閉じられた石英管を、吸収液部分の手前まで横向きに850℃の炉へ入れて加熱し、酸素を充填する。その後、試料をのせた石英棒をすばやく挿入して密閉し、密閉部分を下に炉ごと90゜回転させて、試料を分解する。数分間の加熱後、石英棒で密閉した石英管を炉から取り出して冷却し、振り混ぜて吸収液に被検成分を吸収させる、といった操作を行うものである。この「横−回転方式」は助燃剤を使用しないため汚染がほとんどないこと、試料量が数mg以下の微量で済むことという利点を有するが、(1)吸収液入りのまま密閉するので吸収液の蒸発による内圧上昇のために漏れが発生する可能性が高いこと、(2)850℃にまで加熱した容器に有機物をのせた石英棒をすばやく挿入するのは危険であること、(3)吸収液部分が炉のすぐ近くにある容器を850℃に加熱しておくので、吸収液が蒸発してしまう可能性があること、(4)炉ごと90゜回転させるので頑丈な機材が必要となることといった欠点があった。
【0008】
「縦方式」は、例えばW.J.KirstenによってMicrochem.J.,第7巻、34頁(1963年)に詳しく記述されている。すなわち、850℃の炉内に縦に設置された、一方の閉じられた石英管に酸素を充填する。吸収液を入れた容器を試料をのせた石英棒とともに石英管の下部からすばやく挿入して密閉し、試料を分解する。燃焼ガスの拡散によって、被検成分を吸収液に吸収させる、といった操作を行うものである。この「縦方式」は助燃剤を使用しないため汚染がほとんどないこと、試料量が数mg以下の微量で済むことという利点を有するが、(1)灰分の残存によるメモリー効果が見られ、試料をのせた石英棒を吸収液で洗浄しないため灰分を有する試料には適さないこと、(2)吸収液入りのまま密閉するので吸収液の蒸発による内圧上昇のために漏れが発生する可能性が高いこと、(3)850℃にまで加熱した容器に試料をのせた石英棒とともに吸収液を入れた容器をすばやく挿入するのは危険であることといった欠点があった。
【0009】
「横方式」は、例えばM.E.FernandopullesらによってMicrochem.J.,第11巻、41頁(1966年)に詳しく記述されている。すなわち、「横−回転方式」と比較して、炉の温度を1000〜1050℃に、密閉後の90゜回転を行わないように変更したものである。この「横方式」は助燃剤を使用しないため汚染がほとんどないこと、試料量が数mg以下の微量で済むことという利点を有するが、(1)吸収液入りのまま密閉するので吸収液の蒸発による内圧上昇のために漏れが発生する可能性が高いこと、(2)1000℃以上に加熱した容器に有機物をのせた石英棒をすばやく挿入するのは危険であること、(3)吸収液部分が炉のすぐ近くにある容器を1000℃以上に加熱しておくので吸収液が蒸発してしまう可能性があることといった欠点があった。
【0010】
このように、ホットフラスコ法は、助燃剤を使用しないため汚染が少ない、試料量がmg以下の微量で済むという利点を有するが、試料分解時に吸収液が容器内に存在することによる欠点等があった。
【0011】
縦型密閉管法は、例えば小野菊繁によって第63回日本分析化学会有機微量分析研究懇談会第7回計測自動制御学会質量・力量計測部会合同シンポジウム講演要旨集、9頁(1996年)に詳しく記述されている。すなわち、炉内で加熱された縦型密閉燃焼管の上から助燃剤に包んだ試料を落下させ、管上部の酸素吹き出し口から酸素を吹き込んで円周方向に試料を回転させながら燃焼し、燃焼ガスをさらに充填剤部分に通して完全燃焼させる。その後、吸収液注入機構から吸収液を注入し、燃焼部を含めて洗浄して被検成分を吸収させる、といった操作を行うものである。この縦型密閉管法は燃焼部分も洗浄するので、灰分等による妨害が少ないという利点があるが、燃焼管内に置かれた充填剤は洗浄が不十分となる可能性があり、メモリーとなって次の試
料への汚染となること、洗浄の機構が複雑であること、助燃剤からの汚染があるため微量分析が不可能であることといった欠点があった。
【0012】
以上のように、従来の有機物中の成分分析を目的とする分解方法には一長一短があった。また、各方法を自動化した装置についても、各方法には課題を有していた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、有機物を含むことのある試料中のハロゲン、硫黄といった成分の分析の前処理に用いる従来の器具、それらを用いた方法及びそれらを自動化した装置に代わる、すなわち、助燃剤を必要とせず、試料中に存在する灰分が被検成分を吸収することによる妨害を受けることがなく、複雑で危険な操作を必要とせず、繰り返し使用可能であり、かつ吸収液を加熱分解後注入できる、試料中の被検成分を正確に定量もしくは検出する際の前処理のための密閉加熱分解器具(以下、「本発明器具」という)、それを用いた有機物を含むことのある試料の加熱分解し、さらに試料中の被検成分を溶解するための前処理方法(以下、「本発明前処理方法」という)、それを自動化した前処理装置(以下「本発明前処理装置」という)、さらに前処理された被検成分を分析する方法(以下、「本発明分析方法」という)、及びそのための装置(以下「本発明分析装置」という)を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、電気炉に加熱部を水平ないし傾斜させて挿入・加熱し、内部の有機物を酸素ガス存在下で分解した後に電気炉より取り出し、冷却後に吸収液を導入して被検成分を吸収させるための器具であって、その一方が閉じられ、他方にはスリ合わせ部、ネジ部又はOリング装着部を有する石英、硬質ガラス又はセラミックス製の加熱部と、この加熱部とスリ合わせ部、ネジ部又はOリングとOリング装着部を介して接続可能であると共に、密閉できかつ加熱分解後に被検成分吸収用の吸収液を外部から導入するための機構としてコック又はバルブを有するかあるいは針状の管で吸収液を導入するためのパッキン又はセプタムを有する密閉導入部とからなる密閉加熱分解器具を開発し、さらにこの器具を用いて、有機物を含むことのある試料を加熱分解し、試料中の被検成分を吸収する方法を行うことで以下の知見を見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
1)助燃剤を使用しないため汚染がほとんどない。
【0016】
2)試料加熱分解部分も洗浄するので、試料中に存在する灰分が被検成分を吸収することによる妨害を受けることがない。
【0017】
3)試料に着火してフラスコ中で燃焼、封管操作、加熱部分へ試料を挿入、炉ごと加熱分解管を回転といった複雑で危険な操作がない。
【0018】
4)吸収液は加熱分解後注入するので、加熱時の蒸発による内圧上昇や吸収液蒸発のおそれがない。
【0019】
5)本発明器具は繰り返し使用可能。
【0020】
6)試料中のハロゲン、硫黄の量を正確に定量分析できる。
【0021】
さらに、本発明器具を用いた試料の加熱分解、生成する被検成分の吸収液による溶解という前処理を自動化した装置及び被検成分の分析をも自動化した装置を開発し、本発明を完成した。
【0022】
尚、本明細書においては、「本発明前処理方法」と「本発明分析方法」の両方について述べる場合には「本発明方法」ということがあり、「本発明前処理装置」と「本発明分析装置」の両方について述べる場合には「本発明装置」ということがある。
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明器具の加熱部の材質としては、1)被検成分がその器材に吸着などにより保持され次の吸収処理の際にその全量が吸収液に移行しないことがないこと、2)本発明器具に充填される酸素や、分解した試料から発生しうるハロゲン化水素、ハロゲン分子ガス、二酸化硫黄などの腐食性ガスによって腐食しにくいこと、3)処理中の加熱に十分耐えることができること、さらに4)本発明器具の加熱部として成形できること、であれば特に制限はなく、例えば石英、硬質ガラスや、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどのセラミックス等をその目的に応じて使用することができる。これらの内、器具内部の試料を観察でき、耐熱性にも優れていることから石英が好ましく用いられる。
【0025】
本発明器具の加熱部の太さとしては、試料の出し入れが容易でかつ本発明器具を加熱するための加熱装置の炉からの熱が十分伝わり加熱部において温度むらが生じたり試料の燃焼が不完全となることがないようなものであればよく、通常5mm以上30mm以下程度の太さのものが用いられる。
【0026】
本発明器具の加熱部の長さは、試料が完全燃焼することができるものであれば特に制限はないが、本発明器具の加熱部の太さが太い場合には器具中の試料が加熱分解され、発生するガスが完全燃焼しないまま炉外へ出てしまうことがあり、これを避けるために10cm以上あることが好ましい。
【0027】
本発明器具の加熱部に供給される酸素ガスの量としては、試料の完全燃焼に必要な酸素量(以下、「理論酸素量」という)に対して、好ましくは2.5倍以上、さらに好ましくは3倍以上であることが望ましい。この範囲であれば試料は完全燃焼され、試料の分析精度が向上することとなる。なお、理論酸素量とは、試料中の構成元素を酸素により酸化するのに必要な酸素量であり、試料の化学組成により理論的に算定されるものである。
【0028】
本発明器具の加熱部の形状は特に制限はなく、例えば円柱状管、加熱部分がふくらんだ円錐状管、角柱状管等が挙げられる。
【0029】
本発明器具を加熱し、試料を加熱分解するための加熱手段を有した加熱装置としては、試料が完全燃焼しうる加熱機構を有し、本発明器具を設置できるものであれば特に制限されないが、本発明器具に近接して器具内をむらなく加熱できるような形状の炉を有したものが好ましく、さらに加熱温度を制御しやすい電気炉を有した加熱装置が好ましく用いられる。また、本発明器具の加熱部の形状にもよるが、例えばその形状が環状の場合には環状炉を有した加熱装置が好ましく用いられる。このように、上記したような本発明器具の加熱部の形状と相補的な形状の炉を有した加熱装置を用いることでむらなく加熱できることとなり好ましい。
【0030】
本発明器具の密閉導入部における試料分解ガスと接触する部分の材質としては、1)被検成分がその器材に吸着などにより保持され次の吸収処理の際にその全量が吸収液に移行しないことがないこと、2)分解した試料から発生しうるハロゲン化水素、ハロゲン分子ガス、二酸化硫黄などの腐食性ガスによって腐食しにくいこと、3)処理中の炉からの輻射熱に十分耐えることができること、さらに4)本発明器具の密閉導入部として成形できるものであれば特に制限はなく、例えば石英、硬質ガラス、白金や、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどのセラミックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂などの非腐食性素材等を用いることができる。これらは本発明器具の密閉導入部の構造、形状によっては1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることもでき、例えば、二方コックを密閉導入部として用いる場合、基部がガラスでコック部がポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂などといった組み合わせなども用いられる。
【0031】
本発明器具の密閉導入部における試料分解ガスと接触しない部分の材質は、炉からの輻射熱に耐えるものであれば特に制限はなく、例えばステンレス、真鍮、鉄、アルミニウム等の各種金属、石英、硬質ガラス等の各種ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PET、PBT、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂などの各種樹脂、シリコンゴム、NBR、クロロプレンゴム、ブチルゴム等の各種ゴムなどを使用することができる。
【0032】
本発明器具の密閉導入部は、炉からの輻射熱の影響を抑えるため炉からある程度離すことが好ましい。その距離については炉の温度により異なるため一概には決められないが、炉の温度、炉と密閉導入部との距離、密閉導入部の材質を考慮して決めるとよい。例えば、密閉導入部の材質として樹脂を用いた場合には密閉導入部の温度が70℃程度を越えないように、炉の温度が600℃の場合には3cm以上離すなど炉の温度、各部の材質、距離を考慮して適宜決めればよい。また、密閉導入部の材質として石英などのようなより耐熱性の高い材質のものを用いた場合には、密閉導入部の温度がさらに高くなるような条件で実施することもできる。
【0033】
本発明器具の加熱部と密閉導入部の接続形態としては、試料を処理している間に器具内の内圧が多少変動しても漏れなく接続できるものであれば特に制限はなく、例えば共通スリ、ネジ、Oリング等が挙げられる。ここで、Oリングとはその形状には特に制限はなく、要は中央部に円形状の穴を有し加熱部と密閉導入部とを接続できるものであればよい。
【0034】
本発明器具の密閉導入部における吸収液導入の方法としては、内圧が多少変動しても漏れを生じることなく吸収液を導入できるものであれば特に制限はなく、コックやバルブで密閉し吸収液導入時に開閉する、あるいはパッキン又はセプタムで密閉し針状の管で吸収液を導入する等の方式が挙げられる。また、吸収液を注入する針状の管の材質としては、燃焼ガスや吸収液による腐食を受けにくく十分な強度を有するものであれば特に制限はなく、ステンレス、シリカコート等の表面不活性化処理ステンレス等が挙げられる。
【0035】
本発明器具を用いて試料を分解する際の加熱温度、加熱時間については、試料が完全に分解される条件であれば特に制限はないが、好ましくは600℃以上で3分以上、さらに好ましくは1000℃以上で3分以上の条件が適当であり、特に灰分を多く含んだ難燃性の試料等には1000℃以上の加熱が好ましい。
【0036】
本発明器具に試料を設置する方法としては、白金ボート、セラミックボート、石英ボート、硬質ガラスボート等の非腐食性素材の容器を用いる、または試料を本発明器具に直接設置する等の方法が挙げられる。
【0037】
本発明器具を炉に設置する方法としては、加熱装置の炉に水平ないし傾斜させて挿入することが望ましい。さらに好ましくは、試料分解ガスが対流によって速やかに上昇して炉外部分へ出ることがないよう、水平もしくは、密閉導入部を下に傾斜させて挿入することが望ましい。
【0038】
本発明器具に充填する酸素については、純酸素、加湿した酸素、又は窒素、ヘリウム若しくはアルゴン等の不活性ガスを混合した酸素を充填する等の方法が挙げられる。
【0039】
本発明器具を用いて前処理される対象の試料としては、その中にハロゲン、硫黄を含んでいるものであっても含まないものであってもよく、その分析の目的に応じて決めればよい。試料中にハロゲン、硫黄を含んでいる場合、試料中のハロゲン、硫黄の含有量を定量して測定するために用いることができる。ここで、試料中のハロゲン、硫黄の含有量とは、試料中に含まれる化合物が単独の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよく、単独の化合物の場合にはその化合物の構造から推定されるハロゲン、硫黄の理論的含有量と比較して含有する化合物を同定することもできる。
【0040】
試料中の成分としては、有機物を含んでいても含まなくともよいが、有機物を含む場合は本発明方法により有機物が加熱され燃焼するためより効果的である。この試料が本発明方法により加熱分解されることで被検成分が無機化される。被検成分としては、ハロゲン及び硫黄からなる群より選ばれる1種以上であり、ハロゲン、硫黄の内の1種単独であっても、これらが2種以上あっても本発明方法により前処理し、分析に供しうる。
【0041】
また、試料中にハロゲン、硫黄の内の1種以上が含まれないことを確認するために用いることもできる。この場合には、試料中にハロゲン、硫黄のいずれも含まれていない場合にその確認をすることも可能であり、試料中の特定のハロゲン、硫黄のいずれかが含まれていないことを確認することもできる。その確認にあたっては、用いられる分析方法にもよるが、通常その分析方法の検出感度において認められないものであれば含まれていないものと判断される。
【0042】
また、本発明方法により加熱分解された試料は次に被検成分であるハロゲン、硫黄の測定に供されるわけであるが、その際に本発明器具に吸収液を導入することで被検成分を含むことのある分析用サンプルが調整される。
【0043】
ここで本発明方法において用いられる吸収液としては、加熱分解された試料に由来するハロゲン、硫黄を含むガスなどを定量的に溶解し、単一の形態に保つことが可能であるものなら特に制限はなく、例えば過酸化水素溶液、抱水ヒドラジン溶液や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液、アンモニア水などのアルカリ溶液等を1種単独、任意の2種の組み合わせ、又はこれら3種を含む溶液や、あるいは純水を用いることができ、これらの内、簡便さから過酸化水素溶液、抱水ヒドラジン溶液、アルカリ溶液又は純水を吸収液として1種単独用いることが好ましく、また、吸収液としての効果をより発揮させるために過酸化水素溶液、抱水ヒドラジン溶液、アルカリ溶液の内の任意の2種の組み合わせを吸収液として用いることが好ましい。
【0044】
さらに、吸収液を使用するにあたり、本発明の前処理方法を実施した後に分析されるハロゲン、硫黄の種類によってその種別を選ぶこともできる。例えば、ハロゲンとしてフッ素を分析する場合には、純水のみを用いることでよく、ハロゲンとして塩素、臭素、ヨウ素を分析する場合には、燃焼後に生じるハロゲン分子ガスを還元するために過酸化水素溶液、抱水ヒドラジン溶液を用いることが好ましく、必要に応じてアルカリ溶液を加えることもできる。硫黄を分析する場合には、燃焼後に生じる硫黄酸化物を酸化するために過酸化水素が好ましく用いられ、必要に応じて抱水ヒドラジン溶液、アルカリ溶液を加えることもできる。さらに、これらハロゲン、硫黄を2種以上有した化合物に対してはその化合物の組成に応じて吸収液の種類を適宜選ぶことでよい。
【0045】
一方、試料中にアルカリ金属等の無機成分が存在した場合には、試料に由来するハロゲン、硫黄はこの金属成分に、例えば塩化ナトリウム、硫酸鉄として捕捉されることがあり、吸収液としてはこれらの捕捉された成分をも溶解させることができるものが好ましい。
【0046】
また、吸収液が導入された後、吸収液と加熱分解された試料に由来する成分が接触し、吸収液に吸収されることとなるが、吸収速度を速めるために器具を振動等を与えてその時間を短縮させることもでき、その振動の方法については手動による振とう、振り混ぜ、あるいは適当な装置による自動化処理など、どのような方法を用いてもよい。
【0047】
この様にして得られた前処理された吸収液を定量分析用のサンプルとして用いることができ、定量分析の方法としては、イオンクロマト法、滴定法、比色法、イオン電極法などが挙げられる。
【0048】
また、上記記載の処理後、用いられた本発明器具は、洗浄後、再度別の試料の前処理のために用いることもできる。
【0049】
このような各部よりなる本発明器具は、図1、図2、図3、図4、図5にその例が示され、以下、図を用いて本発明器具をさらに具体的に説明する。尚、図では各部を示す符号は共通の番号として示す。
【0050】
図1は、本発明器具の軸方向における断面の模式図例である。図1において、1は一方が閉じられた石英管を用いた例であり、他方には共通スリ2を有している。この石英管1の代わりに硬質ガラス管やアルミナ製セラミックス管等の前記した材質のものを用いることもできる。この共通スリ2に、二方コック3や吸収液溜め4を備えた硬質ガラス製などの吸収液導入部を接続する。実際の前処理においては、石英管1に酸素及び試料を設置した後、二方コック3を閉じ、加熱分解し、冷却後吸収液溜め4に吸収液を入れ、二方コック3を開いて管内へ吸収液を導入して用いられる。
【0051】
図2は、本発明器具の軸方向における断面の模式図例である。図2において、1は一方が閉じられた石英管を用いた例であり、他方には共通スリ2を有している。この共通スリ2に、吸収液溜め4や電磁弁5を備えた硬質ガラス製などの前記したような吸収液導入部を接続する。実際の前処理においては、図1で示される器具の場合と同様に操作すればよい。
【0052】
図3は、本発明器具の軸方向における断面の模式図例である。図3において、1は一方が閉じられた石英管を用いた例であり、他方にはネジ山を有している。このネジ山に正確に一致するスクリューキャップ6を、テフロン膜を張ったNBRゴム製のセプタム7のテフロン側を管の内側に向けて間に入れ、石英管1と接続する。実際の前処理においては、吸収液は、スクリューキャップ6上部に開けた小穴から、針状の管でセプタム7を突き通して注入して用いられる。
【0053】
図4は、本発明器具の軸方向における断面の模式図例である。図4において、1は一方が閉じられた石英管を用いた例であり、他方にはOリング受け8を有している。このOリング受け8に、吸収液溜め4や二方コック3を備えた硬質ガラス製の吸収液導入部を、Oリング9を介して接続し、締め付け金具10で締め付けて用いられる。
【0054】
図5は、本発明器具を使用して環状電気炉で加熱する場合の模式図例である。試料11を入れた本発明器具を環状電気炉12中に入れ、熱電対13で温度を測定しながら、温度制御装置14で温度制御して加熱し、本発明器具内の試料11を加熱分解することができる。
【0055】
次に、本発明装置について詳しく説明する。
【0056】
本発明装置は、本発明器具を設置するための器具設置部、本発明器具中の試料を加熱分解するための加熱手段、器具設置部に設置された本発明器具を加熱手段に可逆的に移動させるための移動手段からなり、さらに、この器具設置部、加熱手段及び移動手段を備えた本発明装置に、本発明器具中の試料を加熱分解した後に本発明器具を冷却するための冷却手段、冷却された本発明器具に吸収液を注入するための注入手段、本発明器具中の吸収液を均一化するための撹拌及び/又は振とうするための混和手段及び、本発明器具を器具設置部、加熱手段、冷却手段、注入手段、混和手段のいずれかからこれらの内の別のいずれかへ可逆的に移動させるための移動手段からなる試料の前処理用装置も含まれる。さらにこの試料の前処理用装置に加えて、本発明器具内の吸収液の一部を抜き取り分析手段へ移動させるための抜き取り手段、吸収液中の被検成分を分析する分析手段を有した本発明分析装置も本発明の範囲にある。
【0057】
本発明装置に用いられる器具設置部の材質としては特に限定されず、本発明器具を1個ずつ保持し、測定対象の試料の入った本発明器具を前処理開始後以下で示す移動手段にて移動しうるあるいは前処理された後に移動手段にてこの器具設置部へ本発明器具が設置できる構造を有しておればよい。
【0058】
本発明装置に用いる加熱手段は、前記したように測定対象の試料を加熱分解しうる性能を有し、本発明器具を1個あるいは複数個を前処理開始後以下で示す移動手段にて移動して本発明器具の加熱部を設置できるものであれば特に限定されない。このような加熱手段を有する加熱装置としては、例えば、加熱温度を制御しやすい電気炉が好ましく用いられ、さらにその形状としても本発明器具の加熱部の形状と相補的な形状を有した炉であることが好ましい。
【0059】
本発明装置に用いられる冷却手段は、前記した加熱手段により本発明器具中の測定対象試料を加熱分解した後加熱手段より本発明器具を移動手段にて取り出し、その後この冷却手段の上方に加熱されている本発明器具を保持して室温程度にまで冷却することができる機構を有したものであれば特に制限はないが、急冷による本発明器具の破損を避けるため、ファンあるいはエアシャワー等による空冷が好ましい。冷却時の本発明器具と冷却手段との距離については冷却手段の大きさ、エアー等の排気能力等にもよるが加熱された本発明器具が速やかに冷却できる距離にあればよい。また、このような冷却機構を有した装置を用いず、加熱されている本発明器具移動手段にて取り出した後そのまま保持することで本発明器具を放冷してもよい。
【0060】
本発明装置に用いられる注入手段は、前記した冷却手段により冷却された本発明器具を保持し、本発明器具内に設置された試料が分解して生成した被検成分ガスが漏れることなく、吸収液を注入できるものであれば特に制限はない。例えば、コックやバルブで密閉した密閉導入部を吸収液導入時に開閉する本発明器具を用いた場合には、コックやバルブに接続した管から各種ポンプ等を用いて圧入する機構、本発明器具を冷却することにより内部を負圧にしてコックやバルブに接続した管から吸収液を吸引させる機構等を用いることができる。また、パッキン又はセプタムで密閉し針状の管で吸収液を導入する本発明器具を用いた場合には、針状の管に接続した管から各種ポンプ等を用いて圧入する機構等を用いることができる。これらの内好ましくは、被検成分吸収用の吸収液を外部から導入するための機構として、針状の管で吸収液を導入するためのパッキン又はセプタムを有する密閉導入部からなる器具である場合に、本発明器具に吸収液を注入する機構として、針状の管、電動ビューレット、アクチュエータ付バルブ、針状の管の移動機構及び洗浄部からなり、本発明器具のパッキン又はセプタムに針状の管を移動機構によって突き通し、アクチュエータ付バルブの切り替え及び電動ビューレットの稼働によって吸収液を注入した後、針状の管を移動機構によって洗浄部へ移動して汚染された針状の管を洗浄する吸収液注入機構を使用することが望ましい。
【0061】
本発明装置に用いられる、本発明器具中の吸収液を均一化するための撹拌及び/又は振とうするための混和手段とは、本発明器具を加熱して内部の測定対象試料が分解して発生した被検成分であるガス状のハロゲン及び/又は硫黄を、前記した注入手段により本発明器具に注入された吸収液と混和し、その溶液中に存在する吸収液に溶解した被検成分の濃度を均一にするためのものであり、被検成分が器壁に付着したものを含めて吸収液に取り込まれるように、吸収液で器壁すべてを洗い流し、本発明器具内の吸収液を均一化することができるものであれば特に制限はない。例えば、本発明器具を横向きに設置して軸を中心に回転させる機構、本発明器具を縦向きに設置して軸を中心に上下させる機構、本発明器具を縦向きに設置して軸と平行に回転させる機構等を挙げることができる。これらの内好ましくは、本発明器具を横向きに設置して軸を中心に回転しながら軸方向に往復する撹拌機構を有したものを使用することが望ましい。
【0062】
本発明装置に用いられる、本発明器具を保持し、器具設置部、加熱手段、冷却手段、注入手段、混和手段等の各部へ可逆的に移動する移動手段は、本発明器具を保持したまま運搬できる機構を有しておれば特に制限はない。このような機構を有した移動手段の内でも、本発明器具を保持するメカニカルハンドを備え、電動直交型ロボット、電動直交型多軸ロボット、多関節型ロボット、ベルトコンベア、エアシリンダ、油圧シリンダ等の中から1以上を組み合わせて利用することが好ましく、さらに、メカニカルハンド付電動直交型ロボット又はメカニカルハンドを有しこれを回転する軸を備えた電動直交型ロボットを使用することが好ましい。
【0063】
このような各手段を備える装置により、試料の加熱分解、さらに加熱分解により生成する被検成分の吸収液への溶解、といった前処理を行うための本発明前処理装置が構成される。
【0064】
さらに、この本発明前処理装置に、以下に示す抜き取り手段を有した分析装置を組み合わせることで、本発明分析装置が構成される。
【0065】
すなわち、本発明装置に用いられる、本発明器具内部の吸収液の一部を抜き取り分析手段へ移動させるための抜き取り手段は、前記した混和手段により本発明器具中の被検成分が均一に溶解した吸収液から吸収液の一部あるいは全部を抜き取ることができるものであれば特に制限はない。例えば、針状管を本発明器具に挿入して吸収液を吸引する機構や内部を加圧して吸収液を排出させる機構等を挙げることができる。
【0066】
本発明装置に用いられる、吸収液中の被検成分を分析する分析手段を有した分析装置とは、本発明器具から吸収液を抜き取り送液する機構と連動して被検成分を分析できるものであれば特に制限はない。例えば、イオンクロマトグラフ装置、自動滴定装置、自動吸光度測定装置、イオンメーター等が挙げられる。
【0067】
以下、本発明前処理用装置及び本発明分析装置に用いられる上記の各部について図面を参照しながらさらに具体的に説明する。
【0068】
図6は、本発明前処理装置の模式図例である。図6において、15は本発明器具であり、電動直交型ロボット16及びメカニカルハンド17によって、本発明器具15は器具設置部18から環状電気炉12へ搬送される。
【0069】
図7は、本発明前処理装置の模式図例である。図7において、15は本発明器具であり、電動多関節型ロボット19及びメカニカルハンド17によって、本発明器具15は器具設置部18から環状電気炉12へ搬送される。
【0070】
図8は、本発明前処理装置の模式図例である。図8において、15は本発明器具であり、ベルトコンベア20、エアシリンダ21及びメカニカルハンド17によって、本発明器具15は器具設置部18から環状電気炉12へ搬送される。
【0071】
図9は、本発明器具に吸収液を注入する機構の模式図である。図9において、15はパッキン又はセプタムを有する本発明器具、22は針状の管、23は電動ビューレット、24はアクチュエータ付バルブ、25は針状管移動機構、26は洗浄部であり、本発明器具15のパッキン又はセプタムに針状管22を移動機構25によって突き通し、アクチュエータ付バルブ24の切り替え及び電動ビューレット23の稼働によって吸収液溜め27の吸収液を注入した後、針状の管22を移動機構25によって洗浄部26へ移動して汚染された針状の管を洗浄液溜め28の洗浄液で洗浄される。
【0072】
さらに、本発明器具に吸収液を注入する機構において、以下のように本発明器具に吸収液を注入することもできる。
【0073】
すなわち、1)本発明器具をコック(電磁弁)に接続し、コックは管を通して吸収液の入った電動ビューレットに接続する。コックの開放と電動ビューレットの稼働によって本発明器具に吸収液を注入する。
【0074】
2)本発明器具をコックに接続し、コックは管を通してプランジャーポンプに接続する。コックの開放とプランジャーポンプの稼働によって本発明器具に吸収液を注入する。
【0075】
3)本発明器具をバルブに接続し、バルブは管を通して吸収液の入った電動ビューレットに接続する。バルブの切り替えによって本発明器具と電動ビューレットを接続し、電動ビューレットの稼働によって本発明器具に吸収液を注入する。
【0076】
4)本発明器具をバルブに接続し、バルブは管を通して吸収液の入った吸収液溜めに接続する。本発明器具を冷却して器具内を負圧にし、バルブの切り替えによる本発明器具と吸収液溜めの接続によって、本発明器具に吸収液を注入する。
【0077】
図10は、本発明前処理装置の模式図例である。図10において、15は本発明器具であり、電動直交型ロボット16及びメカニカルハンド17によって、本発明器具15は器具設置部18から環状電気炉12へ搬送される。その後、加熱された本発明器具15はファン29へ搬送して冷却された後、吸収液注入機構30に搬送され、吸収液が注入される。
【0078】
図11は、本発明前処理装置の模式図例である。図11において、15は本発明器具であり、ベルトコンベア20、エアシリンダ21及びメカニカルハンド17によって、本発明器具15は器具設置部18から環状電気炉12へ搬送される。その後、加熱された本発明器具15はエアシャワー31へ搬送されて冷却された後、吸収液注入機構30に搬送され、吸収液が注入される。
【0079】
図12は、本発明前処理装置の模式図例である。図12において、15は本発明器具であり、電動多関節型ロボット19及びメカニカルハンド17によって、本発明器具15は器具設置部18から環状電気炉12へ搬送される。その後、加熱された本発明器具15はエアシャワー31へ搬送されて冷却された後、吸収液注入機構30に搬送され、吸収液が注入される。
【0080】
図13は、本発明前処理装置の模式図例である。図13において、15は本発明器具であり、エアシリンダ21及びメカニカルハンド17によって、本発明器具15は器具設置部18から環状電気炉12へ搬送される。その後、加熱された本発明器具15はエアシャワー31へ搬送されて冷却された後、吸収液注入機構30に搬送され、吸収液が注入される。
【0081】
図14は、本発明分析装置の模式図例である。図14において、15は本発明器具であり、電動直交型多軸ロボット34及びメカニカルハンド17によって、本発明器具15は器具設置部18から環状電気炉12へ搬送される。その後、加熱された本発明器具15はエアシャワー31へ搬送されて冷却された後、吸収液注入機構30に搬送され、吸収液が注入される。そして、電動直交型多軸ロボット34及びメカニカルハンド17により本発明器具15を十分撹拌した後、オートサンプラ32で本発明器具15内の吸収液の一部あるいは全部を抜き取り、イオンクロマトグラフ装置33へ注入して被検成分が分析される。
【0082】
図15は、本発明分析装置の模式図例である。図15において、15は本発明器具であり、電動直交型多軸ロボット34及びメカニカルハンド17によって、本発明器具15は器具設置部18から環状電気炉12へ搬送される。その後、加熱された本発明器具15はファン29へ搬送されて冷却された後、吸収液注入機構30に搬送され、吸収液が注入される。そして、電動単軸ロボット35とメカニカルハンド17からなる撹拌吸収機構で本発明器具15を十分撹拌した後、オートサンプラ32で吸収液の一部あるいは全部を抜き取り、イオンクロマトグラフ装置33へ注入して被検成分が分析される。尚、撹拌吸収機構については、エアシリンダあるいはベルトコンベアとメカニカルハンドからなる撹拌吸収機構を用いてもよい。
【0083】
以上の本発明装置に用いる各手段を適宜配置することで、本発明前処理装置あるいは本発明分析装置が構成される。
【0084】
また、実際の前処理あるいは分析においては、これらの本発明装置における各部をそれぞれ各部毎に操作してもよいが、前記した手順となるようにコンピュータやシーケンサ等の情報処理手段により制御して操作することができる。
【0085】
以上に述べた、本発明器具、本発明方法、本発明装置は、石油、化学、医薬品、食品、半導体、製紙など、あらゆる産業において、製造あるいは使用される有機物の品質管理、化合物の確認、元素組成の把握等に好適に用いられる。
【0086】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0087】
なお、以下の実施例1〜20で得られた結果等につき、表1として、試料の種類、試料の量、理論酸素量、本発明器具の加熱部の酸素量、加熱部の酸素量と理論酸素量との比を、表2として、加熱部の材質、加熱部の内径、試料を炉へ挿入した際の長さ、加熱温度、加熱時間、試料ボートの材質、用いた吸収液の種類、試料を傾ける際の角度についてを、表3として、試料から理論的に導かれるハロゲンと硫黄の含有量(理論値)、得られた結果としてハロゲンと硫黄の含有量(実測値)、これらの比である回収率(実測値/理論値)を、それぞれまとめて示した。
【0088】
【表1】
Figure 0004089055
【0089】
【表2】
Figure 0004089055
【0090】
【表3】
Figure 0004089055
【0091】
また、IC測定の検出下限(検出感度)の値は、フッ素(F-):0.05μg/ml、塩素(Cl-):0.05μg/ml、臭素(Br-):0.1μg/ml、ヨウ素(I-):0.3μg/ml、硫黄(SO4 2-として):0.1μg/mlであり、以下の実施例においては、IC測定の検出下限によって決定される試料中のハロゲン、硫黄の含有量は、フッ素:0.05%、塩素:0.05%、臭素:0.1%、ヨウ素:0.3%、硫黄:0.03%であり、各実施例において記載のない元素についての含有量は上記以下である。さらに、吸収液を50mlに希釈してIC測定に供したが、1/10の5mlに希釈すれば試料中のハロゲン、硫黄の含有量の検出下限は上記の1/10となる。
【0092】
実施例1
S−benzylthiuronium chloride(S−ベンジルチウロニウムクロリド、キシダ化学製)をメトラー社製マイクロ天秤M−3を用いて縦5mm×横15mm×高さ4mmの白金ボートに約5mg精秤し、図1に示された密閉加熱分解器具(管長:30cm、管内径:16mm、管外径:18mm)へ、奥まで挿入した。酸素を注入した後、密閉導入部で栓をした。この密閉加熱分解器具を、あらかじめ1000℃に加熱した環状電気炉(いすず製作所製、大倉電気製温度コントロール装置EC5600付)に試料側から20cmほど水平に挿入し、5分間加熱した。炉から密閉加熱分解器具を抜いて冷まし、二方コックから0.04モル/リットルの水酸化ナトリウムと24重量%の過酸化水素水溶液からなる吸収液を2.5ml注入して振り混ぜ、30分放置した。その後、スリ部分も含めて密閉加熱分解器具内を純水で洗浄し、50mlに希釈してIC測定に供した。
【0093】
ICについては、ポンプに東ソー製CCPM(樹脂仕様)、検出器に東ソー製CM−8010(電気伝導度検出器)、カラムオーブンに東ソー製CO−8011、インテグレータに東ソー製SC−8020、分析カラムに東ソー製TSKgel IC−Anion−PwPEEK(4.6mmI.D.×50mm)、移動相に1.3mMグルコン酸カリウム−1.3mMホウ砂−30mMホウ酸−5%アセトニトリル−0.5%グリセリンを用い、流速1.2ml/分、カラム温度40℃、試料注入量100μlで測定した。検量線は、和光純薬製陰イオン標準溶液を適宜希釈して作成し、試料分解後の吸収液を測定した。
【0094】
S−benzylthiuronium chlorideの理論含有量(重量%)Cl:17.49%、S:15.82%に対して、10回測定(3本の器具を用い、各器具につき、4回、4回、2回繰り返して使用)の平均と相対標準偏差(RSD)は、Cl:17.46%(RSD=0.88%)、S:15.67%(RSD=0.35%)であった。
【0095】
なおこの実施例において、S−benzylthiuronium chlorideの完全燃焼に必要な理論酸素量(=8.15ml)に対する加熱部分の酸素量(=40.2ml)の比は4.93であった。
【0096】
実施例2
試料に日本合成ゴム製ABS(商品名JSR ABS10)100部に対して東都化成製臭素化エポキシ樹脂難燃剤(商品名YDB−408)26部と東ソー製難燃剤Sb2O3(商品名フレームカット610R)8.7部を混練した難燃化ABSを用いて実施した以外は実施例1と同様に試料を前処理し、IC測定を実施した。その結果、仕込量から求めたこの物質のBr含有量(重量%)9.73%に対して7回測定(2本の器具を用い、各器具につき、5回、2回繰り返して使用)の平均と相対標準偏差は9.62%(RSD=1.53%)であった。
【0097】
実施例3
電気炉を800℃、加熱時間を3分にして実施した以外は実施例1と同様に試料を前処理し、IC測定を実施した。その結果、S−benzylthiuronium chlorideの理論含有量(重量%)Cl:17.49%、S:15.82%に対して、Cl:17.52%、S:15.64%であった。
【0098】
実施例4
実施例1で用いられた密閉加熱分解器具の形状を、管長:30cm、管内径:10mm、管外径:12mmとしたものを用い、これにS−benzylthiuronium chlorideを2.902mg使用して実施した以外は実施例1と同様に試料を前処理し、IC測定を実施した。その結果、S−benzylthiuronium chlorideの理論含有量(重量%)Cl:17.49%、S:15.82%に対して、Cl:17.66%、S:15.79%であった。
【0099】
なおこの実施例において、S−benzylthiuronium chlorideの完全燃焼に必要な理論酸素量(=4.74ml)に対する加熱部分の酸素量(=15.7ml)の比は3.31であった。
【0100】
実施例5
S−benzylthiuronium chlorideを3.601mg使用して実施した以外は実施例4と同様に試料を前処理し、実施例1と同様にIC測定を実施した。その結果、S−benzylthiuronium chlorideの理論含有量(重量%)Cl:17.49%、S:15.82%に対して、Cl:18.04%、S:15.96%であった。
【0101】
なおこの実施例において、S−benzylthiuronium chlorideの完全燃焼に必要な理論酸素量(=5.88ml)に対する加熱部分の酸素量(=15.7ml)の比は2.67であった。
【0102】
実施例6
S−benzylthiuronium chlorideを7.712mg使用して実施した以外は実施例1と同様に試料を前処理し、IC測定を実施した。その結果、S−benzylthiuronium chlorideの理論含有量(重量%)Cl:17.49%、S:15.82%に対して、Cl:17.32%、S:15.70%であった。
【0103】
なおこの実施例において、S−benzylthiuronium chlorideの完全燃焼に必要な理論酸素量(=12.6ml)に対する加熱部分の酸素量(=40.2ml)の比は3.19であった。
【0104】
実施例7
実施例4で用いられた密閉加熱分解器具にS−benzylthiuronium chlorideを2.282mg挿入し、環状電気炉に密閉加熱分解器具を試料側から15cm挿入して実施した以外は実施例1と同様に試料を前処理し、IC測定を実施した。その結果、S−benzylthiuronium chlorideの理論含有量(重量%)Cl:17.49%、S:15.82%に対して、Cl:17.32%、S:15.54%であった。
【0105】
なおこの実施例において、S−benzylthiuronium chlorideの完全燃焼に必要な理論酸素量(=3.72ml)に対する加熱部分の酸素量(=11.8ml)の比は3.17であった。
【0106】
実施例8
S−benzylthiuronium chlorideを石英ボート(縦5mm、横15mm、高さ3mm)に入れて実施した以外は実施例1と同様に試料を前処理し、IC測定を実施した。その結果、S−benzylthiuronium chlorideの理論含有量(重量%)Cl:17.49%、S:15.82%に対して、Cl:17.42%、S:15.74%であった。
【0107】
実施例9
S−benzylthiuronium chlorideをアルミナ製セラミックボート(縦5mm、横15mm、高さ4mm)に入れて実施した以外は実施例1と同様に試料を前処理し、IC測定を実施した。その結果、S−benzylthiuronium chlorideの理論含有量(重量%)Cl:17.49%、S:15.82%に対して、Cl:17.31%、S:15.66%であった。
【0108】
実施例10
S−benzylthiuronium chlorideを試料採取容器に入れて精秤し、密閉加熱分解器具内で試料のみを落下させた後、試料採取容器を精秤して試料量を求め実施した以外は実施例4と同様に試料を前処理し、実施例1と同様にIC測定を実施した。その結果、S−benzylthiuronium chlorideの理論含有量(重量%)Cl:17.49%、S:15.82%に対して、Cl:17.66%、S:15.79%であった。
【0109】
実施例11
実施例1で用いられた密閉加熱分解器具の形状を、管長:18cm、管内径:27mm、管外径:30mmとしたものを用い、これにS−benzylthiuronium chlorideを挿入し、環状電気炉に密閉加熱分解器具を試料側から10cm挿入して実施した以外は実施例8と同様に試料を前処理し、実施例1と同様にIC測定を実施した。その結果、S−benzylthiuronium chlorideの理論含有量(重量%)Cl:17.49%、S:15.82%に対して、Cl:17.45%、S:15.55%であった。
【0110】
実施例12
図2に示された密閉加熱分解器具(管長:30cm、管内径:16mm、管外径:18mm)にS−benzylthiuronium chlorideを挿入して実施した以外は実施例1と同様に試料を前処理し、IC測定を実施した。その結果、S−benzylthiuronium chlorideの理論含有量(重量%)Cl:17.49%、S:15.82%に対して、Cl:17.56%、S:15.65%であった。
【0111】
実施例13
図3に示された密閉加熱分解器具(管長:30cm、管内径:16mm、管外径:18mm)にS−benzylthiuronium chlorideを挿入して実施した以外は実施例1と同様に試料を前処理し、IC測定を実施した。その結果、S−benzylthiuronium chlorideの理論含有量(重量%)Cl:17.49%、S:15.82%に対して、Cl:17.32%、S:15.66%であった。
【0112】
実施例14
図4に示された密閉加熱分解器具(管長:30cm、管内径:16mm、管外径:18mm)にS−benzylthiuronium chlorideを挿入した以外は実施例1と同様に試料を前処理し、IC測定を実施した。その結果、S−benzylthiuronium chlorideの理論含有量(重量%)Cl:17.49%、S:15.82%に対して、Cl:17.57%、S:15.79%であった。
【0113】
実施例15
密閉加熱分解器具を密閉導入部を下に水平から30度傾斜させて挿入した以外は実施例1と同様に試料を前処理し、IC測定を実施した。その結果、S−benzylthiuronium chlorideの理論含有量(重量%)Cl:17.49%、S:15.82%に対して、Cl:17.28%、S:15.82%であった。
【0114】
実施例16
吸収液に0.04モル/リットルの水酸化ナトリウムと10重量%のヒドラジン水溶液を用いて実施した以外は実施例2と同様に試料を前処理し、実施例1と同様にIC測定を実施した。その結果、この物質のBr含有量(重量%)9.73%に対して、Br:9.55%であった。
【0115】
実施例17
試料にp−chlorobenzoic acid(p−クロロ安息香酸)を用い、吸収液に純水を用いて実施した以外は実施例4と同様に試料を前処理し、実施例1と同様にIC測定を実施した。その結果、この物質の理論含有量(重量%)Cl:22.64%に対して、Cl:22.00%であった。
【0116】
実施例18
硬質ガラスを材質とした密閉加熱分解器具と試料ボートを用い、電気炉を600℃、加熱時間を30分にして実施した以外は実施例4と同様に試料を前処理し、実施例1と同様にIC測定を実施した。その結果、S−benzylthiuronium chlorideの理論含有量(重量%)Cl:17.49%、S:15.82%に対して、Cl:17.90%、S:15.43%であった。
【0117】
実施例19
アルミナ製セラミックスを材質とした密閉加熱分解器具を用いて実施した以外は実施例1と同様に試料を前処理し、IC測定を実施した。その結果、S−benzylthiuronium chlorideの理論含有量(重量%)Cl:17.49%、S:15.82%に対して、Cl:17.44%、S:15.77%であった。
【0118】
実施例20
試料にo−iodobenzoic acid(o−ヨード安息香酸)を用い、0.04モル/リットルの水酸化ナトリウムと24重量%の過酸化水素と10重量%のヒドラジン水溶液からなる吸収液を用いて実施した以外は実施例1と同様に試料を前処理し、IC測定を実施した。その結果、この物質の理論含有量(重量%)I:15.17%に対して、I:15.09%であった。
【0119】
以上の実施例によれば、種々のハロゲンと硫黄を含む有機化合物を本発明の器具を用いて前処理し、得られた前処理液中のハロゲンと硫黄の含有量を測定することで、RSDが小さいことが示すように精度よく測定され、さらに回収率がほぼ100%となることから正確な測定結果が得られることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明器具の断面図例
【図2】本発明器具の断面図例
【図3】本発明器具の断面図例
【図4】本発明器具の断面図例
【図5】本発明器具を用いて試料を環状電気炉で加熱分解する際の模式図例
【図6】本発明前処理装置の模式図例
【図7】本発明前処理装置の模式図例
【図8】本発明前処理装置の模式図例
【図9】本発明前処理装置の模式図例
【図10】本発明前処理装置の模式図例
【図11】本発明前処理装置の模式図例
【図12】本発明前処理装置の模式図例
【図13】本発明前処理装置の模式図例
【図14】本発明分析装置の模式図例
【図15】本発明分析装置の模式図例
【符号の説明】
図において番号は共通のものであり、その番号は以下に記す。
1:一方が閉じられた石英管
2:スリ合わせ部
3:二方コック
4:吸収液溜め
5:電磁弁、又はバルブ
6:スクリューキャップ
7:セプタム
8:Oリング受け
9:Oリング
10:締め付け金具
11:試料
12:環状電気炉
13:熱電対
14:温度制御装置
15:本発明器具
16:電動直交型ロボット
17:メカニカルハンド
18:本発明器具設置部
19:電動多関節型ロボット
20:ベルトコンベア
21:エアシリンダ
22:針状の管
23:電動ビューレット
24:アクチュエータ付バルブ
25:針状の管移動機構
26:洗浄部
27:吸収液溜め
28:洗浄液溜め
29:ファン
30:吸収液注入機構
31:エアシャワー
32:オートサンプラ
33:イオンクロマトグラフ装置
34:電動直交型多軸ロボット
35:電動単軸ロボット
【発明の効果】
以上述べてきたように、本発明によれば次の利点がある。
本発明器具、それを用いた前処理方法及び分析方法によれば、
1)助燃剤を使用しないため汚染がほとんどない。
2)試料に着火してフラスコ中で燃焼、封管操作、加熱部分へ試料を挿入、炉ごと加熱分解管を回転といった従来の方法に比べ、複雑で危険な操作がない。
3)吸収液は加熱分解終了後に注入するので、加熱時の蒸発による内圧上昇や吸収液蒸発のおそれがない。
4)試料中に存在する灰分による妨害を受けることなく被検成分を正確に定量分析することができる。
5)本発明器具は繰り返し使用可能である。
さらに、本発明器具を用いた前処理装置、分析装置は、このような利点を活かしたままその操作を自動化できることから、産業上有用である。

Claims (13)

  1. 加熱装置に加熱部を水平ないし傾斜させて挿入・加熱し、内部の有機物を酸素ガス存在下で分解した後に加熱装置より取り出し、冷却後に吸収液を導入して被検成分を吸収させるための器具であって、一方が閉じられ、他方はスリ合わせ部、ネジ部又はOリング装着部を有する加熱部と、この加熱部とスリ合わせ部、ネジ部又は、OリングとOリング装着部を介して接続可能であると共に、密閉できかつ加熱分解後に被検成分吸収用の吸収液を外部から導入するための機構としてコック又はバルブを有するかあるいは針状の管で吸収液を導入するためのパッキン又はセプタムを有する密閉導入部とからなることを特徴とする密閉加熱分解器具。
  2. 有機物を含むことのある試料を請求項1に記載の密閉加熱分解器具に設置して酸素ガスを充填して密閉した後、加熱して有機物を分解、冷却し、その後前記密閉加熱分解器具に吸収液を導入して前記試料中の被検成分を吸収することを特徴とする試料の前処理方法。
  3. 被検成分がハロゲン及び硫黄からなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項2に記載の試料の前処理方法。
  4. 充填される酸素ガスの量が試料の完全燃焼に必要な酸素ガスの量の2.5倍以上であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の試料の前処理方法。
  5. 請求項1に記載の密閉加熱分解器具を用いて有機物を含むことのある試料の加熱分解を行う装置であって、前記密閉加熱分解器具を設置するための器具設置部、前記密閉加熱分解器具中の試料を加熱分解する加熱手段及び前記器具設置部に設置された前記密閉加熱分解器具を前記加熱手段へ可逆的に移動させるための移動手段を備えることを特徴とする試料を加熱分解するための装置。
  6. 請求項1に記載の密閉加熱分解器具に有機物を含むことのある試料を酸素ガスとともに設置して密閉した後、請求項5に記載の装置により前記密閉加熱分解器具を加熱して前記試料に含まれることがある有機物を分解することを特徴とする試料の前処理方法。
  7. 請求項5に記載の試料を加熱分解するための装置に、さらに密閉加熱分解器具中の試料を加熱分解した後に前記密閉加熱分解器具を冷却するための冷却手段、冷却された前記密閉加熱分解器具に吸収液を注入する注入手段、前記密閉加熱分解器具中の吸収液を均一化するための撹拌及び/又は振とうするための混和手段及び、前記密閉加熱分解器具を器具設置部から前記加熱手段、冷却手段、注入手段及び混和手段のいずれかへ可逆的に移動させるための移動手段を備えることを特徴とする試料を加熱分解し生成する被検成分を溶解するための装置。
  8. 請求項1に記載の密閉加熱分解器具に有機物を含むことのある試料を酸素ガスとともに設置して密閉した後、請求項7に記載の装置により、前記密閉加熱分解器具を加熱して前記試料に含まれることがある有機物を分解して被検成分を生成させ、前記密閉加熱分解器具を冷却した後、前記密閉加熱分解器具に吸収液を注入して被検成分を溶解し、さらに前記密閉加熱分解器具を撹拌及び/又は振とうして密閉加熱分解器具内の前記吸収液を均一化することを特徴とする試料の前処理方法。
  9. 請求項7に記載の試料を加熱分解し生成する被検成分を溶解するための装置に、さらに吸収液中の被検成分を分析する分析手段と、密閉加熱分解器具内部の吸収液の一部を抜き取り前記分析手段へ移動させる移動手段とを備えることを特徴とする被検成分を分析するための装置。
  10. 請求項1に記載の密閉加熱分解器具に、有機物を含むことのある試料を酸素ガスとともに設置して密閉した後、請求項9に記載の装置により、前記密閉加熱分解器具を加熱して有機物を分解し、冷却後吸収液を注入して被検成分を溶解し、前記密閉加熱分解器具を撹拌及び/又は振とうして密閉加熱分解器具内の吸収液を均一化した後、吸収液中の被検成分を分析することを特徴とする分析方法。
  11. 請求項7又は請求項9に記載の装置において、密閉加熱分解器具への吸収液の注入手段として、
    針状管;
    電動ビューレット;
    切り替え可能なアクチュエータ付バルブ;
    針状管を密閉加熱分解器具のパッキン又はセプタムに突き通し、洗浄部へ移動するための針状管の移動手段;
    汚染された針状管を洗浄するための洗浄部;
    を備えることを特徴とする装置。
  12. 請求項7又は請求項9に記載の装置において、混和手段として密閉加熱分解器具を横向きのまま密閉加熱分解器具の軸を中心に回転しながら密閉加熱分解器具の軸方向に往復する手段を備えることを特徴とする装置。
  13. 請求項7又は請求項9に記載の装置において、移動手段として、メカニカルハンド付電動直交型ロボット又はメカニカルハンドを有し、かつこれらを回転するための軸を有した電動直交型ロボットを備えることを特徴とする装置。
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