JP4088594B2 - 導電体ペースト、電子部品およびそれらの製造方法 - Google Patents

導電体ペースト、電子部品およびそれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、導電体ペースト、電子部品、積層セラミックコンデンサおよびそれらの製造方法に関する。
電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサは、誘電体層と内部電極層とが交互に複数配置された積層構造の素子本体と、該素子本体の両端部に形成された一対の外部端子電極とで構成される。
この積層セラミックコンデンサは、まず焼成前誘電体層と焼成前内部電極層とを必要枚数だけ交互に複数積層させて焼成前素子本体を製造し、次にこれを焼成した後、焼成後素子本体の両端部に一対の外部端子電極を形成して製造される。
焼成前誘電体層は、シート法などで形成することができる。シート法とは、誘電体粉末、バインダ、可塑剤および有機溶剤などを含む誘電体ペーストを、ドクターブレード法などを用いてPETなどのキャリアシート上に塗布し、加熱乾燥させて製造する方法である。
焼成前内部電極層は、印刷法などにより形成することができる。印刷法とは、導電材、バインダ樹脂および有機溶剤などを含む導電体ペーストを、セラミックグリーンシート上に所定パターンで塗布形成する方法である。導電材は、Pd、Ag−Pd、Niなどの金属を含有する。
特許文献1には、気相化学反応法により、粒子表面に所定量の酸化膜を生成させたNi粉末を含有する内部電極形成用のNi導電性ペーストが開示されている。この文献によると、上記気相化学反応法によりNi粉末表面に付着する酸素量を制御することにより、還元性雰囲気等の弱酸化性雰囲気にて脱バインダ処理を行う際における、バインダ樹脂の異常燃焼を防ぐことができるという旨が記載されている。また、この文献記載の発明においては、脱バインダ処理を還元性雰囲気等の弱酸化性雰囲気にて行うことが必要である。
特開2001−68374号公報
内部電極形成用の導電体ペーストは、バインダ樹脂を含んでおり、上記焼成前内部電極層を形成する際に導電体ペーストを使用する場合には、このバインダ樹脂を熱分解するために脱バインダ処理を行う必要がある。一般に、脱バインダ処理工程においては、導電体ペーストに含まれるバインダ樹脂だけでなく、誘電体ペーストに含まれるバインダ樹脂も熱分解することを目的として行われる。通常、導電体ペーストに使用されるバインダ樹脂は、熱分解開始温度が比較的高温であるため、それにあわせて、脱バインダ処理の温度も高く設定する必要がある。
特に、導電体ペースト中のバインダ樹脂の熱分解温度が、誘電体ペースト中のバインダ樹脂の熱分解温度と比較して、高いため、以下のように脱バインダ反応が進行する。すなわち、まず、比較的低い温度で、誘電体ペーストの脱バインダ反応が起こり、本焼成前の誘電体層が形成される。この誘電体層は、本焼成を行う前の誘電体層であり、物理的に脆い状態である。その後、さらに昇温することにより、より高い温度で、導電体ペースト中のバインダ樹脂の熱分解反応が急激に進行し、熱分解反応により多量の分解ガスが急激に発生する。そして、上記誘電体層が物理的に脆い状態であること、および、多量の分解ガスが急激に発生することが原因となり、素地割れや素地クラック等の構造欠陥が発生するという問題点があった。
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、積層セラミックコンデンサ等の電子部品の内部電極形成用に使用される導電体ペーストにおいて、バインダ樹脂の熱分解温度を低下させ、かつ、急激な熱分解反応を抑制し、たとえば、素地割れや素地クラック等の構造欠陥の発生率の低減が可能な導電体ペーストを提供することを目的とする。また、本発明は、このような導電体ペーストを用いて製造され、素地割れや素地クラック等の構造欠陥の発生率の低い積層セラミックコンデンサなどの電子部品を提供することも目的とする。
本発明者等は、少なくとも導電体粒子を含有する導電体ペーストにおいて、前記導電体粒子表面の酸化率(酸化度)を所定範囲に制御することにより、本発明の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る導電体ペーストは、
導電体粒子を、少なくとも含有する導電体ペーストであって、
前記導電体ペースト100重量%に対する前記導電体粒子の重量比(W)、および前記導電体粒子の700℃における酸化状態の重量比(W)から求められる導電体粒子のTG酸化率({100×(W−W)}/W)が、
20〜30%であることを特徴とする。
本発明においては、導電体ペースト中に含有される導電体粒子のTG酸化率を上記所定範囲内に制御することにより、脱バインダ工程におけるバインダ樹脂の熱分解温度を低下させ、かつ、急激な熱分解反応を抑制することが可能となる。したがって、本発明の導電体ペーストを積層セラミックコンデンサ等の電子部品の内部電極形成用のペーストとして使用することにより、素地割れや素地クラック等の構造欠陥の発生率を低減することができる。
本発明において、導電体粒子のTG酸化率とは、導電体ペーストについて、TG測定(熱重量測定)を行うことにより求められる酸化率である。
具体的には、まず、導電体ペーストについて、TG測定により、導電体ペースト100重量%に対する導電体ペースト中の導電体粒子の重量比(W)と、前記導電体粒子の700℃における酸化状態の重量比(W)とを測定する。次いで、導電体粒子の酸化状態の重量比(W)と、酸化前の導電体粒子の重量比(W)との差を(W−W)を求める。次いで、導電体粒子の酸化状態の重量比(W)と、酸化前の導電体粒子の重量(W)との差(W−W)の、酸化前の導電体粒子の重量(W)に対する比を100分率にて算出し、この値をTG酸化率として、規定した。すなわち、導電体粒子のTG酸化率は、下記式(1)で表される。
導電体粒子のTG酸化率(%)={100×(W−W)}/W…式(1)
あるいは、本発明に係る導電体ペーストは、
導電体粒子を、少なくとも含有する導電体ペーストであって、
前記導電体粒子が、導電性を有するコア部と該コア部の表面に形成された酸化皮膜部とを有し、
前記酸化皮膜部の少なくとも一部が除去されており、
前記コア部の少なくとも一部が外部に露出していることを特徴とする。
本発明において、上記導電体粒子は、導電性を有するコア部と該コア部の表面に形成された酸化皮膜部とを有し、かつ、前記コア部の少なくとも一部が外部に露出していれば良い。このような導電体粒子としては、たとえば、あらかじめ酸化皮膜の形成されている導電体粒子から、酸化皮膜を除去することによって得られる導電体粒子だけでなく、酸化皮膜の形成されていない導電体粒子の表面に酸化皮膜を形成することにより得られる導電体粒子も含まれる。
本発明に係る導電体ペーストにおいて、好ましくは、
導電性を有するコア部と、該コア部の表面に形成された酸化皮膜部とを有する導電体粒子を、少なくとも含有する導電体ペーストであって、
前記導電体ペースト100重量%に対する前記導電体粒子の重量比(W)、および前記導電体粒子の700℃における酸化状態の重量比(W)から求められる導電体粒子のTG酸化率({100×(W−W)}/W)が、
20〜30%となるように、
前記酸化皮膜部の少なくとも一部が除去されており、
前記コア部の少なくとも一部が外部に露出していることを特徴とする。
本発明に係る導電体ペーストにおいて、好ましくは、
前記導電体粒子が、
TG酸化率が40%以上である第1導電体粒子と、
TG酸化率が10%以下である第2導電体粒子とを混合することにより得られる導電体粒子である。
本発明に係る導電体ペーストにおいて、好ましくは、
前記第1導電体粒子が、
導電性を有するコア部と、該コア部の表面に形成された酸化皮膜部とを有し、
前記酸化皮膜部の少なくとも一部が除去されており、
前記コア部の少なくとも一部が外部に露出している。
本発明に係る導電体ペーストにおいて、好ましくは、前記導電体粒子の含有量が、導電体ペースト全体に対して、
30〜70重量%、より好ましくは40〜60重量%である。
なお、本発明において、導電体粒子は、主として導電性を有する材料から構成されていれば良く、たとえば、酸化皮膜等の導電性を有しない材料を含有していても良い。また、本発明において、導電体ペーストは、導電体粒子の他に、バインダ樹脂および有機溶剤等を含有し、導電体ペースト自体は、通常、導電性を有しない。
本発明に係る導電体ペーストにおいて、好ましくは、前記導電体粒子が、ニッケルを主成分とする金属粒子である。
本発明において、前記導電体粒子は、ニッケルを主成分とする金属から構成されていることが好ましい。また、ニッケルを主成分とする金属には、ニッケルと他の金属との合金も含まれ、合金中のニッケル含有量は95重量%以上であることが好ましい。
本発明に係る導電体ペーストの製造方法は、
導電性を有するコア部と、該コア部の表面に形成された酸化皮膜部とを有する導電体粒子を、少なくとも含有する導電体ペーストを製造する方法であって、
前記コア部の表面に形成された酸化皮膜部の少なくとも一部を除去し、
前記コア部の少なくとも一部を外部に露出させる工程を有する。
本発明に係る導電体ペーストの製造方法において、好ましくは、
前記酸化皮膜部の少なくとも一部を除去する方法が、
前記コア部の表面に形成された酸化皮膜部の少なくとも一部を機械的な加工により剥ぎ取る方法である。
このような方法としては、3本ロールミルを使用する方法、ビーズミルを使用する方法等が挙げられる。
あるいは、本発明に係る導電体ペーストの製造方法は、
導電体粒子を、少なくとも含有する導電体ペーストを製造する方法であって、
前記導電体ペースト100重量%に対する前記導電体粒子の重量比(W)、および前記導電体粒子の700℃における酸化状態の重量比(W)から求められる導電体粒子のTG酸化率({100×(W−W)}/W)が、
20〜30%となるように、
TG酸化率が40%以上である第1導電体粒子と、
TG酸化率が10%以下である第2導電体粒子とを混合する工程を有する。
本発明に係る電子部品は、
内部電極層と誘電体層とを有し、
前記内部電極層が、上記いずれかの導電体ペーストを焼成することにより形成される。
本発明に係る積層セラミックコンデンサは、
内部電極層と誘電体層とが交互に積層してある素子本体を有する積層セラミックコンデンサであって、
前記内部電極層が、上記いずれかの導電体ペーストを焼成することにより形成される。
本発明に係る電子部品の製造方法は、
内部電極層と誘電体層とを有する電子部品を製造する方法であって、
上記いずれかの導電体ペーストと、
焼成後に誘電体層となるグリーンシートとを積層する工程と、
前記導電体ペーストと前記グリーンシートとの積層体を焼成する工程とを有する。
本発明に係る積層セラミックコンデンサの製造方法は、
内部電極層と誘電体層とが交互に積層してある素子本体を有する積層セラミックコンデンサを製造する方法であって、
上記いずれかの導電体ペーストと、
焼成後に誘電体層となるグリーンシートとを交互に積層させる工程と
前記導電体ペーストと前記グリーンシートとの積層体を焼成する工程とを有する。
本発明によれば、積層セラミックコンデンサ等の電子部品の内部電極形成用に使用され、導電体粒子を含有する導電体ペーストにおいて、前記導電体粒子表面の酸化率(酸化度)を所定範囲に制御することにより、バインダ樹脂の熱分解温度を低下させ、かつ、急激な熱分解反応を抑制し、たとえば、コンデンサにおいて、素地割れや素地クラック等の構造欠陥の発生率の低減が可能な導電体ペーストを提供することができる。また、内部電極形成用のペーストとして、本発明の導電体ペーストを使用することにより、素地割れや素地クラック等の構造欠陥の発生率の低い積層セラミックコンデンサなどの電子部品を提供することできる。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図、
図2(A)は本発明の導電体ペーストのTG−DTA測定におけるTG曲線、図2(B)はDTA曲線、
図3(A)、図3(B)は本発明の一実施形態に係る導電体ペースト中の導電体粒子を示す概略図、
図4は本発明の一実施形態に係る導電体ペースト中の導電体粒子の要部拡大断面図、
図5は本発明の実施例に係る導電体ペーストにおける導電体粒子のTG酸化率とバインダ樹脂の分解温度との関係を示すグラフ、
図6は本発明の実施例に係る積層セラミックコンデンサにおけるバインダ樹脂の分解温度と構造欠陥発生率との関係を示すグラフ、
図7は本発明の実施例に係る積層セラミックコンデンサにおける導電体粒子のTG酸化率と構造欠陥発生率との関係を示すグラフである。
まず、本発明に係る電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよいが、通常、(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×(0.3〜2.5mm)程度である。
内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
本実施形態においては、内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、たとえば、誘電体層2の構成材料として、耐還元性を有する材料を使用した場合には、卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、ニッケルを主成分とする金属、またはニッケルと他の金属との合金が好ましい。ニッケル合金としては、マンガン(Mn),クロム(Cr),コバルト(Co)およびアルミニウム(Al)から選択される1種以上の元素とニッケルとの合金が好ましく、合金中のニッケル含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、ニッケルまたはニッケル合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。内部電極層3は、後で詳細に説明するように、図3(A)あるいは図3(B)または図4に示す導電体粒子を含む導電体ペーストを用いて形成される。
誘電体層2の材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。この誘電体層2は、好ましくは、還元雰囲気焼成が可能な誘電体材料で構成してある。
各誘電体層2の厚みは、特に限定されず、目的や用途等に応じて、適宜選択すればよいが、本実施形態では、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは1〜5μm程度である。
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本発明では安価なニッケル、銅、スズや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定されればよいが、通常、8〜50μm程度であることが好ましい。
積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、積層セラミックコンデンサ1の製造方法の一例を説明する。
まず、焼成後に図1に示す誘電体層2を構成することになるセラミックグリーンシートを製造するために、誘電体層用ペーストを準備する。
誘電体層用ペーストは、通常、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練して得られる有機溶剤系ペースト、または水系ペーストで構成される。
誘電体原料としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。誘電体原料は、通常、平均粒子径が0.1〜3.0μm程度の粉末として用いられる。なお、きわめて薄いグリーンシートを形成するためには、グリーンシート厚みよりも細かい粉末を使用することが望ましい。
有機ビヒクルとは、バインダ樹脂を有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いられるバインダ樹脂としては、特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂などの通常の各種バインダ樹脂を用いることができる。また、有機ビヒクルに用いられる有機溶剤も特に限定されず、ターピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエンなどの有機溶剤が用いられる。
また、水系ペーストにおけるビヒクルは、水に水溶性バインダを溶解させたものである。水溶性バインダとしては特に限定されず、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、水溶性アクリル樹脂、エマルジョンなどが用いられる。誘電体ペースト中の各成分の含有量は特に限定されず、通常の含有量、たとえばバインダは1〜5質量%程度、溶剤(または水)は10〜50質量%程度とすればよい。
誘電体層用ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されても良い。ただし、これらの総含有量は、10質量%以下とすることが望ましい。バインダ樹脂として、ブチラール系樹脂を用いる場合には、可塑剤は、バインダ樹脂100質量部に対して、25〜100質量部の含有量であることが好ましい。可塑剤が少なすぎると、グリーンシートが脆くなる傾向にあり、多すぎると、可塑剤が滲み出し、取り扱いが困難である。
次に、焼成後に図1に示す内部電極層3を構成することになる内部電極層用膜を製造するために、内部電極用ペーストを準備する。
本実施形態においては、内部電極用ペーストとして、本発明の導電体ペーストを使用する。
本発明の導電体ペーストは、少なくとも導電体粒子を含有し、好ましくは、導電体粒子以外の成分として、上述した有機ビヒクルを含有する。
導電体粒子は、ニッケルを主成分とする金属、またはニッケルを主成分とする他の金属との合金で構成されることが好ましい。ニッケル合金としては、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、コバルト(Co)およびアルミニウム(Al)から選択される1種以上の元素とニッケルとの合金が好ましく、合金中のニッケル含有量は95重量%以上であることが好ましい。
導電体粒子の含有量は、導電体ペースト全体に対して、30〜70重量%であることが好ましく、より好ましくは40〜60重量%である。
上記導電体粒子は、TG酸化率が20〜30%である。
本発明において、導電体粒子のTG酸化率とは、導電体ペースト中の導電体粒子の酸化率(酸化度)を示す指標であり、導電体ペーストについて、TG測定(熱重量測定)を行うことにより求められる酸化率である。
TG酸化率は、以下に示す測定を行うことにより求めることができる。
まず、示差熱・熱重量(TG−DTA)同時測定において、図2(A)に示すTG曲線より、測定前の導電体ペースト100重量%に対する、バインダ樹脂等の導電体粒子以外の成分が分解しきる点Aにおける重量比(W)と、700℃における重量比(W)を求める。ここで、点Aにおける重量比(W)は、導電体ペースト中の導電体粒子の重量比を表している。また、点Bにおける重量比(W)は、導電体ペースト中の導電体粒子の粒子表面が、十分に酸化した状態の重量比を表している。
本発明において、点Bの温度を700℃としたのは以下の理由による。
すなわち、700℃を超えて、さらに温度を上昇させると、導電体粒子表面の酸化だけでなく、導電体粒子全体の酸化が促進する傾向にあり、一方、温度が低すぎると、導電体粒子表面の酸化が不十分となる傾向にある。そのため、本発明では、TG酸化率を測定する際においては、導電体粒子の酸化前の重量比と、700℃における酸化状態の重量比との差を求めることにより、評価を行う。すなわち点Bの温度を700℃とする。また、点Bの温度を、バインダ樹脂や溶剤が分解しきる温度である点Aの温度よりも充分高い温度である700℃とすることにより、樹脂や溶剤の残留による影響を取り除くことができ、溶剤として、たとえば、高沸点溶剤を使用した場合においても、同様に、その影響を取り除くことができる。たとえば、バインダ樹脂としてエチルセルロースを使用した場合においては、点Aの温度は、180〜400℃程度である。
次いで、点Bにおける重量比(W)と点Aにおける重量比(W)との差(W−W)の、点Aにおける重量比(W)に対する比を100分率にて算出し、これを、導電体粒子のTG酸化率とする。導電体粒子のTG酸化率は、下記式(1)で表される。
導電体粒子のTG酸化率(%)={100×(W−W)}/W…式(1)
なお、TG酸化率の値が高いほど、導電粒子の酸化率(酸化度)は低くなり、逆に、TG酸化率の値が低いほど、導電粒子の酸化率(酸化度)は高くなる。
また、導電体粒子のTG酸化率を測定する際の測定条件としては、昇温速度を10℃/分以下、測定雰囲気は、Air雰囲気とする。
本発明の特徴点は、少なくとも導電体粒子を含有する導電体ペーストにおいて、導電体粒子の酸化率(酸化度)を制御し、TG酸化率を上記所定範囲とする点にある。このようにすることにより、たとえば、本発明の導電体ペーストを、積層セラミックコンデンサの内部電極形成用のペーストとして使用することにより、コンデンサの素地割れや素地クラック等に起因する構造欠陥発生率を低減することが可能となる。
この理由については、必ずしも明らかではないが、以下の理由によるためであると考えられる。
すなわち、導電体ペースト中の導電体粒子のTG酸化率が高くなり、導電体粒子の酸化率が低くなると、導電体粒子表面において酸化されていない部分、すなわち、金属部が外部に露出している部分が相対的に多くなる。この外部に露出した金属部は、バインダ樹脂の分解温度を低くするという触媒効果があると考えられ、この触媒効果により、バインダ樹脂の分解温度が低くなると考えられる。その結果、脱バインダ工程におけるバインダ樹脂の急激な熱分解反応を抑制することが可能となり、バインダ樹脂の急激な熱分解反応に起因する構造欠陥の発生を有効に防ぐことが可能となると考えられる。
また、逆に、導電体粒子のTG酸化率が高くなり過ぎると、バインダ樹脂の分解温度が低くなり過ぎるため、脱バインダ工程におけるバインダ樹脂の分解反応が不十分となり、内部電極層に炭素成分が残留してしまい、構造欠陥の発生率が高くなってしまうと考えられる。
したがって、TG酸化率を上記所定範囲内に制御することにより、素地割れや素地クラック等に起因する構造欠陥の発生率を低減することができると考えられる。
また、上記TG酸化率が20〜30%である導電体粒子は、TG酸化率が40%以上である第1導電体粒子と、TG酸化率が10%以下である第2導電体粒子とを混合することにより得ることもできる。
上記第1導電体粒子のTG酸化率は40%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上である。また、上記第2導電体粒子のTG酸化率は10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下である。
すなわち、本発明の導電体ペーストは、導電体ペーストに含有される導電体粒子を、図3(A)に示すように、主にTG酸化率が20%〜30%である導電体粒子21より構成しても良いし、または、図3(B)に示すように、TG酸化率が40%以上である第1導電体粒子22とTG酸化率が10%以下である第2導電体粒子23を混合した導電体粒子としても良い。
導電体粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは0.05〜3μm、より好ましくは0.1〜0.4μmである。
有機ビヒクルは、バインダ樹脂を有機溶剤中に溶解したものである。
バインダ樹脂としては、上述した各種バインダ樹脂を用いることができ、その含有量は、特に限定されないが、導電体ペースト全体に対して、2〜15重量%程度とすればよい。
また、有機溶剤としては、上述した各種有機溶剤を用いることができ、その含有量は、特に限定されないが、導電体ペースト全体に対して、20〜70重量%程度とすればよい。
導電体ペーストの調製は、上記した導電体粒子および有機ビヒクルを混練することにより、行うことができる。混練は、たとえば、3本ロールミル等を使用して行うことができる。なお、導電体ペーストを調製する際には、導電体粒子としては、主として、上述したTG酸化率が20〜30%である導電体粒子より構成しても良いし、また、TG酸化率が40%以上である第1導電体粒子とTG酸化率が10%以下である第2導電体粒子とを混合した導電体粒子より構成しても良い。また、導電体ペーストには、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
次いで、このようにして得られた内部電極用ペーストと誘電体層用ペーストとを用い、印刷法、転写法、グリーンシート法等により、それぞれ交互に積層してグリーンチップとする。印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に積層印刷し、所定形状に切断した後、基板から剥離して積層体とする。また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷した後、これらを積層して積層体とする。
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ処理における条件は、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、より好ましくは10〜50℃/時間、保持温度を好ましくは180〜360℃、より好ましくは260〜300℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜20時間、より好ましくは1〜10時間とする。本実施形態においては、脱バインダ処理における保持温度は、導電体ペーストに含有されているバインダ樹脂の熱分解温度に応じて決定することが好ましく、たとえば、バインダ樹脂の熱分解温度と同じ温度か、20℃程度高い温度とすることが好ましい。また、脱バインダ処理における雰囲気は、Air雰囲気にすることが好ましい。
また、本実施形態においては、内部電極用のペーストとして、本発明の導電体ペーストを使用するため、脱バインダ工程における処理温度を、従来と比較して低く設定することができ、バインダ樹脂の急激な熱分解反応を抑制することが可能となる。その結果、バインダ樹脂の急激な熱分解反応に起因する素地割れや素地クラック等の構造欠陥を有効に防止することができる。
グリーンチップ焼成時の雰囲気は、内部電極用ペースト中の導電材の種類などに応じて適宜決定されればよいが、導電材としてニッケルやニッケル合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10−9〜10−4Paとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
また、焼成時の保持温度は、好ましくは1000〜1400℃、より好ましくは1100〜1350℃である。保持温度が前記範囲未満であると緻密化が不十分となり、前記範囲を超えると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による容量温度特性やショート率の悪化、誘電体磁器組成物の還元や異常粒成長が生じやすくなる。
これ以外の焼成条件としては、昇温速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間、温度保持時間を好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは1〜3時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間とする。また、焼成雰囲気は還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、NとHとの混合ガスを加湿して用いることが好ましい。
還元性雰囲気中で焼成した場合、コンデンサ素子本体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これにより電気特性、特に高温負荷寿命を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10−3Pa以上、特に10−2〜10Paとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると誘電体層の再酸化が困難であり、前記範囲を超えると内部電極層が酸化する傾向にある。
アニールの際の保持温度は、1100℃以下、特に500〜1100℃とすることが好ましい。保持温度が前記範囲未満であると誘電体層の酸化が不十分となるので、IRが低く、また、電気特性、特に高温負荷寿命が短くなりやすい。一方、保持温度が前記範囲を超えると、内部電極が酸化して容量が低下するだけでなく、内部電極が誘電体と反応してしまい、容量温度特性の悪化、IRの低下、高温負荷寿命の低下が生じやすくなる。なお、アニールは昇温過程および降温過程だけから構成してもよい。すなわち、温度保持時間を零としてもよい。この場合、保持温度は最高温度と同義である。
これ以外のアニール条件としては、温度保持時間を好ましくは0〜20時間、より好ましくは2〜10時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間とする。また、アニールの雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿したNガス等を用いることが好ましい。
上記した焼成およびアニールにおいて、Nガスや混合ガス等を加湿するには、例えばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。
脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
上記のようにして得られた積層セラミック焼結体本体に、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを塗布、印刷または転写し、その後、必要に応じて焼成を行い、外部電極4を形成する。外部電極用ペーストの焼成条件としては、例えば、加湿したNとHとの混合ガス中で300〜800℃にて10分間〜2時間程度とすることが好ましい。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。なお、外部電極用ペーストは、上記した電極ペーストと同様にして調製すればよい。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、内部電極形成用のぺーストとして、TG酸化率が20〜30%である導電体粒子を含有する導電体ペーストを例示したが、内部電極形成用のぺーストとしては、以下に説明する導電性を有するコア部と、該コア部の表面に形成された酸化皮膜部とを有する導電体粒子を、含有する導電体ペーストを使用することもできる。
該導電体ペーストは、図4に示すように、導電性を有するコア部31と該コア部の表面に形成された酸化皮膜部32とを有する導電体粒子30を含有する。導電体粒子30は、酸化皮膜部32の少なくとも一部が除去されており、コア部31の少なくとも一部が外部に露出している。
なお、導電体粒子30は、導電性を有するコア部31と該コア部の表面に形成された酸化皮膜部32を有し、コア部31の少なくとも一部が外部に露出していれば良い。コア部31の少なくとも一部が外部に露出している導電体粒子30は、たとえば、あらかじめ酸化皮膜部32がコア部31の表面に形成されている導電体粒子から、酸化皮膜部32の少なくとも一部を除去することによって得られる導電体粒子30だけでなく、酸化皮膜部32の形成されていない導電体粒子表面の少なくとも一部に、酸化皮膜部32を形成することによって得られる導電体粒子30も含まれる。
また、該導電体ペーストの調製は、たとえば、あらかじめ酸化皮膜部32がコア部31の表面に形成されている導電体粒子と、有機ビヒクルとを混合し、コア部31の表面に形成された酸化皮膜部部32の少なくとも一部を除去し、コア部31の少なくとも一部を外部に露出させることにより、行うことができる。
上記酸化皮膜部32の少なくとも一部を除去する方法としては、たとえば、機械的な方法や、還元剤を使用した化学処理による方法や、H/N雰囲気での還元処理による方法等が例示されるが、好ましくは、上記混合物に機械的な加工を施し、酸化皮膜部32の少なくとも一部を剥ぎ取る方法であることが好ましい。このような加工を行う方法としては、たとえば、上記導電体ペーストを調製する際に、3本ロールミルを使用する方法、ビーズミルを使用する方法等が挙げられる。
たとえば、3本ロールミルを使用する方法においては、導電体粒子の粒子径にあわせて、混練時におけるロール間隔を調整し、ロールの摩擦により、導電体粒子の表面に傷をつけるという方法により、導電体粒子の酸化皮膜部32の少なくとも一部を剥ぎ取り、コア部31を外部に露出させることができる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
導電体ペーストの作製
まず、導電体ペースト用の原料として、平均粒径がそれぞれ0.2μmまたは0.4μmであるニッケル粒子50重量%と、エチルセルロース4.0重量%と、ターピネオール46重量%とを準備した。次いで、これらの原料を3本ロールにより混練し、スラリー化して導電体ペーストを作製した。なお、スラリー化する際には、3本ロールによる混練の条件を変化させ、それぞれTG酸化率の異なるニッケル粒子を含有する導電体ペースト試料1〜12を作製した。本実施例においては、3本ロールによる混練の条件のうち、ロール間隔を変化させることにより、各導電体ペーストを構成する導電体粒子のTG酸化率を調整した。
導電体ペーストのTG−DTA測定
上記にて作製した導電体ペースト試料1〜12について、TG−DTA測定を行い、各導電体ペーストに含有されているニッケル粒子のTG酸化率およびバインダ樹脂の分解温度を測定した。TG−DTA測定の条件としては、測定雰囲気をAir雰囲気、昇温速度10℃/min.とした。
ニッケル粒子のTG酸化率は、まず、図2(A)に示すTG曲線において、測定前の導電体ペースト100重量%に対する、バインダ樹脂等の導電体粒子以外の成分が分解しきる点Aにおける重量比(W)と、700℃における重量比(W)を求めた。次いで、下記式(1)により、点Bにおける重量比(W)と点Aにおける重量比(W)との差(W−W)の、点Aにおける重量比(W)に対する比を100分率にて算出することにより、TG酸化率を求めた。
導電体粒子のTG酸化率(%)={100×(W−W)}/W…式(1)
バインダ樹脂の分解温度は、図2(B)に示すように、DTA曲線において、ベースラインの接線と、熱分解反応による発熱ピークの接線との交点より求めた。測定結果を表1に示す。
Figure 0004088594
表1に導電体ペースト試料1〜12の原料として使用したニッケル粒子の平均粒径、ニッケル粒子のTG酸化率、バインダ樹脂の分解温度を示す。
表1より、ニッケル粒子のTG酸化率が高くなると、バインダ樹脂の分解温度は低くなる傾向にあることが確認できた。また、この傾向は、原料として使用したニッケル粒子の平均粒子径が、0.2μmの場合、および0.4μmの場合のいずれも同様であり、ニッケル粒子のTG酸化率とバインダ樹脂の分解温度との関係をグラフ化した図5からも明らかである。
実施例2
積層セラミックコンデンサ試料の作製
まず、誘電体原料として、BaTiO、CaZrOを準備した。次いで、これらの原料をボールミルにより16時間湿式混合し、乾燥することにより誘電体磁器組成物原料粉末を得た。得られた誘電体磁器組成物原料粉末にポリビニルブチラールおよびエタノール系の有機溶媒を添加し、再度ボールミルで混合し、ペースト化して誘電体層用ペーストを得た。
次いで、得られた誘電体層用ペーストと、内部電極用ペーストとを用い、以下の方法にて、図1に示す積層型セラミックコンデンサ試料を作製した。
なお、本実施例においては、内部電極用のペーストとして、実施例1で作製した導電体ペースト試料1〜6をそれぞれ使用し、各導電体ペースト試料1〜6に対応する積層型セラミックコンデンサ試料1〜6を作製した。
まず、誘電体層用ペーストを用いてドクターブレード法により、PETフィルム上にグリーンシートを形成した。この上に内部電極用ペーストをスクリーン印刷法により印刷した後、PETフィルムからシートを剥離した。次いで、これらのグリーンシートと保護用グリーンシート(内部電極層用ペーストを印刷しないもの)とを積層、圧着して、グリーンチップを得た。
次いで、グリーンチップを所定サイズに切断し、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、積層セラミック焼成体を得た。
脱バインダ処理条件は、使用した導電体ペーストにより、それぞれ異なる条件で行い、
昇温速度:10℃/時間、
保持温度:200〜360℃、
温度保持時間:8時間、
雰囲気:空気中、
とした。
焼成条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1250℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したN+H混合ガスとした。アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1000℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNガスとした。なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、水温を20℃としたウェッターを用いた。
次いで、得られた積層セラミック焼成体の端面をバレル研磨した後、外部電極としてCu/Ni/Sn層を形成し、図1に示す積層セラミックコンデンサの試料1〜6を得た。
得られたコンデンサ試料のサイズは、1608(1.6mm×0.8mm×0.8mm)形状であり、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は100、1層あたりの誘電体層の平均厚み(層間厚み)は2.0μmであり、内部電極層の厚さは1.2μmであった。
構造欠陥発生率
得られた各コンデンサ試料1〜6(各20000個)について、顕微鏡による外観検査を行い、素地割れが発生したコンデンサの数、および素地クラックが発生したコンデンサの数を調べた。本実施例においては、素地割れおよび素地クラックの発生の有無を調べ、構造欠陥発生率を評価した。
得られた結果を下記の表2に示す。なお、素地割れ発生率とは、20000個のコンデンサにおいて、素地割れが発生したコンデンサの割合を、素地クラック発生率とは、素地クラックが発生したコンデンサの割合を示す。
Figure 0004088594
表2にコンデンサ試料1〜6に使用した導電体ペーストのニッケル粒子の粒径、ニッケル粒子のTG酸化率およびバインダ樹脂の分解温度、コンデンサを作製した際の脱バインダ処理温度、コンデンサ試料の素地割れ発生率および素地クラック発生率を示す。
表2より、ニッケル粒子のTG酸化率が20〜30%である実施例の試料3〜5は、素地割れ発生率が、いずれも0.2%以下、素地クラック発生率が、いずれも0.01%以下となり、良好な結果であった。
一方、TG酸化率がそれぞれ0%、10%である比較例の試料1,2は、素地割れ、素地クラックともに発生率が高くなる傾向にあった。この原因としては、これらのコンデンサ試料を製造する際に使用した導電体ペーストのバインダ樹脂の分解温度が、それぞれ315℃、350℃と高いため、脱バインダ処理工程において、バインダ樹脂の熱分解反応が急激に起こったためであると考えられる。
また、TG酸化率が50%である比較例の試料6も、素地割れ、素地クラックともに発生率が高くなる傾向にあった。この原因としては、このコンデンサ試料を製造する際に使用した導電体ペーストのバインダ樹脂の分解温度が、250℃と低いために、バインダ樹脂の分解反応が不十分となり、内部電極層に炭素成分が残留してしまったためであると考えられる。
したがって、素地割れや素地クラック等の構造欠陥の発生率を低く抑えるためには、導電体ペーストのニッケル粒子のTG酸化率は、20〜30%であることが望ましいことが確認できた。また、この傾向は、バインダ樹脂の分解温度と構造欠陥発生率との関係をグラフ化した図6、およびニッケル粒子のTG酸化率と構造欠陥発生率との関係をグラフ化した図7からも明らかである。
実施例3
導電体ペースト用の原料として、それぞれTG酸化率の異なる第1導電体粒子および第2導電体粒子、エチルセルロース、ターピネオールを準備した。第1導電体粒子および第2導電体粒子としては、TG酸化率のそれぞれ異なるニッケル粒子を使用した。次いで、これらの原料を3本ロールにより混練し、スラリー化して導電体ペースト試料13〜16を作製した。導電体ペーストを作製する際に使用した第1導電体粒子および第2導電体粒子、エチルセルロース、ターピネオールの含有量は、以下の通りとした。
第1導電体粒子+第2導電体粒子:50重量%
エチルセルロース:4.0重量%
ターピネオール:46重量%
次いで、導電体ペースト試料13〜16について、実施例1と同様にして、TG−DTA測定によりTG酸化率およびバインダ樹脂の分解温度を測定した。結果を表3に示す。
次いで、内部電極用ペーストとして、上記にて作製した導電体ペースト試料13〜16を使用し、実施例2と同様にして、各導電体ペースト試料13〜16に対応する積層型セラミックコンデンサ試料13〜16を作製し、実施例2と同様にして素地割れおよび素地クラックの発生率の評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 0004088594
表3に、導電体ペースト試料13〜16に使用した第1導電体粒子および第2導電体粒子のTG酸化率と重量比、導電体粒子全体のTG酸化率、バインダ樹脂の分解温度、コンデンサを作製した際の脱バインダ処理温度、コンデンサ試料の素地割れ発生率および素地クラック発生率を示す。
表3より、導電体ペーストを構成する導電体粒子として、TG酸化率が40%以上である第1導電体粒子と、TG酸化率が10%以下である第2導電体粒子とを混合して得られる導電体粒子を使用した場合においても、導電体ペーストに含有される導電体粒子全体のTG酸化率を20〜30%とすることにより、本発明の効果が得られることが確認できた。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。 図2(A)は本発明の導電体ペーストのTG−DTA測定におけるTG曲線、図2(B)はDTA曲線である。 図3(A)、図3(B)は本発明の一実施形態に係る導電体ペースト中の導電体粒子を示す概略図である。 図4は本発明の一実施形態に係る導電体ペースト中の導電体粒子の要部拡大断面図である。 図5は本発明の実施例に係る導電体ペーストにおける導電体粒子のTG酸化率とバインダ樹脂の分解温度との関係を示すグラフである。 図6は本発明の実施例に係る積層セラミックコンデンサにおけるバインダ樹脂の分解温度と構造欠陥発生率との関係を示すグラフである。 図7は本発明の実施例に係る積層セラミックコンデンサにおける導電体粒子のTG酸化率と構造欠陥発生率との関係を示すグラフである。
符号の説明
1… 積層セラミックコンデンサ
10… コンデンサ素子本体
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極
21… TG酸化率が20%〜30%である導電体粒子
22… TG酸化率が40%以上である第1導電体粒子
23… TG酸化率が10%以下である第2導電体粒子
30… 導電体粒子
31… コア部
32… 酸化皮膜部

Claims (2)

  1. 導電性を有するコア部と、該コア部の表面に形成された酸化皮膜部とを有する導電体粒子を、少なくとも含有する導電体ペーストを製造する方法であって、
    前記コア部の表面に形成された酸化皮膜部の少なくとも一部を除去し、
    前記コア部の少なくとも一部を外部に露出させる工程を有する導電体ペーストの製造方法。
  2. 前記酸化皮膜部の少なくとも一部を除去する方法が、
    前記コア部の表面に形成された酸化皮膜部の少なくとも一部を機械的な加工により剥ぎ取る方法である請求項に記載の導電体ペーストの製造方法。
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