JP4086184B2 - 車両用灯具の照射方向制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用灯具の照射方向制御装置において、車両姿勢の検出情報から路面状態を判別するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用前照灯の照射方向を、乗車状態や積載状態、車両の走行姿勢の変化に応じて制御する装置が知られている。例えば、車体の傾きが変化した場合でも、前照灯の照射方向が所定の状態に保たれるように照射方向を自動調整する装置(所謂オートレベリング装置)では、車体の傾きや高さを検出する検出手段を有しており、該検出手段によって得られる情報に基づいて車両姿勢の変化量を算出して、灯具に係る照射光軸の対地角度が一定に保たれるように補正制御が行われる。
【0003】
車両が凹凸の激しい路面(悪路)上を走行する場合に、車軸部に設けられた車高検出手段の出力変動が顕著であるのに対して、車両の前後方向における傾き角度(ピッチ角)があまり変化しない場合がある。このような状況下で、車高検出手段の出力に応じて忠実に灯具の光軸方向制御を行ってしまうと、誤った方向制御が行われたり、光軸制御用の駆動機構に用いられるアクチュエータの短寿命化を招く虞がある。そこで、車両の悪路走行中において灯具の照射方向に過剰な補正がかからないように光軸制御を抑制する方法として、照射方向を固定する方法、あるいは制御範囲を限定したり、制御応答性を低下させる方法等が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−183336号公報(図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の装置では、車両が悪路を走行中であるか否かを判定する処理や、悪路走行から悪路でない路面走行に復帰したことを判定する処理において、車高検出情報の他、車両速度や加速度等の走行状態の情報を組み合わせた複雑な条件を設定して総合的に判断している。よって、判定処理を簡易に行うことができず、車種毎に判定条件を検討することが必要である。
【0006】
例えば、一定期間毎の車高検出値の最大値と最小値との差が、予め決められた閾値以上であった場合に、その回数を計数するためのカウンタを用意し、カウント回数が所定回数以上になったときに悪路と判定する方法を採用するものとして、悪路からの復帰条件として、例えば、下記の事項が挙げられる。
【0007】
・車速や加速度等が所定の条件を満たすようになったこと
・カウント回数が所定回数以下であるという条件と別の条件とを組み合わせた場合に、両条件を満たすこと。
【0008】
尚、「別の条件」とは、例えば、車高検出値に基づく光軸制御量について、異なる検出時間をもって算出した移動平均値の差が所定値以下であることや、直前の判定結果が悪路でないとされた場合において車両の加速度が所定値以上であること等である。
【0009】
しかしながら、悪路判定や悪路からの復帰判定の際に、車高検出値、車速、加速度等の複数のデータを必要とし、しかも判定条件の設定が難しく判定内容も複雑である。よって、判定基準を簡易に決められないことや、処理時間の短縮化等の面で問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、車両に係る悪路走行の判定や悪路からの復帰判定を、一種類の検出情報に基いて簡易に行うことを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、車両姿勢の変化に応じて灯具の照射方向を制御する車両用灯具の照射方向制御装置において、下記に示す構成を備えたものである。
【0012】
・車軸部における車高値の変化量又は進行方向における車両姿勢の傾き角の変化量を検出する車両姿勢検出手段。
【0013】
・路面が凹凸の多い悪路状態であるか否かを判定する悪路判定手段。
【0014】
そして、悪路判定手段が、車高値の変化量又は車両姿勢の傾き角の変化量について、その正値量の積算値及び負値量の積算値を一定時間に亘って各別に算出して、各積算値の大きさと予め決められた閾値とを比較することにより、車両が悪路走行中であることの判定又は車両が悪路から悪路でない路に走行復帰したことの判定を行うように構成したものである。
【0015】
従って、本発明によれば、車両姿勢検出手段により取得される一種類の情報(車高値や車両姿勢の傾き角の変化量等)に基いて、その正値量の積算値及び負値量の積算値を閾値と比較することにより、悪路走行中か否かの判定又は悪路から悪路でない道路に走行復帰したか否かの判定について複雑な条件を設定することなく処理することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、車両の姿勢変化に追随した照射方向制御を行うレベリング装置(所謂オートレベリング装置)への適用において、車両が凹凸の多い悪路を走行中であるか、あるいは悪路から平坦な路面に走行復帰したかの判定処理を簡易に、かつ迅速に行うことを目的とする。
【0017】
図1は本発明に係る車両用灯具の照射方向制御装置の基本構成を示すものである。
【0018】
照射方向制御装置1は、車両姿勢検出手段2、照射制御手段3、駆動手段4を備えており、灯具5に係る照射光軸の方向を制御する。尚、灯具5には、例えば、自動車用灯具の場合、ヘッドランプ、フォッグランプ、コーナリングランプ等が挙げられる。
【0019】
車両姿勢検出手段2は、静止及び/又は走行中の車両姿勢(車両の進行方向における鉛直面内の傾きを含む。)を検出するために設けられており、車輪の車軸部における車高値の変化量又は進行方向における車両姿勢の傾き角(ピッチ角)の変化量を検出する。例えば、車高センサー等の車高検出手段を用いる場合には、車両の前輪や後輪の車軸部に係る車高変位を検出する方法や、車高検出手段と路面との間の距離を計測する方法等が挙げられる。
【0020】
車両姿勢検出手段2による検出信号は、照射制御手段3を構成する照射光軸制御手段3a及び悪路判定手段3bに送出され、車両の停止姿勢や走行姿勢を求めるための情報及び悪路判定のための情報として利用される。尚、照射制御手段3は、コンピュータ等の計算手段を用いて構成され、照射光軸制御の計算や悪路判定はプログラム処理として行われる。
【0021】
照射光軸制御手段3aは、車両姿勢検出手段2からの検出信号に応じて灯具5の照射方向を補正するための制御信号を駆動手段4に送出する。例えば、車体が前上りの状態になった場合には灯具5の照射光軸方向を下向き加減に調整し、逆に、車体が前下がりの状態になった場合には灯具5の照射光軸方向を上向き加減に調整する。そして、照射光軸制御手段3aにおける計算結果に基づく制御信号は駆動手段4に送られて、灯具5の照射状態を補正するための指令となる。
【0022】
悪路判定手段3bは、車両姿勢検出手段2からの検出信号に基づいて車両が未舗装路等、路面の凹凸が多い悪路を走行中であるか否かを判定するために設けられている。つまり、悪路判定手段3bでは、車両が悪路を走行中であるかどうか、そして、悪路走行から平坦な路面へ走行復帰したどうか等が判断される。
【0023】
尚、悪路判定に必要な基礎データの取得方法には、車両姿勢検出手段2を用いる方法以外の検出方法、例えば、車軸振動の検出手段を用いる方法や、撮像手段等で路面状態を検出する方法、あるいは、車高検出手段と角速度検出手段とを併用して検出する方法等が挙げられるが、本発明では、複数の検出データを必要とせずに、一種類のデータ(車軸部における車高値又は車両のピッチ角等)だけから悪路判定や悪路からの復帰判定を行うことができる。即ち、複数種類のデータに関する複雑な判定条件を設定しなくても済むので、車両姿勢に係る検出情報以外の情報、例えば、車速や加速度等の検出情報は基本的に不要である。
【0024】
悪路判定手段3bによる判定結果は、照射光軸制御手段3a又は駆動手段4に送出される。例えば、車両が悪路を走行していると判定された場合には、灯具5の照射方向を所定の方向に固定したり又は照射方向を所定の範囲内に限定し、あるいは照射方向制御の応答速度を低下させる等の処理が行われる。例えば、車高値やピッチ角の変化から計算される、一定の検出時間内での光軸制御量の平均値(移動平均値)に基いて照射光軸の方向を制御する形態では、検出時間を長くすること、つまり、長い期間に亘る平均値を計算することにより、制御応答性を鈍くすれば良い。これにより、路面の凹凸に対して駆動手段4が過敏に反応しなくなり、照射方向の変化が緩和される(頻繁に光軸補正が行われなくなる。)。
【0025】
また、悪路判定手段3bにより、車両が舗装路や平坦路等、路面状態が良好な路を走行していることが判定された場合には、悪路判定時に行われる上記の処理を止める。つまり、車両姿勢検出手段2の検出信号に応じて照射光軸制御手段3aが光軸補正のための計算を行い、その結果に基いて駆動手段4に送出される制御信号により、灯具5の照射方向が制御される。
【0026】
駆動手段4は、照射制御手段3からの信号を受けて、灯具5の照射方向を制御するために、灯具全体を傾動させたり、あるいはレンズや反射鏡、シェード等の光学的な構成部分を駆動する。例えば、モータ及びその駆動回路を用いて、照射光軸の駆動機構(あるいは調整機構)を動かすことで灯具5のレベリング制御を行う構成として、光軸を含む鉛直面において反射鏡を傾動させる等、各種の形態が知られている。
【0027】
図2乃至図5は、悪路判定手段3bにおける判定処理について説明するためのグラフ図である。
【0028】
図2は、横軸に時間「t」(単位:秒)をとり、縦軸に車高値又はピッチ角の変化量(これを「y」と記し、任意単位で示す。)をとったグラフ図である。
【0029】
この図では、理解のし易さを考慮して、変化量「y」をいずれも余弦波として示している。つまり、車両姿勢検出手段2により得られる、実際の車高値又はピッチ角の変化は小刻みに変動するが、このようなデータを直接用いたのでは、本発明の本質的な部分を見失う虞があるので、理想的な余弦波を用いて説明する。
【0030】
尚、図に示す各グラフ曲線g1、g2、g3の意味は下記の通りである。
【0031】
g1=車両が悪路でない道路を走行している場合において、加速時又は減速時に起こる姿勢変化を示す(「×」印で示すサンプリングポイントを通る余弦カーブは、基本波形「y=cos(2π・t)」を示す。)
g2=車両が悪路を走行している場合の姿勢変化を示す(「▲」印で示すサンプリングポイントを通る余弦カーブは、上記基本波形に対して4倍の周波数をもった波形「y=cos(8π・t)」を示す。)
g3=車両が悪路でない道路を走行している場合において、急激な加速又は減速をした時に起こる姿勢変化を示す(「○」印で示すサンプリングポイントを通る余弦カーブは、上記基本波形に対して4倍の振幅をもった波形「y=4・cos(2π・t)」を示す。)。
【0032】
悪路判定においては、グラフ曲線g1、g2、g3から、g2だけを区別すること、即ち、g2の場合にのみ、車両が悪路を走行していると判定することが必要である。
【0033】
そこで、悪路判定手段3bでは、変化量「y」について、その正値量の積算値(これを「Zp」と記す。)と負値量の積算値(これを「Zn」と記す。)とを区別し、それらを一定時間に亘って各別に算出する。
【0034】
離散時間系では、変化量「y」について所定のサンプリング周期(Ts)をもって抽出されるので、時間指標「i」(0又は自然数)を導入して、時間軸上での「t=i・Ts」の時点におけるサンプリングデータを「yi」と表記することにすると、差分量「Δy=yi−yi-1」を用いてZp、Znを定義することができる。
【0035】
Zpは、Δyが正値である場合において、それらを一定時間に亘って積算したものである。つまり、関数P(X)として、「X>0のときP(X)=X、X≦0のときP(X)=0」とされる関数を用いて、「Zp=ΣP(yi−yi-1)」(但し、「Σ」は変数iについての和を意味する。)である。
【0036】
また、Znは、Δyが負値である場合において、それらを一定時間に亘って積算したものである。つまり、関数N(X)として、「X<0のときP(X)=X、X≧0のときP(X)=0」とされる関数を用いて、「Zn=ΣN(yi−yi-1)」(但し、「Σ」は変数iについての和を意味する。)である。
【0037】
一定時間に亘る積算値Zp、Znをそれぞれ算出し、それらを予め決められた閾値とを比較することにより、悪路走行の判定又は悪路からの復帰判定を行うことができる。
【0038】
図2のグラフ曲線g1、g2、g3に示す各波形について、Ts=48ミリ秒でサンプリングを行った場合のデータ集計の結果を下表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
グラフ曲線g1、g3に示す波形では、Zp=0で、Znが負値であるのに対して、グラフ曲線g2に示す波形では、Zpが正値、Znが負値であって、Zp、Znの絶対値が同程度の大きさであることが分かる。
【0041】
即ち、Δyを求めて、その正値量だけを一定期間内で積算したZpと、その負値量だけを一定期間内で積算したZnを算出した場合に、波形の振幅が小さくても、その振動の回数(つまり、振動数あるいは周波数)が多ければ、Zp、Znに対するそれぞれの寄与分が積算により大きくなっていく。これは、グラフ曲線g2のように悪路走行中に小刻みに変化するyiから差分量Δyを計算すると、Δyの大きさは小さくても、Δyが正値である場合には、これが正方向に積算される結果Zpが大きくなっていき、同様にΔyが負値の場合には、これが負方向に積算される結果Znの絶対値が大きくなっていくことを意味している。
【0042】
これに対して、グラフ曲線g1、g3では、Δyの符号が、t=0〜0.5秒の検出期間中、常に負値を示すことから明らかなように、ΔyはZnにのみ寄与し、Zpには反映されない。
【0043】
図3乃至図5は、グラフ曲線g1、g2、g3に示す各波形について、差分量(変位量)Δyと積算量Zp、Znを棒グラフで示したものである。これらの図において、横軸に離散時間の指標「i」をとり(i=10の右側に積算結果Zp、Znを示す。)、縦軸にΔy(任意単位)をとっている。
【0044】
グラフ曲線g1の波形については、図3に示すように、Δyが負値であり、Znが負値を示す(Zp=0)。
【0045】
また、グラフ曲線g2の波形については、図4に示すように、Δyが正値、負値のいずれも示し、Zp、Znの絶対値がほぼ同程度の値を示す。
【0046】
グラフ曲線g3の波形については、図5に示すように、Δyが負値であって図3との比較においてΔyの絶対値が大きいので、Znの絶対値も大きいが、ΔyによるZpへの寄与がないのでZp=0である。
【0047】
以上のように、悪路走行中であることを表しているグラフ曲線g2の波形でのみ、Zp、Znの絶対値が同程度に算出され、加速時や減速時には、Zn、Zpに偏りが生じる(一方だけが大きく、他方がゼロか又はゼロに近い。)。
【0048】
よって、ある一定時間内において、姿勢変化量の延べ量(積算量)を、該変化量に係る正方向及び負方向においてそれぞれ算出することにより、凹凸の激しい路面(悪路)ほど積算量の絶対値がともに大きくなることから、閾値との比較により悪路判定が可能となる(尚、この判定結果は、yのピーク値及びボトム値の回数をカウントして、カウント回数を閾値と比較して得られる結果と同等であることが確認されている。)。
【0049】
悪路判定手段3bにおける判定処理は、Zp、Znの大きさと、予め決められた閾値との大小比較に基いており、例えば、下記に示す通りである。
【0050】
(A)積算値Zp、Znがともに閾値を超えた場合に、走行中の路面が悪路状態であると判定する
(B)積算値Zp又はZnが閾値以下になった場合に、走行中の路面が悪路状態でないこと、あるいは車両が悪路から悪路でない路に走行復帰したことを判定する。
【0051】
Zp、Znに対する閾値については、同一の値を用いても良いし、また、Zp、Zn毎にそれぞれに異なる値を設定しても良い。例えば、悪路走行時におけるΔyの大きさ(絶対値)が正方向、負方向において対称的な分布を示す車種では、Zp、Znに対して同じ閾値を設定することができる。また、Δyに関して非対称な分布を示す車種ではZp、Znに対して閾値を各別に設定すれば良い。
【0052】
いずれにしても、車種に応じて変更すべきものはZpやZnに対する閾値だけであり、車速や加速度等を加味した判定条件を付加したり、判定条件自体を変更するといったことは不要である。即ち、車高や姿勢の変化量に関して、正値及び負値の積算量を算出して、これらを閾値と比較するという明快な判定アルゴリズムを用いることによって、判定条件の割り出しに費やされる労力や時間、試行錯誤等を排除することが可能となる。
【0053】
尚、図3や図5に示すようにΔyの符号が一方に偏っている場合には、車両が悪路走行中でないという消極的な判定を下すことができること以上の判定が可能である。即ち、Zp、Znの大きさ(絶対値)に関して、その一方が非常に大きく、他方が小さいかほぼゼロであることから、積極的な判定結果として、車両に正方向又は負方向の加速度が加わっていることが分かる。
【0054】
Δyが正方向又は負方向のいずれかに偏っている場合には、積算値ZpとZnのうち、一方の積算値の大きさが他方の積算値に比して顕著である。このことは、ZpとZnとの比値や、両者の差の相対比(Zp−Zn)/Zp又は(Zn−Zp)/Zn等を計算してみれば直ちに判明する。よって、Zp、Znの大きさに基いて車両の加速状態又は減速状態を判断できる。尚、車両の加減速状態については、車速センサー等による検出情報から知ることができるが、車両姿勢に係る検出情報から走行状態を把握することにより、判別結果を直ちに光軸制御に反映させることができるという利点が得られる。
【0055】
図6は、悪路判定に関する処理例を示すフローチャート図である。
【0056】
先ず、ステップS1では、車両姿勢の検出が行われ、車高値又は車両ピッチ角が検出される。尚、図1では、悪路判定手段3bに車両姿勢検出手段2からの情報が入力されるものとしているが、該情報は照射光軸制御手段3aに送られて光軸補正のための計算が行われて駆動手段4への制御量が算出されるので、この制御量を用いて悪路判定や悪路からの復帰判定を行う構成形態でも良い(つまり、この制御量は車両姿勢の変化に対応した量である。)。例えば、灯具の光軸調整機構を駆動するアクチュエータへの制御量(駆動ストローク量等)を用いて判定することができる。
【0057】
次ステップS2では、Δy及びZp、Znを算出した後、次ステップS3では、Zp、Znをそれらの閾値と比較する。そして、Zp、Znがともに閾値を超えている場合には、ステップS4に進むが、そうでない場合にはステップS5に進む。
【0058】
ステップS4では、車両が悪路を走行していると判定し、悪路走行中でない判定をした場合に比して照射方向の制御範囲又は制御応答を制限する。即ち、路面の凹凸変化に対して光軸補正が頻繁に引き起こされないように制御を行う。
【0059】
また、ステップS5では、車両が悪路を走行していないと判定し、あるいは悪路から路面状態の良い路に車両が戻ったと判定して、次ステップS6に進む。
【0060】
ステップS6では、Zp、Znの大きさを比較して、その一方だけが大きいか否かを判断する。そして、「|Zp|>>|Zn|」又は「|Zn|>>|Zp|」の場合には、ステップS7に進み、そうでない場合には、ステップS8に進む。
【0061】
ステップS7において、車両が加速中であること又は減速中であることが判定される。これは、ZpとZnの絶対値のうち、どちらが大きいかにより簡単に判別できる。そして、加速中の場合には、灯具の照射方向が上向きになり過ぎないように補正され、また、減速中の場合には、灯具の照射方向を上向き加減に補正することで視認距離が確保される。尚、このような制御は、図1において悪路判定手段3bから照射光軸制御手段3aに送出される判定結果に基いて行われる(このとき、車速や加速度の検出情報を照射光軸制御手段3aが参照して車両の走行状態を確認しても良いことは勿論である。)。
【0062】
ステップS8に到達するのは、車両が悪路走行中でなく、また加速中でも減速中でもない状態である。例えば、車両が平坦な道路を定速で走行している場合等であり、照射光軸制御手段3aにおいて予め定められた制御則に従って照射方向が制御される。
【0063】
上記した構成によれば、例えば、下記に示す利点が得られる。
【0064】
・車高値又はピッチ角、あるいは光軸駆動に係る制御量だけを用いて、一定時間における変位量Δyの、正方向成分のみの積算値Zp及び負方向成分のみの積算値Znを算出し、各積算値がそれらの閾値を超えたことをもって、車両が悪路走行中であると判定できる。悪路判定や悪路からの復帰判定において、車両姿勢に係る情報以外の検出データを必要としない。
【0065】
・積算値Zp、Znは、ある一定時間に亘るΔyを積算したものであるが、該一定時間の経過を待つことなく、これらの積算値がともに閾値を超えた場合には、即時に車両が悪路走行中であると判定できる。つまり、路面の凹凸が顕著である場合には、Zp、Znの大きさが閾値を超える時点が早くなるので、迅速に悪路と判定することができる(判定の遅延を防止できる。)。
【0066】
・車両が悪路走行中であると判定された場合には、上記のように光軸制御の内容を変更することで、悪路走行にとって不適切な照射方向制御が行われないようにし、また、光軸補正のためにアクチュエータ等の駆動が頻繁に行われないように回避できる(アクチュエータや駆動機構等の劣化や短寿命化を防止できる。)。
【0067】
【発明の効果】
以上に記載したところから明らかなように、請求項1に係る発明によれば、車両姿勢に係る検出情報だけを用いて、悪路の判定又は悪路からの復帰判定を簡易に行うことができる。従って、車種毎に異なる複雑な判定条件を設定することなく判定処理を行うことができる。
【0068】
請求項2に係る発明によれば、車両が走行中の路面が悪路状態であるか否かを容易に判断することができる。
【0069】
請求項3に係る発明によれば、車速や加速度の検出情報を用いることなく、車両が加速状態又は減速状態であるか否かを判断することができる。
【0070】
請求項4に係る発明によれば、悪路走行時において車両前方の視認性が良好になり、対向車両の運転者や道路利用者への影響(眩惑等)を緩和することができる。また、照射方向制御に用いる駆動機構等への悪影響(劣化や短寿命化等)を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る照射方向制御装置の基本構成例を示す図である。
【図2】本発明に係る悪路判定について説明するためのグラフ図である。
【図3】図2に示すグラフ曲線g1の波形について正及び負の変位量及びそれらの積算値を棒グラフで示す図である。
【図4】図2に示すグラフ曲線g2の波形について正及び負の変位量及びそれらの積算値を棒グラフで示す図である。
【図5】図2に示すグラフ曲線g3の波形について正及び負の変位量及びそれらの積算値を棒グラフで示す図である。
【図6】本発明に係る悪路判定処理の一例を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
1…車両用灯具の照射方向制御装置、2…車両姿勢検出手段、3b…悪路判定手段
Claims (4)
- 車軸部における車高値の変化量又は進行方向における車両姿勢の傾き角の変化量を検出する車両姿勢検出手段と、路面が凹凸の多い悪路状態であるか否かを判定する悪路判定手段を備え、車両姿勢の変化に応じて灯具の照射方向を制御する車両用灯具の照射方向制御装置において、
上記悪路判定手段が、車高値の変化量又は車両姿勢の傾き角の変化量について、その正値量の積算値及び負値量の積算値を一定時間に亘って各別に算出して、各積算値と予め決められた閾値とを比較することにより、車両が悪路走行中であることの判定又は車両が悪路から悪路でない路に走行復帰したことの判定を行う
ことを特徴とする車両用灯具の照射方向制御装置。 - 請求項1に記載した車両用灯具の照射方向制御装置において、
上記悪路判定手段は、上記正値量の積算値及び負値量の積算値の大きさが閾値を超えた場合に、走行中の路面が悪路状態であると判定し、上記正値量の積算値又は負値量の積算値の大きさが閾値以下になった場合に、走行中の路面が悪路状態でないと判定する
ことを特徴とする車両用灯具の照射方向制御装置。 - 請求項1又は請求項2に記載した車両用灯具の照射方向制御装置において、
上記正値量の積算値と上記負値量の積算値のうち、一方の積算値の大きさが他方の積算値の大きさに比して顕著である場合に、上記悪路判定手段により車両が加速状態又は減速状態であると判断される
ことを特徴とする車両用灯具の照射方向制御装置。 - 請求項1又は請求項2又は請求項3に記載した車両用灯具の照射方向制御装置において、
上記悪路判定手段により走行中の路面が悪路状態であると判定された場合には、走行中の路面が悪路状態でないと判定された場合に比して、照射方向の制御範囲又は制御応答が制限される
ことを特徴とする車両用灯具の照射方向制御装置。
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