JP4086179B2 - 封入体からの多重t細胞エピトープポリペプチドの精製法。 - Google Patents
封入体からの多重t細胞エピトープポリペプチドの精製法。 Download PDFInfo
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、多重T細胞エピトープポリペプチドをコードする遺伝子を大腸菌に直接発現させて該ポリペプチドを菌体内に封入体として形成せしめ、該封入体から、該ポリペプチドを高純度に精製する方法に関するものである。
【従来の技術】
スギ花粉症は、スギ花粉をアレルゲンとする即時型アレルギー疾患である。鼻炎、結膜炎が主たる症状であり、死に至る病ではないので軽視されがちであるが、患者にとってはまことに不愉快な症状である。スギ花粉の飛散期には国民の1割以上、都市部においては2割以上がこのスギ花粉症にかかるといわれており、経済的損失も大きい。
【0002】
スギ花粉症の治療には、抗ヒスタミン薬、ステロイド剤だけでなく、抗アレルギー剤も登場しているが、これらはすべて対症薬である。スギ花粉アレルゲン抽出液を繰り返し投与する減感作療法は、臨床的にアレルギー症状を改善する有効な治療法である。しかしながら、アレルゲン抽出液は、患者のアレルゲン特異的IgE抗体と反応するB細胞エピトープを含んでいるために、時としてアナフィラキシーなどの副反応が問題となる。
長期に減感作療法を受けた患者末梢血のT細胞はスギ花粉に対する反応性が減弱していることから、減感作療法の標的細胞がT細胞であると考えられている。最近、動物モデルにおいて、アレルゲン特異的T細胞エピトープペプチドが、T細胞に不活性化を誘導した、また、患者のアレルゲン特異的IgE抗体とほとんど結合しないことが明らかにされた。
【0003】
そこで、これまでのアレルゲン抽出液を用いた減感作療法に代わるものとして、スギ花粉の主要アレルゲンタンパク質Cry j 1およびCry j 2由来のアレルゲン特異的T細胞エピトープペプチドの混合物を用いたペプチド免疫療法が考案されている(WO 94/01560)。この方法は、上記のようなアナフィラキシーなどの副反応を回避でき、また、人工的に作製可能なため標準化しやすいという利点があるが、このような混合物を医薬品として開発する場合、個々のT細胞エピトープについて物性・安全性試験などを実施する必要があり、製品規格などの点で問題がある。
【0004】
この問題を解決するために、Cry j 1およびCry j 2のアミノ酸配列から、MHCクラスII拘束分子の差異に基づいて選択されたいくつかのメジャーおよびマイナーなT細胞エピトープペプチドを、ペプチド結合を介して直鎖状に結合した多重T細胞エピトープポリペプチドが考案され(WO 97/32600)、その有効性が検討されている。
【0005】
そこで、この多重T細胞エピトープポリペプチド(以下、「エピトープポリペプチド」、あるいは単に「ポリペプチド」ともいう)をコードする遺伝子を、発現プラスミドに組込んで宿主細胞に導入し、該遺伝子を大量発現させ、発現産物の組換えポリペプチドを高純度に精製する必要が生じた。
エピトープポリペプチドは、人工的なポリペプチドで、塩基性アミノ酸に富み、計算上の等電点が約11であり強塩基性である、疎水性が高い、システィン(Cys)を含まない、一定の高次構造をとらない、などといった特徴をもつ。これまでに、このような特徴のある多重T細胞エピトープポリペプチドを、遺伝子組換え技術を用いて大腸菌の菌体内に封入体として合成させ、そしてこの封入体から該ポリペプチドを高純度に精製した例は見当たらない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、大腸菌に多重T細胞エピトープポリペプチド遺伝子を発現させて封入体を形成させ、該封入体から該ポリペプチドを高純度に精製する方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の多重エピトープポリペプチドを封入体として保持する大腸菌体から封入体画分を分離し、高濃度の、タンパク質変性作用を有するカオトロピック剤で封入体を可溶化して、その上清に該ポリペプチドを抽出し、この粗抽出液を銅キレートクロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、そして逆相クロマトグラフィーの順のクロマトグラフィーに供することにより、該ポリペプチドを高純度に精製し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1) 多重T細胞エピトープポリペプチドを封入体として保持する大腸菌体からの該ポリペプチドの精製法であって、
(a) 大腸菌から該封入体画分を分離し、
(b) 該封入体画分をグアニジン/尿素を用いて可溶化してその上清に該エピトープポリペプチドを抽出し、そして
(c) 該抽出物を、銅キレートクロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、および逆相クロマトグラフィーの順のクロマトグラフィーに供すること、
からなる該エピトープポリペプチドの精製法、
(2) さらに、逆相クロマトグラフィーの溶出液の多重T細胞エピトープ画分を凍結乾燥に供する(1)の該エピトープポリペプチドの精製法、
(3) 該エピトープポリペプチドが酢酸を約5〜15重量%の範囲で含有する(2)の精製法、
(4) 該エピトープポリペプチドの精製の純度が96%以上である(2)の該エピトープポリペプチドの精製法、
(5) 該エピトープポリペプチドの精製の純度が99%以上である(2)の該エピトープポリペプチドの精製法、
に関する。
以下、本発明を説明する。
【発明の実施の形態】
【0009】
本発明のエピトープポリペプチドは、配列番号:1あるいは3で示されるアミノ酸配列を有する。ペプチドの化学合成は、ここ数年来急激な勢いで利用されている。それに伴い、初心者でも操作できるようなペプチド合成機が普及し、ペプチドの受注合成も国内外で盛んに行われている。100個以上のアミノ酸残基からなる長鎖のポリペプチドも化学合成されている。例えば、最近、ヘパリン結合性の成長因子であり121個のアミノ酸残基からなるミッドカイン(midkine)が化学合成された(Inui, T. et al.: J. Peptide Sci., 2: 28-39, 1996 )。したがって、エピトープポリペプチド(配列番号:1あるいは3)をコードするDNA配列(配列番号:2あるいは4)も化学合成することができると考えられる。しかしながら、ペプチドを化学合成するためには、自動合成機によるペプチド鎖の伸長、各アミノ酸の保護基の切断と除去、および樹脂からの遊離、そしてペプチドの精製のステップを経なければならない。
【0010】
一方、遺伝子組換え技術を用いれば、エピトープポリペプチドをコードする遺伝子を適当なベクターに組み込んで細胞に導入し、該遺伝子を発現させることにより、ポリペプチドを大量に合成することが可能である。
エピトープポリペプチドをコードするDNA配列は、大腸菌タンパクのコドンの使用頻度に基づいて化学合成することも可能であるが、以下の方法が有利である。スギ花粉アレルゲンCry j 1(Sone, T. et al.: Biochem. Biophys. Res. Commun., 199: 619-625, 1994)およびCry j 2(Komiyama, N. et al.: Biochem. Biophys. Res. Commun., 201: 1021-1028, 1994)をコードする遺伝子はすでにクローン化され、推定アミノ酸配列が明らかとなっている。配列番号:1のアミノ酸配列で示されるエピトープポリペプチドを構成する6つのT細胞エピトープ領域(Argダイマーで仕切られている)の、Cry j 1およびCry j 2のアミノ酸配列中に占める部位は、WO97/32600公開公報の図1(Cry j 1)および図2(Cry j 2)から容易に確認できる。そして、この6つのT細胞エピトープペプチド領域をコードするDNA配列は、前記Soneら、およびKomiyamaらの文献から知ることができる。
【0011】
そこで、6つのT細胞エピトープペプチドをコードするDNA配列に対するPCRプライマーを化学合成する。クローン化されたCry j 1およびCry j 2をコードする遺伝子を鋳型としてPCRでエピトープペプチドをコードするDNAを増幅後連結し、さらにPCRで増幅する、といった操作を繰り返し、途中および最終の配列をpUCプラスミドにクローニングして塩基配列の確認を適宜行う。このようにして配列番号:1のエピトープポリペプチドの全長をコードする遺伝子(配列番号:2)および配列番号:3のエピトープポリペプチドの全長をコードする遺伝子(配列番号:4)を容易に構築することができる。
【0012】
エピトープポリペプチド遺伝子の発現系として、大腸菌発現系、酵母発現系、昆虫細胞発現系、および動物細胞発現系が挙げられるが、エピトープポリペプチドは翻訳後修飾を必要としない一本鎖の単純ポリペプチドであり、巻き戻しの必要がないことから、大腸菌の単独タンパク質発現システムを利用すると、該ポリペプチドを大量に、かつ低コストで得ることが可能である。
【0013】
真核生物由来の外来遺伝子を大腸菌で高発現させると、しばしば、産生タンパク質が菌体内で凝集し、生理的に不活性な封入体を形成する。この封入体形成は、産生したタンパク質を菌体内のプロテアーゼから隔離し、プロテアーゼによる分解を抑え、しかも多くの菌体由来の可溶性夾雑タンパク質からの目的遺伝子産物の分離に有利に働く。そこで、本発明のポリペプチドも、大腸菌の菌体内に封入体として生成させるのが、その後の分離・精製の面から望ましい。
【0014】
タンパク質遺伝子の大腸菌発現系に関しての文献は枚挙にいとまがないが、例えば、[続生化学実験講座 II, 組み換えDNA技術, 日本生化学会編, p126, 東京化学同人(1986); 新生化学実験講座1, タンパク質VI, 合成および発現, 日本生化学会編, p155, 東京化学同人(1992)など]などがあり、当業者は、これらの文献に基づいてポリペプチドの大腸菌発現系を構築することが容易にできる。
【0015】
また、大腸菌の単独発現システムは市販されており、例えば、転写能力が強いT7ファージRNAポリメラーゼを利用するpETシステム(Novagen, STRATAGENE)や、同様なT7ファージRNAポリメラーゼを利用したpRSETシステム(Invitrogen)などを試みることもできる。
【0016】
発現プラスミドを導入する宿主大腸菌としては、一般に用いられる HB101, C600 などの種々の K-12 の誘導体を用いることができるが、菌株による発現量の差が大きい。実施例では、増殖力が強く、発現量も多い K802 株(ATCC から入手)を宿主として使用したが、他の菌株を使用する場合は培養条件(培養時間、添加するトリプトファンの濃度等)の最適化が必要である。最適化は、当業者であれば、文献[例えば、タンパク実験プロトコール2, 構造解析編, 細胞工学別冊, 秀潤社(1997)]等に基づき実施することができる。
【0017】
培養後、大腸菌を遠心して集菌する。菌体を緩衝液、例えば、50 mMトリス酢酸緩衝液(pH 5.0)に懸濁し、超音波処理あるいはホモジナイザー処理して菌体を破砕する。次に、遠心(例えば、10,000 × g、20分間)して不溶性画分を得る。この不溶性画分を界面活性剤を含む緩衝液、例えば2%トリトンX-100を含む50mM トリス酢酸緩衝液(pH 5.0)に懸濁し、遠心(例えば、10,000 × g、30分間)して封入体画分を得る。この封入体画分を、タンパク質変性剤、例えばグアニジン塩を含む抽出緩衝液、例えば、6M塩酸グアニジンを含む緩衝液(pH4.0)、あるいは0.5M〜1M塩酸グアニジンと5.5M〜5Mの尿素を含む緩衝液(pH4.0)で1.5〜3時間室温で攪拌して溶解する。溶液を遠心(例えば、10,000 × g、20分間)するとポリペプチドは上清に抽出される。
【0018】
さらに、この粗抽出液を、中性あるいは弱アルカリ性の緩衝液(例えば、50 mM炭酸緩衝液 pH 9.8 )で10〜20倍に希釈し、37℃前後で1時間放置すると、エピトープポリペプチドは沈澱する。一方、大腸菌由来の低分子量(分子量2万以下)のタンパク質のほとんどは変性状態から容易に巻き戻って高次構造を再生するので可溶であり、除去される。エピトープポリペプチドを含む沈澱は、再度6 M塩酸グアニジンを含む緩衝液(pH 4.0)、あるいは0.5〜1 M塩酸グアニジンおよび5.5M〜5M尿素を含む緩衝液(pH 4.0)に懸濁し、1.5〜3時間攪拌して溶解する。溶液を遠心(例えば、10,000×g、20分間)して上清にポリペプチド抽出する。この希釈、沈澱の操作を省略して上記最初の粗抽出液を、直接、以下のクロマトグラフィーに供しても十分な精製度でエピトープポリペプチドが得られる。
【0019】
今日タンパク質の分離精製はほとんどクロマトグラフィーによる。イオン交換クロマトグラフィーは概して分離能が高く、タンパク質精製の早い段階に用いられることが多い。イオン交換クロマトグラフィーでは、一般に等電点がpH 7以下のタンパク質は陰イオン交換体で、pH 7以上では陽イオン交換体で分離する。
【0020】
本発明のエピトープポリペプチドは、等電点がpH 11と強塩基性であることから、クロマトグラフィーによる精製の第1段階として、まず、陽イオン交換クロマトグラフィーが考えられる。しかし、カオトロピック剤(塩酸グアニジン/尿素)非存在下でのエピトープポリペプチドは、Hi-trap Q(陰イオン交換樹脂)およびHi-trap SP(陽イオン交換樹脂)の双方に部分的に吸着した。そこで、カオトロピック剤が存在しない状態でのイオン交換クロマトグラフィーは、エピトープポリペプチドの精製の最初の工程に用いることができないと判断した。
【0021】
金属イオンとアミノ酸の親和性に基づく金属キレートクロマトグラフィーは塩酸グアニジン/尿素のようなタンパク質変性剤を多量に含む溶媒でも適用できる。タンパク質の銅キレート樹脂への結合は、His、Cys、Trp残基の関与が知られている(Trends in Biotechnology, 3: 1-7, 1985 )。多重エピトープポリペプチドは、医薬品として品質管理上問題となる二量体、あるいは多量体の形成を避けるため、Cys残基を含まないエピトープペプチドを選択している。Trp残基と銅イオンの相互作用はHisに比較して弱く、1〜2個のTrp残基を含むタンパク質は銅キレート樹脂に結合することはできない。これに対し、His残基の銅キレート樹脂との相互作用は強く、1個のHis残基を含むタンパク質は銅キレート樹脂に結合することができる。エピトープポリペプチドは2〜3個のHis残基を有する。一方、ほとんどの大腸菌タンパク質は分子内に平均して4個以上のHis残基を含んでいるため銅キレート樹脂にエピトープポリペプチドより強く吸着する。このようなことから、精製の第1段階に、銅キレートクロマトグラフィーを用いれば、大腸菌由来のタンパク質はエピトープポリペプチドよりも強く銅-キレートカラムに吸着し、その大部分が除かれることが期待される。
【0022】
上記粗抽出液を、例えば、8M 尿素/ 0.2M 塩化ナトリウム/ 50mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)緩衝液と1:1(容量比)と混合し、pH7.0に調整後、銅キレートクロマトグラフィー、例えば銅キレートストリームライン(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社)に供する。銅をキレートする樹脂としては、例えば、イミノジ酢酸アガロースやニトリロトリ酢酸アガロースが挙げられる。イミノジ酢酸アガロースは文献記載の方法(J. Porath. et al.: Nature, 258: 598, 1975)により調製できる。銅を結合したニトリロトリ酢酸アガロースは、Ni-NTAアガロース(Qiagen)から容易に調製できる。ニトリロトリ酢酸アガロースは、イミノジ酢酸アガロースに比較して銅イオンの漏れが少なくエピトープポリペプチドの精製に適している。POROS MC(アプライドバイオシステム社)、キレーティングセファロースFF(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社)、キレートセルロファイン(生化学工業)などを試みてもよい。
【0023】
粗抽出液添加後、銅キレートストリームラインを、例えば、8M 尿素/ 0.2 M 塩化ナトリウム / 50mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)3カラム容量で洗浄し、非吸着物を除去する。溶離緩衝液のpHを下げてHisのプロトン化により溶出する場合、ポリペプチドは多数のHis残基をもつ多くの大腸菌タンパク質より高いpHで溶出する。8M 尿素/ 0.2 M 塩化ナトリウム / 50mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.0)で溶出することによりポリペプチドは純度約70%程度まで精製される。
【0024】
銅キレートクロマトグラフィーからの溶出画分はイオン強度が低いので、酢酸でpH4に調整後、平衡緩衝液、例えば、8M 尿素/ 0.1 M 塩化ナトリウム / 50mM トリス酢酸緩衝液(pH 4.0)で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィー、例えば、SP-セファロース FFカラム(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社)に溶出画分を添加してエピトープポリペプチドを樹脂に吸着させる。陽イオン交換カラムとしては、この他Mono S(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社)、CMセファロースFF(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社)などが挙げられる。
【0025】
銅キレートクロマトグラフィーからの溶出画分をSP-セファロース FFカラムに添加後、pH 10 の緩衝液、例えば8M 尿素/ 0.1 M 塩化ナトリウム / 50mM 炭酸ナトリウム緩衝液(pH 10.0)で洗浄し、続いてpH 4 の緩衝液、例えば8M 尿素/ 0.2 M 塩化ナトリウム / 50mM トリス酢酸緩衝液(pH 4.0)でカラムを洗浄する。大腸菌由来のタンパク質のほとんどは等電点が 10 以下であるため、この陽イオン交換クロマトグラフィーによりエピトープポリペプチド(とその類縁ポリペプチド)の純度は、ほぼ 100 % となる。ここで類縁ポリペプチドとは、物理的、化学的性質が極めてエピトープポリペプチドに類似しているポリペプチドを意味し、通常、エピトープポリペプチドのアミノ酸が部分的に修飾あるいは置換されたポリペプチドを意味する。例えば、Met残基が酸化されたポリペプチド、Met残基がノルロイシンに置換されたポリペプチド、アセチル化されたポリペプチド、あるいは脱アミド化されたポリペプチドである。
次に溶離緩衝液、例えば、8M 尿素/ 0.4 M塩化ナトリウム / 50mM トリス酢酸緩衝液(pH 4.0)で溶出する。溶出液のA280をモニターし、吸収のある画分を得る。
【0026】
この溶出画分には僅かに強塩基性で分子量が小さいリボソームタンパクが数種類混入しているが、つぎの逆相クロマトグラフィーで容易に除去される。逆相クロマトグラフィーでは、また エピトープペプチド の類縁ポリペプチド、リポポリサッカライドのほとんどが除去される。
【0027】
逆相カラムとしては、一般的な液体クロマトグラフィー用オクタデシル化シリカゲルを充填したカラム、例えば、カプセルパックC18(資生堂)が使用できる。また、ポリマー担体のポアサイズが大きい樹脂、例えばPOROS 50R2(アプライドバイオシステムズ社)、SOURCE 15 RPC(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社)を充填したカラムなどが挙げられる。POROS 50R2カラム ( 25 × 200 mm)を使用した場合、カラムを1 %酢酸で平衡化した後、陽イオン交換クロマトグラフィーの溶出画分を添加する。12% アセトニトリル/1%酢酸で洗浄後、溶離液、例えば22%アセトニトリル/1%酢酸を用いて溶出する。溶出液を凍結乾燥して、ポリペプチドの純度として96〜99%以上の純度を有する精製ポリペプチドを得ることができる。このポリペプチドの凍結乾燥品には、クロマトグラフィーにより、酢酸が5〜15重量%含まれている。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1] ポリペプチドをコードするDNAの構築配列番号:1のアミノ酸配列を有するポリペプチド(以下、「ポリペプチドA」という)は6つのT細胞エピトープペプチドがArgダイマーを介して連結された105アミノ酸残基からなり、配列番号:3のアミノ酸配列を有するポリペプチド(以下、「ポリペプチドB」という)は7つのT細胞エピトープペプチドがArgダイマーを介して連結された134アミノ酸残基からなる。そこで、Cry j 1およびCry j 2のエピトープに対応する各DNA 断片を PCRで増幅後連結し、さらにPCRで増幅する、といった工程を繰り返し、最終的にポリペプチドAの全長をコードするK-VF-ID-WK-LK-V2(ポリペプチド A の cDNA 、配列番号:2)と、ポリペプチド B の全長をコードする K-VF-ID-WK-PL-AE-V2 (ポリペプチド B の cDNA 、配列番号:4)を構築した(図1)。PCR条件は、Taq DNAポリメラーゼを使用して96℃15秒、55℃30秒、72℃90秒を10〜25サイクルである。尚、図1の英文字は、図2に示されているポリペプチド A のアミノ酸配列あるいはポリペプチド B のアミノ酸配列における、各々のT細胞エピトープ領域を Arg ダイマー( rr と表記されている部分)で仕切られた各々のT細胞エピトープ領域のN末端のアミノ酸配列を示している。
【0029】
(1) c DNA 断片 K の増幅とクローン化
pCCI2-2 (Sone, T. et al.: Biochem. Biophys. Res. Commun., 199: 619-625, 1994)から 15 アミノ酸残基のエピトープをコードする cDNA 断片 K を KSMK43S(配列番号:5) と KSMK43A(配列番号: 6) をプライマーとする PCR により増幅し、同時に 5′末端に SmaI 認識部位、3′末端に SalI 認識部位を付与した。この DNA 断片を pUC19 上にクローニングし、塩基配列を確認した(pUC19K#3)。
【0030】
(2) cDNA 断片 VF の増幅と、連結した 2 つのcDNA 断片 K-VF のクローン化
pCCI2-2 から 15 アミノ酸残基のエピトープをコードする cDNA 断片 P を PCVF22S (配列番号:7)と PCVF22A(配列番号:8) をプライマーとする PCR により増幅し、同時に 5′末端に SmaI 認識部位、3′末端に SalI 認識部位を付与した。この DNA 断片を SmaI で消化してから SalI で消化した cDNA 断片 K と結合させた。結合した DNA 断片を KSMK43S(配列番号:5) を PCVF22A(配列番号:8) をプライマーとする PCR により増幅した。PCR 産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ 120 bp の DNA 断片 K-P を分離、精製した。
K-P 断片を SalI と SmaI で消化してからポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、DNA 断片を精製してから pUC19 の SalI-SmaI アーム上にクローン化し、 pUC19KP#6-1 を得た。
pUC19KP#6-1 から 13 アミノ酸残基のエピトープを暗号化する cDNA 断片 VF を VFIK22S2 (配列番号:9)と PCVF22A(配列番号:8) をプライマーとする PCR により増幅し、同時に 5′末端に PstI, 3′末端に SalI 認識部位を付与した。PCR 産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ 59 bp の断片を分離、精製した。
この DNA 断片を PstI 消化してから SalI 消化した pUC19K#3 と混合し、クレノウ断片で平滑化してから結合させた。KSMK43S(配列番号:5) と PCVF22A(配列番号:8) をプライマーとする PCR で K-VF の DNA 断片(111 bp)を増幅した。PCR 産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、DNA 断片を分離、精製した。この DNA 断片を pUC19 にクローニングし、pUC19K-VF とした。
【0031】
(3) cDNA 断片 G の増幅とクローン化
pCC II 1 (Komiyama, N., Sone, T., Shimizu, K., Morikubo, K., and Kino, K.(1994) Biochem. Biophys. Res. Commun. 201, 1021-1028)から 20 アミノ酸残基のエピトープを暗号化する cDNA 断片 G を GIDI37S (配列番号:10)と GIDI37A(配列番号:11) をプライマーとする PCR により増幅し、同時に 5′末端に SmaI 認識部位、3′末端に SalI 認識部位を付与した。この DNA 断片を SmaI と SalI で消化してから pUC19 にクローニングし、pUC19G とし、pUC19G#1 の挿入塩基配列を読んだ。SmaI 末端の繋ぎ目に 1 塩基対の欠失(ACCGGG となっていた)があるが、その他の部分に変異がないことを確認した。
【0032】
(4) cDNA 断片 WK の増幅と、連結した 2 つの cDNA 断片 ID-WK のクローン化
pCC II 1 から 20 アミノ酸残基のエピトープを暗号化する cDNA 断片 WK リン酸化した WKNN17S (配列番号:12)と(リン酸化されていない)WKNN17A(配列番号:13) をプライマーとする PCR により増幅し、同時に 3′末端に SalI 認識部位を付与した。PCR 産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、71 bp のDNA 断片を分離、精製した。
この DNA 断片を SalI 消化した pUC19G#1 と混合し、クレノウ断片で平滑化してから結合させた。IDIF37S (配列番号:14)と WKNN17A(配列番号:13) をプライマーとする PCR で ID-WK の DNA 断片(141 bp)を増幅した。PCR 産物はポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ DNA 断片を分離、精製した。この DNA 断片を pUC19 にクローニングし、pUC19ID-WK とし、その塩基配列(pUC19ID-WK#1 および #8)を確認した。
【0033】
(5) cDNA 断片 V2 の増幅とクローン化
pCCII1 から 15 アミノ酸残基のエピトープを暗号化する cDNA 断片 V2 を VDGI14S2 (配列番号:15)と VDGI14A2(配列番号:16) をプライマーとする PCRにより増幅し、同時に 5′末端にPstI, 3′末端に終止コドンと Hind III 認識部位を付与した。この DNA 断片を pUC19 にクローニングし、pUC19Vph とし、pUC19Vph#1 の挿入塩基配列を読んだ。VDGI14A2(配列番号:16) プライマーに相補的な配列 GCTGGAAGTAA となるべきところが GCTTAAGTAA となっていたが、その他の部分には変異がなかった。
【0034】
(6) cDNA 断片 LK の増幅と、連結した 2 つの cDNA 断片 LK-V2 のクローン化
クローン化された Cry j 1 の cDNA (pCCI-2-2)から 15 アミノ酸残基のエピトープを暗号化する cDNA 断片 LK を LKMP17S(配列番号:17)と LKMP17A(配列番号:18) をプライマーとする PCR により増幅し、同時に 5′末端に KpnI, 3′末端に SalI 認識部位を付与した。PCR 産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ 65 bp の断片を分離、精製した。この DNA 断片を SalI 消化してから PstI 消化した pUC19Vph#1 とを混合し、クレノウ断片で平滑化してから結合させた。LKMP17S(配列番号:17)と VDGI14A2(配列番号:16) をプライマーとする PCR で LK-V2 の DNA 断片(119 bp)を増幅した。PCR 産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、DNA 断片を分離、精製した。この DNA 断片を pUC19 にクローニングし、pUC19LK-V2 とし、pUC19LK-V2#8 の塩基配列が正しいことを確認した。
【0035】
(7) 連結した 4 つの cDNA 断片 K-VF-ID-WK のクローン化
pUC19ID-WK から挿入塩基配列を EcoRV/Hind III 消化で切り出し、pUC19K-VF#2の SalI-Hind III アームと結合させ、3 クローン(pUC19K-VF-ID-WK#1, #2, および #4)について接合部の塩基配列が正しいことを確認した。
【0036】
(8) 連結した 6 つの cDNA 断片 K-VF-ID-WK-LK-V2 のクローン化
pUC19K-VF-ID-WK#1, #4 の SalI-Hind III アームに pUC19LK-V2#8 から KpnI/Hind III 消化で切りだした挿入塩基配列を結合させ、3 クローンについて接合部の塩基配列が正しいことを確認した。このようにして得られたプラスミド pUC19F7#2, #3, #4は、 ペプチドA の cDNA をクローン化している(図2)。
同様の手順(図 1)でエピトープ cDNA 断片 LK がエピトープ cDNA 断片 PL-AE で置き代わったプラスミド pUC19F8#10を作製した。プラスミド pUC19F8 はペプチドBの cDNA をクローン化している(図2)。
【0037】
このようにして構築した ポリペプチドA の cDNA の遺伝子組換え体の発現は、種々の宿主ベクター系で可能である。特に大腸菌での発現系は種々の医薬品製造に使用された実績が豊富にあるので、ポリペプチドA の生産も大腸菌で行うのが適当である。
【0038】
[実施例2] pQTF7Δcr の構築
本発明者らは、以下の実施例に示すように、trpプロモーターを使用した安枝らの大腸菌発現系(Bio/Technology, 8: 1036-1040, 1990 )を改変し、エピトープペプチドを大腸菌の菌体内に著量合成せしめ、不溶性画分(封入体)として蓄積させることに成功した。この発現系は発現誘導剤や抗生物質の使用量を少なくすることが可能である。
(1) trp オペロンプロモーター
大腸菌のプロモーター trp と SD 配列を上記文献を参考に、オリゴヌクレオチドTRPS(配列番号:19)、 TRPA(配列番号:20)、 SDSDS(配列番号:21)、 および SDSDA(配列番号:22)を合成した。TRPA(配列番号:20)とSDSDS(配列番号:21) は 5′-末端を T4 ファージのポリヌクレオチドキナーゼでリン酸化した。
TRPS(配列番号:19) と TRPA(配列番号:20) の 3′-末端の 11 塩基は相補的である。加熱、徐冷して対合させ、クレノウ断片による修復合成を行うことにより前半の 50 塩基対の二本鎖 DNA を得た。SDSDS(配列番号:21) と SDSDA(配列番号:22) の 3′-末端の 10 塩基も相補的である。加熱、徐冷して対合させ、クレノウ断片による修復合成により後半の 47 塩基対の二本鎖 DNA を得た。
これらの DNA 断片を T4 ファージの DNA リガーゼで結合反応させ、連結したDNA断片TRP-SDSDをリン酸化した SDSDA、(配列番号:22)と(リン酸化しない)TRPS (配列番号:19)をプライマーとして12 サイクルの PCR で増幅した。
pUC19F8#10を鋳型に、リン酸化した KVTV43S (配列番号:23)と(リン酸化しない)VDGI14A2 (配列番号:16)をプライマーとした 15 サイクルの PCR でペプチドB の cDNA 断片 F8 を増幅し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離/精製した。
DNA 断片 TRP-SDSD と F8 を混合し、クレノウ断片と T4 ファージの DNA リガーゼを作用させて結合させた。結合した断片 TRP-SDSD-F8 を TRPS(配列番号:19) と VDGI14A2 (配列番号:16)をプライマーとした 12 サイクルの PCR で増幅し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離/精製した。
DNA 断片 TRP-SDSD-F8 を Hind III で消化し、アガロースゲル電気泳動で約 500 bp の断片を分離/精製した。
Hind III で消化した DNA 断片 TRP-SDSD-F8 を EcoRIで 消化してから pUC119 のEcoRI-Hind III アームに結合させ、大腸菌 TB1 株の形質転換を行った。
X-gal プレートで白色のコロニーを形成した 13 クローンについてプラスミドの微量調製を行い、EcoRI, Hind III の二重消化で約 500 bp の断片が切り出される 2 クローン(pUC119TF8#6 および #7)を選択した。これらのプラスミドの挿入塩基配列をダイデオキシ法で読んだところ、pUC119TF8#6 では Hinc II/HpaIの認識部位の前後が 32 bp, pUC119TF8#7 では DraI の認識部位とその後が 20 bp 欠失していた。pUC119TF8#6 の挿入塩基配列の ペプチドB の cDNA 部分は 5´側の 70 bp を読んだが、その範囲にはアミノ酸配列を変えるような変異はなかった。KVTV43S の 5´側の 18 bp は縮退コドンの均等な混合物として合成したため 4 つのコドンの 3 文字目がいずれも T に変わっていた(図3)(配列番号:25 )。
pUC119TF8#6 と #7 の欠失位置は、ずれており、間に ClaI の認識部位が存在する。そこで、これらのクローンを組み換えて目的とする組み換え体を以下のようにして作製した。pUC119TF8#6 を ClaI と Hind III で消化し、約 400 bp の DNA 断片をアガロースゲル電気泳動で分離した。pUC119TF8#7 を ClaI, Hind III, ウシ小腸のアルカリフォスファターゼで消化してからアガロースゲル電気泳動にかけ、ベクター側断片(約 3 kbp)を分離した。これらの DNA 断片を T4 ファージの DNA リガーゼで結合させてから大腸菌 GI698 に導入し、10μg/mL のトリプトファンと 100μg/mL のアンピシリンを加えたプレートで組み換え体を選択した。
6 クローン(pUC119TF8#6.51-#6.56)についてプラスミド DNA の微量調製を行い、Hae III, EcoRI の二重消化の制限パターンで、意図した DNA の組み換えが起きていることを確認した。
【0039】
(2) 中間体プラスミドpQTF7 の構築
pUC119TF8#6.54 から trp のプロモーターと ポリペプチドA の N-末端の cDNA (ペプチドB と共通)を含む約 120 bp の DNA 断片を EcoRI, Eco47I 消化で切りだした。また pUC19F7 から ポリペプチドA の C-末端側の cDNA を含む約 290 bp の DNA 断片を Hind III, Eco47I 消化で切りだした。pQE11 の EcoRI-Hind III アーム上で、これらの断片を結合させて大腸菌(GI698 株)に導入した。
アンピシリン耐性の 24 クローン(pQETF7#1-24)からプラスミド DNA を微量調製し、挿入配列の有無を SDSDS(配列番号:21)、 VDGI14A2(配列番号:16) をプライマーとした PCR と Hind III/EcoRI 消化で調べ、pQETF7#4、pQETF7#7、pQETF7#12 に期待する長さの挿入塩基配列があることを確認した。pQETF7#12 の EcoRI, XhoI 消化を行ってからアガロースゲル電気泳動でベクター側 DNA 断片を分離/精製した。
pQETF7#12 の EcoRI-XhoI 断片にクレノウ断片と T4 ファージの DNA リガーゼを作用させて閉環し、大腸菌 GI698 に導入し、10μg/mL のトリプトファンと 100μg/mL のアンピシリンを加えたLB寒天培地プレートで組み換え体を選択した。
組み換え体から調製したプラスミド DNA pQTF7 の制限酵素消化(DraI, Hind III の二重消化)とポリアクリルアミドゲル電気泳動で予定通りの欠失が起きていることを確認した。
pQTF7 では ポリペプチドA の cDNA の下流にλファージの転写終結信号配列 t0 が連結している。その更に下流にはクロラムフェニコールアセチル基転移酵素(cat)とリボソーム RNA 転写終結信号配列 T1 が連結している。このcatとT1 の部分は不要であるので、それらを除去した発現プラスミド pQTF7Δcr を作製した。
【0040】
(3) pQTF7Δcr の構築
pQTF7 を鋳型に WKNN17S(配列番号:12)と T0XBA(配列番号:24) をプライマーに ポリペプチドA の cDNA の後半とλファージの転写終結信号 t0 を含む DNA 断片 WK-T0 を 20サイクルの PCR で増幅し、アガロースゲル電気泳動で約 300 bp の断片を分離した。
DNA 断片 WK-T0 を XbaI と Hind III で消化してから QIAEX II で精製し pUC19 の XbaI-Hind III アームと T4 DNA リガーゼで結合させた。
結合反応により生成したプラスミド DNA で大腸菌 MC1061の形質転換を行いアンピシリン耐性の 4 クローン(pUC19t0#1-4)を培養し、プラスミド DNA の微量調製を行った。制限酵素消化(EcoRI, Hind III の二重消化)後のポリアクリルアミドゲル電気泳動で約 150 bp のバンドを確認した。 pUC19t0#1 の塩基配列をダイデオキシ法で確認した。
pUC19t0#1 の約 100 bp の XbaI-Hind III 断片と pQTF7.12#1 の約 2.5 kb の XbaI-Hind III 断片を T4 DNA リガーゼで結合させてから大腸菌 K802 株に導入した。
得られたプラスミド pQTF7Δcr(図4)の構造を制限酵素消化(XbaI, Hind III の二重消化)で確認した。アガロースゲル電気泳動で 121 bp の DNA のバンドが観察された。
【0041】
[実施例3] エピトープポリペプチドの生産(1) 発現の確認発現に当たってはまず試験管で 100μg/mL のトリプトファンを含む 1 mL のLB 培地(1 % 食塩、0.5 % 酵母エキス、1 % トリプトン)に種細胞のグリセロールストック 10μL を植菌し、30℃ で 8-16 時間の前培養を行った。得られた定常期の培養液 0.4 mL を 40 mL の M9 カザミノ酸培地(0.05 % 食塩、0.1 %塩化アンモニウム、0.3 % KH2PO4, 0.6 % Na2HPO4, 0.5 % ブドウ糖、0.2 % カザミノ酸、1 mM MgCl2, 2μg/mL 塩酸チアミン、30μg/mL トリプトファン)を入れた 200 mL の三角フラスコに植え継ぎ 37℃ で19-22 時間震盪培養(本培養)を行った。トリプトファンオペロンのプロモーターを使用した発現プラスミドでは、通常、インドールアクリル酸を添加して発現の誘導を行うが、本実施例の発現プラスミドと宿主の組み合わせでは、単に長時間の培養を行うだけでトリプトファンの枯渇、あるいはプラスミドコピー数の増加に起因すると思われる自発的発現が起こり、ポリペプチドが菌体内に蓄積された。1 mLの培養液を 7,000 rpm で 5 分間遠心し集菌した。菌体を100μLのリン酸緩衝液に懸濁し、2 倍濃度の SDS 試料緩衝液を 100μL 加え、溶菌し、超音波処理した。菌体を SDSで溶かして還元状態で Laemmli の緩衝液系でのポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を行った。クーマシー染色で卵白リゾチームとほぼ同じ移動度の顕著なバンドを確認した。また SDS-PAGE後、ポリペプチドを PVDF 膜に電気泳動的に転写後、C-末端のエピトープペプチドに対する抗体で染色し、卵白リゾチームとほぼ同じ移動度のバンドが染色されることを確認した。
【0042】
(2) エピトープポリペプチドの発現量の測定
培養終了後の菌体に含まれるポリペプチドの定量は ELISA で行った。通常 ELISA に使用される溶媒にはポリペプチド は溶けにくい。一方、ポリペプチド がよく溶ける変性剤を含む溶媒を使用すると、プレートに吸着させた抗体が変性、離脱してしまう。そこで 6 M 尿素を含む溶媒に溶解したポリペプチドを含む試料を、カルボキシメチル化された 96-穴プレート(住友ベークライトのカルボプレート)のウェルに入れて、静電的に ポリペプチドを吸着させてから ELISA を行った。
培養液を 1.4 mL ミクロ遠心管に入れ、7,000 rpm で 5 分間遠心し菌体を沈澱させた。同時に 0.7 mL を 1.0 mL の M9 カザミノ酸培地で希釈し、600 nm の吸光度を分光光度計で読み取った。上清をマイクロピペットで除去してから A600 が 1 の培養液 1 mL あたり、100μL の塩酸グアニジン抽出液(6 M 塩酸グアニジン、50 mM 酢酸/NaOH, pH 4.0)を加えて菌体を懸濁し、4℃ で 2 時間震盪しポリペプチド を抽出した。15,000 rpm で 10 分間 4℃ で遠心し、上清を別のチューブに移し、測定するまで -20℃ で保存した。
340μL の 6 M 尿素、50 mM グリシン/NaOH(pH 9.2)と 10μL の ポリペプチド 抽出液を激しく撹拌しながら混合してからカルボキシメチル化された 96-穴プレート(住友ベークライトのカルボプレート)に 150μL ずつ 2 ウェルに入れ、室温で 1 時間、ポリペプチド を吸着させた。液を除去してから 1 % の牛血清アルブミン(BSA)を含む PBS(-) を 200μL 入れる操作を 2 回行ってから 37℃ で 1 時間放置し、ブロッキングした。洗浄緩衝液(0.15 M NaCl, 10 mM Tris/HCl, 0.05% Tween 20 )で 3 回洗ってから 10 % の Block Ace(雪印乳業)を含む洗浄緩衝液で 0.4μg/mL に希釈したビオチン標識抗 ポリペプチド マウスモノクローナル抗体(K8.280)と室温で 2 時間あるいは 4℃ で一晩反応させた。洗浄緩衝液で 3 回洗ってから 10 % の Block Ace を含む洗浄緩衝液で 1/3000 に希釈したペルオキシダーゼ標識ストレプトアビシン(Life Technologies 社)と室温で 30 分間反応させた。洗浄緩衝液で 5 回洗ってから 150μL の TMB 発色基質溶液(Life Technologies 社)を各ウェルに入れて、室温で 20分間反応させた。反応は 1 N の硫酸を 50μL 加えて停止し、450 nm の吸光度を 655 nm を参照波長として読み取った。
精製した ポリペプチド を種々の濃度で添加した塩酸グアニジン抽出液で、対照大腸菌株(ポリペプチドをコードするDNAを除去したpQTF7Δcr を保持するK802 株)の菌体から ポリペプチド を抽出する操作を行い、得られた抽出液を標準試料とした。この標準試料の ELISA で得られた吸光度の標準曲線から ポリペプチド の生産量を算出した。
【0043】
[実施例4] エピトープポリペプチドの精製エピトープポリペプチドAを封入体として保持する大腸菌から封入体画分を分離し、変性剤で抽出後、銅キレートカラムクロマトグラフィー、陽イオン交換カラムクロマトグラフィー、そして逆相カラムクロマトグラフィーの順のクロマト操作により高純度に精製した。発現プラスミドpQTF7△cr(図4)で形質転換した大腸菌株K 802をジャーファーメンターで培養した。培養後の菌体45 g(湿菌体重量)を400 mLの50mMトリス酢酸緩衝液(pH 5.0)に懸濁し、ホモゲナイザーで菌体を破砕した。この破砕液を遠心(10,000 x g、20分間)して、不溶性画分を得た。この不溶性画分を400mLの2%トリトンX-100を含む50mM トリス酢酸緩衝液(pH 5.0)に懸濁し、遠心(10,000 xg、30分間)して、封入体画分78 gを得た。この封入体画分に400mLの1 M 塩酸グアニジン、5 M 尿素、0.02%酢酸を加え、室温で1時間撹拌溶解した後、遠心(10,000 x g、20分間)して、上清を得た。この上清を8M 尿素/ 0.2M 塩化ナトリウム/ 50mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)と1:1で混合し、pH7.0に調整した後、銅キレートストリームラインカラム(50 x150 mm)(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社)に添加した。同上のバッファー3カラム容量でカラムを洗浄し、非吸着物質を除いた後、8M尿素/ 0.2M 塩化ナトリウム / 50mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.0)で溶出し、溶出液980 mLを得た。この溶出液を酢酸でpH 4.0に調整し、8M 尿素/ 0.1M 塩化ナトリウム / 50mMトリス酢酸緩衝液(pH 4.0)で平衡化したSP-セファロースFFカラム( 50 x 100 mm )(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社)に添加した。8M 尿素/ 0.1M塩化ナトリウム / 50mM 炭酸ナトリウム緩衝液 (pH 10.0)と8M 尿素/ 0.2 M 塩化ナトリウム / 50mM トリス酢酸緩衝液(pH 4.0)でカラムを洗浄後、8M 尿素/0.4 M 塩化ナトリウム / 50mM トリス酢酸緩衝液(pH 4.0)で溶出した。溶出液のA280を測定し、吸収のある画分720 mL得た。溶出画分をさらに1%酢酸で平衡化したPOROS 50R2カラム ( 25 x 200 mm)(アプライドバイオシステムズ社)に負荷した。12% アセトニトリル/1%酢酸で洗浄後、22%アセトニトリル/1%酢酸で溶出した。溶出液を凍結乾燥してポリペプチド208 mg(乾燥重量)を得た。この精製ポリペプチドの純度はポリペプチドとして99%だった。純度は逆相HPLC[検出器:紫外吸光光度計(測定波長:215nm)、カラム:CAPCELLPAK C18, SG 300Å 5 μm,4.6 mm i.d.x 15 cm(資生堂)]で検定した。このポリペプチドには、12.5%の酢酸が含まれていた。
【0044】
【配列表】
【0045】
【発明の効果】
本発明により、多重T細胞エピトープポリペプチドを封入体として保持する大腸菌から、該エピトープポリペプチドを高純度に、かつ経済的に精製する方法が提供された。結果、スギ花粉症の予防、改善、あるいは治療に有用なエピトープポリペプチドが提供された。
【図面の簡単な説明】
【図1】 多重T細胞エピトープポリペプチドをコードするDNAの構築の過程を示す。
【図2】 多重T細胞エピトープポリペプチドAおよびBをコードする塩基配列、ならびに該ポリペプチドAおよびBのアミノ酸配列を示す。塩基配列の太字の部分はポリペプチドのアミノ酸配列をコードする領域を示す。配列中下線を付した塩基はプラスミドの構築を容易にする等の理由で変異させてある。小文字はプラスミドあるいはPCRプライマー由来の塩基配列を示す。
【図3】 発現プラスミドpQTF△crのtrpプロモーター周辺の塩基配列(大文字)、並びに多重T細胞エピトープポリペプチドのN末端のアミノ酸配列(小文字)をコードする塩基配列を示す図である。□で囲った部分は−10領域および−35領域を示し、下線部分はSD配列を示し、そして二重の下線部分は制限酵素認識部位を示す。
【図4】 発現プラスミドpQTF7△crを示す。trpプロモーター、2つのSD配列、多重T細胞エピトープポリペプチドをコードする領域、λファージ由来のターミネーターt0、主要な制限酵素認識部位、アンピシリン耐性遺伝子が示されている。
Claims (5)
- 配列番号:1あるいは配列番号:3で示されるアミノ酸配列を有する多重T細胞エピトープポリペプチドを封入体として保持する大腸菌体からの該ポリペプチドの精製法であって、(a) 大腸菌から該封入体画分を分離し、(b) 該封入体画分をグアニジン/尿素を用いて可溶化してその上清に該エピトープポリペプチドを抽出し、そして(c) 該抽出物を、銅キレートクロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、および逆相クロマトグラフィーの順のクロマトグラフィーに供すること、からなる該エピトープポリペプチドの精製法。
- さらに、逆相クロマトグラフィーの溶出液の多重T細胞エピトープ画分を凍結乾燥に供する請求項1記載の該エピトープポリペプチドの精製法。
- 前記精製法により得られる該エピトープポリペプチドの凍結乾燥品が、酢酸を 5 〜 15 重量 % の範囲で含有するものであることを特徴とする請求項2に記載の該エピトープポリペプチドの精製法。
- 該エピトープポリペプチドの精製の純度が96%以上である請求項2記載の該エピトープポリペプチドの精製法。
- 該エピトープポリペプチドの精製の純度が99%以上である請求項2記載の該エピトープポリペプチドの精製法。
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