しかしながら、上述した動力出力装置では、燃料カットを抑制したときに二次電池が満充電のときには、モータジェネレータの回生制動に代えて車輪ブレーキによる制動を行うべく油圧制御を実行しているため、制御が煩雑になりやすい。
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、触媒劣化抑制制御で蓄電手段に蓄電できないことに起因する制御負担を軽くすることができる動力出力装置、これを搭載した自動車、動力出力装置の制御方法及びこれを実行するプログラムを提供することを目的とする。
本発明は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明の動力出力装置は、
駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
前記駆動軸に動力を出力可能なエンジンと、
前記エンジンからの排ガスを浄化する排ガス浄化触媒と、
前記駆動軸へ駆動力又は制動力を出力可能な電動機と、
該電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、
燃料カット条件成立時に前記排ガス浄化触媒の温度が触媒劣化高温域に入らないときには、前記エンジンの燃料カットを実行してエンジンブレーキによる制動力を前記駆動軸に出力し、前記燃料カット条件成立時に前記排ガス浄化触媒の温度が前記触媒劣化高温域に入るときには、前記燃料カットを実行せず前記エンジンブレーキによる制動力相当分を前記電動機により前記駆動軸に出力し該電動機による発電エネルギを前記蓄電手段へ蓄えるか、あるいは、前記燃料カットを実行して前記エンジンブレーキによる制動力を前記駆動軸に出力するかを前記蓄電手段の蓄電状態に基づいて決定する制御手段と、
を備えたものである。
この動力出力装置では、燃料カット条件成立時に排ガス浄化触媒の温度が触媒劣化高温域に入らないときには、燃料カットを実行してエンジンブレーキによる制動力を駆動軸に出力する。一方、燃料カット条件成立時に排ガス浄化触媒の温度が触媒劣化高温域に入るときには、燃料カットを実行せずエンジンブレーキによる制動力相当分を電動機により駆動軸に出力し該電動機による発電エネルギを蓄電手段へ蓄えるか、あるいは、燃料カットを実行してエンジンブレーキによる制動力を駆動軸に出力するかを蓄電手段の蓄電状態に基づいて決定する。ここで、燃料カット条件成立時に排ガス浄化触媒の温度が触媒劣化高温域に入るときには、燃料カットを実行すると排ガス浄化触媒がリーン雰囲気下で高温に晒されて劣化しやすいことから、触媒劣化を抑制すべく燃料カットを実行しない。この場合、エンジンブレーキが働かないためエンジンブレーキの制動力相当分を電動機に賄わせ、そのとき生じる発電エネルギを蓄電手段へ蓄える。但し、蓄電手段の蓄電状態によっては、発電エネルギを蓄電手段に蓄えることができないため、燃料カットを実行してエンジンブレーキによる制動力を駆動軸に出力するがこの制御負担は軽くて済む。したがって、本発明によれば、触媒劣化抑制制御で蓄電手段に蓄電できないことに起因する制御負担を軽くすることができる。
本発明の動力出力装置において、前記制御手段は、前記燃料カット条件成立時に前記排ガス浄化触媒の温度が前記触媒劣化高温域に入るときには、前記燃料カットを実行せず前記エンジンブレーキによる制動力相当分を前記電動機により前記駆動軸に出力し該電動機による発電エネルギ前記蓄電手段へ蓄えるか、あるいは、前記排ガス浄化触媒の低温化処理を実行したあと前記燃料カットを実行して前記エンジンブレーキによる制動力を前記駆動軸に出力するかを前記蓄電手段の蓄電状態に基づいて決定してもよい。排ガス浄化触媒の温度が触媒劣化高温域に入っているときに燃料カットを実行すると排ガス浄化触媒が劣化しやすいが、ここでは燃料カットを実行する前に排ガス浄化触媒の低温化処理を実行するため燃料カットを実行したとしても排ガス浄化触媒が劣化しにくい。
このとき、前記制御手段は、前記排ガス浄化触媒の低温化処理を実行したあと前記燃料カットを実行して前記エンジンブレーキによる制動力を前記駆動軸に出力するにあたり、前記低温化処理として、前記蓄電手段の蓄電状態が所定の限界量よりも余裕のある仮限界量に達したあと燃料噴射量を前記仮限界量に達する前よりも多く増量補正する処理を実行してもよい。こうすれば、混合気の空燃比がリッチになり排ガス温度が低下するため排ガス浄化触媒を低温化することができる。
あるいは、前記制御手段は、前記排ガス浄化触媒の低温化処理を実行したあと前記燃料カットを実行して前記エンジンブレーキによる制動力を前記駆動軸に出力するにあたり、前記蓄電手段の蓄電状態が所定の限界量よりも余裕のある仮限界量に達する前は燃料噴射量を第1増量補正で増量し、該仮限界量に達したあと燃料噴射量を前記第1増量補正とは異なる第2増量補正で多く増量して前記排ガス浄化触媒の低温化処理を実行し、その後前記蓄電手段の蓄電状態が所定限界量に達したとき前記エンジンの燃料カットを実行してもよい。こうすれば、蓄電状態が仮限界量に達する前でも燃料噴射量を増量するため排ガス温度が低下して排ガス浄化触媒を低温化することができ、また、蓄電状態が仮限界量に達したあとは燃料噴射量をより多く増量するため排ガス温度がより低下して排ガス浄化触媒を早期に低温化することができる。
本発明の動力出力装置において、前記制御手段は、燃料噴射量を増量補正するにあたり、増量補正後の燃料噴射量に徐々に近づくように制御してもよい。こうすれば、増量補正後の燃料噴射量にいきなり増量する場合に比べてトルク変化を小さく抑えることができる。
本発明の動力出力装置において、前記制御手段は、燃料噴射量を増量補正するにあたり、燃料噴射量の増量分に応じたトルク偏差をキャンセルするよう前記エンジンへの吸入空気量を設定してもよい。こうすれば、増量補正後の燃料噴射量のトルク偏差がエンジンへの吸入空気量でキャンセルされるため、そのトルク偏差に起因するショックを低減することができる。
本発明の動力出力装置において、前記仮限界量は、前記所定限界量と前記蓄電手段が単位時間あたりに蓄電可能な最大変化量とをパラメータとする関数から算出されるようにしてもよい。こうすれば、仮限界量を適切に決定することができる。
本発明の動力出力装置は、前記蓄電手段の蓄電状態に基づいて前記エンジンの自立運転の許否を予告する自立運転許否予告手段、を備え、前記制御手段は、前記燃料カット条件不成立時に前記排ガス浄化触媒の温度が所定の高温域に入り且つ前記自立運転許否予告手段により前記エンジンの自立運転禁止が予告されているときには、前記排ガス浄化触媒を低温化させる低温化処理を実行し、前記燃料カット条件不成立時に前記排ガス浄化触媒の温度が前記高温域に入るが前記自立運転許否予告手段により前記エンジンの自立運転許可が予告されているときには、前記低温化処理を実行しないようにしてもよい。こうすれば、燃料カット条件の成立前に排ガス浄化触媒が高温であれば常に低温化処理を実行する場合に比べて、該低温化処理を実行する頻度を低くすることができる。また、燃料カット条件の成立前に排ガス浄化触媒が高温でエンジンの自立運転禁止が予告されているときには、排ガス浄化触媒の低温化処理を実行するため、排ガス浄化触媒が高温になるのを防止でき、ひいては排ガス浄化触媒が劣化するのを防止できる。一方、燃料カット条件の成立前に排ガス浄化触媒が高温でエンジンの自立運転許可が予告されているときには、排ガス浄化触媒の低温化処理を実行しないが、その後燃料カット条件が成立したときには燃料カットを実行せずにエンジンを自立運転しつつエンジンブレーキ相当分を電動機で賄うことにより排ガス浄化触媒の劣化を防止しつつエンジンブレーキの減速感を付与することができる。
このように自立運転許否予告手段を備えた本発明の動力出力装置において、前記制御手段は、前記燃料カット条件不成立時に前記排ガス浄化触媒の温度が所定の高温域に入り且つ前記自立運転許否予告手段により前記エンジンの自立運転禁止が予告されているときには、前記燃料噴射手段による燃料噴射量の増量制御を実行し、前記燃料カット条件不成立時に前記排ガス浄化触媒の温度が前記高温域に入るが前記エンジンの自立運転許可が予告されているときには、前記増量制御を実行しないか又は増量幅を微少量として前記増量制御を実行するようにしてもよい。こうすれば、燃料カット条件の成立前に排ガス浄化触媒が高温であれば常に燃料噴射量の増量制御を実行する場合に比べて、該増量制御を実行する頻度を低くすることができるため燃費が向上する。ここで、自立運転許否予告手段は、前記蓄電手段の蓄電量が所定の限界量に達しているときには前記エンジンの自立運転禁止を予告するようにしてもよい。
本発明の自動車は、上述のいずれかの動力出力装置を備えているため、上述のいずれかの動力出力装置が奏する効果、例えば触媒劣化抑制制御で蓄電手段に蓄電できないことに起因する制御負担を軽くすることができるという効果を奏する。
本発明の動力出力装置の制御方法は、
駆動軸に動力を出力可能なエンジンと、前記エンジンからの排ガスを浄化する排ガス浄化触媒と、前記駆動軸へ駆動力又は制動力を出力可能な電動機と、該電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を備えた動力出力装置の制御方法であって、
(a)燃料カット条件成立時に前記排ガス浄化触媒の温度が触媒劣化高温域に入るか否かを判定するステップと、
(b)前記ステップ(a)で前記触媒劣化高温域に入らないと判定されたときには、前記エンジンの燃料カットを実行してエンジンブレーキによる制動力を前記駆動軸に出力し、前記ステップ(a)で前記触媒劣化高温域に入ると判定されたときには、前記燃料カットを実行せず前記エンジンブレーキによる制動力相当分を前記電動機により前記駆動軸に出力し該電動機による発電エネルギを前記蓄電手段へ蓄えるか、あるいは、前記燃料カットを実行して前記エンジンブレーキによる制動力を前記駆動軸に出力するかを前記蓄電手段の蓄電状態に基づいて決定するステップと、
を含むものである。
この動力出力方法では、燃料カット条件成立時に排ガス浄化触媒の温度が触媒劣化高温域に入らないときには、燃料カットを実行してエンジンブレーキによる制動力を駆動軸に出力する。一方、燃料カット条件成立時に排ガス浄化触媒の温度が触媒劣化高温域に入るときには、燃料カットを実行せずエンジンブレーキによる制動力相当分を電動機により駆動軸に出力し該電動機による発電エネルギを蓄電手段へ蓄えるか、あるいは、燃料カットを実行してエンジンブレーキによる制動力を駆動軸に出力するかを蓄電手段の蓄電状態に基づいて決定する。ここで、燃料カット条件成立時に排ガス浄化触媒の温度が触媒劣化高温域に入るときには、燃料カットを実行すると排ガス浄化触媒がリーン雰囲気下で高温に晒されて劣化しやすいことから、触媒劣化を抑制すべく燃料カットを実行しない。この場合、エンジンブレーキが働かないためエンジンブレーキの制動力相当分を電動機に賄わせ、そのとき生じる発電エネルギを蓄電手段へ蓄える。但し、蓄電手段の蓄電状態によっては、発電エネルギを蓄電手段に蓄えることができないため、燃料カットを実行してエンジンブレーキによる制動力を駆動軸に出力するがこの制御負担は軽くて済む。したがって、本発明によれば、触媒劣化抑制制御で蓄電手段に蓄電できないことに起因する制御負担を軽くすることができる。
本発明の動力出力装置の制御方法において、前記ステップ(b)では、前記ステップ(a)で前記触媒劣化高温域に入ると判定されたときには、前記燃料カットを実行せず前記エンジンブレーキによる制動力相当分を前記電動機により前記駆動軸に出力し該電動機による発電エネルギを前記蓄電手段へ蓄えるか、あるいは、前記排ガス浄化触媒の低温化処理を実行したあと前記燃料カットを実行して前記エンジンブレーキによる制動力を前記駆動軸に出力するかを前記蓄電手段の蓄電状態に基づいて決定してもよい。こうすれば、混合気の空燃比がリッチになり排ガス温度が低下するため排ガス浄化触媒を低温化することができる。
このとき、前記ステップ(b)では、前記排ガス浄化触媒の低温化処理を実行したあと前記燃料カットを実行して前記エンジンブレーキによる制動力を前記駆動軸に出力するにあたり、前記低温化処理として、前記蓄電手段の蓄電状態が所定の限界量よりも余裕のある仮限界量に達したあと燃料噴射量を前記仮限界量に達する前よりも多く増量補正する処理を実行してもよい。こうすれば、蓄電状態が仮限界量に達する前でも燃料噴射量を増量するため排ガス温度が低下して排ガス浄化触媒を低温化することができ、また、蓄電状態が仮限界量に達したあとは燃料噴射量をより多く増量するため排ガス温度がより低下して排ガス浄化触媒を早期に低温化することができる。
あるいは、前記ステップ(b)では、前記排ガス浄化触媒の低温化処理を実行したあと前記燃料カットを実行して前記エンジンブレーキによる制動力を前記駆動軸に出力するにあたり、前記蓄電手段の蓄電状態が所定の限界量よりも余裕のある仮限界量に達する前は燃料噴射量を第1増量補正で増量し、該仮限界量に達したあと燃料噴射量を前記第1増量補正とは異なる第2増量補正で多く増量して前記排ガス浄化触媒の低温化処理を実行し、その後前記蓄電手段の蓄電状態が所定限界量に達したとき前記エンジンの燃料カットを実行してもよい。こうすれば、蓄電状態が仮限界量に達する前でも燃料噴射量を増量するため排ガス温度が低下して排ガス浄化触媒を低温化することができ、また、蓄電状態が仮限界量に達したあとは燃料噴射量をより多く増量するため排ガス温度がより低下して排ガス浄化触媒を早期に低温化することができる。
本発明の動力出力装置の制御方法において、前記ステップ(b)では、燃料噴射量を増量補正するにあたり、増量補正後の燃料噴射量に徐々に近づくようにしてもよい。こうすれば、増量補正後の燃料噴射量にいきなり増量する場合に比べてトルク変化を小さく抑えることができる。
本発明の動力出力装置の制御方法において、前記ステップ(b)では、燃料噴射量を増量補正するにあたり、燃料噴射量の増量分に応じたトルク増加分をキャンセルするよう前記エンジンへの吸入空気量を小さくしてもよい。こうすれば、増量補正後の燃料噴射量のトルク増加分がエンジンへの吸入空気量でキャンセルされるため、燃料噴射量の増量補正によるトルク変化を小さく抑えることができる。
本発明の動力出力装置の制御方法は、更に、(c)前記蓄電手段の蓄電状態に基づいて前記エンジンの自立運転の許否を決定するステップと、(d)前記燃料カット条件不成立時に前記排ガス浄化触媒の温度が所定の高温域に入り且つ前記ステップ(c)で前記エンジンの自立運転が禁止されているときには前記排ガス浄化触媒を低温化させる低温化処理を実行し、前記燃料カット条件不成立時に前記排ガス浄化触媒の温度が前記高温域に入るが前記ステップ(c)で前記エンジンの自立運転が許可されているときには前記低温化処理を実行しないステップと、を含んでいてもよい。こうすれば、燃料カット条件の成立前に排ガス浄化触媒が高温であれば常に低温化処理を実行する場合に比べて、該低温化処理を実行する頻度を低くすることができる。また、燃料カット条件の成立前に排ガス浄化触媒が高温でエンジンの自立運転禁止が予告されているときには、排ガス浄化触媒の低温化処理を実行するため、排ガス浄化触媒が高温になるのを防止でき、ひいては排ガス浄化触媒が劣化するのを防止できる。一方、燃料カット条件の成立前に排ガス浄化触媒が高温でエンジンの自立運転許可が予告されているときには、排ガス浄化触媒の低温化処理を実行しないが、その後燃料カット条件が成立したときには燃料カットを実行せずにエンジンを自立運転しつつエンジンブレーキ相当分を電動機で賄うことにより排ガス浄化触媒の劣化を防止しつつエンジンブレーキの減速感を付与することができる。
このようにステップ(c),(d)を含む本発明の動力出力装置の制御方法において、前記ステップ(d)では、前記燃料カット条件不成立時に前記排ガス浄化触媒の温度が所定の高温域に入り且つ前記ステップ(c)で前記エンジンの自立運転が禁止されているときには、前記燃料噴射手段による燃料噴射量の増量制御を実行し、前記燃料カット条件不成立時に前記排ガス浄化触媒の温度が前記高温域に入るが前記ステップ(c)で前記エンジンの自立運転が許可されているときには、前記増量制御を実行しないか又は増量幅を微少量として前記増量制御を実行してもよい。こうすれば、燃料カット条件の成立前に排ガス浄化触媒が高温であれば常に燃料噴射量の増量制御を実行する場合に比べて、該増量制御を実行する頻度を低くすることができるため燃費が向上する。ここで、ステップ(c)では、前記蓄電手段の蓄電量が所定の限界量に達しているときには前記エンジンの自立運転禁止を予告するようにしてもよい。
本発明の制御プログラムは、コンピュータに、上述したいずれかの動力出力装置の制御方法を実行させるための動力出力装置の制御プログラムである。この制御プログラムをコンピュータに実行させれば、上述のいずれかの動力出力装置の制御方法が実現されるため、上述のいずれかの動力出力装置の制御方法が奏する効果、例えば触媒劣化抑制制御で蓄電手段に蓄電できないことに起因する制御負担を軽くすることができるという効果を奏する。なお、この制御プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピュータから別のコンピュータへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。この制御プログラムは一つのコンピュータに実行させてもよいし又は複数のコンピュータに分担して実行させてもよい。
[第1実施形態]
図1は第1実施形態のハイブリッド自動車10の構成の概略を示す構成図であり、図2は実施形態のハイブリッド自動車10が搭載するエンジン20の構成の概略を示す構成図である。
ハイブリッド自動車10は、図1に示すように、燃料を燃焼した燃焼エネルギを運動エネルギに変換するエンジン20と、エンジンシステム全体をコントロールするエンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)50と、エンジン20の出力軸としてのクランクシャフト27に接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1,MG2と、モータMG1,MG2の発電及び駆動を制御するモータ用電子制御ユニット(モータECU)14と、モータMG1,MG2と電力のやりとりを行うバッテリ45と、バッテリ45の充電状態を監視するバッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)46と、動力分配統合機構30に接続された軸にチェーンベルト15を介して接続された駆動軸17と、ハイブリッドシステム全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット(ハイブリッドECU)70とを備える。なお、駆動軸17はデファレンシャルギヤ18を介して駆動輪19,19に接続されている。また、ハイブリッド自動車10は、図2に示すように、更にエンジン20の下流側に、排ガスを浄化する触媒コンバータ60、触媒コンバータ60に充填された排ガス浄化触媒61の触媒床温Tcatを検出する触媒床温センサ63などを備える。
エンジン20は、例えばガソリンなどの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されており、エアクリーナ21により清浄された空気をスロットルバルブ22を介して吸入すると共にインジェクタ23(燃料噴射手段)からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ24を介して燃焼室に吸入し、点火プラグ25による電気火花によって爆発燃焼させた燃焼エネルギにより押し下げられるピストン26の往復運動をクランクシャフト27が回転する運動エネルギに変換する。このクランクシャフト27には10°CAごとにパルスを出力するクランク角センサ67が取り付けられている。スロットルバルブ22は、吸気管の断面に対する傾斜角度(開度)が変化することにより吸気管を通過する空気量を調節するバルブであり、スロットルモータ22aにより電気的に開度が変化するように構成されている。このスロットルバルブ22の開度は、スロットルポジションセンサ22bからエンジンECU50へ出力される。エンジン20からの排ガスは、排気管64を通って、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)等の有害成分を浄化する触媒コンバータ60を介して車外へ排出される。排気管64には、ここを通過する排ガスの温度を検出する排ガス温度センサ65が取り付けられている。
触媒コンバータ60は、排気管64に接続され排ガス浄化触媒61が充填されたものであり、触媒床温センサ63により触媒床温Tcatが検出される。触媒床温センサ63としては、最高温度が1000℃近くにもなる排ガスの温度を検出するため、NTC特性のサーミスタが採用される。排ガス浄化触媒61として用いられる三元触媒は、白金(Pt)やパラジウム(Pd)などの酸化触媒と、ロジウム(Rh)などの還元触媒と、セリア(CeO2)などの助触媒などで構成される。そして、酸化触媒の作用により排ガスに含まれるCOやHCが水(H2O)や二酸化炭素(CO2)に浄化され、還元触媒の作用により排ガスに含まれるNOxが窒素(N2)や酸素(O2)などに浄化される。この三元触媒では、混合気の空燃比が理論空燃比近傍のいわゆるウインドウ領域のときに還元触媒によるNOxの吸着・分解反応とその際に生成する酸化成分によるHC,COの酸化反応とがバランスよく進み、HC、CO、NOxのすべてに対して高い浄化率を示す。ここで、CeO2は、セリウム(Ce)の価数が3価と4価との間で可逆的に変化する性質を持つため、排ガスがリーン雰囲気のときには3価から4価に変化して排ガスから酸素を吸蔵し、排ガスがリッチ雰囲気のときには4価から3価に変化して排ガスへ酸素を放出する。これにより、酸化触媒や還元触媒の近傍の雰囲気が大きく変動することがないので、結果的にウインドウ領域が拡がる。なお、排ガス浄化触媒61は、高温(例えば750℃以上)でリーン雰囲気に晒されると浄化機能が低下することはよく知られているが、これは酸化触媒や還元触媒が粒成長して表面積が低下することが一因と考えられる。
エンジンECU50は、CPU52を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶したROM54と、一時的にデータを記憶するRAM56と、入出力ポート(図示せず)とを備える。このエンジンECU50は、エンジン20の状態を検出する種々のセンサからの信号が入力ポートを介して入力されている。具体的には、エンジンECU50には、エンジン20の吸入空気量を検出するエアフローメータ28からの吸入空気量、スロットルポジションセンサ22bからのスロットル開度、触媒床温センサ63からの触媒床温Tcat、排ガス温度センサ65からの排ガス温度、クランク角センサ67からのパルス信号などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU50からは、エンジン20を駆動するための種々の制御信号が図示しない出力ポートを介して出力されている。具体的には、エンジンECU50からは、スロットルモータ22aへの駆動信号、インジェクタ23への駆動信号、点火プラグ25の着火を行うイグナイタと一体化されたイグニションコイル29への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、エンジンECU50は、ハイブリッドECU70と電気的に接続され、ハイブリッドECU70からの制御信号によりエンジン20を運転制御すると共に必要に応じてエンジン20の運転状態に関するデータをハイブリッドECU70に出力する。このエンジンECU50が本発明の触媒劣化抑制制御手段及び停止再始動制御手段に相当する。
動力分配統合機構30は、モータMG1に接続されたサンギヤ31、モータMG2に接続されたリングギヤ32、サンギヤ31及びリングギヤ32と噛合する複数のピニオンギヤ33及びエンジン20のクランクシャフト27に接続されピニオンギヤ33を自転且つ公転自在に保持するキャリア34を回転要素として差動作用を行う遊星歯車機構として構成されている。この動力分配統合機構30は、モータMG1が発電機として機能するときにはエンジン20からの動力をモータMG1側と駆動軸側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG2が電動機として機能するときにはエンジン20からの動力とモータMG2からの動力を統合して駆動軸に出力する。
モータMG1及びモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ45と電力のやりとりを行う。インバータ41,42とバッテリ45とを接続する電力ライン58は、各インバータ41,42が共用する正極母線及び負極母線として構成されており、モータMG1,MG2の一方で発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。また、バッテリ45は、モータMG1,MG2から生じた電力により充電されたりモータMG1,MG2に不足する電力を供給したりする。モータMG1,MG2は、共にモータECU14により運転制御されている。モータECU14は、モータMG1,MG2を運転制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2のロータの回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流等が入力されており、モータECU14からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU14は、回転位置検出センサ43,44から入力した信号に基づいて図示しない回転数算出ルーチンによりモータMG1,MG2のロータの回転数Nm1,Nm2を計算している。この回転数Nm1,Nm2は、モータMG1がサンギヤ31に接続されていると共にモータMG2がリングギヤ32に接続されていることから、サンギヤ軸31aの回転数Nsやリングギヤ軸32aの回転数Nrと一致する。モータECU14は、ハイブリッドECU70と通信しており、ハイブリッドECU70からの制御信号によってモータMG1,MG2を運転制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッドECU70に出力する。
バッテリ45は、ここではニッケル水素バッテリを採用しており、モータMG1,MG2へ電力を供給したり減速時にモータMG1,MG2からの回生エネルギを電力として蓄えたりする役割を果たす。バッテリECU46には、バッテリ45を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ45の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧、バッテリ45の出力端子に接続された電力ラインに取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流、バッテリ45に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度などが入力されており、必要に応じてバッテリ45の状態に関するデータを通信によりハイブリッドECU70に出力する。なお、バッテリECU46では、バッテリ45を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値や電圧センサにより検出された端子間電圧に基づいて残容量(SOC)も演算している。
ハイブリッドECU70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶したROM74と、一時的にデータを記憶するRAM76と、入出力ポート(図示せず)とを備える。ハイブリッドECU70には、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッドECU70は、エンジンECU50やモータECU14と各種制御信号やデータのやりとりを行っている。なお、図示しない電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいてバッテリ45の残容量(SOC)も演算している。
こうして構成されたハイブリッド自動車10は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン20とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン20とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン20から出力されるようにエンジン20を運転制御すると共にエンジン20から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1及びモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ45の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン20から出力されるようにエンジン20を運転制御すると共にバッテリ45の充放電を伴ってエンジン20から出力される動力の全部又はその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1及びモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン20の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
次に、ハイブリッド自動車10の動作、特に高速走行中に運転者がアクセルペダル83の踏み込み量をゼロにしたときに実行される燃料カット関連制御ルーチンについて説明する。図3は、ハイブリッドECU70によって実行される燃料カット関連制御ルーチンのフローチャートである。このルーチンは、ROM74に記録され、所定タイミングごと(例えば数msecごと)に繰り返し実行される。
この燃料カット関連制御ルーチンが開始されると、ハイブリッドECU70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサからのアクセル開度Accや車速センサからの車速V、モータMG2の回転数Nm2、バッテリ45の入力制限値WIN、スロットルポジションセンサ22bからのスロットル開度TA、触媒床温センサからの触媒床温Tcatなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG2の回転数Nm2は、回転位置検出センサ44により検出されるモータMG2の回転子の回転位置に基づいて計算されたものをモータECU14から通信により入力するものとした。また、バッテリ45の入力制限値WINは、温度センサにより検出されたバッテリ45の電池温度とバッテリ45の残容量とに基づいて設定されたものをバッテリECU46から通信により入力するものとした。ここで、バッテリ45の入力制限値WINは、電池温度に基づいて基本入力制限値を設定し、バッテリ45の残容量に基づいて補正係数を設定したあと、基本入力制限値に補正係数を乗じて得られる値である。本実施形態では、外部に対して仕事をする場合を正の数で表すものとする。このため、入力制限値WINは負の数で表され、数値が大きいほど(つまり絶対値が小さいほど)満充電に近いことを意味する。更に、スロットル開度TAは、スロットルポジションセンサ22bにより検出されたものをエンジンECU50から通信により入力するものとし、触媒床温Tcatは、触媒床温センサ63により検出されたものをエンジンECU50から通信により入力するものとした。
こうしてデータを入力したあと、燃料カットフラグF1が「1」か否かを判定する(ステップS102)。この燃料カットフラグF1は、後述する所定の燃料カット条件(FC(Fuel Cut)条件ともいう)が既に成立していて燃料噴射をカットしているときに「1」にセットされるフラグである。この燃料カットフラグF1が「1」でなく「0」のときには、続いて所定の燃料カット条件が成立しているか否かを判定する(ステップS104)。ここで、所定の燃料カット条件とは、アクセル開度Accがゼロで車速Vが予め定めた高速域に入るという条件である。そして、ステップS104で燃料カット条件が不成立のときには、吸入空気量から目標空燃比に基づいて算出した噴射量に各種補正を行ったあとの補正後の噴射量の燃料をインジェクタ23から噴射するという通常の燃料噴射制御の実行指令をエンジンECU50へ出力し(ステップS130)、本ルーチンを終了する。
一方、ステップS104で燃料カット条件が成立していたときには、続いて触媒床温Tcatが予め定められた触媒劣化高温域に入るか否かを判定する(ステップS106)。ここで、触媒劣化高温域とは、排ガス浄化触媒61をリーン雰囲気下に晒したときに触媒の比表面積が低下する等の触媒劣化が進行しやすい温度域であり、予め実験などにより経験的に設定された温度域である。このステップS106で触媒床温Tcatが触媒劣化高温域に入っていないときには、燃料カットフラグF1に「1」をセットし(ステップS108)、燃料カット制御の実行指令をエンジンECU50に出力し(ステップS110)、本ルーチンを終了する。
燃料カット制御では、インジェクタ23からの燃料がカットされるためエンジン20は空転する。このとき、エンジン20の圧縮行程気筒におけるガス圧縮力等によりエンジンブレーキが発生するため、ハイブリッド自動車10には減速感が生じる。また、排ガス浄化触媒61はリーン雰囲気のガスに晒されることになるが、触媒床温Tcatが触媒劣化高温域に達していないため触媒劣化は進行しにくい。
一方、ステップS106で触媒床温Tcatが触媒劣化高温域に入るときには、バッテリ45の入力制限値WINが予め定められた仮限界量WIN0を越えたか否かを判定し(ステップS114)、仮限界量WIN0を越えていないときにはROM74に記憶された第1OT増量マップからOT増量値(≧1)を読み出し(ステップS116)、エンジンECU50へそのOT増量値と共に触媒劣化抑制制御の実行指令を出力し(ステップS124)、本ルーチンを終了する。なお、OTとはover temperatureの略で、OT増量とは触媒の過熱を防止するための燃料増量を意味する。本実施形態では、エンジンECU50は燃料噴射量にOT増量値を乗じて補正した補正後の燃料噴射量をインジェクタ23から噴射されるよう制御する。一方、ステップS114でバッテリ45の入力制限値WINが仮限界量WIN0を越えていたときには、続いて入力制限値WINが限界量WIN1を越えているか否かを判定する(ステップS118)。そして、入力制限値WINが限界量WIN1を越えていないときには、ROM74に記憶された第2OT増量マップからOT増量値(≧1)を読み出し(ステップS122)、エンジンECU50へそのOT増量値と共に触媒劣化抑制制御の実行指令を出力し(ステップS124)、本ルーチンを終了する。
図4はOT増量マップの一例を示すグラフであり、エンジン回転数Neと吸入空気量から算出される体積効率KLとからマップ値としてのOT増量値を読み出すことができる。図4(a)に示す第1OT増量マップと図4(b)に示す第2OT増量マップとを比較すると、いずれのマップもエンジン回転数Ne及び体積効率KLが高いほどOT増量値は大きな値をとるが、OT増量値が大きな値へと切り替わるタイミングをみると第2OT増量マップの方が第1OT増量マップよりもエンジン回転数Ne及び体積効率KLの低い値となっている。
触媒劣化抑制制御では、エンジンECU50は燃料カットを実行せずスロットル開度TAをエンジン回転数Neに見合ったものよりも小さいが失火しない程度の値に設定して徐々にエンジン回転数Neを低減させ最終的にはアイドル回転数に至るように制御する。このとき、燃料カット制御とは異なりエンジンブレーキが発生しないため、ハイブリッドECU70はこのエンジンブレーキの制動力に見合った制動トルクがモータMG2から出力されるようにトルク指令Tm2*を設定しモータECU14へ送信する。トルク指令Tm2*を受信したモータECU14は、モータMG2からトルク指令Tm2*に相当するトルクが出力されるようインバータ42のスイッチング素子を制御する。これにより、燃料カット制御時と同等の減速感が生じる。また、制動に伴ってモータMG2で生じる発電エネルギがバッテリ45に蓄えられる。このときバッテリ45は入力制限値WINが限界量WIN1に達していないためモータMG2の発電エネルギを蓄えることができる。なお、このとき、エンジン20は自立運転をするため、モータMG1のトルク指令Tm1*はゼロトルクに設定される。
また、入力制限値WINが仮限界量WIN0未満のときの触媒劣化抑制制御では、燃料噴射量は第1OT増量マップのマップ値に応じて増量されるため、燃焼時に過剰な燃料が高温下で分解した時に生じる吸熱作用により排ガス温度が低下して排ガス浄化触媒61が過熱するのを防止することができる。一方、入力制限値WINが仮限界量WIN0を越えるが限界量WIN1未満のときの触媒劣化抑制制御では、燃料噴射量は第2OT増量マップのマップ値に応じて増量されるが、エンジン回転数Ne及び体積効率KLが同じであっても第2OT増量マップのマップ値の方が第1OT増量マップのマップ値よりも大きい傾向にあるため、燃焼時に過剰な燃料が高温下で分解した時に生じる吸熱作用が大きくなり排ガス温度が一層低下しやすい。したがって、排ガス浄化触媒61を効果的に冷却することができる。
限界量WIN1は、燃料カット制御時のエンジンブレーキの制動力相当分をモータMG2の制動トルクで賄ったときにモータMG2で発生する発電エネルギをバッテリ45が蓄えることのできる入力制限値WINの限界点であり、予め実験などにより経験的に求められた値である。このため、バッテリ45の入力制限値WINが限界量WIN1を越えると、燃料カット制御時のエンジンブレーキの制動力相当分をモータMG2の制動トルクで賄ったときにモータMG2で発生する発電エネルギを蓄えることができない。一方、仮限界量WIN0は、限界量WIN1よりも余裕のある値に設定されている。本実施形態では、単位時間あたりの入力制限値WINの最大変化量WIN2を求め、第1OT増量マップに基づくマップ値を使用する触媒劣化抑制制御実行時の目標触媒床温Tcat0から第2OT増量マップに切り替えて該マップに基づくマップ値を使用することにより劣化抑制禁止時の目標触媒床温Tcat1に至るまでの最小時間Tを求め(図5(c)参照)、限界量WIN1に最大変化量WIN2と最小時間Tとを乗じた値を加算したものを仮限界量WIN0とする。つまり、WIN0=WIN1+WIN2×Tという式からWIN0を求めている。なお、劣化抑制禁止時の目標触媒床温Tcat1は触媒劣化高温域の加減温度と同じ値としてもよいし、それより若干高めの値としてもよい。
さて、ステップS118でバッテリ45の入力制限値WINが限界量WIN1を越えたときには、触媒劣化抑制制御を実行するとエンジンブレーキの制動力相当分をモータMG2で賄うときに生じる発電エネルギをバッテリ45に蓄えることができないため、触媒劣化抑制制御は禁止され、代わりに燃料カットフラグF1を「1」にセットし(ステップS108)、燃料カット制御の実行指令をエンジンECUに出力し(ステップS110)、本ルーチンを終了する。
ここでの燃料カット制御も、先ほどと同様、インジェクタ23からの燃料がカットされるためエンジン20は空転する。このとき、エンジン20の圧縮行程気筒におけるガス圧縮力等によりエンジンブレーキが発生するため、ハイブリッド自動車10には減速感が生じる。また、排ガス浄化触媒61はリーン雰囲気のガスに晒されることになるが、バッテリ45の入力制限値WINが限界量WIN1に達する前に第2OT増量マップのマップ値に基づいて燃料噴射量を増量して排ガス浄化触媒61を冷却し、触媒床温Tcatが劣化抑制禁止時の目標触媒床温Tcat1まで下がっているため、触媒劣化は進行しにくい。
ステップS102で燃料カットフラグF1が「1」のときつまり燃料カット制御を実行中のときには、所定の燃料カット終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS126)。ここで、所定の燃料カット終了条件とは、例えばアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accがゼロを
越えたときとか、エンジン回転数Neが予め定めた復帰回転数未満となったときなどである。そして、ステップS126で燃料カット終了条件が不成立のときには、再び燃料カット制御の実行指令をエンジンECU50に出力し(ステップS110)、本ルーチンを終了する。一方、ステップS126で燃料カット終了条件が成立したときには、燃料カットフラグF1をゼロにリセットし(ステップS128)、通常の燃料噴射制御の実行指令をエンジンECU50に出力し(ステップS130)、本ルーチンを終了する。
次に、燃料カット関連制御ルーチンを図5のタイムチャートに基づいて説明する。図5(a)はバッテリ45の入力制限値WINのタイムチャート、(b)はOT増量値のタイムチャート、(c)は触媒床温Tcatのタイムチャートである。所定の燃料カット条件が成立している場合において、触媒床温Tcatが触媒劣化高温域に入っているときには、入力制限値WINが仮限界量WIN0よりも小さければ(領域P)、触媒劣化抑制制御を実行する。このとき、燃料噴射量を第1OT増量マップのマップ値に応じて増量して排ガス温度を低くして触媒床温Tcatが劣化抑制実行時の目標床温Tcat0になるようにする。その後、入力制限値WINが上昇して仮限界量WIN0を越えたとき(領域Q)、触媒劣化抑制制御を続行する。このとき、燃料噴射量を第1OT増量マップのマップ値よりも大きくなる傾向にある第2OT増量マップのマップ値に応じて増量して排ガス温度を一段と低くして触媒床温Tcatが劣化抑制禁止時の目標床温Tcat1になるようにする。その後入力制限値WINが上昇して限界量WIN1に達したとき(領域R)、触媒劣化抑制制御を禁止して燃料カットを実行する。このとき、触媒床温Tcatは劣化抑制禁止時の目標床温Tcat1に下がっているため、触媒劣化は進行しにくい。
以上詳述したように、本実施形態では、所定の燃料カット条件成立時に触媒床温Tcatが触媒劣化高温域に入らないときには、燃料カットを実行してエンジンブレーキによる制動力を駆動軸17に出力する。一方、燃料カット条件成立時に触媒床温Tcatが触媒劣化高温域に入るときには、燃料カットを実行せず触媒劣化抑制制御を実行してエンジンブレーキによる制動力相当分をモータMG2により駆動軸17に出力し該モータMG2による発電エネルギをバッテリ45へ蓄えるか、あるいは、燃料カットを実行してエンジンブレーキによる制動力を駆動軸17に出力するかをバッテリ45の入力制限値WINに基づいて決定する。したがって、触媒劣化抑制制御を実行したときのモータMG2の発電エネルギをバッテリ45に蓄えることができないときには、特別な制御を実行するのではなく燃料カットを実行してエンジンブレーキによる制動力を利用するため、制御負担を軽くすることができる。
また、触媒床温Tcatが触媒劣化高温域に入っているときに燃料カットを実行すると排ガス浄化触媒61が劣化しやすいが、ここでは燃料カットを実行する前にOT増量による排ガス浄化触媒61の低温化処理を実行するため燃料カットを実行したとしても排ガス浄化触媒が劣化しにくい。このとき、低温化処理として、バッテリ45の入力制限値WINが仮限界量WIN0に達したあとOT増量を仮限界量WIN0に達する前よりも多くするため、排ガス温度が低下しやすく触媒床温Tcatを効果的に低温化することができる。具体的には、入力制限値WINが仮限界量WIN0に達する前でも燃料噴射量を増量(第1OT増量)するため排ガス温度が低下して触媒床温Tcatを低温化することができ、また、入力制限値WINが仮限界量WIN0に達したあとは燃料噴射量をより多く増量(第2OT増量)するため排ガス温度がより低下して排ガス浄化触媒を早期に低温化することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態の燃料カット関連制御ルーチンの一部を図6に示すように変形してもよい。図6のフローチャートは、図3のフローチャートにステップS117,S123を追加したものである。このため、このステップS117,S123を中心に説明する。ステップS114で入力制限値WINが仮限界量WIN0を越えないときには、第1OT増量マップからOT増量値を読み出し(ステップS116)、その後第1スロットル開度マップからスロットル開度を読み出し(ステップS117)、OT増量値とスロットル開度と共にエンジンECU50へ触媒劣化抑制制御の実行指令を出力し(ステップS124)、本ルーチンを終了する。また、ステップS114,S116で入力制限値WINが仮限界量WIN0を越えるが限界量WIN1を越えないときには、第2OT増量マップからOT増量値を読み出し(ステップS122)、その後第2スロットル開度マップからスロットル開度を読み出し(ステップS123)、OT増量値とスロットル開度と共にエンジンECU50へ触媒劣化抑制制御の実行指令を出力し(ステップS124)、本ルーチンを終了する。図7はスロットル開度マップの一例であり、図7(a)は第1スロットル開度マップ、図7(b)は第2スロットル開度マップである。このマップにおけるマップ値TA11〜TAnn,Ta11〜Tannはスロットル開度を表す。いずれのマップも、エンジン回転数Neとエンジントルク指令Teとからマップ値としてのスロットル開度を求めることができ、また、エンジン回転数Ne及びエンジントルク指令Teが高いほどスロットル開度TAは大きな値をとる。ステップS116,S122でのOT増量によりトルク偏差が生じてショックの原因になることがあることから、このトルク偏差をキャンセルするように各スロットル開度マップにおいてスロットル開度(エンジン20への吸入空気量)が設定されている。例えば、OT増量時にトルクが増加する領域についてはスロットル開度が通常よりも小さくなるように設定され、OT増量時にトルクが減少する領域についてはスロットル開度が通常よりも大きくなるように設定される。したがって、図6のフローチャートによれば、OT増量補正後の燃料噴射量のトルク偏差がエンジンへの吸入空気量によってキャンセルされるため、そのトルク偏差に起因するショックを低減することができる。
あるいは、上述した実施形態の燃料カット関連制御ルーチンの一部を図8に示すように変形してもよい。図8のフローチャートは、図3のフローチャートのステップS114で肯定判定されステップS118で否定判定されたあと、つまりバッテリ45の入力制限値WINが仮限界量WIN0を越えるが限界量WIN1を越えないときに実行する処理の変形例である。このため、変形した内容を中心に説明する。まず、切替完了フラグF3が「1」か否かを判定する(ステップS140)。切替完了フラグF3は、第1OT増量マップから第2OT増量マップへの切替処理が完了したときに「1」にセットされるフラグである。ステップS140で切替完了フラグF3が「1」でなく「0」のときには、レート処理フラグF4が「1」か否かを判定する(ステップS142)。レート処理フラグF4はOT増量値を第2OT増量マップから読み出したマップ値に徐々に近づける制御を実行中のときに「1」にセットされるフラグである。ステップS142でレート処理フラグF4が「1」でなく「0」のときには、第2OT増量マップからマップ値を読み出し(ステップS144)、Temp増量値に初期値(前回のOT増量値)をセットすると共にレート処理フラグF4に「1」をセットする(ステップS146)。そして、ステップS146のあと又はステップS142でレート処理フラグF4が「1」のときには、Temp増量値に予め定められた微小増量値であるΔrichを加えた値を新たなTemp増量値とする(ステップS148)。そして、その新たなTemp増量値が第2OT増量マップのマップ値を越えるか否かを判定し(ステップS150)、Temp増量値がマップ値を越えないときにはそのTemp増量値をOT増量値とし(ステップS152)、Temp増量値がマップ値を越えるときにはマップ値をOT増量値とすると共にレート処理フラグF4を「0」にリセットし切替完了フラグF3を「1」にセットする(ステップS154)。そして、ステップS152,S154のあと、OT増量値と共にエンジンECU50へ触媒劣化抑制制御の実行指令を出力し(ステップS124)、このルーチンを終了する。一方、ステップS140で切替完了フラグF3が「1」のときには、第2OT増量マップからマップ値を読み出し(ステップS156)、このマップ値をOT増量値とし(ステップS158)、OT増量値と共にエンジンECU50へ触媒劣化抑制制御の実行指令を出力し(ステップS124)、このルーチンを終了する。以上の処理を実行することにより、第1OT増量マップから第2OT増量マップに切り替えるときの急激なトルク変化を抑えることができる。
あるいは、上述した実施形態の燃料カット関連制御ルーチンのステップS114及びステップS116を省略してもよい。すなわち、ステップS106で触媒床温Tcatが触媒劣化高温域に入るときには、バッテリ45の入力制限値WINが限界量WIN1を越えているか否かを判定し(ステップS118)、入力制限値WINが限界量WIN1を越えていないときには、ステップS122に進んで第2OT増量マップからOT増量値(≧1)を読み出し、一方、入力制限値WINが限界量WIN1を超えているときには、ステップS108へ進んで燃料カットフラグF1に「1」をセットするようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、触媒床温を触媒床に設けた触媒床温センサ63を用いて直接検出するものとしたが、触媒床温は排ガスからの入熱と排ガスへの放熱とに応じて変化するため、排ガス浄化触媒61の入口温度と出口温度との差分に基づいて触媒床温を求めてもよいし、各種運転状態を表すパラメータの値と触媒床温との関係を予め実験などにより求めておき、これらの運転状態から間接的に触媒床温を推測するようにしてもよい。
更に、上述した実施形態では、パラレル型とシリアル型とを混成したハイブリッド車に本発明のエンジン電子制御装置を適用した例を説明したが、エンジンとモータとの協調制御を行うハイブリッド車であれば特にこれに限定されず、例えばパラレル型のハイブリッド車に本発明を適用してもよいし、シリーズ型のハイブリッド車に本発明を適用してもよい。
更にまた、上述した実施形態では、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aに出力するものについて説明したが、図9に示すように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪19,19)とは異なる車軸(図9における車輪119,119に接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
そしてまた、上述した実施形態では、エンジン20の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪19,19に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図10に示すように、エンジン20のクランクシャフト27に接続されたインナロータ332と駆動輪19,19に動力を出力する駆動軸に接続されたアウタロータ334とを有し、エンジン20の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機330を備えるものとしてもよい。
[第2実施形態]
第2実施形態では、第1実施形態と同様のハイブリッド自動車10において、制御の一部を異なるようにした以外は第1実施形態と同様である。このため、ここではその制御の異なる点を中心に説明する。また、各構成要素は第1実施形態と同じ符号を用いて説明する。
本実施形態の燃料カット関連制御ルーチンについて図11のフローチャートに基づいて説明する。ハイブリッドECU70のCPU72は、ステップS104で所定の燃料カット条件が成立していないときの処理としてステップS200以降の処理を行う以外は、第1実施形態と同様の処理を実行するため、ここではステップS200以降の処理について説明する。ハイブリッドECU70のCPU72は、ステップS104で所定の燃料カット条件が不成立のときには、触媒床温Tcatが上述した触媒劣化高温域に入るか否かを判定し(ステップS200)、触媒床温Tcatが触媒劣化高温域に入っていないときには、通常の燃料噴射制御の実行指令をエンジンECU50へ出力し(ステップS130)、本ルーチンを終了する。一方、触媒床温Tcatが触媒劣化高温域に入っているときには、触媒劣化抑制制御の実行指令をエンジンECU50へ出力できる状況にあるか否か、換言すればエンジン20の自立運転を許可するか禁止するかの予告を行う(ステップS202)。
すなわち、もし現時点で燃料カット条件が成立して燃料カットを実行したとすると、触媒床温Tcatが触媒劣化高温域に入っているため排ガス浄化触媒が高温下でリーン雰囲気に晒されて劣化しやすくなることから、燃料カット制御の実行指令をエンジンECU50に出力せずエンジン20の自立運転(アイドル運転)を実行しつつエンジンブレーキの制動力相当分をモータMG2の制動トルクで賄う触媒劣化抑制制御の実行指令をエンジンECU50へ出力することになる。この触媒劣化抑制制御ではモータMG2で発生する発電エネルギをバッテリ45に蓄える必要があるため、バッテリ45の入力制限値WINがしきい値Wrefを超えていないときには触媒劣化抑制制御の実行指令を出力できるが、しきい値Wrefを超えているときにはバッテリ45に発電エネルギを蓄えられないため触媒劣化抑制制御の実行指令が出力できない。ここで、しきい値Wrefは、燃料カット制御時のエンジンブレーキの制動力相当分をモータMG2の制動トルクで賄ったときにモータMG2で発生する発電エネルギをバッテリ45が蓄えることのできる入力制限値WINの限界点であり、予め実験などにより経験的に求められた値である。この値は、第1実施形態の限界量WIN1と同じ値にしてもよいが異なる値にしてもよい。このような事情から、ステップS202では、バッテリ45の入力制限値WINがしきい値Wrefを超えていないときにはエンジン20の自立運転許可を予告し、入力制限値WINがしきい値Wrefを超えているときにはエンジン20の自立運転禁止を予告する。
続いて、ステップS202での予告内容がエンジン20の自立運転許可か自立運転禁止かを判定し(ステップS204)、予告内容が自立運転禁止のときには燃料噴射量の増量制御の実行指令をエンジンECU50に出力し(ステップS206)、本ルーチンを終了する。一方、予告内容が自立運転許可のときには、通常の燃料噴射制御の実行指令をエンジンECU50に出力し(ステップS130)、本ルーチンを終了する。ここで、燃料カット条件不成立時に触媒床温Tcatが触媒劣化高温域に入る場合には常に排ガス浄化触媒61を低温にするための燃料噴射量の増量制御を行うことも考えられるが、本実施形態では自立運転禁止が予告されている場合に限って該増量制御を行うのである。
以上詳述したように、本実施形態によれば、燃料カット条件不成立時に触媒床温Tcatが触媒劣化高温域に入る場合に常に燃料噴射量の増量制御を行う場合に比べて、該増量制御を実行する頻度を低くすることができるため燃費が向上する。また、燃料カット条件の成立前に触媒床温Tcatが触媒劣化高温域に入り且つエンジン20の自立運転禁止が予告されているときには、燃料噴射量の増量制御を実行して排ガス浄化触媒61の温度が低くなるようにするため、排ガス浄化触媒61が劣化するのを防止できる。一方、燃料カット条件の成立前に触媒床温Tcatが触媒劣化高温域に入り且つエンジン20の自立運転許可が予告されているときには、燃料噴射量の増量制御を実行しないが、その後燃料カット条件が成立したときには燃料カットを実行せずにエンジン20を自立運転しつつエンジンブレーキ相当分をモータMG2で賄うことにより排ガス浄化触媒61の劣化を防止しつつエンジンブレーキの減速感を付与することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、燃料カット条件不成立時に触媒床温Tcatが触媒劣化高温域に入っていないとき(ステップS200でNO)や燃料カット条件不成立時に触媒劣化高温域に入るが予告内容が自立運転許可のとき(ステップS204で許可)には、通常の燃料噴射制御の実行指令をエンジンECU50に出力するとしたが、ステップS206の燃料噴射量の増量制御よりも増量幅の小さい制御を実行する指令をエンジンECU50に出力してもよい。このとき、触媒床温Tcatが高いほど増量幅が大きくなるように増力幅を決定し(但しステップS204の増量幅よりは小さい)、その増量幅の増量制御を実行するようエンジンECU50に出力してもよい。
また、ステップS202の自立運転許否予告及びステップS204の予告内容の判定に代えて、バッテリ45の入力制限値WINがしきい値Wrefを超えるか否かの判定を行い、入力制限値WINがしきい値Wrefを超えるときには実質的に自立運転禁止と同じであるためステップS206に進み、入力制限値WINがしきい値Wrefを超えないときには実質的に自立運転許可と同じであるためステップS130に進むようにしてもよい。
更に、ハイブリッドECU70が燃料噴射量の増量制御の実行指令や通常噴射制御の実行指令をエンジンECU50に出力するものとして説明したが、ハイブリッドECU70とエンジンECU50にどの制御を負担させるかは適宜決定すればよい。例えば、エンジンECU50が燃料カット条件の成立・不成立や触媒床温Tcatが触媒劣化高温域に入るか否かを判定し、燃料カット条件が成立し且つ触媒床温Tcatが触媒劣化高温域に入るときにはエンジン20の自立運転の許可要求をハイブリッドECU70に出力し、ハイブリッドECU70から自立運転が許可されたときにはエンジン20の自立運転を行い、ハイブリッドECU70から自立運転が禁止されたときには燃料カットを行うようにしてもよい。この場合、ハイブリッドECU70は、エンジンECU50から自立運転の許可要求があったときには、バッテリ45の入力制限値WINに基づいて自立運転を許可するか禁止するかを決定しその結果をエンジンECU50へ出力する。また、エンジンECU50は、燃料カット条件が成立せず且つ触媒床温Tcatが触媒劣化高温域に入るときには、ハイブリッドECU70から自立運転許可と自立運転禁止のいずれが予告されているか否かを判定し、自立運転許可が予告されているときにはエンジン20の燃料噴射量の増量制御を行わず、自立運転禁止が予告されているときにはエンジン20の燃料噴射量の増量制御を行うようにしてもよい。この場合、ハイブリッドECU70は、エンジンECU50から自立運転の許可要求がないときでも、バッテリ45の入力制限値WINに基づいて現時点で自立運転の許可要求があったとしたらエンジン20の自立運転を許可するか禁止するかの予告をエンジンECU50へ出力する。
更にまた、第2実施形態においても、本明細書の段落0054から段落0060に記載した第1実施形態の変形例を採用してもよい。
10…ハイブリッド車両、14…モータECU、15…チェーンベルト、17…駆動軸、18…デファレンシャルギヤ、19…駆動輪、20…エンジン、21…エアクリーナ、22…スロットルバルブ、22a…スロットルモータ、22b…スロットルポジションセンサ、23…インジェクタ、24…吸気バルブ、25…点火プラグ、26…ピストン、27…クランクシャフト、28…エアフローメータ、29…イグニションコイル、30…動力分配統合機構、31…サンギヤ、31a…サンギヤ軸、32…リングギヤ、32a…リングギヤ軸、33…ピニオンギヤ、34…キャリア、41,42…インバータ、43,44…回転位置検出センサ、45…バッテリ、46…バッテリECU、50…エンジンECU、52…CPU、54…ROM、56…RAM、58…電力ライン、60…触媒コンバータ、61…排ガス浄化触媒、63…触媒床温センサ、64…排気管、65…排ガス温度センサ、67…クランク角センサ、70…ハイブリッドECU、72…CPU、74…ROM、76…RAM、81…シフトレバー、82…シフトポジションセンサ、83…アクセルペダル、84…アクセルペダルポジションセンサ、85…ブレーキペダル、86…ブレーキペダルポジションセンサ、88…車速センサ、MG1…モータ、MG2…モータ。