JP4085450B2 - 非水系電解液二次電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低温特性、長期安定性、サイクル特性に優れた高エネルギー密度の非水系電解液二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電気製品の軽量化、小型化にともない、高いエネルギー密度を持つリチウム二次電池が注目されている。また、リチウム二次電池の適用分野の拡大に伴い電池特性の改善も要望されている。
このようなリチウム二次電池の電解液の溶媒としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン等のカーボネート類またはエステル類の非水系有機溶媒が用いられてきた。
【0003】
これらのなかでもプロピレンカーボネートは高誘電率溶媒であり、リチウム塩系溶質(電解質)をよく溶かし、低温下においても高い電気伝導率を示すことから電解液の主溶媒として優れた性能を持つものである。
しかしながら、黒鉛系の種々の電極材を単独で、あるいは、リチウムを吸蔵・放出可能な他の負極材と混合して負極として使用する場合、プロピレンカーボネートが黒鉛電極表面で激しく分解するために、一般に黒鉛電極へのスムーズなリチウムの吸蔵・放出が不可能なことが知られている(7th International Symposium on Li Batteries,P259,1995年)。
【0004】
現在エチレンカーボネートがこのような分解が少なく、黒鉛系負極を用いた非水系電解液二次電池の電解液の溶媒として多用されているが、エチレンカーボネートはプロピレンカーボネートに比べ、凝固点が36.4℃と高いためにジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、ジメトキシエタン、ジオキソラン等の低粘度溶媒と混合して用いられる(「機能材料」、第15巻、4月号、第48頁、1995年)。しかし、低温下では、電解液の固化並びに低い導電率が問題にされることも多く、黒鉛系負極材を含む負極においてもプロピレンカーボネートを主溶媒として用いることが期待されている。また、エチレンカーボネート系で混合溶媒として用いられている低粘度溶媒は沸点も低い場合が多いため、一般的に大量に添加した場合に電池内の蒸気圧が高くなり、溶媒の漏洩が安全性の面で不安を残している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記問題点を鑑みてなされたものであり、黒鉛系負極を用いた非水系電解液二次電池の電解液の主溶媒としてプロピレンカーボネートを使用し、低温特性、長期安定性、サイクル特性の優れた高エネルギー密度の非水系電解液二次電池を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明はリチウムを吸蔵・放出することが可能な負極材として少なくともその一構成成分として黒鉛を含む負極及び正極と、負極集電体及び正極集電体と、溶質及び有機系溶媒とからなる非水系電解液と、セパレータ及び外缶とを備えた非水系電解液二次電池において、前記有機系溶媒はプロピレンカーボネートとエチレンサルファイトを含むものであり、有機系溶媒中のプロピレンカーボネートの含有量が40〜99.95vol%、かつエチレンサルファイトの含有量が0.05〜10vol%であり、正極集電体及び正極側外缶の非水系電解液との接液部分の材質に弁金属またはその合金を用いることを特徴とする非水系電解液二次電池を提供するものである。
【0007】
【作用】
プロピレンカーボネート40〜99.95vol%とエチレンサルファイト0.05〜10vol%を含有する混合溶媒を使用することにより、黒鉛系電極上にかなりの安定な保護被膜がリチウムの吸蔵に先立って生成し、電解液の分解を最小限に抑え、黒鉛系電極へのスムーズなリチウムの吸蔵・放出が可能となる。さらに弁金属はその表面が酸化被膜で覆われているため正極集電体や正極側外缶での電解液との接液部分でのエチレンサルファイトの酸化分解反応を防止することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の非水系電解液二次電池はリチウムを吸蔵・放出することが可能な負極材として少なくともその一構成成分として黒鉛を含む負極及び正極と、負極集電体と正極集電体と、溶質及び有機系溶媒とからなる非水系電解液と、セパレータ及び外缶とを備えた非水系電解液二次電池において、前記有機系溶媒としてプロピレンカーボネートとエチレンサルファイトを含むこと、有機系溶媒中のプロピレンカーボネートの含有量が40〜99.95vol%、かつエチレンサルファイトの含有量が0.05〜10vol%であること及び正極集電体及び正極側外缶の電解液の溶液部分の材質に弁金属またその合金を用いることを特徴とする。
【0009】
非水電解液:
非水電解液は、溶質と、プロピレンカーボネートとエチレンサルファイトを含有する。非水系電解液の混合溶媒中のプロピレンカーボネートの含有量は40〜99.95vol%であり、エチレンサルファイトのそれは0.05〜10 vol%、好ましくは0.1〜10 vol%の範囲で用いられる。
【0010】
上記混合溶媒には前記プロピレンカーボネートおよびエチレンサルファイト以外の第三の溶媒成分として、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン等の鎖状エーテル類、スルフォラン、ジエチルスルホン等の含硫黄有機溶媒等を混合して使用可能である。これらの溶媒は二種類以上混合して用いても良い。
【0011】
溶質としては、LiClO4 、LiPF6 、LiBF4 から選ばれる無機リチウム塩またはLiCF3 SO3 、LiN(CF3 SO2 2 、LiN(CF3 CF2 SO2 2 、LiN(CF3 SO2 )(C4 9 SO2 )、LiC(CF3 SO2 3 等の含フッ素有機リチウム塩を用いることができる。これらの溶質は二種類以上混合して用いても良い。
電解液中の溶質のリチウム塩のモル濃度は、0.5〜2.0モル/リットルであることが望ましい。0.5モル/リットル以下もしくは2.0モル/リットル以上では、電解液の電気伝導率が低く、電池の性能が低下するため好ましくない。
【0012】
負極:
電池を構成する負極材料としては、好適には種々の原料から得た易黒鉛性ピッチの高温熱処理によって製造された人造黒鉛及び精製天然黒鉛或いはこれらの黒鉛にピッチを含む種々の表面処理を施した材料が主として使用される。これらの黒鉛材料は学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が0.335〜0.34nm、より好ましくは0.335〜0.337nmであるものが好ましい。これら黒鉛材料は、灰分が1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、最も好ましくは0.1重量%以下でかつ学振法によるX線回折で求めた結晶子サイズ(Lc)が30nm以上であることが好ましい。更に結晶子サイズ(Lc)は、50nm以上の方がより好ましく、100nm以上であるものが最も好ましい。また、黒鉛材料のメジアン径は、レーザー回折・散乱法によるメジアン径で、1μm以上100μm以下、好ましくは3μm以上50μm以下、より好ましくは5μm以上40μm以下、更に好ましくは7μm以上30μm以下である。
【0013】
黒鉛材料のBET法比表面積は、0.5m2 /g以上25.0m2 /g以下であり、好ましくは0.7m2 /g以上10.0m2 /g以下、より好ましくは1.0m2 /g以上7.0m2 /g以下、更に好ましくは1.5m2 /g以上5.0m2 /g以下である。また、アルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析において1580〜1620cm-1の範囲にピークPA (ピーク強度IA )および1350〜1370cm-1の範囲にピークPB (ピーク強度IB )の強度比R=IB /IA が0以上0.5以下、1580〜1620cm-1の範囲のピークの半値幅が26cm-1以下、1580〜1620cm-1の範囲のピークの半値幅は25cm-1以下がより好ましい。これらの黒鉛材料にリチウムを吸蔵・放出可能な負極材を混合して用いることもできる。黒鉛以外のリチウムを吸蔵・放出可能な負極材としては、難黒鉛性炭素又は低温焼成炭素等の非黒鉛系炭素材料、酸化錫、酸化珪素等の金属酸化物材料、更にはリチウム金属並びに種々のリチウム合金が例示される。
負極の形状は、必要に応じて結着剤および導電剤とともに混合した後、集電体に塗布したシート電極およびプレス成形を施したペレット電極が使用可能である。
【0014】
負極集電体:
負極集電体の材質は、銅、ニッケル、ステンレス等の金属が使用され、これらの中でも薄膜に加工しやすいという点とコストの点から銅箔が好ましい。
セパレータ:
電池を構成するセパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シートまたは不織布が使用される。
【0015】
正極:
電池を構成する正極材料としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物材料などのリチウムを吸蔵・放出可能な材料が使用可能である。
正極の形状は、必要に応じて結着剤および導電剤とともに混合した後、集電体に塗布したシート電極およびプレス成形を施したペレット電極が使用可能である。
【0016】
正極集電体:
正極集電体の材質は、アルミニウム、チタン、タンタル等の弁金属またはその合金が用いられる。これらの弁金属の中で、特にアルミニウムまたはその合金が軽量であるためエネルギー密度の点で望ましい。弁金属以外の他の金属材料、例えばステンレスを用いた場合には、エチレンサルファイトの酸化分解反応が進行し、サイクル特性が低下するため好ましくない。
【0017】
外缶:
電池の外缶材質は、ステンレスが好適に用いられるが、正極と電気的に接続され、かつ、電解液に接する部分はアルミニウム等の弁金属である必要があり、弁金属で保護する方法としては、メッキや箔で保護する手法が挙げられる。また、外缶材質としてアルミニウムやアルミニウム合金を用いてもよい。なおここで言う外缶とは電池内部に収納されているリード線や電池内部の内圧が上昇したときに作動する安全弁等も含まれる。
【0018】
電池:
電池の形状は、シート電極およびセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極およびセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極およびセパレータを積層したコインタイプ等が使用可能である。
図1にコインタイプの非水系電解液電池の断面図を示す。図中、1は正極、2は負極、3は正極缶、4は封口板、5はセパレータ、6はアルミニウム箔、7はガスケット、8は正極集電体、9は負極集電体である。
非水系電解液は、一般にセパレータに含浸される。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1および2)
正極活物質としてLiCoO2 (85重量部)にカーボンブラック(6重量部)、ポリフッ化ビニリデン(9重量部)を加え混合し、N−メチル−2−ピロリドンで分散し、スラリー状としたものを正極集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔上に均一に塗布し、乾燥後、所定の形状に打ち抜いて正極とした。
【0020】
負極活物質として、X線回折における格子面(002面)のd値が0.336nm、晶子サイズ(Lc)が、100nm以上(264nm)、灰分が0.04重量%、レーザー回折・散乱法によるメジアン径が17μm、BET法比表面積が8.9m2 /g、アルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析において1580〜1620cm-1の範囲のピークPA (ピーク強度IA )および1350〜1370cm-1の範囲のピークPB (ピーク強度IB )の強度比R=IB /IA が0.15、1580〜1620cm-1の範囲のピークの半値幅が22.2cm-1である人造黒鉛粉末KS−44(ティムカル社製、商品名)(94重量部)にポリフッ化ビニリデン(6重量部)を混合し、N−メチル−2−ピロリドンで分散させスラリー状としたものを負極集電体である厚さ18μmの銅箔上に均一に塗布し、乾燥後、所定の形状に打ち抜いて負極とした。
【0021】
電解液については、乾燥アルゴン雰囲気下で、十分に乾燥を行った六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )を溶質として用い、エチレンサルファイト(ES)とプロピレンカーボネート(PC)とを表−1に示す組成で混合した溶液にLiPF6 を1モル/リットルの割合で溶解して調製した。
これらの正極、負極、電解液を用いて、図1に示すようなコイン型非水系電解液電池を、乾燥アルゴン雰囲気下で作成した。
【0022】
以下、図1に基づき説明すると、正極1と負極2とを、それぞれステンレス製の正極缶3と封口板4に収容し、各電解液を含浸させたポリプロピレンの微孔性フィルムからなるセパレータ5を介して積層するが、このとき正極側の接液部分の材質を弁金属とするために、前もって正極缶3の内側をアルミニウム箔6で覆って使用した。続いて、正極缶3と封口板4とをガスケット7を介してかしめ密封して、コイン型電池を作成した。
【0023】
(比較例1)
正極缶の内側をアルミ箔で覆わなかったこと以外は実施例1と同様にしてコイン型電池を作成した。
(比較例2)
プロピレンカーボネートにLiPF6 を1モル/リットルの割合で溶解した電解液を用い、それ以外は実施例1と同様にしてコイン型電池を作成した。
【0024】
(実施例3)
エチレンサルファイトとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート(DEC)の混合物(10:45:45vol%)にLiPF6 を1モル/リットルの割合で溶解した電解液を用いた以外は実施例1と同様にしてコイン型電池を作成した。
これらの実施例1、2、3および比較例1、2の電池を25℃において、0.5mAの定電流で充電終止電圧4.2V、放電終止電圧2.5Vで充放電試験を行った。
それぞれの電池における1サイクル目の負極重量あたりの充電容量と放電容量を表−1に示す。
【0025】
【表1】
Figure 0004085450
【0026】
また、実施例1および比較例1の充放電サイクルにともなう放電容量の変化を図2に示す。
実施例1および比較例1の結果から明らかなように、電解液中にエチレンサルファイトを含有する場合、正極側の接液部分の材質がステンレス等の場合には、エチレンサルファイトの酸化分解反応が進行することによって十分な放電容量を得ることはできないが、正極側の接液部分の材質をアルミニウムにすることによって、エチレンサルファイトの酸化分解が抑制されたことに起因して、放電容量、サイクル特性が著しく改善されている。
さらに実施例1,2および比較例2よりプロピレンカーボネート単独の電解液の場合にはプロピレンカーボネートが負極の炭素材料表面で分解し、放電容量を得ることはできないが、プロピレンカーボネートにエチレンサルファイトを添加することにより放電容量、サイクル特性が著しく改善される。
【0027】
【発明の効果】
非水系電解液二次電池の電解液の有機系溶媒としてプロピレンカーボネートとエチレンサルファイトを選択し、正極集電体及び正極側外缶の電解液との接液部分の材質に弁金属またはその合金を選択することによって、黒鉛系負極を用いた場合でも、プロピレンカーボネートを含む電解液での電解液の分解の問題を抑え、高い容量が得られると共に、サイクル特性、低温特性が優れた電池を作成することができ、非水系電解液二次電池の小型化、高性能化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コイン型電池の構造を示した断面図である。
【図2】本発明の実施例1および比較例1の非水系電解液電池の充放電サイクルと電池容量との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 正極
2 負極
3 正極缶
4 封口板
5 セパレータ
6 アルミニウム箔
7 ガスケット
8 正極集電体
9 負極集電体

Claims (9)

  1. リチウムを吸蔵・放出することが可能な負極材として少なくともその一構成成分として黒鉛を含む負極及び正極と、負極集電体と正極集電体と、溶質及び有機系溶媒とからなる非水系電解液と、セパレータ及び外缶とを備えた非水系電解液二次電池において、前記有機系溶媒はプロピレンカーボネートとエチレンサルファイトを含むものであり、有機系溶媒中のプロピレンカーボネートの含有量が40〜99.95vol%、かつエチレンサルファイトの含有量が0.05〜10vol%であり、正極集電体及び正極側
    外缶の非水系電解液との接液部分の材質が弁金属またはその合金であることを特徴とする非水系電解液二次電池。
  2. 弁金属およびその合金が、アルミニウムおよびアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液二次電池。
  3. 負極材として、黒鉛単独或いは黒鉛とリチウムを吸蔵・放出することが可能な非黒鉛系炭素、リチウムまたはリチウム合金、更には金属酸化物を混合した電極を用いることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液二次電池。
  4. リチウムを吸蔵・放出可能な黒鉛系負極が、X線回折における格子面(002面)のd値が0.335〜0.34nmの炭素材料からなることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液二次電池。
  5. リチウムを吸蔵・放出可能な黒鉛系負極が、X線回折における格子面(002面)のd値が0.335〜0.337nmの炭素材料からなることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液二次電池。
  6. リチウムを吸蔵・放出可能な正極が、リチウム遷移金属複合酸化物材料からなることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液二次電池。
  7. 溶質が、LiClO 、LiPF 、LiBFから選ばれる無機リチウム塩またはLiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSOから選ばれる有機リチウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液二次電池。
  8. 有機系溶媒中のプロピレンカーボネートの含有量が45〜95vol%、かつエチレンンサルファイトの含有量が5〜10vol%であることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液二次電池。
  9. 非水系電解液中の溶質濃度が、0.5〜2.0モル/リットルであることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液二次電池。
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