JP4085310B2 - ダクトおよびその成形方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ダクトおよびその成形方法に関し、更に詳細には、車両搭載のエアコンユニットに連結され、該エアコンユニットへ供給する空気または該エアコンユニットから送出された空気を案内するダクトと、このダクトを好適に成形する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
乗用車における乗員室内には、計器盤や空調操作パネルおよびオーディオ等の各種車載機器等を設置したインストルメントパネル等の車両内装部材が設置されている。ここで図13は、基材70、クッション材72および表皮材74から構成され、乗員室前方に取付けられる3層タイプのインストルメントパネルIPを例示した側断面図であるが、該インストルメントパネルIPの内側には、前記空調操作パネルでの所要操作に基いて運転制御されるエアコンユニットACが搭載されている。このエアコンユニットACは、ブロワ等の送風機BWの作動により給送される車外空気または車内空気を所定温度に加熱または冷却して調温するようになっており、前記送風機BWにより順次圧送される空気により、調温された空気は前記インストルメントパネルIPの所要位置に設けた空気吹出口76等へ向けて送出される。
【0003】
従って前記インストルメントパネルIPの裏側(内側)には、前記送風機BWと前記エアコンユニットACとを連通接続する空気給送用のダクトD1や、該エアコンユニットACと前記空気吹出口76とを連通接続する空気送出用のダクトD2等が設けられている。ここで、前者の空気給送用のダクトD1は、例えば図13〜図15に示すように、主にポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の樹脂素材からインジェクション成形され、送風機BWの空気吹出部からエアコンユニットACの空気導入部に向けて拡開する形状をなすダクト本体10を主体として構成されている。そして、一方の端部に開設された第1空気流通口12が前記送風機BWの空気送出部に連結され、他方の側部に開設された第2空気流通口14が前記エアコンユニットACの空気導入部に連結されるようになっている。
【0004】
一方、後者の空気送出用のダクトD2は、主にポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の樹脂素材からブロー成形またはインジェクション成形され、エアコンユニットACの空気送出部からインストルメントパネルIPの空気吹出口76に向けて適宜屈曲した異形断面形状をなすダクト本体10を主体として構成されている。そして、一方の端部に開設された第1空気流通口12が前記エアコンユニットACの空気送出部に連結され、他方の側部に開設された第2空気流通口14が前記空気吹出口76に連結されるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した空気給送用のダクトD1は、次のような課題を内在していた。すなわちダクトD1を構成するダクト本体10は、前述したように、PEまたはPP材等の比較的硬質な素材からインジェクション成形された部材であるため、前記送風機BWの作動時に発生する騒音を吸収し得ず、該騒音が該ダクトD1の内部で反響してそのまま前記エアコンユニットACへ侵入してしまう。そして、エアコンユニットACに侵入した前記送風機BWの作動騒音は、同じくPEまたはPP材等の比較的硬質な素材からインジェクション成形された前記空気送出用の前記ダクトD2内で更に反響し、最終的には前記空気吹出口76を介して乗員室内へ洩れてしまう。従って、前記送風機BWの作動騒音が乗員室内へ洩れることを防止する対策として、図13および図15に示すように、例えば発泡体シート等の吸音性に優れた吸音シート16を、前記空気給送用のダクトD1の内壁面や前記空気送出用のダクトD2の内壁面に貼着していた。しかしながら、前記吸音シート16の材料費が加算されることや、該吸音シート16の貼着作業を要すること等から、コストが一段と嵩んでしまう不都合が発生していた。しかも、前記各々のダクトD1,D2の内壁面は、曲面および凹凸面から構成される複雑な3次元形状となっていることが多いため、前記吸音シート16の適切な貼着が困難であり、該吸音シート16の貼着が不適切な場合には実施途中で剥離してしまう問題も生じていた。
【0006】
また前述したように、前記空気給送用のダクトD1が、PEまたはPP材等の比較的硬質な素材からインジェクション成形された部材であるため、前記送風機BWとエアコンユニットACとがこのような硬質なダクトD1で連結されると、該送風機BWの作動時に発生する振動が該エアコンユニットACへそのまま伝達されてしまう。このため、前記エアコンユニットACが車体構成部材であるリィンフォースバー78に固定される取付態様の場合には、このリィンフォースバー78に固定されているステアリングコラム等に前記振動が伝達されてしまい、最終的にステアリングに振動が伝達して運転者に不快感を与える不都合もあった。また前記振動は、エアコンユニットACに連結されている前記空気送出用のダクトD2にも伝達されるため、このダクトD2を固定している前記インストルメントパネルIPも振動するようになり、場合によっては不快なビビリ音やきしみ音等が発生する可能性もあった。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、前述した課題を好適に解決するべく提案されたもので、送風機で発生する作動騒音や作動振動を好適に吸収して、これら騒音や振動がエアコンユニットへ伝達されることを防止し得るようにしたダクトと、このダクトを低コストで好適に成形する方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
記課題を解決して、所期の目的を達成するため発明は、車両搭載のエアコンユニットに連結され、該エアコンユニットに対する空気の授受に供されるダクトにおいて、
第1成形型の成形面に吹付けたウレタン材料を硬化させて得られる第1ダクト半体と、
前記第1成形型に型閉め可能な第2成形型の成形面に吹付けたウレタン材料を硬化させて得られる第2ダクト半体と、
適宜の剛性を有する素材から別途予備成形され、前記第1ダクト半体および/または第2ダクト半体に開設される空気流通口の開口端縁に設けられる形状保持部材とからなり、
前記ウレタン材料の硬化に伴う接着力により、前記第1ダクト半体および第2ダクト半体を長手方向へ対応的に接合してダクト本体を形成すると共に、前記形状保持部材を前記ダクト半体に固定して前記空気流通口の形状保持をなし得るよう構成したことを特徴とする。
【0010】
同じく前記課題を解決して、所期の目的を達成するため更に別の発明は、車両搭載のエアコンユニットに連結され、該エアコンユニットに対する空気の授受に供されるダクトを成形するに際し、
相互に型閉め可能な第1成形型の成形面および/または第2成形型の成形面の所要位置に、適宜の剛性を有する素材から別途予備成形された形状保持部材をセットし、
前記第1成形型の成形面にウレタン材料を吹付けることで、ダクト壁部および鍔部を一体的に有する第1ダクト半体を予備成形し、
前記第2成形型の成形面にウレタン材料を吹付けることで、ダクト壁部および鍔部を一体的に有する第2ダクト半体を予備成形し、
前記夫々の成形面に吹付けたウレタン材料のうち少なくとも一方のウレタン材料が完全に硬化する前に、両成形型を相互に型閉めして第1ダクト半体の鍔部および第2ダクト半体の鍔部を対応的に密着させることで、前記ウレタン材料の硬化に伴う接着力により両ダクト半体を長手方向へ対応的に接合してダクト本体を成形すると共に、前記ウレタン材料の硬化に伴う接着力により、前記第1ダクト半体および/または第2ダクト半体に開設される空気流通口の開口端縁に前記形状保持部材を固定するようにしたことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係るダクトおよびその成形方法につき、好適な実施例を挙げ、添付図面を参照しながら以下説明する。
【0012】
本願のダクトは、例えば図13に示したインストルメントパネルIPの内側に配設された前記エアコンユニットACへ車外空気または室内空気を案内するために、前記送風機BWと該エアコンユニットACとに連結される空気給送用のダクトD1や、該エアコンユニットACから送出される調温空気を該インストルメントパネルIPに設けた空気吹出口76等へ案内するために、該エアコンユニットACと空気吹出口76とに連結される空気送出用のダクトD2等を対象とする。そこで実施例では、前記送風機BWと該エアコンユニットACとに連結される空気給送用のダクトD1を例示して説明する。
【0013】
図1は、本発明の好適実施例に係るダクトの概略斜視図であり、図2は、図1に例示したダクトの各構成部材を分離させた状態で示した説明斜視図である。本実施例のダクトD1は、後述すると共に図3〜図9に示すように、例えばウレタンスプレー成形法に基き、ダクト成形型50における第1成形型52および第2成形型56の夫々の成形面54,58に、ウレタン材料Uを吹付けることで成形される。そしてダクトD1は、前記ダクト成形型50における第1成形型52の成形面54および第2成形型56の成形面58に夫々吹付けたウレタン材料Uを硬化させて得られるダクト本体10と、適宜の剛性を有する素材から別途予備成形され、前記ダクト本体10の所要位置に開設される空気流通口12,14の開口端縁に設けられる形状保持部材40,42とから構成されている。
【0014】
前記ダクト本体10は、中空体とされて内部に空気流通空間18が画成されており、このダクト本体10における一方の端部に開設された前記一方の空気流通口(第1空気流通口とする)12が前記送風機BWの空気吹出部に連結される空気流入口として機能し、また該ダクト本体10における他方の側部に開設された前記空気流通口(第2空気流通口とする)14が前記エアコンユニットACの空気導入部に連結される空気流出口として機能する。そして、実施例のダクトD1における前記ダクト本体10は、前記ダクト成形型50における第1成形型52の成形面54に吹付けたウレタン材料Uを硬化させて得られる第1ダクト半体20と、前記第1成形型52に型閉め可能な第2成形型56の成形面58に吹付けたウレタン材料Uを硬化させて得られる第2ダクト半体30とから構成されている。
【0015】
前記第1ダクト半体20は、前記第1成形型52の成形面54の所要領域にウレタン材料Uを吹付けることで、前記空気流通空間18、前記第1空気流通口12の略半分および前記第2空気流通口14を画成するダクト壁部22と、このダクト壁部22の外縁輪郭に沿って該ダクト壁部22に一体成形された鍔部24とからなり、全体の厚みが約2〜5mm程度とされている。また前記第2ダクト半体30は、前記第2成形型56の成形面58の略全面にウレタン材料Uを吹付けることで、前記空気流通空間18、前記第1空気流通口12の略半分を画成するダクト壁部32と、このダクト壁部32の外縁輪郭に沿って該ダクト壁部32に一体成形された鍔部34とからなり、全体の厚みが約2〜5mm程度とされている。そして、これら第1ダクト半体20および第2ダクト半体30は、夫々のダクト半体20,30における各鍔部24/34同士を対応的に接着させることで、長手方向へ対応的に接合されてダクト本体10を形成するようになる。しかも、第1ダクト半体20および第2ダクト半体30は、前記第1成形型52および第2成形型56に吹付けた前記各々のウレタン材料U,Uの硬化に伴う接着力により、長手方向へ対応的に接合されるようになっている。
【0016】
ここで、前記第1ダクト半体20および第2ダクト半体30を成形するための前記ウレタン材料Uは、例えば発泡タイプの中でソフトタイプとされるものが好適に使用される。従って、このような発泡ソフトタイプのウレタン材料Uから発泡成形された第1ダクト半体20および第2ダクト半体30は、発泡ウレタンの物性をそのまま具有するようになるので、軽量で適度の弾力性および柔軟性を有し、断熱性能や防音性能の他に、騒音吸収(吸音)性能や振動吸収(吸振)性能等に優れている。なお前記ウレタン材料Uは、発泡ソフトタイプに限定されるものではなく、例えば無発泡タイプのソフトタイプ等を使用してもよい。
【0017】
前記形状保持部材40,42は、前記第1空気流通口12および第2空気流通口14の開口端縁に密着する枠状成形体であり、各々の空気流通口12,14を囲繞するように装着することで、柔軟性を有している第1ダクト半体20および/または第2ダクト半体30から形成されて形状保持性が低い当該空気流通口12,14の形状保持を図るようになっている。このような形状保持部材40,42は、例えばPEまたはPP等を素材とする合成樹脂製の枠状成形体またはスチール等を素材とする金属製の枠状成形体とされ、前記第1ダクト半体20および/または第2ダクト半体30に密着的に接合する保型片部44と、この保型片部44に一体成形されてネジ挿通孔48を穿設したフランジ状の連結片部46とからなり、第1空気流通口12および第2空気流通口14の形状保持に充分な剛性を具有している。この連結片部46は、送風機BWの空気吹出部またはエアコンユニットACの空気導入部に対して当該ダクトD1を連結する際に利用されるもので、前記ネジ挿通孔48は図示しない連結ネジを挿通するためのものである。
【0018】
従って前記形状保持部材40,42は、▲1▼前記保型片部44により前記第1空気流通口12および第2空気流通口14の形状を保持する形状保持部材としての機能と、▲2▼前記連結片部46により送風機BWの空気吹出部またはエアコンユニットACの空気導入部に対して連結する連結部材としての機能を具有している。なお実施例では、第1空気流通口12に関しては、コ字形に成形した2つの形状保持部材40,40を対向させた状態に装着することで形状保持がなされ、また第2空気流通口14は、ロ字形に成形した単一の形状保持部材42を装着することで形状保持がなされる。
【0019】
前述のように別途予備成形された形状保持部材40,42は、後述するように、前記第1ダクト半体20および第2ダクト半体30の成形に先立ち、前記ダクト成形型50における第1成形型52および第2成形型56に予めセットしておくことで、各々の成形型52,56の成形面54,58に吹付けた前記ウレタン材料U,Uの硬化に伴う接着力を利用して、前記ダクト半体20,30の成形と同時に該ダクト半体20,30接着して固定される。
【0020】
前述した実施例のダクトD1は、前記第1空気流通口12の開口端縁に沿って装着した前記形状保持部材40,40を利用することで、該第1空気流通口12が前記送風機BWの空気送出部に整合連結されると共に、前記第2空気流通口14の開口端縁に沿って装着した前記形状保持部材42を利用することで、該第2空気流通口14が前記エアコンユニットACの空気導入部に整合連結される。これにより、乗員室内の空調に際して前記エアコンユニットACが作動した際には、前記送風機BWから送出される空気は、当該ダクトD1の空気流通空間18を介して前記エアコンユニットAC内へ給送案内される。
【0021】
この際に実施例のダクトD1では、ダクト本体10を構成する第1ダクト半体20および第2ダクト半体30が、前記ウレタン材料Uが発泡・硬化して得られる発泡ウレタンの物性(特性)を具有しているので、次のような種々の効果を奏するようになる。すなわち、適度の厚みを有している第1ダクト半体20および第2ダクト半体30から形成されるダクト本体10は断熱性能が優れているので、該ダクトD1の内部と外部との温度差が大きい場合でも結露し難くなっている。また、ダクト本体10は防音性能が優れているので、ダクトD1の周囲に配設した車載部品等が車体振動時に該ダクトD1に接触しても、不快な異音の発生を極力抑えると共にこれを伝播させることがない。更には、ダクト本体10は吸音性能が優れているので、前記送風機BWの作動騒音がダクト本体10内へ侵入した際にこれを殆ど吸収するようになり、送風機BWの作動騒音が該エアコンユニットACに連結された前記ダクトD1を介して前記空気吹出口76から乗員室内へ洩れることを好適に防止し得る。従って実施例のダクトD1は、これ自体で結露対策、異音対策および騒音対策等を好適に図ることができ、該ダクトD1の内面に吸音シート16(図15)等を別途貼着する必要がなくなるので、騒音対策のためにコストが嵩むこともない。
【0022】
更に実施例のダクトD1は、ダクト本体10を構成する前記第1ダクト半体20および第2ダクト半体30が弾力性および柔軟性に優れて振動吸収(吸振)性能も優れているので、前記送風機BWの作動振動を該ダクト本体10で殆ど吸収してしまい、この作動振動がエアコンユニットACの側へ伝達することを防止し得る。従って、前記エアコンユニットACが車体構成部材であるリィンフォースバー78(図13)に固定されている場合には、このリィンフォースバー78に前記作動振動が伝達されないから、該リィンフォースバー78に固定されたステアリングコラムやステアリング(何れも図示せず)へ振動が伝達される不都合も回避できる。すなわち、実施例のダクトD1はこれ自体で振動対策を図ることもでき、運転者に不快感を与えることがない。
【0023】
なお、ダクト本体10の所要位置に開設された第1空気流通口12および第2空気流通口14は、適宜の剛性を有する素材から別途予備成形された前記形状保持部材40,42で形状保持される一方、これら形状保持部材40,42によりエアコンユニットACや送風機BW等との整合連結が確実になされる。
【0024】
次に、前述のように構成された実施例のダクトD1の成形方法につき、図3〜図10をもとに説明する。
【0025】
本実施例のダクトD1を構成する第1ダクト半体20および第2ダクト半体30は、前述した如く、図3および図4に示したダクト成形型50を使用してウレタンスプレー法に基いて成形される。ここでダクト成形型50は、前記第1ダクト半体20を成形するための成形面54を設けた第1成形型52と、前記第2ダクト半体30を成形するための成形面58を設けた第2成形型56とからなり、これら第1成形型52と第2成形型56とはヒンジ60により開閉自在にヒンジ接合され、第1成形型52に対して第2成形型56が型閉め可能となっている(図3、図8)。そして第1成形型52は、前記成形面54を形成した内型52Aおよび前記第2成形型56を支持する外型52Bとからなる分割タイプとされ、該内型52Aには前記形状保持部材40,42をセットするための設置部53,53が形成されている。また第2成形型56の成形面58には、前記形状保持部材40をセットするための設置部57が形成されている。ここで、前記第1成形型52および第2成形型56には適宜の加熱手段(図示せず)が内蔵され、対応の前記成形面54,58の表面温度を前記ウレタン材料Uの硬化に最適な温度(例えば65℃程度)に加熱保温し得るようになっている。なお第1成形型52および第2成形型56は、合成樹脂、アルミニウム、鋼鉄等から形成されている。
【0026】
このようなダクト成形型50を使用したウレタンスプレー成形法では、成形準備工程として、第1成形型52と第2成形型56とを型開きしたもとで、前記加熱手段により両成形型52,56の各々の成形面54,58を所要温度に加熱して保持すると共に、これら成形面54,58に適当な離型剤を塗布する。そして、第1成形型52の各々の設置部53,53に、別途予備成形した前記形状保持部材40,42をセットする(図5(a),(b))。また、第2成形型56の設置部57に、別途予備成形した前記形状保持部材40をセットする(図7)。なお、これら各々の形状保持部材40,42において、吹付けられるウレタン材料Uに接触する部位は、必要に応じてプライマー処理しておく。
【0027】
成形準備および各形状保持部材40,42のセットが完了したら、前記第1ダクト半体20および第2ダクト半体30の成形を行なう。すなわち、第1ダクト半体20の成形工程として、図6(a),(b)に示すように、第1成形型52の内型52Aを外型52Bに整合させたもとで、該第1成形型52の成形面54の上方へスプレーガン62を到来させ、該スプレーガン62を所定速度で移動させつつ所定量のウレタン材料Uを成形面54へ吹付けることで、ダクト壁部22および鍔部24を一体的に有するようになる第1ダクト半体20を予備成形する。一方、第2ダクト半体30の成形工程として、図8(a),(b)に示すように、第2成形型56の成形面58の上方へスプレーガン62を到来させ、該スプレーガン62を所定速度で移動させつつ所定量のウレタン材料Uを成形面58へ吹付けることで、ダクト壁部32および鍔部34を一体的に有するようになる第2ダクト半体30を予備成形する。なお、第1ダクト半体20および第2ダクト半体30の成形工程は、2基のスプレーガン62を準備して、第1成形型52の成形面54および第2成形型56の成形面58の両方へウレタン材料U,Uを同時に吹付けるようにすれば、成形サイクルタイムの短縮化が図られる。
【0028】
そして、前記第1成形型52の成形面54および第2成形型56の成形面58に対するウレタン材料U,Uの吹付けが完了したら、図9(a),(b)に示すように、各々のウレタン材料U,Uのうち少なくとも一方のウレタン材料Uが完全に硬化する前に、第1成形型52に対して第2成形型56を閉成してダクト成形型50を型閉めする。これにより、第1成形型52に予備成形した第1ダクト半体20の鍔部24に対して、第2成形型56に予備成形した第2ダクト半体30の鍔部34が対応的に密着するようになる。ここで、前記ウレタン材料Uは完全に硬化する前では接着性を有しているので、両成形型52,56に吹付けた夫々のウレタン材料U,Uのうち、少なくとも一方のウレタン材料Uが硬化する前に第1ダクト半体20の鍔部24と第2ダクト半体30の鍔部34とを密着させれば各々の鍔部24/34が相互に接着され、硬化過程におけるウレタン材料Uの接着力を利用して第1ダクト半体20と第2ダクト半体30とが長手方向へ対応的に接合されるに至る。また、前記各々の形状保持部材40,42も、硬化過程における前記ウレタン材料U,Uの接着力を利用して、対応の第1ダクト半体20および第2ダクト半体30のダクト壁部22,32に接着されるに至る。
【0029】
そして、前記第1ダクト半体20および第2ダクト半体30の成形、各々の形状保持部材40,42の装着が完了したら、第1成形型52から第2成形型56を開放させてダクト成形型50を型開きしたもとで、成形されたダクトD1を脱型する。そして脱型後に、不要な部分は必要に応じて切除する。脱型した成形完了後のダクトD1は、図10(a),(b)に示すように、第1ダクト半体20と第2ダクト半体30とが夫々のの鍔部24,34が接着することで相互に接合されてダクト本体10を形成する一方、第1空気流通口12の開口端縁に形状保持部材40,40が装着され、第2空気流通口14の開口端縁に形状保持部材42が装着されている。
【0030】
このように、本実施例のダクトの成形方法では、先ず第1成形型52の成形面54に設けた設置部53および第2成形型56の成形面58に設けた設置部57に別途予備成形した各形状保持部材40,42を夫々セットし、次いで該第1成形型52の成形面54にウレタン材料Uを吹付けて第1ダクト半体20を予備成形すると共に、該第2成形型56の成形面58にウレタン材料Uを吹付けて第2ダクト半体30を予備成形し、更にこれらウレタン材料U,Uのうちの少なくとも一方が完全に硬化する前にダクト成形型50を型閉めすることで、硬化過程における該ウレタン材料Uの接着力を利用して第1ダクト半体20および第2ダクト半体30を長手方向へ対応的に接合するようになっている。従って、第1ダクト半体20および第2ダクト半体30の成形工程、成形された第1ダクト半体20および/または第2ダクト半体30と形状保持部材40,42との接着工程、成形された第1ダクト半体20と第2ダクト半体30との接合工程等を、一連の連続した作業工程として行なうことができるので、ダクトD1の成形作業の簡素化および合理化が図られると共に成形コスト低減を図り得る。また、第1ダクト半体20と第2ダクト半体30との接合や、これらダクト半体20,30と形状保持部材40,42との接合に際して別途の接着剤等を一切使用しないから、これにより一層の成形コスト低減が可能となる。
【0031】
図11および図12は、変更例に係るダクトD1を例示したもので、これらダクトD1,D1は、第1ダクト半体20および/または第2ダクト半体30におけるダクト壁部22,32に補強部材64,66を追加して設けることで、ダクト本体10の全体的な剛性向上を図ったものである。前記第1ダクト半体20および第2ダクト半体30は、前述したように柔軟性および弾力性を有しているため、ダクト本体10の内部および外部の圧力差があるとダクト壁部22,32で変形し易くなっているが、前記補強部材64,66を追加して設けることで該ダクト壁部22,32の変形が規制されるようになる。なお、ダクトD1の全体的な剛性が向上しているので、該ダクトD1における一方の端部側だけを把持して持ち上げても折れ曲がることがなく、ハンドリング性が向上して取扱いの容易化が図られる。
【0032】
ここで図11に設けたダクトD1の補強部材64は、例えば前記ウレタン材料Uとは異なる無発泡ソリッドタイプ(硬質)のウレタン材料から成形されたもので、前記第2ダクト半体30のダクト壁部32における外側壁面において、前記第1空気流通口12の近傍部位から第2空気流通口14の近傍部位に亘って断続的にかつ直列的に延在している。このような補強部材64は、前述したダクト成形型50における第2成形型56によって前記第2ダクト半体30を成形する前工程において、前記成形面58に前記無発泡ソリッドタイプのウレタン材料を吹付けることで成形されたもので、幅が20mm程度、厚みが1mm程度とされ、ウレタン材料が硬化する際の接着力を利用して第2ダクト半体30に接着されるようになっている。ここで、前記補強部材64を断続的に延在させてあるので吸振性能の低下は回避され、前記送風機BWの作動振動を好適に吸収して前記エアコンユニットACへ伝達することは殆どない。なお補強部材64は、前記第1ダクト半体20のダクト壁部22に設けることも可能である。
【0033】
一方、図12に設けたダクトD1の補強部材66は、必要に応じてプライマー処理をしたPEまたはPP材等を材質とする合成樹脂製または金属製の予備成形品であり、前記第2ダクト半体30のダクト壁部32における外側壁面において、前記第1空気流通口12の近傍部位から第2空気流通口14の近傍部位に亘って断続的にかつ直列的に延在している。このような補強部材66は、前述したダクト成形型50における第2成形型56によって前記第2ダクト半体30を成形する前工程において、前記形状保持部材40,42と同様に前記成形面58に予めセットしておくことで、該第2ダクト半体30の成形と同時に装着される。ここで、前記補強部材66を断続的に延在させてあるので吸振性能の低下は回避され、前記送風機BWの作動振動を好適に吸収して前記エアコンユニットACへ伝達することは殆どない。なお補強部材66は、前記第1ダクト半体20のダクト壁部22に設けることも可能である。
【0034】
前記実施例では、前記エアコンユニットACへ車外空気または室内空気を案内するために、前記送風機BWと該エアコンユニットACとに連結される空気給送用のダクトD1を例示したが、本願が対象とするダクトは、これ以外に、前記エアコンユニットACから送出される調温空気を該インストルメントパネルIP等の車両内装部材に設けた前記空気吹出口76等へ案内するために、該エアコンユニットACと空気吹出口76とに連結される空気送出用のダクトD2等も含まれる。すなわち、空気送出用のダクトD2では、前記第1空気流通口12が前記形状保持部材40,40を利用して前記エアコンユニットACの空気送出部に整合連結されると共に、前記第2空気流通口14が前記形状保持部材42を利用してインストルメントパネルIP等の車両内装部材に設けた空気吹出口76またはその近傍に整合連結される。
【0035】
このような空気送出用のダクトD2を、ウレタン材料Uを硬化させて得られるダクト本体10と、第1空気流通口12および第2空気流通口14の開口端縁に設けられる形状保持部材40,42とから構成すれば、次のような効果が得られる。すなわち万一、前記送風機BWの作動騒音が前記エアコンユニットACの側へ侵入したとしても、この騒音を当該ダクトD2のダクト本体10内で吸収するため、送風機BWの作動騒音が前記空気吹出口76を介して乗員室内へ洩れることを防止し得る。また万一、前記送風機BWの作動振動が前記エアコンユニットACの側へ伝達されたとしても、この振動を当該ダクトD2のダクト本体10で吸収するため、前記インストルメントパネルIP等へ送風機BWの作動振動が伝達されることを防止し得る。なお、ダクト本体10がウレタン製であるから、断熱効果や防音効果の向上も期待できる。
【0036】
本願のダクトは、前記インストルメントパネルIPの裏側に配設されるものに限定されるものではなく、これ以外にフロアコンソール、ルーフパネル等の各種車両内装部材の裏側に配設されるダクトに応用することも可能である。
【0037】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明に係るダクトによれば、成形型の成形面に吹付けたウレタン材料を硬化させてダクト本体を形成したことで、これ自体で結露対策、異音対策および騒音対策等を好適に図ることができ、例えば送風機の作動騒音を好適に吸収し得る。従って、当該ダクトまたは別のダクトの内面に吸音シート等を別途貼着する必要がなくなるので、騒音対策のためにコストを低減し得る利点がある。
また本発明のダクトは、これ自体で振動対策を好適に図ることもでき、例えば送風機の作動振動を好適に吸収し得る。従って、送風機の作動振動がエアコンユニットの側へ伝達されることを防止でき、該エアコンユニットが固定された車体構成部材に固定された他の部材へ該振動が伝達される不都合を好適に回避し得る利点がある。
なお、ダクト本体の所要位置に開設された空気流通口は、適宜の剛性を有する素材から別途予備成形された形状保持部材で形状保持されるので、エアコンユニットや送風機等との整合連結が確実になされる。
【0038】
同じく、別の発明に係るダクトの成形方法によれば、第1ダクト半体および第2ダクト半体の成形工程、成形された第1ダクト半体および/または第2ダクト半体と形状保持部材との接着工程、成形された第1ダクト半体と第2ダクト半体との接合工程等を、一連の連続した作業工程として行なうことができるので、ダクトの成形作業の簡素化および合理化が図られると共に成形コスト低減を図り得る利点がある。そして、第1ダクト半体と第2ダクト半体との接合や、これらダクト半体と形状保持部材との接合に際して別途の接着剤等を一切使用しないから、これにより一層の成形コスト低減が可能となる等の有益な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適実施例に係るダクトの一例を例示した概略斜視図である。
【図2】ダクト本体を構成する第1ダクト半体および第2ダクト半体と、各々の空気流通口の開口端縁に装着される形状保持部材とを、分離した状態で示すダクトの分解斜視図である。
【図3】図1に示したダクトを成形するためのダクト成形型を、図1に示したダクトにおけるX−X線で破断した際の視点方向から見た説明断面図であって、第1成形型と第2成形型とを型開きした状態を示している。
【図4】図3に示したダクト成形型を、図1に示したダクトにおけるY−Y線で破断した際の視点方向から見た説明断面図であって、第1成形型と第2成形型とを型閉めする前の状態で示している。
【図5】ダクト成形型における第1成形型に設けた設置部に、別途予備成形した形状保持部材を装着する状態を示した説明断面図であって、(a)は図3の視点方向で示し、(b)は図4の視点方向で示している。
【図6】外型と内型とを整合させた第1成形型の成形面にウレタン材料を吹付けて、該成形面に第1ダクト半体を成形する状態を示した説明断面図であって、(a)は図3の視点方向で示し、(b)は図4の視点方向で示している。
【図7】ダクト成形型における第2成形型に設けた設置部に、別途予備成形した形状保持部材を装着する状態を示した説明断面図であって、図4の視点方向で示している。
【図8】第2成形型の成形面にウレタン材料を吹付けて、該成形面に第2ダクト半体を成形する状態を示した説明断面図であって、(a)は図3の視点方向で示し、(b)は図4の視点方向で示している。
【図9】両成形型に吹付けたウレタン材料のうち、少なくとも一方のウレタン材料が硬化する前に第2成形型を第1成形型に型閉めして第1ダクト半体および第2ダクト半体の鍔部同士を密着させ、第1ダクト半体と第2ダクト半体とを対応的に接合する状態を示す説明断面図であって、(a)は図3の視点方向で示し、(b)は図4の視点方向で示している。
【図10】成形完了後のダクトの断面図であって、(a)は図1のX−X線断面図、(b)は図1のY−Y線断面図である。
【図11】変更例に係るダクトの概略斜視図である。
【図12】別の変更例に係るダクトの概略斜視図である。
【図13】インストルメントパネルの内側に配設したエアコンユニットに連結された空気給送用のダクトおよび空気送出用のダクトを示した断面図である。
【図14】送風機、エアコンユニットおよび両者間に接続された空気給送用のダクトを例示した概略斜視図である。
【図15】図14に例示の空気給送用のダクトを示した概略斜視図である。
【符号の説明】
10 ダクト本体
12 第1空気流通口(空気流通口)
14 第2空気流通口(空気流通口)
20 第1ダクト半体
22 ダクト壁部
24 鍔部
30 第2ダクト半体
32 ダクト壁部
34 鍔部
40,42 形状保持部材
52 第1成形型(成形型)
54 成形面
56 第2成形型(成形型)
58 成形面
64,66 補強部材
76 空気吹出口
AC エアコンユニット
BW 送風機
IP インストルメントパネル(車両内装部材)
U ウレタン材料

Claims (7)

  1. 車両搭載のエアコンユニット(AC)に連結され、該エアコンユニット(AC)に対する空気の授受に供されるダクトにおいて、
    第1成形型(52)の成形面(54)に吹付けたウレタン材料(U)を硬化させて得られる第1ダクト半体(20)と、
    前記第1成形型(52)に型閉め可能な第2成形型(56)の成形面(58)に吹付けたウレタン材料(U)を硬化させて得られる第2ダクト半体(30)と、
    適宜の剛性を有する素材から別途予備成形され、前記第1ダクト半体(20)および/または第2ダクト半体(30)に開設される空気流通口(12,14)の開口端縁に設けられる形状保持部材(40,42)とからなり、
    前記ウレタン材料(U)の硬化に伴う接着力により、前記第1ダクト半体(20)および第2ダクト半体(30)を長手方向へ対応的に接合してダクト本体(10)を形成すると共に、前記形状保持部材(40,42)を前記ダクト半体(20,30)に固定して前記空気流通口(12,14)の形状保持をなし得るよう構成した
    ことを特徴とするダクト。
  2. 前記第1ダクト半体(20)および第2ダクト半体(30)は、ダクト壁部(22/32)および該ダクト壁部(22/32)に一体成形された鍔部(24/34)からなり、各々の鍔部(24/34)同士を接着させることで長手方向へ対応的に接合される請求項記載のダクト。
  3. 前記形状保持部材(40,42)は、合成樹脂製または金属製の枠状成形体である請求項1または2記載のダクト。
  4. 前記ダクト本体(10)の壁部に、該ダクト本体(10)の変形を規制する補強部材(64,66)が設けられている請求項1〜の何れか一項に記載のダクト。
  5. 前記一方の空気流通口(12)が前記形状保持部材(40)を利用して送風機(BW)に連結されると共に、前記他方の空気流通口(14)が前記形状保持部材(42)を利用して前記エアコンユニット(AC)に連結され、前記送風機(BW)から給送される空気をエアコンユニット(AC)へ案内するために供される請求項1〜の何れか一項に記載のダクト。
  6. 前記一方の空気流通口(12)が前記形状保持部材(40)を利用して前記エアコンユニット(AC)に連結されると共に、前記他方の空気流通口(14)が前記形状保持部材(42)を利用して車両内装部材(IP)に設けた空気吹出口(76)に連結され、エアコンユニット(AC)から送出された空気を空気吹出口(76)へ案内する請求項1〜の何れか一項に記載のダクト。
  7. 車両搭載のエアコンユニット(AC)に連結され、該エアコンユニット(AC)に対する空気の授受に供されるダクトを成形するに際し、
    相互に型閉め可能な第1成形型(52)の成形面(54)および/または第2成形型(56)の成形面(58)の所要位置に、適宜の剛性を有する素材から別途予備成形された形状保持部材(40,42)をセットし、
    前記第1成形型(52)の成形面(54)にウレタン材料(U)を吹付けることで、ダクト壁部(22)および鍔部(24)を一体的に有する第1ダクト半体(20)を予備成形し、
    前記第2成形型(56)の成形面(58)にウレタン材料(U)を吹付けることで、ダクト壁部(32)および鍔部(34)を一体的に有する第2ダクト半体(30)を予備成形し、
    前記夫々の成形面(54,58)に吹付けたウレタン材料(U,U)のうち少なくとも一方のウレタン材料(U)が完全に硬化する前に、両成形型(52,56)を相互に型閉めして第1ダクト半体(20)の鍔部(24)および第2ダクト半体(30)の鍔部(34)を対応的に密着させることで、前記ウレタン材料(U)の硬化に伴う接着力により両ダクト半体(20,30)を長手方向へ対応的に接合してダクト本体(10)を成形すると共に、前記ウレタン材料(U)の硬化に伴う接着力により、前記第1ダクト半体(20)および/または第2ダクト半体(30)に開設される空気流通口(12,14)の開口端縁に前記形状保持部材(40,42)を固定するようにした
    ことを特徴とするダクトの成形方法。
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