JP4083526B2 - 高濃度n,n−ジアルキルグリシン水溶液およびその製造方法 - Google Patents

高濃度n,n−ジアルキルグリシン水溶液およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4083526B2
JP4083526B2 JP2002281560A JP2002281560A JP4083526B2 JP 4083526 B2 JP4083526 B2 JP 4083526B2 JP 2002281560 A JP2002281560 A JP 2002281560A JP 2002281560 A JP2002281560 A JP 2002281560A JP 4083526 B2 JP4083526 B2 JP 4083526B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
dialkylglycine
aqueous solution
mass
alkali metal
concentration
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2002281560A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2003176257A (ja
Inventor
田 隆 植
藤 信 斎
藤 徹 加
上 勝 久 井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kao Corp
Resonac Holdings Corp
Original Assignee
Showa Denko KK
Kao Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Showa Denko KK, Kao Corp filed Critical Showa Denko KK
Priority to JP2002281560A priority Critical patent/JP4083526B2/ja
Publication of JP2003176257A publication Critical patent/JP2003176257A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4083526B2 publication Critical patent/JP4083526B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
界面活性剤中間体、医農薬中間体などとして有用なN,N−ジアルキルグリシンを、高濃度水溶液として得ることにより、N,N−ジアルキルグリシンの種々の工業的利用を容易とする。
【0002】
【発明の技術的背景】
N,N−ジアルキルグリシン結晶は、一般にN,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩の合成を経て調製される。N,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩は、水に対する溶解度が低く、たとえば、N,N−ジメチルグリシンナトリウムの場合は25質量%(20℃)であり、それ以上に高濃度のN,N−ジメチルグリシンナトリウム水溶液を得ることはできない。N,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩の高濃度水溶液を調製することができないため、この水溶液を貯蔵するためのタンクが大型化し、また運搬費用が増大するなど必然的に経費の上昇を招いていた。
【0003】
また、結晶のN,N−ジアルキルグリシンを溶解してN,N−ジアルキルグリシン水溶液を製造する場合は、N,N−ジアルキルグリシンの結晶化と取り扱いに多くのコストと手間がかかるという問題がある。たとえば、N,N−ジメチルグリシンの結晶を得るには、米国特許4968839号明細書に記載されているように有機溶媒での抽出や晶析といった煩雑な操作が必要であり、さらに得られたN,N−ジメチルグリシンは極めて吸湿性が高いために処理・保管の場所の湿度を低く保つ必要があるなど取り扱いが面倒であった。
【0004】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意研究し、水に対して、N,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩は溶解度が低いのに対し、N,N−ジアルキルグリシンは溶解度が極めて高いことに基づいて、本発明の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液およびそれを製造する方法を完成するに至った。
【0005】
【特許文献1】
米国特許第4968839号明細書
【0006】
【発明の目的】
本発明は、貯蔵、運搬などの取り扱いが容易かつ経済的であり、しかも有機化学反応の原料溶液として有用な高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液を提供すること、およびそれを製造する方法を提供することを目的としている。
【0007】
【発明の概要】
(1)N,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩を原料として調製され、下記式(I)、
【0008】
【化4】
Figure 0004083526
【0009】
(式中、R1、R2は、同一であるかまたは異なってもよく、炭素数1〜4の直鎖アルキル基または分岐アルキル基である)
で表されるN,N−ジアルキルグリシンが、30質量%〜80質量%の範囲で含まれることを特徴とする高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液。
(2)アルカリ金属鉱酸塩を0.3質量%〜3質量%含有することを特徴とする上記(1)に記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液。
(3)下記式(I)、
【0010】
【化5】
Figure 0004083526
【0011】
(式中、R1、R2は、同一であるかまたは異なってもよく、炭素数1〜4の直鎖アルキル基または分岐アルキル基である)
で表されるN,N−ジアルキルグリシン、30質量%〜80質量%と、アルカリ金属鉱酸塩、0.3質量%〜3質量%とを含むことを特徴とする高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液。
(4)上記一般式(I)のR1およびR2が、ともにメチル基であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液。
(5)上記一般式(I)のR1およびR2が、ともにエチル基であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液。
(6)少なくとも次の工程;
(i)N,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩水溶液を、鉱酸で中和する工程、
(ii)前記工程で得られた水溶液から水分を除去し、濃縮する工程、および
(iii)N,N−ジアルキルグリシン水溶液とアルカリ金属鉱酸塩のスラリーから析出したアルカリ金属鉱酸塩を固液分離する工程
を含み、下記式(I)、
【0012】
【化6】
Figure 0004083526
【0013】
(式中、R1、R2は、同一であるかまたは異なってもよく、炭素数1〜4の直鎖アルキル基または分岐アルキル基である)
で表されるN,N−ジアルキルグリシンを30質量%〜80質量%の範囲で含有する水溶液を得ることを特徴とする高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の製造方法。
(7)上記N,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩がN,N−ジアルキルグリシンナトリウムであることを特徴とする上記(6)に記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の製造方法。
(8) 上記(i)の工程で用いる鉱酸が硫酸であることを特徴とする上記(6)に記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の製造方法。
(9) 上記(i)の工程で用いる鉱酸が硫酸であることを特徴とする上記(7)に記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の製造方法。
(10) 上記(i)の工程において、pHが3〜9となるまで中和することを特徴とする上記(6)〜(9)のいずれかに記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の製造方法。
(11) 上記(iii)の工程の固液分離をする際の温度を10℃〜80℃とすることを特徴とする上記(6)〜(9)のいずれかに記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の製造方法。
(12)分離した上記アルカリ金属鉱酸塩を水で洗浄することにより、そのアルカリ金属鉱酸塩に付着したN,N−ジアルキルグリシンを回収することを特徴とする上記(6)〜(9)のいずれかに記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の製造方法。
(13)上記のアルカリ金属鉱酸塩を洗浄した水を上記の(i)および/または(ii)の工程を実施する前の溶液またはスラリーに加えることにより、アルカリ金属鉱酸塩に付着したN,N−ジアルキルグリシンを回収することを特徴とする上記(12)に記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の製造方法。
【0014】
【発明の具体的説明】
本発明は、下記式(I)、
【0015】
【化7】
Figure 0004083526
【0016】
(式中、R1、R2は、同一であるかまたは異なってもよく、炭素数1〜4の直鎖アルキル基または分岐アルキル基である)で表されるN,N−ジアルキルグリシンを30質量%〜80質量%の範囲で含有する高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液ならびにその製造方法である。
本発明の製造方法は、N,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩水溶液を鉱酸で中和した水溶液を濃縮することにより、N,N−ジアルキルグリシンの大部分を溶解させたまま鉱酸塩を析出させ、その鉱酸塩を固液分離して高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液を得ることを特徴としている。得られた高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液には、その製造方法において中和に使用した鉱酸と原料物質とによるアルカリ金属鉱酸塩が、0.3質量%〜3質量%の範囲で含まれる。
【0017】
上記式(I)で表されるN,N−ジアルキルグリシンにおいて、R1、R2は、同一であるかまたは異なってもよく、炭素数1〜4の直鎖アルキル基または分岐アルキル基が好ましい。具体的にその化合物を例示すれば、N,N−ジメチルグリシン、N−エチル−N−メチルグリシン、N,N−ジエチルグリシン、N−イソプロピル−N−メチルグリシン、N−イソプロピル−N−エチルグリシン、N,N−ジイソプロプルグリシン、N,N−ジブチルグリシン、N−ブチル−N−メチルグリシン、N−ブチル−N−エチルグリシンなどが挙げられる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0018】
N,N−ジアルキルグリシンは、水に対する溶解度が極めて高く、中性付近では、80質量%以上の高濃度水溶液とすることができる。しかしながら、80質量%を超えるとその水溶液の粘度が高くなり、合成などに実質的に使用しにくくなる。また、30質量%未満の水溶液は、N,N−ジアルキルグリシンを原料として引き続き合成反応などに用いる際に、水を除去することが困難であるために原料物質の濃度が低くなり不利である。さらにN,N−ジアルキルグリシンの濃度を30質量%未満とした場合には、鉱酸塩や不純物の溶解度が高くなるため、純度の高いN,N−ジアルキルグリシン水溶液を得ることができない。したがって、本発明の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の濃度は、30質量%〜80質量%が好ましく、有機化学反応の原料溶液としての利用や取り扱い易さを考えると50質量%〜80質量%がより望ましい。
【0019】
本発明の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液に残存するアルカリ金属鉱酸塩の濃度は、上述のようにN,N−ジアルキルグリシン濃度のほかに使用する鉱酸およびN,N−ジアルキルグリシンのアルカリ金属の種類によっても変化する。また、残存するアルカリ金属鉱酸塩の許容される濃度は、合成反応への利用や用途などにおいても区々である。その残存量を減らし、高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の純度を高めるために必要とされる労力、コストなども含めて勘案すれば、当該濃度は一般には3質量%以下が望ましく、具体的には0.3質量%〜3質量%が好ましく、0.3質量%〜2.5質量%がより好ましく、さらに0.7質量%〜2.3質量%が特に望ましい。
【0020】
本発明の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液を製造するための原料物質として、N,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩の水溶液は、どのような方法で製造してもよく、その製造方法に限定されない。たとえば、ブロモ酢酸とジアルキルアミンを反応させてN,N−ジアルキルグリシンナトリウムを製造する方法(特公昭58−34478号など)、ホルマリン、シアン化ナトリウム、ジアルキルアミンを亜硫酸水素ナトリウム存在下で反応させ、N,N−ジメチルグリシンナトリウムの中間体であるN,N−ジメチルアセトニトリルを製造し、アルカリで加水分解し、N,N−ジメチルグリシンナトリウムを製造する方法(US特許4968839号)、ジアルキルアミンとホルマリンとシアン化ナトリウムをアルカリ条件でストレッカー反応させてN,N−ジアルキルグリシンナトリウム塩を製造する方法(DD特許292239号)などがある。
【0021】
本発明の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の製造方法は、
少なくとも次の工程;
(i)N,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩水溶液を、鉱酸で中和する工程、
(ii)前記工程で得られた水溶液から水分を除去し、濃縮する工程、および
(iii)N,N−ジアルキルグリシン水溶液とアルカリ金属鉱酸塩のスラリーから析出したアルカリ金属鉱酸塩を固液分離する工程、
を含み、下記式(I)、
【0022】
【化8】
Figure 0004083526
【0023】
(式中、R1、R2は、同一であるかまたは異なってもよく、炭素数1〜4の直鎖アルキル基または分岐アルキル基である)
で表されるN,N−ジアルキルグリシンを30質量%〜80質量%の範囲で含有する水溶液を得ることを特徴としている。
この製造方法によれば、N,N−ジアルキルグリシン、30質量%〜80質量%とアルカリ金属鉱酸塩、0.3質量%〜3質量%とを含有する高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液が得られる。
【0024】
本発明による高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の製造方法は、上記の(i)および(ii)の工程を実施して、N,N−ジアルキルグリシン水溶液とアルカリ金属鉱酸塩のスラリーを得た後、上記(iii)の工程を実施することを特徴としている。すなわち、原料であるN,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩の水溶液に対して、好ましくは始めに(i)N,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩水溶液を、鉱酸で中和する工程、および(ii)前記工程で得られた水溶液から水分を除去し、濃縮する工程を行なう。(i)、(ii)の工程は、通常この順番で行なうことが望ましいが、(ii)の工程を先に実施し、その後で(i)の工程を実施することもできる。あるいは(i)、(ii)の工程を繰り返し実施してもよい。
【0025】
このようにN,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩水溶液に対して、(i)、および(ii)の工程を実施することにより、N,N−ジアルキルグリシン水溶液とアルカリ金属鉱酸塩のスラリーが得られる。次に(iii)N,N−ジアルキルグリシン水溶液とアルカリ金属鉱酸塩のスラリーから析出したアルカリ金属鉱酸塩を固液分離する工程を行うことにより高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液を得ることができる。なお、この(iii)の工程の後に必要により、さらに(i)、(ii)、(iii)の工程を繰返し実施してもよい。
【0026】
本発明の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の製造方法によれば、N,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩からN,N−ジアルキルグリシンを、純粋な固体として単離することなく、水にN,N−ジアルキルグリシンが高濃度に溶解した水溶液が得られる。換言すると、本発明は、N,N−ジアルキルグリシンを、固体結晶の調製を経由せずに次の合成のための合成中間体としてそのまま使用できる原料溶液の形態で提供する側面を有する。
【0027】
原料として用いられる、N,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩水溶液として、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などの水溶液が挙げられる。なかでもナトリウム塩が、コスト、後の工程における鉱酸塩の溶解度の観点からは特に望ましい。
工程(i)における中和のための酸として、鉱酸を用いる。鉱酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等が例示される。とりわけ生じるアルカリ金属鉱酸塩の溶解度等を考慮すると硫酸を用いることが好ましい。したがってその鉱酸塩は、硫酸とナトリウムの組み合わせの塩である硫酸ナトリウムが特に好ましい。
【0028】
上記の中和は、pHが、3〜9の範囲になるまで中和することが好ましい。pHがこれよりも高すぎると濃縮の際にN,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩が析出する。一方、pHがこれよりも低すぎると硫酸ナトリウムの一部が溶解度の高い硫酸水素ナトリウムとなり、N,N−ジアルキルグリシン水溶液の品質が低下する。より好ましいpHは5〜8である。また、(i)、(ii)の工程を繰り返して実施するような場合には、最終的なpHをこのような範囲に調整することが望ましい。
【0029】
工程(ii)における水の除去、濃縮は、通常知られているどのような操作で行ってもよい。たとえば、減圧下の加熱蒸発が簡便である。但し、この操作により、溶液は生成した鉱酸塩が析出して来てスラリー状態となる。濃縮後のN,N−ジアルキルグリシン濃度は、後の合成反応のためのN,N−ジアルキルグリシン水溶液が必要とされる濃度と不純物であるアルカリ金属鉱酸塩の許容される濃度とを考慮して、適宜決定する。好ましい濃度は、アルカリ金属鉱酸塩を分離した水溶液中のN,N−ジアルキルグリシンの濃度が30質量%〜80質量%の範囲である。30質量%未満では、アルカリ金属鉱酸塩の濃度が高くなり、得られた水溶液のアルカリ金属鉱酸塩濃度が3質量%以下とならない。また、80質量%を超える場合にはスラリー粘度が上昇し、次の工程である固液分離が困難となる。より好ましい濃度は30質量%〜80質量%である。
【0030】
本発明は、N,N−ジアルキルグリシンが、N,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩と比較して水に対する溶解度が極めて高く、高濃度に濃縮してもN,N−ジアルキルグリシンの結晶が析出せず、結果的に高濃度のN,N−ジアルキルグリシン水溶液が得られることを利用している。さらに、N,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩を鉱酸で中和したことにより生成するアルカリ金属鉱酸塩は、N,N−ジアルキルグリシン濃度が高くなるにつれ一種の塩析効果により溶解度が低下するために、固液分離により高純度のN,N−ジアルキルグリシン水溶液が容易に得られる。工程(iii)の固液分離は、通常の固液分離のいかなる手段を用いてもよい。ヌッチェ等の濾過器による濾過、遠心分離等の手段を例示することができる。
【0031】
上記固液分離において、特に制限があるわけではないが、その温度を10℃〜80℃で分離することが好ましい。80℃よりも温度が高いと鉱酸塩の溶解度が上昇し、溶解する不純物のためにN,N−ジアルキルグリシン水溶液の品質が低下する。一方10℃より温度が低いとN,N−ジアルキルグリシン水溶液の粘度が上がり、アルカリ金属鉱酸塩の分離に長時間を要する。より好ましい範囲は、30℃〜70℃である。
【0032】
固液分離により得られた高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液は濃縮の度合いにより、その濃度は変化するが、この溶液はその用途、目的に応じて、水を添加し、必要な濃度としてもよい。その濃度は、前述のように30質量%〜80質量%が好ましく、合成反応における使用や取り扱い易さを考えると、好ましくは40〜80質量%、さらに好ましくは50質量%〜80質量%である。
【0033】
上記(iii)の工程で分離したアルカリ金属鉱酸塩は、N,N−ジアルキルグリシンを溶解した水分を付着、吸蔵している。したがって、その鉱酸塩を水で洗浄して、N,N−ジアルキルグリシンを含む洗浄水を(i)の工程および/または(ii)の工程の前で、またはその工程中にN,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩の水溶液またはN,N−ジアルキルグリシン水溶液とアルカリ金属鉱酸塩のスラリーへ加え、引き続き工程の操作を行なえば、分離されたアルカリ金属鉱酸塩に付着したN,N−ジアルキルグリシンを回収することができる。これによりN,N−ジアルキルグリシンの回収率を向上できる。
【0034】
なお、上記の濃縮、分離、洗浄、洗浄液の回収を連続的に行ってもよいし、別々に行ってもよい。本発明による製造方法において、工程の順序、繰返し、回収なども含めた設定ならびにN,N−ジアルキルグリシン水溶液の濃度、アルカリ金属鉱酸塩の残存量などの条件は、用途、必要に応じて適宜調整することができる。
【0035】
【実施例】
本発明をさらに具体的に説明するために以下に実施例をあげるが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
なお、以下の製造において、水はイオン交換水を使用している。
【0036】
【参考例1】
ジメチルアミンとホルマリンとシアン化ナトリウムとをストレッカー反応させることにより合成したN,N−ジメチルグリシンナトリウムの20質量%水溶液を80℃で減圧濃縮した。N,N−ジメチルグリシンナトリウム濃度が30質量%に到達したら濃縮を終了した。その30質量%N,N−ジメチルグリシンナトリウム水溶液を室温で放置したところ、N,N−ジメチルグリシンナトリウムの結晶が析出した。N,N−ジメチルグリシンナトリウムの水に対する溶解度を測定したところ25質量%(20℃)であった。
【0037】
【実施例1】
参考例1と同様の方法で合成したN,N−ジメチルグリシンナトリウム20質量%水溶液、20kgに95質量%硫酸をpH5.0になるまで加えた。次にその水溶液を80℃で減圧濃縮し、N,N−ジメチルグリシン濃度が60質量%に到達したら濃縮を終了し、50℃まで冷却して1時間撹拌した。遠心分離機を用いて析出した硫酸ナトリウム結晶を分離し、60質量%N,N−ジメチルグリシン水溶液4.7kgを得た。N,N−ジメチルグリシン水溶液中の硫酸ナトリウムの濃度は2.3質量%であった。
【0038】
【実施例2】
参考例1と同様の方法で合成したN,N−ジメチルグリシンナトリウム20質量%水溶液、20kgに95質量%硫酸をpH7.0になるまで加えた。次にその水溶液を80℃で減圧濃縮し、N,N−ジメチルグリシン濃度が65質量%に到達したら濃縮を終了し、50℃まで冷却して1時間撹拌した。遠心分離機を用いて析出した硫酸ナトリウム結晶を分離し、65質量%N,N−ジメチルグリシン水溶液4.3kgを得た。N,N−ジメチルグリシン水溶液中の硫酸ナトリウムの濃度は1.2質量%であった。65質量%N,N−ジメチルグリシン水溶液に純水を加えて60質量%N,N−ジメチルグリシン水溶液にしたものを0℃で10日間放置したが、結晶の析出は認められなかった。
【0039】
【実施例3】
参考例1と同様の方法で合成したN,N−ジメチルグリシンナトリウム20質量%水溶液、20kgに95質量%硫酸をpH7.0になるまで加えた。次にその水溶液を80℃で減圧濃縮し、N,N−ジメチルグリシン濃度が70質量%に到達したら濃縮を終了し、50℃まで冷却して1時間撹拌した。遠心分離機を用いて析出した硫酸ナトリウム結晶を分離し、70質量%N,N−ジメチルグリシン水溶液4.0kgを得た。N,N−ジメチルグリシン水溶液中の硫酸ナトリウムの濃度は0.7質量%であった。70質量%N,N−ジメチルグリシン水溶液に純水を加えて60質量%N,N−ジメチルグリシン水溶液にしたものを0℃で10日間放置したが、結晶の析出は認められなかった。
【0040】
【実施例4】
参考例1と同様の方法で合成したN,N−ジメチルグリシンナトリウム20質量%水溶液、20kgに95質量%硫酸をpH7.0になるまで加えた。実施例2で得られた硫酸ナトリウム結晶を、遠心分離機を用いて硫酸ナトリウムと等重量の水で洗浄して得られた洗浄液を、前記の硫酸でpH7.0に調整した液と混合して80℃で減圧濃縮した。N,N−ジメチルグリシン濃度が65質量%に到達したら濃縮を終了し、50℃まで冷却して1時間撹拌した。遠心分離機を用いて硫酸ナトリウム結晶を分離し、60質量%N,N−ジメチルグリシン水溶液4.9kgを得た。N,N−ジメチルグリシン水溶液中の硫酸ナトリウムの濃度は、1.2質量%であった。洗浄した硫酸ナトリウムに含まれるN,N−ジメチルグリシンは0.6質量%であった。
【0041】
【実施例5】
東京化成工業(株)製のN,N−ジエチルグリシンナトリウムの粉末固体をイオン交換水に溶解した。このN,N−ジエチルグリシンナトリウムの水に対する溶解度は34質量%(20℃)であった。この34質量%水溶液342gに98質量%硫酸をpH6.6になるまで加えた。次に水溶液を90℃で減圧濃縮し、溶液中のN,N−ジエチルグリシンナトリウム濃度が67質量%に到達したら濃縮を終了し、40℃まで冷却して1時間撹拌した。40℃でヌッチェ型減圧濾過器を用いて硫酸ナトリウム結晶を分離し、67質量%N,N−ジエチルグリシンナトリウム水溶液125gを得た。N,N−ジエチルグリシン水溶液中の硫酸ナトリウムの濃度は0.9質量%であった。
【0042】
【実施例6】
実施例5と同様にして調製したN,N−ジエチルグリシン34質量%水溶液342gに98質量%硫酸をpH5.0になるまで加えた。次に80℃で減圧濃縮し、溶液中のN,N−ジエチルグリシンナトリウム濃度が67質量%に到達したら濃縮を終了し、60℃まで冷却して1時間撹拌した。この温度でヌッチェ型減圧濾過器を用いて硫酸ナトリウム結晶を分離し、67質量%N,N−ジエチルグリシンナトリウム水溶液121gを得た。N,N−ジエチルグリシン水溶液中の硫酸ナトリウムの濃度は0.9質量%であった。
【0043】
【発明の効果】
本発明に係る高濃度ジアルキルグリシン水溶液は、貯蔵・運搬に伴うコストの低減を達成できる。このような高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液は、N,N−ジアルキルグリシン結晶と比較すると、合成反応の原料として使用することがより容易となる。
【0044】
高濃度に含まれるN,N−ジアルキルグリシンを同じ溶液で次の合成工程へ移行できるため、反応効率が上昇し、生産性は高まる。

Claims (13)

  1. N,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩を原料として調製され、下記式(I)、
    Figure 0004083526
    (式中、R1、R2は、同一であるかまたは異なってもよく、炭素数1〜4の直鎖アルキル基または分岐アルキル基である)
    で表されるN,N−ジアルキルグリシンが、30質量%〜80質量%の範囲で含まれることを特徴とする高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液。
  2. アルカリ金属鉱酸塩を0.3質量%〜3質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液。
  3. 下記式(I)、
    Figure 0004083526
    (式中、R1、R2は、同一であるかまたは異なってもよく、炭素数1〜4の直鎖アルキル基または分岐アルキル基である)
    で表されるN,N−ジアルキルグリシン、30質量%〜80質量%と、
    アルカリ金属鉱酸塩、0.3質量%〜3質量%と
    を含むことを特徴とする高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液。
  4. 上記式(I)のR1およびR2が、ともにメチル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液。
  5. 上記式(I)のR1およびR2が、ともにエチル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液。
  6. 少なくとも次の工程;
    (i)N,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩水溶液を、鉱酸で中和する工程、
    (ii)前記工程で得られた水溶液から水分を除去し、濃縮する工程、および
    (iii)N,N−ジアルキルグリシン水溶液とアルカリ金属鉱酸塩のスラリーから析出したアルカリ金属鉱酸塩を固液分離する工程
    を含み、下記式(I)、
    Figure 0004083526
    (式中、R1、R2は、同一であるかまたは異なってもよく、炭素数1〜4の直鎖アルキル基または分岐アルキル基である)
    で表されるN,N−ジアルキルグリシンを30質量%〜80質量%の範囲で含有する水溶液を得ることを特徴とする高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の製造方法。
  7. 上記N,N−ジアルキルグリシンアルカリ金属塩がN,N−ジアルキルグリシンナトリウムであることを特徴とする請求項6に記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の製造方法。
  8. 上記(i)の工程で用いる鉱酸が硫酸であることを特徴とする請求項6に記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の製造方法。
  9. 上記(i)の工程で用いる鉱酸が硫酸であることを特徴とする請求項7に記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の製造方法。
  10. 上記(i)の工程において、pHが3〜9となるまで中和することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の製造方法。
  11. 上記(iii)の工程の固液分離をする際の温度を10℃〜80℃とすることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の製造方法。
  12. 分離した上記アルカリ金属鉱酸塩を水で洗浄することにより、そのアルカリ金属鉱酸塩に付着したN,N−ジアルキルグリシンを回収することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の製造方法。
  13. 上記のアルカリ金属鉱酸塩を洗浄した水を上記の(i)および/または(ii)の工程を実施する前の溶液またはスラリーに加えることにより、アルカリ金属鉱酸塩に付着したN,N−ジアルキルグリシンを回収することを特徴とする請求項12に記載の高濃度N,N−ジアルキルグリシン水溶液の製造方法。
JP2002281560A 2001-10-05 2002-09-26 高濃度n,n−ジアルキルグリシン水溶液およびその製造方法 Expired - Fee Related JP4083526B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002281560A JP4083526B2 (ja) 2001-10-05 2002-09-26 高濃度n,n−ジアルキルグリシン水溶液およびその製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001-310377 2001-10-05
JP2001310377 2001-10-05
JP2002281560A JP4083526B2 (ja) 2001-10-05 2002-09-26 高濃度n,n−ジアルキルグリシン水溶液およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003176257A JP2003176257A (ja) 2003-06-24
JP4083526B2 true JP4083526B2 (ja) 2008-04-30

Family

ID=26623780

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002281560A Expired - Fee Related JP4083526B2 (ja) 2001-10-05 2002-09-26 高濃度n,n−ジアルキルグリシン水溶液およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4083526B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
BR112021002663A2 (pt) * 2018-08-21 2021-05-11 Huntsman International Llc catalisador, processo para a síntese de um composto, uso de um composto, e, processo para produzir uma espuma de poli-isocianurato/poliuretano rígida, semirrígida ou flexível.

Also Published As

Publication number Publication date
JP2003176257A (ja) 2003-06-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6964595B2 (ja) リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの新規の製造方法
CN105541906B (zh) 一种草铵膦的纯化方法
CN111908510B (zh) 一种高纯硫酸锰的制备方法
US20200385358A1 (en) Method for producing calcobutrol
JP4083526B2 (ja) 高濃度n,n−ジアルキルグリシン水溶液およびその製造方法
WO2003031390A1 (fr) Solutions aqueuses tres concentrees de n,n-dialkylglycines et procede permettant de les preparer
CN106854179B (zh) 地喹氯铵及其类似物的制备方法
CN113683527B (zh) 一种肟菌酯的制备方法
JP2003176261A (ja) アミノアセトニトリルおよびグリシン誘導体の製造方法
WO2000043357A1 (fr) Procede de purification et d'isolement de derives de (2s, 3s)- ou (2r, 3s)-halohydrine
JP6618605B2 (ja) 3−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸又はその塩を含有する組成物
US20150183646A1 (en) Ammonia borane purification method
CN110655535A (zh) 一种替诺福韦的纯化方法
JP2915515B2 (ja) O―メチルイソ尿素硫酸塩の製造方法
CN110436488A (zh) 一种制备高纯单水氢氧化锂专用混合剂
KR101622630B1 (ko) 디클로페낙 콜린 염의 합성 방법
JP2006241091A (ja) 1,3−ジベンジル−2−オキソイミダゾリジン−4,5−ジカルボン酸の製造方法
JP2714868B2 (ja) 2―メチルチオセミカルバジドの製造法
JP4212821B2 (ja) 高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンモノエーテル又はその誘導体の製造方法
JPH0662498B2 (ja) 2,3,5,6―テトラフルオロ―4―ヒドロキシ安息香酸の製造方法
JPH10316646A (ja) 高純度の結晶質o−メチルイソ尿素酢酸塩の製造方法及び該方法で得られた結晶質o−メチルイソ尿素酢酸塩
JPS6157295B2 (ja)
JPH0489467A (ja) O―メチルイソ尿素硫酸塩の製法
JP2000128838A (ja) 結晶(s,s)−エチレンジアミン−n,n′−ジコハク酸及び(s,s)−エチレンジアミン−n,n′−ジコハク酸の製造方法
JP2001158777A (ja) 2−シアノピペラジンの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050617

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080115

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080213

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110222

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110222

Year of fee payment: 3

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120222

Year of fee payment: 4

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120222

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130222

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140222

Year of fee payment: 6

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees