JP4078737B2 - 筒内噴射型4サイクルエンジン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒内噴射型4サイクルエンジンの排出ガスに含まれる炭化水素,一酸化炭素の排出量を低減する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の排出ガス中に含まれる炭化水素(HC),一酸化炭素(CO)の排出量を低減する技術として様々な技術が実用化されている。
例えば、自動車技術ハンドブック設計編P.138に記載されたように、内燃機関の排気管の途中に2次空気導入路を設けて2次空気を導入し、サーマルリアクタで排気ガス中のHC,COを燃焼させる技術がある。
【0003】
また、特開平6−117226号公報に記載されたように、混合気を導く吸気通路とは別に、燃焼室に圧縮空気を噴射するための噴射弁を設け、圧縮空気を燃焼行程の上死点から排気行程の上死点までの間に噴射して、HC,COの酸化を促進させる技術もある。
さらに、3元触媒コンバータを用いて、HC,COを酸化させるとともに窒素酸化物(NOx)の還元を行なうことにより、各成分を無害な二酸化炭素,水蒸気,窒素に清浄化する技術も用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、サーマルリアクタを利用して排気ガス中のHC,COを低減する技術の場合、低負荷域で大量の空気を導入すると、排気ガス温度の低下を招いて触媒の反応を低下させてしまうため、空気流量の制御が不可欠となる。このため、少なくとも空気を供給するエアポンプ,空気流量を調整するコントロールバルブ,コントロールバルブを制御するコントロールユニットが必要となり、全体の構成が複雑化し、コスト上昇を招いてしまうという課題がある。
【0005】
また、特開平6−117226号公報に記載された技術では、通常のエンジンの構成とは別に圧縮空気を供給する手段を設ける必要が生じ、全体の構成が複雑化するとともにコストの上昇も招いてしまうという課題がある。
さらに、3元触媒コンバータに関しては、近年の希薄燃焼を行なうガソリンエンジンでは、排気ガスが酸素過剰雰囲気となるために有効に機能しない。そこで、特開平5−38452号公報に記載されているように、リーンNOx触媒を使用することも提案されているが、いずれにしても、これらの3元触媒やリーンNOx触媒を利用する技術では、エンジン始動直後は、触媒の温度が上昇しないために触媒が活性化し難く、HC,COが発生しやすいという課題がある。
【0006】
また、エンジン始動直後は、燃料を通常より多く噴射して排気温を高め、これにより触媒の活性化を促すことも行なわれているが、触媒が活性化していない始動初期はHCが発生しやすいという課題は依然として解決されていない。
本発明はこのような課題に鑑み創案されたもので、単純な構成で排気ガス中のHC,COの排出量を抑えることを可能にした、筒内噴射型4サイクルエンジンを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の本発明の筒内噴射型4サイクルエンジンでは、圧縮空気および燃料を燃焼室内に直接噴射するエアーアシスト式燃料噴射装置と、排気弁の開閉タイミングを変化させることのできる可変バルブタイミング装置と、始動時に該燃料噴射装置及び該可変バルブタイミング装置の作動を制御して、該排気弁の閉時期を通常よりも早めるとともに、該排気弁が閉じられ吸気弁が開き始めた後の吸気開始上死点付近で該燃料噴射装置から該圧縮空気のみを噴射させる制御手段とをそなえた。
【0009】
これによって、燃焼室に付着した燃料を圧縮空気により気化させるとともに排気せずに燃焼させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図5は本発明の一実施形態としての筒内噴射型4サイクルエンジンを示すものであり、図1は本筒内噴射型4サイクルエンジンの概略構成を示したものである。なお、本筒内噴射型4サイクルエンジンとしては、例えば、4サイクル火花点火式の筒内噴射型直列4気筒エンジン(筒内噴射型エンジン)を適用することができる。
【0011】
図1に示すように、筒内噴射型エンジン1のシリンダヘッド2には、各気筒毎に燃焼室5の頂部中央に点火プラグ3がそなえられ、エアーアシスト式燃料噴射装置4がその噴射口4aを燃焼室5に臨ませるように配置されている。また、シリンダヘッド2には燃焼室5を臨む吸気ポート6および排気ポート7が形成され、吸気ポート6は吸気弁6aの駆動により開閉され、排気ポート7は排気弁7aの駆動によって開閉されるようになっている。
【0012】
シリンダヘッド2の上部には吸気側カムシャフト6bおよび排気側カムシャフト7bが回転自在に支持されており、吸気側カムシャフト6bの回転により吸気弁6aが駆動され、排気側カムシャフト7bの回転により排気弁7aが駆動されるようになっている。また、吸気側カムシャフト6b,排気側カムシャフト7bには、それぞれ可変バルブタイミング装置6c,7c(以下、吸気側VVT6c,排気側VVT7cという)がそなえられている。
【0013】
吸気側VVT6c,排気側VVT7cは従来より公知のものであり、異なるプロフィールの低速カムと高速カムとを切換える方法や、カムシャフトとタイミングプーリアッシとの噛み合わせを変更する方法等(例えば、実開平5−73208号公報、特開平4−287846号公報に示される方法)を用いたもので、吸気弁6aおよび排気弁7aの基本的な開閉タイミングを変更可能にするものである。開閉タイミングの変更はECU8からの指令により行なわれるようになっている。
【0014】
また、シリンダブロック9内には、ピストン10が上下方向に摺動自在に支持されている。
エアーアシスト式燃料噴射装置4について詳述すると、本筒内噴射型4サイクルエンジンにかかるエアーアシスト式燃料噴射装置としては、既知の構造のものを適用することができる。すなわち、燃焼室5内に配置された噴射口4aと、この噴射口4aを開閉制御する開閉弁4bと、開閉弁4bを駆動するソレノイド4cと、圧縮空気流入口4dと、圧縮空気流入口4dに連結された圧縮空気供給ポンプ4eと、圧縮空気通路4fと、圧縮空気通路4f内に配置された燃料噴射弁4gとをそなえたものであり、ソレノイド4cおよび燃料噴射弁4gは、制御手段としてのECU8により制御されるようになっている。
【0015】
圧縮空気通路4f内は、常時、圧縮空気供給ポンプ4eにより供給される圧縮空気によって満たされており、この圧縮空気内に燃料噴射弁4gから燃料が噴射されるようになっている。したがって、ECU8からの指令により、燃料噴射弁4gから燃料を噴射した状態でソレノイド4cを励磁して開閉弁4bを開口した場合には、噴射口4aから圧縮空気が燃料とともに燃焼室5内に噴射されることになる。
【0016】
また、ECU8からの指令により、燃料噴射弁4gから燃料を噴射せずに、開閉弁4bを開口することも可能であり、この場合には、燃焼室5内には圧縮空気のみが噴射されることになる。つまり、本筒内噴射型4サイクルエンジンでは、エアーアシスト式燃料噴射装置4を用いることによって、圧縮空気のみの噴射を、余分な構成を追加することなく単純で低コストな構成で実現することができるようになっているのである。
【0017】
本発明の一実施形態としての筒内噴射型4サイクルエンジンは上述のように構成されているので、ECU8は、以下のようにしてエアーアシスト式燃料噴射装置4の噴射制御を行なう。
まず、ECU8では、所定のタイミングでエアーアシスト式燃料噴射装置4から燃料と圧縮空気とを燃焼室5内に噴射して、燃焼室5内で燃料を燃焼させ、エンジン1の出力を得る。このエアーアシスト式燃料噴射装置4の噴射タイミングは、エンジン回転数や負荷等の車両の運転状態に応じて制御され、例えば、加速走行時等のように高出力が必要と判断した場合には、吸気行程でエアーアシスト式燃料噴射装置4から燃料と圧縮空気とを噴射する。燃焼室5内に圧縮空気とともに噴射された燃料は、吸気ポート6から吸入される空気(新気)と均質に混合して理論空燃比付近の混合気となり、この理論空燃比付近の混合気を燃焼させることにより高出力が得られる。
【0018】
一方、一定車速での走行時等のように負荷が小さく高出力が要求されない場合には、圧縮行程(特に、圧縮行程後期)でエアーアシスト式燃料噴射装置4から燃料と圧縮空気とを噴射する。そして、エアーアシスト式燃料噴射装置4からの燃料噴射が終了した圧縮行程末期において、燃焼室5内の混合気への点火を行なう。
【0019】
このとき、エアーアシスト式燃料噴射装置4から圧縮空気とともに噴射された燃料は、吸気ポート6から吸入された流入空気による縦渦流により、燃焼室5の頂部中央に配設された点火プラグ3の近傍に集められ、点火プラグ3の近傍のみが理論空燃比又はリッチな空燃比となっており、逆に点火プラグ3から離隔した部分では極めてリーンな空燃比状態となる。これにより、燃焼室5内全体の空燃比は理論空燃比に比べて十分リーンな空燃比でありながら、点火プラグ3により点火された燃焼室5内の混合気は安定した層状燃焼を行なうことができ、低燃費が実現される。
【0020】
さらに、ECU8では、上述のように吸気行程若しくは圧縮行程においてエアーアシスト式燃料噴射装置4から燃料と圧縮空気とを噴射した後、排気行程において再びエアーアシスト式燃料噴射装置4を作動させる。ただし、ここでは燃料噴射弁4gから燃料を噴射せず、圧縮空気のみを燃焼室5内に噴射する。なお、図2は、排気行程から吸気行程にかけての吸気弁6a及び排気弁7aのリフト量(吸気ポート6及び排気ポート7の開閉量)とエアーアシスト式燃料噴射装置4の圧縮空気の噴射タイミングとを示したものであり、吸気開始上死点を0°としている。また、図3は、圧縮空気噴射時の燃焼室内の模式図である。
【0021】
図2に示すように、排気弁7aは排気行程が開始される下死点(−180°)よりもやや早めに開き始め、BTDC90°(−90°)付近で最大となり、吸気開始上死点(TDC)をやや過ぎたところで完全に閉じる。一方、吸気弁6aは吸気開始上死点(TDC)よりもやや早めに開き始め、ATDC90°(90°)付近で最大となり、下死点(180°)をやや過ぎたところで完全に閉じる。そして、ECU8では、排気行程中の吸気弁6aが閉じている間の所定のタイミング(例えば、排気弁7aのリフト量が最大となる直前からその後しばらくの間、すなわち、図2中のAで示すタイミング)で、エアーアシスト式燃料噴射装置4から圧縮空気を噴射させる。
【0022】
このようなタイミングで圧縮空気のみを噴射することにより、図3に示すように、燃焼室5内に残された排気にエアーアシスト式燃料噴射装置4から噴射された圧縮空気が混合する。燃焼室5内は高温であるため、その中に残留する排気温も高温に保たれており、排気中のHC,COは圧縮空気中の酸素と反応して、無害なH2 O,CO2 へと変化する。これにより、燃焼室5内から排気される排気中のHC,CO濃度は大幅に低減される。
【0023】
さらに、ECU8では、必要に応じて以下のようなタイミングでエアーアシスト式燃料噴射装置4を作動させ、燃焼室5内に圧縮空気を噴射する。なお、図4は、このときの排気行程から吸気行程にかけての吸気弁6a及び排気弁7aのリフト量(吸気ポート6及び排気ポート7の開閉量)とエアーアシスト式燃料噴射装置4の圧縮空気の噴射タイミングとを示したものであり、吸気開始上死点を0°としている。また、図5は、圧縮空気噴射時の燃焼室内の模式図である。
【0024】
図4に示すように、ここでは、ECU8は、排気側VVT7cに指令を送り、排気弁7aを通常より早期に、すなわち、吸気開始上死点(TDC)よりもやや早めに閉じる。なお、図中のBで示した点線は通常の排気弁7aの開閉タイミングを示したものである。吸気弁6aに関しては通常のタイミングで開閉され、丁度、排気弁7aが閉じる頃に開き始める。そして、ECU8では、排気弁7aが閉じられ、吸気弁6aが開き始めた後の吸気開始上死点(TDC)付近の所定のタイミング(例えば、図4中のCで示すタイミング)で、エアーアシスト式燃料噴射装置4から圧縮空気を噴射させる。
【0025】
このようなタイミングで圧縮空気のみを噴射することにより、図5に示すように、ピストン10,燃焼室5内壁等に付着した燃料11は、エアーアシスト式燃料噴射装置4から噴射された圧縮空気により吹き飛ばされて気化する。さらに、気化された燃料は、排気側VVT7cにより排気弁7aは閉じられた状態であるため燃焼室5内から排気されることなく、一端吸気ポート6に戻る(燃焼室5内に止まる燃料も存在する)。そして、吸気ポート6に戻った燃料は再び吸気行程を経て再度燃焼室5内に戻され、次の膨張行程で有効に燃焼される。したがって、特に低温始動時に、ピストン10頂部表面や燃焼室5内壁等に付着した燃料が未燃のまま燃焼室から排出される結果、排気ガス中のHC濃度が増加してしまうことが防止される。なお、上記制御は特に始動時に行なうことが望ましい。
【0026】
このように、本筒内噴射型4サイクルエンジンによれば、エアーアシスト式燃料噴射装置4は、排気行程中の吸気弁7aが閉じている間に圧縮空気のみを燃焼室5内に噴射するので、燃焼室5内に残されたHC,COを圧縮空気中の酸素と反応させることができ、高温の燃焼室5内に圧縮空気を噴射するので低温始動時でもHC,COは空気と反応しやすく、排気中のHC,CO濃度を効果的に下げることができるという利点がある。
【0027】
また、吸気弁7aが閉じている間に圧縮空気を噴射するので、吸気が流入して燃焼室5内の温度が低下する前の反応が起こりやすい状態でHC,COと空気とを反応させることができるという利点もある。
さらに、本筒内噴射型4サイクルエンジンによれば、エアーアシスト式燃料噴射装置4は、排気弁7aが閉じられ、吸気弁6aが開き始めた後の吸気TDC付近のタイミングで圧縮空気のみを燃焼室5内に噴射するので、ピストン10,燃焼室5内壁等に付着した燃料11を圧縮空気噴射により吹き飛ばして気化させることができ、さらに気化された燃料は排気されることなく一端吸気ポート7に戻り、再び吸気行程を経て再度燃焼室5内に戻されるので、次の膨張行程で有効に燃焼させることができるという利点がある。
【0028】
したがって、特に低温始動時に、ピストン10頂部表面等の燃焼室5内壁に付着した燃料が未燃のまま燃焼室から排出される結果、排気ガス中のHC濃度が増加してしまうという問題を解決するのに大変効果的である。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施できることは言うまでもない。例えば、上述した排気行程中の圧縮空気噴射と吸気行程中の圧縮空気噴射とは、同一のサイクルにおいて行なう以外に、排気行程中の圧縮空気噴射の次に必要に応じて吸気行程中の圧縮空気噴射を行なったり、排気行程中の圧縮空気噴射,吸気行程中の圧縮空気噴射をそれぞれ別々のサイクルにおいて行なったり、また、排気行程中の圧縮空気噴射のみや吸気行程中の圧縮空気噴射のみを行なってもよい。
【0029】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1記載の本発明の筒内噴射型4サイクルエンジンによれば、制御手段が、圧縮空気および燃料を燃焼室内に直接噴射するエアーアシスト式燃料噴射装置及び可変バルブタイミング装置の作動を制御して、排気弁の閉時期を通常よりも早めるとともに、排気弁が閉じられ吸気弁が開き始めた後の吸気開始上死点付近で圧縮空気のみを噴射するので、燃焼室内壁等に付着した燃料を吹き飛ばして気化させることができ、気化された燃料は排気されることなく次の膨張行程で有効に燃焼させることができ、排気ガス中のHC,COの排出量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態としての筒内噴射型4サイクルエンジンの構成を示す要部断面図である。
【図2】本発明の一実施形態としての筒内噴射型4サイクルエンジンにかかる圧縮空気の噴射タイミングを示す図である。
【図3】本発明の一実施形態としての筒内噴射型4サイクルエンジンにかかる図2の噴射タイミングに対応した圧縮空気噴射時の燃焼室内の模式図である。
【図4】本発明の一実施形態としての筒内噴射型4サイクルエンジンにかかる圧縮空気の他の噴射タイミングを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態としての筒内噴射型4サイクルエンジンにかかる図4の噴射タイミングに対応した圧縮空気噴射時の燃焼室内の模式図である。
【符号の説明】
1 筒内噴射型エンジン(筒内噴射型4サイクルエンジン)
2 シリンダヘッド
3 点火プラグ
4 エアーアシスト式燃料噴射装置
4a 噴射口
4d 圧縮空気流入口
4e 圧縮空気供給ポンプ
4f 圧縮空気通路
4g 燃料噴射弁
5 燃焼室
6 吸気ポート
6a 吸気弁
6b 吸気側カムシャフト
6c 吸気側VVT
7 排気ポート
7a 排気弁
7b 排気側カムシャフト
7c 排気側VVT(可変バルブタイミング装置)
8 制御手段(ECU)
Claims (1)
- 圧縮空気および燃料を燃焼室内に直接噴射するエアーアシスト式燃料噴射装置と、
排気弁の開閉タイミングを変化させることのできる可変バルブタイミング装置と、
始動時に該燃料噴射装置及び該可変バルブタイミング装置の作動を制御して、該排気弁の閉時期を通常よりも早めるとともに、該排気弁が閉じられ吸気弁が開き始めた後の吸気開始上死点付近で該燃料噴射装置から該圧縮空気のみを噴射させる制御手段とをそなえたことを特徴とする、筒内噴射型4サイクルエンジン。
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