JP4078710B2 - 易開封性多室パウチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はパウチ本体の側壁に1または2以上の分岐した小室を配設し、パウチ本体とは特別の仕切部で隔離して粉体や液体を別々に収納し、使用時に圧をかけて仕切部を開封し、内容物を混合して使用する易開封性多室パウチに関する。
【0002】
【従来の技術】
多室を有するパウチは、医療用輸液・溶解液、調味料、混合型接着剤等、各成分を予め混合した状態で保存すると反応を起こしてしまうような内容物に対し、任意の成分ごとに分離収容でき、使用時に外部からの異物の混入を防止して、混合比の調整することなく容易に混合できることから、その需要は増大している。
従来の多室パウチは、例えば実開昭60−57561号公報等に記載されているように平パウチの中心部近傍を、クランプ等で押さえる方法、弱ヒートシールする方法、易剥離性フイルムをヒートシールする方法等によって分離隔壁を形成した構造となっている。しかし、クランプ等で押さえる方法の場合は容器本体とは別の部材を必要とするばかりでなく、分離隔壁の気密性が問題となる。また、ヒートシールによる方法では、気密性に対する問題は解消されるものの、使用性を考慮した圧潰易開封性シールとした場合には、外部からの圧力によって、分離隔壁に開封力がかかり開封してしまうため、そのままの状態で流通させることは困難である。そこで、分離隔壁への圧力を緩和するために、分離隔壁を挾み込むようにコの字型にパウチを折り曲げたり、段ボール等の剛性のある外装を用いて外部からの力を遮断する必要がある。また、自立性がないために、保管性を向上させる意味からも剛性のある外装を用いなければならない。
【0003】
このように、折り曲げにより分離隔壁を保護する場合には、折曲位置が制限されるが、平パウチでは正しい位置で折り曲げることは極めて作為的に行わなければ困難である。また、結束帯や外装により折曲を拘束しておかなければ、折り曲げ位置がずれたり、折り曲げが開いて折り曲げが不十分となり、十分に分離隔壁を保護できないという問題を生ずる。また、特開平9−226846号公報等に記載されているように、コの字型に折り曲げると、分離隔壁が湾曲変形しやすく、変形による分離隔壁の破壊が起きやすいという問題がある。一方、外装を用いると、コストの上昇とゴミの増加を招くという問題がある。
単層または積層シートで形成したパウチの頂部より下方の位置の側壁の少なくとも1個所を外側に伸張させて分岐した少なくとも1つの小室を形成し、分岐部よりやや小室側には小室とパウチ本体とを隔離する仕切部を配置し、仕切部の少なくとも1部が圧潰性シール部である分岐した小室を設けた多室パウチを特願平8−354216号として提案した。このパウチは流通および保管時に要する分離隔壁の保護性と、使用時に必要となる圧潰易封性の両方の特徴を持つ。しかし、このパウチが示す分離隔壁の保護性はパウチ本体側に生じた破壊力のみに作用し、小室側に生じた破壊力に対しては作用しないので小室側の内容品は、粉体や固形物、あるいは、比較的小容量の液体に限定されるという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は分岐した小室に不要な外圧が加えられても仕切部が開封しない易開封性多室パウチを提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
「1. 単層または多層のシートで形成したパウチの頂部より下方の位置の側壁の少なくとも1個所を外側に伸張させて分岐した少なくとも1つの小室を形成し、分岐部よりやや小室側には小室とパウチの本体とを隔離する仕切部を配置した多室パウチにおいて、仕切部が仕切部に挿入した合成シートと、小室の内壁との間に形成したヒートシール部からなり、合成シートの片面は小室の内壁部と強固に接合するタイトシールを形成し、他面は弱い接合力で接合する易剥離性シールを形成し、かつ小室側は易剥離性シールの端部をタイトシールの端部と同じか小室側にずらせて配置し、一方、パウチ本体側は少なくとも開封開始部において、易剥離性シールの端部をタイトシールの端部と同じか小室側にずらせて配置したことを特徴とする、易開封性多室パウチ。
2. 易剥離性シールが圧潰易剥離性シールである、1項に記載された易開封性多室パウチ。
3. 易剥離性シールが、仕切部に挿入した合成シートの片面ないしその近傍に小室の内壁材とは異種の樹脂層を設け、小室の内壁に熱接着して形成したシールである、1項または2項に記載された易開封性多室パウチ。
4. 易剥離性シールが、仕切部に挿入した合成シートの片面ないしその近傍に小室の内壁材と同種の樹脂と非相溶性の樹脂との混合物層を設け、小室の内壁に熱接着して形成されたシール層である、1項または2項に記載された易開封性多室パウチ。
5. 易剥離性シールが、仕切部に挿入した合成シートの片面に小室の内壁材と同種の樹脂層を設け、内壁に熱接着して形成された、1項ないし4項のいずれか1項に記載された易開封性多室パウチ。
6. 小室側において易剥離性シールとタイトシールの端部のずれが0.5mm〜20mmである、1項ないし5項のいずれか1項に記載された易開封性多室パウチ。
7. 小室の端部に注出口を設置した、1項ないし6項のいずれか1項に記載された易開封性多室パウチ。
8. 小室に設けた注出口が先細形状であり、5mm〜300mmの長さである、7項に記載された多室パウチ。
9. 小室に設けた注出口が栓である、7項に記載された多室パウチ。
10. 分岐した小室が分岐部を支点として折り曲げられてパウチ本体に沿って配置された、1項ないし9項のいずれか1項に記載された多室パウチ。
11. パウチが自立性である、1項ないし10項のいずれか1項に記載された多室パウチ。」
に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明における易開封性とは仕切部を容易に開封し、パウチ本体と小室を連通することを言う。また、小室とはパウチ本体に対して分岐した室を意味し、例えば小室側がパウチ本体側より大きくてもよく、パウチ本体側と小室側との大小関係を制限するものではない。
本発明において、パウチの側壁を外側に伸張させて分岐した小室を形成したのは、パウチ本体を仕切って多室に分割したのとは異なり、分岐した小室はパウチ本体内に内容物を充填すると、これに伴う容器変形により、分岐部を支点としてパウチの側壁に折り曲がって沿うので、落下等によりパウチ本体内に生じた衝撃力が、分岐部に形成する折り曲げにより緩和ないしは分断され、小室に作用する破壊力を効果的に減少させることができる。
【0007】
何故分岐部よりやや小室側に仕切部を設けた小室をパウチ本体に沿って分岐部で折り曲げると不用意に加えられたパウチの落下等の外圧による仕切部の圧潰易開封性シール部の開封が防止できるのかその学問的解明は必ずしも充分でないが仕切部の開封の防止は反復再現性があるので、平パウチを仕切って折り曲げた場合と異なり、本発明の分岐した室は、分岐部がパウチ本体の巾方向両端でパウチ本体と結合し固定されているので圧が加えられても折り曲げ部がずれないこと、パウチに圧が加えられると平パウチの場合の仕切部は折り曲げられた仕切部の外側には仕切部を側壁に沿って伸ばそうとする張力が加えられ、一方内側では仕切部を側壁に沿って押し縮めようとする圧縮力が加えられ、この2つに相反する力により仕切部は破壊される。ところが本発明仕切部は折り曲げ部にはないので、折り曲げ部に加えられる張力と圧縮力は折り曲げられた側壁のシートに加えられ仕切部には加えられないこと、折り曲げ部を通過した内容物により圧力が仕切部に加えられると折り曲げ部が起立するように動き分岐小室が立ち上がったり、立ち上がろうとするのでこの際の仕事により仕切部にかかる開封エネルギーが消費されること等が仕切部の開封を防止していると考えられる。
【0008】
小室とパウチ本体との分岐部よりやや小室側に両者を隔離する仕切部を設置することにより、両者は夫々独立した室となり、別の物を収納することができる。
これは単にパウチを仕切って連結した状態にしたものと異なり、陳列時のパウチ面積を縮小させる効果を持つとともに、パウチ本体が自立性パウチならばパウチの高さがむやみに高くなることもないので、自立性を損なうこともない。
【0009】
仕切部を圧潰易開封性シールとすれば予め混合しておくことのできないものを夫々分離して収納し、使用時に外圧を加えてシールを剥離することにより混合して使用することができる。これは前記した本発明の効果を活用するものであり、単に平パウチ本体を圧潰易剥離性シールにより仕切って多室に分割し、結束帯や外装等により強制的に折り曲げ保持したものとは異なり、結束帯や外装等がなくとも折り曲げが正しい位置に確実に形成し、しかも折り曲げ位置がずれ難く、折れ曲げが開き難い、分離隔壁の保護性に優れる易開封多室パウチとすることができる。
【0010】
分岐した小室には注出口を設置することにより小室内の物やパウチの内容物を取り出すことが容易となるが、栓を設けてもよく、また小室の端部を長さを5mm〜300mmの先細の注出口とすると内容物の取り出し時に、受ける容器に注出口を挿入したり、注ぐ物に適切に注出口を向けて取り出すことができ、コボレ等を防止することためにも好ましく、内容物が液体の場合には特に好ましい。
小室の注出口は栓の他ヒートシールしてあってもよい。
本発明において、仕切部に合成シートを挿入し、このシートと小室の内壁との間に、タイトシールと、易剥離性シールを形成し配置したのは、易剥離性シール部がないと使用時に仕切部を開封し両室内の内蔵物を混合することができないからである。しかし易剥離性シールのみでは不要な圧が加わっただけで開封する危険が大きい。
【0011】
すなわち、本発明において、パウチの側壁を外側に伸張させて分岐した小室を形成したのは、前記したように、落下等によりパウチ本体内に生じた衝撃力が、分岐部に形成する折り曲げにより緩和ないしは分断され、パウチ本体と小室間の仕切部に作用する破壊力を効果的に減少させることができるからである。しかし、これだけでは小室の内容物が液体の場合には、小室内にも破壊力が生じ、小室側から仕切部の易剥離性シール部が開封するという問題が残る。
そこで、本発明においては、小室側は易剥離性シールの端部をタイトシールの端部より小室側にずらせて配置する。このようにずらすことにより、小室側に加わる外圧はタイトシールの小室側の端部に破壊力として作用するが、このシール部は強固に接着しているため開封しない。一方、この破壊力は易剥離性シールの小室側に位置する部分には剪断力として作用する。しかし、易剥離性シール部は剪断力に対しては極めて強いため開封しない。
【0012】
本発明において、小室側における易剥離性シールとタイトシールの端部のずれは、上記した効果と易剥離性の点から、0.5mm以上20mm以下、好ましくは1mm以上10mm以下が望ましい。
一方、パウチ本体側では、少なくとも開封開始部において、易剥離性シールの端部はタイトシールの端部と同じか小室側にずらして配置する。そのため、仕切部を開封するために、パウチ本体に沿わせていた小室を、分岐部を支点としてパウチの頂部側に開き、逆にパウチの頂部をパウチ本体側に折り曲げ沿わせた状態にして、平坦な台上に置きパウチ本体を手で押し潰すと、内圧は易剥離性シールの端部に剥離力として作用し、開封開始部より仕切部が開封し始める。
なお、開封開始部におけるヒートシール形状は、パウチ本体側に突出させた烏口形状とすると、開封開始が確実かつ容易となるので好ましい。
【0013】
本発明において、パウチを構成するヒートシール性を有する基材シートの樹脂としては公知の低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン系不飽和カルボン酸ないしその無水物でグラフト変性されたオレフィン樹脂等のオレフィン系樹脂、比較的低融点ないし低軟化点のポリアミドないしコポリアミド樹脂、ポリエステルないしコポリエステル樹脂、ポリカーボネイト樹脂等が使用される。
また、内容物によって、バリアー性が必要とされる場合は、上記樹脂からなる基材シート上に、アルミ箔、スズ箔、銅箔等の金属箔、アルミ蒸着、セラミック蒸着を行ったシート、あるいは、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニリデン、ナイロン等の高酸素バリアー性樹脂シート、環状オレフィンコポリマー等の高水分バリアー性樹脂シート等を直接、あるいは接着剤、アンカー剤で積層して使用される。
なお、パウチを構成するシートの製造方法としては公知の方法が適用でき、単層、あるいは多層のダイを用いたキャスティング法、インフレーション法、予め用意したシートとに押し出しコーティングする方法、あるいは、シート同士をヒートラミネーション、サンドラミネーションによりれラミネートする方法が採用される。
本発明のパウチに用いるこれらの単層あるいは多層シートの厚みは、手指によって充分にパウチを圧力を加えて圧潰できるように、可撓性を有する厚みとすることが必要である。
【0014】
本発明において、仕切部を形成する合成シートは、小室の内壁の一方とはタイトシールを形成し、他方とは易剥離性シールを形成する。タイトシールの形成は、合成シートの片面に小室の内壁と同種のヒートシール性樹脂層を用いることによって達成される。また、易剥離性シールの形成は、合成シートの他面に界面剥離性ないしは凝集破壊性の弱接着部を設けることにより達成される。
例えば、合成シートの一面に小室内壁と同種のヒートシール性樹脂層を設け、他面には異種のヒートシール性樹脂層を設ける。これにより、合成シートの片面は小室内壁とタイトシールを形成し、他面は界面剥離し易い易剥離性シールを形成する。また、合成シートを、例えば3層構成として、両面に小室内壁と同種のヒートシール性樹脂層を一方は厚く、他方は破断し易く薄く設け、かつ、異種のヒートシール性樹脂層を中間層として、これらの間に設けてもよい。この場合、合成シートは両面とも小室内壁とはタイトシールを形成するが、同種のヒートシール性樹脂層を薄く設けた方は、剥離力が作用した場合、この層が破断するため、剥離は中間層との間の界面剥離となり、実質的にこの面は易剥離性シールを形成することになる。
【0015】
このように、界面剥離を生ずる例としては、線状低密度ポリエチレンとポリプロピレン系樹脂、または線状低密度ポリエチレンと環状ポリオレフィン系樹脂、線状低密度ポリエチレンとポリブテン−1樹脂等の組み合わせがある。
また、非相溶の樹脂を加えたブレンド物の層も、界面剥離性ないしは凝集破壊性の弱接着部を形成することから、この層を前記したと同様な層構成にして用いることができる。
このような例としては、ポリエチレンとポリプロピレン、ポリエチレンとポリブテン等のブレンド物が挙げられ、その配合比を調整することによりポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等に対して、易剥離性シールを形成することができる。
本発明において、タイトシール部のヒートシール強度は、流通時のシール破損を防止する意味で、15mm幅あたり、2kgf以上、好ましくは2.5kgf以上を有するのが望ましい。また、易剥離性シール部のヒートシール強度は、流通時のシール破損と易剥離性シールを確保する上で、15mm幅あたり0.1kgf以上、1kgf以下、望ましくは0.15kgf以上、0.8kgf以下が望ましい。
【0016】
次に図面を用いて本発明を具体的に説明する。
図1は、本発明の多室パウチの1例を示す。パウチ本体1の側壁を外側に伸張させて分岐した小室2が形成してある。この例では小室は1個形成されているが、パウチ本体の側壁に2個以上設けてもよい。分岐した小室の分岐部よりやや小室側には小室とパウチ本体を隔離する仕切部3が設けてある。小室の端部には栓体4が設けてある。
【0017】
図2は図1のパウチの高さ方向に沿った断面図を示す。5は広がる底部であり、このパウチはスタンディングパウチである。2は小室であり、3は仕切部である。
パウチ本体1と小室2にはそれぞれ液状の内容物が充填してある。内容物はパウチ本体側はパウチの頂部より充填し、ヒートシールにより密封してある。小室側は栓体から充填してもよいし、側縁部に未シール部を設け、そこから充填してもよい。また、小室の端部より内容物を充填した後、栓体をヒートシールして取り付けてもよい。
小室2はパウチ本体1の側壁に分岐部で折り曲げ沿わせてある。そのため、流通時等において、落下等によりパウチ本体内に生じた衝撃力は、分岐部に形成する折り曲げにより緩和ないしは分断されるため、パウチ本体1と小室2の間の仕切部3に作用する破壊力を効果的に減少させることができる。
【0018】
図3は仕切部3を説明するものである。仕切部の右側が小室側であり、左側がパウチ本体側である。6は合成シートであり、シートは小室壁7、8とタイトシール9と易剥離性シール10を形成している。ここで、易剥離性シール10の小室側の端部およびパウチ本体側の端部は、タイトシール9の小室側の端部およびパウチ本体側の端部より、それぞれ小室側にずらせて配置してある。
小室に外圧が加えられると、仕切部3に剥離力が作用する。これは小室壁7と合成シート6の間に形成したタイトシール部9の小室側の端部に作用するが、この部分は強固に接合しており剥離しない。同じくこの剥離力は、合成シート6を介して、小室壁8と合成シート6の間に形成した易剥離性シール10の小室側に位置する部分に剪断力として作用する。易剥離性シール10を剥離させるには大きな力はいらないが、この部分を剪断するには大きな力が必要であり、外圧による剪断力程度ではシールは開封しない。
したがって、図3に示す本発明の仕切部は小室に外圧が作用しても開封しない。
【0019】
図4は開封のため、パウチ本体1に沿わせていた小室2を、分岐部を支点としてパウチの頂部側に開き、逆にパウチの頂部をパウチ本体側に折り曲げ沿わせて、平坦な台上に置いた状態を示す。このときパウチ本体1を手で押し潰すとパウチ本体1と小室2とが直線状となっているため、パウチ本体1の内圧は易剥離性シール10の端部に剥離力として作用し、仕切部が開封し始める。
【0020】
図5は合成シート6の層構成を例示した断面図である。この例ではシートは小室内壁とタイトシールを形成する層11と、易剥離性シールを形成する層12の2層からなる。タイトシールを形成する層11には小室内壁と同種のヒートシール性樹脂が用いられ、易剥離性シールを形成する層12には異種のヒートシール性樹脂あるいは同種の樹脂に非相溶の樹脂を加えたブレンド物が適用される。
図6は合成シート6の別の層構成を例示した断面図である。この例では3層構成となっており、片面には小室内壁とタイトシールを形成する厚い層11と、他面側には小室内壁に対しヒートシール性を示すが薄〈破断し易くなっている層13があり、これらの間に層間剥離性ないしは凝集破壊性の層14が設けてある。この場合、ヒートシール性樹脂を薄く設けた層13のヒートシール部に剥離力が作用すると、この層が破断し、剥離は中間層14との層間剥離ないしは中間層14の凝集破壊となり、実質的にこの面は易剥離性シールを形成する。
【0021】
【実施例】
実施例1
パウチを形成するシートとして、外層より厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフイルムと厚さ130μmの線状低密度ポリエチレンフイルムをウレタン系接着剤によりラミネートし用いた。仕切部を形成する合成シートには、厚さ25μmの線状低密度ポリエチレン層と、低密度ポリエチレンにポリブテン−1を20重量%ブレンドした厚さ5μmのブレンド樹脂をとを共押出して得た。全厚30μm、幅13mmの2層フイルムを用いた。これらのシートをヒートシールして、栓体を有さないことを除けば図1と同様な、分岐した小室を1個有する自立性パウチを作成した。
パウチ本体側の寸法は、幅90mm、高さ200mm、マチ部の折り込み深さ30mmとした。分岐部はパウチ本体側の頂部から35mmにあり、小室側の寸法は、幅90mm、分岐の長さ60mmとした。周縁ヒートシール部の幅は5mmとし、仕切部は分岐部より小室側に5mmの距離に位置させた。また、仕切部において、合成シートの線状低密度ポリエチレン層側の面に形成するタイトシールの幅は10mm、ブレンド樹脂層側の面に形成する易剥離性シールの幅も同じく10mmとし、易剥離性シールの位置をタイトシールに対して2mm小室側にずらせて位置させた。
パウチ本体側に頂部より水150mlを充填しヒートシールにより密封した後、小室側にも端部より水10mlを充填しヒートシールして密封した。
このように作成したパウチについて、仕切部におけるTピール強度、耐圧強度、開封強度をそれぞれ後述する方法により測定し、結果を表1に示した。
【0022】
実施例2
易剥離性シールの幅を10mmとし、タイトシールの幅を8mmとして、パウチ本体側は易剥離性シールとタイトシールの端部が同じ位置となるようにした他は、実施例1と同様にしてパウチを作成し評価した。結果を表1に示した。
【0023】
実施例3
易剥離性シールとタイトシールのずれを小室側に0.5mmとた他は、実施例1と同様にしてパウチを作成し評価した。結果を表1に示した。
【0024】
実施例4
幅30mmの合成シートを用いたことと、易剥離性シールの幅を25mmとし、タイトシールの幅を5mmとして、パウチ本体側は易剥離性シールとタイトシールの端部が同じ位置となるようにした他は、実施例1と同様にしてパウチを作成し評価した。結果を表1に示した。
【0025】
実施例5
合成シートに、厚さ25μmのメタロセン系触媒を用いた線状低密度ポリエチレン層と、厚さ5μmのエチレンのコモノマーとするポリプロピレンのランダム共重合体層と、厚さ3μmの線状低密度ポリエチレン層とを共押出して得た、全厚33μm、幅13mmの3層フイルムを用いた他は、実施例1と同様にしてパウチを作成し評価した。結果を表1に示した。
【0026】
比較例1
易剥離性シールとタイトシールの位置を全く同じにした他は、実施例1と同様にしてパウチを作成し評価した。結果を表1に示した。
【0027】
比較例2
易剥離性シールの位置をタイトシールに対して2mmパウチ本体側にずらせて位置させた他は、実施例1と同様にしてパウチを作成し評価した。結果を表1に示した。
【0028】
比較例3
易剥離性シールの幅を8mmとし、タイトシールの幅を10mmとして、易剥離性シールの位置をタイトシールの内側の中間に位置させた他は、実施例1と同様にしてパウチを作成し評価した。結果を表1に示した。
【0029】
比較例4
易剥離性シールの幅を10mmとし、タイトシールの幅を8mmとして、タイトシールの位置を易剥離性シールの内側の中間に位置させた他は、実施例1と同様にしてパウチを作成し評価した。結果を表1に示した。
【0030】
【表1】
【0031】
〈評価〉
実施例1〜5のパウチは、200kqf以上の充分な耐圧強度を示すと共に、使用時には手で容易に開封することができた。
[Tピール強度の測定方法]
仕切部より垂直に15mm幅の短冊を切り出し、小室側からとパウチ本体側からの両方から、Tピール強度をJIS Z 0238に従い測定した。測定個数は各10本とした。
[耐圧強度の測定方法]
雰囲気温度23℃において、図2と同様に、小室を分岐位置をしてとしてパウチ本体に折り曲げ沿わせた状態で、パウチより充分に大きい透明な加圧盤に挟み、仕切部の状態を観察しながら、速度50mm/分で圧縮し、仕切部が連通するまでの最大荷重を測定した。ただし、破壊がなく荷重が200kgfを越えた場合は、その時点で測定をとめた。測定個数は各10個とした。
[開封強度の測定方法]
雰囲気温度23℃において、図4と同様に、小室を分岐部を支点としてパウチの頂部側に開き、逆にパウチの頂部をパウチ本体側に折り曲げ沿わせて、平坦な台上に置き、パウチ本体側を加圧盤を用いて速度50mm/分で圧縮し、仕切部が連通するまでの最大荷重を測定した。ただし、荷重が100kgfを越えた場合は、その時点で測定をとめた。測定個数は各10個とした。
【0032】
【発明の効果】
本発明は、複数成分を分離して包装することができ、使用時において仕切部を簡単に開封してパウチ内で混合することができる優れた作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多室パウチの実施例の説明図である。
【図2】図1の多室パウチの断面図である。
【図3】仕切部の説明図である。
【図4】パウチを開封する説明図である。
【図5】仕切部の合成樹脂シートの説明図である。
【図6】他の例の仕切部の合成樹脂シートの説明図である。
【符号の説明】
1 パウチ本体
2 小室
3 仕切部
4 栓体
5 底部
6 仕切部の合成樹脂シート
7 小室壁
8 小室壁
9 タイトシート
10 易剥離性シール部
11 小室壁とタイトシールを形成する層
12 小室壁と易剥離性シールを形成する層
13 破断し易い層
14 凝集破壊性層
Claims (11)
- 単層または多層のシートで形成したパウチの頂部より下方の位置の側壁の少なくとも1個所を外側に伸張させて分岐した少なくとも1つの小室を形成し、分岐部よりやや小室側には小室とパウチの本体とを隔離する仕切部を配置した多室パウチにおいて、仕切部が仕切部に挿入した合成シートと、小室の内壁との間に形成したヒートシール部からなり、合成シートの片面は小室の内壁部と強固に接合するタイトシールを形成し、他面は弱い接合力で接合する易剥離性シールを形成し、かつ小室側は易剥離性シールの端部をタイトシールの端部と同じか小室側にずらせて配置し、一方、パウチ本体側は少なくとも開封開始部において、易剥離性シールの端部をタイトシールの端部と同じか小室側にずらせて配置したことを特徴とする、易開封性多室パウチ。
- 易剥離性シールが圧潰易剥離性シールである、1項に記載された易開封性多室パウチ。
- 易剥離性シールが、仕切部に挿入した合成シートの片面ないしその近傍に小室の内壁材とは異種の樹脂層を設け、小室の内壁に熱接着して形成したシールである、1項または2項に記載された易開封性多室パウチ。
- 易剥離性シールが、仕切部に挿入した合成シートの片面ないしその近傍に小室の内壁材と同種の樹脂と非相溶性の樹脂との混合物層を設け、小室の内壁に熱接着して形成されたシール層である、1項または2項に記載された易開封性多室パウチ。
- 易剥離性シールが、仕切部に挿入した合成シートの片面に小室の内壁材と同種の樹脂層を設け、内壁に熱接着して形成された、1項ないし4項のいずれか1項に記載された易開封性多室パウチ。
- 小室側において易剥離性シールとタイトシールの端部のずれが0.5mm〜20mmである、1項ないし5項のいずれか1項に記載された易開封性多室パウチ。
- 小室の端部に注出口を設置した、1項ないし6項のいずれか1項に記載された易開封性多室パウチ。
- 小室に設けた注出口が先細形状であり、5mm〜300mmの長さである、7項に記載された多室パウチ。
- 小室に設けた注出口が栓である、7項に記載された多室パウチ。
- 分岐した小室が分岐部を支点として折り曲げられてパウチ本体に沿って配置された、1項ないし9項のいずれか1項に記載された多室パウチ。
- パウチが自立性である、1項ないし10項のいずれか1項に記載された多室パウチ。
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