JP4078610B2 - 覆工セントルによる覆工コンクリートの養生方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、覆工セントルによる覆工コンクリートの養生方法に関し、特に、覆工セントルを活用することで養生作業のコストと効率を改善する覆工セントルによる覆工コンクリートの養生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
トンネルの内壁面は、崩落や肌落ちなどを防ぐために掘削後の内壁面にコンクリートを直接吹付けると共に、全断面用のセントルフォームを用いて覆工しているが、近年における換気設備の改善、大型化によってトンネル坑内は、従来のように高温・多湿ではなくなっていることから、覆工コンクリートの表面は、型枠脱型後に、直接、低温・乾燥な空気にさらされると共に、急冷・乾燥状態になるために、表面に収縮ひび割れが発生し易くなっている。
【0003】
このような問題を回避するための従来対策には、膨張剤を添加した特殊なコンクリートを用いる、コンクリート表面を水等で湿潤状態に保つ、もしくはシート養生する等を採用してきたが、特殊なコンクリートは経済的問題、水等での湿潤は、散水養生による路盤劣化と散水・排水処理設備を要するためのコスト問題があり、シート養生は、トンネルアーチにシートを取付け難い施工上の問題が包含されているために実用的でなく、それぞれの問題が未解決である限りいずれの対策も充分なものでなかった。
【0004】
そして、これを改善するとして提案された覆工コンクリートの養生装置の例は、シートと超音波加湿器とを特別に製作した移動式架台に設置することで構成している。本養生装置のシートは、合成樹脂製であって移動式架台に覆工コンクリートに沿った形態で固設されている鋼材製ガイドパイプの上に敷設されており、これによって覆工コンクリートとシートとの間に隔成された空間を形成している。
【0005】
上記空間は、設置される妻材でその両端を閉塞されているものであり、移動式架台に設置されて超音波振動によって水を沸騰させて水蒸気を発生している超音波加湿器は、空間の下方から天井側に向けて水蒸気を移動させながら、隔成された空間に充満させているが、水蒸気は冷却されながら水滴化しているので、落下する水の飛散を防止するとしている。(例えば、特許文献1を参照)
【0006】
提案の養生装置は、これによって、この状態を所定時間経過することによって、覆工コンクリートは、湿潤状態によって蒸気養生できるとしている。しかるに、養生装置は、覆工コンクリートを養生するために移動式架台にシートを貼設し、複数の超音波加湿器を設置するという特別に製作したものであり、掘削と別途の特別のコストを要している。
【0007】
さらに、提案の養生装置は、その作業効率面においても覆工コンクリートとシートとの間が相当の間隙を有する空間として隔成されていることから、超音波加湿器から放出される水蒸気は、広い空間に費やされることになって覆工コンクリートの表面に割り当てられる比率を低レベルに留めており、覆工コンクリートに対する湿潤状態の確保よりもシートに落下する水量を大にすることで、水の飛散は防止されてもその養生は充分に行われる状態にない。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−73696号公報(段落番号「0006」〜「0008」、「0010」〜「0026」、図1、2)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の現況に鑑みて提案するものであり、覆工セントルを活用して、覆工コンクリートにおける養生作業の施工を容易にすることで、養生の低コスト化と作業の高効率化を図れる覆工セントルによる覆工コンクリートの養生方法を提供している。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明である覆工セントルによる覆工コンクリートの養生方法は、覆工セントルに設置したシート展張装置から、覆工コンクリート側に凹凸による空隙を形成して成る合成樹脂シートを繰り出して、覆工コンクリートの表面に貼設しており、覆工セントルを活用することで他の作業に支障を与えずに養生作業の施工を容易にすると共に、覆工コンクリート表面の収縮ひび割れを確実に減らして、膜養生のコスト、作業性及び養生効率を改善している。
【0011】
請求項2に記載の発明である覆工セントルによる覆工コンクリートの養生方法は、覆工セントルに設置したシート展張装置から、覆工コンクリート側に凹凸による空隙を形成して成る合成樹脂シートを繰り出して、覆工コンクリートの表面に貼設し、しかる後に空隙に覆工セントルに設置した蒸気発生装置から水蒸気もしくは霧を送り込んでおり、覆工セントルを活用することで他の作業に支障を与えずに養生作業の施工を容易にすると共に、覆工コンクリート表面の収縮ひび割れを確実に減らして、膜養生と蒸気養生もしくは湿潤養生のコスト、作業性及び養生効率を改善している。
【0012】
請求項3に記載の発明である覆工セントルによる覆工コンクリートの養生方法は、覆工セントルに設置したシート展張装置から、風除シートを繰り出して、要養生区分の天端から肩に至るまで展張し、しかる後に要養生区分に覆工セントルに設置した蒸気発生装置から水蒸気を送り込んでおり、覆工セントルを活用することで他の作業に支障を与えずに養生作業の施工を容易にすると共に、覆工コンクリート表面の収縮ひび割れを確実に減らして、蒸気加湿養生のコスト、作業性及び養生効率を改善している。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明による覆工セントルによる覆工コンクリートの養生方法は、覆工セントルに設置したシート展張装置から、覆工コンクリート側に凹凸による空隙を形成して成る合成樹脂シートを繰り出して覆工コンクリートの表面に貼設すること、覆工セントルに設置した蒸気発生装置から、水蒸気もしくは霧を送り込むこと及び覆工セントルに設置したシート展張装置から、風除シートを繰り出して要養生区分の天端から肩に至るまで展張することを適宜に組み合わせることによって、各種実施形態による養生方法を構成するものであり、覆工コンクリートに対する最適な養生の施工を容易にしている。
【0014】
以下に、本発明による覆工コンクリートの養生方法に関する各実施の形態を図面に基づいて詳細に説明するが、各実施の形態における覆工コンクリートの養生方法は、二次覆工コンクリートの養生に覆工セントルを活用することを例にしており、これによって養生作業を効率良く実施しているものである。
【0015】
二次覆工セントル1は、図1に側面図として示すように、移動式門型フレーム2に伸縮ジャッキ等を介して、トンネルの周方向に複数に分割されているトンネル断面形状のセントルフォームとも言われる型枠が取付けられており、型枠部分の長さは約10m程度に構成され、スライドセントルの場合には、移動式門型フレーム2のフレーム上部の前後に、架台3、3が設けられている。
【0016】
二次覆工セントル1によるコンクリート打設は、施工サイクルをセントル移動、セントル固定、コンクリート打設及び養生の2日とするのが一般的であり、コンクリート打設後に、少なくとも1週間を要して良好な養生を行なう必要があることから、養生のために蓋うシートの長さは、3スパン分の約30mになる。
【0017】
しかるに、本実施の形態における二次覆工セントル1は、進行方向後端側4の架台3に作業床5を取り付けており、表示を省略している覆工セントルに必要な通常の諸設備に加えて、養生作業用にシート展張装置6と蒸気発生装置7とを装備している。
【0018】
図2は、本発明の覆工コンクリートの養生方法に関する膜養生の実施の形態であり、トンネル部を部分的に断面にした斜視図で覆工セントルとの関連を示している。
二次覆工セントル1は、トンネル掘削後の内壁面に崩落や肌落ちが防止されるようにコンクリートを直接吹付けると共に、セントルフォームを用いて二次覆工コンクリート8を施工しており、各スパン毎の作業を施工した後に次の作業位置に前進するスライドセントルの例である。
【0019】
本実施の形態では、凹凸9によって空隙10を形成して成る合成樹脂シートから構成されている梱包用のビニルシート(川上産業株式会社製、登録商標「プチプチ」)11を、図示の部分拡大図のように、シート展張装置6から覆工コンクリート8の内面側に凹凸9による空隙10が形成されるように繰り出しており、覆工コンクリート8にビニルシート11を押圧しながら敷設して、鋲ピン等によって取り付けているので、他の作業の支障になることなく容易に貼設している。
【0020】
従って、本実施の形態においては、二次覆工コンクリート8の表面が積極的な養生によって完全な保温と乾燥防止状態に構成されており、覆工コンクリート8の表面に発生する収縮ひび割れを確実に減らしている。
【0021】
尚、本発明の覆工コンクリートの養生方法は、上記実施の形態における二次覆工コンクリートの養生に限定されること無く、他の覆工コンクリートの養生においても適用することが可能であり、ビニルシート11は、作業区画の3スパン分を蓋うことになるが、次の作業区画に移動することで不要になった後方のビニルシートは、ミシン目等を付けて切れ易くすることで、高所作業車等で適宜に切断しながら撤去するようにしている。
【0022】
図3は、本発明の覆工コンクリートの養生方法に関する膜養生と蒸気養生との実施の形態であり、トンネル部を部分的に断面にした斜視図で覆工セントルとの関連を示している。
【0023】
本実施の形態においても、梱包用のビニルシート11をシート展張装置6から二次覆工コンクリート8の内面側に凹凸9による空隙10が形成されるように繰り出しており、このビニルシート11を二次覆工コンクリート8にビニルシート11を押圧しながら敷設して鋲ピン等によって取り付けて貼設している点は、上記実施の形態と同様である。
【0024】
しかるに、本実施の形態では、架台3の作業床5上にシート展張装置6に加えて蒸気発生装置7を装備させており、二次覆工コンクリート8にビニルシート11を貼設した後に、ビニルシート11に形成されている凹凸9による空隙10に対して蒸気発生装置7からの供給ホース12を挿入している。
【0025】
二次覆工コンクリート8の内面とビニルシート11間には、供給ホース12を通じて蒸気発生装置7から水蒸気を注入するか霧を噴霧しており、二次覆工コンクリート8の表面は、温度40℃、湿度100%の環境下に置かれている。
【0026】
従って、本実施の形態においては、二次覆工コンクリート8の表面が積極的な養生によって完全な保温と湿潤状態に構成されており、二次覆工コンクリート8の表面に発生する収縮ひび割れを確実に減らしている。
【0027】
図4は、本発明の覆工コンクリートの養生方法に関する蒸気加湿養生の実施の形態であり、トンネル部を部分的に断面にした斜視図で覆工セントルとの関連を示している。
本実施の形態においては、二次覆工セントル1の後端に設置したシート展張装置6から風除けビニルシート13を繰り出して、トンネル頂部から、トンネル両側のトンネル壁面に在って外方に向かう法線が鉛直軸に対して約45°となる所の肩部付近まで、風除けビニルシート13を他の作業の支障となることなく容易に展張している。
【0028】
しかして、風除けビニルシート13は、二次覆工セントル1が移動する3スパン毎に設置するものであって、二次覆工セントル1の後端と風除けビニール13との間を要養生区分14として構成している。
【0029】
そこで、風除けビニルシート13の要養生区分14側には、蒸気発生装置7に接続された自動首振り式噴射ノズル15が臨まされており、蒸気発生装置7からの水蒸気を要養生区分14に注入するか霧を噴霧することで、二次覆工コンクリート8の表面を温度40℃、湿度100%の環境下に置いている。
【0030】
従って、本実施の形態においては、二次覆工コンクリート8の表面が積極的な養生によって完全な湿潤状態に構成されており、二次覆工コンクリート8の表面に発生する収縮ひび割れを確実に減らしている。
【0031】
以上のように、本発明による覆工セントルによる覆工コンクリートの養生方法は、上記各実施の形態で詳細に説明したように構成されているので、覆工セントルを活用することによって他の作業に支障を与えずに養生作業の施工を容易にすると共に、積極的な養生によって完全な保温と湿潤状態にすることで、覆工コンクリート表面の収縮ひび割れを確実に減らしながら、各種養生のコスト、作業性及び養生効率を改善している。
【0032】
以上、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明したが、本発明による覆工セントルによる覆工コンクリートの養生方法は、これらの実施の形態に何ら限定されるものでなく、梱包用ビニルシート、シート展張装置及び蒸気発生装置に関して、その具体的な形状や材質等を発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは当然のことである。
【0033】
【発明の効果】
請求項1に記載の覆工セントルによる覆工コンクリートの養生方法は、覆工セントルに設置したシート展張装置から、覆工コンクリート側に凹凸による空隙を形成して成る合成樹脂シートを繰り出して、覆工コンクリートの表面に貼設しているので、覆工セントルを活用することによって他の作業に支障を与えずに養生作業の施工を容易にすると共に、積極的な養生によって完全な保温と湿潤状態にすることで、覆工コンクリート表面の収縮ひび割れを確実に減らしながら、膜養生のコスト、作業性及び養生効率を改善できる効果を発揮している。
【0034】
請求項2に記載の覆工セントルによる覆工コンクリートの養生方法は、覆工セントルに設置したシート展張装置から、覆工コンクリート側に凹凸による空隙を形成して成る合成樹脂シートを繰り出して、覆工コンクリートの表面に貼設し、しかる後に空隙に覆工セントルに設置した蒸気発生装置から水蒸気もしくは霧を送り込んでいるので、覆工セントルを活用することで他の作業に支障を与えずに養生作業の施工を容易にすると共に、積極的な養生によって完全な保温と湿潤状態にすることで、覆工コンクリート表面の収縮ひび割れを確実に減らして、膜養生と蒸気養生もしくは湿潤養生のコスト、作業性及び養生効率を改善できる効果を発揮している。
【0035】
請求項3に記載の発明である覆工セントルによる覆工コンクリートの養生方法は、覆工セントルに設置したシート展張装置から、風除シートを繰り出して、要養生区分の天端から肩に至るまで展張し、しかる後に要養生区分に覆工セントルに設置した蒸気発生装置から水蒸気を送り込んでいるので、覆工セントルを活用することで他の作業に支障を与えずに養生作業の施工を容易にすると共に、積極的な養生によって完全な保温と湿潤状態にすることで、覆工コンクリート表面の収縮ひび割れを確実に減らして、蒸気加湿養生のコスト、作業性及び養生効率を改善できる効果を発揮している。
【図面の簡単な説明】
【 図1】本発明による覆工コンクリートの養生方法における覆工セントルの実施の形態を示す側面図
【 図2】本発明による覆工コンクリートの養生方法に関する膜養生の実施の形態図
【 図3】本発明による覆工コンクリートの養生方法に関する膜養生と蒸気養生の実施の形態図
【 図4】本発明による覆工コンクリートの養生方法に関する蒸気加湿養生の実施の形態図
【符号の説明】
1 覆工セントル、 2 移動式門型フレーム、 3 架台、
4 進行方向後端側、 5 作業床、 6 シート展張装置、
7 蒸気発生装置、 8 二次覆工コンクリート、 9 凹凸、
10 空隙、 11 ビニルシート、 12 供給ホース、
13 風除けビニルシート、 14 要養生区分、
15 自動首振り式噴射ノズル、
Claims (3)
- 覆工セントルに設置したシート展張装置から、覆工コンクリート側に凹凸による空隙を形成して成る合成樹脂シートを繰り出して覆工コンクリートの表面に貼設する覆工セントルによる覆工コンクリートの養生方法。
- 覆工セントルに設置したシート展張装置から、覆工コンクリート側に凹凸による空隙を形成して成る合成樹脂シートを繰り出して覆工コンクリートの表面に貼設し、該空隙に覆工セントルに設置した蒸気発生装置から水蒸気もしくは霧を送り込む覆工セントルによる覆工コンクリートの養生方法。
- 覆工セントルに設置したシート展張装置から、風除シートを繰り出して要養生区分の天端から肩に至るまで展張し、該要養生区分に覆工セントルに設置した蒸気発生装置から水蒸気を送り込む覆工セントルによる覆工コンクリートの養生方法。
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