JP4076400B2 - 歯ブラシ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数本のブリッスルを束ねてなる毛束が植毛台に複数植設されている歯ブラシに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
歯ブラシは、複数本のブリッスルを束ねてなる毛束を、例えば植毛台に設けられた複数の植毛孔に平線を打ち込んだり熱で融着させる方法等によって植設固定することにより形成されるものである。また、歯ブラシは、歯面部、歯間部、歯頸部等の歯の部位や、前歯、奥歯等の歯の種類に応じた適切な刷掃を効率良く行うことができるように、毛束の配置やブリッスルの毛先の形状等に様々な工夫がなされている。
【0003】
一般にブリッスルは、1本1本の繊維材料であるモノフィラメントからなるものが多く、その外周面は凹凸の少ない形状となっている。一方、歯ブラシは、ブリッスルの毛先が適切な圧力で歯面に当たることにより歯垢を除去できることに加えて、ブリッスルの外周面が歯面と接触することによっても歯垢を除去できるものと考えられるが、ブリッスルの外周面に凹凸がないと、摩擦力が不足して当該外周面によって歯垢を十分に除去することができない。
【0004】
ブリッスルの外周面に凹凸を形成して歯面との摩擦力を高めるようにした歯ブラシとして、ブリッスルの毛先部分をウェーブ状にしたり、ブリッスルをねじった状態として凹凸を形成したものが知られているが、これらは1本のモノフィラメントを加工するものであるため、細かい凹凸を外周面に形成することができず、歯面との十分な摩擦力を得ることができない。また、複数本のフィラメントを例えば三つ編状に編んで外周面に凹凸が形成されたブリッスルとすることも考えられるが、単に複数本のフィラメントを編んだものでは、歯ブラシの使用中にほぐれ易く、また細かい凹凸を形成することも困難である。
【0005】
本発明は、ブリッスルの外周面に細かい凹凸を容易かつ強固に形成して、ブリッスルの外周面との接触による歯面の歯垢除去効果を向上させることのできる歯ブラシを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数本のブリッスルを束ねてなる毛束が植毛台に複数植設されている歯ブラシであって、前記ブリッスルの一部又は全部が、例えば1本又は複数本のモノフィラメントからなる芯材の周囲に複数本の細糸を製紐加工により編み込んだ製紐ブリッスルである歯ブラシを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0007】
ここで、製紐加工により編み込まれる細糸は、芯材よりも細い糸であって、例えば1〜200μm、好ましくは25〜150μm、特に好ましくは50〜100μmの太さを有しており、例えば天然繊維、合成繊維、金属繊維等から形成することができる。また、製紐加工は、糸などを組んで紐などの組物を作る機械として公知の一般的な製紐加工機(組ひも機)を用いて、公知の種々の織り方(編み方)に従って実施することができるが、編み込みによる凹凸を大きくするために、例えば十六打よりも八打で編み込むことが好ましい。
【0008】
そして、本発明の歯ブラシによれば、植毛台に植設されるブリッスルの少なくとも一部が製紐ブリッスルとなっており、これらの製紐ブリッスルは、芯材の周囲に製紐加工により複数本の細糸が編み込まれた構成を備えているため、その外周面には、製紐加工により形成された編み糸の編み目による細かい凹凸と、編み糸を構成する各複数本の細糸によるさらに細かい凹凸とが形成されることになる。これらの凹凸によって、製紐ブリッスルの外周面の歯面に対する摩擦力が十分に確保されるので、刷掃時における当該製紐ブリッスルの外周面の接触により、歯面に対する歯垢除去効果を容易に向上させることが可能になる。
【0009】
また、例えばポリトリメチレンテレフタレート繊維(PTT繊維または3GT繊維)などは歯ブラシのブリッスルとして使用すると耐久性に優れているが、フィラメントに微少な傷が付くとそこから折れてしまうことが知られている。このようなフィラメントは単体では歯ブラシ用として使用することができなかったが、これらのフィラメントを芯材として用い、外側を例えば他のポリエステル樹脂やポリアミド樹脂等を製紐加工することにより被覆して保護することで、歯ブラシに使用できるようになる。
【0010】
さらに、本発明の歯ブラシによれば、製紐ブリッスルの製紐加工は公知の製紐加工機を用いて容易に行うことができ、また製紐加工機により施された編み目は、緊密に編み込まれており、刷掃時においてもその緊密性によって外周面の凹凸を強固に保持することが可能になる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明の第1実施形態に係る歯ブラシ10は、図1及び図2に示すように、把持部(図示せず)と植毛台14とこれらを連結する首部15とからなる歯ブラシ本体の植毛台14に形成した複数の植毛孔13に、複数本のブリッスル11を束ねてなる毛束(タフト)12を各々植毛(植設)することによって構成される。
【0012】
また、本第1実施形態の歯ブラシ10によれば、各毛束12を構成するブリッスル11の全てが、芯材16の周囲に複数本の細糸17を製紐加工により編み込んだ製紐ブリッスルとなっている。
【0013】
本第1実施形態によれば、歯ブラシ本体は、例えばポリプロピレン、ABS樹脂等の合成樹脂からなり、その植毛部14の平坦な表面には、例えば直径が0.8〜3.0mm程度の円形断面を有する植毛孔13が、縦横に整列配置されて複数開口形成されている。また各植毛孔13は2.0〜4.0mm程度の深さを有し、各植毛孔13には、複数本の製紐ブリッスル11からなる複数の毛束12が、例えば平線を打ち込む方法や熱で融着させる方法等によって各々植設されている。
【0014】
各毛束12は、製紐ブリッスル11を例えば十数本〜数十本束ねることによって構成されるもので、植毛台14の表面から7.0〜14.0mm程度の毛丈となるように複数の植毛孔13に各々植毛される。これによって各毛束12は、その根元部における断面形状が、植毛孔13と略同様の0.8〜3.0mm程度の束径の略円形形状となる。
【0015】
そして、本第1実施形態によれば、各毛束12を構成する製紐ブリッスル11は、各々、糸材16の周囲に複数本の細糸17を製紐加工により編み込むことによって、その外周面に細かい凹凸を備えるように形成される。
【0016】
各製紐ブリッスル11の芯材16は、本実施形態によれば、ナイロン等の合成樹脂からなる例えば0.1〜0.3mmの太さを有する1本のモノフィラメントである。糸材16の周囲には、公知の製紐加工機(組ひも機)を用いて、例えば1〜200μm、好ましくは25〜150μm、より好ましくは50〜100μmの太さの細糸17を、1〜16本、好ましくは4本〜8本編み込んでゆくことにより、芯材16の周囲に複数本の細糸17を編み込んだ製紐ブリッスル11が容易に形成されることになる。
【0017】
また、本第1実施形態によれば、製紐加工機を用いて糸材16に複数本の細糸17を編み込んで形成した製紐ブリッスル11は、植毛台14に植設するのに適した長さにカットした後に植毛されることになるが、カットされた製紐ブリッスル11の端部を加熱溶融処理して丸めておくことにより、刷掃時における製紐ブリッスル11の、カットされた端部からの細糸17のほぐれを効果的に回避することが可能になると共に、歯当たりを柔らかくすることが可能になる。
【0018】
なお、本第1実施形態によれば、芯材16は、ナイロン等のポリアミド系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等のポリエステル系樹脂からなるモノフィラメントによって形成することが好ましい。また、一般にハイテク繊維と呼ばれるパラ系アミド繊維、芳香族ポリエステル繊維、ダイニーマ(東洋紡)に代表される高強度ポリエチレン繊維、炭素繊維やPBO繊維も用いることが可能である。さらに、通常の形状のモノフィラメントだけでなく、中空繊維や海島構造の繊維、米型分割方式の繊維、多層構造、芯鞘構造、ミカン型分割構造の繊維を用いても良い。
【0019】
また、芯材16の断面形状は、通常の円形だけではなく、星形、矩形などの形状でもかまわない。また、2本又は3本以上のモノフィラメントを一体としてまとめたものを芯材16として、これの周囲に複数本の細糸17を編み込みようにしても良い。
【0020】
さらに、製紐加工に用いる細糸17としては、芯材16と同様にポリアミド系繊維やポリエステル系繊維等からなるものを用いることが好ましい。また芯材16と同様にハイテク繊維等を用いても良いし、中空繊維や海島構造の繊維、米型分割方式の繊維、多層構造、芯鞘構造、ミカン型分割構造の繊維を用いても良い。また断面形状も通常の円形だけではなく、星形、矩形などの形状でもかまわない。
【0021】
そして、本第1実施形態の歯ブラシ10によれば、製紐ブリッスル11の外周面に細かい凹凸を容易かつ強固に形成して、ブリッスルの外周面との接触による歯面の歯垢除去効果を向上させることが可能になる。すなわち、本第1実施形態によれば、植毛台14に植設される製紐ブリッスル11は、芯材16の周囲に製紐加工により複数本の細糸17が編み込まれた構成を備えているため、その外周面には、製紐加工により形成された編み糸18の編み目による細かい凹凸と、編み糸18を構成する各複数本の細糸17によるさらに細かい凹凸とが形成されることになる。したがってこれらの凹凸によって、製紐ブリッスル11の外周面の歯面に対する摩擦力が十分に確保されるので、刷掃時における当該製紐ブリッスル11の外周面の接触により、歯面に対する歯垢除去効果を容易に向上させることが可能になる。
【0022】
また、本第1実施形態の歯ブラシ10によれば、製紐ブリッスル11の製紐加工は公知の製紐加工機を用いて容易に行うことができ、製紐加工機により施された編み目は、簡単にほぐれることのないように緊密に編み込むことができるので、刷掃時においてもその緊密性によって外周面の凹凸を強固に保持することが可能になる。
【0023】
さらに、例えばポリトリメチレンテレフタレート繊維(PTT繊維または3GT繊維)などは歯ブラシのブリッスルとして使用すると耐久性に優れているが、フィラメントに微少な傷が付くとそこから折れてしまうことが知られている。このようなフィラメントは単体では歯ブラシ用として使用することができなかったが、これらのフィラメントを芯材16に用いて、外側を例えば他のポリエステル樹脂やポリアミド樹脂等を製紐加工することにより被覆して保護することで、歯ブラシに使用できるようになる。
【0024】
さらにまた、本第1実施形態によれば、製紐加工によって編み込まれる複数本の細糸17は、芯材16の周囲を覆うスリーブ状に編み込まれているので、当該編み物の保水性によって、製紐ブリッスル11の周囲に薬液を染み込ませることが可能になり、これによって刷掃時に薬液を患部に効果的に運ぶことが可能になる。
【0025】
図3は、本発明の第2実施形態に係る歯ブラシにおける、植毛台14に植設された毛束12を構成する製紐ブリッスル19の一部を拡大して示すものである。本第2実施形態によれば、植毛台14に植設される各製紐ブリッスル19は、モノフィラメントからなる螺旋糸21を芯材20の周囲に螺旋状に巻き付けたものの周囲に、さらに複数本の細糸22を製紐加工により編み込むことによって形成されている。
【0026】
なお、本2実施形態の歯ブラシによれば、把持部と植毛台14と首部15とからなる歯ブラシ本体や、植毛台14に形成された植毛孔13、或いは植毛孔13に植設される毛束12等は、図1に示す上記第1実施形態の歯ブラシ10と略同様の構成を備えている。
【0027】
そして、本第2実施形態によれば、各製紐ブリッスル19の芯材20は、ナイロン等の合成樹脂からなる例えば50〜400μm、好ましくは100〜250μmの太さを有するモノフィラメントによって形成される。この芯材20の周囲に、例えば10〜400μmm、好ましくは50〜250μm、より好ましくは100〜200μmの太さを有する同様のモノフィラメントからなる螺旋糸21を巻き付けつつ、当該螺旋糸21が巻き付けられた芯材20の周囲に、例えば1〜200μm、好ましくは25〜150μm、より好ましくは50〜100μmの太さの細糸22を1〜16本、好ましくは4本〜8本さらに編み込んでゆく。これによって、芯材20及び螺旋糸21の周囲に複数本の細糸22が編み込まれた製紐ブリッスル19が容易に形成されることになる。
【0028】
なお、本第2実施形態によれば、芯材20の周囲に螺旋状に巻き付けられる螺旋糸21は、芯材20と同様に、ナイロンの等のポリアミド系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂やポリトリメチレンテレフタレート(PTT)樹脂等からなるモノフィラメントを用いて形成することが好ましい。また、一般にハイテク繊維と呼ばれるパラ系アミド繊維、芳香族ポリエステル繊維、ダイニーマ(東洋紡)に代表される高強度ポリエチレン繊維、炭素繊維やPBO繊維も用いることが可能である。さらに、通常の形状のモノフィラメントだけでなく、中空繊維や海島構造の繊維、米型分割方式の繊維、多層構造、芯鞘構造、ミカン型分割構造の繊維を用いても良い。
【0029】
さらに、螺旋糸21の断面形状は、通常の円形だけではなく、星形、矩形などの形状でもかまわない。また螺旋糸21は同様の材料からなるマルチフィラメントを用いて形成することもできる。
【0030】
そして、本第2実施形態の歯ブラシによれば、植毛台14に植設された製紐ブリッスル19は、製紐加工によって、螺旋糸21が巻き付けられた芯材20の周囲に複数本の細糸22が編み込まることによって形成され、その外周面に、編み糸23の編み目による細かい凹凸と、編み糸23を構成する各複数本の細糸22によるさらに細かい凹凸とを備えるので、上記第1実施形態の歯ブラシ10と同様の作用効果を奏することになる。また、螺旋状に巻き付いた螺旋糸21が芯材20を補強する為、ブリッスル19全体の屈曲回復率が向上してブリッスル19の耐久性が向上し、毛の広がりにくい歯ブラシとなる。さらに、凹凸が大きくなるため歯ぐきのマッサージ効果も従来の歯ブラシより向上する。
【0031】
さらにまた、本第2実施形態によれば、芯材20の周囲には細糸22よりも太い螺旋糸23が巻き付けられているので、この螺旋糸21により芯材20の周囲に形成された粗い凹凸によって、歯面の歯垢や汚れを落とす効果をさらに向上させることが可能になる。また芯材20に巻き付けられた螺旋糸21は、周囲に緊密に編み込まれる編み糸23を介して、芯材20の周囲に強固に固定されることになり、刷掃時に糸材20の周囲に沿ってずれることがない。
【0032】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、植毛台に植設される全てのブリッスルを製紐ブリッスルとする必要は必ずしもなく、歯面の刷掃に寄与する一部分のみに製紐ブリッスルを植設することもでき、また一般のブリッスルと製紐ブリッスルとを混在させて植設することもできる。さらに、芯材として、多数の細糸を一体としてまとめたものを用いることもできる。
【0033】
さらにまた、図4に示すように、植毛台に植設するのに適した長さにカットした製紐ブリッスル11の端部を処理するこなく、編み込まれた細糸17を当該端部において、ほぐされて枝分したままの状態としておくこともでき、これによって歯ぐきへの当たりがソフトになり、なおかつ細かい部分まで磨くことが可能になる。
【0034】
【発明の効果】
本発明の歯ブラシによれば、ブリッスルの外周面に細かい凹凸を容易かつ強固に形成して、ブリッスルの外周面との接触による歯面の歯垢除去効果を向上させることができる。
【0035】
また、例えばポリトリメチレンテレフタレート繊維(PTT繊維または3GT繊維)などは歯ブラシとして使用すると耐久性に優れているが、フィラメントに微少な傷が付くとそこから折れてしまうことが知られている。このようなフィラメントは単体では歯ブラシ用として使用することができなかったが、これらのフィラメントを芯材として用いて、外側を例えば他のポリエステル樹脂やポリアミド樹脂等を製紐加工することにより被覆して保護することで、歯ブラシに使用できるようになる。その結果、フィラメントに微少な傷が付くと折れやすいポリトリメチレンテレフタレート繊維(PTT繊維または3GT繊維)等が、その外側に覆われる製紐加工したものによる被覆により保護され、ポリトリメチレンテレフタレート繊維(PTT繊維または3GT繊維)等は芯材としての優れた耐久性を充分に生かすことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい第1実施形態に係る歯ブラシを示す斜視図である。
【図2】本発明の好ましい第1実施形態に係る歯ブラシにおける製紐ブリッスルの構成を説明する部分拡大図である。
【図3】本発明の好ましい第2実施形態に係る歯ブラシにおける製紐ブリッスルの構成を説明する部分拡大図である。
【図4】編み込まれた細糸を枝分させた製紐ブリッスルの先端部分を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
10 歯ブラシ
11,19 ブリッスル(製紐ブリッスル)
12 毛束
13 植毛孔
14 植毛台
15 首部
16,20 芯材
17,22 細糸
18,23 編み糸
21 螺旋糸
Claims (4)
- 複数本のブリッスルを束ねてなる毛束が植毛台に複数植設されている歯ブラシであって、
前記ブリッスルの少なくとも一部は、芯材の周囲に複数本の細糸を製紐加工により編み込んだ製紐ブリッスルであり、該製紐ブリッスルの端部において、前記編み込まれた細糸が枝分かれしている歯ブラシ。 - 前記芯材は、1本又は複数本のモノフィラメントからなる請求項1記載の歯ブラシ。
- 前記芯材は、ポリトリメチレンテレフタレートのモノフィラメント又はマルチフィラメントからなる請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
- 前記芯材の周囲には、モノフィラメント又はマルチフィラメントからなる螺旋糸が巻き付けられ、さらに前記複数本の細糸が編み込まれる請求項1〜3に記載の歯ブラシ。
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