JP4076033B2 - セラミックス押し出し成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス粉末の成形体を押し出し成形法により製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミックス焼結体は、セラミックス粉末の成形体を焼成することにより製造される。セラミックス粉末の成形には、一方向プレス、ラバープレス、押し出し成形等の各種方法が利用されているが、電子部品に用いられる圧電体セラミックスや誘電体セラミックスなどでは、容易かつ低コストでシート状の成形体が得られることから、押し出し成形を利用することが多い。
【0003】
従来、セラミックス材料からなる押し出し成形体を製造するには、セラミックス粉末、水等の溶媒、バインダ、可塑剤などをニーダやロールミル等により混練し、これを押し出し成形する方法が一般的である。しかし、押し出し成形に供される混練物は、湿式の圧縮成形に供されるスラリーと異なり、含水率を低くする必要がある。含水率の低い混練物を得るためには、溶媒量を少なくする必要がある。このため、セラミックス粉末とバインダとを均一に混合することが難しくなり、バインダの未溶解物ないし未分散物が成形体中に多数存在することになる。このような成形体を焼成すると、未溶解物や未分散物が焼失するため、焼結体中に空孔が生じてしまう。焼結体中に空孔が存在すると、焼結体の特性は一般に低下する。例えば、空孔の存在する圧電体では共振点でのインピーダンスが上昇したり、空孔の存在する誘電体をコンデンサに適用した場合には耐圧が低くなったりするなどの問題が生じやすい。
【0004】
このような問題を解決するために、例えば特公昭58−51806号公報では、セラミックス粉末に対し水を30〜100重量%加えたスラリーを、含水率が15〜25重量%のケーキ状となるようにフィルタープレスなどにより脱水した後、適量の水溶性バインダおよび可塑剤を加えて混練することにより坏土をつくり、これを押し出し成形する方法を提案している。同公報の実施例では、成形体密度および焼結体密度のいずれもが改善されている。
【0005】
また、特開平5−228912号公報では、セラミックス粉末、バインダおよび溶媒を混合してスラリーを調製し、このスラリーを超遠心分離器により脱水してセラミックス成形体を得る方法を提案している。同公報の実施例では、5μm以上の気孔が全く存在しない圧電セラミックスが得られたとしている。
【0006】
上記特公昭58−51806号公報および上記特開平5−228912号公報にそれぞれ記載された方法は、セラミックス粉末とバインダとを均一に混合するために、セラミックス粉末をスラリー化し、これを脱水するところに特徴がある。
【0007】
また、特開平1−111770号公報には、成形体用バインダとして含有されるセルロース誘導体が、その0.1重量%水溶液の2cc中に存在する8μm以上200μm以下の未溶解繊維の量で1000個以下のものである押し出し成形用セラミック材料が記載されている。同公報には、このバインダは、通常のセルロース誘導体の製造方法において十分な量の反応薬品を用い、必要な溶媒を選択使用するなど、均一で十分な反応が行われる条件を採用することにより得られる旨が記載されている。成形体中に存在するバインダ未溶解分は脱バインダ時や焼成時に焼失してしまうため、バインダ未溶解分存在箇所に空孔が生じることになるが、同公報に記載されたようなバインダ未溶解分の少ない押し出し成形用セラミック材料を用いれば、焼結体中の空孔を減らすことが可能である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記各公報に記載されているように、押し出し成形法を利用して空孔の少ない焼結体を得るためには、セラミックス粉末とバインダとを均一に混合すること、バインダ未溶解分を減らすこと、が重要である。しかし、上記各公報に記載された手段には、次のような問題点がある。
【0009】
上記特公昭58−51806号公報に記載された方法では、セラミックス粉末を大量の水と混合してスラリー化することで、セラミックス粉末と水とは均一に混合されるが、バインダの添加は、スラリーを脱水して得たケーキに対して行われるため、セラミックス粉末とバインダとを均一に混合することは難しい。また、ケーキとバインダとの混練物は粘度が高いため、バインダの未溶解分を濾過により除去することが難しい。
【0010】
上記特開平5−228912号公報では、セラミックス粉末とバインダとの混合がスラリー状態、すなわち、多量の溶媒を含む状態で行われるため、混合の均一性はかなり高いと考えられる。しかし、超遠心分離による脱水成形法は量産性に乏しいため、工業的な応用が困難である。また、遠心分離法を用いる場合、バルク状の成形体を得ることは容易であるが、電子部品の製造に適したシート状の成形体を得ることは難しい。
【0011】
上記特開平1−111770号公報では、未溶解分となる成分が少ない水溶性バインダを用いることにより空孔発生を抑えようとしている。同公報には、未溶解分の量が少なければ少ないほど望ましいが、それは極めて難しく高価になるため、自ずから限界がある、旨が記載されている。したがって、セラミックス成形体に要求される品質がより高くなれば、再び未溶解分の存在が問題となってくる。
【0012】
本発明は、このような事情からなされたものであり、押し出し成形法を利用して製造されたセラミックス焼結体における空孔発生を防ぐことを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(7)のいずれかの構成により達成される。
(1) 溶媒、バインダおよびセラミックス粉末を含有するスラリーを得るスラリー調製工程と、
前記スラリーから溶媒の一部が除去された押し出し成形用高粘度組成物を得る高粘度組成物調製工程と、
前記押し出し成形用高粘度組成物を押し出し成形する成形工程とを有し、
スラリー調製工程が、バインダを溶媒に溶解することによりバインダ溶液を得るバインダ溶液調製ステップと、
バインダ溶液とセラミックス粉末とを混合してスラリー化バインダ溶液を得るバインダ溶液スラリー化ステップと、スラリー化バインダ溶液にバインダを追加するバインダ追加ステップと、
を有するセラミックス押し出し成形体の製造方法。
(2) 前記スラリー調製工程が、前記バインダ溶液を濾過するバインダ溶液濾過ステップを有する上記(1)のセラミックス押し出し成形体の製造方法。
(3) 前記スラリー調製工程が、前記スラリー化バインダ溶液を濾過するスラリー濾過ステップを有する上記(1)又は(2)のセラミックス押し出し成形体の製造方法。
(4) 前記高粘度組成物調製工程が、前記スラリーから溶媒の少なくとも一部を除去する溶媒除去ステップを有する上記(1)〜(3)のいずれかのセラミックス押し出し成形体の製造方法。
(5) 前記高粘度組成物調製工程が、前記溶媒除去ステップの後に、溶媒を添加する溶媒再混合ステップを有する上記(4)のセラミックス押し出し成形体の製造方法。
(6) 前記溶媒除去ステップにおいてスプレードライヤー法を用いる上記(5)のセラミックス押し出し成形体の製造方法。
(7) スラリー調製工程および/または高粘度組成物調製工程において可塑剤を添加する上記(1)〜(6)のいずれかのセラミックス押し出し成形体の製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法における工程の流れを、図1に示す。本発明の製造方法は、スラリー調製工程と、高粘度組成物調製工程と、成形工程とを含む。
【0015】
従来の押し出し成形法では、バインダ、比較的少量の溶媒、およびセラミックス粉末を同時に混練して、押し出し成形に適した高粘度の混練物を直接製造していたため、前述したようにバインダとセラミックス粉末とを均一に混合することができなかった。
【0016】
これに対し本発明では、スラリー調製工程を設け、この工程において、バインダおよびセラミックス粉末が比較的多量の溶媒と混合された低粘度混合物であるスラリーを調製する。このスラリー中では、不溶解成分を除いてバインダの未溶解物はほとんど発生せず、バインダとセラミックス粉末とが均一に混合された状態となる。次いで、高粘度組成物調製工程において、上記スラリーから溶媒の一部が除去された押し出し成形用高粘度組成物を調製する。このような手順で押し出し成形用高粘度組成物を得ることにより、押し出し成形用高粘度組成物中においてもバインダとセラミックス粉末とが均一に混合された状態となるので、これを成形して焼成すれば、焼結体中の空孔を著しく少なくすることができる。また、バインダ溶液濾過ステップやスラリー濾過ステップを設ければ、不溶解成分を含むバインダ未溶解分を除去できるため、空孔をさらに減らすことが可能である。
【0017】
図1には、各工程の好ましい構成を、第1の態様および第2の態様として示してある。以下、各態様の詳細について説明する。
【0018】
スラリー調製工程(第1の態様)
第1の態様におけるスラリー調製工程は、バインダ溶液調製ステップ、必要に応じて設けられるバインダ溶液濾過ステップ、バインダ溶液スラリー化ステップ、必要に応じて設けられるバインダ追加ステップ、必要に応じて設けられるスラリー濾過ステップを、この順で有する。
【0019】
バインダ溶液調製ステップ
バインダ溶液調製ステップでは、バインダを溶媒に溶解して、バインダ溶液を得る。
【0020】
本発明で用いる溶媒は特に限定されず、用いるバインダやセラミックス粉末の種類に応じて適宜選択すればよい。ただし、使用後の処理が容易で環境に与える影響が小さいことから、水、アルコール、またはこれらの混合溶媒が好ましく、特に水が好ましい。
【0021】
バインダの種類も特に限定されず、用いる溶媒に溶解可能なものから適宜選択すればよい。溶媒として水やアルコールを用いる場合には、例えば、セルロース誘導体、アクリル系バインダなどの少なくとも1種を好ましく用いることができる。バインダの性状は特に限定されず、粉末状であっても液状であってもよい。
【0022】
バインダに対する溶媒の量は、バインダ溶液が比較的低粘度となるように決定すればよい。低粘度のバインダ溶液を用いることにより、バインダ溶液スラリー化ステップにおいてセラミックス粉末の均一な分散が容易となる。また、セラミックス粉末とバインダとの混合比は決まっているため、バインダ溶液を低粘度(低濃度)とすることにより、セラミックス粉末に対するバインダ溶液の混合比を高くすることができ、この点でもセラミックス粉末の均一な分散が容易となる。ただし、溶媒量が多すぎると、スラリーから溶媒を除去する作業が面倒になり、また、コスト高となる。このような理由から、バインダ溶液の濃度は、好ましくは0.1〜3重量%、より好ましくは0.5〜2重量%とする。
【0023】
なお、後述するように、バインダ溶液スラリー化ステップの後にバインダ追加ステップを設けることにより、バインダ溶液調製ステップにおいて溶媒に対するバインダの量を少なくできる。このため、バインダ溶液の粘度をさらに低くできるので、セラミックス粉末とバインダとの均一な混合がさらに容易となる。バインダ追加ステップを設ける場合、バインダ溶液調製ステップにおけるバインダと溶媒との混合比は、バインダ追加ステップにおけるバインダ添加量に基づいて決定すればよい。
【0024】
バインダ溶液濾過ステップ
バインダ溶液濾過ステップでは、バインダ溶液に含まれる未溶解分、例えば、溶媒に溶解しない繊維質を除去し、また、混入した異物なども除去する。濾過手段には、篩を利用することが好ましい。篩の目の開きは、未溶解分や異物が通過できないように適宜設定すればよい。具体的には、篩の目の開きは、好ましくは10〜50μm、より好ましくは20〜30μmとすればよい。
【0025】
バインダ溶液スラリー化ステップ
バインダ溶液スラリー化ステップでは、スラリー化バインダ溶液を得る。このスラリー化バインダ溶液とは、バインダ溶液とセラミックス粉末とを混合することにより得られるスラリーである。
【0026】
バインダ追加ステップを設けない場合、バインダ溶液スラリー化ステップで混合するセラミックス粉末とバインダ溶液との量比は、バインダ溶液の濃度に依存して決定されるが、セラミックス粉末を均一に分散するためには、セラミックス粉末100重量部に対するバインダ溶液の量を、好ましくは100〜3000重量部、より好ましくは150〜600重量部とする。
【0027】
バインダ追加ステップを設ける場合でも、すなわち、バインダ溶液スラリー化ステップにおいてバインダ全量を添加しない場合でも、バインダ溶液スラリー化ステップにおけるセラミックス粉末100重量部に対するバインダ溶液の量は、上記した範囲とすることが好ましい。
【0028】
なお、セラミックス粉末に対するバインダの量は、セラミックス粉末の種類、バインダの種類、あるいは、成形体や焼結体の用途などによっても異なるが、通常、セラミックス粉末100重量部に対するバインダ量は、好ましくは1〜5重量部、より好ましくは2〜4重量部である。
【0029】
本発明は、各種セラミックス粉末の押し出し成形に適用でき、いずれのセラミックス粉末を用いた場合でも焼結体中の空孔が減少する効果が実現する。押し出し成形を適用することがあり、かつ、特性向上のために空孔を減少させることが有効なセラミックス材料としては、例えば、圧電性、焦電性、誘電性、軟磁性、硬磁性などを有するもの、具体的には、PbTiO3(PT)系、PbTiO3−PbZrO3(PZT)系、PZTにPb(Mg,Nb)O3、Pb(Y,Nb)O3、Pb(Mn,Sb)O3、Pb(Co,Nb)O3等を固溶させた3成分系、Bi層状化合物、BaTiO3系、SrTiO3系、CaTiO3系、SrフェライトやBaフェライト等のマグネトプランバイト型フェライトなどの各種材料が挙げられる。セラミックス粉末の平均粒径は特に限定されないが、通常、1〜10μm程度である。
【0030】
このステップで用いる混合手段は特に限定されないが、一般に、ボールミルや撹拌羽根ミキサーなどを用いる。
【0031】
バインダ追加ステップ
このステップを設けるのは、上記バインダ溶液スラリー化ステップにおいてセラミックス粉末と混合されるバインダ溶液の濃度をさらに低くしたい場合である。このステップにおいてスラリー中にバインダを添加することにより必要量のバインダを確保する構成とすれば、バインダ溶液スラリー化ステップで用いるバインダ溶液の濃度を低くすることができるので、セラミックス粉末とバインダ溶液との均一な混合がさらに容易となる。
【0032】
このステップにおいてスラリー中に添加するバインダ量は特に限定されず、全バインダの0重量%超100重量%未満から必要に応じて選択すればよいが、このステップを設けることによる効果を十分に得るためには、通常、全バインダの20重量%以上、好ましくは50重量%以上を、このステップにおいて添加する。一方、スラリーにバインダを溶解させることは、溶媒に溶解させるよりも困難であるため、このステップでの添加量が多すぎると、バインダとセラミックス粉末との混合の均一性がやや低くなる。このような理由から、このステップにおける添加量は、全バインダ量の90重量%以下とすることが好ましい。
【0033】
スラリー濾過ステップ
スラリー濾過ステップでは、スラリー化バインダ溶液から、バインダの未溶解分、例えば、溶媒に溶解しない繊維質を除去し、また、それまでの各ステップにおいて混入した異物などを除去する。濾過手段には、篩を利用することが好ましい。バインダ中の未溶解分は一般にセラミックス粉末より大きいので、篩の目の開きは、セラミックス粉末が通過し、かつ未溶解分が通過できないように設定すればよい。具体的には、篩の目の開きは、好ましくは10〜50μm、より好ましくは20〜30μmとすればよい。
【0034】
スラリー濾過ステップと上記バインダ追加ステップとの両方を設ける場合、図1に示すように、スラリー濾過ステップはバインダ追加ステップの後ろに設けることが好ましい。
【0035】
なお、スラリー化バインダ溶液は、バインダ溶液に比べ濾過が困難であるため、このスラリー濾過ステップおよび前記バインダ溶液濾過ステップのうち一方だけを設ける場合には、バインダ溶液濾過ステップを設けることが好ましい。
【0036】
可塑剤添加
スラリー調製工程では、可塑剤を添加してもよい。可塑剤は、押し出し成形を容易にするための添加剤である。可塑剤は、この工程において添加してもよく、後述する高粘度組成物調製工程において添加してもよく、これらの両工程において分割して添加してもよい。ただし、可塑剤をこの工程で添加すれば、高粘度組成物調製工程で添加する場合よりも一般に均一に混合することが可能となる。しかし、この工程で添加した場合、溶媒除去工程において可塑剤の一部が分解等により失われることがあるため、添加する工程は可塑剤の種類に応じて適宜決定すればよい。可塑剤としては、通常、グリセリンや他の各種可塑剤などの少なくとも1種を用いる。可塑剤の好ましい添加量は、可塑剤の種類によっても異なるが、通常、セラミックス粉末100重量部に対し、好ましくは1〜5重量部、より好ましくは2〜4重量部である。可塑剤が少なすぎると、効果が不十分となり、可塑剤が多すぎると、成形体の保形性が悪くなりやすい。
【0037】
なお、スラリー調製工程において可塑剤を添加するステップは特に限定されないが、通常、バインダ溶液調製ステップにおいて添加する。
【0038】
スラリー調製工程(第2の態様)
上記第1の態様では、まず、溶媒とバインダとを混合してバインダ溶液を調製し、このバインダ溶液中にセラミックス粉末を添加してスラリーを調製したが、第2の態様では、まず、溶媒とセラミックス粉末とを混合してスラリーを調製し、このスラリー中にバインダを添加する。前述したように、スラリーに対するバインダの混合は、溶媒に対するバインダの混合よりも困難であるため、一般には第1の態様を選択することが好ましい。ただし、セラミックス粉末の混合は、バインダ溶液に対してよりも溶媒に対してのほうが容易であり、良好な分散性が得られる。したがって、セラミックス粉末の分散性およびバインダの溶解性を考慮して、必要に応じ第2の態様を選択すればよい。
【0039】
第2の態様におけるスラリー調製工程は、溶媒スラリー化ステップ、バインダ混合ステップ、必要に応じて設けられるスラリー濾過ステップを、この順で有する。
【0040】
溶媒スラリー化ステップ
このステップでは、スラリー化溶媒を得る。このスラリー化溶媒とは、溶媒とセラミックス粉末とを混合して得られるスラリーである。このステップで混合する溶媒とセラミックス粉末との量比は、セラミックス粉末を均一に分散でき、かつ、このセラミックス粉末の量に対応するバインダを混合したときに、均一な混合が可能なように決定すればよい。セラミックス粉末100重量部に対する溶媒の量は、好ましくは100〜3000重量部、より好ましくは150〜600重量部である。
【0041】
バインダ混合ステップ
このステップでは、スラリー化溶媒とバインダとを混合する。セラミックス粉末とバインダとの混合比は決まっているため、このステップにおけるスラリー化溶媒とバインダとの量比は、スラリー化溶媒中のセラミックス粉末の量に応じて決定すればよい。ただし、通常、このステップでは、溶媒量とバインダ量とから算出した濃度が、好ましくは0.1〜0.3重量%、より好ましくは0.5〜2重量%となるように混合することが望ましい。
【0042】
スラリー濾過ステップ
このステップは、バインダ添加後のスラリー化溶媒を濾過対象とするほかは、第1の態様におけるスラリー濾過ステップと共通である。
【0043】
可塑剤添加
可塑剤の添加については、第2の態様は第1の態様と同様である。ただし、第2の態様では、通常、溶媒スラリー化ステップにおいて可塑剤を添加する。
【0044】
高粘度組成物調製工程(第1の態様および第2の態様)
高粘度組成物調製工程では、スラリー調製工程で得られたスラリー、すなわち、溶媒、バインダおよびセラミックス粉末を含有するスラリーよりも、溶媒含有量の少ない押し出し成形用高粘度組成物が得られればよい。高粘度組成物調製工程の好ましい構成は、図1に示すように、溶媒除去ステップを少なくとも有し、必要に応じて溶媒再混合ステップを有するものである。この好ましい構成は、第1の態様と第2の態様とで共通である。以下、各ステップについて説明する。
【0045】
溶媒除去ステップ
このステップでは、スラリーから溶媒の少なくとも一部を除去する。このための手段は特に限定されず、例えば、スプレードライヤー法、凍結乾燥法、遠心分離法、フィルタープレス法などから選択すればよい。遠心分離法やフィルタープレス法などのように溶媒の一部だけを除去することが可能な方法では、溶媒再混合ステップを設けずに高粘度組成物を直接得ることが可能である。ただし、遠心分離法やフィルタープレス法は量産に不向きであり、特に、フィルタープレス法では、バインダを含むスラリーから溶媒を除去することが難しい。このため、スラリーをいったん乾燥させる方法が好ましく、特に、スプレードライヤー法が好ましい。スプレードライヤー法における各種条件、例えばスプレータービン回転数、熱風温度、スラリー供給速度等は、スラリー構成成分やスプレードライヤー装置の規模などに応じて適宜決定すればよい。
【0046】
溶媒再混合ステップ
上記溶媒除去ステップにおいて、スプレードライヤー法などを用い、スラリーから溶媒をほぼ完全に除去して乾燥物とした場合、押し出し成形用高粘度組成物を得るためには、溶媒を再度添加する必要がある。溶媒再混合ステップは、このために設けられる。また、上記溶媒除去ステップにおいてスラリーを完全に乾燥させない場合でも、押し出し成形用組成物として粘度が高すぎる場合には、溶媒再混合ステップを設ける。
【0047】
押し出し成形用高粘度組成物中の固形分と溶媒との量比は、従来の押し出し成形用混練物と同等とすればよく、例えば、固形分100重量部に対する溶媒の量は、好ましくは10〜20重量部、より好ましくは13〜17重量部である。
【0048】
このステップで用いる混練手段は特に限定されないが、通常、ニーダや高速ミキサーなどを用いる。
【0049】
このステップにおいて用いる溶媒は、一般に、スラリー調製工程で用いた溶媒と同一のものとするが、使用したバインダが溶解可能な溶媒であれば、他のものであってもよい。
【0050】
なお、前述したように、高粘度組成物調製工程において可塑剤を添加してもよい。
【0051】
成形工程(第1の態様および第2の態様)
この工程では、押し出し成形用高粘度組成物を押し出し成形し、板状、棒状、ハニカム状等の各種形状の成形体を得る。押し出し成形の条件は、一般の押し出し成形と同様とすればよく、セラミックス粉末の種類や性状、成形体の用途等に応じて適宜設定すればよい。
【0052】
成形工程において得られた成形体は、通常、焼成されて焼結体とされる。
【0053】
【実施例】
第1の態様の実施例
セラミックス粉末の製造
出発原料として、酸化鉛(PbO)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ビスマス(Bi2O3)、炭酸マンガン(MnCO3)および酸化ニオブ(Nb2O5)を用い、これらの粉末を、焼成後の組成(原子比)が
(Pb0.69Sr0.25Bi0.02)(Ti0.95Mn0.02Nb0.03)O3
となるように配合した。次いで、配合物を純水中でボールミルにより15時間湿式混合した。次いで、混合物を十分に乾燥させた後、プレス成形し、900℃で2時間仮焼した。得られた仮焼物をボールミルにより15時間湿式粉砕した後、再び乾燥させて顆粒状のセラミックス粉末を得た。この顆粒状セラミックス粉末の1次粒子の平均径は、1.5μmであった。
【0054】
バインダ溶液調製ステップ
バインダとしてセルロース誘導体粉末(商品名メトローズ60SH4000F、信越化学工業(株)製)を、溶媒として純水をそれぞれ用い、溶媒を撹拌羽根ミキサーで撹拌しながらバインダを少量ずつ投入し、投入後も約12時間撹拌を続けて、バインダ溶液を得た。バインダ溶液の濃度は、1.0重量%とした。
【0055】
バインダ溶液濾過ステップ
上記バインダ溶液を金属メッシュ(目の開き22μm)で濾過し、溶液中の未溶解物を除去した。未溶解物(繊維質)の量は、バインダの約50ppm程度であった。
【0056】
バインダ溶液スラリー化ステップ
濾過後のバインダ溶液を撹拌しながら上記セラミックス粉末を加えることにより、スラリー化バインダ溶液を調製した。セラミックス粉末100重量部に対するバインダ溶液の量は、300重量部とした。
【0057】
溶媒除去ステップ
上記スラリーをスプレードライヤーにより乾燥させ、セラミックス粉末とバインダとが均一に混合された顆粒を得た。スプレードライヤーの運転条件は、スプレータービン回転数6000rpm、熱風温度180℃、スラリー供給速度0.7リットル/分とした。
【0058】
溶媒再混合ステップ
上記顆粒、可塑剤(グリセリンおよび商品名セラミゾールC−08)および溶媒(純水)をミキサーにより混練し、押し出し成形用高粘度組成物を調製した。顆粒100重量部に対する各成分の量は、可塑剤2.6重量部(セラミゾール:グリセリン=3.6:50)、溶媒14.6重量部とした。
【0059】
成形工程
上記押し出し成形用高粘度組成物を押し出し成形し、幅50mm、厚さ0.6mmのシート状成形体を得た。
【0060】
焼成工程
この成形体を400℃に加熱して脱バインダした後、マグネシア製の密閉匣鉢に入れて、1200℃で4時間焼成し、焼結体サンプルを得た。
【0061】
比較例
セラミックス粉末、バインダ、溶媒および可塑剤は、上記実施例と同じものを用いた。
【0062】
この比較例では、セラミックス粉末とバインダとをミキサーで乾式混合し、得られた混合物に、溶媒と可塑剤との混合液を噴霧して混練することにより、押し出し成形用の高粘度組成物を調製した。セラミックス粉末に対するバインダおよび可塑剤の量は、上記実施例と同じとした。また、セラミックス粉末に対する溶媒の量は、上記実施例における溶媒再混合ステップと同じとした。
【0063】
得られた高粘度組成物を、上記実施例と同様にして成形して焼成し、シート状の焼結体サンプルを得た。
【0064】
特性評価
実施例および比較例においてそれぞれ製造した焼結体サンプルに対し、下記評価を行った。
【0065】
空孔数
各サンプルを鏡面研磨した後、主面中央の2cm×2cmの領域に含まれる直径20μm以上の空孔の数を光学顕微鏡により調べた。測定は、各サンプルについて10枚ずつ行い、空孔数の合計(合計面積40cm2中の空孔数)を求めた。その結果、空孔数の合計は、実施例サンプルでは65個、比較例サンプルでは171個であり、本発明により焼結体中の空孔数が著しく減少することが確認された。
【0066】
不良率
各サンプルをラップ研磨して厚さを246μmとし、分極処理用のAg電極を印刷して120℃で乾燥した後、120℃のシリコーンオイル中において5kV/mmの電界を30分間印加することにより、分極処理を施した。次いで、アセトンによりAg電極を除去した後、サンプルを主面寸法が7.0mm×7.5mmとなるようにダイシング切断し、さらに、両主面に直径1mmのAg電極を蒸着法により形成して、特性評価用サンプルとした。
【0067】
これらの特性評価用サンプルを24時間室温に放置した後、インピーダンスアナライザ(ヒューレットパッカード社製 HP-4194A)により、厚み縦振動3次高調波の共振点でのインピーダンス(R0)を調べ、不良品率を求めた。なお、測定数は、各サンプルにつき100個とし、R0が20Ωを超えるものを不良品として、その比率を不良品率とした。その結果、不良品率は、実施例サンプルでは0%、比較例サンプルでは4.0%であり、空孔の減少に伴ってR0不良率も減少することが確認された。
【0068】
なお、第2の態様にしたがって焼結体サンプルを作製し、これらについても上記特性評価を行ったところ、上記比較例に対し、空孔数の減少および不良率の低下が認められた。
【0069】
【発明の効果】
本発明では、押し出し成形法においてセラミックス粉末とバインダとを均一に混合できるので、焼結体中の空孔を著しく減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明法における工程の流れを示すフローチャートである。
Claims (7)
- 溶媒、バインダおよびセラミックス粉末を含有するスラリーを得るスラリー調製工程と、
前記スラリーから溶媒の一部が除去された押し出し成形用高粘度組成物を得る高粘度組成物調製工程と、
前記押し出し成形用高粘度組成物を押し出し成形する成形工程とを有し、
前記スラリー調製工程が、バインダを溶媒に溶解することによりバインダ溶液を得るバインダ溶液調製ステップと、
前記バインダ溶液とセラミックス粉末とを混合してスラリー化バインダ溶液を得るバインダ溶液スラリー化ステップと、
前記スラリー化バインダ溶液にバインダを追加するバインダ追加ステップと、
を有するセラミックス押し出し成形体の製造方法。 - 前記スラリー調製工程が、前記バインダ溶液を濾過するバインダ溶液濾過ステップを有する請求項1のセラミックス押し出し成形体の製造方法。
- 前記スラリー調製工程が、前記スラリー化バインダ溶液を濾過するスラリー濾過ステップを有する請求項1又は2のセラミックス押し出し成形体の製造方法。
- 前記高粘度組成物調製工程が、前記スラリーから溶媒の少なくとも一部を除去する溶媒除去ステップを有する請求項1〜3のいずれかのセラミックス押し出し成形体の製造方法。
- 前記高粘度組成物調製工程が、前記溶媒除去ステップの後に、溶媒を添加する溶媒再混合ステップを有する請求項4のセラミックス押し出し成形体の製造方法。
- 前記溶媒除去ステップにおいてスプレードライヤー法を用いる請求項5のセラミックス押し出し成形体の製造方法。
- スラリー調製工程および/または高粘度組成物調製工程において可塑剤を添加する請求項1〜6のいずれかのセラミックス押し出し成形体の製造方法。
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